JP2018023955A - 積層体およびこれを備える膜構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】薄く均質な分離膜を形成することができる積層体を提供する。【解決手段】樹脂多孔体と、繊維基材と、を備え、前記樹脂多孔体の一部が、前記繊維基材の一方の主面を覆う多孔質膜を形成するとともに、前記樹脂多孔体の他の一部が、前記繊維基材の隙間に入り込んでおり、前記樹脂多孔体の質量が1〜35g/m2であり、前記多孔質膜の厚みが1〜100μmであり、前記繊維基材のいずれかの主面にジメチルホルムアミドを滴下してから吸収されるまでの時間が60秒以上である、積層体。【選択図】図2

Description

本発明は、樹脂多孔体および繊維基材を備える積層体に関し、特に、分離膜の支持体として適する積層体に関する。
液体や気体に含まれる複数の成分を分離する分離膜は、その透過性能や分離性能を向上させるため、非常に薄い。そのため、分離膜単体では機械的強度が低く、通常、繊維基材が分離膜の支持体として用いられる。この場合、例えば、繊維基材上に分離膜の原料である高分子の溶液を流延することにより、繊維基材で支持された膜構造体が形成される。
しかし、繊維基材の表面は平滑ではないため、繊維基材上に薄く均質な分離膜を形成させることは困難である。そこで、繊維基材上に多孔質膜を積層し、この積層体を支持体として用いている。このとき、分離膜は、多孔質膜の主面に形成される。
繊維基材上に多孔質膜を積層する方法としては、繊維基材上に多孔質膜の原料である樹脂の溶液を塗布する方法(コーティング法)、繊維基材に多孔質膜を接着剤で接着させる方法、繊維基材に多孔質膜を熱融着させる方法等が挙げられる。なかでも、素材が制限されず、また、繊維基材および多孔質膜の通気性が阻害され難い点で、コーティング法が好ましく用いられる。
繊維基材と多孔質膜との積層体を分離膜の支持体として用いる場合、使用時にかかる圧力によって、繊維基材と多孔質膜との間で層間剥離が生じやすい。そこで、コーティングの際に、多孔質膜の原料である樹脂の少なくとも一部を繊維基材の内部にまで浸透させることで、層間剥離を抑制する方法が提案されている(特許文献1〜3参照)。
特開2009−233666号公報 特開平09−313905号公報 特開2014−094501号公報
繊維基材上に積層される多孔質膜の平滑性は、繊維基材の構造に影響される。例えば、大きな空隙を備える繊維基材に、多孔質膜の原料である樹脂の溶液を塗布する場合、平滑な多孔質膜は得られ難い。繊維基材の空隙に上記溶液が浸透していき、固化後の多孔質膜の主面に、空隙に対応するように凹みが形成されるためである。この凹みは、例えば、数ミクロンメートルから数十ミクロンメートルオーダーの微細なものである。しかし、分離膜自体が数百ミクロンメートルオーダーの厚みであるため、微細な凹凸であっても、分離膜を薄く均質に形成する際の妨げになり得る。
上記のような凹みは、繊維基材の空隙を埋める程度に十分な量の上記溶液を、繊維基材に塗布することにより軽減できる。しかし、この場合、得られる積層体の通気性が低下する。この積層体を分離膜の支持体として用いると、分離膜の透過性能が低下する。また、コストが増大する。
層間剥離の抑制に重点を置いて、多孔質膜の原料である樹脂を繊維基材の内部にまで十分に浸透させようとすると、その溶液の塗布工程において、当該溶液が繊維基材の裏面まで抜ける裏漏れが発生し易くなる。これにより、製造設備が汚染されて、品質や生産性の低下が生じる。また、繊維基材の主面を覆う多孔質膜の厚みが不均一になり易いため、十分な平滑性が得られ難い。このように、多孔質膜の平滑性と、層間剥離の抑制と、積層体の通気性と、を同時に達成することは困難である。
本発明の一局面は、樹脂多孔体と、繊維基材と、を備え、前記樹脂多孔体の一部が、前記繊維基材の一方の主面を覆う多孔質膜を形成するとともに、前記樹脂多孔体の他の一部が、前記繊維基材の隙間に入り込んでおり、前記樹脂多孔体の質量が1〜35g/mであり、前記多孔質膜の厚みが1〜100μmであり、前記繊維基材のいずれかの主面にジメチルホルムアミドを滴下してから吸収されるまでの時間が60秒以上である、積層体に関する。
本発明にかかる積層体は、多孔質膜の平滑性に優れる。そのため、この積層体を分離膜の支持体として用いる場合、薄く均質な分離膜を形成することができる。さらに、本発明にかかる積層体は、通気性に優れるとともに、多孔質膜と繊維基材との間の層間剥離が生じ難い。よって、この積層体を支持体として用いた分離膜は、透過性能および分離性能に優れる。
本発明の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。 実施例1で得られた積層体の多孔質膜の主面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像である(倍率1000倍)。 実施例1で得られた積層体の断面を、SEMを用いて撮影した画像である(倍率500倍)。 比較例2で得られた積層体の多孔質膜の主面を、SEMを用いて撮影した画像である(倍率1000倍)。
本実施形態の積層体は、樹脂多孔体および繊維基材を備える。図1に示すように、樹脂多孔体10の一部は、繊維基材20の一方の主面(第1主面20X)を覆う多孔質膜11を形成し、他の一部は、繊維基材20の隙間に入り込んでいる。言い換えれば、積層体100は、樹脂多孔体10の一部を含む多孔質膜11と、繊維基材20の隙間に入り込んだ樹脂多孔体12および繊維基材20を含む複合領域21と、を備える。
繊維基材20の隙間とは、第1主面20Xに形成された凹部や、繊維基材20を構成する構成繊維20F同士の空隙を含む。繊維基材20の隙間は、具体的には、例えば以下のように定義できる。まず、積層体100を水平面に載置する。この水平面に置かれた積層体100の断面をみたとき、繊維基材20の最も多孔質膜11側に位置する構成繊維20Fの上記水平面の法線方向の長さを4等分し、第1主面20X側から1/4の長さまでの領域を第1領域20Fa、第1領域20Fa以外の領域を第2領域20Fbとする。また、第1領域20Faと第2領域20Fbとの境界線を、境界線Lbとする。繊維基材20の隙間は、繊維基材20の最も多孔質膜11側に位置し、繊維基材20の面方向に隣接する構成繊維20Fの境界線Lbの端部同士をつなぐ直線Lから、第2主面20Y側の領域をいう。なお、多孔質膜11は、繊維基材20の最も多孔質膜11側に位置する構成繊維20Fの、第1領域20Faの外縁に接触する樹脂多孔体である。
(繊維基材)
繊維基材20は、分離膜の支持体、さらには積層体100の支持体として機能する。繊維基材20の第1主面20Xには、多孔質膜11が形成される。繊維基材20の他方の主面(第2主面20Y)にも、積層体100あるいは分離膜にさらなる機能(例えば、柔軟性、接着性、潤滑性、滑り防止性、断熱性、吸湿性、遮光性等)を付与するための層が積層されてもよい。
分離膜には高い透過性能が求められるため、支持体である繊維基材20もまた、高い通気性および空隙率を備えることが好ましい。これらの観点から、繊維基材20としては、織物、編物、不織布等の繊維構造体が好ましい。なかでも、平滑な多孔質膜11が形成され易い点で、不織布が好ましい。織物および編物では、繊維同士が交絡しながら規則的に配列している。そのため、その主面には、繊維が交絡する点を凸部、繊維同士の隙間を凹部とする落差の大きな凹凸が現れやすい。この主面に樹脂多孔体10の原料樹脂を付与し、固化させると、得られる多孔質膜11には、繊維基材20の主面の凹部に沿うように凹みが生じる。一方、不織布は、繊維同士がランダムに交絡しているため、織物や編物と比較して主面の凹凸の落差は小さく、平滑になり易い。よって、その主面に形成される多孔質膜11もまた、平滑になり易い。
不織布の製法は特に限定されないが、なかでも、平滑で均質な構造の主面を有する不織布が得られ易い点で、湿式法やエレクトロスピニング法が好ましい。繊維基材20は、単層でもよいし、多層構造であってもよい。繊維基材20が不織布を含む多層構造である場合、不織布を最外層に配置し、この不織布に多孔質膜11を形成すればよい。
繊維基材20の厚み(繊維基材20が多層構造である場合、全体の厚み)は特に限定されない。機械的強度を考慮すると、繊維基材20は厚いほど望ましい。一方、分離膜とした場合の軽量性や小型化を考慮すると、繊維基材20は過度に厚くないことが望ましい。これらの観点から、繊維基材20の厚みは、10μm以上が好ましく、1000μm以下が好ましい。繊維基材20の厚みは、20μm以上がより好ましく、400μm以下がより好ましい。繊維基材20の厚みがこの範囲であれば、繊維基材20の第1主面20Xに原料樹脂の溶液(原料樹脂溶液)を塗布する場合、裏漏れが抑制され易い。
繊維基材20を構成する構成繊維20Fの材質も特に限定されず、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、耐熱性の観点から、ポリエステル樹脂が好ましい。繊維基材20が多層構造である場合、互いに材質の異なる構成繊維20Fで構成される繊維基材20を複数、積層してもよい。構成繊維20Fの繊度は、特に限定されない。
分離膜は、例えば、殺菌処理や高温ガス分離のために75〜125℃程度の高い温度で処理される場合がある。そのため、構成繊維20Fの融点は高いほど望ましい。融点の高い繊維を用いることにより、構成繊維20Fの溶融あるいは軟化による繊維基材20の変形、および、繊維基材20の空隙の閉塞が抑制されて、分離膜としての性能が発揮され易くなる。構成繊維20Fの融点は150℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、200℃以上が特に好ましい。繊維基材20が多層構造である場合、各層を構成する構成繊維20Fの融点が、それぞれ上記範囲を満たすことが好ましい。
繊維基材20のフラジール法(JIS L 1913 フラジール形法)で測定される通気度(フラジール通気度)は、分離膜の透過性能の観点から、高いほど望ましい。一方、繊維基材20の第1主面20Xに均質な多孔質膜11を形成する観点からは、上記通気度は過度に高くないことが望ましい。これらの観点から、フラジール通気度は0.2〜20cm/cm/秒であることが好ましく、0.5〜10cm/cm/秒であることがより好ましく、0.5〜3cm/cm/秒であることが特に好ましい。繊維基材20が多層構造である場合、繊維基材20全体での通気度が上記範囲を満たすことが好ましい。また、フラジール通気度がこの範囲であれば、繊維基材20の第1主面20Xに原料樹脂溶液を塗布する場合、原料樹脂溶液の裏漏れが抑制され易い。
繊維基材20の空隙率は、分離膜の透過性能の観点から、高いほど望ましい。一方、繊維基材20の第1主面20Xに均質な多孔質膜11が形成され易い点で、繊維基材20の空隙率は過度に高くないことが望ましい。これらの観点から、繊維基材20の空隙率は10〜45%が好ましい。空隙率の上限は40%がより好ましく、空隙率の下限は25%がより好ましい。繊維基材20が多層構造である場合、各層が上記範囲を満たすことが好ましい。
繊維基材20の空隙率(%)は、繊維基材20の単位面積あたりの質量W(g/cm)と、繊維基材20の厚みWT(cm)と、構成繊維20Fの比重d(g/cm)から、下記式(1)で算出できる。
(式1) 空隙率=(1−(W/WT)/d)×100
繊維基材20の空隙率は、繊維基材20以外の材料(例えば、樹脂多孔体10)を積層体100から除去した後、算出してもよい。繊維基材20以外の材料を積層体100から除去する方法としては、例えば、剥離や、繊維基材20は溶解しないもののそれ以外の材料が溶解するような溶媒に浸漬する方法等がある。構成繊維20Fの比重が不明である場合、繊維基材20を熱で溶融するなどして平板状に成形した後、その体積および質量を測定して、比重を算出すればよい。
繊維基材20に塗布される樹脂多孔体10の原料樹脂の一部を、繊維基材20の第1主面20Xを覆うように配置するとともに、他の一部を繊維基材20の隙間に配置するためには、繊維基材20に対する原料樹脂溶液の浸透性は過度に高くないことが望ましい。繊維基材20に対する原料樹脂溶液の浸透性は、例えば、繊維基材20に、原料樹脂溶液の溶媒(通常、有機溶媒。例えば、ジメチルホルムアミド)を滴下してから吸収されるまでの時間として評価できる。上記時間が長いほど、繊維基材20と原料樹脂溶液との親和性が低く、繊維基材20に対する原料樹脂溶液の浸透性は低い。
本実施形態では、繊維基材20のいずれかの主面にジメチルホルムアミド(DMF)を滴下してから吸収されるまでの時間(以下、DMF吸収時間)が60秒以上である繊維基材20を用いる。この繊維基材20は、原料樹脂溶液の浸透を抑制する方向に働く。そのため、塗布された原料樹脂溶液から溶媒を除去すると、樹脂多孔体10は、繊維基材20の隙間に配置されるとともに、繊維基材20の一方の主面を覆うようにも配置される。このような繊維基材20は、特に、繊維基材20と有機溶剤との親和性が透過性能に与える影響が少ない分離膜(例えば、気体分離膜)の支持体として好適に用いられる。
DMF吸収時間は、繊維基材20の空隙率を算出する際に用いる方法として記載したのと同じ方法により、繊維基材20以外の材料(例えば、樹脂多孔体10)を積層体100から除去した後、算出してもよい。この場合、DMF吸収時間の測定は、繊維基材20の第1主面20XにDMFを滴下して行ってもよいし、第2主面20YにDMFを滴下して行ってもよい。積層体100の状態のままDMF吸収時間を測定する場合、第2主面20Y側にDMFを滴下する。繊維基材20が多層構造の場合、剥離するなどして中間にあるいずれかの層(中間層)の主面を露出させて、DMF吸収時間を測定してもよい。
第1主面20XのDMF吸収時間が60秒以上である場合、原料樹脂溶液を繊維基材20の第1主面20Xに塗布すると、原料樹脂溶液の一部は繊維基材20の隙間に浸透するものの、他の一部は第1主面20X上に留まる。第2主面20Y(あるいは、多層構造の場合、中間層の主面)のDMF吸収時間が60秒以上である場合、原料樹脂溶液を繊維基材20の第1主面20Xに塗布すると、原料樹脂溶液の一部は繊維基材20の隙間に浸透するものの、第2主面20Y(あるいは、中間層の主面)によって押しとどめられる。そのため、結果的に、他の一部は第1主面20X上に留まって、多孔質膜11を形成する。多孔質膜11がより形成され易い点で、少なくとも第1主面20XのDMF吸収時間が60秒以上であることが好ましい。剥離強度が高まる点では、第2主面20YのDMF吸収時間が60秒以上であることが好ましい。いずれの場合も、DMF吸収時間は300秒以上であることが好ましい。
DMF吸収時間を長くするには、繊維基材20の表面エネルギーと有機溶媒の表面自由エネルギーとの差を大きくすればよい。この具体的な方法として、繊維基材20にフッ素含有樹脂(撥水撥油剤)を付与する方法、繊維基材20をフッ素樹脂を含む繊維により構成する方法、繊維基材20に親水性物質を付与する方法、繊維基材20にプラズマ処理を施す方法等が挙げられる。これらの方法は、分離膜の用途に応じて、適宜選択すればよい。例えば、分離膜として親水性が求められる場合、その支持体である繊維基材20も親水性であることが好ましい。そのため、上記方法のうち、繊維基材20に親水性物質を付与する方法や、繊維基材20にプラズマ処理を施す方法を採用することが好ましい。また、フッ素含有樹脂は、表面自由エネルギーが低く、有機溶媒との親和性を低くする効果が高い点で好ましい。上記処理を行う場合、DMF吸収時間は、上記処理が施された後の繊維基材20に対して測定される。
(樹脂多孔体)
樹脂多孔体10は、連続する多数の孔を有している。樹脂多孔体10の一部は、繊維基材20の第1主面20Xに形成される多孔質膜11として配置されるとともに、他の一部は、繊維基材20の隙間に入り込んで、繊維基材20との複合領域21を形成する。
多孔質膜11の厚みは1μm以上である。言い換えれば、多孔質膜11の最小の厚みが1μmである。これにより、繊維基材20の構造に起因する凹凸が低減されて、積層体100の一方の主面の平滑性が向上する。一方、複合領域21によりアンカー効果が生じ、多孔質膜11と繊維基材20との剥離強度が物理的に高くなって、多孔質膜11と繊維基材20との間の層間剥離が抑制される。積層体100の主面が平滑化され易くなる点で、多孔質膜11の最小の厚みは、3μm以上であることが好ましい。一方、繊維基材20の通気性(ひいては、分離膜の透過性能)が阻害され難くなる点で、多孔質膜11の最小の厚みは100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。なお、繊維基材20の第1主面20X全体が多孔質膜11により被覆されていることに限られず、本実施形態では、繊維基材20の第1主面20Xの一部が露出する場合を包含する。
多孔質膜11の最小の厚みは、積層体100の断面から算出される。具体的には、積層体100の断面の所定のサイズ(例えば、約250μm×約180μm)を、倍率500倍に拡大して撮影したSEM画像において、多孔質膜11の表面から繊維基材20に向かって、多孔質膜11の法線に平行な直線を引いたときの、多孔質膜11の表面から境界線Lbまでの長さが最小になる箇所(最小地点)を決定し、その長さを測定する。繊維基材20が多孔質膜11から露出している箇所がある場合、この箇所が最小地点であり、その長さは0である。異なる10箇所の切断面に対して、それぞれ最小地点を決定してその長さを測定し、これらの平均値を多孔質膜11の最小の厚みとする。
複合領域21において、樹脂多孔体10は繊維基材20の全体に均一に入り込んでいなくてもよく、樹脂多孔体10を含まない領域が形成されていてもよい。樹脂多孔体10は、多孔質膜11とは反対側の積層体100の主面(繊維基材20の第2主面20Y)から露出しないことが好ましい。つまり、繊維基材20の第2主面20Y側には、樹脂多孔体10を含まない領域(繊維領域22)が形成されていることが好ましい。積層体100の通気性が高まるためである。
積層体100に含まれる樹脂多孔体10の質量は、1〜35g/mと非常に少ない。よって、繊維基材20が有する通気性が阻害され難い。繊維基材20は、上記のとおり原料樹脂溶液の浸透性が低いため、このような少ない量であっても、繊維基材20の第1主面20Xには、多孔質膜11が形成される。均質な多孔質膜11が形成され易い点で、積層体100に含まれる樹脂多孔体10の質量は4g/m以上であることが好ましく、通気性がより阻害され難い点で、25g/m以下であることが好ましい。また、積層体100に含まれる樹脂多孔体10の質量が上記範囲であると、コストが抑制されるとともに、積層体100を製造する際に原料樹脂の凝集によって生じる応力が低減されて、得られる積層体100の変形(カール)が抑制される。
積層体100に含まれる樹脂多孔体10の質量は、樹脂多孔体10以外の材料(例えば、繊維基材20)を積層体100から除去した後、測定すればよい。樹脂多孔体10以外の材料を積層体100から除去する方法としては、例えば、剥離、あるいは、樹脂多孔体10は溶解しないもののそれ以外の材料が溶解するような溶媒に浸漬する方法等が挙げられる。あるいは、積層体100全てを溶解させた後、その溶解液中の樹脂多孔体10の成分量を定量分析することにより、積層体100に含まれる樹脂多孔体10の質量を算出してもよい。あるいは、積層体100の質量を測定した後、積層体100から樹脂多孔体10を除去して得られた樹脂多孔体10以外の材料の質量を測定し、その差から積層体100に含まれる樹脂多孔体10の質量を求めてもよい。
樹脂多孔体10の原料樹脂は、繊維基材20上に製膜できる限り特に限定されず、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、液晶性ポリエステル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリベンゾチアゾール樹脂、ポリスルホン樹脂、セルロース樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、単独で、あるいは2種以上を混合して用いられる。また、上記樹脂の共重合体(グラフト重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体等)を、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。さらに、上記樹脂の骨格(ポリマー鎖)を、主鎖あるいは側鎖に含む重合体を用いてもよい。なかでも、耐熱性に優れ、また、多孔質膜11を形成し易い点で、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂が好ましい。
上記のとおり、分離膜は、75〜125℃程度の高温で処理される場合があるため、樹脂多孔体10の融点もまた高いほど望ましい。融点の高い樹脂多孔体10を用いることにより、樹脂多孔体10の溶融あるいは軟化による変形、および、孔の閉塞が抑制されて、分離膜としての性能が発揮され易くなる。樹脂多孔体10の融点は、150℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、200℃以上が特に好ましい。原料樹脂がガラス転移温度を有する場合、同様の観点から、原料樹脂のガラス転移温度は150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。
積層体100の多孔質膜11側の主面100Xの算術平均粗さRaは、1.3μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。これにより、主面100X上に薄い分離膜を均一な厚みで形成させ易くなる。よって、得られる分離膜の分離性能および透過性能が向上する。算術平均粗さRaは、表面の平滑性をあらわす指標であり、値が小さいほど平滑性が高い。算術平均粗さRaは、JIS B 0601に準じて、接触式の表面粗さ測定機によって測定することができる。なお、多孔質膜11を積層体100から剥離して、その積層体100に対向していた主面の算術平均粗さRaを測定すると、1.3μmを大きく超える。このことは、樹脂多孔体10の一部が、繊維基材20の隙間に入り込んでいたことを示す。
樹脂多孔体10(特に、多孔質膜11)の空隙率は、分離膜の透過性能の観点から、高いほど望ましい。一方、多孔質膜11の平滑性を高める点では、多孔質膜11の空隙率は過度に高くないことが望ましい。これらの観点から、多孔質膜11の空隙率は50〜95%が好ましい。多孔質膜11の空隙率の上限は90%がより好ましく、下限は60%がより好ましい。
多孔質膜11の空隙率は、積層体100から多孔質膜11を剥離して、その多孔質膜11の単位面積あたりの質量W2(g/cm)と、多孔質膜11の厚みWT2(cm)と、原料樹脂の比重d2(g/cm)を用いて、上記式(1)により算出できる。原料樹脂の比重が不明である場合、原料樹脂を熱で溶融するなどして平板状に成形した後、その体積および質量を測定して、比重を算出すればよい。多孔質膜11の厚みWT2は、厚み計により測定できる。
(積層体)
上記のような構成を備える積層体100の繊維基材20(厳密には、複合領域21)と多孔質膜11との間の剥離強度は、例えば、0.15N/cm以上であり、0.2N/cm以上が好ましく、0.4N/cm以上がより好ましい。剥離強度がこの範囲であると、積層体100を分離膜の支持体として用いる場合、分離対象物質を透過する際にかかる圧力による界面剥離が抑制される。上記剥離強度は、JIS L 1086に準じて、以下のように測定できる。まず、多孔質膜11の繊維基材20とは反対側の主面にホットメルトテープを接着する。引張試験機にて当該ホットメルトテープと繊維基材20とが常に180°の角度となるように、両者を一定の速度で引張っていき、多孔質膜11と繊維基材20とが剥離するときの荷重を測定する。この荷重をホットメルトテープの幅で除することにより、剥離強度が算出される。
積層体100のガーレ法(JIS L 1913 ガーレ形法)で測定された透気度(以下、ガーレ透気度)は、分離膜の透過性能の観点から、1〜1000秒/100mlであることが好ましい。ガーレ透気度は、5秒/100ml以上であることがより好ましく、また、800秒/100ml以下であることがより好ましい。ガーレ透気度がこの範囲であると、分離対象物質の透過を阻害せず、分離膜としての透過性能を充分に発揮できる一方、積層体100の多孔質膜11の表面に分離膜を形成する際、分離膜の原料が積層体100を透過してしまうことが抑制されて、より均質な分離膜が形成され易くなる。ガーレ透気度が小さいほど、透気度は高い。
(積層体の製造方法)
上記のような積層体100は、例えば、繊維基材20を準備する工程と、原料樹脂溶液を準備する工程と、繊維基材20の第1主面20Xに、上記原料樹脂溶液を塗布する工程(塗布工程)と、塗布された原料樹脂溶液の溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)と、を含む方法により製造される。
溶媒除去工程において、繊維基材20に塗布された原料樹脂が固化(あるいは凝固)するとともに、原料樹脂に多数の孔が形成される。原料樹脂に孔を形成する方法は、乾式製膜法および湿式製膜法に大別される。乾式製膜法は、乾燥により溶媒を除去する方法であり、原料樹脂溶液の溶媒の蒸発に伴って多数の孔が形成される。湿式製膜法は、原料樹脂溶液が塗布された繊維基材20を原料樹脂の貧溶媒を含む凝固液に浸漬させて、貧溶媒と溶媒とを置換することによって、原料樹脂を凝固させるとともに、溶媒を除去する方法である。最後に、貧溶媒を除去することにより、多数の孔を有する樹脂多孔体10が得られる。
繊維基材20の第1主面20Xに原料樹脂溶液を塗布する方法は特に限定されず、例えば、原料樹脂溶液をダイから膜状に吐出する方法(ダイキャスト法)、第1主面20Xに樹脂溶液を塗付して余剰分をナイフなどでかきとる方法(ナイフコート法)、原料樹脂溶液をロール上に供給しながらロールに第1主面20Xを当接させて、原料樹脂溶液をロールから第1主面20Xに転写する方法(ロールコート法)などがある。
樹脂多孔体10の原料樹脂を溶解する溶媒としては、原料樹脂との相溶性や孔の形成性に応じて適宜選択すればよい。例えば、原料樹脂としてポリスルホン樹脂またはポリエーテルスルホン樹脂を用いる場合、上記溶媒としては、DMF、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドンなどが好適に用いられる。
原料樹脂の濃度は特に限定されない。なかでも、上記範囲の空隙率を備える多孔質膜11が形成され易い点で、原料樹脂の濃度は35質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。一方、多孔質膜11の平滑性が高まる点で、原料樹脂の濃度は10質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましい。
原料樹脂溶液の粘度は、繊維基材20への過剰な浸透が抑制されて、第1主面20Xに均質な多孔質膜11が形成され易い点で、高い方が望ましい。一方、繊維基材20の隙間に原料樹脂が入り込み易くなる点では、原料樹脂溶液の粘度は過度に高くないことが望ましい。これらの点を考慮すると、B型粘度計を用いて、常温(20〜25℃)で回転数12rpmで測定したときの原料樹脂溶液の粘度は、100mPa・s以上、20000mPa・s以下が好ましい。なかでも、原料樹脂溶液の粘度は、300mPa・s以上がより好ましく、700mPa・s以上が特に好ましい。また、原料樹脂溶液の粘度は、10000mPa・s以下がより好ましい。なお、原料樹脂溶液の粘度が低すぎると、塗布工程の際に、原料樹脂溶液が繊維基材20の塗布面とは反対側の面(第2主面20Y)にまで浸透し、裏漏れする場合がある。原料樹脂溶液が裏漏れすると、塗布装置が汚染されるとともに、繊維基材20に付着する原料樹脂、特に、繊維基材20の第1主面20X上に留まる原料樹脂が減少し、所望の積層体100を得ることが難しくなる。原料樹脂溶液の粘度は、原料樹脂の濃度や増粘剤の添加によって制御することができる。
上記のように、繊維基材20にフッ素含有樹脂あるいは親水性物質(以下、まとめて吸収時間延長材料)を付与する場合、および/または、繊維基材20にプラズマ処理を施す場合、吸収時間延長材料の付与工程あるいはプラズマ処理工程(以下、まとめて吸収時間延長工程)を塗布工程の前に行う。繊維基材20に吸収時間延長材料を付与する方法は特に限定されず、例えば、繊維基材20を吸収時間延長材料の水溶液に浸漬し、乾燥および加熱する方法が挙げられる。
(膜構造体)
膜構造体は、上記積層体100と、分離機能を有する分離膜と、を備える。上記積層体100は、分離膜の支持体として機能する。分離膜の材料は特に限定されず、目的に応じて、従来公知の材料を用いればよい。
分離膜の具体例としては、集塵フィルター、空調フィルター、ナノろ過膜、逆浸透膜、正浸透膜、浸透気化膜および気体分離膜(例えば、二酸化炭素分離膜、水素分離膜、酸素富化膜、酸素透過膜等)等が例示できる。なかでも、本実施形態の積層体100は、有機溶媒との親和性が低減されているため、分離対象物質が有機溶媒を含まないことが好ましい。また、吸収時間延長材料としてフッ素含有樹脂を用いた場合、水への親和性も低減する。そのため、積層体100は、特に集塵フィルター、空調フィルター等の気体分離膜の支持体として適している。
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における性能の評価は、以下の(1)〜(8)の方法に従った。
(1)DMF吸収時間
ビュレットにDMFを入れ、ビュレットの先端を、繊維基材の第1主面から1cmの高さに調整した。ビュレットからDMFを一滴滴下させ、滴下から、液滴が繊維基材に吸収されて鏡面反射が消え、湿潤だけが残る状態までの時間を測定した。測定時間が300秒を超えた場合は、測定を停止して、測定時間を300秒以上とした。同様の試験を、繊維基材の場所をかえて5回行い、測定時間の平均値を算出した。なお、実施例では、樹脂多孔体が付与される前の繊維基材を用いた。後述する評価(2)および(7)も同様である。
(2)繊維基材の空隙率
繊維基材を20cm×20cmに切り取り、試料とした。試料の任意の10点の厚みを厚み計で測定し、平均化して、試料の厚みとした。また、試料の質量を電子天秤で測定して、面積あたりの質量を算出し、上記式1により空隙率を算出した。なお、実施例では、繊維基材としてポリエチレンテレフタレート製の不織布を用いたため、比重には1.36g/cmを用いた。
(3)積層体の多孔質膜側の主面の算術平均粗さRa
積層体の多孔質膜側の主面の算術表面粗さRaを、表面粗さ測定機(サーフテストエクストリーム SV−3000CNC、株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した。測定は、任意の5点に対して行い、平均値を算出した。算術表面粗さRaが0.1μm以上、2μm以下の場合、カットオフ長0.8mm、測定長さ5mm、バンド幅2.67μmで測定した。算術表面粗さRaが2μmより大きく10μm以下の場合、カットオフ長2.5mm、測定長さ15mm、バンド幅8.33μmで測定した。
(4)剥離強度
積層体を30mm×100mmに切り取り、5つの試料を準備した。幅25mm×長さ90mmのホットメルトテープを、試料の多孔質膜の繊維基材とは反対側の主面に貼り付け、120℃で24秒加熱して接着した。ホットメルトテープとともに多孔質膜の一端を50mm剥がし、ホットメルトテープの短辺と繊維基材とをそれぞれ引張試験機のクランプに挟んだ(つかみ間隔50mm)。ホットメルトテープと繊維基材とが50mm剥離するまで、クランプを引張速度100mm/分で離していった。剥離開始時から50mm剥離するまでにかかる荷重を測定し、平均値を算出した。平均値の算出は、荷重の極大値の大きい点から順次3点、荷重の極大値の小さい点から順次3点の計6点の平均値を算出した。同様の測定を5つ試料に対して行い、これらの平均値を剥離強度とした。なお、多孔質膜と繊維基材とが剥離する前に、多孔質膜とホットメルトテープとが剥離した場合、剥離強度は測定上限以上であるとした。
(5)ガーレ透気度
積層体について、JIS L 1913に準じ、ガーレ形法による透気度を測定した。
(6)樹脂多孔体の質量
繊維基材を20cm×20cmに切り取り、3つの試料を準備した。それぞれの試料の質量を測定し、平均値を算出した。別途、同じ繊維基材を用いて積層体を作製し、この積層体を20cm×20cmに切り取って、3つの試料を得た。それぞれの質量を測定し、各平均値を算出した。積層体の平均の質量と繊維基材の平均の質量との差分を積層体の面積(0.04m)で除して、単位面積当たりの樹脂多孔体の平均の質量(g/m)を算出した。
(7)フラジール通気度
繊維基材について、JIS L 1913に準じ、フラジール形法による通気度を測定した。
(8)粘度測定
原料樹脂溶液の粘度を、B型粘度計(型番BM型、株式会社東京計器製造所製)を用いて12rpmの回転数で測定した。測定温度は22℃で行った。
(9)多孔質膜の厚み
積層体を、表面に対して垂直方向に切断し、断面観察試料を作製した。断面観察試料の断面(約250μm×約180μm)を、走査型電子顕微鏡(商品名「S−3000N」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて倍率500倍で撮影し、得られたSEM画像をコンピュータに取り込んだ。多孔質膜の表面から繊維基材に向かって、多孔質膜の法線に平行な直線を引いたときの、多孔質膜の表面から繊維基材までの長さが最小になる箇所(最小地点)を決定し、その長さを測定した。繊維基材が多孔質膜から露出している箇所がある場合、測定値を0とした。異なる10の切断面に対して、それぞれ最小地点を決定してその長さを測定し、これらの平均値を算出した。
[実施例1]
(1)繊維基材の準備
繊維基材として、湿式法で製造されたポリエチレンテレフタレート(融点260℃)製の不織布を用いた。不織布の空隙率は39%、厚みは90μm、フラジール通気度は1.09cm/cm/秒であった。
(2)吸収時間延長材料の付与(吸収時間延長工程)
次いで、繊維基材をフッ素含有撥水撥油剤(NKガードS−07、日華化学株式会社製)2質量%、イソプロパノール4質量%、水94%に調整した水溶液に浸漬し、その後にマングルを用いて絞った。続いて、120℃で30秒加熱して乾燥し、170℃で1分間、加熱処理して、繊維基材の内部に撥水撥油剤を付着させた。
(3)原料樹脂溶液の準備
ポリエーテルスルホン(ガラス転移温度225℃)を、DMFに溶解し、原料樹脂の濃度が22質量%である原料樹脂溶液を調整した。原料樹脂溶液の22℃、回転数12rpmにおける粘度は2250mPa・sであった。
(4)塗布工程
得られた原料樹脂溶液を、繊維基材上に隙間50μmのアプリケーターで塗布した。次いで、この繊維基材を、凝固液として水を用いた凝固浴に浸漬して原料樹脂を固化させて、積層体を得た。
準備した繊維基材、原料樹脂溶液、および、得られた積層体の各物性値を上記評価法に従って評価した。結果をまとめて表1に示す。多孔質膜の表面のSEM写真(倍率1000倍)を図2に示す。また、積層体の断面のSEM写真(倍率500倍)を図3に示す。図2の上方に見えるのが多孔質膜である。
塗布された原料樹脂溶液が少ないものの、DMF吸収時間の長い繊維基材を用いたため、繊維基材の第1主面には、均質で十分な厚みの多孔質膜が形成されていた。剥離強度も十分に高いため、樹脂多孔体と基材繊維との複合層が形成されていることがわかる。また、断面写真からも、複合層が確認できた。この積層体は、ガーレ透気度の値が小さく、表面平滑性が高かった。また、不織布の素材としてポリエチレンテレフタレートを用いるとともに、樹脂多孔体の原料としてポリエーテルスルホンを用いたため、この積層体は、200℃程度の高温条件でも使用可能である。
[実施例2]
繊維基材として、空隙率33%、厚み90μm、フラジール通気度0.73cm/cm/秒の不織布(湿式法で製造されたポリエチレンテレフタレート製不織布)を用いたこと以外、実施例1と同様にして積層体を得て、評価した。結果をまとめて表1に示す。
塗布された原料樹脂溶液が少ないものの、DMF吸収時間の長い繊維基材を用いたため、繊維基材の第1主面には、均質で十分な厚みの多孔質膜が形成されていた。剥離強度も十分に高いため、樹脂多孔体と基材繊維との複合層が形成されていることがわかる。また、断面写真からも、複合層が確認できた。この積層体は、ガーレ透気度の値が小さく、表面平滑性が高かった。なお、実施例2は、実施例1と比較して繊維基材の空隙率が小さいものの、形成された多孔質膜は薄い。これは、繊維基材の構造の違いによるものだと考えられる。
[実施例3]
原料樹脂溶液の原料樹脂の濃度を18質量%にしたこと以外、実施例1と同様にして積層体を得て、評価した。結果をまとめて表1に示す。原料樹脂溶液中の原料樹脂の濃度が低いため、実施例1と比較して、ガーレ透気度の値が小さくなった。繊維基材の第1主面には、均質で十分な厚みの多孔質膜が形成されていた。一方、剥離強度から、樹脂多孔体と基材繊維との複合層が形成されていることがわかる。また、断面写真からも、複合層が確認できた。
[実施例4]
原料樹脂溶液の原料樹脂の濃度を18質量%にしたこと以外、実施例2と同様にして積層体を得て、評価した。結果をまとめて表1に示す。原料樹脂溶液中の原料樹脂の濃度が低いため、実施例2と比較して、ガーレ透気度の値が小さくなった。繊維基材の第1主面には、均質で十分な厚みの多孔質膜が形成されていた。一方、剥離強度から、樹脂多孔体と基材繊維との複合層が形成されていることがわかる。また、断面写真からも、複合層が確認できた。
[実施例5]
原料樹脂溶液の原料樹脂の濃度を20質量%にしたこと以外、実施例2と同様にして積層体を得て、評価した。結果をまとめて表1に示す。原料樹脂溶液中の原料樹脂の濃度が低いため、実施例2と比較して、ガーレ透気度の値が小さくなった。繊維基材の第1主面には、均質で十分な厚みの多孔質膜が形成されていた。一方、剥離強度から、樹脂多孔体と基材繊維との複合層が形成されていることがわかる。また、断面写真からも、複合層が確認できた。
[実施例6]
塗布工程において、アプリケーターの隙間を150μmに変更したこと以外、実施例5と同様にして積層体を得て、評価した。結果をまとめて表1に示す。原料樹脂溶液の塗布量が多いため、実施例5と比較して、多孔質膜が厚くなった。そのため、積層体の多孔質膜側の表面平滑性が向上した。剥離強度から、樹脂多孔体と基材繊維との複合層が形成されていることがわかる。また、断面写真からも、複合層が確認できた。
[比較例1]
繊維基材として、空隙率66%、厚み130μm、フラジール通気度28.96cm/cm/秒の不織布(湿式法で製造されたポリエチレンテレフタレート製不織布)を用いたこと以外、実施例1と同様にして積層体を得て、評価した。結果をまとめて表1に示す。繊維基材の第1主面には多孔質膜が形成されていたものの、第1主面の露出が多く、積層体の多孔質膜側の表面平滑性は低かった。これは、繊維基材の空隙率が過度に高かったためであると考えられる。
[比較例2]
繊維基材として、空隙率48%、厚み85μm、フラジール通気度5.06cm/cm/秒の不織布(湿式法で製造されたポリエチレンテレフタレート製不織布)を用いたこと以外、実施例1と同様にして積層体を得て、評価した。結果をまとめて表1に示す。多孔質膜の表面のSEM写真(倍率1000倍)を図4に示す。この場合も、繊維基材の第1主面には繊維基材の第1主面には多孔質膜が形成されていたものの、第1主面の露出が多く、積層体の多孔質膜側の表面平滑性は低かった。
[比較例3]
吸収時間延長工程を行わなかったこと以外、実施例3と同様にして積層体を得て、評価した。結果をまとめて表1に示す。繊維基材のDMF吸収時間が非常に短いため、原料樹脂溶液のほとんどが繊維基材に浸透してしまい、繊維基材の第1主面に形成された多孔質膜からは、第1主面が多く露出していた。そのため、積層体の多孔質膜側の表面平滑性は低かった。
[比較例4]
塗布工程において、アプリケーターの隙間を250μmに変更したこと以外、比較例3と同様にして積層体を得て、評価した。結果をまとめて表1に示す。原料樹脂溶液の塗布量が過剰であったため、比較例3と比較して、多孔質膜が厚くなった。そのため、多孔質膜の表面平滑性は向上したが、ガーレ透気度の値が非常に大きくなった。また、得られた積層体には、原料樹脂の凝集に起因するカールが発生していた。
[比較例5]
原料樹脂溶液の原料樹脂の濃度を10質量%にしたこと以外、実施例1と同様にして積層体を得て、評価した。結果をまとめて表1に示す。繊維基材の第1主面には繊維基材の第1主面には多孔質膜が形成されていたものの、第1主面の露出が多く、積層体の多孔質膜側の表面平滑性は低かった。また、裏漏れが発生した。これは、原料樹脂溶液の粘度が低く、塗布工程時に原料樹脂溶液の多くが、繊維基材を通過してしまったためであると考えられる。
本発明にかかる積層体は、多孔質膜側の表面平滑性に優れ、さらに、通気性に優れるとともに、多孔質膜と繊維基材との間の層間剥離が生じ難い。そのため、この積層体は、種々の分離膜の支持体として利用できる。
100:積層体
100X:多孔質膜側の主面
10:樹脂多孔体
11:多孔質膜
12:繊維基材の隙間に入り込んだ樹脂多孔体
20:繊維基材
20X:第1主面
20Y:第2主面
20F:構成繊維
20Fa:第1領域
20Fb:第2領域
21:複合領域
22:繊維領域

Claims (12)

  1. 樹脂多孔体と、繊維基材と、を備え、
    前記樹脂多孔体の一部が、前記繊維基材の一方の主面を覆う多孔質膜を形成するとともに、前記樹脂多孔体の他の一部が、前記繊維基材の隙間に入り込んでおり、
    前記樹脂多孔体の質量が1〜35g/mであり、
    前記多孔質膜の厚みが1〜100μmであり、
    前記繊維基材のいずれかの主面にジメチルホルムアミドを滴下してから吸収されるまでの時間が60秒以上である、積層体。
  2. ガーレ法で測定された透気度が1〜1000秒/100mlである、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記繊維基材の空隙率が10〜45%である、請求項1または2に記載の積層体。
  4. 前記繊維基材のフラジール法で測定された通気度が0.2〜20cm/cm/秒である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体。
  5. 前記繊維基材が不織布である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体。
  6. 前記繊維基材の融点が170℃以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層体。
  7. 前記繊維基材を構成する繊維がポリエステル樹脂を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層体。
  8. 前記積層体の前記多孔質膜側の主面の算術平均粗さRaが1.30μm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層体。
  9. 前記多孔質膜が、少なくともポリスルホン樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂のいずれかを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の積層体。
  10. 分離膜の支持体である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の積層体。
  11. 気体分離膜の支持体である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の積層体。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の積層体と、
    分離機能を有する分離膜と、を備える膜構造体。
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