JP2014094501A - 多孔膜積層体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明の目的は、空孔特性に優れ、耐熱性と柔軟性を有し、しかも取扱性及び成形加工性に優れた多孔膜積層体及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】 基材の少なくとも片面に多孔質層が積層されている多孔膜積層体であって、
前記基材は耐熱不織布を含み、
前記多孔質層は、連通性を有する多数の微小孔を有し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmであり、
前記多孔膜積層体の皺の程度が一定値以下であり、
テープ剥離試験により前記基材と前記多孔質層とが界面剥離を起こさないことを特徴とする多孔膜積層体を提供する。
【選択図】なし
【解決手段】 基材の少なくとも片面に多孔質層が積層されている多孔膜積層体であって、
前記基材は耐熱不織布を含み、
前記多孔質層は、連通性を有する多数の微小孔を有し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmであり、
前記多孔膜積層体の皺の程度が一定値以下であり、
テープ剥離試験により前記基材と前記多孔質層とが界面剥離を起こさないことを特徴とする多孔膜積層体を提供する。
【選択図】なし
Description
本発明は、多孔膜積層体及びその製造方法に関する。
さらに詳細には、耐熱不織布を含む基材の少なくとも片面に、連通性を有する多数の微小孔を有する多孔質層が積層されている多孔膜積層体とその製造方法に関する。
さらに詳細には、耐熱不織布を含む基材の少なくとも片面に、連通性を有する多数の微小孔を有する多孔質層が積層されている多孔膜積層体とその製造方法に関する。
不織布を基材とし、不織布の表面に多孔質層を有している積層体として、例えば、特許文献1には、下排水用分離膜が開示されている。不織布として、セルロース繊維、セルローストリアセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維が挙げられており、最も好ましい組み合わせとして、ポリエステル繊維製不織布上にポリフッ化ビニリデン(PVDF)の多孔質層を有している積層体が開示されている。
また、特許文献2には、超高分子量ポリエチレンの焼結多孔質シートとポリエステル不織布が積層されているエアクリーナー用フィルターが開示されている。このフィルターの製造法は以下の段階を含む。
1.超高分子量ポリエチレン粉末を金型に充填し、容器に入れ、容器内を減圧にする。
2.容器内に加熱水蒸気を導入し160℃×6気圧で5時間加熱後、徐冷する。
3.作製した円柱状の焼結多孔質体をシート状に切削した後に延伸して多孔質シートを得る。
4.多孔質シート上にホットメルト粘着剤を塗布し、ポリエステル不織布を貼り合せてラミネートする。
1.超高分子量ポリエチレン粉末を金型に充填し、容器に入れ、容器内を減圧にする。
2.容器内に加熱水蒸気を導入し160℃×6気圧で5時間加熱後、徐冷する。
3.作製した円柱状の焼結多孔質体をシート状に切削した後に延伸して多孔質シートを得る。
4.多孔質シート上にホットメルト粘着剤を塗布し、ポリエステル不織布を貼り合せてラミネートする。
さらに、特許文献3にも、不織布上に多孔質層が積層された積層体が開示されている。
しかしながら、特許文献1記載の積層体の場合、ポリエステルは約80℃にガラス転移温度を持つため、ガラス転移温度以下での使用が好ましく、ポリフッ化ビニリデンは150℃付近に融点を持つため融点以上での使用は困難であり、不織布・多孔質層とも本質的に200℃付近の高温下では使用できないという問題があった。
また、特許文献2記載の積層体の場合、超高分子量ポリエチレンの融点は135℃であるため、100℃を超える温度下での使用は困難であり、ポリエステルも上記したようにガラス転移温度以上での使用は困難であり、不織布・多孔質層とも本質的に200℃付近の高温下では使用できないという問題があった。また、本フィルターの製造法は上述のように非常に手間がかかるという問題があった。さらに、多孔質シートとポリエステル不織布はホットメルト粘着剤により貼り合わされているため透気性が阻害されるという問題もあった。
また、特許文献3記載の積層体の場合、多孔質層を構成する材料として多数列挙された中に、耐熱性であるポリアミドイミドやポリエーテルスルホンも含まれてはいたが、不織布としては実際にはポリエステル不織布を使用しており、やはり本質的に200℃付近の高温下では使用できないという問題があった。
そのため、空孔特性に優れ、耐熱性と柔軟性を有し、しかも取扱性及び成形加工性に優れた多孔膜積層体及びその製造方法が求められている。
従って、本発明の目的は、空孔特性に優れ、耐熱性と柔軟性を有し、しかも取扱性及び成形加工性に優れた多孔膜積層体及びその製造方法を提供することにある。
そこで、本発明者らが、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、耐熱不織布基材の表面上に耐熱多孔質層を積層することにより、優れた空孔特性を有し、耐熱性と柔軟性を備え、しかも十分な強度を有するため、取扱性及び成形加工性に優れた多孔膜積層体が得られることを見いだした。また、耐熱不織布基材によっては、多孔膜積層体に凹凸状の皺が多数発生し、使用に耐えなくなるということを見出し、皺の程度を評価し、良品を選別することを可能として、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
基材の少なくとも片面に多孔質層が積層されている多孔膜積層体であって、
前記基材は耐熱不織布を含み、
前記多孔質層は、連通性を有する多数の微小孔を有し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmであり、
下記皺の程度評価試験によるガラス間の隙間の最大値が1mm以下であり、
下記テープ剥離試験により前記基材と前記多孔質層とが界面剥離を起こさないことを特徴とする多孔膜積層体を提供する。
(皺の程度評価試験)
多孔膜積層体を10cm×10cmの正方形に整形し、そのサンプルを並板ガラスA(縦299mm×横199mm×厚さ5mm)の中央に置き、さらに同形状の並板ガラスB(重量702g)を前記多孔膜積層体の上に置いた際の、並板ガラスAと並板ガラスBとの間の隙間の最大値(mm)を皺の程度を示す指標とした。
(テープ剥離試験)
多孔膜積層体の多孔質層表面にマスキングテープ[寺岡製作所社製、商品名「フィルムマスキングテープNo.603(#25)」、幅24mm]を貼り、直径30mm、200gf荷重のローラーで圧着した後、引張試験機を用いて剥離速度50mm/分でT型剥離を行う。
基材の少なくとも片面に多孔質層が積層されている多孔膜積層体であって、
前記基材は耐熱不織布を含み、
前記多孔質層は、連通性を有する多数の微小孔を有し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmであり、
下記皺の程度評価試験によるガラス間の隙間の最大値が1mm以下であり、
下記テープ剥離試験により前記基材と前記多孔質層とが界面剥離を起こさないことを特徴とする多孔膜積層体を提供する。
(皺の程度評価試験)
多孔膜積層体を10cm×10cmの正方形に整形し、そのサンプルを並板ガラスA(縦299mm×横199mm×厚さ5mm)の中央に置き、さらに同形状の並板ガラスB(重量702g)を前記多孔膜積層体の上に置いた際の、並板ガラスAと並板ガラスBとの間の隙間の最大値(mm)を皺の程度を示す指標とした。
(テープ剥離試験)
多孔膜積層体の多孔質層表面にマスキングテープ[寺岡製作所社製、商品名「フィルムマスキングテープNo.603(#25)」、幅24mm]を貼り、直径30mm、200gf荷重のローラーで圧着した後、引張試験機を用いて剥離速度50mm/分でT型剥離を行う。
前記基材は、融点(融点を持たない場合は分解温度)250℃以上の物質を60重量%以上含有することが好ましく、80重量%以上含有することがより好ましい。
前記融点(融点を持たない場合は分解温度)250℃以上の物質は、芳香族ポリアミド系樹脂(アラミド系樹脂)、ポリフェニレンサルファイド系樹脂(PPS系樹脂)、液晶性ポリエステル系樹脂(LCP系樹脂)、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂(PEEK系樹脂)、ポリベンゾオキサゾール樹脂(PBO樹脂)、セルロース系繊維、ガラス繊維、及びステンレス繊維からなる群より選択された少なくとも一種であることが好ましく、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、及びセルロース系繊維からなる群より選択された少なくとも一種であることがより好ましい。
前記多孔質層は、高分子溶液を前記基材上へフィルム状に流延した後、凝固液に導き、次いで乾燥に付すことにより前記基材の少なくとも片面に形成されていることが好ましい。また、前記高分子溶液は、高分子成分8〜25重量%、水溶性ポリマー5〜50重量%、水0〜10重量%、及び水溶性極性溶媒30〜82重量%からなる混合溶液であることが好ましい。
前記多孔質層は、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、及びポリエーテルスルホン系樹脂からなる群より選択された少なくとも一種を含むことが好ましい。
前記多孔質層が、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、及びポリエーテルスルホン系樹脂からなる群より選択された少なくとも一種を含み、且つ、
前記基材が、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、及びセルロース系繊維からなる群より選択された少なくとも一種を含むことが好ましい。
前記基材が、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、及びセルロース系繊維からなる群より選択された少なくとも一種を含むことが好ましい。
前記多孔質層の空孔率は30〜80%であることが好ましい。
前記基材の厚みは20〜500μmであることが好ましい。
前記多孔膜積層体の透気度は0.5〜120秒であることが好ましく、0.5〜80秒であることがより好ましく、0.5〜60秒であることがさらに好ましい。
前記多孔膜積層体は、下記高温放置試験における形状変化率が5%以内であることが好ましい。
(高温放置試験)
多孔質層と一体化した積層体を約10cm×10cmの概略正方形に整形し、前記概略正方形の直交する2辺の長さa1、b1を測定し、200℃に調温した恒温槽内に前記積層体を投入し1時間放置してから、前記積層体を取り出し、室温になるまで放冷した後に、前記概略正方形の直交する2辺の長さa2、b2を測定し、下記式を用いて形状変化率を計算した。
a1、a2による形状変化率(%)={|a2−a1|/a1}×100
b1、b2による形状変化率(%)も同様にして求め、これらの値の平均値を、本高温放置試験における形状変化率とした。
なお、|a2−a1|は、(a2−a1)の絶対値を示す。
(高温放置試験)
多孔質層と一体化した積層体を約10cm×10cmの概略正方形に整形し、前記概略正方形の直交する2辺の長さa1、b1を測定し、200℃に調温した恒温槽内に前記積層体を投入し1時間放置してから、前記積層体を取り出し、室温になるまで放冷した後に、前記概略正方形の直交する2辺の長さa2、b2を測定し、下記式を用いて形状変化率を計算した。
a1、a2による形状変化率(%)={|a2−a1|/a1}×100
b1、b2による形状変化率(%)も同様にして求め、これらの値の平均値を、本高温放置試験における形状変化率とした。
なお、|a2−a1|は、(a2−a1)の絶対値を示す。
前記多孔膜積層体は、100〜300℃で使用されるフィルター、分離膜、セパレーター、またはその一部として用いられることが好ましい。
また、本発明は、高分子溶液を基材上へフィルム状に流延した後、凝固液に導き、次いで乾燥に付して基材の少なくとも片面に多孔質層を積層することにより前記多孔膜積層体を得る多孔膜積層体の製造方法を提供する。
前記多孔膜積層体の製造方法において、前記高分子溶液が、高分子成分8〜25重量%、水溶性ポリマー5〜50重量%、水0〜10重量%、及び水溶性極性溶媒30〜82重量%からなる混合溶液であることが好ましい。
本発明の多孔膜積層体は、多数の微小孔を有する多孔質層を有するため柔軟性に優れると共に、優れた空孔特性を有し、しかも該多孔質層は基材に裏打ちされているため、空隙率を有する場合であっても十分な強度を発揮でき、耐折性、取扱性に極めて優れている。本発明によれば、上記特性を有し、膜質が均一な多孔膜積層体を簡易な方法で安定して製造することができる。こうして得られる多孔膜積層体は、上記特性を有するため、高温下で使用されるフィルター、分離膜、セパレーターとして、またはその一部として利用可能である。例えば、液体分離膜、固体分離膜、ガス分離膜、またはその一部として利用可能である。
具体的には、バッグフィルター、耐熱集塵フィルター、空調フィルター、自動車のフィルター(エアクリーナー、オイルクリーナー、室内清浄フィルター、外気取入れフィルター等)等を挙げることができる。また、100〜300℃で使用されるフィルターの例としては、焼却炉若しくは焼成炉のフィルター又はその一部が挙げられ、特にダイオキシン対策等で高温焼却が必要な焼却炉でのバグフィルター、焼成炉で使用される集塵フィルター、高温のオイルのクリーナー等、又はこれらの一部に適しており、特に前記焼成炉がセラミックや半導体の焼成炉である場合に適している。その他にも、燃料電池用電解質膜、回路用基板、放熱材(ヒートシンク、放熱板等)、電池用セパレーター、電磁波シールドや電磁波吸収体等の電磁波制御材、電解コンデンサー、低誘電率材料、耐熱クッション材、インク受像シート、試験紙、絶縁材、断熱材、細胞培養基材、放射線遮蔽マット用材料、吸油材、消防服等の広範囲な基板材料として利用可能である。
本願発明の多孔膜積層体について、詳細を説明する。
[テープ剥離試験]
本発明の多孔膜積層体は、前記テープ剥離試験により、前記基材と前記多孔質層とが界面剥離を起こさない。
本発明の多孔膜積層体は、前記テープ剥離試験により、前記基材と前記多孔質層とが界面剥離を起こさない。
前記テープ剥離試験は、多孔膜積層体の多孔質層表面に24mm幅の寺岡製作所社製マスキングテープ[フィルムマスキングテープNo.603(#25)]を貼り、直径30mm、200gf荷重のローラーで圧着した後、引張試験機を用いた剥離速度50mm/分でのT型剥離により行われる。すなわち、前記基材と前記多孔質層とが、上記テープ剥離試験で界面剥離が起こらない程度の層間密着強度で積層されていることを意味している。
本発明の多孔膜積層体は、上記のように、前記基材と前記多孔質層とが特定の層間密着強度で直接積層された構成を有するため、柔軟性と優れた空孔特性を備える一方、適度な剛性を有するため取扱性が向上している。しかも、多孔質層を構成する高分子成分を広く選択することができるため、多様な分野の材料として適用可能であるという利点がある。前記基材と前記多孔質層との層間密着強度は、各層を構成する素材の種類や界面の物理的特性を適宜設定することにより調整することができる。
[皺の程度評価試験]
本発明の多孔膜積層体は、各種用途で使用するに当たって問題が無い程度の凹凸を有している。凹凸が激しくなると外観上は皺となって現れてくる。凹凸は皺の程度評価試験によってその程度を判定する。多孔質層と一体化した積層体を10cm×10cmの正方形に整形し、そのサンプルを並板ガラスの中央に置き、さらに同形状の並板ガラスをその上に置き、これらのガラス間の隙間の最大値(mm)を皺の程度を示す指標とした。使用した並板ガラスの形状は縦299mm×横199mm×厚さ5mmで、サンプルの上に乗せた方の並板ガラスの重量は702gであった。すなわち、この評価で、凹凸が激しければガラス間の隙間の値は大きくなり、凹凸が少なく平滑な状態であればガラス間の隙間の値は小さくなる。
本発明の多孔膜積層体は、各種用途で使用するに当たって問題が無い程度の凹凸を有している。凹凸が激しくなると外観上は皺となって現れてくる。凹凸は皺の程度評価試験によってその程度を判定する。多孔質層と一体化した積層体を10cm×10cmの正方形に整形し、そのサンプルを並板ガラスの中央に置き、さらに同形状の並板ガラスをその上に置き、これらのガラス間の隙間の最大値(mm)を皺の程度を示す指標とした。使用した並板ガラスの形状は縦299mm×横199mm×厚さ5mmで、サンプルの上に乗せた方の並板ガラスの重量は702gであった。すなわち、この評価で、凹凸が激しければガラス間の隙間の値は大きくなり、凹凸が少なく平滑な状態であればガラス間の隙間の値は小さくなる。
凹凸が激しく皺が発生してしまうと、各種用途に応じた加工ができなくなり、実質使用不可能となる。また、ロールフィルムとして扱うことが不可能となり、実質工業用途での使用は不可能となる。さらに装置に組み込んだ時に隙間が発生し、固定ができなかったり、漏れが発生したりするため、ある一定以下の凹凸の程度にする必要がある。
[基材]
本発明の多孔膜積層体は、基材の少なくとも片面に多孔質層が積層されている構成を有している。前記基材は耐熱不織布を含んでいれば良く(以後「耐熱不織布基材」と称することがある。)、その他の点では特に制限されない。
本発明の多孔膜積層体は、基材の少なくとも片面に多孔質層が積層されている構成を有している。前記基材は耐熱不織布を含んでいれば良く(以後「耐熱不織布基材」と称することがある。)、その他の点では特に制限されない。
前記基材は単層であってもよく、同一又は異なる素材からなる複数の層からなってもよい。前記複数の層は、複数の不織布を必要に応じて接着剤等を用いて積層した積層フィルムであってもよく、コーティング、蒸着、スパッタ等の処理が施されて得られるものでもよい。
前記基材は、多孔質層の形成に用いる高分子溶液(塗布液)を塗布した時に、フィルムが溶解したり激しく変形したりする等の膜質の変化が生じないか極めて少ないものが好ましい。具体的には、例えば、後述する耐熱不織布を前記基材全体の60〜100重量%含み、80〜100重量%含むことが好ましく、90〜100重量%含むことがより好ましい。
前記基材には、粗化処理、易接着処理、静電気防止処理、サンドブラスト処理(サンドマット処理)、コロナ放電処理、プラズマ処理、ケミカルエッチング処理、ウォーターマット処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理、酸化処理、紫外線照射処理、シランカップリング剤処理等表面処理が施されていてもよい。
また、上記表面処理を複数組み合わせて行うことも可能である。例えば、前記基材に対し、まず、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理、酸化処理、紫外線照射処理等の何れかの処理を施した後、シランカップリング剤処理を行う方法等を利用できる。前記基材の種類によっては、上記方法は、シランカップリング剤の単独処理と比較して処理が強化される場合がある。前記シランカップリング剤としては、信越化学工業社製やジャパンエナジー社製の製品を挙げることができる。
前記基材の厚みは、例えば、20〜500μm、好ましくは20〜400μm、さらに好ましくは20〜300μmである。厚みが薄くなりすぎると取り扱いが困難になる一方で、厚すぎる場合には柔軟性が低下する場合がある。
前記基材の目付は、強度保持と柔軟性の観点から、例えば、5〜250g/m2、好ましくは5〜200g/m2、さらに好ましくは5〜100g/m2である。
前記基材の密度は、適度な透気性確保の観点から、例えば、0.05〜0.90g/cm3、好ましくは0.10〜0.80g/cm3、さらに好ましくは0.15〜0.70g/cm3である。
前記基材の透気度は30秒以下であることが好ましく、20秒以下であることがより好ましく、10秒以下であることがさらに好ましい。なお、透気度の測定限界は0.1秒程度であるが、前記基材にはその透気度が0.1秒未満であるものも含まれる。
前記基材と前記多孔質層との密着性を向上させる観点から、前記基材における前記多孔質層を積層する側の表面には、例えば、サンドブラスト処理(サンドマット処理)、コロナ放電処理、酸処理、アルカリ処理、酸化処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、ケミカルエッチング処理、ウォーターマット処理、火炎処理、シランカップリング剤処理等の適宜な表面処理を施すことが好ましい。前記シランカップリング剤としては、上記に例示のものを用いることができる。前記表面処理は、複数を組み合わせて施されてもよく、基材によっては、前記シランカップリング剤処理と、その他の処理を組み合わせて施されることが好ましい。
(耐熱不織布)
不織布とは、繊維を配列させ、接着剤あるいは繊維自身の融着力やからみ合いの力によって繊維相互を接合させて得られるシート状のものを指し、いわゆるペーパーも含む概念とする。
不織布とは、繊維を配列させ、接着剤あるいは繊維自身の融着力やからみ合いの力によって繊維相互を接合させて得られるシート状のものを指し、いわゆるペーパーも含む概念とする。
耐熱不織布とは、耐熱性を有する不織布であり、具体的には、融点(融点を持たない場合は分解温度)が250〜1500℃である不織布を指す。前記融点(融点を持たない場合は分解温度)は、250〜660℃であることが好ましく、250〜550℃であることがより好ましい。なお、本明細書における分解温度としては、メーカーや文献により開示されている値を用いることができ、開示が無い場合には、JIS K7120に準ずる熱重量測定において質量が5%減少する温度のことをいうものとする。
前記耐熱不織布としては、市販品を利用できる。例えば、王子特殊紙社製のアラミド不織布(アラミドペーパー、商品名「グラスパー」)、クラレクラフレックス社製のLCP不織布(商品名「ベクルス」)、廣瀬製紙社製のPPSペーパー等が入手可能である。耐熱不織布の基材を構成する樹脂の種類は、耐熱性や耐薬品性等に応じて選択できる。
耐熱不織布を用いた場合、多孔膜積層体に激しい凹凸が発生する場合があるが、その原因として不織布が持つ不均質性に起因することが考えられる。不織布は微細な繊維がランダムに絡み合った構造を持つが、顕微鏡等で微視的に見ると不均質である場合がある。繊維が多い部分やプレスされたりして強く固定された部分は硬いと考えられるが、繊維が少なく空間が多い部分は柔らかいと考えられる。また、耐熱不織布は耐熱性の高い樹脂を用いており、本質的に硬い特徴を持っているため、一般の不織布よりその傾向が高くなり、皺が発生しやすいと考えられる。
また、耐熱不織布への塗布液の浸透性も皺に影響を与えると考えられる。塗布液の浸透性が悪いと片面側に応力が発生し皺の発生が激しくなると考えられる。ある程度塗布液が浸透したほうが、応力が分散され、皺が発生し難くなると考えられる。
このように塗布液が耐熱不織布にある程度浸透するのは好ましいが、浸透しすぎると塗布した反対面に塗布液が到達する場合がある。このこと自体は、品質上特に問題を引き起こさないが、連続製造する場合は、不織布が接触するローラーに塗布液が付着し、好ましくない汚れが発生する可能性がある。そのような場合には、耐熱不織布に粘着性のPETフィルム等を貼り付け、不織布の塗布とは反対の面から塗布液が流れ出ないようにすることで解決できる。最終的にはこの粘着性のフィルムは剥がして除去されるため、工程上の適切な位置で剥離できる程度の粘着性を持つものが好ましい。粘着性のフィルムは市販されているものから適当な粘着力のものを選択することができる。耐熱不織布の材質や物理的な表面状態(繊維の太さ、密度、平滑性等)により、適当な粘着性のフィルムの種類は違い、場合に応じて選択するのが好ましい。
前記耐熱不織布は、融点(融点を持たない場合は分解温度)250℃以上である不織布を60重量%以上含有する不織布であることが好ましく、80重量%以上含有することがさらに好ましい。
融点(融点を持たない場合は分解温度)250℃以上の物質としては、芳香族ポリアミド系樹脂(アラミド系樹脂)、ポリフェニレンサルファイド系樹脂(PPS系樹脂)、液晶性ポリエステル系樹脂(LCP系樹脂)、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂(PEEK系樹脂)、ポリベンゾオキサゾール樹脂(PBO樹脂)、セルロース系繊維、ガラス繊維、及びステンレス繊維からなる群より選択された少なくとも一種を利用できる。
より好ましくは、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、及びセルロース系繊維からなる群より選択された少なくとも一種を利用できる。
前記耐熱不織布は、抄紙法、メルトブロー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、エレクトロスピニング法等の一般的に知られた方法で製造することができる。
現在、一般に入手可能な不織布としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン)やポリエステル系樹脂からなるものが圧倒的に多く、これらは多くの種類があり、コスト的にも安価であるが、耐熱性が低いため、高温下での使用には向いていない。
前記耐熱不織布は高い耐熱性を持つために、例えば200℃付近の温度域でも使用できる。
前記基材として耐熱不織布を用いた場合、該基材表面に高分子溶液を塗布して多孔質層を積層することにより、優れた層間密着強度で積層することができるという利点がある。また、柔軟性と優れた空孔特性を備える一方、適度な剛性を有するため、取扱性を向上する効果を得ることができる。
[多孔質層]
前記多孔質層は、主成分が例えば高分子成分で構成されている。前記高分子成分としては、前記基材を形成可能であれば特に限定されず、前記基材を構成する材料に応じて適宜選択できる。前記高分子成分としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、ポリベンゾチアゾール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂等のプラスチック等が挙げられる。これらの高分子成分は単独で又は2種以上混合して使用してもよく、また、上記樹脂の共重合体(グラフト重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体等)を単独で又は組み合わせて用いることも可能である。さらに、上記樹脂の骨格(ポリマー鎖)を主鎖又は側鎖に含む重合物を用いることも可能である。このような重合物の具体例として、ポリシロキサンとポリイミドの骨格を主鎖に含むポリシロキサン含有ポリイミド等が挙げられる。
前記多孔質層は、主成分が例えば高分子成分で構成されている。前記高分子成分としては、前記基材を形成可能であれば特に限定されず、前記基材を構成する材料に応じて適宜選択できる。前記高分子成分としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、ポリベンゾチアゾール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂等のプラスチック等が挙げられる。これらの高分子成分は単独で又は2種以上混合して使用してもよく、また、上記樹脂の共重合体(グラフト重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体等)を単独で又は組み合わせて用いることも可能である。さらに、上記樹脂の骨格(ポリマー鎖)を主鎖又は側鎖に含む重合物を用いることも可能である。このような重合物の具体例として、ポリシロキサンとポリイミドの骨格を主鎖に含むポリシロキサン含有ポリイミド等が挙げられる。
なかでも、前記高分子成分の好ましい例として、耐熱性があり、熱成形が可能で、機械的強度、耐薬品性、電気特性に優れているポリアミドイミド系樹脂又はポリイミド系樹脂を主成分とするものが挙げられる。ポリアミドイミド系樹脂は、通常、無水トリメリット酸とジイソシアネートとの反応、又は無水トリメリット酸クロライドとジアミンとの反応により重合した後、イミド化することによって製造することができる。ポリイミド系樹脂は、例えば、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との反応によりポリアミック酸を得て、それをさらにイミド化することにより製造することができる。多孔質層をポリイミド系樹脂で構成する場合には、イミド化すると溶解性が悪くなるために、まずポリアミック酸の段階で多孔膜を形成してからイミド化(熱イミド化、化学イミド化等)されることが多い。前記高分子成分の他の好ましい例として、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂を主成分とするものが挙げられる。
一方、樹脂製で耐熱性のあるものとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系多孔質膜も知られているが、これは延伸により引き裂くことにより多孔質化しているため、応力が残っており、高温下では激しく収縮するため使用において多くの制限が生じる。
前記多孔質層の厚みは、例えば1〜500μm、好ましくは1〜400μm、さらに好ましくは1〜300μmである。厚みが薄くなりすぎると安定して製造するのが困難になり、一方厚すぎる場合には透気性が悪くなるという問題がある。
前記多孔質層は、連通性を有する多数の微小孔を有し、該微小孔の平均孔径(=フィルム内部の平均孔径)が0.01〜10μmであるが、好ましくは0.05〜5μmである。平均孔径が上記範囲外である場合には、用途に応じた所望の効果が得られにくい点で空孔特性に劣り、例えばサイズが小さすぎる場合には、透気性の低下、クッション性能の低下、インクの浸透性の低下、絶縁性や断熱性の低下等を引き起こす場合があり、大きすぎる場合にはろ過性能が低下したり、インクが拡散したり、微細な配線を形成しにくくなる場合がある。
前記多孔質層の内部の平均開孔率(空孔率)は、例えば30〜80%、好ましくは40〜80%、さらに好ましくは45〜80%である。空孔率が上記範囲外である場合には、用途に対応する所望の空孔特性が得られにくく、空孔率が低すぎると、透気性が低下したり、誘電率が上がったり、クッション性能が低下したり、インクが浸透しなかったり、断熱性が低下したり、機能性材料を充填しても所望の効果が得られない場合があり、空孔率が高すぎると、強度や耐折性に劣る可能性がある。
前記多孔質層の表面の開孔率(表面開孔率)は、例えば48%以上(例えば48〜80%)であり、好ましくは60〜80%程度である。表面開孔率が低すぎると透過性能が充分でない場合が生じる他、空孔に機能性材料を充填してもその機能が十分に発揮できないことがあり、高すぎると強度、耐折性が低下しやすくなる。
前記多孔質層は、前記基材の少なくとも片面に形成されていればよく、両面に形成されていても良い。
前記多孔質層には、耐薬品性の付与処理が施されていてもよい。その結果、多孔膜積層体に耐薬品性を付与され、多孔膜積層体の多様な利用形態において、溶剤、酸、アルカリ等に接触した場合に、層間剥離、膨潤、溶解、変質等の不具合を避けることができる点で有利である。耐薬品性の付与処理としては、熱、紫外線、可視光線、電子線、放射線等による物理的処理;多孔質層に耐薬品性高分子等を被覆する化学的処理等が挙げられる。
前記多孔質層は、耐薬品性高分子により被覆されていてもよい。このような多孔膜積層体は、例えば多孔質層の表面や内部の微小孔の表面に耐薬品性の被膜が形成され、耐薬品性を有する積層体を構成しうる。ここで、薬品とは、従来の多孔性フィルムを構成する樹脂を溶解、膨潤、収縮、分解して、多孔性フィルムとしての機能を低下させるものとして公知のものが挙げられ、多孔質層及び基材の構成樹脂の種類によって異なり一概に言うことはできないが、このような薬品の具体例として、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ピロリドン、シクロヘキサノン、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロルエタン、テトラヒドロフラン(THF)等の強い極性溶媒;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩;トリエチルアミン等のアミン類;アンモニア等のアルカリを溶解した水溶液や有機溶媒等のアルカリ溶液;塩化水素、硫酸、硝酸等の無機酸;酢酸、フタル酸等のカルボン酸を持つ有機酸等の酸を溶解した水溶液や有機溶媒等の酸性溶液;及びこれらの混合物等が挙げられる。
前記耐薬品性高分子化合物は、強い極性溶媒、アルカリ、酸等の薬品に優れた耐性を有していても良く、例えば、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、アルキド系樹脂、トリアジン系樹脂、フラン系樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ系樹脂、ケイ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂等の熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂;ポリビニルアルコール、酢酸セルロース系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、フッ素系樹脂、フタル酸系樹脂、マレイン酸系樹脂、飽和ポリエステル、エチレン−ビニルアルコール共重合体、キチン、キトサン等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらの高分子化合物は、一種または二種以上混合して使用することができる。また、高分子化合物は、共重合物でもよく、グラフト重合物であってもよい。
このような耐薬品性高分子により被覆された多孔質層で構成されている多孔膜積層体は、前記強い極性溶媒、アルカリ、酸等の薬品と接触した場合にも、多孔質層が溶解したり、膨潤して変形したりする等の変質が全く生じないか、使用目的や用途に影響のない程度に変質を抑制することができる。例えば、多孔質層と薬品とが接触する時間が短い用途では、その時間内で変質しない程度の耐薬品性が付与されていればよい。
なお、前記耐薬品性高分子化合物は、同時に耐熱性を有する場合が多いため、前記多孔質層が前記耐薬品性高分子化合物で被覆される前と比較して耐熱性が低下するおそれは少ない。
前記多孔質層を構成する微小孔には、機能性材料を充填されていてもよい。前記機能性材料としては、例えば、フェライト微粒子、金属微粒子(金属酸化物微粒子等の金属含有微粒子を含む)、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、酸化チタン、チタン酸バリウム等が挙げられる。
前記機能性材料の充填条件は、特に限定されないが、サブミクロン〜ミクロン単位の分解能で充填することにより、多孔質層が本来有する空孔特性の損失を抑え、しかも機能性材料の充填量を調整しやすい等の取扱性、操作性を向上でき好ましい。機能性材料を充填する場合、多孔質層の微小孔が小さすぎると機能性材料が充填されにくく、大きすぎると機能性材料の充填をサブミクロン〜ミクロン単位に制御することが困難となるため、微小孔の平均孔径は上記数値範囲内であることが好ましく、フィルム表面の最大孔径は15μm以下が好ましい。
[基材と多孔質層との組み合わせ]
前記基材と前記多孔質層との密着性の観点から、前記基材と前記多孔質層とを構成する成分として、良好な密着性(親和性)を発揮しうる素材を組み合わせて用いることが好ましい。具体的には、前記多孔質層が、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、及びポリエーテルスルホン系樹脂からなる群より選択された少なくとも一種を含み、前記基材が、芳香族ポリアミド系樹脂(アラミド系樹脂)、ポリフェニレンサルファイド系樹脂(PPS系樹脂)、液晶性ポリエステル系樹脂(LCP系樹脂)、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂(PEEK系樹脂)、ポリベンゾオキサゾール樹脂(PBO樹脂)、セルロース系繊維、ガラス繊維、及びステンレス繊維からなる群より選択された少なくとも一種を含むことが好ましい。
また、前記多孔質層が、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、及びポリエーテルスルホン系樹脂からなる群より選択された少なくとも一種を含み、前記基材が、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、及びセルロース系繊維からなる群より選択された少なくとも一種を含むことがより好ましい。
また、前記多孔質層が、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、及びポリエーテルスルホン系樹脂からなる群より選択された少なくとも一種を含み、前記基材が、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、及び液晶性ポリエステル系樹脂からなる群より選択された少なくとも一種を含むことがさらに好ましい。
前記多孔質層が上記樹脂を含む場合、その含有率は前記多孔質層全体に対して、例えば、80〜100重量%であり、90〜100重量%であることが好ましく、95〜100重量%であることがより好ましい。
前記基材が上記樹脂又は繊維を含む場合、その含有率は前記基材全体に対して、例えば、60〜100重量%であり、80〜100重量%であることが好ましく、90〜100重量%であることがより好ましい。
前記基材と前記多孔質層との密着性の観点から、前記基材と前記多孔質層とを構成する成分として、良好な密着性(親和性)を発揮しうる素材を組み合わせて用いることが好ましい。具体的には、前記多孔質層が、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、及びポリエーテルスルホン系樹脂からなる群より選択された少なくとも一種を含み、前記基材が、芳香族ポリアミド系樹脂(アラミド系樹脂)、ポリフェニレンサルファイド系樹脂(PPS系樹脂)、液晶性ポリエステル系樹脂(LCP系樹脂)、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂(PEEK系樹脂)、ポリベンゾオキサゾール樹脂(PBO樹脂)、セルロース系繊維、ガラス繊維、及びステンレス繊維からなる群より選択された少なくとも一種を含むことが好ましい。
また、前記多孔質層が、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、及びポリエーテルスルホン系樹脂からなる群より選択された少なくとも一種を含み、前記基材が、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、及びセルロース系繊維からなる群より選択された少なくとも一種を含むことがより好ましい。
また、前記多孔質層が、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、及びポリエーテルスルホン系樹脂からなる群より選択された少なくとも一種を含み、前記基材が、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、及び液晶性ポリエステル系樹脂からなる群より選択された少なくとも一種を含むことがさらに好ましい。
前記多孔質層が上記樹脂を含む場合、その含有率は前記多孔質層全体に対して、例えば、80〜100重量%であり、90〜100重量%であることが好ましく、95〜100重量%であることがより好ましい。
前記基材が上記樹脂又は繊維を含む場合、その含有率は前記基材全体に対して、例えば、60〜100重量%であり、80〜100重量%であることが好ましく、90〜100重量%であることがより好ましい。
[多孔膜積層体]
本発明の多孔膜積層体は、前記耐熱不織布基材と前記多孔質層とが優れた密着性で一体化した構造を有するため、高い機械的強度を備えている。そのため、多孔膜積層体の総厚みが、例えば100μm未満程度の薄い場合にも十分な強度を発揮できる点で有利である。
本発明の多孔膜積層体は、前記耐熱不織布基材と前記多孔質層とが優れた密着性で一体化した構造を有するため、高い機械的強度を備えている。そのため、多孔膜積層体の総厚みが、例えば100μm未満程度の薄い場合にも十分な強度を発揮できる点で有利である。
本発明の多孔膜積層体の好ましい形態は、基材の片面又は両面が多孔質層により被覆されており、連通性を有する多数の微小孔を有し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmである多孔質層を有する多孔膜積層体であり、その多孔質層の厚みが1〜500μmであり、空孔率が30〜80%であって、基材の厚みが20〜500μmである。このような多孔膜積層体は、多孔質層及び基材を構成する材料や厚み、製造条件等を適宜設定することにより製造できる。
本発明の多孔膜積層体は、基材の少なくとも片面に多孔質層が積層されていればよく、基材の両面に多孔質層を有していてもよい。また、前記多孔質層には機能性材料が充填されていてもよく、複数の多孔質層を有する場合には同一又は異なる種類の機能性材料が充填されていてもよい。
本発明の多孔膜積層体は、前記多孔質層が有する空孔特性をそのまま利用したり、又は前記多孔質層の空孔を機能性材料で機能化したりすることにより、高温下で使用されるフィルター、分離膜、セパレーターとして、またはその一部として利用可能である。
さらに、本発明の多孔膜積層体には、所望の特性を付与するため、必要に応じて熱処理や被膜形成処理を施されていてもよい。
本発明の多孔膜積層体は、上記構成を有するため、広範な分野において多様な用途に適用できる。特に高温下で使用されるフィルター、分離膜、セパレーターとして、またはその一部としての利用が適しており、例えば、液体分離膜、固体分離膜、ガス分離膜、またはその一部として利用可能である。その他にも、燃料電池用電解質膜、回路用基板、放熱材(ヒートシンク、放熱板等)、電池用セパレーター、電磁波シールドや電磁波吸収体等の電磁波制御材、電解コンデンサー、低誘電率材料、耐熱クッション材、インク受像シート、試験紙、絶縁材、断熱材、細胞培養基材、放射線遮蔽マット用材料、吸油材、消防服等の広範囲な基板材料として利用可能である。
具体的には、バッグフィルター、耐熱集塵フィルター、空調フィルター、自動車のフィルター(エアクリーナー、オイルクリーナー、室内清浄フィルター、外気取入れフィルター等)等を挙げることができ、ダイオキシン対策等で高温焼却が必要な焼却炉でのバグフィルターや、半導体やセラミック基板製造工程の焼成炉で使用される集塵フィルターや、高温のオイルのクリーナー等に適している。
その他にも、燃料電池用電解質膜、回路用基板、放熱材(ヒートシンク、放熱板等)、電池用セパレーター、電磁波シールドや電磁波吸収体等の電磁波制御材、電解コンデンサー、低誘電率材料、耐熱クッション材、インク受像シート、試験紙、絶縁材、断熱材、細胞培養基材、放射線遮蔽マット用材料、吸油材、消防服等の広範囲な基板材料として利用可能である。
本発明の多孔膜積層体は、耐熱不織布に耐熱多孔質層が積層されているので耐熱性が要求されている用途で使用されることが好ましい。また、積層体は通気性が維持されているので、その構造的特徴を有効に利用してフィルター、分離膜、セパレーターとして、またはその一部としての利用が最も適している。フィルター、分離膜、セパレーターはこれまでにも利用されてきているが、耐熱性に優れているものはほとんど無かった。耐熱不織布自体もフィルター、分離膜、セパレーターに使用可能ではあると考えられるが、孔径は最小でも数十μm以上あり微細なものを捕集することができなかった。
これまでは、高温の液体、固体、ガスをフィルター、分離膜、セパレーター等に透過させる時は、フィルター、分離膜、セパレーター等が耐えられる温度まで冷却させる必要があり、冷却設備や冷却工程が必要であった。本発明の多孔膜積層体を用いることで、冷却設備や冷却工程を不要とするか簡略化することが可能となる。
ダイオキシン対策等で高温焼却が必要な焼却炉でのバグフィルターは高耐熱性と微粒子の捕捉性が求められるし、半導体やセラミック基板製造工程の焼成炉で使用される集塵フィルターも高耐熱性であれば利用範囲が増大する。また、高耐熱性であればオイルのクリーナーとして使用された時に高温用途にも用いられるし、冷却せずに高温のままろ過した方がオイルの粘度も低くろ過時間を短縮でき好ましい。
高温に耐えられるフィルター、分離膜、セパレーターとして、セラミック製のものも存在するが硬いため曲げられず自由度は無い。
また、高温に耐えられるフィルター、分離膜、セパレーターとして、焼結金属製のものも存在するが非常に高価なため大面積での使用は難しく、利用範囲は狭い。
本発明の多孔膜積層体は、例えば200℃程度の高温下での使用が可能であるが、それ以下の温度下でも当然使用できる。
本発明の多孔膜積層体は、フィルター、分離膜、セパレーターとして好適に利用できる。耐熱不織布基材に多孔質層が形成されているため、基材は十分な強度を確保することができる。多孔性フィルムは空孔率が高いため、多孔性フィルム単体では強度が十分でなかった用途へも展開できる可能性がある。本発明の多孔膜積層体を用いたフィルターとしては、例えば水等の水溶液のろ過や空気等の気体のろ過用フィルター;サブミクロン以上の異物を除去しうる廃水処理用フィルター;赤血球の分離等の血液等のろ過用フィルター;粉塵、花粉、カビ、ダニの死骸等を空気から分離するエアコン用フィルター等が挙げられる。本発明の多孔膜積層体は、また、エアコンに用いられる酸素富化膜用の基材として用いることも可能である。
また、本発明の多孔膜積層体は、試験紙として利用することもできる。試験紙は、実験用、医療用等で広く用いられており、例えば、pH試験紙(例えばリトマス試験紙)、水質検査試験紙(例えばイオン試験紙)、オイル試験紙、水分試験紙、オゾン試験紙、尿試験紙、血液試験紙等を挙げることができる。前記イオン試験紙は、金属イオンや陰イオンを定性的、又は定量的に調べることができる。尿試験紙は、尿糖、尿タンパク、潜血等を定量的に調べることができる。血液試験紙は、血糖値等を定量的に調べることができる。これらの試験紙は、測定方法が簡易なため、使用機会が年々増加している。
本発明の多孔質積層体は、多孔質層が基材に密着しているため、取り扱う上で十分な強度を確保することができる。また、多孔質層は、判定に使用される指示薬を吸着することができるため、好ましい媒体である。また、水等の溶剤、尿、血液等のサンプルを保持できるため、これらの用途での使用に好適である。
本発明の多孔膜積層体は、また、電池用セパレーターとして好ましく利用できる。電池用セパレーターは、正負極を分離すると共に、電解液の保持性に優れイオン導電性が良好である必要がある。また、耐熱性、柔軟性、強度等の種々の特性を備えていることが求められる。本発明の多孔膜積層体によれば、これらの特性をバランス良く発揮することができるため、各種電池用セパレーターとして極めて有用である。
電池用セパレーターは、過去の発火事故や自動車用用途での安全性向上のため、高耐熱性が求められており、本発明の多孔膜積層体はこの点からも有用である。
本発明の多孔膜積層体は、燃料電池用電解質膜の基材として用いることも可能である。近年、携帯機器用電源として、直接メタノール型燃料電池(DMFC)の開発が進められている。DMFCとは、メタノールを直接セル内に導入して燃料とする燃料電池である。従来、DMFCにはデュポン社の「ナフィオン」に代表されるポリパーフルオロアルキルスルホン酸系電解質膜(フッ素系電解質膜)の検討例が多かったが、これらの膜はメタノールとの親和性が高くメタノールによる電解質膜の膨潤により、メタノールクロスオーバー(メタノールの電解質膜透過)が起こり、エネルギーロスの問題がクローズアップされている。本発明の多孔質積層体によれば、上記問題を解決しうる燃料電池用電解質膜を提供することができる。
本発明の多孔膜積層体は、さらに、電解質膜の骨格として使用することができる。多孔膜積層体ではメタノール等の溶剤に耐性のある耐熱不織布を基材として使用することができるため、基材の膨潤を防ぐことができる。そして、多孔質層部は連通性に優れており、微細な空孔を形成しているため、孔内に電解質を充填することで、燃料電池用電解質膜とすることができる。
燃料電池の種類としては、他にも自動車用バッテリー等として使用される、固体高分子型燃料電池(PEFC)がある。これは水素ガスを燃料として使用するものであるが、やはりフッ素系電解質膜では水素ガスクロスオーバーの問題がある。プロトンの導電性を確保するために電解質膜を水で湿潤させた状態で使用する必要があり、フッ素系電解質膜ではやはり水による膨潤が起こり、水素ガスクロスオーバーが問題となる。燃料電池は高温で動作させた方が効率がよいので、本発明の多孔膜積層体はこの点からも有用である。
本発明の多孔膜積層体では、水に耐性のある耐熱不織布を基材として使用することができるため、基材の膨潤を防ぐことができる。そして、多孔質層部は連通性に優れており、微細な空孔を形成しているため、孔内に電解質を充填することで、PEFC用燃料電池用電解質膜とすることができる。
本発明の多孔膜積層体は、少なくとも一つの多孔質層の表面に、金属メッキ層及び/又は磁性メッキ層が積層された複合材料として用いることも好ましい。
金属メッキ層は、例えば、多孔質層表面及び内部の微小孔表面に薄い金属被覆として形成されていてもよく、空孔を金属で充填された形態であってもよい。金属メッキ層を構成する金属としては、例えば、銅、ニッケル、銀、金、すず、ビスマス、亜鉛、アルミニウム、鉛、クロム、鉄、インジウム、コバルト、ロジウム、白金、パラジウムやこれらの合金等を挙げることができる。さらにニッケル−りん、ニッケル−銅−りん、ニッケル−鉄−りん、ニッケル−タングステン−りん、ニッケル−モリブデン−りん、ニッケル−クロム−りん、ニッケル−ホウ素−りん等多種多様の金属以外の元素を含む合金皮膜も挙げることができる。金属メッキ層は、上記の金属を単独で又は複数を組み合わせて用いてもよく、単層であってもよく、複数の層を積層してもよい。
磁性メッキ層を構成する材料としては、磁性を有する化合物であれば特に限定されず、強磁性体及び常磁性体の何れであってもよく、例えばニッケル−コバルト、コバルト−鉄−りん、コバルト−タングステン−りん、コバルト−ニッケル−マンガン等の合金;メトキシアセトニトリル重合体等のラジカルを発生し得る部位を有する化合物、デカメチルフェロセンの電荷移動錯体等の金属錯体系化合物、グラファイト化途上炭素材料であるポリアクリロニトリル等の化合物からなる有機磁性体等が例示できる。
[多孔膜積層体の製造方法]
前記多孔膜積層体は、例えば、高分子溶液を基材上へフィルム状に流延し、凝固液に接触させて多孔化処理を施した後、そのまま乾燥に付して基板と多孔質層との積層体を得る方法;前記多孔化処理を施した後、支持体等の表面に転写して乾燥に付すことにより多孔性フィルムが支持体に積層した積層体を得る方法等により製造できるが、前者の方法が好ましく用いられる。凝固液に接触させて多孔質化する方法としては、例えば、湿式相転換法によりフィルムを得る方法(例えば、特開2001−145826号公報参照)、乾式相転換法(例えば、国際公開公報WO98/25997号パンフレット等参照)、及び溶媒置換速度調整材を用いる方法(例えば、特開2000−319442号公報、特開2001−67643号公報参照)等の公知の方法を利用可能である。
前記多孔膜積層体は、例えば、高分子溶液を基材上へフィルム状に流延し、凝固液に接触させて多孔化処理を施した後、そのまま乾燥に付して基板と多孔質層との積層体を得る方法;前記多孔化処理を施した後、支持体等の表面に転写して乾燥に付すことにより多孔性フィルムが支持体に積層した積層体を得る方法等により製造できるが、前者の方法が好ましく用いられる。凝固液に接触させて多孔質化する方法としては、例えば、湿式相転換法によりフィルムを得る方法(例えば、特開2001−145826号公報参照)、乾式相転換法(例えば、国際公開公報WO98/25997号パンフレット等参照)、及び溶媒置換速度調整材を用いる方法(例えば、特開2000−319442号公報、特開2001−67643号公報参照)等の公知の方法を利用可能である。
前記多孔膜積層体の製造方法によれば、湿式相転換法を用いて基材上に多孔質層を形成した後、そのまま乾燥に付すため、多孔質層の形成と同時に基材表面に密着して積層することができ、製造効率を向上することができる。また、多数の微小孔を有する多孔質層は柔軟なため、多孔質層を構成するフィルム単体では取扱いにくく積層工程が困難であるが、製膜と同時に積層する製造方法によれば、このような問題を回避でき、優れた空孔特性を有する多孔質層と基材とが直接積層された多孔膜積層体を容易に得ることができる。
前記多孔膜積層体の製造方法において、前記基材が耐熱不織布であれば(耐熱不織布基材)は、基材表面の構造が、平面がほとんどなく、繊維状に入り組んだ構成を有するため、高分子溶液はその空隙に入り込みやすく、多孔質層が基材を覆って一体化した状態になる場合が多い。前記耐熱不織布基材としては、凝固液に接触した場合に劣化しにくいものが好ましく用いられ、具体的な材料としては上記に例示のものが挙げられる。
流延に付す高分子溶液としては、例えば、多孔質層を構成する素材となる高分子成分、水溶性ポリマー、水溶性極性溶媒、必要に応じて水からなる混合溶液等を用いることができる。
前記多孔質層を構成する素材となる高分子成分としては、水溶性極性溶媒に溶解性を有し相転換法によりフィルムを形成しうるものが好ましく、上記に例示のものを一種又は二種以上混合して利用できる。また、前記多孔質層を構成する高分子成分の代わりに、該高分子成分の単量体成分(原料)や、そのオリゴマー、イミド化や環化等の前の前駆体等を用いてもよい。
流延に付す高分子溶液への水溶性ポリマーや水の添加は、膜構造をスポンジ状に多孔化するために効果的である。前記水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、多糖類等やその誘導体、及びこれらの混合物等が挙げられる。なかでもポリビニルピロリドンは、フィルム内部におけるボイドの形成を抑制し、フィルムの機械的強度を向上しうる点で好ましい。これらの水溶性ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。多孔化の観点から、前記水溶性ポリマーの分子量は200以上が良く、好ましくは300以上、特に好ましくは400以上(例えば、400〜20万程度)であり、特に分子量1000以上であってもよい。水の添加によりボイド径を調整でき、例えばポリマー溶液への水の添加量を増やすとボイド径を大きくすることが可能となる。
前記水溶性ポリマーは、膜構造をスポンジ状にするのに非常に有効であり、前記水溶性ポリマーの種類と量を変更する事により多様な構造を得ることが可能である。このため、前記水溶性ポリマーは、所望の空孔特性を付与する目的で、多孔質層を形成する際の添加剤として極めて好適に用いられる。一方、前記水溶性ポリマーは、最終的には多孔質層を構成しない、除去すべき不要な成分である。湿式相転換法を利用する方法においては、前記水溶性ポリマーは水等の凝固液に浸漬して相転換する工程において容易に洗浄除去される。これに対し、乾式相転換法においては、多孔質層を構成しない成分(不要な成分)は加熱により除去され、水溶性ポリマーを加熱によって除去することは、湿式相転換法を利用した場合ほど容易ではない。このように、乾式層転換法を利用した場合よりも、湿式相転換法を利用する製造方法は、所望の空孔特性を有する多孔膜積層体を容易に製造できる点で有利である。
前記水溶性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド,N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ピロリドン及びこれらの混合物等が挙げられ、前記高分子成分として使用する樹脂の化学骨格に応じて溶解性を有するもの(高分子成分の良溶媒)を使用することができる。
流延に付すポリマー溶液としては、多孔性フィルムを構成する素材となる高分子成分8〜25重量%、水溶性ポリマー5〜50重量%、水0〜10重量%、水溶性極性溶媒30〜82重量%からなる混合溶液等が好ましい。この際に、高分子成分の濃度が低すぎると多孔質層の厚みが不十分となったり、所望の空孔特性が得られにくくなったりする。また、高分子成分の濃度が高すぎると空孔率が小さくなる傾向にある。水溶性ポリマーは、フィルム内部を均質なスポンジ状の多孔構造にするために添加するが、この際に濃度が低すぎるとフィルム内部に10μmを超えるような巨大ボイドが発生し均質性が低下する。また水溶性ポリマーの濃度が高すぎると溶解性が悪くなる他、50重量%を超える場合には、フィルム強度が弱くなる等の不具合が生じやすい。水の添加量はボイド径の調整に用いることができ、添加量を増やすことで径を大きくすることが可能となる。
高分子溶液をフィルム状に流延する際に、該フィルムを相対湿度70〜100%、温度15〜90℃からなる雰囲気下に0.2〜15分間保持した後、高分子成分の非溶剤からなる凝固液に導くのが望ましい。流延後のフィルム状物を上記条件におくことにより、多孔質層を均質で連通性の高い状態にすることができる。この理由としては、加湿下に置くことにより水分がフィルム表面から内部へと侵入し、高分子溶液の相分離を効率的に促進するためと考えられる。特に好ましい条件は、相対湿度90〜100%、温度30〜80℃であり、相対湿度約100%(例えば、95〜100%)、温度40〜70℃である。空気中の水分量がこれよりも少ない場合は、表面の開孔率が充分でなくなる不具合が発生する場合がある。
前記多孔膜積層体の製造方法によれば、例えば、連通性を有する多数の微小孔を有し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmである多孔質層を容易に成形することができる。本発明における多孔膜積層体を構成する多孔質層の微小孔の径、空孔率、開孔率は、上記のように、高分子溶液の構成成分の種類や量、水の使用量、流延時の湿度、温度及び時間等を適宜選択することにより所望の値に調整することができる。
相転換法に用いる凝固液としては、高分子成分を凝固させる溶剤であればよく、高分子成分として使用する高分子の種類によって適宜選択されるが、例えば、ポリアミドイミド系樹脂又はポリアミック酸を凝固させる溶剤であればよく、例えば、水;メタノール、エタノール等の1価アルコール、グリセリン等の多価アルコール等のアルコール;ポリエチレングリコール等の水溶性高分子;これらの混合物等の水溶性凝固液等が使用できる。
前記多孔膜積層体の製造方法においては、凝固液に導いて耐熱不織布基材表面に多孔質層を成形した後、そのまま乾燥に付すことにより、基材の表面に多孔質層が直接積層された構成を有する多孔膜積層体が製造される。乾燥は、凝固液等の溶剤成分を除去しうる方法であれば特に限定されず、加熱下でもよく、室温による自然乾燥であってもよい。加熱処理の方法は特に制限されず、熱風処理、熱ロール処理、あるいは、恒温槽やオーブン等に投入する方法でもよく、多孔膜積層体を所定の温度にコントロールできるものであればよい。加熱温度は、例えば室温〜600℃程度の広範囲から選択することができる。加熱処理時の雰囲気は、空気、窒素、不活性ガスの何れでもよい。空気を使用する場合が最も安価であるが、酸化反応を伴う可能性がある。これを避ける場合は、窒素や不活性ガスを使用するのがよく、コスト面からは窒素が好適である。加熱条件は、生産性、多孔質層及び基材の物性等を考慮して適宜設定される。乾燥に付すことにより、基材表面に多孔質層が直接成形された多孔膜積層体を得ることができる。
こうして得られた多孔膜積層体には、さらに、熱、可視光線、紫外線、電子線、放射線等を用いて架橋処理を施してもよい。前記処理により、多孔質層を構成する前駆体の重合、架橋、硬化等が進行して高分子化合物を形成し、多孔質層が高分子化合物で構成されている場合には架橋や硬化等が進行し、剛性や耐薬品性等の特性が一層向上した多孔質層を有する多孔膜積層体を得ることができる。例えば、ポリイミド系前駆体を用いて成形した多孔質層には、さらに熱イミド化あるいは化学イミド化等を施すことによりポリイミド多孔質層を得ることができる。ポリアミドイミド系樹脂を用いて成形された多孔質層には熱架橋を施すことができる。なお、熱架橋は、凝固液に導いた後、乾燥に付すための加熱処理と同時に施すことも可能である。
上記の架橋処理は、場合により前記基材と前記多孔質層との間でも架橋反応を引き起こすことがある。これにより、前記基材と前記多孔質層との密着性が向上する。例えば、ポリイミド系前駆体の多孔質層を形成したポリイミドの不織布を熱処理すると、前駆体はポリイミドになると同時にポリイミドの不織布に密着する。また、ポリアミドイミド樹脂の多孔質層を形成したポリイミドの不織布を熱処理すると、多孔質層はポリイミドの不織布に密着する。
前記多孔膜積層体の製造方法によれば、前記基材の片面、又は両面が前記多孔質層により被覆されており、前記多孔質層は連通性を有する多数の微小孔を有し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmである多孔質層を有する積層体を容易に得ることができる。
[複合材料]
続いて、上記本発明の多孔膜積層体を構成する少なくとも一つの多孔質層表面に、導電体が形成されている複合材料についても述べる。
続いて、上記本発明の多孔膜積層体を構成する少なくとも一つの多孔質層表面に、導電体が形成されている複合材料についても述べる。
前記導電体としては、例えば、銀、金、銅、ニッケル、ITO、カーボン、カーボンナノチューブ等が挙げられるが、例えば、金属メッキ層及び/又は磁性メッキ層を積層することによって、前記導電体が形成されることが好ましい。このような複合材料は、例えば回路基板、放熱材又は電磁波制御材に用いることができる。
前記導電体は印刷技術によって形成されることが好ましい。このような複合材料は、例えば、回路基板、放熱板、及び電磁波制御材等に好適である。前記印刷技術としては、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ディスペンサ印刷、凸版印刷(フレキソ印刷)、昇華型印刷、オフセット印刷、レーザープリンタ印刷(トナー印刷)、凹版印刷(グラビア印刷)、コンタクト印刷、及びマイクロコンタクト印刷等が挙げられる。
前記印刷技術は、導電体粒子を含むインクを用いた印刷技術であって、前記多孔質層表層の平均開孔径をR1、前記導電体粒子の平均粒子径をR2とした場合、式:0.0001≦R2/R1≦1000を満たしていることが好ましい。前記導電体は、例えばメッキまたは絶縁材で被覆した構成のものであってもよく、より好ましくは、導電体が銀であり、銀の表面にメッキまたは絶縁材で被覆した構成が挙げられる。前記メッキとしては、例えば、銅メッキ、金メッキ、ニッケルメッキ等が挙げられる。
前記複合材料には、例えば、多孔質層の空孔がそのまま残されているもの、多孔質層の空孔に樹脂が充填されているもの、溶剤処理により多孔質層の空孔構造が失われているもの等が含まれる。前記多孔質層の空孔に充填される樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。前記複合材料は、さらに、多孔質層上にカバーレイが積層されていてもよい。
このような複合材料は、上記本発明の多孔膜積層体の多孔質層表面に、金属や有機化合物を用いて層を形成する方法として公知の方法を利用して製造することができる。
金属メッキ層の形成には、例えば無電解メッキ及び電解メッキ等の公知の方法を利用できる。本発明の多孔膜積層体においては、多孔質層が高分子成分で構成されている点で、後述する無電解メッキが好ましく用いられ、無電解メッキと電解メッキを組み合わせて用いることもできる。
金属メッキ層の形成に用いるメッキ液は、各種の組成のものが知られており、メーカーが販売しているものを入手する事もできる。メッキ液の組成は特に制限されず、各種の要望(美観、硬さ、耐磨耗性、耐変色性、耐食性、電気伝導性、熱伝導性、耐熱性、摺動性、撥水性、ぬれ性、半田ぬれ性、シール性、電磁波シールド特性、反射特性等)に合ったものを選択すればよい。
[複合材料の製造方法]
また、上記本発明の多孔膜積層体を構成する少なくとも一つの多孔質層表面に導電体を形成することにより複合材料を得る複合材料の製造方法であって、前記多孔膜積層体の多孔質層表面に、光により反応基を生成する化合物からなる感光性組成物を塗布して感光層を設ける工程、前記感光層にマスクを介して露光し、露光部に反応基を生成させる工程、及び露光部に生成された反応基を金属と結合させて導電体を形成する工程を有する複合材料の製造方法についても述べる。
また、上記本発明の多孔膜積層体を構成する少なくとも一つの多孔質層表面に導電体を形成することにより複合材料を得る複合材料の製造方法であって、前記多孔膜積層体の多孔質層表面に、光により反応基を生成する化合物からなる感光性組成物を塗布して感光層を設ける工程、前記感光層にマスクを介して露光し、露光部に反応基を生成させる工程、及び露光部に生成された反応基を金属と結合させて導電体を形成する工程を有する複合材料の製造方法についても述べる。
また、上記本発明の多孔膜積層体を構成する少なくとも一つの多孔質層表面に、導電体を形成することにより複合材料を得る複合材料の製造方法であって、前記多孔膜積層体の多孔質層表面に、光により反応基を消失する化合物からなる感光性組成物を塗布して感光層を設ける工程、前記感光層にマスクを介して露光し、露光部に反応基を消失させる工程、及び未露光部に残る反応基を金属と結合させて導電体を形成する工程を有する複合材料の製造方法についても述べる。
前記導電体は、金属メッキ層であることが好ましい。また、前記導電体は、導電体パターンを形成していることが好ましい。
前記複合材料の製造方法は、例えば、回路基板、放熱材又は電磁波制御材に用いられる複合材料を得る方法であってもよい。
前記複合材料の製造方法のなかでも、反応基を金属と結合する方法として無電解メッキによる方法が好ましく用いられる。無電解メッキは、一般的にプラスチック等で形成された樹脂層に金属を積層する方法として有用であることが知られている。多孔膜積層体の多孔質膜表面は、金属との密着性を向上する目的で、予め脱脂、洗浄、中和、触媒処理等の処理が施されてもよい。前記触媒処理としては、例えば被処理面に金属の析出を促進しうる触媒金属を付着させる触媒金属核形成法等を利用できる。触媒金属核形成法は、触媒金属(塩)を含むコロイド溶液に接触させた後、酸若しくはアルカリ溶液又は還元剤に接触させて化学メッキを促進させる方法(キャタライザー(触媒)−アクセレータ(促進剤)法);触媒金属の微粒子を含むコロイド溶液に接触させた後、加熱等により溶媒や添加剤等を除去して触媒金属核を形成する方法(金属微粒子法);還元剤を含む酸又はアルカリ溶液に接触させた後、触媒金属の酸又はアルカリ溶液に接触させてアクチベーティング(賦活化)液を接触させて触媒金属を析出させる方法(センシタイジング(感作)−アクチベーティング(賦活化)法)等が挙げられる。
キャタライザー−アクセレータ法における触媒金属(塩)含有溶液としては、例えば、すず−パラジウム混合溶液、硫酸銅等の金属(塩)含有溶液等を用いることができる。キャタライザー−アクセレータ法は、例えば多孔膜積層体を硫酸銅水溶液中に浸漬した後、必要に応じて過剰な硫酸銅を洗浄除去し、次いで水素化ホウ素ナトリウムの水溶液に浸漬することにより、多孔膜積層体の多孔質層表面に銅微粒子からなる触媒核を形成できる。金属微粒子法は、例えば、銀のナノ粒子が分散したコロイド溶液を多孔質層表面に接触させた後、加熱して界面活性剤やバインダー等の添加剤を除去することにより、多孔質層表面に銀粒子からなる触媒核を析出させることができる。センシタイジング−アクチベーティング法は、例えば、塩化すずの塩酸溶液に接触させた後、塩化パラジウムの塩酸溶液に接触させることによりパラジウムからなる触媒核を析出させることができる。これらの処理液に多孔膜積層体を接触させる方法としては、金属メッキ層を積層させる多孔質層表面に塗布する方法、多孔膜積層体を処理液に浸漬する方法等を用いることができる。
無電解メッキに用いられる主な金属としては、例えば、銅、ニッケル、銀、金、ニッケル−りん等を挙げることができる。無電解メッキに用いるメッキ液には、例えば、上記金属又はその塩が含まれている他、ホルムアルデヒド、ヒドラジン、次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、アスコルビン酸、グリオキシル酸等の還元剤、酢酸ナトリウム、EDTA、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリシン等の錯化剤や析出制御剤等が含まれており、これらの多くは市販されており簡単に入手することができる。無電解メッキは、上記のメッキ液に上記処理を施した多孔膜積層体を浸漬することにより行われる。なお、多孔膜積層体の片面に保護シートを貼った状態で無電解メッキを施すことにより、他の面にのみ無電解メッキが施されるため、例えば、基材等への金属の析出を防止することができる。
金属メッキ層の厚みは、特に限定されず用途に応じて適宜選択でき、例えば0.01〜20μm程度、好ましくは0.1〜10μm程度である。金属メッキ層の厚みを効率よく厚くするため、例えば無電解メッキと電解メッキとを組み合わせて金属メッキ層を形成する方法が行われる場合がある。すなわち、無電解メッキにより金属被膜が形成された多孔質層表面は導電性が付与されるため、次いでより効率のよい電解メッキを施すことによりにより短時間で厚い金属メッキ層を得ることが可能となる。
上記方法は、特に回路基板、放熱材又は電磁波制御材に用いられる複合材料を得る方法として好適である。
電磁波制御材は、電磁波を遮断(シールド)又は吸収する材料として、周囲の電磁環境に及ぼす影響や、機器自体が周囲の電磁環境から受ける影響を軽減又は抑制するために利用されている。デジタル電子機器の普及、パソコンや携帯電話等、われわれの身近には、電気・電子機器や無線機器、システム等、多くの電磁波発生源が存在し、それらは様々な電磁波を放射している。これらの機器から放射される電磁波は、周囲の電磁環境に影響を及ぼす可能性があり、また、機器自体も周囲の電磁環境から影響を受ける。これらの対策として電磁波シールド材料、電磁波吸収体材料等の電磁波制御材が年々重要となってきている。前記複合材料は、例えば、金属メッキ層による導電性の付与によって電磁波を遮断して電磁波シールド性を付与でき、また、多孔質層を構成する空孔に電磁波吸収材料を充填して電磁波吸収性を付与できるため、優れた電磁波制御材として極めて有用である。
電磁波制御材を構成する金属メッキ層は、導電性を付与することができるものが好ましく、例えば、ニッケル、銅、銀等で形成されることが効果的である。また、複合材料が、無電解メッキで多孔質層表面に磁性メッキ層が成形された層構成を有する場合には電磁波吸収体材料として有用である。無電解メッキにより磁性メッキ層を形成する際に用いる材料としては、例えば、ニッケル、ニッケル−コバルト、コバルト−鉄−りん、コバルト−タングステン−りん、コバルト−ニッケル−マンガン等の合金等の磁性材料が挙げられる。前記複合材料は、非常に薄く柔軟性の高いものが得られ、メッキにより形成された金属や磁性体は多孔質層に絡み付いているため、メッキ層が剥離しにくく、折り曲げ耐性(耐折性)を改善する事ができる。このような複合材料は、電子機器の任意の場所に設置したり、貼り付けたりして使用することができる。
本発明の多孔膜積層体は配線基板の基材としても使用可能である。配線基板に要求される電気抵抗と配線密着性のバランスを考慮して、インクに添加する導電体等の粒子径の大きさ、粒度分布、混合比率等を選択することが好ましい。
より具体的には、多孔質層表層の平均開孔径をR1、インクに含まれる粒子の平均粒子径をR2とした場合、R1が0.01〜10μm程度、R2が0.001〜10μm程度の範囲内であるのが好ましい。すなわち、式:0.0001≦R2/R1≦1000を満たす関係が好ましい。特に、多孔質表面に、導電体粒子を含むインクを用いた印刷技術によって導電体が形成されている複合材料の例では、多孔質層表層の平均開孔径をR1、導電体粒子の平均粒子径をR2とした場合、式:0.0001≦R2/R1≦1000を満たす関係が好ましい。
インクジェット印刷の場合は、インクがノズルに詰まるのを避けるため、インクの粘度は低く、インクに添加する粒子は小さい粒子径のものが好ましい。従って、R1が0.01〜5μm程度、R2が0.001〜0.2μm程度であるのが好ましい。すなわち、式:0.0002≦R2/R1≦20を満たす関係が好ましい。
スクリーン印刷の場合は、粘度が低すぎるとスクリーンにインクを保持しにくいので、むしろ粘度がある程度高い方が好ましく、インクに含まれる粒子の粒子径は大きくても特に問題はなく、また、粒子径が小さい場合は溶剤量を低減することが好ましい。従って、R1が0.01〜10μm程度、R2が0.001〜10μm程度であるのが好ましい。すなわち、式:0.0001≦R2/R1≦1000を満たす関係が好ましい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。テープ剥離試験、平均孔径の測定、空孔率の測定、皺の程度評価試験、透気度試験、高温放置試験は以下の方法で行った。
(テープ剥離試験)
(i)多孔膜積層体の多孔質層表面に下記のテープを貼り、下記のローラーで接着部分をなぞり、テープを圧着する。
(ii)下記の万能引張試験機を用いて50mm/分の条件でT型剥離を行う。
(iii)多孔質層と耐熱不織布基材の界面剥離の有無を観察する。
・テープ:寺岡製作所製、
(商品名「フィルムマスキングテープNo.603(#25)」、24mm幅)
・ローラー:直径30mm、200gf荷重
・万能引張試験機:(株)オリエンテック社製、
(商品名「TENSILON RTA−500」)
(i)多孔膜積層体の多孔質層表面に下記のテープを貼り、下記のローラーで接着部分をなぞり、テープを圧着する。
(ii)下記の万能引張試験機を用いて50mm/分の条件でT型剥離を行う。
(iii)多孔質層と耐熱不織布基材の界面剥離の有無を観察する。
・テープ:寺岡製作所製、
(商品名「フィルムマスキングテープNo.603(#25)」、24mm幅)
・ローラー:直径30mm、200gf荷重
・万能引張試験機:(株)オリエンテック社製、
(商品名「TENSILON RTA−500」)
なお、実施例1におけるフィルムの平均孔径及び空孔率は以下の方法で算出した。これらの平均孔径及び空孔率は、電子顕微鏡写真の最も手前に見えている微小孔のみを対象として求められており、写真奥に見えている微小孔は対象外とした。
(平均孔径の測定)
電子顕微鏡写真から、積層体の表面又は断面の任意の30点以上の孔についてその面積を測定し、その平均値を平均孔面積Saveとした。孔が真円であると仮定し、下記式を用いて平均孔面積から孔径に換算した値を平均孔径とした。ここでπは円周率を表す。
表面又は内部の平均孔径[μm]=2・(Save/π)1/2
電子顕微鏡写真から、積層体の表面又は断面の任意の30点以上の孔についてその面積を測定し、その平均値を平均孔面積Saveとした。孔が真円であると仮定し、下記式を用いて平均孔面積から孔径に換算した値を平均孔径とした。ここでπは円周率を表す。
表面又は内部の平均孔径[μm]=2・(Save/π)1/2
(空孔率の測定)
多孔質層は貫通穴が形成された基材と一体化しているため、そのままでは多孔質層内部の空孔率の測定は困難である。よって、基材として耐熱不織布の代わりにPETフィルム(帝人デュポン社製、製品名「Sタイプ」)を用い、原液をPETフィルム上にキャスト後、水中に浸積して凝固させ、次いでPETフィルムから剥離して乾燥させて得た多孔性フィルムを用いて測定し、内部の空孔率を下記式より算出した。
Vはフィルムの体積[cm3]、Wは多孔質層の重量[g]、ρは多孔質層素材の密度[g/cm3]を示す。ポリアミドイミドの密度は1.45[g/cm3]、ポリエーテルイミドの密度は1.27[g/cm3]とした。
空孔率[%]=100−100・W/(ρ・V)
多孔質層は貫通穴が形成された基材と一体化しているため、そのままでは多孔質層内部の空孔率の測定は困難である。よって、基材として耐熱不織布の代わりにPETフィルム(帝人デュポン社製、製品名「Sタイプ」)を用い、原液をPETフィルム上にキャスト後、水中に浸積して凝固させ、次いでPETフィルムから剥離して乾燥させて得た多孔性フィルムを用いて測定し、内部の空孔率を下記式より算出した。
Vはフィルムの体積[cm3]、Wは多孔質層の重量[g]、ρは多孔質層素材の密度[g/cm3]を示す。ポリアミドイミドの密度は1.45[g/cm3]、ポリエーテルイミドの密度は1.27[g/cm3]とした。
空孔率[%]=100−100・W/(ρ・V)
(皺の程度評価試験)
多孔質層と一体化した積層体を10cm×10cmの正方形に整形し、そのサンプルを並板ガラス(縦299mm×横199mm×厚さ5mm)の中央に置き、さらに同形状の並板ガラス(重量702g)をその上に置き、これらのガラス間の隙間の最大値(mm)を皺の程度を示す指標とした。平滑な積層体は、ガラス間の隙間が小さく、皺の凹凸の程度が大きいとガラス間の隙間も大きくなる。
多孔質層と一体化した積層体を10cm×10cmの正方形に整形し、そのサンプルを並板ガラス(縦299mm×横199mm×厚さ5mm)の中央に置き、さらに同形状の並板ガラス(重量702g)をその上に置き、これらのガラス間の隙間の最大値(mm)を皺の程度を示す指標とした。平滑な積層体は、ガラス間の隙間が小さく、皺の凹凸の程度が大きいとガラス間の隙間も大きくなる。
(透気度試験)
透気度は、テスター産業株式会社製のガーレー式デンソメーターB型を用い、JIS P8117に準じて測定した。秒数はデジタルオートカウンターで測定した。透気度(ガーレー値)の値が小さいほど空気の透過性が高いこと、つまり多孔質膜における微小孔の連通性が高いことを意味する。なお、基材の透気度、多孔質積層体の透気度の何れも、特に断りの無い限り、本試験法で評価した。
透気度は、テスター産業株式会社製のガーレー式デンソメーターB型を用い、JIS P8117に準じて測定した。秒数はデジタルオートカウンターで測定した。透気度(ガーレー値)の値が小さいほど空気の透過性が高いこと、つまり多孔質膜における微小孔の連通性が高いことを意味する。なお、基材の透気度、多孔質積層体の透気度の何れも、特に断りの無い限り、本試験法で評価した。
(高温放置試験)
多孔質層と一体化した積層体を約10cm×10cmの概略正方形に整形し、直交する2辺a、bの距離を測定することによりサンプルの形状の変化を評価した。まず、初期の距離a1、b1を測定した。次に、200℃に調温した恒温槽内にサンプルを投入し1時間放置した。次にサンプルを取り出し、室温になるまで放冷した後に距離a2、b2を測定した。下記式を用いて、a、bのそれぞれの変化率を計算した。
高温放置後のaの変化率(%)={|a2−a1|/a1}×100
bの変化率も同様の方法で算出した。
多孔質層と一体化した積層体を約10cm×10cmの概略正方形に整形し、直交する2辺a、bの距離を測定することによりサンプルの形状の変化を評価した。まず、初期の距離a1、b1を測定した。次に、200℃に調温した恒温槽内にサンプルを投入し1時間放置した。次にサンプルを取り出し、室温になるまで放冷した後に距離a2、b2を測定した。下記式を用いて、a、bのそれぞれの変化率を計算した。
高温放置後のaの変化率(%)={|a2−a1|/a1}×100
bの変化率も同様の方法で算出した。
[実施例1]
ポリアミドイミド系樹脂溶液(東洋紡績社製の商品名「バイロマックスHR11NN」;固形分濃度15重量%、溶剤NMP、溶液粘度20dPa・s/25℃)100重量部に、水溶性ポリマーとしてポリビニルピロリドン(分子量5.5万)30重量部を加えて製膜用の原液とした。ガラス板上に王子特殊紙社製のアラミドペーパー(厚み136μm、目付72.1g/m2、密度0.53g/cm3、透気度0.6秒:商品名「グラスパーAPX−72」)を置き、該ペーパー上に25℃に保持した原液をフィルムアプリケーターを使用してキャストした。キャスト時のフィルムアプリケーターとメッシュクロスとのギャップは25μmで行った。キャスト後速やかに湿度約100%、温度50℃の容器中に4分間保持した。その後、水中に浸漬して凝固・洗浄し、次いでペーパーから剥離させることなく水中から取り出し、ポリオレフィン製不織布に載せ、室温下で自然乾燥することによってペーパーと多孔質層とが一体化した積層体を得た。積層体の総厚みは約142μmであった。積層体の様子を図1に模式図として示す。
ポリアミドイミド系樹脂溶液(東洋紡績社製の商品名「バイロマックスHR11NN」;固形分濃度15重量%、溶剤NMP、溶液粘度20dPa・s/25℃)100重量部に、水溶性ポリマーとしてポリビニルピロリドン(分子量5.5万)30重量部を加えて製膜用の原液とした。ガラス板上に王子特殊紙社製のアラミドペーパー(厚み136μm、目付72.1g/m2、密度0.53g/cm3、透気度0.6秒:商品名「グラスパーAPX−72」)を置き、該ペーパー上に25℃に保持した原液をフィルムアプリケーターを使用してキャストした。キャスト時のフィルムアプリケーターとメッシュクロスとのギャップは25μmで行った。キャスト後速やかに湿度約100%、温度50℃の容器中に4分間保持した。その後、水中に浸漬して凝固・洗浄し、次いでペーパーから剥離させることなく水中から取り出し、ポリオレフィン製不織布に載せ、室温下で自然乾燥することによってペーパーと多孔質層とが一体化した積層体を得た。積層体の総厚みは約142μmであった。積層体の様子を図1に模式図として示す。
得られた積層体についてテープ剥離試験を行ったところ、ペーパーと多孔質層とが界面剥離を起こさなかった。この積層体を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質層がメッシュクロスに密着しており、多孔質層の表面に存在する孔の平均孔径は約1.0μmであり、多孔質層内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が約1.0μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質層内部の空孔率は70%であった。積層体の透気度を測定したところ11秒であった。皺の程度の指標となるガラス間の隙間の最大値は0.2mmであった。高温放置後の変化率はa、bとも0%であり、積層体の高温放置による形状の変化は見られなかった。本積層体の高温下での形状安定性が優れていることが確認された。
[実施例2]
実施例1において、基材として、王子特殊紙社製のアラミドペーパー(厚み87μm、目付55.4g/m2、密度0.64g/cm3、透気度0.2秒:商品名「グラスパーAPK−55−2」)を用いた点以外は実施例1と同様の操作を行って、ペーパーと多孔質層が一体化した積層体を得た。積層体の総厚みは約95μmであった。
実施例1において、基材として、王子特殊紙社製のアラミドペーパー(厚み87μm、目付55.4g/m2、密度0.64g/cm3、透気度0.2秒:商品名「グラスパーAPK−55−2」)を用いた点以外は実施例1と同様の操作を行って、ペーパーと多孔質層が一体化した積層体を得た。積層体の総厚みは約95μmであった。
得られた積層体についてテープ剥離試験を行ったところ、ペーパーと多孔質層とが界面剥離を起こさなかった。この積層体を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質層がペーパーに密着しており、多孔質層の表面に存在する孔の平均孔径は約1.0μmであり、多孔質層内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が約1.0μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質層内部の空孔率は70%であった。積層体の透気度を測定したところ21秒であった。皺の程度の指標となるガラス間の隙間の最大値は0.2mmであった。高温放置後の変化率はa、bとも0%であり、積層体の高温放置による形状の変化は見られなかった。本積層体の高温下での形状安定性が優れていることが確認された。
[実施例3]
実施例1において、基材として、クラレクラフレックス社製のLCP不織布(厚み35μm、目付6g/m2、密度0.17g/cm3、透気度<0.1秒:商品名「ベクルス MBBK6F」)を用い、その基材を寺岡製作所製フィルムマスキングテープNo.603(#75)に粘着固定したこと以外は実施例1と同様の操作を行って、不織布と多孔質層が一体化した積層体を得た。フィルムマスキングテープは水中に浸漬した時に積層体から自然に剥離した。積層体の総厚みは約60μmであった。
実施例1において、基材として、クラレクラフレックス社製のLCP不織布(厚み35μm、目付6g/m2、密度0.17g/cm3、透気度<0.1秒:商品名「ベクルス MBBK6F」)を用い、その基材を寺岡製作所製フィルムマスキングテープNo.603(#75)に粘着固定したこと以外は実施例1と同様の操作を行って、不織布と多孔質層が一体化した積層体を得た。フィルムマスキングテープは水中に浸漬した時に積層体から自然に剥離した。積層体の総厚みは約60μmであった。
得られた積層体についてテープ剥離試験を行ったところ、ペーパーと多孔質層とが界面剥離を起こさなかった。この積層体を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質層がペーパーに密着しており、多孔質層の表面に存在する孔の平均孔径は約1.0μmであり、多孔質層内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が約1.0μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質層内部の空孔率は70%であった。積層体の透気度を測定したところ11秒であった。皺の程度の指標となるガラス間の隙間の最大値は0.2mmであった。高温放置後の変化率はa、bとも0%であり、積層体の高温放置による形状の変化は見られなかった。本積層体の高温下での形状安定性が優れていることが確認された。
[実施例4]
実施例1において、基材として、廣瀬製紙社製のPPSペーパー(厚み198μm、目付99.0g/m2、密度0.47g/cm3、透気度0.1秒:商品名「PPSペーパーPS0100」)を用いた点と、製膜用の原液として、ポリアミドイミド系樹脂溶液(東洋紡績社製の商品名「バイロマックスHR11NN」;固形分濃度15重量%、溶剤NMP、溶液粘度20dPa・s/25℃)100重量部に、水溶性ポリマーとしてポリビニルピロリドン(分子量5.5万)25重量部を加えたものを使用した点以外は実施例1と同様の操作を行って、ペーパーと多孔質層が一体化した積層体を得た。積層体の総厚みは約202μmであった。
実施例1において、基材として、廣瀬製紙社製のPPSペーパー(厚み198μm、目付99.0g/m2、密度0.47g/cm3、透気度0.1秒:商品名「PPSペーパーPS0100」)を用いた点と、製膜用の原液として、ポリアミドイミド系樹脂溶液(東洋紡績社製の商品名「バイロマックスHR11NN」;固形分濃度15重量%、溶剤NMP、溶液粘度20dPa・s/25℃)100重量部に、水溶性ポリマーとしてポリビニルピロリドン(分子量5.5万)25重量部を加えたものを使用した点以外は実施例1と同様の操作を行って、ペーパーと多孔質層が一体化した積層体を得た。積層体の総厚みは約202μmであった。
得られた積層体についてテープ剥離試験を行ったところ、ペーパーと多孔質層とが界面剥離を起こさなかった。この積層体を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質層がペーパーに密着しており、多孔質層の表面に存在する孔の平均孔径は約1.5μmであり、多孔質層内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が約1.5μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質層内部の空孔率は72%であった。積層体の透気度を測定したところ1秒であった。皺の程度の指標となるガラス間の隙間の最大値は0.4mmであった。高温放置後の変化率はa、bとも0%であり、積層体の高温放置による形状の変化は見られなかった。本積層体の高温下での形状安定性が優れていることが確認された。
[実施例5]
実施例1において、製膜用の原液として、ポリエーテルイミド系樹脂溶液を用いた点以外は実施例1と同様の操作を行って、ペーパーと多孔質層が一体化した積層体を得た。
ポリエーテルイミド系樹脂溶液は、日本GEプラスチック製の商品名「ウルテム1000」18重量部に、溶剤としてNMP 82重量部、水溶性ポリマーとしてポリビニルピロリドン(分子量5.5万)30重量部を加えたものを用いた。積層体の総厚みは約140μmであった。
実施例1において、製膜用の原液として、ポリエーテルイミド系樹脂溶液を用いた点以外は実施例1と同様の操作を行って、ペーパーと多孔質層が一体化した積層体を得た。
ポリエーテルイミド系樹脂溶液は、日本GEプラスチック製の商品名「ウルテム1000」18重量部に、溶剤としてNMP 82重量部、水溶性ポリマーとしてポリビニルピロリドン(分子量5.5万)30重量部を加えたものを用いた。積層体の総厚みは約140μmであった。
得られた積層体についてテープ剥離試験を行ったところ、ペーパーと多孔質層とが界面剥離を起こさなかった。この積層体を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質層がペーパーに密着しており、多孔質層の表面に存在する孔の平均孔径は約2.0μmであり、多孔質層内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が約2.0μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質層内部の空孔率は73%であった。積層体の透気度を測定したところ21秒であった。皺の程度の指標となるガラス間の隙間の最大値は0.2mmであった。高温放置後の変化率はa、bとも0%であり、積層体の高温放置による形状の変化は見られなかった。本積層体の高温下での形状安定性が優れていることが確認された。
[実施例6]
実施例1において、基材として、日本バイリーン社製のガラス不織布(厚み158μm、目付25g/m2、透気度<0.1秒:商品名「キュムラスEPM−4025」)を用いた点以外は実施例1と同様の操作を行って、ペーパーと多孔質層が一体化した積層体を得た。積層体の総厚みは約183μmであった。
実施例1において、基材として、日本バイリーン社製のガラス不織布(厚み158μm、目付25g/m2、透気度<0.1秒:商品名「キュムラスEPM−4025」)を用いた点以外は実施例1と同様の操作を行って、ペーパーと多孔質層が一体化した積層体を得た。積層体の総厚みは約183μmであった。
得られた積層体についてテープ剥離試験を行ったところ、ペーパーと多孔質層とが界面剥離を起こさなかった。この積層体を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質層がペーパーに密着しており、多孔質層の表面に存在する孔の平均孔径は約1.0μmであり、多孔質層内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が約1.0μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質層内部の空孔率は70%であった。積層体の透気度を測定したところ29秒であった。皺の程度の指標となるガラス間の隙間の最大値は0.4mmであった。高温放置後の変化率はa、bとも0%であり、積層体の高温放置による形状の変化は見られなかった。本積層体の高温下での形状安定性が優れていることが確認された。
[実施例7]
実施例1において、基材として、廣瀬製紙社製のPPSペーパー(厚み98μm、目付79.2g/m2、密度0.85g/cm3、透気度1.3秒:商品名「PPSペーパーPS0080S」)を用いた点と、製膜用の原液として、ポリアミドイミド系樹脂溶液(東洋紡績社製の商品名「バイロマックスHR11NN」;固形分濃度15重量%、溶剤NMP、溶液粘度20dPa・s/25℃)100重量部に、水溶性ポリマーとしてポリビニルピロリドン(分子量5.5万)25重量部を加えたものを使用した点以外は実施例1と同様の操作を行って、ペーパーと多孔質層が一体化した積層体を得た。積層体の総厚みは約111μmであった。
実施例1において、基材として、廣瀬製紙社製のPPSペーパー(厚み98μm、目付79.2g/m2、密度0.85g/cm3、透気度1.3秒:商品名「PPSペーパーPS0080S」)を用いた点と、製膜用の原液として、ポリアミドイミド系樹脂溶液(東洋紡績社製の商品名「バイロマックスHR11NN」;固形分濃度15重量%、溶剤NMP、溶液粘度20dPa・s/25℃)100重量部に、水溶性ポリマーとしてポリビニルピロリドン(分子量5.5万)25重量部を加えたものを使用した点以外は実施例1と同様の操作を行って、ペーパーと多孔質層が一体化した積層体を得た。積層体の総厚みは約111μmであった。
得られた積層体についてテープ剥離試験を行ったところ、ペーパーと多孔質層とが界面剥離を起こさなかった。この積層体を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質層がペーパーに密着しており、多孔質層の表面に存在する孔の平均孔径は約1.5μmであり、多孔質層内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が約1.5μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質層内部の空孔率は72%であった。積層体の透気度を測定したところ72秒であった。皺の程度の指標となるガラス間の隙間の最大値は0.2mmであった。高温放置後の変化率はa、bとも0%であり、積層体の高温放置による形状の変化は見られなかった。本積層体の高温下での形状安定性が優れていることが確認された。
[比較例1]
実施例1において、基材として、デュポン帝人アドバンストペーパー社製のアラミドペーパー(厚み123μm、密度0.28g/cm3、透気度358秒:商品名「ノーメックス紙T411」)を用いた点以外は実施例1と同様の操作を行って、ペーパーと多孔質層が一体化した積層体を得た。積層体の総厚みは約136μmであった。しかし、図2の模式図において示すように積層体表面は皺くちゃになっており、かつカールしてしまっており分離膜基材として使用できる状態ではなかった。皺の程度の指標となるガラス間の隙間の最大値は9mmであった。なお、図2は模式図であるため、積層体表面の皺、凹凸等を充分的確に表現できていないが、目視での観察や写真によると、前記積層体表面には、より多数の皺、凹凸が確認でき、図2から受ける印象よりもはるかに皺が多いことは明らかであった。
実施例1において、基材として、デュポン帝人アドバンストペーパー社製のアラミドペーパー(厚み123μm、密度0.28g/cm3、透気度358秒:商品名「ノーメックス紙T411」)を用いた点以外は実施例1と同様の操作を行って、ペーパーと多孔質層が一体化した積層体を得た。積層体の総厚みは約136μmであった。しかし、図2の模式図において示すように積層体表面は皺くちゃになっており、かつカールしてしまっており分離膜基材として使用できる状態ではなかった。皺の程度の指標となるガラス間の隙間の最大値は9mmであった。なお、図2は模式図であるため、積層体表面の皺、凹凸等を充分的確に表現できていないが、目視での観察や写真によると、前記積層体表面には、より多数の皺、凹凸が確認でき、図2から受ける印象よりもはるかに皺が多いことは明らかであった。
得られた積層体についてテープ剥離試験を行ったところ、ペーパーと多孔質層とが界面剥離を起こさなかった。この積層体を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質層がペーパーに密着しており、多孔質層の表面に存在する孔の平均孔径は約1.0μmであり、多孔質層内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が約1.0μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質層内部の空孔率は70%であった。積層体の透気度を測定したところ1945秒であった。この積層体は上記したように皺くちゃな状態であるためサンプルの整形ができず、積層体の高温放置試験は実施できなかった。
比較例1の結果から、特許文献3記載のような不織布上に多孔質層が積層された積層体において、仮に耐熱性を考慮して基材の材料を採用したとしても、形成された積層体の透気度が低い場合には、高温下での使用は不可能であることが分かった。
[比較例2]
実施例1において、基材として、日本バイリーン社製のポリオレフィン不織布(厚み約250μm、目付80g/m2、透気度0.2秒:商品名「FT−330N」)を用いた点以外は実施例1と同様の操作を行って、不織布と多孔質層が一体化した積層体を得た。積層体の総厚みは約261μmであった。
実施例1において、基材として、日本バイリーン社製のポリオレフィン不織布(厚み約250μm、目付80g/m2、透気度0.2秒:商品名「FT−330N」)を用いた点以外は実施例1と同様の操作を行って、不織布と多孔質層が一体化した積層体を得た。積層体の総厚みは約261μmであった。
得られた積層体についてテープ剥離試験を行ったところ、不織布と多孔質層とが界面剥離を起こさなかった。この積層体を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質層が不織布に密着しており、多孔質層の表面に存在する孔の平均孔径は約1.0μmであり、多孔質層内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が約1.0μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質層内部の空孔率は70%であった。積層体の透気度を測定したところ15秒であった。皺の程度の指標となるガラス間の隙間の最大値は0.4mmであった。高温放置後には黄色から黄土色への変色と積層体の著しい形状の変化が見られた。また、クラックが3箇所見られ、触れるとクラックの拡大と破片の生成が見られた。高温放置後の変化率はa、bが33%、40%であった。なお、本比較例では、a、b何れも高温放置後には収縮していた。本積層体は高温下での形状安定性が劣っていることが確認された。
本発明の多孔膜積層体は、空孔特性に優れ、耐熱性と柔軟性を有し、しかも取扱性及び成形加工性に優れるため、特に高温下で使用されるフィルター、分離膜、セパレーターとして、又はその一部として有用である。
Claims (18)
- 基材の少なくとも片面に多孔質層が積層されている多孔膜積層体であって、
前記基材は耐熱不織布を含み、
前記多孔質層は、連通性を有する多数の微小孔を有し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmであり、
下記皺の程度評価試験によるガラス間の隙間の最大値が1mm以下であり、
下記テープ剥離試験により前記基材と前記多孔質層とが界面剥離を起こさないことを特徴とする多孔膜積層体。
(皺の程度評価試験)
多孔膜積層体を10cm×10cmの正方形に整形し、そのサンプルを並板ガラスA(縦299mm×横199mm×厚さ5mm)の中央に置き、さらに同形状の並板ガラスB(重量702g)を前記多孔膜積層体の上に置いた際の、並板ガラスAと並板ガラスBとの間の隙間の最大値(mm)を皺の程度を示す指標とした。
(テープ剥離試験)
多孔膜積層体の多孔質層表面にマスキングテープ[寺岡製作所社製、商品名「フィルムマスキングテープNo.603(#25)」、幅24mm]を貼り、直径30mm、200gf荷重のローラーで圧着した後、引張試験機を用いて剥離速度50mm/分でT型剥離を行う。 - 前記基材が、融点(融点を持たない場合は分解温度)250℃以上の物質を60重量%以上含有する請求項1記載の多孔膜積層体。
- 前記基材が、融点(融点を持たない場合は分解温度)250℃以上の物質を80重量%以上含有する請求項1又は2記載の多孔膜積層体。
- 前記融点(融点を持たない場合は分解温度)250℃以上の物質が、
芳香族ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、セルロース系繊維、ガラス繊維、及びステンレス繊維からなる群より選択された少なくとも一種である請求項1〜3の何れか1項に記載の多孔膜積層体。 - 前記融点(融点を持たない場合は分解温度)250℃以上の物質が、
芳香族ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、及びセルロース系繊維からなる群より選択された少なくとも一種である請求項1〜4の何れか1項に記載の多孔膜積層体。 - 前記多孔質層が、高分子溶液を前記基材上へフィルム状に流延した後、凝固液に導き、次いで乾燥に付すことにより前記基材の少なくとも片面に形成されている請求項1〜5の何れか1項に記載の多孔膜積層体。
- 前記高分子溶液が、高分子成分8〜25重量%、水溶性ポリマー5〜50重量%、水0〜10重量%、及び水溶性極性溶媒30〜82重量%からなる混合溶液である請求項6記載の多孔膜積層体。
- 前記多孔質層が、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、及びポリエーテルスルホン系樹脂からなる群より選択された少なくとも一種を含む請求項1〜7の何れか1項に記載の多孔膜積層体。
- 前記多孔質層が、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、及びポリエーテルスルホン系樹脂からなる群より選択された少なくとも一種を含み、且つ、
前記基材が、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、及びセルロース系繊維からなる群より選択された少なくとも一種を含む請求項1〜8の何れか1項に記載の多孔膜積層体。 - 前記多孔質層の空孔率が30〜80%である請求項1〜9の何れか1項に記載の多孔膜積層体。
- 前記基材の厚みが20〜500μmである請求項1〜10の何れか1項に記載の多孔膜積層体。
- 前記多孔膜積層体の透気度が0.5〜120秒である請求項1〜11の何れか1項に記載の多孔膜積層体。
- 前記多孔膜積層体の透気度が0.5〜80秒である請求項1〜12の何れか1項に記載の多孔膜積層体。
- 前記多孔膜積層体の透気度が0.5〜60秒である請求項1〜13の何れか1項に記載の多孔膜積層体。
- 下記高温放置試験における形状変化率が5%以内である請求項1〜14の何れか1項に記載の多孔膜積層体。
(高温放置試験)
多孔質層と一体化した積層体を約10cm×10cmの概略正方形に整形し、前記概略正方形の直交する2辺の長さa1、b1を測定し、200℃に調温した恒温槽内に前記積層体を投入し1時間放置してから、前記積層体を取り出し、室温になるまで放冷した後に、前記概略正方形の直交する2辺の長さa2、b2を測定し、下記式を用いて形状変化率を計算した。
a1、a2による形状変化率(%)={|a2−a1|/a1}×100
b1、b2による形状変化率(%)も同様にして求め、これらの値の平均値を、本高温放置試験における形状変化率とした。 - 100〜300℃で使用されるフィルター、分離膜、セパレーター、またはその一部として用いられる請求項1〜15の何れか1項に記載の多孔膜積層体。
- 高分子溶液を基材上へフィルム状に流延した後、凝固液に導き、次いで乾燥に付して基材の少なくとも片面に多孔質層を積層することにより請求項1〜16の何れか1項に記載の多孔膜積層体を得る多孔膜積層体の製造方法。
- 前記高分子溶液が、高分子成分8〜25重量%、水溶性ポリマー5〜50重量%、水0〜10重量%、及び水溶性極性溶媒30〜82重量%からなる混合溶液である請求項17記載の多孔膜積層体の製造方法。
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