JP2014133676A - 燃焼灰の処理方法及びセメントの製造方法 - Google Patents

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【課題】燃焼灰を用いる際に、セメント製造設備に好ましくない影響を与える燃焼灰中のバナジウムを簡便に除去できる効率的な燃焼灰の処理方法、及び当該処理方法により処理された燃焼灰を原料としたセメントの製造方法を提供する。
【解決手段】セメント製造に使用する燃焼灰の処理方法であって、前記燃焼灰とキルンダストとを別々に、又は、同時に、水もしくは水溶液中に添加して水洗処理を施す水洗工程と、水洗処理後にろ過をするろ過工程と、を順次含み、前記燃焼灰及び前記キルンダストの合計添加量に対する前記キルンダストの添加量を3〜35質量%とする燃焼灰の処理方法、及び当該燃焼灰の処理方法により処理された燃焼灰を原料の一部とするセメントの製造方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、セメント製造に使用する燃焼灰の処理方法及び当該処理方法により処理された燃焼灰を原料としたセメントの製造方法に関する。
近年セメント製造設備においては、重油燃焼灰、建設発生土、汚泥、煤塵、食品系廃棄物、廃プラスチック等の廃棄物の有効利用を図るため、これらが原燃料として活用されている。しかし、セメント製造原単位に占める廃棄物系原燃料の増加に伴い、これらの廃棄物に含まれる微量成分により、セメント製造設備の操業状態が不安定となることがあった。
例えば、重油燃焼灰中のバナジウムの濃度が高いと、高温で起こる金属腐食(高温腐食)が生じ、セメント製造設備の操業に悪影響を与えてしまう。
ここで、重油燃焼灰中のバナジウムを除去する方法として、非特許文献1では、過酸化水素によりバナジウムを酸化し浸出させこれを抽出分離し、次に、ニッケル等を回収する方法が提案されている。
また非特許文献2では、水酸化ナトリウム及び塩酸によるリーチング等によってバナジウムを除去する方法が提案されている。
第12回廃棄物学会研究発表会講演論文集2001 503ページ 重油系燃焼灰からのバナジウムおよびニッケルを回収するプロセス 産業技術総合研究所 金属資源レポート2011年9月号 48ページ 特集 バナジウム資源の供給ポテンシャル (3)重油燃焼灰からのバナジウム回収
しかしながら、非特許文献1及び2のいずれの方法でも、その工程が複雑化することがあり生産性の向上という観点からはさらなる改良が必要であった。
以上から本発明は、燃焼灰を用いる際に、セメント製造設備に好ましくない影響を与える燃焼灰中のバナジウムを簡便に除去できる効率的な燃焼灰の処理方法、及び当該処理方法により処理された燃焼灰を原料としたセメントの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、燃焼灰にキルンダストを添加して所定の処理を行うと、燃焼灰中のバナジウムを簡便に除去できることを見出し本発明に想到した。すなわち、本発明は下記の通りである。
[1]セメント製造に使用する燃焼灰の処理方法であって、前記燃焼灰とキルンダストとを別々に、又は、同時に、水もしくは水溶液中に添加して水洗処理を施す水洗工程と、水洗処理後にろ過をするろ過工程と、を順次含み、前記燃焼灰及び前記キルンダストの合計添加量に対する前記キルンダストの添加量を3〜25質量%とする燃焼灰の処理方法。
[2]前記キルンダスト中の塩素濃度が3質量%以上である[1]に記載の燃焼灰の処理方法。
[3] 前記燃焼灰が重油燃焼灰である[1]又は[2]に記載の燃焼灰の処理方法。
[4] 前記キルンダストが、脱塩ダスト、電気集塵機から回収されたダスト、及びバグフィルターから回収されたダストの少なくともいずれかである[1]〜[3]のいずれかに記載の燃焼灰の処理方法。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の燃焼灰の処理方法により処理された燃焼灰を原料の一部とするセメントの製造方法。
本発明によれば、燃焼灰を用いる際に、セメント製造設備に好ましくない影響を与える燃焼灰中のバナジウムを簡便に除去できる効率的な燃焼灰の処理方法、及び当該処理方法により処理された燃焼灰を原料としたセメントの製造方法を提供することができる。
セメント製造設備の一部を例示する模式図である。
[1.燃焼灰の処理方法]
本発明の燃焼灰の処理方法は、セメント製造に使用する燃焼灰の処理方法であって、所定の水洗工程及びろ過工程をこの順に含むものである。以下、各工程について説明する。
(1)水洗工程:
水洗工程は、燃焼灰とキルンダストとを別々に、又は、同時に、水もしくは水溶液中に添加して水洗処理を施す工程である。
燃焼灰は、バナジウムを含む各種燃焼灰が用いられるが、なかでも重油燃焼灰であることが好ましい。重質燃焼灰は火力発電所や各種のプラントのボイラー等の重質油系燃料から排出される。このような燃焼灰にはバナジウムが含まれておりこれを多量に含むと、既述のような不具合を発生させるが、一方で、有価金属としての利用価値もある。従って、かかる燃焼灰からバナジウムを回収できれば、これを有効活用することもできる。
キルンダストは、脱塩ダスト、電気集塵機から回収されたダスト、及びバグフィルターから回収されたダストの少なくともいずれかであることが好ましい。
脱塩ダストとは、脱塩バイパス装置から得られるダストである。脱塩バイパス装置は、セメントキルンと予熱機との間で揮発と凝縮を繰り返し濃縮した塩素等の揮発性成分を取り除くために、セメントキルンの窯尻部から排ガスを抽気し冷却することにより、塩素等の化合物を主とする揮発性成分を固化させた塩素バイパスダストを生成させ、この塩素バイパスダストを系外に排出することで、塩素をセメントキルン内から除去する装置である。
また、電気集塵機は、比較的低圧損にて微細な塵埃を捕集するもので、排ガス中の微粒子である塵埃を効果的に除去することができればよく、この電気集塵機の替わりに慣性集塵機や遠心力集塵機が用いられることもある。
バグフィルターは、電気集塵機では完全に捕集しきれずに排出されてしまった排ガス中に含まれる微粒子である塵埃、例えば、電気抵抗値が104〜5×1010Ω・cmの範囲外の塵埃、帯電し難い塵埃、非イオン性の塵埃等を捕集するもので、耐熱性材料からなるフィルタが用いられる。
燃焼灰及びキルンダストの合計添加量に対するキルンダストの添加量は、3〜25質量%とし、7〜18質量部とすることが好ましく、8〜11質量部とすることがより好ましい。水洗工程に使用する水溶液は、バナジウムを溶出しイオン状態に保つことができるものであれば特に限定されない。
また、キルンダスト中の塩素濃度が3質量%以上であることが好ましく、7〜30質量%であることがより好ましい。塩素濃度が5質量%以上であることでバナジウムの溶解効率をより高めることができる。塩素濃度はイオンクロマトグラフにより測定することができる。
ここで、キルンダストしては、燃焼灰との反応性や後述の水洗工程における洗浄性を考慮して、少なくとも脱塩ダストを使用することが好ましい。
キルンダスト中にはアルカリ成分(カリウム、ナトリウム、及びカルシウム等)も含まれているので、当該成分の影響により燃焼灰中のバナジウムは容易に水に溶解することができる。また、キルンダストダスト中の塩素も水洗除去されるため、後述のろ過工程を経た沈殿物は、ほとんどそのままセメント製造設備で使用することができる。
水洗処理の方法としては、特に限定されないが、水を充填した攪拌機付き溶解槽、振動篩の上でのシャワリング、トロンメル、骨材用水洗機等が挙げられる。なかでも、水を充填した攪拌機付き溶解槽での水洗処理が好ましい。
また、水洗処理に先立って燃焼灰とキルンダストとは、これらを混合した後に水もしくは水溶液に添加してもよく、あるいは、燃焼灰又はキルンダストを水もしくは水溶液に添加した後、キルンダスト又は燃焼灰をさらに添加してもよい。
混合物を含有する処理液の水洗時のpHは、8〜11とすることが好ましく、9〜11とすることがより好ましく、9.5〜10.5とすることがさらに好ましい。pHを8〜11とすることで、より効率よくバナジウムの溶解を促進することができる。
(2)ろ過工程:
ろ過工程は水洗処理後の混合物をろ過する工程である。ろ過方法については公知の手段を用いることができる。
以上のような工程を経ることで、燃焼灰中のバナジウムの量が低減された燃焼灰原料が製造される。また既述のとおり、それぞれの工程は水洗及びろ過という簡便な操作を主とするため低コスト化を実現することができる。さらに、キルンダストの有効利用という点で効率的なプロセスといえる。
[2.セメントの製造方法]
本発明のセメントの製造方法は、既述の本発明の燃焼灰の処理方法により処理された燃焼灰を原料の一部としてセメントを製造する方法である。以下、本発明のセメントの製造方法を、図1を参照して説明するが本発明は当該説明に限定されるものではない。
図1に示す態様において、キルンダストとしては、セメントキルン3の窯尻部に設けられ塩素を抽気する脱塩パイパス装置(図示略)から排出されるガス、及び、セメント製造設備のサスペンションプレヒータ1の最上段のサイクロン1dから排出される燃焼ガスをスタビライザー5、電気集塵機6、バグフィルター7のいずれか1種または2種以上に導入して捕集されたダストを用いる。
そして、水洗槽8に所定量の新水、例えば水洗する既述の燃焼灰及びキルンダストに対して2〜6重量倍の新水を注水して貯留し、この新水に所定量の燃焼灰及びキルンダストを投入し浸漬攪拌して水洗し、バナジウムを含む水溶性成分を水中に溶出させたスラリー(または水溶液)とする(水洗工程)。
この水洗工程では、バナジウムを含む水溶性成分の溶解速度を高めるために水洗槽8内の温度を40℃以上としてもよい。また、攪拌時間は1〜5時間とすることが好ましいが、長時間の攪拌は、キルンダストに含有するカルシウム等を含む塩が生成して沈殿物が生じることがあるので好ましくない。
また、この水洗工程における処理液のpHは既述のとおりの範囲とすることが好ましい。
次に、ろ過機9に水洗槽8から排出されるバナジウムを含むスラリー(または水溶液)を導入し、フィルタによりケーキ(固形分)とバナジウムを含むろ液に分離する(ろ過工程)。
この分離の際に、ろ過機9内のケーキに残留するバナジウムを含む水溶性成分を、新水で洗浄することが好ましい。この新水を用いた洗浄は、ろ過機9を加圧した状態でケーキに一方向から新水を圧送することにより、少ない水量で効率のよい洗浄を行うことができる。この洗浄のために使用する新水は、水洗されるダスト量に対して0.5〜2.0重量倍が好ましい。
この新水を用いた洗浄により、ケーキに残留するバナジウムを含む水溶性成分を十分に除去することができる。
また、得られたケーキは、含水率が比較的低いことから、直接セメント製造設備に送られ他のセメント原料に混合され、乾燥・粉砕の後、粉末セメント原料としてセメント焼成工程にて使用される。すなわち、他の原料とともに、サスペンションプレヒータ1、仮焼炉2、セメントキルン3、及びクリンカクーラ4を経てセメントクリンカとされる。そして、公知のプロセスを経てセメントが製造される。
以下、本発明を具体的に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1〜4及び比較例1〜3]
下記表1に示す組成の脱塩ダスト及び下記表2に示す組成の重油燃焼灰を脱塩ダストの添加量が下記表3に示す割合となるように混合し混合物を調製した。
4リットルの水道水中に混合物1kgを添加して1時間攪拌することで水洗処理を行った。このときpH計によりpHを測定した(測定値については下記表3に示す)。
Figure 2014133676
Figure 2014133676
その後、磁製のろ過器を使用してろ過処理を行って、ろ液中のバナジウム濃度をICPにより測定し、その溶解率を求めた。結果を下記表3に示す。
Figure 2014133676
1 サスペンションプレヒータ
1d サイクロン
2 仮焼炉
3 セメントキルン
4 クリンカクーラ
5 スタビライザー
6 電気集塵機(EP)
7 バグフィルタ
8 水洗槽
9 ろ過機

Claims (5)

  1. セメント製造に使用する燃焼灰の処理方法であって、
    前記燃焼灰とキルンダストとを別々に、又は、同時に、水もしくは水溶液中に添加して水洗処理を施す水洗工程と、水洗処理後にろ過をするろ過工程と、を順次含み、
    前記燃焼灰及び前記キルンダストの合計添加量に対する前記キルンダストの添加量を3〜25質量%とする燃焼灰の処理方法。
  2. 前記キルンダスト中の塩素濃度が3質量%以上である請求項1に記載の燃焼灰の処理方法。
  3. 前記燃焼灰が重油燃焼灰である請求項1又は2に記載の燃焼灰の処理方法。
  4. 前記キルンダストが、脱塩ダスト、電気集塵機から回収されたダスト、及びバグフィルターから回収されたダストの少なくともいずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃焼灰の処理方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃焼灰の処理方法により処理された燃焼灰を原料の一部とするセメントの製造方法。
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