JP2014142039A - ブレーキキャリパ - Google Patents

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伸也 高橋
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Abstract

【課題】本発明は、安価な構造をもち、パッドの偏摩耗を抑制することができる鞍乗り型車両用ブレーキキャリパを提供することを課題とする。
【解決手段】キャリパボデイ17に、第1シリンダ47と第2シリンダ48と、第1シリンダ47に収容される第1ピストン45及び第2シリンダ48に収容される第2ピストン46とが備えられると共に、第1ピストン45及び第2ピストン46によって押圧されるパッド75とが備えられている。パッド75の裏面と第2ピストン46の間に、シム92が備えられ、このシム92は、パッド75の長手方向、且つ、第1ピストン45寄りにて、第2ピストン46の外径d2の3/4を超えない部分で、第2ピストン46へ当接するように設けられている。
【選択図】図9

Description

本発明は、デイスクブレーキ装置に備えられているブレーキキャリパの改良に関する。
自動二輪車は、前輪ブレーキと後輪ブレーキとを備えている。通常、前輪ブレーキは、前輪用ブレーキ操作子を操作し、後輪ブレーキは、後輪用ブレーキ操作子を操作し、個別にブレーキ力を付与する。この他、1つのブレーキ操作子を操作し、前輪ブレーキと後輪ブレーキとに同時にブレーキ力を付与するものは、連動ブレーキ装置と呼ばれる。このような連動ブレーキ装置に用いられるブレーキキャリパが知られている(例えば、特許文献1(図1、図7)参照。)。
特許文献1の図1及び図7に示すように、前輪用ブレーキキャリパのキャリパボデイ(6)(括弧付き数字は、特許文献1記載の符号を示す。以下同じ。)は、3つのシリンダ孔(9、10、11)を有し、これらのシリンダ孔(9、10、11)に、摩擦パッド(7)を押す3つのピストン(13、16、19)がブレーキディスクの回転方向に沿って設けられる。このキャリパボデイ(6)は、いわゆる、3ポッドキャリパである。これらのピストンのうちの真ん中に位置するピストン(19)に、連動ブレーキ通路(24)が接続され、両端のピストン(13、16)には単独ブレーキ通路(23)が接続される。この真ん中のピストン(19)で摩擦パッド(7)の中心を押圧するとともに、両端のピストン(13、16)が連動して摩擦パッド(7)の両端を同時に押圧することで、摩擦パッド(7)(以下、「パッド」と呼ぶ。)の偏摩耗は抑制される。
しかし、3ポッドキャリパは、ピストンが3つ収容されているため、大型になり且つ高価なものになり易い。安価な構造をもち、併せて、パッドの偏摩耗を抑制することができるブレーキキャリパが望まれる。
特開2010−185503公報
本発明は、安価な構造をもち、パッドの偏摩耗を抑制することができる鞍乗り型車両用ブレーキキャリパを提供することを課題とする。
請求項1に係る発明は、第1シリンダと、この第1シリンダに並んで設けられるとともにシリンダ径が第1シリンダの内径以下の第2シリンダと、第1シリンダに連通する第1入口と、第2シリンダに連通する第2入口と、第1シリンダに収容される第1ピストン及び第2シリンダに収容される第2ピストンによって押圧されるパッドとを備え、第1ピストン及び第2ピストンは、それぞれ独立して作動可能であり、パッドで車輪と共に回転するブレーキディスクに制動力を付与するブレーキキャリパにおいて、パッドの裏面と第2ピストンの間に、シムが設けられ、このシムは、第2ピストンの外径の中心からパッドの長手方向外側に延びる長さより内側に延びる長さのほうが長く設定され第2ピストンへ当接するように設けられることを特徴とする。
請求項2に係る発明では、車輪は、前輪と後輪とからなり、第1入口は、前輪又は後輪のうちの一方に制動力をかける単独ブレーキ操作子によって押圧される第1マスターシリンダに接続され、シムの第2ピストンの中心からパッドの長手方向外側に延びる長さは、略ゼロに設定されるとともに、第2ピストンの中心からパッドの長手方向内側に延びる長さは、第2ピストンの半径以上に設定されることを特徴とする。
請求項3に係る発明では、シムは、第1ピストン側に延出し、この第1ピストンに当接していることを特徴とする。
請求項4に係る発明では、シムは、第1ピストンの外側まで延出し、パッドの端部まで延びていることを特徴とする。
請求項5に係る発明では、パッドは、第1ピストン及び第2ピストンが当接する裏板と、この裏板に固着され前輪又は後輪と共に回転するブレーキディスクに当接する摩擦材とからなり、シムは、摩擦材側に延びる突起を備え、この突起は、裏板を超えて摩擦材と重なる位置まで延びていることを特徴とする。
請求項1に係る発明では、シムは、第2ピストンの中心からパッドの長手方向外側に延びる長さより内側に延びる長さのほうが長く設定されるようにした。第2ピストンの外径は、第1ピストンの外径以下であるため、押圧力が比較的低くなり、端部側に力が伝達されにくい。しかし、シムは、第1ピストン寄りで、第2ピストンの外径の一部に当接するように配置されることで、仮想押圧中心が、第2ピストンの中心からパッドの長手方向中心側へ移動する。したがって、第2ピストンは、パッドの長手方向中心寄りを押圧することになるので、パッドの偏摩耗を減らすことができる。
本発明により、第1ピストンと第2ピストンとからなる2ポッドタイプのブレーキキャリパにおいて、シムを適切な位置に配置することで、パッドの偏摩耗を低減することができる。従って、3ポッドタイプのブレーキキャリパによらず、安価な2ポッドタイプのブレーキキャリパでパッドの偏摩耗を減らすことが可能になる。
請求項2に係る発明では、シムの第2ピストンの中心からパッドの長手方向外側に延びる長さは、略ゼロに設定されるとともに、第2ピストンの中心からパッドの長手方向内側に延びる長さは、第2ピストンの半径以上に設定されるので、仮想押圧中心が、第2ピストンの中心からよりパッドの長手方向中心側へ移動する。これにより、パッドの偏摩耗を減らすことができ、また、シムによりピストンが傾いて極端に摺動抵抗が増えることを抑制できる。
請求項3に係る発明では、シムは、第1ピストン側に延出している。シムは、第2ピストンに加えて第1ピストンによっても当接される。よって、シムのパッド裏面への接触面積が広くなるので、シムの位置決めが容易になる。
請求項4に係る発明では、シムは、第1ピストンの外側まで延出し、パッドの端部まで延びている。これにより、パッド裏面にシムを取付ける際の位置決めが容易に行えるようになる。
請求項5に係る発明では、シムは、摩擦材側に延びる突起を備え、この突起は、摩擦材と重なる位置まで延びている。シムから摩擦材の側に延びる突起は、摩擦材と重なる所定位置まで延びている。摩擦材の摩耗が進んで、摩擦材の厚さが所定の厚さに達したときに、突起の先がブレーキディスクに接触して警告音を発し、パッドが交換時期であることを知らせることができる。結果、パッドの交換時期が検出可能となる。
本発明に係る鞍乗り型車両用ブレーキ装置のシステム構成図である。 ブレーキキャリパの左側面図である。 図2の3−3矢視図である。 図3の4−4線断面図である。 シムが取付けられるディスクパッド及び周辺部の分解斜視図である。 シムが取付けられているディスクパッドの背面図である。 シムの取付構造を説明する分解斜視図である。 図7のシムがディスクパッドに取付けられた図である。 ブレーキキャリパの要部断面図である。 ブレーキキャリパの作用説明図である。 図6の別実施例図である。 図11の変形例図である。 図12の13−13線断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明のディスクブレーキ装置11は、自動二輪車10に搭載され、運転者が操向ハンドルに取付けられるブレーキレバー51及び/又は車体フレームの下部に取付けられるブレーキペダル52に入力操作をすることで、車輪12に所定の制動力を付与する。
自動二輪車10において、車輪12は前輪13と後輪14とからなり、前輪13にブレーキをかける前輪ブレーキ15と、後輪14にブレーキをかける後輪ブレーキ16は、車両の非回転側に支持される前輪キャリパボデイ17及び/又は後輪キャリパボデイ18にブレーキ圧力を供給し、前輪側及び後輪側に各々取付けられる円盤状のブレーキディスク27、28の双方又は一方を挟むことで所定のブレーキ力を付与する。
ディスクブレーキ装置11は、単独ブレーキ操作子(前輪ブレーキ操作子23)を操作したときに、前輪13のみにブレーキをかける前輪ブレーキ15と、連動ブレーキ操作子24を操作したときに、前輪13及び後輪14の双方に同時にブレーキ力をかけるいわゆる連動ブレーキ25とからなる。連動ブレーキ25は、前輪13及び後輪14の双方に同時に制動力をかけるものである。
単独ブレーキ(前輪ブレーキ)15の制動力発生源となる第1マスタシリンダ31は、単独ブレーキ操作子23によって押圧される。また、連動ブレーキ25の制動力発生源となる第2マスタシリンダ32は、連動ブレーキ操作子24によって押圧される。
このようなディスクブレーキ装置11は、前輪13と共に回転する前輪ブレーキディスク27と、この前輪ブレーキディスク27に制動力を付与する前輪キャリパボデイ17と、後輪と共に回転する後輪ブレーキディスク28と、この後輪ブレーキディスク28に制動力を付与する後輪キャリパボデイ18と、前輪キャリパボデイ17に液圧(油圧)を供給する第1油圧経路35及び第2油圧経路36と、この第2油圧経路36の中間部36aから分岐し前記後輪キャリパボデイ18に延び接続される第3油圧経路37と、第1油圧経路35の一端に接続され液圧を発生する第1マスタシリンダー(前輪マスタシリンダ)31と、この前輪マスタシリンダ31にブレーキ力を入力する前輪ブレーキ操作子23と、第2油圧経路36の一端に接続され液圧を発生する第2マスタシリンダー(連動マスタシリンダ)32と、この連動マスタシリンダ32にブレーキ力を入力する連動ブレーキ操作子24とを主要素とする。
第2油圧経路36の中間部36aと前輪キャリパボデイ17の間にて第2油圧経路36に遅動弁(Delay Valve:DV)43が介在され、第3油圧経路37に前後輪制動力配分特性に応じた入出力特性をもつ比例制御弁(Proportional Control Valve:PCV)44が介在される。
前輪キャリパボデイ17と後輪キャリパボデイ18は、いずれも、車両の非回転側に支持されている。前輪キャリパボデイ17は、第1油圧経路35に連通し、前輪ブレーキディスク27を押す第1ピストン45を内挿する第1シリンダ47と、第2油圧経路36に連通し、同じく、前輪ブレーキディスク27を押す第2ピストン46を内挿する第2シリンダ48とを有する。後輪キャリパボデイ18は、第3油圧経路37に連通し第3ピストン49を内挿する第3シリンダ部50を有する。
本実施例では、ブレーキレバー51は、単独ブレーキ操作子23の一形態であり、ハンドルの一端に設けられ運転者が握り操作する。ブレーキペダル52は、連動ブレーキ操作子24の一形態であり、運転者が足を踏み込み操作する。この踏み込み操作により後輪14のみならず前輪13をも同時に制動する機能をもたせた。なお、連動ブレーキ操作子をブレーキペダルに代えて、ハンドルの他端に設けられ運転者が握り操作する別のブレーキレバーとすることは差し支えない。
ディスクブレーキ装置11において、単独ブレーキ操作子(前輪ブレーキ操作子)23を操作すると、前輪マスタシリンダ31で油圧が発生し、この油圧は第1油圧経路35を介して前輪キャリパボデイ17に伝達され、前輪キャリパボデイ17の第1ピストン45が前輪ブレーキディスク27を押圧することで、前輪13に制動力をかける。
同様に、連動ブレーキ操作子24を操作すると、連動マスタシリンダ32で油圧が発生し、この油圧は第2油圧経路36を介して前輪キャリパボデイ17に伝達されると共に、第2油圧経路36の中間部36aから分岐した第3油圧経路37を通って後輪キャリパボデイ18に伝達される。そして、前輪キャリパボデイ17の第2ピストン46が前輪ブレーキディスク27を押圧することで、前輪13に制動力をかけると共に、後輪キャリパボデイ18の第3ピストン49が後輪ブレーキディスク28を押圧することで、後輪14に制動力をかけるようにした。
次に連動ブレーキに用いられる前輪ブレーキキャリパについて説明する。
図2に示すように、前輪キャリパボデイ17(以下、「キャリパボデイ17」と言う。)に、ブレーキディスク(図1、符号27)を押す第1ピストン45が内挿される第1シリンダ47と、この第1シリンダ47に並んで設けられ、ブレーキディスク27を押す第2ピストン46が内挿される第2シリンダ48と、第1シリンダ47に連通しブレーキ媒体が出入りする第1入口53と、第2シリンダ48に連通し第2ピストン46を押すブレーキ媒体が出入りする第2入口54とを有する。キャリパボデイ17に設けられる第1ピストン45及び第2ピストン46は、図1に示したシステム構成により、それぞれ独立して作動可能なものである。キャリパボデイ17は、車両側に固定されている板状のブラケット55へ、第1支持部57と第2支持部58によって取付けられている。キャリパボデイ17は、第1支持部57と第2支持部58によって、ブレーキディスク27の軸方向に移動可能に支持される。この他、第1シリンダ47に、エア抜き通路としての第1ブリーダ61が連通し、第2シリンダ48に、エア抜き通路としての第2ブリーダ62が連通している。ここで、キャリパボデイ17(前輪キャリパボデイ17)の前面とは、キャリパボディ17を車両に取付けたときに、車幅方向外側の面をいう。
図3に示すように、キャリパボデイ17の下端をブレーキディスク27の軸方向に移動可能に支持する第2支持部58は、板状のブラケット55に締結されピン64を有するピンボルト65と、このピンボルト65に回動自在に支持されキャリパボデイ17側に嵌合する支持ブッシュ67とからなる。ブラケット55とピンボルト65の間にワッシャ68が介在されている。第1支持部57の構造は、上述した第2支持部58の構造と同様なものであり説明を省略する。
キャリパボデイ17は、第1パッド(ピストン側パッド)75が配置される側のベース部71と、このベース部71の上端からブレーキディスクの側面に直角な方向へ延びるブリッジ部72と、このブリッジ部72から下方へ延びて第2パッド(受部側パッド76)が配置される側の爪部73とからなる。べース部71は、その下端に第2支持部58を有し、その高さ方向中間部に第2シリンダ48を有する。
第2シリンダ48に第2ピストン46が内挿され、この第2ピストン46に前輪ブレーキディスク27(ブレーキディスク27)の一方の側面27aを押すピストン側パッド75がセットされ、爪部73に受部74が形成され、この受部74にブレーキディスクの他方の側面27bを押す受部側パッド76がセットされている。ピストン側パッド75と受部側パッド76との間に挟まれるようにして、ピストン側パッド75と受部側パッド76の間に、ブレーキディスク(前輪ブレーキディスク27)が配置される。ベース部71にダストシール77が嵌合する第1溝部81が形成され、この第1溝部81よりも第2シリンダ48の奥の側にピストンシール78が嵌合する第2溝部82が形成されている。
ピストン側パッド75は、第2ピストン46が当接する裏板84と、この裏板84に固着されブレーキディスク(前輪ブレーキディスク27)に当接する摩擦材85とからなる。受部側パッド76は、爪部73の受部74に支持される裏板86と、この裏板86に固着されブレーキディスク27に当接する摩擦材87とからなる。
次に、ディスクパッド(パッド)のキャリパボデイへの支持構造等について説明する。
図4に示すように、ピストン側パッド75において、摩擦材(図3、符号85)が固着される面と反対側の裏面91には、シム92が取付けられている。ピストン側パッド75は、ブレーキディスク27の回入側に第1腕部93を有すると共に、ブレーキディスク27の回出側に第2腕部94を有する。第1腕部93にハンガーピン挿通孔95が開けられ、このハンガーピン挿通孔95に、ハンガーピン96が挿通される。ハンガーピン96は、キャリパボデイ(前輪キャリパボデイ17)に支持される。第1腕部93は、ハンガーピン96に回動自在に支持される。第2腕部94は、前輪キャリパボデイ17に形成した凹部98に所定のクリアランスをもって保持される。加えて、ピストン側パッド75は、ブレーキディスク(図3、符号27)の軸方向に移動可能に支持される。なお、受部側パッドの支持構造は、ピストン側パッド75と同様な構造であり説明を省略する。図中、ディスクパッドとキャリパボデイ間に設けたパッドスプリングは省略されている。
次に、ブレーキディスクと、パッドと、このパッドの裏板に取付けられるシムと、シムに当接するピストンの位置関係等について説明する。
図5に示すように、ブレーキキャリパ(前輪キャリパボデイ(図3、符号17))に、第1ピストン45及び第2ピストン46によって押圧されるパッド(ピストン側パッド75)が備えられる。このパッド75で車輪(前輪(図1、符号13))と共に回転するブレーキディスク27に制動力を付与する。
パッド75は、第1ピストン45及び第2ピストン46が当接する裏板84と、この裏板84に固着され前輪13と共に回転するブレーキディスク27に当接する摩擦材85とからなる。パッド75の裏面91と第2ピストン46の間に、シム92が取付けられている。なお、シム92の取付方法の詳細については後述する。
次に、パッド75に当接する第1ピストン45及び第2ピストン46と、パッド75の裏面91に取付けられるシム92の配置等について説明する。
図6に示すように、パッド75の裏面91に、シム92を介して第1ピストン45と第2ピストン46が押圧可能に配置される。第2ピストン46の外径d2と略同一の内径をもつ第2シリンダ48の径D2は、第1ピストン45の外径d1と略同一の内径をもつ第1シリンダ47の径D1以下とした(D2≦D1)。図1を併せて参照し、連動ブレーキ25は、前輪13と後輪13とに制動力を分配するので、制動力を分配しないものに比べて、ピストンd2に及ぶ圧力が比較的小さく設定される場合がある。
次に、パッド75の裏面91とピストン45、46の間に挟まれているシム92の長さ、配置等について説明する。シム92の長さについて、第2ピストン46の中心P2から長手方向外側に延びている長さをAとし、第2ピストン46の中心P2から長手方向内側に延びている長さをBとし、また、第2ピストン46の中心P2から第2ピストン46の内端までの長さをBaとする。
シムは、第2ピストン46の外径の中心P2からパッド75の長手方向外側に延びる長さ(A)より内側に延びる長さ(B)のほうが長く設定され(A<B)、第1ピストン45に当接すると共に第2ピストン46へ当接するように設けられている。本実施例では、シム92の長手方向(すなわち図の左右方向)、且つ、第1ピストン45寄りにて、第2ピストン46の外径d2の3/4を超えない部分で、第2ピストン46へ当接する位置に配置される。加えて、シム92は、第1ピストン45側に延出している。
なお、シムの第2ピストン46の中心P2から長手方向外側に延びる長さAは、後述する図11に示すように、ゼロであっても良い。あるいは、マイナスであっても良い。すなわち、シムの長手方向端部が第2ピストンの中心P2より内方に位置するようにしても良い。また、シムにおいて、第2ピストンの中心P2から第2ピストンの内端までの長さBaは、第2ピストンの半径(d2/2)以上((d2/2)≦Ba)に設定されることが望ましい。第2シリンダ48の径D2を第1シリンダ47の径D1と同径にすることは差し支えない。
次に、図7〜8では、シムの取付構造の詳細について説明する。
図7に示すように、裏板84の上面101に、第1切欠部103及び第2切欠部104が形成され、裏板84の下面102に、第3切欠部105が形成され、略矩形で薄板状のシム92に、第1切欠部103及び第2切欠部104に各々係合する第1折曲部106及び第2折曲部107が裏板84の裏面91から裏板84の表面100へ向けて突設されると共に、第3切欠部105に係合する第3折曲部108が裏板84の裏面91から裏板84の表面100の方向へ向けて突設されている。シム92の板厚は、例えば、0.6mmに設定されているが、その板厚については、適宜、変更可能である。
図8に示すように、裏板84の裏面91にシム92が取付けられている。第1折曲部の先端106a及び第2折曲部の先端107aは、裏板84の表面100の下方に向け折り曲げられ、第3折曲部の先端108aは、裏板84の表面100の上方に向け折り曲げられている。これにより、シム92の表裏方向は、折り曲げられた第1折曲部の先端106a、第2折曲部の先端107a及び第3折曲部の先端108aによって、裏板84へ位置決め保持される。シム92の左右方向は、第1〜第3切欠部103〜105によって位置決めされる。本実施例では、シムは別部材としたが、シムに相当する部分を裏板に一体形成することは差し支えない。
図9に示すように、下方から見たとき、パッドの裏面91と第2ピストン46の間に備えられるシム92は、第1ピストン45側に延出し、第1ピストン45寄りにて、第2ピストン46の外径d2の3/4を超えない部分で、第2ピストン46へ当接している。すなわち、シム92は、その長手方向、且つ、第1ピストン45寄りにて、第2ピストン46の一部にかかるように配置される。
以上に述べたブレーキキャリパの作用を次に述べる。
図10はブレーキキャリパの作用説明図である。図10(a)は比較例Aの作用図、図10(b)は比較例Bの作用図、図10(c)は実施例Aの作用図、図10(d)は実施例Bの作用図である。図中、CLは第1ピストンの中心線115と第2ピストンの中心線116の中間点に位置するピストン部の中心線である。
図10(a)及び図10(b)において、ピストン45、46とピストン側パッド75(パッド75)の間にシム92Bを介在させ、このシム92Bは、第1ピストン45の径方向略中心からブレーキディスク回入側へ延び、第2ピストン46の端部をこえた位置までに達していることを示す。
図10(a)の比較例Aにおいて、第1ピストン45と第2ピストン46とが同時にピストン側パッド75を押圧するとき、押圧力は、主にピストン部の中心線CLの位置で図矢印Paの向きに作用する。この場合、押圧力は、主にピストン部の中心線CLの位置で作用するため、パッド75の偏摩耗は抑えられる。ここで、偏摩耗とは、パッドの長手方向(ブレーキディスクの周方向)の中心の摩耗量に対し、パッドの端部側の摩耗量が大きく、中心と端部とでパッドの厚さが大きく異なってしまうことを言う。
図10(b)の比較例Bにおいて、第2ピストン46のみがピストン側パッド75を押圧するとき、押圧力は、主に第2ピストンの中心線116の位置で図矢印Pbの向きに作用する。図10(a)と図10(b)を比較すると、主にピストン部の中心線CLと第2ピストンの中心線116間の距離bにより、パッド75に作用する押圧力の中心は、パッド75の回入側に移動する。このため、パッド75の偏摩耗が大きくなり易い。ピストン45、46とピストン側パッド75の間にシム92を介在させなかった場合でも、比較例Bと同様な傾向の作用を奏する。
図10(c)の実施例Aにおいて、ピストン45、46とピストン側パッド75(パッド75)の間に介在されるシム92は、シム92の長手方向、且つ、第1ピストン45寄りに設けられると共に、第2ピストン46の外径d2の略半分で第2ピストン46へ当接するように設けられている。
シム92の第2ピストン46の中心116からパッド75の長手方向外側に延びる長さは、略ゼロに設定される。加えて、第2ピストン46の中心116からパッド75の長手方向内側に延びる長さ(B)は、第2ピストン46の半径(d2/2)以上に設定される。このため、仮想押圧中心(Pc)が、第2ピストン46の中心116からよりパッド75の長手方向中心(CL)側へ移動する。これにより、パッド75の偏摩耗を減らすことができ、また、シム92によりピストン46が傾いて極端に摺動抵抗が増えることを抑制できる。
第2ピストン46のみがピストン側パッド75を押圧するとき、第2ピストン46は、パッド75の長手方向中心寄り、すなわち、ピストン部の中心(CL)から距離c(c<b)だけ離れた位置でパッド75を押圧することになる。パッド75の長手方向中心寄りを押圧することになるため、パッド75の偏摩耗を減らすことができる。すなわち、パッド75を構成しブレーキディスク27と接触する摩擦材85の偏摩耗を減らすことができる。
また、第1ピストン45と第2ピストン46とからなる2ポッドタイプのブレーキキャリパ20において、第2ピストン46とパッド(ピストン側パッド75)の間にシム92を設け、このシム92を適切な位置に配置するだけでパッド75の偏摩耗を低減することができる。結果、3ポッドタイプのブレーキキャリパによらず、安価な2ポッドタイプのブレーキキャリパ20でパッド75の偏摩耗を減らすことが可能になる。
さらに、第2シリンダ48(図6参照)の外径D2は、第1シリンダ47の外径D1よりも小さく設定されている(D2<D1)。第2シリンダ48の外径D2を小さくしたので、第2シリンダ48の外径D2を第1シリンダ47の外径D1と同じにした場合に比べて、第2ピストン46の中心をパッド75の長手方向中心寄りに移動させることができる。結果、パッド75の偏摩耗を一層減らすことができる。
さらにまた、シム92は、第1ピストン45側に延出している。シム92は、第2ピストン46に加えて第1ピストン45によっても支持される。よって、シム92が第2ピストン46のみによって支持される場合に比べ、シム92の支持が容易になる。
図10(d)の実施例Bにおいて、実施例Aに比べ、第2ピストン46に当接するシム92の面積を大きくした場合であって、シム92は、シム92の長手方向、且つ、第1ピストン45寄りにて、第2ピストン46の外径D2の略3/4の部分で、第2ピストン46へ当接している。
シム92は、第2ピストン46の中心116からパッド75の長手方向外側に延びる長さ(A)より内側に延びる長さ(B)のほうが長く設定(A<B)されるようにした。第2ピストン46の外径(d2)は、第1ピストン45の外径(d1)以下(d2<d1)であるため、押圧力が比較的低くなり、端部側に力が伝達されにくい。しかし、シム92は、第1ピストン45寄りで、第2ピストン46の外径(d2)の一部に当接するように配置されることで、仮想押圧中心Pdが、第2ピストン46の中心116からパッド75の長手方向中心側へ移動する。したがって、第2ピストン46は、パッド75の長手方向中心寄りを押圧することになるので、パッド75の偏摩耗を減らすことができる。
このようなシム92の配置により、第2ピストン46は、実施例Aほどではないが(c<d)、ピストン部の中心CLから距離d(d<b)だけ離れた位置でパッド75を押圧することになる。比較例Bに比べると、パッド75の長手方向中心寄り(d<b)を押圧することになる。パッド75の長手方向中心寄りを押圧することで、パッド75の偏摩耗を減らすことができる。
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図11に示すように、パッド75の裏面91に、シム92を介して第1ピストン45と第2ピストン46が押圧可能に配置される。シム92は、第1ピストン45側に延出し、この第1ピストン45に当接すると共に、第2ピストン46の外径d2の略半分で、第2ピストン46へ当接するように配置されている。すなわち、第2ピストン46の面積の略半分は、シム92に当接(接触)している。
仮に、シム92が第1ピストン45寄りに設けられ、第2ピストン46がシム92に当接する面積が減ると、第2ピストン46の摺動方向とは異なる方向の力が第2ピストン46にかかり、第2ピストン46のスムーズな摺動に影響が出易くなる。反対に、第2ピストン46がシム92に当接する面積が増えると、パッド75の偏摩耗が大きくなる。
この点、本発明では、シム92は、第2ピストン46の外径d2の面積の略半分の面積で、第2ピストン46に当接するように配置される。第1ピストン45寄りの位置であって、第2ピストン46の略半分で、シム92を押圧するようにしたので、第2ピストン46のスムーズな摺動を確保しつつ、パッド75の偏摩耗を減らすことができ、これら両者のバランスを良好に確保することができる。
次に、本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。
図12に示すように、シム92は、第1ピストン45の外側まで延出すると共に、第2ピストン46の外径d2の略半分で、第2ピストン46へ当接するように設けられる。すなわち、第2ピストン46の面積の略半分は、シム92に当接(接触)している。
シム92は、第1ピストン45側に延出し、パッドの長手方向で、且つ、ブレーキディスクの回出方向の端部75aまで延びている。シム92の端部92aをパッド75の端部75aの輪郭に合わせるように設定することで、パッド75にシム92を取付ける際の位置決め作業が容易に行えるようになる。
図13に示すように、シム92は、摩擦材85側に延びる突起111を備え、この突起111は、裏板84を超えて摩擦材85と重なる位置まで延びている。摩擦材85の摩耗が進み、摩擦材85の厚さTが減少し、裏板84の表面からの突出量tに達したときに、突起の先112がブレーキディスク27に接触して警告音を発し、パッド75が交換時期であることを知らせることができる。結果、パッド75の交換時期が検出可能となり、検出が容易となる。
尚、本発明のブレーキキャリパは、実施の形態では自動二輪車に適用したが、鞍乗り型三輪車にも適用可能であり、一般の鞍乗り型車両に適用することは差し支えない。
本発明は、連動ブレーキ装置が備えられている自動二輪車に好適である。
13…車輪(前輪)、14…後輪、20…ブレーキキャリパ、23…単独ブレーキ操作子(前輪ブレーキ操作子)、24…連動ブレーキ操作子、27…ブレーキディスク(前輪ブレーキディスク)、31…第1マスタシリンダ(前輪マスタシリンダ)、32…第2マスタシリンダ(連動マスタシリンダ)、45…第1ピストン、46…第2ピストン、47…第1シリンダ、48…第2シリンダ、53…第1入口、54…第2入口、75…ピストン側パッド、84…裏板、85…摩擦材、92…シム、111…突起、A…第2ピストンの中心からパッドの長手方向外側に延びる長さ、B…第2ピストンの中心からパッドの長手方向内側に延びる長さ、P1…第1ピストンの中心、P2…第2ピストンの中心。R…第2ピストンの半径。

Claims (5)

  1. 第1シリンダ(47)と、
    この第1シリンダ(47)に並んで設けられるとともにシリンダ径が前記第1シリンダ(47)の内径以下の第2シリンダ(48)と、
    前記第1シリンダ(47)に連通する第1入口(53)と、
    前記第2シリンダ(48)に連通する第2入口(54)と、
    前記第1シリンダ(47)に収容される第1ピストン(45)及び前記第2シリンダ(48)に収容される第2ピストン(46)によって押圧されるパッド(75)とを備え、 前記第1ピストン(45)及び前記第2ピストン(46)は、それぞれ独立して作動可能であり、
    前記パッド(75)で車輪(13)と共に回転するブレーキディスク(27)に制動力を付与するブレーキキャリパにおいて、
    前記パッド(75)の裏面(91)と前記第2ピストン(46)の間に、シム(92)が設けられ、
    このシム(92)は、前記第2ピストン(46)の中心から前記パッド(75)の長手方向外側に延びる長さ(A)より内側に延びる長さ(B)のほうが長く設定され前記第2ピストン(46)へ当接するように設けられることを特徴とするブレーキキャリパ。
  2. 前記車輪(12)は、前輪(13)と後輪(14)とからなり、
    前記第1入口(53)は、前記前輪(13)又は前記後輪(14)のうちの一方に制動力をかける単独ブレーキ操作子(23)によって押圧される第1マスターシリンダ(31)に接続され、
    前記第2入口(54)は、前記前輪(13)及び前記後輪(14)の双方に制動力をかける連動ブレーキ操作子(24)によって押圧される第2マスターシリンダ(32)に接続され、
    前記シム(92)の前記第2ピストン(46)の中心から前記パッド(75)の長手方向外側に延びる長さ(A)は、略ゼロに設定されるとともに、前記第2ピストン(46)の中心から前記パッド(75)の長手方向内側に延びる長さ(B)は、前記第2ピストン(46)の半径以上に設定されることを特徴とする請求項1記載のブレーキキャリパ。
  3. 前記シム(92)は、前記第1ピストン(45)側に延出し、この第1ピストン(45)に当接していることを特徴とする請求項2記載のブレーキキャリパ。
  4. 前記シム(92)は、前記第1ピストン(45)の外側まで延出し、前記パッド(75)の端部まで延びていることを特徴とする請求項3記載のブレーキキャリパ。
  5. 前記パッド(75)は、前記第1ピストン(45)及び前記第2ピストン(46)が当接する裏板(84)と、この裏板(84)に固着され前記前輪(13)又は前記後輪(14)と共に回転するブレーキディスク(27)に当接する摩擦材(85)とからなり、
    前記シム(92)は、前記摩擦材(85)側に延びる突起(111)を備え、
    この突起(111)は、前記裏板(84)を超えて前記摩擦材(85)と重なる位置まで延びていることを特徴とする請求項3又は請求項4記載のブレーキキャリパ。
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