JP6481330B2 - アルカリ水電気分解隔膜用基材 - Google Patents
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Description
本発明は、このような従来のアルカリ水電気分解用隔膜の有する課題に鑑みてなされたものであって、ガス遮断性と高いイオン透過性を備えたアルカリ水電気分解隔膜用基材を提供することを目的とする。
(1)平均単繊維繊度が0.1〜10dtexであって、捲縮数が2〜10山/25mmの熱可塑性繊維で構成されるアルカリ水電気分解隔膜用基材。
(2)前記熱可塑性繊維で構成される基材が、目付が15〜100g/m2であって、通気度が5〜200cc/cm2/秒の不織布を含む(1)に記載のアルカリ水電気分解隔膜用基材。
(3)前記熱可塑性繊維がポリフェニレンサルファイド繊維(PPS)を含むものである(1)または(2)に記載のアルカリ水電気分解隔膜用基材。
(4)前記ポリフェニレンサルファイド繊維が、10〜90重量%の未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を含んでいる(3)に記載のアルカリ水電気分解隔膜用基材。
(5)前記未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維と、当該未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維に接する延伸ポリフェニレンサルファイド繊維とが融着している(4)に記載のアルカリ水電気分解隔膜用基材。
(6)少なくともその表面が親水性処理された湿式不織布である(2)ないし(5)のいずれかに記載のアルカリ水電気分解隔膜用基材。
(7)湿式不織布を構成するポリフェニレンサルファイド繊維の表面に酸素含有基または成分を有し、該酸素含有量が、ESCAで測定して求められるO1s/C1sの原子数比(炭素原子1モルに対する酸素原子のモル比)が0.03以上である(6)に記載のアルカリ水電気分解隔膜用基材。
本発明で用いる熱可塑性繊維としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル系ポリマー、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステル、ポリアミド、ポリケトン等の熱可塑性樹脂で構成される繊維を挙げることができる。これらは単独で使用しても、2種類以上を同時に使用してもよい。なかでも耐薬品性能の点から好ましい熱可塑性繊維は、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド等で構成される繊維であり、なかでもアルカリ水に対する耐性が優れる素材で構成される繊維が好ましく、特にポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン等フェニレンスルフィド単位を有する重合体で構成される繊維が好ましい。繊維がフェニレンサルファイド単位を有する樹脂で構成される場合、高温、高濃度のアルカリ溶液に対しても優れた耐性を示すことで装置の高効率化が可能であり、水の電気分解時に陽極から発生する活性酸素についても化学的な安定性を示す。かかる観点で最も好ましいのはポリフェニレンサルファイド繊維である。
また、捲縮数が2山/25mm未満の熱可塑性繊維は繊維間の接触面積が大きくなるため、疑似接着を起こし、分散性不良を起こしやすく、シートに粗大孔が発生する。また、捲縮数が10山/25mmを超えると、繊維間が絡合しやすく、抄紙工程において分散性不良を起こす。捲縮数の好ましい範囲は2〜10山/25mmであり、より好ましくは4〜8山/25mmである。
本発明で用いられるポリフェニレンサルファイド繊維を構成するポリフェニレンサルファイドは、ポリマー構成単位として、−(C6H4−S)−を主な単位とする重合体であり、p−フェニレン単位の他、フェニレンスルフィドスルホン単位、フェニレンスルフィドケトン単位を含んでいてもよく、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物であってよい。ポリフェニレンサルファイドとしては、p−フェニレン単位を、90モル%以上含有することが好ましい。
本発明の基材は、上記繊度及び捲縮数を有する熱可塑性繊維で構成されるものであるが、その形態としては、例えば、織布、不織布、ネット、メッシュ等のシート状物が挙げられる。ガス遮断性とイオン透過性を両立するためには、シート状物が緻密かつ均一な空隙形状を有することが好ましい。この観点から本発明の基材としては不織布が特に適している。
繊維長≧13/捲縮数(山/25mm) 式(1)
繊維長≧25/捲縮数(山/25mm) 式(2)
本発明において、上記アルカリ水電気分解隔膜用基材はさらに、有機高分子樹脂層を備えることが好ましい。
有機高分子樹脂としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリビニリデンフロライド、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等を挙げることができる。これらは単独で使用しても、2種類以上を同時に使用してもよい。
有機高分子樹脂層は、基材の両面に形成してもよいし、基材のいずれか一方の面に配置してもよいが、ガス遮断性をより高めるためには、基材の両面に有機高分子樹脂層を形成するのが好ましい。いずれか一方の有機高分子樹脂層が損傷した場合においても、片方の有機高分子樹脂層でガス遮断性を確保することができるからである。
(1)有機高分子樹脂と、有機高分子樹脂の溶媒とを含有する溶液を調製する工程
(2)上記溶液を基材に塗工し、基材上に塗膜を形成する工程
(3)上記塗膜の基材とは反対側の表面を、水分を含む気体に晒し、水分を塗膜の厚み方向の中間の位置まで浸透させる工程
(4)基材の塗膜を、有機高分子樹脂の非溶媒を含む凝固浴に浸漬させ、微多孔膜を形成する工程
本発明におけるアルカリ水電解装置は、アルカリ水電解用隔膜、陽極及び陰極を備えたものである。アルカリ水電解装置の内部は、アルカリ水電解用隔膜を介して、陽極が備えられている陽極室と、陰極が備えられている陰極室に仕切られ、それぞれの電極で発生した酸素ガスと水素ガスがアルカリ水電解用隔膜に遮断されて混合しないよう構成されている。
アルカリ水電解装置を使用して行うアルカリ水電解の方法は、アルカリ水電解装置の内部をアルカリ溶液で満たし、陽極と陰極の間に直流電流を印加して行うものとする。アルカリ溶液としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの水溶液が用いられる。アルカリ溶液の濃度は、特に限定されるものではないが、15〜40重量%が好ましく、20〜35重量%がより好ましい。15〜40重量%の範囲であれば、溶液のイオン伝導性が十分発現され、溶液による電気抵抗を軽減することができる。
単繊維繊度は、JIS L 1015(2010年)8.5A法に準じて測定する。また繊維長はJIS L 1015(2010年)8.4.1C法(直接法)に準じて測定する。なお、試料の繊維長が前記JIS L 1015(2010年)8.4.1C法(直接法)に規定される長さに満たない場合、繊維を伸長せずにまっすぐに伸ばして暫定長にカットし、長さ(mm)×本数=9000±900となる本数を一組とし、その質量と一組分の総長から見掛け繊度を求める。
JIS L 1015(2010年)8.12.1に示される方法を基に捲縮数(個/25mm)を測定した。試料原綿を、紙片上に、捲縮試験機のつかみ間の距離(空間距離)に対して25±5%の緩みをもたせて両端を接着剤で貼り付けて固着させた。この試料を1本ずつ、捲縮試験機のつかみに取り付け、紙片を切断した後、試料に初荷重1.8mg×繊度(dtex)をかけたときの、つかみ間の距離(空間距離)(mm)を読み、そのときの捲縮数を数え、25mm間当たりの捲縮数を求め20回の平均値を算出した。基材を構成する繊維を測定する際は、破断しないよう繊維を基材から抜き、同様に測定する。なお、繊維長が上記JIS L 1015(2010年)8.12.1に規定する範囲に満たない場合、1本の繊維中に少なくとも捲縮一つ分(例えば一つの山頂から隣の山頂まで)、または、捲縮1/2分(すなわち一つの山頂から隣の谷底まで)を含む繊維を測定に供するものとし、25mmあたりの捲縮数に換算するものとする。測定数は前者(1本の繊維中に少なくとも捲縮一つ分を含む繊維)の場合、20回とし、後者(1本の繊維中に捲縮1/2分を含む繊維)の場合、40回とした。
JIS L 1913(2010年)6.2に準じて、25cm×25cmの試験片を3枚採取し、標準状態(20℃、65%相対湿度) におけるそれぞれの質量(g)を量り、1 m2当たりの質量(g/m2)で表した。
JIS L 1096(1990年)6.27.1A法に規定されるフラジール法に基づいて測定した。25cm×25cmの試験片を3枚採取し、標準状態(20℃、65%相対湿度) に調湿後、それぞれ不織布の長手方向3箇所とそれぞれの幅方向3箇所の計9点選んで測定した平均で表した。不織布の長手方向とは、不織布製造時の流れ方向をいい、幅方向とは、長手方向に直交する方向をいう。試験圧力は125Pa、口径は76mmとした。
日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡S−3500Nを用いて、試験片を倍率300倍で観察したとき、1画面中に表示できる試験片の面積に相当する0.14mm2内に存在する繊維のうち、隣り合う繊維との境界線が消えて不明確である部分があれば「融着有」、なければ「融着無」とした。なお、観察したのは加熱加圧処理で金属ロールに接触していた面とする。
装置:ESCALAB220iXL
励起X線:monochromatic AlKα1、2線(1486.6eV)
X線径:1mm
光電子脱出角度:90°(試料表面に対する検出器の傾き)
横軸補正:C1sメインピークを284.6eVに合わせた。
JIS K 3832(1990年)に規定されるバブルポイント試験方法に準じて測定した。20kPa/minで昇圧し、フィルタディスク面から連続した気泡の出現が認められたときの圧力を読みとった。この圧力以下においては通気しないので、3点の圧力(kPa)の平均を気密性として、下記の表3に示す。
旧JIS C 2313(1995年)に準じて測定した。電解液は、濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液を用いた。電極としては、Ni電極を用いた。測定時の液温は25℃に設定した。測定は、電解用隔膜を電解液に10分間浸漬させた後に行った。
気密性と電気抵抗の結果より、隔膜を以下の表1に示す基準により総合判定した。
延伸ポリフェニレンサルファイド繊維として、メルトフローレート値が165g/10分の粉粒体状のペレットを溶融紡糸して巻き取り、未延伸糸を得た後、この未延伸糸を温度95℃の温水浴中を通過させて延伸し、捲縮を施して単繊維繊度1.0dtex(直径10μm)、カット長6mm、捲縮数6山/25mmの原綿を得た。また、紡糸、巻き取り後、温水浴を通過させて延伸する工程は行わず、捲縮を施した未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維として、単繊維繊度3.0dtex(直径17μm)、カット長6mm、捲縮数6山/25mmのものを得た。
ポリフェニルスルホン(ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社の商品名“レーデル”)25重量%、ポリエチレンオキサイド(Mw(重量平均分子量)100000(SIGMA−ALDRICH社製)10重量%、N−メチル−2−ピロリドン(和光純薬工業株式会社製)65重量%をそれぞれ用い、十分攪拌し塗工液として得た。
延伸ポリフェニレンサルファイド繊維と未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維とを、重量比で、延伸ポリフェニレンサルファイド繊維対未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維=60対40となるように水に分散させ抄紙分散液とし、底に140メッシュの手漉き抄紙網を設置した大きさ25cm×25cm、高さ40cmの小型抄紙機(熊谷理機工業社製)に仕上がりの目付が100g/m2となるように投入した以外は実施例1と同様の方法で加工し、実施例1と同様の方法でプラズマ処理を実施して、実施例2の両面圧着不織布を得た。
延伸ポリフェニレンサルファイド繊維と未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維とを、重量比で、延伸ポリフェニレンサルファイド繊維対未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維=60対40となるように水に分散させ抄紙分散液とし、底に140メッシュの手漉き抄紙網を設置した大きさ25cm×25cm、高さ40cmの小型抄紙機(熊谷理機工業社製)に仕上がりの目付が110g/m2となるように投入した以外は実施例1と同様の方法で加工し、実施例1と同様の方法でプラズマ処理を実施して、実施例3の両面圧着不織布を得た。
延伸ポリフェニレンサルファイド繊維の単繊維繊度を0.1dtexとした以外は実施例1と同様の方法で加工し、実施例1と同様の方法でプラズマ処理を実施して、実施例4の両面圧着不織布を得た。
延伸ポリフェニレンサルファイド繊維の単繊維繊度10dtexとした以外は実施例1と同様の方法で加工し、実施例1と同様の方法でプラズマ処理を実施して、実施例5の両面圧着不織布を得た。
延伸ポリフェニレンサルファイド繊維および未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維の捲縮数をそれぞれ2山/25mmとした以外は実施例1と同様の方法で加工し、実施例1と同様の方法でプラズマ処理を実施して、実施例6の両面圧着不織布を得た。
延伸ポリフェニレンサルファイド繊維および未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維の捲縮数をそれぞれ10山/25mmとした以外は実施例1と同様の方法で加工し、実施例1と同様の方法でプラズマ処理を実施して、実施例7の両面圧着不織布を得た。
プラズマ処理を行わないこと以外は実施例1と同様の方法で加工して、実施例8の両面圧着不織布を得た。
プラズマ処理を行わないこと以外は実施例2と同様の方法で加工して、実施例9の両面圧着不織布を得た。
延伸ポリフェニレンサルファイド繊維として、単繊維繊度1.0dtex(直径10μm)、カット長6mmのストレート繊維を用いること、未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維として、単繊維繊度3.0dtex(直径17μm)、カット長6mmのストレート繊維を用いた以外は実施例1と同様の方法で加工し、実施例1と同様の方法でプラズマ処理を実施して、比較例1の両面圧着不織布を得た。
延伸ポリフェニレンサルファイド繊維として、単繊維繊度1.0dtex(直径10μm)、カット長6mm、捲縮数12山/25mm、未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維として、単繊維繊度3.0dtex(直径17μm)、カット長6mm、捲縮数12山/25mmを用いること以外は実施例1と同様の方法で加工し、実施例1と同様の方法でプラズマ処理を実施して、比較例2の両面圧着不織布を得た。
延伸ポリフェニレンサルファイド繊維の単繊維繊度を0.01dtex、未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維の単繊維繊度を0.03dtexとした以外は実施例1と同様の方法で加工し、実施例1と同様の方法でプラズマ処理を実施して、比較例3の両面圧着不織布を得たが、短繊維同士が分散せず、基材にムラがみられた。
延伸ポリフェニレンサルファイド繊維の単繊維繊度を12dtex、未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維の単繊維繊度を36dtexとした以外は実施例1と同様の方法で加工しようとしたところ、抄紙時の脱水フェルトに転写されないため抄紙ができなかった。
Claims (6)
- 平均単繊維繊度が0.1〜10dtexであって、捲縮数が2〜10山/25mmの熱可塑性繊維で構成されるアルカリ水電気分解隔膜用基材において、前記熱可塑性繊維で構成される基材が、目付が15〜100g/m 2 であって、通気度が5〜200cc/cm 2 /秒の不織布を含むものであるアルカリ水電気分解隔膜用基材。
- 前記熱可塑性繊維がポリフェニレンサルファイド繊維を含むものである請求項1に記載のアルカリ水電気分解隔膜用基材。
- ポリフェニレンサルファイド繊維が、10〜90重量%の未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を含んでいる請求項2に記載のアルカリ水電気分解隔膜用基材。
- 未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維と、当該未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維に接する延伸ポリフェニレンサルファイド繊維とが融着している請求項3に記載のアルカリ水電気分解隔膜用基材。
- 少なくともその表面が親水性処理された湿式不織布である請求項1〜4のいずれかに記載のアルカリ水電気分解隔膜用基材。
- 湿式不織布を構成するポリフェニレンサルファイド繊維の表面に酸素含有基または成分を有し、該酸素含有量が、ESCAで測定して求められるO1s/C1sの原子数比(炭素原子1モルに対する酸素原子のモル比)が0.03以上である請求項5に記載のアルカリ水電気分解隔膜用基材。
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