また、このような支保工の設置装置におけるエレクタおよび吹付装置における吹付ノズルの双方を備える吹付施工装置もある。このような吹付施工装置を用いることにより、トンネル内における支保工の建て込みおよび吹付材料の吹付けを行うことができるので、工期短縮に寄与することができる。
ところが、上記特許文献2に記載されたトンネル内面吹付装置では、1本の吹付ノズルで吹付施工を行うようにしている。このため、トンネルの壁面に対する吹付材料の吹付作業を完了するまでに長時間を要することとなる問題がある。したがって、工期短縮を阻害する原因となることがあるという問題があった。
そこで、本発明の課題は、支保工の建て込み作業および吹付材料の吹付作業に要する時間を短いものとすることにより、工期全体の短縮を図ることができるトンネル内の吹付施工装置および吹付施工方法を提供することにある。
上記課題を解決した本発明に係るトンネル内の吹付施工装置は、トンネル内の施工面に吹付材料を吹き付ける吹付施工を行うトンネル内の吹付施工装置であって、台車である装置本体に取り付けられ、支保工が保持可能とされた一組のエレクタブームと、装置本体に取り付けられ、吹付ノズルが取り付けられた一組の吹付ブームと、バスケットが取り付けられたバスケットブームと、を備え、一組の吹付ブームのうちの一方の吹付ブームがトンネルにおける右側面に対して吹付材料を吹付可能とされているとともに、一組の吹付ブームのうちの他方の吹付ブームがトンネルにおける左側面に対して吹付材料を吹付可能とされている。
本発明に係るトンネル内の吹付施工装置においては、吹付ノズルが取り付けられた一組の吹付ブームによって吹付材料を吹付可能とされている。このため、一組の吹付ブームを用いて吹付材料の吹付を行うことができるので、効率的な吹付作業を行うことができる。しかも、一組の吹付ブームのうちの一方の吹付ブームは、トンネルにおける右側面に対して吹付材料を吹付可能とされているとともに、一組の吹付ブームのうちの他方の吹付ブームは、トンネルにおける左側面に対して吹付材料を吹付可能とされている。一般に、トンネルの断面は対称形となっていることが多い。このため、それぞれのブームで右側面および左側面に対して吹付作業を行うことにより、さらに効率的に吹付作業を行うことができる。その結果、支保工の建て込み作業および吹付材料の吹付作業に要する時間を短いものとすることにより、工期全体の短縮を図ることができる。さらに、一組の吹付ブームが設けられていることから、一方の吹付ブームが故障等によって利用できなくなった場合、他方のブームを用いることにより、全体の吹付を行うこともできる。したがって、吹付ブームの故障による工事の中断を防止することができる。
また、本発明に係るトンネル内の吹付施工装置においては、一組のエレクタブームは、一組の吹付けブームの上方の位置に配置することができる。
ここで、一組の吹付ブームは、一組のエレクタブームのそれぞれ下方位置に配置されている態様とすることができる。
吹付ブームの先端には、吹付ノズルが取り付けられている。この吹付ノズルには、吹付材料を供給するための吹付材料供給ホースが接続されている。吹付材料供給ホースは、吹付ブームにぶら下がる状態で設けられている。このため、吹付ブームを駆動すると、吹付ブームとともに吹付材料供給ホースが振り回される状態となる。このとき、吹付ブームの下方位置にエレクタブームが位置していると、吹付ブームやエレクタブームを駆動させた際に、吹付材料供給ホースがエレクタブームに接触してしまい、吹付ブームやエレクタブームの駆動の障害となりやすくなる。この点、一組の吹付ブームは、一組のエレクタブームのそれぞれ下方位置に配置されていることにより、吹付ブームを駆動しても、吹付材料供給ホースがエレクタブームに接触することを回避することができる。その結果、吹付ブームやエレクタブームを円滑に駆動することができ、作業性の向上に寄与することができる。
また、エレクタブームは、装置本体の側部に配設されている態様とすることができる。
このように、エレクタブームは、装置本体の側部に配設されていることにより、エレクタブームを過度に長くすることなく、作業範囲や吹付範囲を広くすることができる。
さらに、エレクタブームの間に操作部が設けられている態様とすることができる。
このように、エレクタブームは、装置本体の側部に配設されていることにより、装置本体の中央部に広い領域を確保することができる。この装置本体の中央部にエレクタブームを操作する操作部を配置することにより、少人数での操作を行うことができる。
また、エレクタブームを搭載するエレクタブームトラベルが設けられており、エレクタブームトラベルは、装置本体に対して相対的に前後方向に移動可能とされている態様とすることができる。
一組の吹付ブームは、一組のエレクタブームのそれぞれ下方位置に配置されていることから、エレクタブームを装置本体の上部に配置することができる。ここで、エレクタブームトラベルを装置本体に対して相対的に前後方向に移動可能とすることにより、エレクタブームの長さを過度に長くすることなく、作業範囲を広くすることができる。
また、エレクタブームと吹付ブームとの干渉を防止する干渉防止装置が設けられている態様とすることができる。
一組のエレクタブームおよび吹付ブームが設けられていると、これらが移動する際に干渉する可能性が高くなる。ここで、本発明に係る吹付施工装置では、エレクタブームと吹付ブームとの干渉を防止する干渉防止装置が設けられている。このため、エレクタブームと吹付ブームとの干渉を好適に防止することができる。
また、干渉防止装置は、吹付ブームに取り付けられたリミットスイッチを備える態様とすることができる。
このように、干渉防止装置に用いるセンサとしては、リミットスイッチを好適に用いることができる。
さらに、一組の吹付ブームの間にバスケットブームが配設されている態様とすることができる。
このように、バスケットブームが設けられている吹付施工装置に対しても、好適に一組のエレクタブームおよび吹付ブームが設けられたものを用いることができる。
また、バスケットブームが、上下方向に移動可能とされている態様とすることができる。
このように、バスケットブームが、上下方向に移動可能とされていることにより、吹付作業を行う際に、吹付作業の邪魔にならない下方位置にバスケットブームを移動させることができる。
他方、上記課題を解決した本発明に係るトンネル内の吹付施工方法は、トンネル内の施工面に吹付材料を吹き付ける吹付施工を行うトンネル内の吹付施工装置を用いて、トンネル内の施工面に対する吹付施工を行うにあたり、トンネル内の吹付施工装置は、台車である装置本体に取り付けられた一組のエレクタブームと、装置本体に取り付けられた一組の吹付ブームと、を備え、一組の吹付ブームのうちの一方の吹付ブームは、トンネルにおける右側面に対して吹付材料を吹付可能とされているとともに、一組の吹付ブームのうちの他方の吹付ブームは、トンネルにおける左側面に対して吹付材料を吹付可能とされており、一方の吹付ブームによってトンネルにおける右側面の吹付施工を行うと同時に、他方の吹付ブームによってトンネルにおける左側面の吹付施工を行うことを特徴とする。
本発明に係るトンネル内の吹付施工方法においては、吹付ノズルが取り付けられた一組の吹付ブームによって吹付材料を吹付施工している。このため、一組の吹付ブームを用いて吹付材料の吹付を行うことができるので、効率的な吹付作業を行うことができる。しかも、一方の吹付ブームによってトンネルにおける右側面の吹付施工を行うと同時に、他方の吹付ブームによってトンネルにおける左側面の吹付施工を行っている。このため、それぞれのブームで右側面および左側面に対して吹付作業を行うことにより、さらに効率的に吹付作業を行うことができる。その結果、支保工の建て込み作業および吹付材料の吹付作業に要する時間を短いものとすることにより、工期全体の短縮を図ることができる。
また、本発明に係るトンネル内の吹付施工方法においては、一組のエレクタブームは、一組の吹付けブームの上方の位置に配置することができる。
ここで、エレクタブームによって支保工を保持し、支保工を保持した状態で一組の吹付ブームによる吹付施工を行う態様とすることができる。
このように、エレクタブームによって支保工を保持し、支保工を保持した状態で一組の吹付ブームによる吹付施工を行うことにより、たとえば、吹付ブームが切羽側にせり出し、吹付施工装置の重心が前方に移動した場合であっても、吹付施工装置の転倒を好適に防止することができる。
また、トンネル内の吹付装置は、一組の吹付ブームの間に配設され、上下方向に移動可能とされたバスケットブームを備えており、バスケットブームを下方位置に移動させ、バスケットブームを下方位置に移動させた状態で一組の吹付ブームによる吹付施工を行う態様とすることができる。
このように、バスケットブームを、下方位置に移動させた状態で吹付施工を行うことにより、バスケットブームを吹付作業の邪魔にならない位置に移動させた状態で吹付施工を行うことができる。
本発明に係るトンネル内の吹付施工装置および吹付施工方法によれば、支保工の建て込み作業および吹付材料の吹付作業に要する時間を短いものとすることにより、工期全体の短縮を図ることができる。
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
図1は、第1の実施形態に係るトンネルの吹付施工装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る吹付施工装置M1は、装置本体である台車1を備えている。また、台車1の前方位置における両側位置には、一組の吹付ブーム2A,2Bが取り付けられており、その外側位置に、一組のエレクタブーム3A,3Bが取り付けられている。さらに、吹付ブーム2A,2Bの間であって、台車1の前方中央位置にバスケットブーム4が取り付けられている。
台車1には、車体10を備えており、車体10には車輪11が取り付けられている。台車1の車体10は、この車輪11によって自走可能とされている。さらに、車体10には、コンクリートを吹付ブーム2A,2Bに供給するためのコンクリートポンプ12A,12Bおよび吹付材料となるコンクリートが投入されるホッパ13A,13Bが設けられている。また、コンクリートポンプ12A,13Bは、油圧ジャッキによる油圧式昇降装置に搭載されている。
吹付ブーム2A,2Bは、吹付ブーム本体21A,21Bを備えており、吹付ブーム本体21A,21Bの先端には多関節アーム22A,22Bが取り付けられている。また、多関節アーム22A,22Bの先端部には、吹付ノズル23A,23Bが取り付けられている。吹付ブーム本体21A,21Bは伸縮可能とされるとともに、前後上下左右方向に移動可能とされている。
また、多関節アーム22A,22Bは、吹付ブーム本体21A,21Bに対して揺動可能に取り付けられているとともに、多数の関節を有している。このため、多関節アーム22A,22Bは種々の方向に向けることができるようになっている。これらの吹付ブーム本体21A,21Bおよび多関節アーム22A,22Bにより、多関節アーム22A,22Bに取り付けられた吹付ノズル23A,23Bは、車体10に対する前後左右上下の各方向に対して移動自在とされている。
吹付ノズル23A,23Bは、コンクリートポンプ12A,12Bと圧送ラインを介して接続されており、コンクリートポンプ12A,12Bを作動させることにより、ホッパ13A,13Bに投入されたコンクリートが吹付ノズル23A,23Bに供給される。吹付ノズル23A,23Bからは、供給されたコンクリートが吹き付けられる。また、吹付ノズル23A,23Bによる吹付方向や吹付位置は、吹付ブーム本体21A,21Bおよび多関節アーム22A,22Bによって多様な方向に調整可能とされている。
具体的に、吹付ブーム本体21A,21Bを調整することにより、図2に示すように、台車1に対して近い位置から遠い位置(前後方向)、上方から下方、さらには図3に示すように、左右の種々の位置に移動させることができる。また、多関節アーム22A,22Bを調整することにより、吹付ノズル23A,23Bによる吹付角度も調整可能とされている。
さらに、図4に示すように、右吹付ブーム2Aの最大吹付可能範囲XRは、トンネルTと想定される範囲の右側全域をカバーしている。同様に、左吹付ブーム2Bの最大吹付可能範囲XLは、トンネルTと想定される範囲の左側全域をカバーしている。こうして、右吹付ブーム2Aおよび左吹付ブーム2Bにより、トンネルと想定される範囲の全域にコンクリートを吹付可能とされている。
また、右吹付ブーム2Aの最大吹付可能範囲XRと左吹付ブーム2Bの最大吹付可能範囲XLは、トンネルTを想定される範囲の中央位置でラップしている。また、多関節アーム22A,22Bが水平となる角度に調整されている場合には、それぞれの吹付可能範囲Xl,Xrは、最大吹付可能範囲XR,XLよりも狭い範囲とされている。
エレクタブーム3A,3Bは、エレクタブーム本体31A,31Bを備えている。エレクタブーム本体31A,31Bは、吹付ブーム本体21A,21Bと同様に伸縮可能とされているとともに、前後上下左右方向に移動可能とされている。さらに、エレクタブーム本体31A,31Bの先端部には、保持アーム32A,32Bが揺動可能に取り付けられている。
また、保持アーム32A,32Bの先端には、支保工を把持する把持部材33A,33Bが取り付けられている。これらのエレクタブーム本体31A,31Bおよび保持アーム32A,32Bにより、保持アーム32A,32Bに取り付けられた把持部材33A,33Bは、車体10に対する前後左右上下の各方向に対して移動自在とされている。
バスケットブーム4は、バスケットブーム本体41を備えている。バスケットブーム本体41は、吹付ブーム本体21A,21Bと同様に伸縮可能とされているとともに、前後上下左右方向に移動可能とされている。さらに、バスケットブーム本体41の先端部には、バスケット保持アーム42が揺動可能に取り付けられている。
また、バスケット保持アーム42には、作業員等が搭乗可能とされたバスケット43が取り付けられている。これらのバスケットブーム本体41およびバスケット保持アーム42により、バスケット保持アーム42に取り付けられたバスケット43は、車体10に対する前後左右上下の各方向に対して移動自在とされている。
図5に、エレクタブーム本体31A,31Bおよび保持アーム32A,32Bによって移動可能とされる把持部材33A,33Bの揺動可能範囲である把持部材揺動可能範囲Yを示す。また、バスケットブーム本体41およびバスケット保持アーム42によって移動可能とされるバスケット43の移動可能であるバスケット移動可能範囲Zを示す。図5に示すように、把持部材揺動可能範囲Yおよびバスケット移動可能範囲Zはほぼ同じ範囲とされている。したがって、バスケットブーム4では、1つのバスケットブーム4のみでトンネルの全面に届く範囲をバスケット移動可能範囲Zとすることができる。
さらに、吹付ブーム2A,2Bにおける吹付ブーム本体21A,21Bには、図6に示すリミットスイッチ5が取り付けられている。リミットスイッチ5は、エレクタブーム3A,3B側に向かって張り出すループ式ストライカ51およびループ式ストライカ51に接続されるスイッチ本体52を備えている。ループ式ストライカ51に異物、たとえばエレクタブーム3A,3Bが接触して押圧力を検知した際、スイッチ本体52が作動する。
リミットスイッチ5は、図示しない制御装置に接続され、制御装置は、やはり図示しない警報装置や動作停止装置に接続されている。リミットスイッチ5は、スイッチ本体52は作動した際に、干渉信号を制御装置に送信する。制御装置では、干渉信号を受信した際に、警報装置から警報を出力したり、動作停止装置によって吹付ブーム2A,2Bやエレクタブーム3A,3Bの動作を規制させたりする。こうして、吹付ブーム2A,2Bやエレクタブーム3A,3Bの動作を規制すること等によって、吹付ブーム2A,2Bとエレクタブーム3A,3Bとの干渉を防止する。
さらに、吹付施工装置M1における吹付施工を行う際には、吹付施工装置M1に対して急結剤を供給する図7にその構成を示す急結剤台車6が隣接される。図7に示すように、急結剤台車6は、水タンク61、液体急結剤タンク62、および粉体急結剤供給装置63を備えている。これらの水タンク61および液体急結剤タンク62は、液体圧送ライン64Aを介してスラリー化ノズル65に接続される。さらに、粉体急結剤供給装置63は、粉体圧送ライン64Bを介してスラリー化ノズル65に接続される。液体圧送ライン64Aには、液体圧送ポンプ66が設けられている。
水タンク61には、水が貯蔵されており、液体急結剤タンク62には液体急結剤が貯蔵されている。液体圧送ポンプ66を作動させることにより、水タンク61に貯蔵される水や液体急結剤タンク62に貯蔵される液体急結剤がスラリー化ノズル65に対して供給される。
さらに、粉体急結剤供給装置63には、粉体急結剤が貯蔵されている。また、粉体急結剤供給装置63には、エアコンプレッサ67が接続されており、粉体急結剤供給装置63とエアコンプレッサ67との間にはエアドライヤ68が介在されている。エアコンプレッサ67を作動させることにより、エアドライヤ68から圧縮エアが供給され、圧縮空気によって粉体急結剤がスラリー化ノズル65に供給される。
また、スラリー化ノズル65は、吹付施工装置M1における吹付ノズル23A,23Bに接続される。スラリー化ノズルでは、供給される水や液体急結剤と粉体急結剤とをスラリー化して吹付ノズル23A,23Bに供給する。また、エアコンプレッサ67と液体圧送ライン64Aとの間には、補助エアライン69が設けられており、液体圧送ポンプ66による圧送力の不足分をエアコンプレッサ67によって補助可能とされている。さらに、急結剤台車6には、急結剤制御盤70が設けられている。急結剤制御盤70を操作することにより、急結剤の供給量の調整や供給の開始および終了を操作することができる。
次に、本実施形態に係る吹付施工装置を用いた吹付施工方法について説明する。本実施形態に係る吹付施工は、トンネルの切羽の掘削が進んだ後、切羽近傍まで吹付施工装置M1を移動させた後に開始される。吹付施工装置M1を切羽近傍まで移動させたら、図8〜図10に示すように、吹付施工装置M1の側方に急結剤台車6を移動させて停車させ、その後、ミキサー車7A,7Bを吹付施工装置M1における坑口側に移動させて停車させる。
急結剤台車6の移動が完了したら、急結剤台車6におけるスラリー化ノズル65と吹付ノズル23A,23Bとの接続を行う。その一方、ミキサー車7A,7Bの移動が完了したら、ミキサー車7A,7Bからホッパ13A,13Bに対するコンクリートの供給を開始する。なお、ホッパ13A,13Bに対して、1台のミキサー車からコンクリートを供給する態様とすることもできる。1台のミキサー車でコンクリートを供給することにより、ホッパ13A,13Bに対してコンクリートを効率よく供給することができるとともに、トンネル内に搬入するミキサー車を1台で済ませることができる。1台のミキサー車で2つのホッパ13A,13Bにコンクリートを供給する際には、コンクリート分流装置を好適に用いることができる。
スラリー化ノズル65と吹付ノズル23A,23Bとの接続およびコンクリートの投入が行われている間、吹付施工装置M1では、エレクタブーム3A,3Bによって支保工SをトンネルTの切羽近傍に建て込む。支保工Sは、四半円形をなすH形鋼からなり、2本の支保工を並べることによって略半円形が形成される。支保工Sのうちの一方を右エレクタブーム3Aによって建て込み、他方を左エレクタブーム3Bによって建て込む。
支保工Sの建て込みが済んだら、バスケットブーム4におけるバスケット43を下降させて吹付作業の邪魔とならない位置に移動させる。その後、コンクリートポンプ12A,12Bを作動させることにより、吹付ノズル23A,23Bに対してコンクリートを供給する。さらには、液体圧送ポンプ66およびエアコンプレッサ67を作動させることにより、スラリー化ノズル65から吹付ノズル23A,23Bに対して急結材を供給する。こうして、吹付ノズル23A,23Bからコンクリートおよび急結材を噴出させることにより、トンネルの壁面に対するコンクリートの吹付作業を行う。このとき、エレクタブーム3A,3Bでは、支保工Sを保持したままとしておく。
また、トンネルによっては、支保工の建込を行うことなく吹付作業を行う場合がある。この場合、吹付を行うトンネルの内壁に対して円弧状の吹付定規を建て込む。この吹付定規を用いることにより、吹付作業を行うにあたっての吹付厚さを所望の厚さに調整することができる。吹付定規としては、たとえばφ76mmのガス管用鋼管が用いることができる。
吹付定規は、2本の半円弧状の半吹付定規によって形成される。2本の半吹付定規が、それぞれエレクタブーム3A,3Bによってトンネルの内壁に対して建て込まれ、2本の半吹付定規がトンネル内壁の上端部で接合された吹付定規となる。また、吹付定規は、エレクタブームによってトンネルの内壁に建て込まれた後、トンネルの内壁に固定される。吹付定規がトンネルの内壁に固定された後は、エレクタブーム3A,3Bによる吹付定規の保持を解除する。
コンクリートの吹付作業を行う際には、急結剤台車6における液体圧送ポンプ66およびエアコンプレッサ67を作動させることにより、スラリー化ノズル65を介してスラリー状急結剤を吹付ノズル23A,23Bに供給する。さらには、コンクリートポンプ12A,12Bを作動させることにより、吹付ノズル23A,23Bにコンクリートを供給する。そうして、吹付ノズル23A,23Bから、スラリー状急結剤が混合されたコンクリートを噴出し、トンネルの壁面に吹き付ける。
ここで、コンクリートの吹付を行うにあたり、トンネルTの右側面に対しては右吹付ブーム2Aに設けられた右吹付ノズル23Aからコンクリートを吹き付ける。また、トンネルTの左側面に対しては左吹付ブーム2Bに設けられた左吹付ノズル23Bからコンクリートを吹き付ける。トンネルTの断面は対称形となっていることから、右吹付ノズル23Aおよび左吹付ノズル23Bによって右側面および左側面に対して吹付作業を行うことにより、効率的に吹付作業を行うことができる。
吹付作業を行う際の吹付厚さは、支保工または吹付定規を基準に測定される。さらに、支保工を保持したまま吹付作業を行う場合には、エレクタブーム3A,3Bから離れた位置から、遠隔操作によって吹付ブーム2A,3A等を操作する遠隔吹付などが行われることがある。遠隔吹付を行うことにより、安全性を高めることができる。
また、吹付作業を行っている間、吹付作業の進行に伴って吹付ブーム2A,2Bを上下前後左右に頻繁に移動させる。このとき、吹付ブーム2A,2Bを上下前後左右に頻繁に移動させることから、吹付ブーム2A,2Bとエレクタブーム3A,3Bとが干渉することが考えられる。吹付ブーム2A,2Bとエレクタブーム3A,3Bとが干渉すると、吹付作業の妨げとなったり、装置の損傷につながったりする可能性がある。
ここで、吹付ブーム2A,2Bには、図6に示すリミットスイッチ5が設けられている。吹付ブーム2A,2Bを移動させながら吹付作業を行っているときに、吹付ブーム2A,2Bがエレクタブーム3A,3Bに近づきすぎると、リミットスイッチ5におけるループ式ストライカ51がエレクタブーム3A,3Bに接触し、スイッチ本体52から制御装置に対して干渉信号が送信される。制御装置では、干渉信号を受けて警報を出力し、さらには動作停止装置を作動させて吹付ブーム2A,2Bの作動を停止させる。こうして、吹付ブーム2A,2Bとエレクタブーム3A,3Bとの干渉が防止される。
さらに、吹付ブーム2A,2Bによる吹付作業を行っている間、バスケット43は、バスケットブーム本体41が水平となるときの位置よりも下方位置に移動させられ、吹付ブーム2A,2Bによる吹付作業の邪魔にならないようにされている。このため、吹付ブーム2A,2Bによる吹付作業を円滑に行うことができる。
こうして、吹付作業が済んだら、急結剤台車6およびミキサー車7A,7Bを坑口側に移動させるとともに、吹付施工装置M1も坑口側に移動させる。その後、切羽の掘削を行い、以後、順次掘削から吹付の工程を繰り返す。このようにして、トンネルの構築が完了する。
このように、本実施形態に係るトンネル吹付施工装置および吹付施工方法においては、一組の吹付ブーム2A,2Bによって吹付材料を吹付可能とされている。効率的な吹付作業を行うことができる。しかも、右吹付ブーム2Aは、トンネルにおける右側面に対して吹付施工を行い、左吹付ブーム2Bは、トンネルにおける左側面に対して吹付施工を行っている。このため、断面が対称形となっているトンネルの右側面および左側面に対してそれぞれ吹付作業を行うことができるので、さらに効率的に吹付作業を行うことができる。その結果、支保工の建て込み作業および吹付材料の吹付作業に要する時間を短いものとすることにより、工期全体の短縮を図ることができる。
また、吹付ブーム2A,2Bには、リミットスイッチ5が取り付けられている。このため、吹付ブーム2A,2Bとエレクタブーム3A,3Bとの干渉を好適に防止することができる。さらに、吹付施工装置M1にはバスケットブーム4が設けられており、吹付施工を行う際には、バスケットブーム4に取り付けられたバスケット43を下降させて退避させている。このため、吹付施工を行う際にバスケット43が邪魔にならないようにすることができる。
さらに、支保工Sを設ける場合、吹付ブーム2A,2Bによる吹付施工を行っている際、エレクタブーム3A,3Bによって支保工Sを保持したままとしている。このため、たとえば、吹付ブーム2A,2Bが台車1よりも切羽側にせり出し、重心が前方に移動した場合であっても、吹付施工装置M1の転倒を好適に防止することができる。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図11は、第2の実施形態に係るトンネルの吹付施工装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
図11(a),(b)に示すように、本実施形態に係るトンネルの吹付施工装置M2は、上記第1の実施形態と同様、装置本体である台車8を備えている。台車8の前面における両側位置には、一組の吹付ブーム82A,82Bが取り付けられている。吹付ブーム82A,82Bは、台車8の先端部に固定されたブラケットを介して台車8に対して揺動可能となるように取り付けられている。吹付ブーム82A,82Bは、上記第1実施形態における吹付ブーム2A,2Bと同様に構成されており、吹付ブーム本体21A,21B、多関節アーム22A,22B、および吹付ノズル23A,23Bを備えている。また、吹付ノズル23A,23Bには、吹付材料供給ホース64が接続されている。この吹付材料供給ホース64は、図7に示す液体圧送ライン64Aを構成する部材である。吹付材料供給ホース64は、吹付ブーム本体21A,21Bにぶら下がる状態で設けられている。
一組の吹付ブーム82A,82Bが取り付けられている位置の外側位置には、一組のエレクタブーム83A,83Bが取り付けられている。一組のエレクタブーム83A,83Bは、台車8の先端部に固定されたブラケットを介して台車8に対して揺動可能となるように取り付けられている。エレクタブーム83A,83Bは、上記第1の実施形態と同様、エレクタブーム本体31A,31B、保持アーム32A,32B、および把持部材33A,33Bを備えている。
また、図11(b)に示すように、吹付ブーム82A,82Bは、いずれもエレクタブーム83A,83Bの下方位置に配置されている。さらに具体的には、右吹付ブーム82Aの右上方位置に右エレクタブーム83Aが配置されており、左吹付ブーム82Bの左上方位置に左エレクタブーム83Bが配置されている。
さらに、一組のエレクタブーム83A,83Bの上方位置には、一組のバスケットブーム84A,84Bが設けられている。さらに具体的には、右エレクタブーム83Aの真上位置に右バスケットブーム84Aが配置されており、左エレクタブーム83Bの真上位置に左バスケットブーム84Bが配置されている。バスケットブーム84A,84Bは、上記第1の実施形態と同様、それぞれバスケットブーム本体41A,41B、バスケット保持アーム42A,42B、およびバスケット43A,43Bを備えている。
また、台車8の前後方向略中央位置であって、バスケットブーム84A,84Bの間には、走行運転席85および作業台86が配設されている。走行運転席85には、台車8を走行させるためのアクセルペダルやブレーキペダル、あるいはハンドルなどが設けられている。さらに、走行運転席85の前方位置には、作業台86が設けられている。作業台86には、吹付ブーム82A,82B、エレクタブーム83A,83B、およびバスケットブーム84A,84Bを操作するためのレバー等が設けられている。本実施形態に係るトンネルの吹付施工装置M2は、これらの点以外の構成については、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
以上の構成を有する本実施形態に係るトンネルの吹付施工装置M2は、上記第1の実施形態に係る吹付施工装置M1と同様、効率的な吹付作業を行うことができる。その結果、支保工の建て込み作業および吹付材料の吹付作業に要する時間を短いものとすることにより、工期全体の短縮を図ることができる。
また、本実施形態に係るトンネルの吹付施工装置M2においては、吹付ブーム82A,82Bが備える吹付ノズル23A,23Bに吹付材料供給ホース64が接続されており、吹付材料供給ホース64は吹付ブーム本体21A,21Bにぶら下がる状態で設けられている。このため、たとえば、吹付ブーム82A,82Bの下方位置にエレクタブーム83A,83Bがあると、吹付ブーム82A,82Bやエレクタブーム83A,83Bを駆動する際に、吹付材料供給ホース64がそれらの駆動の障害となりやすくなる。
この点、本実施形態に係るトンネルの吹付施工装置M2にいては、吹付ブーム82A,82Bがエレクタブーム83A,83Bの下方位置に配置されている。このため、吹付ブーム82A,82Bやエレクタブーム83A,83Bを駆動した際に、吹付ブーム82A,82Bやエレクタブーム83A,83Bが吹付ブーム本体21A,21Bにぶら下がる状態で設けられた吹付材料供給ホース64に接触することを回避することができる。その結果、吹付ブーム82A,82Bやエレクタブーム83A,83Bを円滑に駆動することができ、作業性の向上に寄与することができる。
また、バスケットブーム84A,84Bを用いた主な作業としては、支保工組立時の支保工組み付けボルト・ナット取付、タイロットの取付および金網の取付などがある。この点、本実施形態に係るトンネルの吹付施工装置M2においては、2本のバスケットブーム84A,84Bが取り付けられている。このため、上記第1の実施形態に係るトンネルの吹付施工装置M1と比較して、これらの作業を行う際に、他人数の作業員によって作業を行うことができるので、施工性をさらに高いものとすることができる。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図12は、第3の実施形態に係るトンネルの吹付施工装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
図12(a),(b)に示すように、本実施形態に係るトンネルの吹付施工装置M3は、上記第1の実施形態と同様、装置本体である台車9を備えている。台車9の前面における両側端部位置には、一組の吹付ブーム92A,92Bが取り付けられている。吹付ブーム92A,92Bは、台車9の先端部に固定されたブラケットを介して台車9に対して揺動可能となるように取り付けられている。吹付ブーム92A,92Bは、上記第1実施形態における吹付ブーム2A,2Bと同様に構成されており、吹付ブーム本体21A,21B、多関節アーム22A,22B、および吹付ノズル23A,23Bを備えている。また、吹付ノズル23A,23Bには、吹付材料供給ホース64が接続されている。吹付材料供給ホース64は、第2の実施形態と同様、吹付ブーム本体21A,21Bにぶら下がる状態で設けられている。
また、図12(b)に示すように、一組の吹付ブーム92A,92Bが取り付けられている位置の上方位置には、一組のエレクタブーム93A,93Bが取り付けられている。一組のエレクタブーム93A,93Bは、一組の吹付ブーム92A,92Bのそれぞれ真上位置に配置されている。さらに具体的には、右吹付ブーム92Aの真上位置に右エレクタブーム93Aが配置されており、左吹付ブーム92Bの真上位置に左エレクタブーム93Bが配置されている。エレクタブーム93A,93Bは、上記第1の実施形態と同様、エレクタブーム本体31A,31B、保持アーム32A,32B、および把持部材33A,33Bを備えている。
さらに、エレクタブーム93A,93Bは、いずれもエレクタブームトラベル95A,95Bに設けられている。エレクタブームトラベル95A,95Bは、滑走台車および滑走台車が走行するレールを備えている。エレクタブーム93A,93Bは、それぞれエレクタブームトラベル95A,95Bの滑走台車に対して揺動可能に取り付けられている。また、エレクタブームトラベル95A,95Bにおけるレールは、いずれも台車9の上面に敷設されており、台車9の前後方向に延在している。
さらに、台車9の前面における一組の吹付ブーム92A,92Bの上方位置には、バスケットブーム94が設けられている。バスケットブーム94は、台車9の先端部に固定されたブラケットを介して台車9に対して揺動可能となるように取り付けられている。バスケットブーム94は、上記第1の実施形態と同様、それぞれバスケットブーム本体41、バスケット保持アーム42、およびバスケット43を備えている。
また、台車8の前後方向略中央位置であって、エレクタブーム93A,93Bの間には、走行運転席96および作業台97が配設されている。走行運転席96には、台車9を走行させるためのアクセルペダルやブレーキペダル、あるいはハンドルなどが設けられている。さらに、走行運転席96の前方位置には、作業台97が設けられている。作業台97には、吹付ブーム92A,92B、エレクタブーム93A,93B、およびバスケットブーム94を操作するためのレバー等が設けられている。
さらに、台車9の後方位置には、上記第1の実施形態に係る吹付施工装置M1と同様のコンクリートポンプ12A,12Bが設けられている。コンクリートポンプ12A,12Bは、昇降装置98A,98Bに搭載されている。昇降装置98A,98Bは、台座および昇降リンク機構を備えるリンク式昇降装置である。コンクリートポンプ12A,12Bは、昇降装置98A,98Bにおける台座にそれぞれ載置されている。また昇降装置98A,98Bにおける台座は、昇降リンク機構を作動させることによって昇降可能とされている。本実施形態に係るトンネルの吹付施工装置M3は、これらの点以外の構成については、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
以上の構成を有する本実施形態に係るトンネルの吹付施工装置M3は、上記第1の実施形態に係る吹付施工装置M1と同様、効率的な吹付作業を行うことができる。その結果、支保工の建て込み作業および吹付材料の吹付作業に要する時間を短いものとすることにより、工期全体の短縮を図ることができる。
また、本実施形態に係るトンネルの吹付施工装置M3においては、第2の実施形態に係る吹付施工装置M2と同様、吹付ブーム92A,92Bがエレクタブーム93A,93Bの下方位置に配置されている。このため、吹付ブーム92A,92Bやエレクタブーム93A,93Bを駆動した際に、吹付ブーム92A,92Bやエレクタブーム93A,93Bが吹付材料供給ホース64に接触することを回避することができる。その結果、吹付ブーム92A,92Bやエレクタブーム93A,93Bを円滑に駆動することができ、作業性の向上に寄与することができる。
さらに、本実施形態に係るトンネルの吹付施工装置M3においては、エレクタブーム93A,93Bがエレクタブームトラベル95A,95Bに搭載されている。エレクタブーム93A,93Bは、エレクタブームトラベル95A,95Bによって台車9に対して相対的に前後方向に移動可能とされている。このため、エレクタブーム93A,93Bの長さを過度に長くすることなく、作業範囲を広くすることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、一組の吹付ブームおよびエレクタブームとして、それぞれ2本の吹付ブーム2A,2Bおよびエレクタブーム3A,3Bを用いているが、さらに多くの吹付ブームを設ける態様とすることもできる。また、バスケットブーム4を1本のみ設けているが、バスケットブームを複数本設ける態様とすることもできる。さらに、上記実施形態においては、2つのホッパ13A,13Bを設けているが、ホッパを一つのみとすることもできる。
また、第2の実施形態および第3の実施形態における吹付ブームには、第1の実施形態に示すリミットスイッチが設けられていないが、これらを設ける態様とすることもできる。また、第1の実施形態および第2の実施形態では、コンクリートポンプを搭載する昇降装置として油圧式昇降装置を用いているが、第3の実施形態で用いたリンク式昇降装置を用いることもできる。また、第3の実施形態におけるコンクリートポンプを搭載する昇降装置として油圧式昇降装置を用いることもできる。さらに、上記第2の実施形態および第3の実施形態における台車には、幅方向中央部に走行運転席および作業台を配設しているが、その他の位置に配設する態様とすることもできる。