JP2014120743A - 圧粉成形体、リアクトル、および圧粉成形体の製造方法 - Google Patents

圧粉成形体、リアクトル、および圧粉成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】比透磁率が60以下の圧粉成形体、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】磁性金属粒子の集合体である軟磁性材料と、非磁性粒子の集合体である非磁性材料と、を圧縮成形してなる圧粉成形体であって、圧粉成形体における空孔を含む非磁性の部分が占める割合は30体積%超75体積%以下で、非磁性の部分における非磁性材料を含む非磁性成分が占める割合は30体積%以上で、かつ圧粉成形体の比透磁率は60以下である。圧粉成形体の比透磁率は40以下であることが好ましい。また、非磁性成分としては、ガラス材、樹脂材などを利用することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、電磁部品を構成する磁性コアなどに利用される圧粉成形体とその製造方法、並びにその圧粉成形体を用いたリアクトルに関するものである。
電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品の一つに、リアクトルがある。リアクトルは、ハイブリッド自動車などの車両に搭載されるコンバータに利用される。そのリアクトルは、コイルと、一部がコイルの内部に挿通される磁性コアとの組合体を備える。磁性コアは通常、コイルの内部に挿通させる必要性から、複数の分割コア片を組み合わせて構成される。
上記分割コア片としては、例えば特許文献1に開示される圧粉成形体を用いることができる。特許文献1の圧粉成形体は、軟磁性粉末とガラス粉末(必要に応じてシリコーン樹脂などの添加材)とを混合し、その混合物を圧縮・焼成することで得られる(特許文献1の実施形態などを参照)。この圧粉成形体におけるガラス粉末(添加材を含む)の含有量は全体の2.5質量%以下となっている。ガラス粉末の組成にもよるが、このガラス粉末の含有量を体積換算すると概ね15体積%以下となっており、特許文献1の圧粉成形体は、約250以上の高比透磁率体となっている。
特許文献1の高比透磁率体の圧粉成形体を用いてリアクトルの磁性コアを作製する場合、磁性コアを構成する分割コア片の数を多くして、分割コア片の間に非磁性のギャップ材を介在させて、磁性コアのインダクタンスを調整することが行なわれている。例えば、図5に、ギャップ材31gを用いて磁性コア3’のインダクタンスを調整したリアクトル1’の分解斜視図を示す。このリアクトル1’では、一対のコイル素子2a,2bからなるコイル2と、そのコイル2の内部に挿通される環状の磁性コア3’と、を備え、磁性コア3’は、コイル2の内部に配置される内側コア部(分割コア片)31’,31’と、コイル2から露出する外側コア部(分割コア片)32,32と、を備える。内側コア部31’はさらに複数のコア片31mからなり、各コア片31mの間にはギャップ材31gが介在されている。また、このリアクトル1’では、内側コア部31’とコイル2との間の絶縁を確保するボビン部材51と、内側コア部31’と外側コア部32との間の絶縁を確保する枠状ボビン52と、が用いられている。
特開2009−212385号公報
近年、ハイブリッド自動車などの普及に伴い、リアクトルの生産性を向上させることが望まれている。その生産性の向上にあたって、本発明者らは、比透磁率が60以下の圧粉成形体を作製することを検討した。例えば、比透磁率が60以下の圧粉成形体と、それよりも比透磁率が高い分割コア片と、を組み合わせて磁性コアを作製すれば、ギャップ材の数を減らす、あるいは省略しても、磁性コア全体のインダクタンスの調整を行なうことが可能であると考えられるからである。ギャップ材の数が減れば、その分だけ磁性コア(リアクトル)の部品点数と組み立て工数が減ることは自明である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、比透磁率が60以下の圧粉成形体、およびその製造方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、本発明圧粉成形体を用いたリアクトルを提供することにある。
本発明の圧粉成形体は、軟磁性金属粒子の集合体である軟磁性材料と、非磁性粒子の集合体である非磁性材料と、を圧縮成形してなる圧粉成形体であって、以下の構成を備える。
・圧粉成形体における空孔を含む非磁性の部分が占める割合は30体積%超75体積%以下である。
・非磁性の部分における非磁性材料を含む非磁性成分が占める割合は30体積%以上である。
・圧粉成形体の比透磁率は60以下である。
ここで、非磁性成分は、主として圧粉成形体の原料である非磁性材料に由来するものであるが、圧粉成形体の原料として用意した軟磁性金属粒子(軟磁性材料)の表面に絶縁被膜が形成されていた場合、その絶縁被膜も非磁性成分に含まれる場合もある。
本発明の圧粉成形体は、その比透磁率が60以下の低透磁率体である。そのため、後述する実施形態に示すように、リアクトルの磁性コアの一部に本発明の圧粉成形体を用いることで、磁性コアのインダクタンスを容易に調整でき、磁気飽和し難い磁性コアを備えるリアクトルを作製することができる。そのリアクトルの作製にあたり、磁性コアのインダクタンスを調整するためのギャップ材の数を減らす、あるいは省略することができる。その結果、リアクトルを作製するための部品点数および組み立て工数を低減でき、リアクトルの生産性を高めることができる。
本発明の圧粉成形体の作製方法は、材料準備工程と、混合工程と、圧縮成形工程と、熱処理工程と、を備える。
[材料準備工程]…軟磁性金属粒子の集合体である軟磁性材料と、軟磁性金属粒子よりも平均粒径が小さい非磁性粒子の集合体である非磁性材料と、を用意する。
[混合工程]…軟磁性材料と非磁性材料とを混合する。その際、混合される材料の非磁性成分が10体積%以上50体積%以下となるように調整する。
[圧縮成形工程]…混合工程で得られた混合物を、100〜650MPaの面圧で圧縮成形する。
[熱処理工程]…圧縮成形工程で得られた成形物を、非磁性材料の非磁性粒子同士が結合する温度で熱処理する。
本発明の圧粉成形体の製造方法によれば、本発明の圧粉成形体を作製することができる。
以下、まず初めに本発明の圧粉成形体の製造方法を順次説明し、その後、本発明の圧粉成形体の構成を詳細に説明する。
<圧粉成形体の製造方法>
[材料準備工程]
(軟磁性材料)
用意する軟磁性材料は、軟磁性金属粒子の集合体である。軟磁性金属粒子は、作製される本発明の圧粉成形体においても粒子として存在する。つまり、軟磁性材料(軟磁性金属粒子)は、圧粉成形体においては圧粉成形体の全体にわたって分散している。
軟磁性金属粒子の材質としては、鉄族金属や希土類金属などを挙げることができる。例えば、軟磁性金属粒子に利用される鉄族金属として、Fe(純鉄)や、Fe−Si系合金、Fe−Al系合金、Fe−N系合金、Fe−Ni系合金、Fe−C系合金、Fe−B系合金、Fe−Co系合金、Fe−P系合金、Fe−Ni−Co系合金、及びFe−Al−Siを挙げることができる。
軟磁性金属粒子の平均粒径は、1μm以上200μm以下とすることが好ましい。当該粒子の平均粒径は、複数の粒子(例えば、100個以上)の円相当直径を平均することで求めることができる。軟磁性金属粒子の平均粒径を1μm以上とすることで、粒子の流動性を落とすことなく、作製される圧粉成形体のヒステリシス損の増加を低減できる。また、平均粒径を200μm以下とすることで、作製される圧粉成形体の渦電流損を効果的に低減できる。より好ましい軟磁性金属粒子の平均粒径は、40μm以上150μm以下である。このような軟磁性金属粒子の平均粒径は、圧粉成形体に形成される空孔の割合を調節する要因の一つである。
軟磁性金属粒子の形状は、特に限定されない。真球に近い形状であっても良いし、歪な形状であっても良い。このような軟磁性金属粒子の形状は、圧粉成形体に形成される空孔の割合を調節する要因の一つである。
軟磁性金属粒子の結晶状態も特に限定されず、非晶質の粒子でも良いし、結晶質の粒子でも良い。但し、結晶質の軟磁性金属粒子には、非晶質状態を維持するための製造工程上の制約が無く、経済性に優れるという利点があり、本発明の圧粉成形体の軟磁性材料として好ましい。
軟磁性金属粒子の表面には、絶縁被膜が形成されていても良い。絶縁被膜を形成することで、圧粉成形体における軟磁性金属粒子同士の絶縁を確保し易い。その結果、圧粉成形体を例えばリアクトルの磁性コアに利用した際、磁性コアに生じる渦電流損を効果的に抑制することができる。絶縁被膜としては、リン酸化合物、珪素化合物(シリコーンを含む)、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、あるいは硼素化合物などでできた絶縁被膜を挙げることができる。リン酸化合物としては、リン酸鉄やリン酸マンガン、リン酸亜鉛、リン酸カルシウムなどのリン酸金属塩を利用することができる。なお、この絶縁被膜は、後述するように本発明の圧粉成形体における非磁性成分の一部となる。
(非磁性材料)
非磁性材料は、非磁性粒子の集合体である。非磁性材料の材質は、非磁性であれば特に限定されない。例えば、[1]ガラス材、[2]樹脂材、[3]それ以外の第3材、に分けることができる。もちろん、これら[1]〜[3]を組み合わせて用いても構わない。
非磁性材料の材質としてガラス材を選択する場合を説明する。ガラス材としては、Biを含有するBi系ガラス(例えば、Bi−B−SiO)、Pbを含有するPb系ガラス(例えば、PbO−SiO−B)、あるいはアルカリ系ガラス(例えば、ZnO−B−RO;R=アルカリ金属)などを利用することができる。特に、環境負荷物質のPbを含有しないBi系、アルカリ系の低融点ガラスを選択することが好ましい。
ガラス材でできたガラス粒子の平均粒径は、軟磁性金属粒子の平均粒径よりも小さくする。例えばガラス粒子の平均粒径は、軟磁性金属粒子の平均粒径の1/50〜4/5とすると良い。ガラス粒子の平均粒径の具体的な数値としては、40μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下を挙げることができる。このようなガラス粒子は、圧縮成形時に軟磁性金属粒子の隙間に入り込んで、軟磁性金属粒子同士の絶縁を確保し易い。
その他、ガラス材に求められる物理特性として軟化点を挙げることができる。具体的には、軟化点が750℃以下のガラス粒子が好ましく、軟化点が550℃以下のガラス材がより好ましい。軟化点が750℃以下のガラス材を利用することで、後述する熱処理温度を最高でも800℃程度に抑えることができる。その場合、軟磁性金属粒子の表面にシリコーン(シリカ系無機金属塩)からなる絶縁被膜が形成されていても、その絶縁被膜が熱によって破壊されることを避けることができる。同様に、軟化点が550℃以下のガラス材を利用することで、後述する熱処理温度を600℃程度に抑えることができる。その場合、軟磁性金属粒子の表面に形成される絶縁被膜が、シリコーンに比べて熱に弱いリン酸化合物などであっても、絶縁被膜が熱によって破壊されることを抑制できる。
次に、非磁性材料の材質として樹脂材を選択する場合を説明する。樹脂材としては、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリイミド(例えば、べスペル:デュポン株式会社の登録商標)などを利用することができる。特に、熱硬化性の観点からフェノール樹脂が好ましい。
樹脂材でできた樹脂粒子の平均粒径は、軟磁性金属粒子の平均粒径未満とする。樹脂粒子の平均粒径の具体的な数値としては、200μm未満、好ましくは40μm以下、さらに好ましくは20μm以下を挙げることができる。このような樹脂粒子は、圧縮成形時に軟磁性金属粒子の隙間に入り込んで、軟磁性金属粒子同士の絶縁を確保し易い。
その他、樹脂材に求められる物理特性として軟化点を挙げることができる。具体的には、軟化点が90℃以上の樹脂材が好ましい。軟化点が90℃以上の樹脂材を利用することで、作製された圧粉成形体を使用する際、圧粉成形体が熱によって変形することを抑制できる。例えば、本発明の圧粉成形体の適用対象の一つであるリアクトルでは、その使用時の温度がかなり高くなることがある。そのような高温状態にあっても、軟化点が90℃以上の樹脂材を利用して圧粉成形体を作製すれば、圧粉成形体が変形することを抑制できる。
最後に、非磁性材料の材質としてガラス材・樹脂材以外の第3材を選択する場合を説明する。第3材として利用できるものとしては、シリカやアルミナなどのセラミックス、Al,Mg,Zn,Sn,Cu,Agなどの非磁性金属などを挙げることができる。圧粉成形体の渦電流損を抑制する観点からすれば、非磁性材料は非導電性であることが好ましい。つまり、非磁性材料の材質としてはセラミックスが好適である。また、第3材の粒子の好ましい平均粒径は、樹脂粒子のそれと同じである。
[混合工程]
混合工程では、混合される軟磁性材料と非磁性材料の非磁性成分が、10体積%以上50体積%以下となるように調整する。例えば、軟磁性金属粒子がその表面に絶縁被膜を備えない場合、軟磁性材料と非磁性材料との混合物における非磁性材料の含有量を10体積%以上50体積%以下とする。言い換えると、軟磁性材料と非磁性材料との混合比率(軟磁性材料:非磁性材料)を、体積比で90:10以上、50:50以下とする。一方、軟磁性金属粒子がその表面に絶縁被膜を備え、その絶縁被膜が非磁性である場合、軟磁性材料と非磁性材料との混合物における絶縁被膜の総量と非磁性材料の合計含有量を、10体積%以上50体積%以下とする。絶縁被膜の総量は、絶縁被膜の厚さ、軟磁性金属粒子の表面積に基づいて計算で求めることができる。
上記混合工程における非磁性成分の含有量(非磁性材料の含有量。軟磁性材料が非磁性の絶縁被膜を有する場合は、非磁性材料の含有量+絶縁被膜の含有量。)は、本発明の圧粉成形体の比透磁率を調節する主要因の一つである。圧粉成形体に含まれる非磁性成分の量が多くなるほど圧粉成形体の比透磁率は小さくなる傾向になるので、より低透磁率の圧粉成形体を作製するのであれば、混合工程における非磁性成分の含有量を大きくすれば良い。例えば、非磁性成分の含有量を、10体積%超、20体積%以上、30体積%以上、あるいは40体積%以上とし、圧粉成形体の比透磁率を下げても良い。但し、非磁性材料の材質によっては、非磁性材料の含有量をあまり多くしない方が良い場合がある。例えば、非磁性材料がフェノール樹脂の場合、作製される圧粉成形体におけるフェノール樹脂の含有量が20体積%以上となると、圧粉成形体に割れが生じることがある。そのため、混合工程におけるフェノール樹脂の含有量は、例えば20体積%以下とすることが好ましい。
その他、混合工程においては、軟磁性材料と非磁性材料の他に、内部潤滑剤を混合しても良い。内部潤滑剤を用いることで、次に説明する圧縮成形工程において軟磁性材料と非磁性材料が損傷することを抑制できる。特に、軟磁性金属粒子が絶縁被膜を備える場合、内部潤滑剤によって絶縁被膜の損傷を効果的に抑制できる。なお、本発明の圧粉成形体の製造方法では、非磁性材料を混合するため、非磁性材料の材質によっては非磁性材料自体が内部潤滑剤としての役割を果たし、特別に内部潤滑剤を混合する必要がない場合がある。
内部潤滑剤は、圧縮成形工程の後に行なう熱処理工程において消失する材料であっても良いし、消失せずに圧粉成形体に残存する材料であっても良い。残存する場合、内部潤滑剤が非磁性であれば、内部潤滑剤も非磁性成分として扱う。
内部潤滑剤には、種々の材質のものが利用できる。内部潤滑剤として、例えば、ステアリン酸リチウムや、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、パルミチン酸リチウム、パルミチン酸カルシウム、オレイン酸リチウム、オレイン酸カルシウムなどの金属塩を挙げることができる。また、内部潤滑剤として、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどの脂肪酸アミドや、エチレンビスステアリン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドなどの金属元素を含まないものを利用することもできる。その他、内部潤滑剤として、六方晶系の結晶構造を有する無機潤滑剤、例えば、窒化ホウ素、硫化モリブデン、硫化タングステン、グラファイトなどを利用することもできる。以上列挙した材質の固体潤滑剤は、単独で用いても良いし、複数を組み合わせて用いても良い。
[圧縮成形工程]
混合工程で得られた混合物を圧縮成形し、成形物を得る。圧縮成形を行なう際の面圧は100〜650Paである。この面圧は、特許文献1に記載される圧粉成形体を作製する際の面圧(1200MPa以上)に比べて低い。面圧を低くするほど、成形物における空孔の割合を大きくすることができる、即ち、圧粉成形体に占める非磁性の部分(空孔+非磁性成分)の割合を大きくすることができる。その結果、圧粉成形体の比透磁率を低く抑えることができる。
面圧は、100〜650MPaの範囲で、混合工程における非磁性材料の粒径・材質・含有量に応じて適宜選択すると良い。面圧を適宜選択することで、圧粉成形体における非磁性の部分(空孔+非磁性成分)が占める割合を30体積%超、非磁性の部分における非磁性成分が占める割合を30体積%以上とすることができる。
圧縮成形の際は、金型の内周面に外部潤滑剤を塗布しても良い。この外部潤滑剤としては、内部潤滑剤を液媒に分散させたものを利用することができる。また、外部潤滑剤の液媒が、水などの比較的蒸発に時間を要する物である場合、金型を適宜加熱しておくと、液媒を蒸発させて除去することができる。好ましい金型の温度は、50℃以上100℃未満である。
[熱処理工程]
圧縮成形工程で得られた成形物の熱処理の温度は、混合する非磁性材料の材質によって適宜調整すれば良い。例えば、非磁性材料の軟化温度よりも5〜100℃高くすると良い。また、熱処理時間は15分〜1時間とすると良い。そうすることで、非磁性材料の非磁性粒子同士が結合し、工業製品として十分な強度を備える本発明の圧粉成形体を作製することができる。
熱処理時の雰囲気は特に限定されず、例えば大気雰囲気でも良いし、窒素などの不活性ガス雰囲気でも良い。不活性ガス雰囲気で熱処理を行なえば、圧粉成形体の表面にススなどの汚れが付着することを抑制できる。また、不活性ガス雰囲気で熱処理することで、圧粉成形体に有機成分が含まれる場合に、その有機成分が化学反応を起こすことを抑制できる。
<圧粉成形体>
以上説明した圧粉成形体の製造方法によって得られた圧粉成形体は、磁性の部分と非磁性の部分とに分けることができる。圧粉成形体における非磁性の部分の割合は、30体積%超、好ましくは35体積%以上、より好ましくは40体積%以上である。つまり、圧粉成形体における磁性の部分の割合は、70体積%未満、65体積%以下、60体積%以下である。なお、非磁性の部分の割合の上限値は75体積%、つまり磁性の部分の割合の下限値は25体積%である。
圧粉成形体における磁性の部分と非磁性の部分の体積比は、圧粉成形体の切断面の面積比を測定し、その面積比から計算によっても求めることができる。面積比の測定には画像解析を用いると良い。
[磁性の部分]
磁性の部分は、圧粉成形体の作製の際に用意した軟磁性材料(軟磁性金属粒子)に由来する部分である。より具体的には、軟磁性金属粒子が、粒子の状態を保ったまま圧粉成形体の全体にわたって分散し、圧粉成形体の磁性の部分を形成している。
圧粉成形体における軟磁性金属粒子の平均粒径は、上述した圧縮成形工程においてある程度変形することがあるものの、原料として用意した軟磁性金属粒子の平均粒径と変わらないと考えて良い。即ち、圧粉成形体における軟磁性金属粒子の平均粒径も、1μm以上200μm以下、好ましくは40μm以上150μm以下である。圧粉成形体における平均粒径は、圧粉成形体を切断し、その切断面における複数の粒子の円相当直径を平均することで求めれば良い。測定視野数は3以上、合計測定粒子数は100以上とすることが好ましい。なお、圧縮成形の前後で粒子の平均粒径が保存されるのは、本発明の圧粉成形体の製造方法における圧縮成形工程の面圧が比較的低いからである。
また、軟磁性金属粒子の結晶状態は、原料として用意した軟磁性金属粒子の結晶状態と変わらない場合もあるし、変わる場合もある。用意した粒子が結晶質であれば、圧粉成形体における粒子も結晶質であるし、用意した粒子が非晶質であっても、作製時の熱処理温度が粒子の結晶化温度を超えていれば、圧粉成形体における粒子は結晶質になる。もちろん、用意した粒子が非晶質で、作製時の熱処理温度が粒子の結晶化温度未満であれば、圧粉成形体における粒子は非晶質のままとなる。
[非磁性の部分]
非磁性の部分は、非磁性成分と空孔とからなる。非磁性成分は、原料として用意した非磁性材料(非磁性粒子)に由来する。原料として用意した軟磁性材料が非磁性の絶縁被膜を備える場合、その絶縁被膜も非磁性成分に含まれる。一方、空孔は、圧縮成形時に、粒子間に形成される隙間に由来する。
非磁性の部分における非磁性成分の割合は、30体積%以上である。非磁性成分の割合は、50体積%以上、70体積%以上、90体積%以上とすることができる。非磁性の部分における非磁性成分の割合が高くなるほど、圧粉成形体の強度が高くなる傾向にある。なお、非磁性の部分における非磁性成分の割合は理想的には100体積%であるが、実際上はおよそ95体積%が上限となる。
非磁性の部分における非磁性成分は、非磁性粒子が粒子の状態で存在していることもあれば、粒子でない状態で存在していることもある。非磁性成分における粒子の有無は、非磁性材料(非磁性粒子)の材質に依存して変化する。例えば、非磁性粒子としてガラス粒子や第3材の粒子を選択した場合、圧粉成形体の非磁性成分にガラス粒子や第3材の粒子の粒界が観察され、非磁性成分がガラス粒子や第3材の粒子でできていることが分かる。一方、非磁性粒子として樹脂粒子を選択した場合、非磁性成分に粒界を観察することは難しい。熱処理によって樹脂粒子が溶融結合するからである。もちちん、非磁性粒子としてガラス粒子と樹脂粒子を併用することも考えられる。その場合、ガラス粒子が樹脂によって接着されたような状態になるが、樹脂粒子に由来する部分に粒界を観察することは難しい。
[圧粉成形体の比透磁率]
圧粉成形体の比透磁率は、圧粉成形体に占める非磁性の部分の割合によって変化する。圧粉成形体に含まれる非磁性の部分の割合が大きくなるほど圧粉成形体の比透磁率は小さくなる傾向になるので、より低透磁率の圧粉成形体を作製するのであれば、混合工程における非磁性成分の含有量を大きくし、空孔と非磁性成分とからなる非磁性の部分が占める割合を大きくすれば良い。本発明の圧粉成形体の比透磁率は60以下であるが、圧粉成形体に占める非磁性の部分の割合、および非磁性の部分における非磁性成分の割合を調節することで、当該比透磁率を40以下、20以下、10以下にすることが可能である。
圧粉成形体の比透磁率は、例えば次のようにして求めることができる。まず圧粉成形体と同じ材料で、外径34mm、内径20mm、厚さ5mmのリング状試験片を作製する。この試験片に、一次側300巻き、二次側20巻きの巻線を施して、試験片のB−H初磁化曲線をH=0〜100エルステッド(Oe)の範囲で測定する。この測定には、例えば、理研電子株式会社製BHカーブトレーサ「BHS−40S10K」を使用することができる。そして、得られたB‐H初磁化曲線の勾配(B/H)の最大値を求め、それを圧粉成形体の比透磁率とする。ここでの磁化曲線とは、いわゆる直流磁化曲線である。
以上説明した本発明の圧粉成形体を用いて本発明のリアクトルを作製することができる。本発明のリアクトルとして、コイルと、コイルの内部に挿通される部分を有する磁性コアとの組合体を備えるリアクトルであって、磁性コアの少なくとも一部が本発明の圧粉成形体である形態を挙げることができる。その本発明のリアクトルの一形態として、磁性コアのうち、コイルの内部に配置される内側コア部を本発明の圧粉成形体とした形態を挙げることができる。
本発明の圧粉成形体の非透磁率は、60以下であり、従来の圧粉成形体に比べて低い。そのため、本発明の圧粉成形体を、例えば従来の圧粉成形体と組み合わせて電子部品の磁性体を作製することで、当該磁性体全体のインダクタンスを容易に調整することが可能になる。
実施形態に記載されるリアクトルの概略斜視図である。 実施形態に記載されるリアクトルの概略分解斜視図である。 ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す概略構成図である。 コンバータを備える電力変換装置の一例を示す概略回路である。 従来のリアクトルの概略分解斜視図である。
<実施形態>
本発明の圧粉成形体(試作品α,β)を実際に作製し、その比透磁率を測定した。また、本発明の圧粉成形体の比較として、従来の圧粉成形体(試作品ω)を作製し、その比透磁率を測定した。これら本発明品及び比較品の作製手順と測定手順を以下に説明する。
[試作品αの作製手順]
軟磁性材料および非磁性材料として以下に示すものを用意した(材料準備工程に相当)。
・軟磁性材料…平均厚さ20nmのリン酸化合物の絶縁被膜を有する平均粒径50μmの結晶質純鉄粉
・非磁性材料…平均粒径1μmのフェノール樹脂粉末(軟化点:90〜100℃)
用意した軟磁性材料と非磁性材料とを、体積比で86:14の割合で混合した(混合工程に相当)。混合される材料の非磁性成分(軟磁性材料の絶縁被膜+非磁性材料)は、およそ14体積%であった。混合は、V型混合機を用いて、常温大気雰囲気で30分行なった。
軟磁性材料と非磁性材料の混合物を、面圧250MPaで圧縮成形した(圧縮成形工程)。この面圧は、後述する比較例の試作品ωの圧縮成形圧力よりもかなり低い。
最後に、圧縮成形によって得られた成形物を、150℃×30分、窒素雰囲気で熱処理(焼成)した(熱処理工程)。この熱処理は、主として非磁性材料を構成するフェノール樹脂粒子同士を結合させるために行なうものである。
[試作品βの作製手順]
試作品βの作製手順は、試作品αの作製手順とは以下に示す点が異なる。以下の点以外は、試作品αの作製手順と同じである。
・用意した非磁性材料が、平均粒径7.8μmのアルカリ系ガラス粉末(軟化点:530℃)である。
・軟磁性材料と非磁性材料の混合割合が、体積比で62:38である。混合される材料の非磁性成分(軟磁性材料の絶縁被膜+非磁性材料)は、およそ38体積%であった。
・圧縮成形時の面圧が、550MPaである。
・熱処理条件が、550℃×30分、窒素雰囲気である。
[試作品ωの作製手順]
平均厚さ20nmのリン酸化合物の絶縁被膜を有する平均粒径50μmの結晶質純鉄粉を用意した。また、平均粒径16μmのステアリン酸亜鉛有機複合体からなる内部潤滑剤を用意した。次に、V型混合機を用いて、結晶質純鉄粉と内部潤滑剤(0.6質量%)とを常温大気雰囲気で30分間混合した。得られた混合物を面圧700MPaで圧縮成形した。最後に、圧縮成形によって得られた成形物を、400℃×30分、窒素雰囲気で熱処理した。この熱処理によって内部潤滑剤はほぼ消失した。なお、この熱処理は、高圧で圧縮成形されたことによって結晶質純鉄粉に導入された歪を除去することを目的としたものである。
[試作品の形態的特性]
試作品α,β,ωの緻密度を比較すると、試作品αは78%、試作品βは92%、試作品ωは92%であり、特に試作品βの緻密度は、その圧縮成形時の面厚が試作品ωと比べて低いにも関わらず、試作品ωの緻密度と同等であった。これは、試作品βには、軟磁性材料よりも粒径の小さい非磁性材料が多く含まれていることが理由の一つと考えられる。ここで、緻密度とは、圧粉成形体の体積に対する空孔を除いた実質部分を体積割合で示す指標である。
また、試作品α,β,ωにおける非磁性の部分の体積割合、およびその非磁性の部分に占める非磁性成分と空孔の体積割合を、画像解析によって測定したところ、以下のようになっていた。
・試作品α…
全体に占める非磁性の部分の体積割合=36体積%
非磁性の部分に占める非磁性成分の体積割合=40体積%
非磁性の部分に占める空孔の体積割合=60体積%
・試作品β…
全体に占める非磁性の部分の体積割合=45体積%
非磁性の部分に占める非磁性成分の体積割合=85体積%
非磁性の部分に占める空孔の体積割合=15体積%
・試作品ω…
全体に占める非磁性の部分の体積割合=8体積%
非磁性の部分に占める非磁性成分の体積割合=0体積%
非磁性の部分に占める空孔の体積割合=100体積%
[試作品の磁気的特性]
試作品α、試作品β、および試作品ωの比透磁率はそれぞれ、28、15、および266であった。以上の結果から、本発明の圧粉成形体の製造方法に従う試作品α,βの非透磁率は、従来の圧粉成形体の製造方法に従う試作品ωの非透磁率よりもかなり低く、60以下となっている。
<本発明の圧粉成形体の適用例>
次に、本発明の圧粉成形体をリアクトルの磁性コアに適用した例を図1,2に基づいて説明する。図1はリアクトル1の概略斜視図、図2はリアクトル1に備わる組合体10の概略分解斜視図である。
[リアクトルの全体構成]
図1に示すリアクトル1は、コイル2と磁性コア3との組合体10である。リアクトル1は、組合体10を収納するケースを備える構成であっても良く、その場合にはケース内に配置される組合体10を封止する封止樹脂を設けても良い。このリアクトル1のコイル2は一対のコイル素子2A,2Bを有し、磁性コア3は一対の内側コア部31,31と一対の外側コア部32,32とを備える(特に図2を参照)。このリアクトル1の最も特徴とするところは、本発明の圧粉成形体によって内側コア部31,31を構成したことである。
[コイル]
組合体10(リアクトル1)に備わるコイル2は、図2に示すように、一対のコイル素子2A,2Bと、両コイル素子2A,2Bを連結するコイル素子連結部2rと、を備える。各コイル素子2A,2Bは、互いに同一の巻数、同一の巻回方向で中空筒状に形成され、各軸方向が平行するように横並びに並列されている。本実施形態では、これらコイル素子2A,2Bは接続部の無い一本の巻線を螺旋状に巻回することで形成されており、その巻線をU字状に屈曲させることで上記コイル素子連結部2rが形成されている。もちろん、両コイル素子2A,2Bは、別個の巻線を螺旋状に巻回することで形成しても良く、その場合、例えば、コイル素子2A,2Bの端部同士を圧接や溶接などで接合する。
コイル2は、銅やアルミニウム、その合金といった導電性材料からなる平角線や丸線などの導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被膜を備える被覆線を好適に利用できる。本実施形態では、導体が銅製の平角線からなり、絶縁被膜がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線を利用し、各コイル素子2A,2Bは、この被覆平角線をエッジワイズ巻きにしたエッジワイズコイルである。また、各コイル素子2A,2Bの端面形状を長方形の角部を丸めた形状としているが、端面形状は、円形状など適宜変更することができる。
コイル2の両端部2a,2bは、ターン形成部分から引き延ばされて、図示しない端子部材に接続される。この端子部材を介して、コイル2に電力供給を行なう電源などの外部装置(図示せず)が接続される。
[磁性コア]
組合体10(リアクトル1)に備わる磁性コア3は、各コイル素子2A,2Bの内部に配置される一対の内側コア部31,31と、コイル素子2A,2Bから露出し、内側コア部31,31をその両側から挟み込む一対の外側コア部32,32とを備える。そして、外側コア部32の比透磁率は、内側コア部31の比透磁率よりも高い。このように両コア部31,32の比透磁率を異ならせることで、磁性コア3全体の比透磁率を調整し、磁性コア3を磁気飽和し難くできる。
磁性コア3全体と、磁性コア3を構成する各コア部31,32の好ましい比透磁率は次の通りである。
・磁性コア3全体の比透磁率…10以上60以下
・内側コア部31の比透磁率…5以上60以下
・外側コア部32の比透磁率…50以上500以下
なお、磁性コア3全体の比透磁率は、内側コア部31と外側コア部32との間にギャップ材などの非磁性部材が介在されている場合、その非磁性部材を含めた比透磁率である。
(内側コア部)
磁性コア3を構成する内側コア部31,31は、繋ぎ目がない一本の柱状体であって、上述した本発明の圧粉成形体である試作品α、あるいは試作品βで構成されている。つまり、本例の内側コア部31にはギャップ材が一枚も用いられていない。
ここで、内側コア部31に利用する本発明の圧粉成形体の比透磁率は60以下であることを特徴とし、実際に上記実施形態で作製したアルカリ系ガラスの圧粉成形体の比透磁率は15、フェノール樹脂系の圧粉成形体の比透磁率は28である。つまり、本発明の圧粉成形体は、内側コア部31の好ましい比透磁率を満たす。
この内側コア部31の外周には、ボビン部材51を配置する。ボビン部材51を用いることで、内側コア部31とコイル2の内周面との間の絶縁を確実に確保することができる。なお、ボビン部材51の形状は、図示される形状に限定されるわけではなく、例えば角筒状としても良い。
(外側コア部)
磁性コア3を構成する外側コア部32,32は、略ドーム形状の上面と下面を備える柱状体である。
外側コア部32は、本発明の圧粉成形体とは異なる構成とした。例えば、試作品ωと同様の構成を備える圧粉成形体を採用することができる。その他、軟磁性粉末を含む樹脂からなる磁性粉末混合樹脂、あるいは電磁鋼板を積層した積層鋼板などを外側コア部32として採用することもできる。どのような構成を選択するにしても、外側コア部32の比透磁率が、内側コア部31の比透磁率よりも高くなるように、外側コア部32の構成を決定すると良い。本例では、試作品ωと同様の構成を備える圧粉成形体、即ち比透磁率が266の従来の圧粉成形体を利用した。
外側コア部32と内側コア部31との間には、枠状ボビン52を配置する。枠状ボビン52を用いることで、外側コア部32とコイル2の内周面との間の絶縁を確実に確保することができる。なお、枠状ボビン52の形状は、図示される形状に限定されるわけではない。
[磁気特性の結果]
以上説明したリアクトル1によれば、磁性コア3全体の比透磁率が10以上60以下となるリアクトル1を作製することができた。このリアクトル1の磁気特性は、図5を用いて説明した複数のコア片31mと複数のギャップ材31gとを組み合わせて内側コア部31’としたリアクトル1’の磁気特性と同等であった。即ち、本実施形態のリアクトル1は、内側コア部31の作製の際にギャップ材を必要としない分、従来のリアクトル1’と比較して生産性に優れる。リアクトル1を構成する部品点数と、リアクトル1を組み立てるための工数と、が従来構成に比べて少ないからである。
[用途]
上記構成を備えるリアクトル1は、通電条件が、例えば、最大電流(直流):100A〜1000A程度、平均電圧:100V〜1000V程度、使用周波数:5kHz〜100kHz程度である用途、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車載用電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。この用途では、直流通電が0Aのときのインダクタンスが、10μH以上2mH以下、最大電流通電時のインダクタンスが、0Aのときのインダクタンスの10%以上を満たすものが好適に利用できると期待される。
上記リアクトル1を、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両に載置される電力変換装置の構成部品に利用した例を、図3,4に基づいて説明する。
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両1200は、図3に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ(負荷)1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジンを備える。なお、図3では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを備える形態としても良い。
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V〜300V程度のメインバッテリ1210の直流電圧(入力電圧)を400V〜700V程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。また、コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される直流電圧(入力電圧)をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
コンバータ1110は、図4に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトルLとを備え、ON/OFFの繰り返し(スイッチング動作)により入力電圧の変換(ここでは昇降圧)を行う。スイッチング素子1111には、FET,IGBTなどのパワーデバイスが利用される。リアクトルLは、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。このリアクトルLとして、上記実施形態に記載のリアクトルを用いる。軽量で扱い易いこれらリアクトルを用いることで、電力変換装置1100(コンバータ1110を含む)の軽量化を図ることができる。
ここで、上記車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC−DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC−DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC−DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、上記実施形態のリアクトルなどと同様の構成を備え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用することができる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、上記実施形態のリアクトルなどを利用することもできる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本発明の圧粉成形体の用途は、リアクトルの磁性コアに限定されない。例えば、本発明の圧粉成形体を、トランスやチョークコイルに利用しても構わない。
本発明の圧粉成形体は、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車といった車両に搭載される双方向DC−DCコンバータといった電力変換装置の構成部品であるリアクトルに利用することができる。
1,1’ リアクトル
10 組合体
2 コイル
2A,2B コイル素子 2r コイル素子連結部
2a,2b 端部
3,3’ 磁性コア
31,31’ 内側コア部 31m コア片 31g ギャップ材
32 外側コア部
51 ボビン部材 52 枠状ボビン
1100 電力変換装置
1110 コンバータ 1111 スイッチング素子 1112 駆動回路
L リアクトル
1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ 1160 補機電源用コンバータ
1200 車両
1210 メインバッテリ
1220 モータ
1230 サブバッテリ
1240 補機類
1250 車輪

Claims (10)

  1. 軟磁性金属粒子の集合体である軟磁性材料と、非磁性粒子の集合体である非磁性材料と、を圧縮成形してなる圧粉成形体であって、
    圧粉成形体における空孔を含む非磁性の部分が占める割合は30体積%超75体積%以下で、
    前記非磁性の部分における前記非磁性材料を含む非磁性成分が占める割合は30体積%以上で、かつ
    圧粉成形体の比透磁率は60以下である圧粉成形体。
  2. 圧粉成形体の比透磁率は40以下である請求項1に記載の圧粉成形体。
  3. 前記圧粉成形体における前記非磁性成分からなる部分に粒界が存在する請求項1または2に記載の圧粉成形体。
  4. 前記非磁性成分はガラス材を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧粉成形体。
  5. 前記ガラス材は、アルカリ系ガラスである請求項4に記載の圧粉成形体
  6. 前記非磁性成分は樹脂材を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の圧粉成形体。
  7. 前記樹脂材は、フェノール樹脂である請求項6に記載の圧粉成形体。
  8. 前記軟磁性金属粒子は、その表面に絶縁被膜を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の圧粉成形体。
  9. コイルと、前記コイルの内部に挿通される部分を有する磁性コアとの組合体を備えるリアクトルであって、
    前記磁性コアの少なくとも一部が、請求項1〜8のいずれか一項に記載の圧粉成形体からなるリアクトル。
  10. 軟磁性金属粒子の集合体である軟磁性材料と、前記軟磁性金属粒子よりも平均粒径が小さい非磁性粒子の集合体である非磁性材料と、を用意する材料準備工程と、
    前記軟磁性材料と前記非磁性材料とを混合する混合工程と、
    前記混合工程で得られた混合物を圧縮成形する圧縮成形工程と、
    前記圧縮成形工程で得られた成形物を、前記非磁性材料の非磁性粒子同士が結合する温度で熱処理する熱処理工程と、
    を備え、
    前記混合工程では、混合される材料の非磁性成分が10体積%以上50体積%以下となるように調整し、
    前記圧縮成形工程では、100〜650MPaの面圧で圧縮成形する圧粉成形体の製造方法。
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