JP2014090162A - カバーレイフィルムおよびフレキシブルプリント配線板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導電性材料からなる電磁波シールド層12と、電磁波シールド層12よりも表面抵抗が大きい抵抗体層14と、電磁波シールド層12と抵抗体層14との間に設けられた絶縁性樹脂層16とを有し、電磁波シールド層12には、その厚さ方向に貫通した、複数の開口部20が設けられているカバーレイフィルム10を用いる。
【選択図】図2
Description
(1)耐熱プラスチックフィルム表面の銅箔配線回路上に、アンダーコート層、金属粉を含む導電ペーストを塗布したシールド層、オーバーコート層を順次設け、銅箔配線回路のグランドパターンとシールド層とが適宜の間隔でアンダーコート層を貫通して電気的に接続しているフレキシブルプリント配線板(特許文献1)。
(2)カバーレイフィルムの片面に金属薄膜層と金属フィラーを含む導電性接着剤層とを順次設けた電磁波シールドフィルムを、プリント回路のうちグランド回路の一部を除いて絶縁する絶縁層が設けられた基体フィルム上に、導電性接着剤層が絶縁層およびグランド回路の一部と接着するように載置したフレキシブルプリント配線板(特許文献2)。
(3)カバーレイフィルムの一方の面に電磁波シールド層を設け、他方の面に電磁波シールド層より大きい面積を有する抵抗体層を設け、電磁波シールド層に高周波電流となって流れる電磁波ノイズを、電磁波シールド層の縁端部から抵抗体層に渦電流として流して抵抗体層で熱損失させるカバーレイフィルム付きフレキシブルプリント配線板(特許文献3)。
(i)金属粉を含むシールド層は、多くの異種材料界面を有しているため脆く、フレキシブル配線板の屈曲繰り返しに対し、十分な強度を有していない。
(ii)グランドパターンの一部を除く銅箔配線回路とシールド層との絶縁を保つためにアンダーコート層が必要であり、フレキシブルプリント配線板が厚くなる。
(iii)グランドパターンの一部とシールド層とを電気的に接続するために、アンダーコート層の一部に透孔を形成する必要があり、透孔の加工に手間がかかる。
(i)金属フィラーを含む導電性接着剤層は、多くの異種材料界面を有しているため脆く、フレキシブル配線板の屈曲繰り返しに対し、十分な強度を有していない。
(ii)グランド回路の一部を除くプリント回路と導電性接着剤層との絶縁を保つために絶縁層が必要であり、フレキシブルプリント配線板が厚くなる。
(iii)グランド回路の一部と導電性接着剤層とを電気的に接続するために、絶縁層の一部に貫通孔を形成する必要があり、貫通孔の加工に手間がかかる。
(i)電磁波シールド層を抵抗体層より小さく設計する必要があるため、配線導体のパターン等が異なるフレキシブルプリント配線板の種類ごとに電磁波シールド層の位置やサイズを設計し、それに合わせて抵抗体層の位置やサイズを設計しなければならない。また、フレキシブルプリント配線板本体とカバーレイフィルムとを貼り合わせる際に位置あわせが必要となり実用的とは言い難い。
(ii)高周波電流が電磁波シールド層の縁端部に到達し、抵抗体層によって減衰されるまでに時間を要する。
(3)本発明の一態様における(1)または(2)に記載のカバーレイフィルムにおいては、前記開口部の合計の面積は、前記絶縁性樹脂層の面積の50%以下であることが好ましい。
L<λ/4×(μeff×εeff)−1/2 ・・・(1)
式中、μeffは、実効比透磁率であり、εeffは、実効比誘電率である。
(6)本発明の一態様における(1)〜(5)のいずれか1つに記載のカバーレイフィルムは、最表面に、絶縁性保護層を有することが好ましい。
(7)本発明の一態様における(1)〜(6)のいずれか1つに記載のカバーレイフィルムは、最表面に、絶縁性接着剤層を有することが好ましい。
また、本発明の他の態様におけるフレキシブルプリント配線板は、電磁波シールド機能を有し、電磁波シールド層に流れる高周波電流が速やかに減衰し、屈曲性に優れ、薄肉化が可能であり、配線導体のパターンに合わせて電磁波シールド層や抵抗体層の位置やサイズを設計する必要がなく、かつ電磁波シールド層をグランド回路に接続させる必要がない。
本明細書において層の厚さとは、透過型電子顕微鏡等を用いて層の断面を観察し、層の5箇所の厚さを測定し、平均した値のことをいう。
本明細書において、表面抵抗は以下の方法で求められる。石英ガラス上に金を蒸着して形成した、2本の薄膜金属電極(長さ10mm、幅5mm、電極間距離10mm)を用い、該電極上に被測定物を置き、被測定物上から、被測定物の10mm×20mmの領域を50gの荷重で押し付け、1mA以下の測定電流で電極間の抵抗を測定し、この値を持って表面抵抗とする。
図1は、本発明のカバーレイフィルムの第1の態様を示す平面図であり、図2は、図1のII−II断面図である。なお、図1中に記載されるX軸は、Y軸と直交している。
第1の態様のカバーレイフィルム10は、電磁波シールド層12と、抵抗体層14と、電磁波シールド層12と抵抗体層14との間に設けられた絶縁性樹脂層16とを有する。
電磁波シールド層12には、電磁波シールド層12の厚さ方向に貫通した、複数のスリット状の開口部20が設けられている。
なお、図1に示される開口部20は、矩形状であるが、本実施形態において開口部20の形状はこれに限定されない。開口部20の形状は、一方向に伸びた長軸を有する形状であればよい。開口部20の形状は、一方向に伸張された楕円状であってもよい。楕円状は、楕円に限らず、円が一方向に伸張されたものであってもよい。また、開口部20の形状は、矩形の4つの角が丸められた形状であってもよい。さらに、開口部20の形状は、互いに異なっていてもよい。
複数の開口部20は、X方向に伸びる複数の開口部20aが所定の間隔をあけて平行に並んだ第1のグループと、Y方向に伸びる複数の開口部20bが所定の間隔をあけて平行に並んだ第2のグループとに分けられる。第1のグループと第2のグループとは、隣接しかつX方向およびY方向のそれぞれに交互に配列している。
図1に示される第1のグループの開口部20は、互いに平行になるように配置され、第2グループの開口部20も同様に互いに平行になるように配置されているが、本実施形態はこれに限定されない。第1のグループの開口部20と、第2グループの開口部20は、それぞれ実質平行になるように配置されていればよく、平行からずれる許容範囲は±45度以内である。
図1に示される第1のグループの開口部20と、第2グループの開口部20は、その長軸が直交するように配置されているが、本実施形態はこれに限定されない。第1のグループの開口部20の長軸を延長したとき、第2グループの開口部20の長軸と交差するように配置されていればよく、具体的には交差する角度が0度〜90度であればよい。
抵抗体層14が絶縁性樹脂層16の一方の表面の全面に形成されているため、カバーレイフィルム10の表面の法線方向からみて、電磁波シールド層12の開口部20の周縁である、開口部20と非開口部22との境界24は、抵抗体層14と必ず重なる。
言い換えれば、開口部20の周縁は、絶縁性樹脂層16を間に介して抵抗体層14と必ず重なるように位置している。開口部20の周縁をカバーレイフィルム10の厚さ方向に延長すると、必ず抵抗体層14が存在する。
第2の態様のカバーレイフィルム10は、電磁波シールド層12と、抵抗体層(図示略)と、電磁波シールド層12と抵抗体層との間に設けられた絶縁性樹脂層(図示略)とを有する。
電磁波シールド層12には、電磁波シールド層12の厚さ方向に貫通した、複数の楕円状の開口部20が設けられている。楕円状は、楕円に限らず、円が一方向に伸張されたものであっても良い。
図3において、開口部20の形状は楕円状であるが、本実施形態はこれに限定されない。図1に記載されるような矩形状であってもよい。また、開口部20の形状は、矩形の4つの角が丸められた形状であっても良い。
複数の開口部20として、長径がX方向から+45度傾斜した複数の開口部20cと、長径がY方向から+45度傾斜した複数の開口部20dとが存在する。開口部20cと開口部20dとは、X方向から+45度傾斜した方向およびY方向から+45度傾斜した方向のそれぞれに交互に配列している。
図3において、開口部20cは、長径がX方向から+45度傾斜しているが、本実施形態はこれに限定されない。開口部20cは、長径がX方向から+0度〜+90度傾斜していればよい。また、開口部20dは、長径がX方向から−45度傾斜しているが、本実施形態はこれに限定されない。開口部20dは、長径がX方向から−0度〜−90度傾斜していればよい。
抵抗体層が絶縁性樹脂層の一方の表面の全面に形成されているため、カバーレイフィルム10の表面の法線方向からみて、電磁波シールド層12の開口部20の周縁である、開口部20と非開口部22との境界24は、抵抗体層と必ず重なる。
言い換えれば、開口部20の周縁は、絶縁性樹脂層を間に介して抵抗体層と必ず重なるように位置している。開口部20の周縁をカバーレイフィルム10の厚さ方向に延長すると、必ず抵抗体層が存在する。
第3の態様のカバーレイフィルム10は、電磁波シールド層12と、抵抗体層14と、電磁波シールド層12と抵抗体層14との間に設けられた絶縁性樹脂層16とを有する。
電磁波シールド層12には、電磁波シールド層12の厚さ方向に貫通した、複数の開口部20が設けられている。
抵抗体層14には、抵抗体層14の厚さ方向に貫通した、複数の欠落部26が設けられている。
抵抗体層14の非欠落部28が、電磁波シールド層12の開口部20に対向し、かつ開口部20よりも一回り大きく形成されているため、カバーレイフィルム10の表面の法線方向からみて、電磁波シールド層12の開口部20の周縁である、開口部20と非開口部22との境界24は、抵抗体層14の非欠落部28と必ず重なる。
言い換えれば、開口部20の周縁は、絶縁性樹脂層16を間に介して抵抗体層14の非欠落部28と必ず重なるように位置している。開口部20の周縁をカバーレイフィルム10の厚さ方向に延長すると、必ず抵抗体層14の非欠落部28が存在する。
開口部とは、穴が開いた空間ではなく、電磁波シールド層が欠落している箇所であることを意味する。
第4の態様のカバーレイフィルム10は、第1の態様のカバーレイフィルム10の電磁波シールド層12の表面に絶縁性接着剤層30が設けられ、抵抗体層14の表面に絶縁性保護層32が設けられたものである。
つまり、絶縁性樹脂層16と絶縁性接着剤層30との間に電磁波シールド層12が挟まれるように、絶縁性接着剤層30が形成されている。絶縁性樹脂層16と絶縁性保護層32との間に抵抗体層14が挟まれるように、絶縁性保護層32が形成されている。
電磁波シールド層12の開口部20は、絶縁性接着剤層30で埋められている。
絶縁性接着剤層30の表面には、剥離フィルム34がさらに設けられている。
つまり、電磁波シールド層12と剥離フィルム34との間に絶縁性接着剤層30が挟まれるように、剥離フィルム34が形成されている。
第5の態様のカバーレイフィルム10は、第1の態様のカバーレイフィルム10の抵抗体層14の表面に絶縁性接着剤層30が設けられ、電磁波シールド層12の表面に絶縁性保護層32が設けられたものである。
つまり、絶縁性樹脂層16と絶縁性接着剤層30との間に抵抗体層14が挟まれるように、絶縁性接着剤層30が形成される。絶縁性樹脂層16と絶縁性保護層32との間に電磁波シールド層12が挟まれるように、絶縁性保護層32が形成される。
電磁波シールド層12の開口部20は、絶縁性保護層32で埋められている。
絶縁性接着剤層30の表面には、剥離フィルム34がさらに設けられている。
つまり、抵抗体層14と剥離フィルム34との間に絶縁性接着剤層30が挟まれるように、剥離フィルム34が形成される。
電磁波シールド層12は、導電性材料からなる層である。電磁波シールド層12の表面抵抗は、電磁波シールド機能の点から、0.01〜5Ωが好ましく、0.01〜1Ωがより好ましい。
導電性材料としては、金属(金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル等);導電性粒子(金属粒子等)、導電性繊維(金属繊維、カーボンナノチューブ等)等を樹脂に混合した導電性樹脂(導電ペースト等);導電性高分子(ポリチオフェン、ポリピロール等)等が挙げられる。
金属蒸着膜は、物理的蒸着法(EB蒸着法、イオンビーム蒸着法、スパッタ法等)により形成される。緻密な膜質を形成できる点から、スパッタ法が好ましい。
金属蒸着膜の厚さは、表面抵抗値、耐屈曲特性の点から、50〜200nmが好ましい。
開口部20の合計の面積は、絶縁性樹脂層16の面積の1〜50%が好ましく、1〜20%がより好ましい。絶縁性樹脂層16の面積とは、電磁波シールド層12の厚さ方向と概ね直交する面であり、かつ電磁波シールド層12と接する側の絶縁性樹脂層16の面の面積のことを意味する。開口部20の合計の面積が絶縁性樹脂層16の面積の50%以下であれば、電磁波シールド機能の低下が抑えられる。開口部20の合計の面積が絶縁性樹脂層16の面積の1%以上であれば、電磁波シールド層12に流れる高周波電流が減衰しやすい。
L<λ/4×(μeff×εeff)−1/2 ・・・(1)
μeffは、実効比透磁率であり、εeffは、実効比誘電率である。なお、比透磁率および比誘電率は物質固有の値だが、本実施形態で電磁波シールド層12として用いる材料は複合した材料からなるため、ここでは複雑とならないよう近似値として実効比透磁率、実効比誘電率を用いる。
最大開口長Lがλ/4×k以上であると、波長λの電磁波は、開口部20を通過することになり、電磁波シールド機能が低下する。仮に対象とする電磁波ノイズの周波数を30GHzとすると、最大開口長Lは、おおよそ6mm(k=0.6の場合)以下とすることが好ましい。最大開口長Lの下限は、加工可能な値である0.01mmとする。
抵抗体層14は、電磁波シールド層12よりも高い表面抵抗を有する層である。抵抗体層14の表面抵抗は、電磁波シールド層12に流れる高周波電流が減衰しやすい点から、1〜1000Ωが好ましく、2〜500Ωが好ましく、10〜200Ωが特に好ましい。
強磁性金属としては、鉄、カルボニル鉄、鉄合金(Fe−Ni、Fe−Co、Fe−Cr、Fe−Si、Fe−Al、Fe−Cr−Si、Fe−Cr−Al、Fe−Al−Si、Fe−Pt等)、コバルト、ニッケル、これらの合金等が挙げられる。
常磁性金属としては、金、銀、銅、錫、鉛、タングステン、ケイ素、アルミニウム、チタン、クロム、タンタル、モリブデン、それらの合金、アモルファス合金、強磁性金属との合金等が挙げられる。このうち、固有抵抗値が低い金属は金、銀、銅、アルミニウムであり、抵抗体層14を薄くすることで、表面抵抗を高く調整できる。
金属としては、酸化に対して抵抗力のある点から、ニッケル、鉄クロム合金、タングステン、クロム、タンタルが好ましく、実用的には、ニッケル、ニッケルクロム合金、鉄クロム合金、タングステン、クロム、タンタルがより好ましく、ニッケルまたはニッケル合金が特に好ましい。
導電性セラミックスは、物理的蒸着法における反応性ガスとして、窒素、炭素、ケイ素、ホウ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる1種以上の元素を含むガスを用いることによって容易に得られる。
抵抗体層14の厚さは、5〜100nmが好ましい。
よって、図2の第1の態様においては、境界24の下に必ず抵抗体層14が存在するように、抵抗体層14は全面にわたって設けられている。また、図4の第3の態様に示すように、非開口部22の中央部においては、高周波電流が集中しないため、非開口部22の中央部に対向する部分に抵抗体層14を配置する必要はなく、欠落部26を形成してもよい。
絶縁性樹脂層16は、樹脂またはゴム弾性体からなる層である。絶縁性樹脂層16の表面抵抗は、1×106Ω以上が好ましい。
絶縁性樹脂層16としては、フィルムからなる層、塗料を塗布して形成された塗膜等が挙げられる。フィルムは、高分子材料を押出し、キャスト等で形成したものであり、低分子の塗料を架橋させてなる塗膜と比較して、強度が高いので、フィルムからなる層が好ましい。
絶縁性樹脂層16の厚さは、可とう性の点から、3〜25μmが好ましい。
カバーレイフィルム本体は、上述の電磁波シールド層12、抵抗体層14および絶縁性樹脂層16からなり、その厚さは、屈曲性の点から、5〜50μmが好ましい。カバーレイフィルム本体の厚さが5μm以上であれば、カバーレイフィルム10が十分な強度を有し、絶縁信頼性が高くなる。カバーレイフィルム本体の厚さが50μm以下であれば、フレキシブルプリント配線板の屈曲性が良好となり、繰り返しの折り曲げによっても配線導体にクラックが生じにくく、断線しにくい。
絶縁性接着剤層30は、カバーレイフィルム本体をフレキシブルプリント配線板本体に貼着させるものである。
絶縁性接着剤としては、エポキシ樹脂に可とう性付与のためのゴム成分(カルボキシル変性ニトリルゴム等)を含有させた半硬化状態のものが好ましい。該絶縁性接着剤は、熱プレス等の加熱により流動状態となり、再活性化することにより接着性を発現する。
絶縁性接着剤中には、絶縁性接着剤が流動して電磁波シールド層12とフレキシブルプリント配線板本体の配線導体とが接触することを防ぐために、粒径が1〜10μm程度のスペーサー粒子を含むことも可能であり、該粒子が、流動性調整あるいは難燃性等の別の機能を有していても構わない。
絶縁性保護層32は、カバーレイフィルム10をフレキシブルプリント配線板本体に貼着させた後においても、フレキシブルプリント配線板の最表面に位置する層であり、外部の接触から電磁波シールド層12または抵抗体層14を保護する層である。
絶縁性保護層32としては、フィルムからなる層、塗料を塗布して形成された塗膜等が挙げられる。
樹脂としては、絶縁性樹脂層16の樹脂と同様のものが挙げられる。
絶縁性保護層32の厚さは、可とう性の点から、3〜25μmが好ましい。
以上説明したカバーレイフィルム10にあっては、下記の理由から電磁波シールド層12をフレキシブルプリント配線板本体のグランド回路に接続させなくても、電磁波シールド機能を有する。そのため、電磁波シールド層12をグランド回路に接続させるために接着剤層に導電性を付与する必要がなくなる。よって、従来は数千回の屈曲により接続が容易に断線したが、本発明のフレキシブルプリント配線板ではそのようなことがなく、屈曲性が向上する。また、接着剤層が導電性を有さないため、接着剤層とフレキシブルプリント配線板本体の配線導体との間を絶縁するための絶縁層が不要となり、フレキシブルプリント配線板本体における前記絶縁層の厚みの分を薄肉化することが可能となり、具体的には、50μm程度薄肉化することが可能である。
グランド回路に接続していない電磁波シールド層12はアンテナとして働き、電磁波ノイズは電磁波シールド層12内を高周波電流となって流れ、その縁端部である境界24から再度放出される。再放出時には、境界24に電磁界の変動が生まれ、そのうち磁界変動に伴う渦電流が抵抗体層14に流れて、熱損失するため、電磁波ノイズのエネルギーが減衰するものと考えられる。
そして、電磁波シールド層12が欠落した開口部20が複数あることから、電磁波シールド層12内を流れる高周波電流を、速やかに減衰させることができる。また、フレキシブルプリント配線基板本体等の配線導体のパターンに影響されない、複数の独立した開口部20を有するため、フレキシブルプリント配線板本体と貼り合わせる際に位置あわせ等の手間を省力できるという効果を有する。
図7は、本発明のフレキシブルプリント配線板の第1の態様を示す断面図である。
第1の態様のフレキシブルプリント配線板40は、フレキシブルプリント配線板本体50と第4の態様のカバーレイフィルム10とを有する。絶縁性フィルム52の表面に配線導体54が形成されている。第2の絶縁性樹脂層58は、配線導体54の上に第2の絶縁性接着剤層56によって貼着されている。第4の態様のカバーレイフィルム10は、フレキシブルプリント配線板本体50の第2の絶縁性樹脂層58の表面に、絶縁性接着剤層30によって貼着されている。
第2の態様のフレキシブルプリント配線板40は、フレキシブルプリント配線板本体50と第5の態様のカバーレイフィルム10とを有する。配線導体54は、絶縁性フィルム52の表面に形成されている。第2の絶縁性樹脂層58は、配線導体54の上に第2の絶縁性接着剤層56によって貼着されている。第5の態様のカバーレイフィルム10は、フレキシブルプリント配線板本体50の第2の絶縁性樹脂層58の表面に、絶縁性接着剤層30によって貼着されている。
折り曲げ外径とは、図10に示すようにスライドする2枚の基板72および基板74に、フレキシブルプリント配線板40が折り曲がるように固定された場合の、基板72と基板74との間隔Dである。
フレキシブルプリント配線板本体50は、銅張積層板の銅箔を既存のエッチング手法により所望の形状の配線導体54を形成し、その上に通常のカバーレイフィルム(第2の絶縁性接着剤層56と第2の絶縁性樹脂層58との積層体)を貼着したものである。
銅張積層板としては、絶縁性フィルム52の少なくとも片面側に銅箔を接着剤で貼り合わせた2〜3層構造のもの;銅箔上に絶縁性フィルム52を形成する樹脂溶液等をキャストした2層構造のもの等が挙げられる。
絶縁性フィルム52の表面抵抗は、1×106Ω以上1×1014Ω以下が好ましい。
絶縁性フィルム52としては、耐熱性を有するフィルムが好ましく、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム等がより好ましい。
絶縁性フィルム52の厚さは、5〜50μmが好ましく、屈曲性の点から、6〜25μmがより好ましく、10〜25μmが特に好ましい。
配線導体54は、銅張積層板の銅箔を所望の形状にパターニングしたものである。
銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられ、屈曲性の点から、圧延銅箔が好ましい。
銅箔の厚さは、3〜18μmが好ましい。
電磁波シールド層12および抵抗体層14は、フレキシブルプリント配線板40の配線導体54、外部の導体等に触れないように、絶縁性保護層32と第2の絶縁性樹脂層58との間に存在することが好ましい。
第2の絶縁性樹脂層58としては、フィルムからなる層が好ましく、絶縁性樹脂層16と同様で構わない。
第2の絶縁性接着剤層56の絶縁性接着剤層としては、絶縁性接着剤層30の絶縁性接着剤層と同様のものが挙げられる。
第2の絶縁性接着剤層56の厚さは、絶縁性接着剤が流動状態となり、フレキシブルプリント配線板40の配線導体54間を十分に埋めるため、5〜40μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。
第2の絶縁性接着剤層56の厚さは、可とう性の点から、3〜25μmが好ましい。
以上説明したフレキシブルプリント配線板40にあっては、フレキシブルプリント配線板本体50にカバーレイフィルム10を貼着しているため、上述した理由から、電磁波シールド機能を有し、電磁波シールド層12に流れる高周波電流が速やかに減衰し、屈曲性に優れ、薄肉化が可能であり、配線導体54のパターンに合わせて電磁波シールド層12や抵抗体層14の位置やサイズを設計する必要がなく、かつ電磁波シールド層12をグランド回路に接続させる必要がない。
透過型電子顕微鏡(日立製作所社製、H9000NAR)を用いてカバーレイフィルムの断面を観察し、各層の5箇所の厚さを測定し、平均した。
石英ガラス上に金を蒸着して形成した、2本の薄膜金属電極(長さ10mm、幅5mm、電極間距離10mm)を用い、該電極上に被測定物を置き、被測定物上から、被測定物の10mm×20mmの領域を50gの荷重で押し付け、1mA以下の測定電流で電極間の抵抗を測定し、この値を持って表面抵抗とした。
図9に示すシステムを用いて、カバーレイフィルム10の電磁波シールド機能を評価した。図9に示すシステムは、スペクトラムアナライザ62を内蔵したトラッキングジェネレータと、シールドループアンテナ64(ループ径:8mm、ループ中心からマイクロストリップライン66までの距離:10mm)と、ライン長55mmのマイクロストリップライン66(Z:50Ω、基板サイズ:50mm×80mm、背面:全面グランド)を含む。シールドループアンテナ64は、トラッキングジェネレータに同軸ケーブルで接続されている。シールドループアンテナ64から発信した電磁波ノイズ(1MHzから2GHz)をマイクロストリップライン66で受け、カバーレイフィルム10でマイクロストリップライン66を覆うか否かの状態で受信特性をスペクトラムアナライザ62で測定した。カバーレイフィルム10で覆いきれなかったマイクロストリップライン66の部分には、磁性材による吸収材を配置した。
図10に示すように、スライドする2枚の基板72および基板74にフレキシブルプリント配線板40を固定し、端部電極間の抵抗値をモニタリングした。基板72と基板74との間隔Dが折り曲げ外径(=折り曲げ半径×2)となる。スライド条件は、ストローク40mmで、往復回数は60回/分で行い、初期抵抗値が2倍になった回数を破断回数とした。
80mm×80mm×厚さ12.5μmのポリイミドフィルム(絶縁性樹脂層16、表面抵抗:2×1016Ω)の表面に、マグネトロンスパッタ法にてアルミニウムを物理的に蒸着させ、厚さ120nmの電磁波シールド層12(表面抵抗:0.2Ω)を形成した。レーザーエッチング手法により、電磁波シールド層12の一部を除去し、図1に示すような0.2mm×5mmのスリット状の開口部20を、間隔:1mmで複数形成した。開口部20の合計の面積は、絶縁性樹脂層16の面積の20%であった。また、シールドの対象となる電磁波の周波数を1MHz〜3GHzとしたとき、λ/4×(μeff×εeff)−1/2は、4.5×10〜4.5×104mmであり、開口部20における最大開口長L(5mm)よりも大きかった。
電磁波シールド層12とは反対側の絶縁性樹脂層16の表面に、マグネトロンスパッタ法にてニッケルを物理的に蒸着させ、80mm×80mm×厚さ20nmの抵抗体層14(表面抵抗:20Ω)を形成し、図2に示すカバーレイフィルム10を得た。
さらに電磁波シールド層12の表面に、ニトリルゴム変性エポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤を、乾燥膜厚が20μmになるように塗布し、絶縁性接着剤層30を形成した。
図9に示すマイクロストリップ基板に該サンプルの絶縁性接着剤層30側を押し当て、マイクロストリップライン66上にカバーレイフィルム10を載置した。シールドループアンテナ64から1MHzから3GHzの掃引された高周波信号を出力し、受信特性を測定した。受信特性を実線で図11に示す。また、マイクロストリップライン66がカバーレイフィルム10で覆われていない状態での受信特性(ブランク)も太線で図11に示す。マイクロストリップライン66がカバーレイフィルム10で覆われていない状態に比べ、マイクロストリップライン66がカバーレイフィルム10で覆われた状態では、受信特性は数dBから最大17dBほど減衰した。
フレキシブルプリント配線板40を、図10に示す基板72および基板74に固定し、間隔Dを1mm(折り曲げ半径は0.5mm)とし、ストローク:30mmで基板をスライドさせ、往復回数:40回/分で破断回数を測定した。破断回数は58万回であった。
50mm×80mm×厚さ50μmのポリエステルフィルムからなる離型性のキャリアフィルムの表面に、ポリアミドイミドをキャスティング成膜し、厚さ5μmの絶縁性保護層32(表面抵抗:4×1014Ω)を形成した。絶縁性保護層32の表面に、EB蒸着法にて銅を物理的に蒸着させ、50mm×80mm×厚さ100nmの電磁波シールド層12(表面抵抗:0.5Ω)を形成した。レーザーエッチング手法により、電磁波シールド層12の一部を除去し、図3に示すような短軸が4mmであり、長軸が8mmである楕円状の開口部20を、間隔:6mmで複数形成した。開口部20の合計の面積は、絶縁性樹脂層16の面積の15%であった。また、シールドの対象となる電磁波の周波数を1MHz〜3GHzとしたとき、λ/4×(μeff×εeff)−1/2は、4.5×10〜4.5×104mmであり、開口部20における最大開口長L(8mm)よりも大きかった。
電磁波シールド層12の表面に、ポリアミドイミド溶液を塗布し、乾燥させて厚さ5μmの絶縁性樹脂層16(表面抵抗:4×1014Ω)を形成した。この上に窒素ガスを含む反応性ガスを用いた反応性スパッタ法によりニッケルを物理的に蒸着させ、50mm×80mm×厚さ20nmの窒化ニッケル蒸着膜(抵抗体層14、表面抵抗:78Ω)を形成した。
さらに電磁波シールド層12の表面に、ニトリルゴム変性エポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤を、乾燥膜厚が20μmになるように塗布し、絶縁性接着剤層30を形成し、図6に示すカバーレイフィルム10(ただし、剥離フィルム34は設けない。)を得た。
フレキシブルプリント配線板40の屈曲性を実施例1と同じ方法で評価した。破断回数は77万回であった。
図13に示す構造を有するフレキシブルプリント配線板140を以下のようにして作製した。
配線導体54の上の第2の絶縁性接着剤層56および第2の絶縁性樹脂層58に貫通孔59を形成したこと以外は、実施例1と同様にフレキシブルプリント配線板本体50を形成した。このフレキシブルプリント配線板本体50に、厚さが12.5μmのポリイミドフィルム(絶縁性樹脂層116)を、銀粉を充填してなる導電性接着剤層130を介して、熱プレスにより第2の絶縁性樹脂層58および貫通孔59を通して配線導体54に接着させた。絶縁性樹脂層116と第2の絶縁性樹脂層58の間隔は、13μmであった。
フレキシブルプリント配線板140の屈曲性を実施例1と同様に評価した。破断回数は1万回未満であり、実施例1に比べ劣っていた。
12 電磁波シールド層
14 抵抗体層
16 絶縁性樹脂層
20 開口部
20a 開口部
20b 開口部
20c 開口部
20d 開口部
22 非開口部
24 境界
26 欠落部
28 非欠落部
30 絶縁性接着剤層
32 絶縁性保護層
34 剥離フィルム
40 フレキシブルプリント配線板
50 フレキシブルプリント配線板本体
52 絶縁性フィルム
54 配線導体
56 第2の絶縁性接着剤層
58 第2の絶縁性樹脂層
59 貫通孔
62 スペクトラムアナライザ
64 シールドループアンテナ
66 マイクロストリップライン
72 基板
74 基板
116 絶縁性樹脂層
130 導電性接着剤層
140 フレキシブルプリント配線板
Claims (8)
- 導電性材料からなる電磁波シールド層と、
前記電磁波シールド層よりも表面抵抗が大きい抵抗体層と、
前記電磁波シールド層と前記抵抗体層との間に設けられた絶縁性樹脂層と
を有し、
前記電磁波シールド層には、前記電磁波シールド層の厚さ方向に貫通した、複数の開口部が設けられている、カバーレイフィルム。 - カバーレイフィルムの表面の法線方向からみて、前記電磁波シールド層の開口部と非開口部との境界が、前記抵抗体層と重なる、請求項1に記載のカバーレイフィルム。
- 前記開口部の合計の面積が、前記絶縁性樹脂層の面積の50%以下である、請求項1または2に記載のカバーレイフィルム。
- 前記開口部における最大開口長Lと、シールドの対象となる電磁波の波長λとが、下記式(1)を満足する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカバーレイフィルム。
L<λ/4×(μeff×εeff)−1/2 ・・・(1)
式中、μeffは、実効比透磁率であり、εeffは、実効比誘電率である。 - 前記電磁波シールド層の表面抵抗が、0.01〜5Ωであり、
前記抵抗体層の表面抵抗が、1〜1000Ωである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のカバーレイフィルム。 - さらに、最表面に、絶縁性保護層を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のカバーレイフィルム。
- 最表面に、絶縁性接着剤層を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカバーレイフィルム。
- 絶縁性フィルムの表面に配線導体が形成されたフレキシブルプリント配線板本体と、
前記フレキシブルプリント配線板本体に絶縁性接着剤層によって貼着された請求項7に記載のカバーレイフィルムと
を有する、フレキシブルプリント配線板。
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