JP2014137462A - 体積型ホログラム記録用感光性組成物、体積型ホログラム記録体、及び体積型ホログラム記録体の製造方法 - Google Patents
体積型ホログラム記録用感光性組成物、体積型ホログラム記録体、及び体積型ホログラム記録体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】ホログラム記録波長に吸収を持ち、励起して光重合開始剤にエネルギーを渡し得る増感色素であるシアニン系色素と、光重合開始剤と、光重合性化合物と、ホログラム記録波長光照射に不活性であり熱により酸を発生するスルホン酸塩系酸発生剤とを含有する、体積型ホログラム記録用感光性組成物である。
【選択図】なし
Description
しかしながら、特許文献2の透明ホログラム用感光性記録材料は、ホログラム記録露光時に酸を発生させ、当該酸の作用により発生させたスルホン酸誘導体を用いて増感色素を退色若しくは消色されているものである。そのため、ホログラム記録中にも増感色素が退色し易く、反応系の感度が下がり、重合が加速されない結果、回折効率が低下するという問題があった。
本発明は、係る知見に基づいて完成したものである。
前記ホログラム記録層に、少なくとも、ホログラム記録波長光を照射することにより、体積型ホログラムを記録するホログラム記録工程と、
前記ホログラム記録工程後に、前記ホログラム記録層を加熱することにより、前記シアニン系色素の電子共役系の一部を切断する消色工程とを有する、
シアニン系色素の共役電子系の一部が切断された反応結果物と、スルホン酸塩系酸発生剤の分解物と、光重合性化合物の重合物とを含み、ホログラムが記録されたホログラム層を、基材上に備えたことを特徴とする。
以下、本実施形態に係る体積型ホログラム記録用感光性組成物、体積型ホログラム記録体、及び、体積型ホログラム記録体の製造方法について、順に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことをいう。
本実施形態に係る体積型ホログラム記録用感光性組成物は、ホログラム記録波長に吸収を持ち、励起して光重合開始剤にエネルギーを渡し得る増感色素であるシアニン系色素と、光重合開始剤と、光重合性化合物と、ホログラム記録波長光照射に不活性であり熱により酸を発生するスルホン酸塩系酸発生剤とを含有することを特徴とする。
従来の体積型ホログラム記録用感光性組成物を用いると、ホログラム記録後に、ホログラム層中に増感色素が残留するため、ホログラムの再生時等に照射される光を吸収し、ホログラム層中の成分が副反応を起こしたり、発熱することがあった。その熱の影響でホログラム記録体が変質したり、記録したホログラム縞が歪んで再生波長での回折効率が低下するという問題が発生した。このような劣化の問題は、高出力レーザー光が用いられる用途において大きな問題となってきた。
増感色素を退色させる方法として、特許文献2の技術では、上述のようにホログラム記録中にも増感色素が退色し易く、反応系の感度が下がり、重合が加速されないという問題があった。
このような問題を解決する方法として、消色しやすいシアニン系色素を用いることを検討した。シアニン系色素は、酸を用いなくても消色し得るが、消色するにはホログラム記録後に例えば3〜4日等の長時間の光照射が必要である。それ故、シアニン系色素を消色させるために照射される長時間の光照射により、ホログラム中の色素以外の材料も劣化するという問題があった。
これらの問題に対して、本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物は、増感色素として酸により消色しやすいシアニン系色素を用い、更に、ホログラム記録波長光に対して不活性であり熱により強酸を発生するスルホン酸塩系酸発生剤とを組み合わせている。このような体積型ホログラム記録用感光性組成物を用いることにより、ホログラム記録時にはシアニン系色素が増感色素として作用する一方、強酸の発生は抑制されているため、ホログラム記録感度を低下することなくホログラムを記録することができる。更にホログラム記録後に、加熱することによって、酸発生剤から強酸が発生するため、短時間の加熱でシアニン系色素を消色することができる。このため、ホログラム層中の色素以外の材料の劣化を抑制しながら、ホログラム記録体の透過率を上げることができる。得られたホログラム記録体は、高出力レーザー光等の照射光を吸収し難くなるため、発熱によるホログラム記録体中の各成分や部材の劣化を抑制することができる。
以下、このような体積型ホログラム記録用感光性組成物の各成分について、順に説明する。
本発明において用いられるシアニン系色素は、ホログラム記録波長に吸収を持ち、励起して後述する光重合開始剤にエネルギーを渡し得る増感色素として作用するシアニン系色素である。
本発明においてシアニン系色素とは、2つ以上の窒素原子がポリメチン鎖によって繋がれている構造を有する色素をいう。シアニン系色素は、ポリメチン鎖を有することから骨格に共役電子系を有する。典型的なシアニン系色素としては、例えば、2個の含窒素複素環を奇数個のメチン基(−CH=)で結合し、一方の窒素原子は3級アミン、他方のアミンは4級アンモニウム構造を有し、下記化学式(1)で表わされる共役電子系を有する基本骨格をもつ色素が挙げられる。
また、化学式(1)におけるnは、用途に応じて適宜選択すればよい。nが大きいほど、シアニン系色素の吸収極大波長が長波長側に移動する。中でもnが0〜3であることが好ましい。
本発明において光重合開始剤は、後述する光重合性化合物の種類に応じて、従来公知のラジカル重合開始剤及びカチオン重合開始剤の中から適宜選択して使用することができる。
光ラジカル重合開始剤としては、体積型ホログラムを記録する際に、露光によって活性ラジカルを生成し、該活性ラジカルがラジカル重合性化合物を重合させることができるものであれば特に限定されるものではない。
光ラジカル重合開始剤としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられ、更に具体的には、1,3−ジ(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、BASF製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名イルガキュア184、BASF製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(商品名イルガキュア369、BASF製)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)(商品名イルガキュア784、BASF製)、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤が組み合わせて用いられる場合、本発明に用いられる光カチオン重合開始剤としては、ラジカル重合性化合物を重合させる露光に対しては低感光性で、当該露光と異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸あるいはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させるような開始剤であれば特に限定されるものではない。光ラジカル重合開始剤としても、光カチオン重合開始剤としても機能するものも好適に用いられる。なかでも好適な光カチオン重合開始剤としては、例えばジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、鉄アレン錯体類等が挙げられる。
光重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種が好適に用いられ、対応する光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤の少なくとも1種が組み合わせて用いられる。ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物を組み合わせて用いる場合、ホログラム記録層に体積型ホログラムを記録する方法としては、上記ラジカル重合開始剤系が感光するレーザー光又はコヒーレンス性に優れた光の照射によって、ラジカル重合性化合物を重合させた後、カチオン重合開始剤系が感光する上記レーザー光とは別の波長の光を照射する方法が用いられる。
上記ラジカル重合性化合物としては、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好適に用いられる。また、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物を組み合わせて用いる場合には、ラジカル重合性化合物の平均屈折率は、後述のカチオン重合性化合物の平均屈折率より大きいことが好ましく、0.02以上大きいことがより好ましい。
ラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、アクリルアミド、2−ブロモスチレン、2−フェノキシエチルアクリレート、2,3−ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート、N−ビニルカルバゾール、2−(9−カルバゾリル)エチルアクリレート、トリフェニルメチルチオアクリレート、S−(1−ナフチルメチル)チオアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ジフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジフェン酸(2−アクリロキシエチル)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエステル、2,3−ナフタリンジカルボン酸(2−アクリロキシエチル)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエステル、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)スルホン、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート及び上記におけるアクリレートをメタクリレートに変えた化合物、更には特開平2−247205号公報や特開平2−261808号公報に記載されているような分子内に少なくともS原子を2個以上含む、エチレン性不飽和二重結合含有化合物が挙げられ、これらの1種以上を使用してよい。
上記カチオン重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物を組み合わせて用いる場合には、ラジカル重合性化合物の重合が比較的低粘度の組成物中で行われることが好ましいという点から、室温で液状のものが好適に用いられる。このようなカチオン重合性化合物の具体例としては、例えば、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、1,6−ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、4,4'−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、ビニル−2−クロロエチルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、及び、下記式(2)、下記式(3)で表される化合物等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、酸発生剤として、ホログラム記録波長光照射に不活性であり熱により酸を発生するスルホン酸塩系酸発生剤が用いられる。
当該スルホン酸塩系酸発生剤は、ホログラム記録波長光照射に対して不活性であるため、ホログラム記録時においては実質的に酸を発生せず、前記シアニン系色素を消色しない。一方、当該スルホン酸塩系酸発生剤は、ホログラム記録後に加熱することにより、強酸のスルホン酸を発生するため、短時間でシアニン系色素の消色を実現する。その結果、得られる体積型ホログラム記録体は、高透過率で、且つ色素以外の材料の劣化が抑制されたホログラム層を備えたものとなる。
なお、酸発生剤から酸を発生させるための熱は、常温(25℃)よりも高温で熱が加えられれば良く、通常40℃以上であり、好ましくは60℃以上である。中でも、100〜180℃であることが好ましい。
本発明において、酸発生剤は、重合性化合物の重合開始や重合促進のために用いられるものではなく、増感色素であるシアニン系色素を短時間で消色するために用いられるものである。
そのため、本発明において用いられるスルホン酸系酸発生剤は、ホログラム記録波長光照射に不活性であり、酸性度の高い酸が発生するものであることが好ましい。なお、本発明において、ホログラム記録波長光照射に不活性とは、ホログラム記録波長の光を照射しても実質的に酸を発生しないことをいい、ホログラム記録波長の光を照射しても酸を発生しないか、発生しても、シアニン系色素を消色しない程度にしか酸を発生しないことをいう。不活性とは、ホログラム記録波長の光を1000mJ/cm2照射した場合に、酸発生剤から酸が発生する割合が1モル%以下を目安とすることができる。
また、本発明に用いられるスルホン酸塩系酸発生剤は、スルホニル基のα位の炭素原子にハロゲン原子、含ハロゲンアルキル基等の電子吸引性基を有することが好ましく、中でもスルホニル基のα位の炭素原子にフッ素原子、含フッ素アルキル基等の電子吸引基をもつことが好ましい。このような場合には、発生するスルホン酸の酸性度が高くなり、また沸点が高くなり揮発し難くなる傾向がある。本発明に用いられるスルホン酸塩系酸発生剤は、特に、トリフルオロメタンスルホン酸を発生する酸発生剤であることが好ましい。トリフルオロメタンスルホン酸は中でも硫酸の1000倍以上の高い酸性度を有する上、その共役塩基であるトリフラートアニオン(CF3SO3 −)は化学的、熱的に非常に安定だからである。
化学式(4)
RSO3 ―(R’)mA+
(式中、Rは、置換基を有していても良い炭化水素基であり、Aは窒素原子、硫黄原子、又はヨウ素原子を示し、mはAが窒素原子の場合には4、Aが硫黄原子の場合には3、Aがヨウ素原子の場合には2を示す。R’は相互に独立に水素原子、又は置換基を有していても良く、炭素鎖に酸素原子を含んでいても良い炭化水素基、或いは、R’のいずれか2つ以上が相互に結合して式中のAと共に環を形成してもよい。但し、Aが硫黄原子、ヨウ素原子の場合にはR’は水素原子を示さない。)
また、R’としては、水酸基等が置換されていても良い、直鎖、分岐、環状のアルキル基、アリール基、及びこれらの組み合わせであるか、2つ以上が相互に結合して式中のNと共に環を形成してもよいものが好適に用いられる。
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物は、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて更に他の成分を含有してもよい。他の成分としては、バインダー樹脂、熱重合防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、着色剤、微粒子、熱可塑性樹脂、界面活性剤等が挙げられる。
バインダー樹脂は、ホログラム形成前の組成物の成膜性、膜厚の均一性を改善する場合や、光ラジカル重合及び光カチオン重合を組み合わせて用いる場合にレーザー光あるいはコヒーレンス性の優れた光の照射による重合で形成された干渉縞を後露光までの間、安定に存在させるために使用される。本発明に用いられるバインダー樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、またはその部分加水分解物、ポリ酢酸ビニルまたはその加水分解物、アクリル酸、アクリル酸エステル等の共重合可能なモノマー群の少なくとも1つを重合成分とする共重合体、またはそれらの混合物や、ポリイソプロピレン、ポリブタジエン、ポリクロロピレン、ポリビニルアルコールの部分アセタール化物であるポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等、またはそれらの混合物などを挙げることができる。中でも、加熱時にモノマー移動が容易に移動でき、記録された体積型ホログラムを安定化しやすい点から、バインダー樹脂のガラス転移温度が比較的低いことが好ましい。
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物中の各成分の含有割合は適宜調整されれば良い。例えば、以下の含有割合が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物中のシアニン系色素の含有割合は、体積型ホログラム記録用感光性組成物中の固形分100重量部に対して、0.005〜2重量部が好ましく、0.02〜1重量部がより好ましい。
光重合開始剤の含有量は、体積型ホログラム記録用感光性組成物中の固形分100重量部に対して、0.05〜5重量部が好ましく、0.2〜3重量部がより好ましい。
光重合性化合物の含有量は、体積型ホログラム記録用感光性組成物中の固形分100重量部に対して、10〜98重量部が挙げられ、10〜80重量部が好ましく、20〜70重量部がより好ましい。
スルホン酸塩系酸発生剤の含有量は、体積型ホログラム記録用感光性組成物中の固形分100重量部に対して、0.005〜5重量部が好ましく、0.01〜5重量部がより好ましい。
必要に応じて用いられるバインダー樹脂の含有量は、体積型ホログラム記録用感光性組成物中の固形分100重量部に対して、10〜80重量部が好ましく、20〜70重量部がより好ましい。
なお、固形分とは、溶媒以外のすべての成分をいう。
本実施形態に係る体積型ホログラム記録体は、シアニン系色素の共役電子系の一部が切断された反応結果物と、スルホン酸塩系酸発生剤の分解物と、光重合性化合物の重合物とを含み、ホログラムが記録されたホログラム層を、基材上に備えたことを特徴とする。
体積型ホログラム記録体20は、通常、ホログラムを記録するためのホログラム記録層を基材上に備えた体積型ホログラム記録用感光性基板に、ホログラムを記録することにより得られる。
また、当該ホログラム層において、スルホン酸塩系酸発生剤の分解物は、シアニン系色素の反応結果物にイオン結合していても良い。
本実施形態に係る体積型ホログラム記録体において、基材は、用途に応じて従来公知の基材を適宜選択して用いることができる。
体積型ホログラム記録体を光学素子用途に用いる場合には、上記基材としては、通常、透明樹脂基材又はガラス基材を用いる。
透明基材はガラス基材であっても良く、ロール状薄型を用いても良い。
本実施形態に係る体積型ホログラム記録体の製造方法は、シアニン系色素の共役電子系の一部が切断された反応結果物と、スルホン酸塩系酸発生剤の分解物と、光重合性化合物の重合物とを含み、ホログラムが記録されたホログラム層を、基材上に備えた、体積型ホログラム記録体の製造方法であって、
ホログラム記録波長に吸収を持ち、励起して光重合開始剤にエネルギーを渡し得る増感色素であるシアニン系色素と、光重合開始剤と、光重合性化合物と、ホログラム記録波長光照射に不活性であり熱により酸を発生するスルホン酸塩系酸発生剤とを含有する、ホログラムを記録するためのホログラム記録層を基材上に備えた、体積型ホログラム記録用感光性基板を準備する工程と、
前記ホログラム記録層に、少なくとも、ホログラム記録波長光を照射することにより、体積型ホログラムを記録するホログラム記録工程と、
前記ホログラム記録工程後に、前記ホログラム記録層を加熱することにより、前記シアニン系色素の電子共役系の一部を切断する消色工程とを有することを特徴とする。
以下、本実施形態に係る体積型ホログラム記録体の製造方法の各工程について順に説明する。
まず、基材上にホログラム記録層を備えたホログラム記録用感光性基板を準備する。ホログラム記録層は、例えば、前記本実施形態に係る体積型ホログラム記録用感光性樹脂組成物を溶媒に溶解乃至分散して塗布液として、基材上に塗工し、溶媒を乾燥除去することにより、形成することができる
前記ホログラム記録層に、ホログラム記録波長光を照射することにより、体積型ホログラムを記録する。ホログラム記録波長光の照射方法は、従来公知の方法の中から適宜選択して用いることができる。例えば、ホログラム記録層はレーザー光やコヒーレンス性の優れた光、例えば波長300〜1200nmの光による通常のホログラフィー露光装置によって前記光重合性化合物を重合させてその内部に干渉縞が記録される。
ホログラムの記録に用いられる記録波長光の光源としては、コヒーレンス性に優れる可視光レーザー光を用いることが好ましく、例えばアルゴンイオンレーザー(458nm、488nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(647.1nm)、ヘリウム−ネオンレーザー(633nm)、YAGレーザー(532nm)等を使用することができる。
また、干渉露光による屈折率変調量を促進し、重合反応を完結させるために、干渉露光後に紫外線による全面露光や加熱等の処理を適宜行うことができる。
前記ホログラム記録層を熱や赤外線で処理することで回折効率、回折光のピーク波長、半値巾などを変化させることも出来る。
なお、ホログラム記録工程において加熱処理を用いる場合には、当該加熱処理においては前記スルホン酸塩系酸発生剤が酸を発生しないように、加熱温度及びスルホン酸塩系酸発生剤を適宜選択する。
当該加熱処理に必要な温度は、通常40〜150℃であり、好ましくは60〜100℃である。後述の消色工程の加熱温度より低温で加熱し、スルホン酸塩系酸発生剤が酸を発生しない温度に設定する。
前記ホログラム記録工程後に、前記ホログラム記録層を加熱することにより、前記シアニン系色素の電子共役系の一部を切断して、当該シアニン系色素を消色する。
加熱温度は、前記スルホン酸塩系酸発生剤が酸を発生し得る温度であればよく、適宜調整されるものであるが、具体的には60〜200℃であることが好ましく、100〜180℃であることがより好ましい。加熱時間は、特に限定されないが、5分〜3時間であることが好ましく、10分〜1時間であることがより好ましい。
当該ホログラム層において、スルホン酸塩系酸発生剤の分解物は、シアニン系色素の反応結果物にイオン結合していても良く、シアニン系色素の共役電子系の一部が切断され、スルホン酸塩系酸発生剤の分解物がイオン結合している反応結果物として、スルホン酸塩系酸発生剤の分解物が含まれていても良い。
(1)体積型ホログラム記録用感光性組成物の製造
下記組成の体積型ホログラム記録用感光性組成物1を作製した。なお、下記熱酸発生剤Aは可視光に対して不活性であり、熱により酸を発生する。
<体積型ホログラム記録用感光性組成物1の組成>
・ポリ酢酸ビニル(ポリスチレン換算重量平均分子量10万):100重量部
・ジフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート(大阪ガス製、BPEFA):80重量部
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製、EX212):70重量部
・ジアリールヨードニウム塩(ローディア製、PI2074):5重量部
・下記化学式(5)で表わされるシアニン色素(A−1):0.5重量部
・熱酸発生剤A(CF3SO3 −NR4 +;Rはアルキル基又はフェニル基、楠本化成製、TAG2689):0.2重量部
・メチルエチルケトン(MEK):50重量部
・1−ブタノール:50重量部
(1)で得られた体積型ホログラム記録用感光性組成物1を、38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ製ルミラーT−60)上にアプリケーターを用いて、乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗工及び乾燥してホログラム記録層とし、実施例1の体積型ホログラム記録用感光性基板1を得た。
(2)で得られた実施例1の体積型ホログラム記録用感光性基板のホログラム記録層側をミラーにラミネートし、体積型ホログラム記録用感光性基板のPET側から600nmのレーザー光を60mJ/cm2入射して、干渉露光を行い、体積型ホログラムを記録した。その際、光線の入射角は、ホログラム記録用感光性基板の基板面の法線方向から45度の角度とした。
次いで、紫外線全面照射を行って、ホログラム記録層を固定し、干渉縞が記録されたホログラム記録層を有する体積型ホログラム記録体を得た。
得られた体積型ホログラム記録体を120℃で1時間、オーブンで加熱して、実施例1の体積型ホログラム記録体を得た。
(1)体積型ホログラム記録用感光性組成物の製造
実施例1の体積型ホログラム記録用感光性組成物において、シアニン色素(A−1)を用いる代わりに、下記化学式(6)で表わされるシアニン色素(A−2)を用いた以外は、実施例1の体積型ホログラム記録用感光性組成物と同様にして、体積型ホログラム記録用感光性組成物2を作製した。
実施例1の体積型ホログラム記録用感光性組成物1の代わりに、(1)で得られた体積型ホログラム記録用感光性組成物2を用い、600nmのレーザー光の代わりに、532nmのレーザー光を用いてホログラム記録層を形成した以外は、実施例1と同様にして、体積型ホログラム記録用感光性基板2の製造を行った。
実施例1の体積型ホログラム記録用感光性基板1の代わりに、(2)で得られた体積型ホログラム記録用感光性基板2を用いて、体積型ホログラムを記録した以外は、実施例1と同様にして、体積型ホログラム記録体2を得た。
(1)体積型ホログラム記録用感光性組成物の製造
実施例1の体積型ホログラム記録用感光性組成物において、シアニン色素(A−1)を用いる代わりに、下記化学式(7)で表わされるシアニン色素(A−3)を用いた以外は、実施例1の体積型ホログラム記録用感光性組成物と同様にして、体積型ホログラム記録用感光性組成物3を作製した。
実施例1の体積型ホログラム記録用感光性組成物1の代わりに、(1)で得られた体積型ホログラム記録用感光性組成物3を用い、600nmのレーザー光の代わりに、460nmのレーザー光を用いてホログラム記録層を形成した以外は、実施例1と同様にして、体積型ホログラム記録用感光性基板3の製造を行った。
実施例1の体積型ホログラム記録用感光性基板1の代わりに、(2)で得られた体積型ホログラム記録用感光性基板3を用いて、体積型ホログラムを記録した以外は、実施例1と同様にして、体積型ホログラム記録体3を得た。
(1)体積型ホログラム記録用感光性組成物の製造
実施例1の(1)において、熱酸発生剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、比較体積型ホログラム記録用感光性組成物1を得た。
実施例1の体積型ホログラム記録用感光性組成物1の代わりに、(1)で得られた比較体積型ホログラム記録用感光性組成物1を用いて、ホログラム記録層を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較体積型ホログラム記録用感光性基板1の製造を行った。
実施例1の体積型ホログラム記録用感光性基板1の代わりに、(2)で得られた比較体積型ホログラム記録用感光性基板1を用いて、体積型ホログラムを記録した以外は、実施例1と同様にして、比較体積型ホログラム記録体1を得た。
(1)体積型ホログラム記録用感光性組成物の製造
実施例2の(1)において、熱酸発生剤を用いなかった以外は、実施例2と同様にして、比較体積型ホログラム記録用感光性組成物2を得た。
実施例2の体積型ホログラム記録用感光性組成物2の代わりに、(1)で得られた比較体積型ホログラム記録用感光性組成物2を用いて、ホログラム記録層を形成した以外は、実施例2と同様にして、比較体積型ホログラム記録用感光性基板2の製造を行った。
実施例2の体積型ホログラム記録用感光性基板2の代わりに、(2)で得られた比較体積型ホログラム記録用感光性基板2を用いて、体積型ホログラムを記録した以外は、実施例2と同様にして、比較体積型ホログラム記録体2を得た。
(1)体積型ホログラム記録用感光性組成物の製造
実施例3の(1)において、熱酸発生剤を用いなかった以外は、実施例3と同様にして、比較体積型ホログラム記録用感光性組成物3を得た。
実施例3の体積型ホログラム記録用感光性組成物3の代わりに、(1)で得られた比較体積型ホログラム記録用感光性組成物3を用いて、ホログラム記録層を形成した以外は、実施例3と同様にして、比較体積型ホログラム記録用感光性基板3の製造を行った。
実施例3の体積型ホログラム記録用感光性基板3の代わりに、(2)で得られた比較体積型ホログラム記録用感光性基板3を用いて、体積型ホログラムを記録した以外は、実施例1と同様にして、比較体積型ホログラム記録体3を得た。
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた体積型ホログラム記録体の両面に、それぞれ接着剤(アロニックスLCR0628A(東亞合成製))を用いてガラスを接着し、またその周囲もUV硬化剤(アロニックスLCR0628A(東亞合成製))で封止し、素子を作製した。得られた素子について、分光光度計(島津製作所製UVPC−3100)を用いて、透過率測定を行い、分光透過率曲線を得た。得られた分光透過率曲線から、用いたシアニン系色素のピーク波長における透過率を求め、透過率の評価に用いた。また、得られた分光透過率曲線から下記の方法により屈折率変調量(Δn)を算出した。結果を表1〜3に示す。
上記により得られた分光透過率曲線において、ピーク透過率Tp及びベース透過率Tbを求め、下記式(1)により、回折効率ηを得た。
回折効率η = (Tb−Tp)/Tb (%) 式(1)
次いで、式(1)で得られた回折効率ηの値を用いて、Kogelnik理論式(下記式(2))によりΔnを算出した。
η = tanh2(π(Δn)d/λcosθ0) 式(2)
(式(2)中、dはホログラム記録層の膜厚(μm)、λは記録レーザー波長(nm)、θ0は記録レーザー光のホログラム記録層への入射角度である。)
実施例2及び比較例2で得られた体積型ホログラム記録体の素子に、高出力(2W/mm2)のレーザーを照射しながらサーモグラフィー(NEC AVIO 赤外線テクノロジー社製、サーモギアG100)で素子の温度を観察した。もっとも高温となった部分の温度を表4に示す。
実施例1と比較例1を比較すると、屈折率変調量(Δn)はほぼ同等であった。これは、ホログラム記録波長光照射に不活性であり熱により酸を発生するスルホン酸塩系酸発生剤の有無が、ホログラム記録時の感度に影響しないことを示している。一方、波長620nmの光の透過率は実施例1のほうが高かった。これは、ホログラム記録層を加熱したことにより発生した酸によりシアニン色素が消色したものと推測される。実施例2と比較例2との比較や、実施例3と比較例3との比較においてもシアニン色素と、ホログラム記録波長光照射に不活性であり熱により酸を発生するスルホン酸塩系酸発生剤との組み合わせにより、Δnを低下させることなく、ホログラム記録体中のシアニン色素残留量を低下させることが可能であることが明らかとなった。
シアニン色素の残留量が少ない実施例2のホログラム記録体は、比較例2と比較して、レーザー照射時においても温度上昇が抑制されることが明らかにされた。実施例2のホログラム記録体は、光を吸収しにくく、耐光性に優れていることが明らかとなった。
2 ホログラム記録層
3 ホログラムが記録されたホログラム層
10 体積型ホログラム記録用感光性基板
20 体積型ホログラム記録体
Claims (5)
- ホログラム記録波長に吸収を持ち、励起して光重合開始剤にエネルギーを渡し得る増感色素であるシアニン系色素と、光重合開始剤と、光重合性化合物と、ホログラム記録波長光照射に不活性であり熱により酸を発生するスルホン酸塩系酸発生剤とを含有する、体積型ホログラム記録用感光性組成物。
- 前記スルホン酸塩系酸発生剤が、ハロゲン化アルキルスルホン酸を発生する、請求項1に記載の体積型ホログラム記録用感光性組成物。
- 前記スルホン酸塩系酸発生剤が、第4級アンモニウム塩を含む、請求項1又は2に記載の体積型ホログラム記録用感光性組成物。
- シアニン系色素の共役電子系の一部が切断された反応結果物と、スルホン酸塩系酸発生剤の分解物と、光重合性化合物の重合物とを含み、ホログラムが記録されたホログラム層を、基材上に備えた、体積型ホログラム記録体。
- ホログラム記録波長に吸収を持ち、励起して光重合開始剤にエネルギーを渡し得る増感色素であるシアニン系色素と、光重合開始剤と、光重合性化合物と、ホログラム記録波長光照射に不活性であり熱により酸を発生するスルホン酸塩系酸発生剤とを含有する、ホログラムを記録するためのホログラム記録層を基材上に備えた、体積型ホログラム記録用感光性基板を準備する工程と、
前記ホログラム記録層に、少なくとも、ホログラム記録波長光を照射することにより、体積型ホログラムを記録するホログラム記録工程と、
前記ホログラム記録工程後に、前記ホログラム記録層を加熱することにより、前記シアニン系色素の電子共役系の一部を切断する消色工程とを有する、
シアニン系色素の共役電子系の一部が切断された反応結果物と、スルホン酸塩系酸発生剤の分解物と、光重合性化合物の重合物とを含み、ホログラムが記録されたホログラム層を、基材上に備えた、体積型ホログラム記録体の製造方法。
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