JP6334877B2 - 電磁波ノイズ抑制体及び回路基板 - Google Patents
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Description
本実施の形態の電磁波ノイズ抑制体は、回路配線から発生する電磁波ノイズを熱に変換する複数の抵抗体層と、前記抵抗体層の間に介在する絶縁層と、を備えている。図1は、本発明の一実施の形態に係る電磁波ノイズ抑制体の概略構成を示す断面図である。図1に示す電磁波ノイズ抑制体100は、第1の抵抗体層101Aと、この第1の抵抗体層101Aに積層された絶縁層102と、第2の抵抗体層101Bとを備えている。なお、抵抗体層は3層以上とすることができる。以下、各層を区別しない場合は、単に、抵抗体層101と記す。
第1の抵抗体層101A及び第2の抵抗体層101Bは、電磁波ノイズ抑制層として機能するものである。抵抗体層101は、絶縁層102の表面に形成された金属薄膜である。第1の抵抗体層101Aと第2の抵抗体層101Bは、同じ金属材料によって形成してもよいし、異なる金属材料によって形成してもよいが、電磁波ノイズ抑制効果をコントロールしやすくなるため、同じ金属材料を用いることが好ましい。
絶縁層102は、任意の合成樹脂により形成することができる。絶縁層102の材質として使用可能な合成樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリブチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリメタアクリル酸エステル樹脂、メタアクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂、無水マレイン酸−スチレン共重合体樹脂、無水マレイン酸−スチレン共重合体樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアセタール樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ポリシロキサン樹脂、液晶ポリマー(LCP)、カルド樹脂(フルオレン樹脂)、フッ素樹脂等が挙げられるが、これに限定されない。これらの樹脂中でも、耐熱性に優れ、適度な可とう性を有するポリイミド樹脂が好ましい。
次に、本実施の形態の電磁波ノイズ抑制体を設けた回路基板について、好ましい態様を挙げて説明する。図2から図5は、電磁波ノイズ抑制体を備えた回路基板200A,200B,200C,200Dの構成例を示している。以下、回路基板200A,200B,200C,200Dを区別しない場合は、単に回路基板200と記す。
基材110は、例えばポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、BTレジン、カルド樹脂(フルオレン樹脂)、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ビニル樹脂、フェノール樹脂、液晶ポリマーなどの絶縁性の樹脂材料によって形成することができる。これらの樹脂材料の1種又は2種以上で構成されてもよく、単層又は複数層であってもよい。また、出来るだけ耐熱性の高い絶縁材料を用いることが好ましい。このような観点から、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。基材110の厚みは、例えば5μm以上200μm以下の範囲内が好ましく、回路基板200に屈曲性を付与する観点から、例えば5μm以上50μm以下の範囲内が好ましく、15μm以上40μm以下の範囲内がより好ましい。
配線層120は、金属等の導電性材料によって構成することができる。配線層120の材質として利用可能な金属としては、例えば銅、アルミニウム、ステンレス、鉄、銀、金、パラジウム、ニッケル、コバルト、クロム、モリブデン、タングステン、ベリリウム、亜鉛、インジウム、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、マグネシウム、マンガン又はそれらの合金を挙げることができる。この中でも銅又は銅合金が好ましい。配線層120の厚みは、例えば5μm以上150μm以下の範囲内が好ましく、回路基板200に屈曲性を付与する観点から、5μm以上35μm以下の範囲内がより好ましく、9μm以上18μm以下の範囲内が更に好ましい。また、配線層120の表面には、接着力等の向上を目的として、その表面に化学的又は機械的な表面処理を施してもよい。
接着剤層130は、配線基板150の配線層120を被覆し、且つ配線層120と第1の抵抗体層101Aとの間隔を制御する機能を有する。従って、配線基板150に貼り合わせる前の接着剤層130の厚みは、配線基板150全体又は単位面積当たりに存在する配線層120の占有面積比率などを考慮して設定することが好ましい。接着剤層130の厚みは、配線基板150に貼り合わせる前であれば、例えば10μm以上85μm以下の範囲内が好ましく、25μm以上50μm以下の範囲内がより好ましい。
本実施の形態の回路基板200は、配線基板150及び電磁波ノイズ抑制体100をそれぞれ作製し、配線基板150の配線層120側に接着剤層130を介して電磁波ノイズ抑制体100を重ね、例えば熱プレス等の手段で張り合わせることによって製造できる。
金属薄膜の厚みは、試料の断面をミクロトーム(ライカ社製、商品名;ウルトラカットUTCウルトラミクロトーム)を用いて厚さ100nmの超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子社製、商品名;JEM−2000EX)により観察し、5箇所の電磁波ノイズ抑制層の厚さを画像上で測定し、平均した値を算出した。
金属薄膜の表面抵抗は、抵抗率計(三菱化学社製、商品名;MCP−T610)を用い、4探針プローブ(三菱化学社製、商品名;MCP−TP03P)により測定した。
線路長が120mm、線路幅が2.2mmで特性インピーダンスが50Ωとなる配線基板Aを作製した。その配線基板Aの線路上に、30mm×30mm角にカットしたサンプルを貼付けて、線路の片側の端子を50Ω終端とし、もう一方の線路の端子から、電圧2Vで0.8GHz、1.6GHz、又は2.5GHzの高周波信号を入力した。電磁界測定器(NECエンジニアリング社製、商品名;4EM500)の磁界プローブを用いて、配線基板Aの線路から2mm上の空間における電磁界強度を測定した。配線基板Aの線路上にサンプルを貼り付けた部分の電磁界強度の値について、高周波信号の入力端子側と終端端子側の測定値差を確認した。この電磁波強度の測定値差が大きい程、サンプルの電磁界抑制効果が高いと評価した。
フィルム材として、厚さ35μmのポリイミドフィルムを用意し、このフィルムをバッチ式スパッタリング装置(ANELVA社製、商品名;SPF−332HS)へセットし、真空ポンプ及びターボモレキュラーポンプを用いて、3.0×10−4Paまで減圧し、アルゴンガスを導入して、2.0×10−1Paの圧力になるよう調整した。次に、Ni80重量%/Cr20重量%の合金(Ni−Cr合金として99.9重量%以上)のターゲットを用いて、スパッタリングを行い、厚さ90nmの金属薄膜1a(表面抵抗;35Ω/□)を形成した。同条件にて、フィルム材の金属薄膜を形成していない側の面にもスパッタリングを行い、厚さ90nmの金属薄膜1b(表面抵抗;35Ω/□)を形成し、金属薄膜形成フィルム1を得た。
フィルム材として、厚さ35μmのポリイミドフィルムの代わりに、厚さ70μmのポリイミドフィルムを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属薄膜2a(厚さ;90nm、表面抵抗;35Ω/□)と金属薄膜2b(厚さ;90nm、表面抵抗;35Ω/□)を有する金属薄膜形成フィルム2を得た。
フィルム材として、厚さ35μmのポリイミドフィルムの代わりに、厚さ95μmのポリイミドフィルムを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属薄膜3a(厚さ;90nm、表面抵抗;35Ω/□)と金属薄膜3b(厚さ;90nm、表面抵抗;35Ω/□)を有する金属薄膜形成フィルム3を得た。
実施例1と同様にして、フィルム材として、厚さ35μmのポリイミドフィルムを用意し、スパッタリングを行い、厚さ90nmの金属薄膜4a(表面抵抗;35Ω/□)を形成した後、スパッタリングの実施時間のみを変更した条件にて、フィルム材の金属薄膜を形成していない側の面に、厚さ105nmの金属薄膜4b(表面抵抗;20Ω/□)を形成し、金属薄膜形成フィルム4を得た。
実施例1と同様にして、フィルム材として、厚さ35μmのポリイミドフィルムを用意し、スパッタリングを行い、厚さ90nmの金属薄膜5a(表面抵抗;35Ω/□)を形成した後、スパッタリングの実施時間のみを変更した条件にて、フィルム材の金属薄膜を形成していない側の面に、厚さ35nmの金属薄膜5b(表面抵抗;78Ω/□)を形成し、金属薄膜形成フィルム5を得た。
実施例1と同様にして、フィルム材として、厚さ35μmのポリイミドフィルムを用意し、スパッタリングを行い、厚さ90nmの金属薄膜6a(表面抵抗;35Ω/□)を形成した後、スパッタリングの実施時間のみを変更した条件にて、フィルム材の金属薄膜を形成していない側の面に、厚さ15nmの金属薄膜6b(表面抵抗;135Ω/□)を形成し、金属薄膜形成フィルム6を得た。
実施例1と同様にして、フィルム材として、厚さ35μmのポリイミドフィルムを用意し、スパッタリングの実施時間のみを変更した条件にてスパッタリングを行い、厚さ35nmの金属薄膜7a(表面抵抗;78Ω/□)を形成した後、同条件にて、フィルム材の金属薄膜を形成していない側の面に、厚さ35nmの金属薄膜7b(表面抵抗;78Ω/□)を形成し、金属薄膜形成フィルム7を得た。
実施例1と同様にして、フィルム材として、厚さ35μmのポリイミドフィルムを用意し、スパッタリングを行い、厚さ90nmの金属薄膜8a(表面抵抗;35Ω/□)を形成した後、同条件にて、フィルム材の金属薄膜を形成していない側の面に、厚さ90nmの金属薄膜8b(表面抵抗;35Ω/□)を形成した。金属薄膜8b上に、両面テープを重ね、更にその上に、厚さ25μmのポリイミドフィルムを重ね、貼り合わせた後、再度、同条件にて、フィルム材の金属薄膜を形成していない側の面に、厚さ90nmの金属薄膜8c(表面抵抗;35Ω/□)を形成し、金属薄膜形成フィルム8を得た。
実施例1と同様にして、フィルム材として、厚さ35μmのポリイミドフィルムを用意し、スパッタリングの実施時間のみを変更した条件にてスパッタリングを行い、厚さ35nmの金属薄膜9a(表面抵抗;78Ω/□)を形成した後、同条件にて、フィルム材の金属薄膜を形成していない側の面に、厚さ35nmの金属薄膜9b(表面抵抗;78Ω/□)を形成した。金属薄膜9b上に、両面テープを重ね、更にその上に、厚さ25μmのポリイミドフィルムを重ね、貼り合わせた後、再度、同条件にて、フィルム材の金属薄膜を形成していない側の面に、厚さ35nmの金属薄膜9c(表面抵抗;78Ω/□)を形成し、金属薄膜形成フィルム9を得た。
金属薄膜1bを形成しなかったこと以外、実施例1と同様にして、金属薄膜(厚さ;90nm、表面抵抗;35Ω/□)を有する金属薄膜形成フィルムを得た。
実施例1と同様にして、フィルム材として、厚さ35μmのポリイミドフィルムを用意し、スパッタリングの実施時間のみを変更した条件にてスパッタリングを行い、厚さ35nmの金属薄膜(表面抵抗;78Ω/□)を形成し、金属薄膜形成フィルムを得た。
次に、本発明の効果を確認したシミュレーション試験の結果について説明する。縦横11mm×11mmの大きさのガラスエポキシ製の基材(厚さ764μm)上に、ほぼ直角に屈曲した平面視L字形のCu製配線層(厚さ18μm、幅2.2mm)を有する配線基板をモデルとして想定した。この配線基板のCu製配線層の側に、厚さ28μmのアクリル製の接着剤層と、厚さ25μmのポリイミド絶縁層をこの順番で積層するとともに、基材側に、厚さ18μmのCu製グランド層を積層したものをベースサンプルとした。このベースサンプルのポリイミド絶縁層の上に、厚さ100nmのニッケル−クロム合金製の抵抗体層(表面抵抗35Ω/□)を1層積層したものをリファレンスサンプルとした。
図6は、リファレンスサンプルについて、Cu製配線層の上端から抵抗体層の下端までの距離を変化させた場合のシミュレーション結果を示すグラフである。
図7は、絶縁層及び抵抗体層が各2層である場合の本発明サンプルについて、抵抗体層どうしの間隔を35μmとし、Cu製配線層の上端から該Cu配線層に最も近い抵抗体層の下端までの距離を変化させた場合のシミュレーション結果を示すグラフである。図6と図7の比較から、抵抗体層が1層だけの場合(図6)に比べ、図7では、放射ノイズ強度が弱くなっており、抵抗体層を2層以上設けることによって電磁波ノイズ抑制効果が向上することが確認された。また、抵抗体層を2層以上設ける場合に、Cu製配線層の上端から該Cu配線層に最も近い抵抗体層の下端までの距離(図3〜図5に示す距離Lと同じ。以下、距離Lと記す。)が小さい方が、電磁波ノイズ抑制効果がより向上することが確認された。例えば、図7では、周波数0.8GHzでは距離L≦30μm、周波数1.6GHzでは距離L≦65μm、周波数2.5GHzでは距離L≦90μmにおいて、それぞれ、抵抗体層を1層とする場合(図6)に比較して、電磁波ノイズ抑制効果の向上が認められた。
図8は、絶縁層及び抵抗体層が各2層である場合の本発明サンプルについて、距離Lを10μmに固定し、抵抗体層どうしの間隔(図1に示す厚みT2と同じ。以下、間隔T2と記す。)を変化させた場合のシミュレーション結果を示すグラフである。図6と図8の比較から、抵抗体層が1層だけの場合(図6)に比べ、図8では、放射ノイズ強度が弱くなっており、抵抗体層を2層以上設けることによって電磁波ノイズ抑制効果が向上することが確認された。また、抵抗体層を2層以上設ける場合に、抵抗体層間の間隔T2が小さい方が、電磁波ノイズ抑制効果がより向上することが確認された。例えば、図8では、周波数0.8GHzでは間隔T2≦37.5μm、周波数1.6GHzでは間隔T2≦95μm、周波数2.5GHzでは間隔T2≦75μmにおいて、それぞれ、抵抗体層を1層とする場合(図6)に比較して、電磁波ノイズ抑制効果の向上が認められた。
図9は、絶縁層及び抵抗体層が各2層である場合の本発明サンプルについて、距離Lを35μmに固定し、間隔T2を変化させた場合のシミュレーション結果を示すグラフである。図6と図9の比較から、抵抗体層が1層だけの場合(図6)に比べ、図9では、放射ノイズ強度が弱くなっており、抵抗体層を2層以上設けることによって電磁波ノイズ抑制効果が向上することが確認された。また、抵抗体層を2層以上設ける場合に、抵抗体層間の間隔T2が小さい方が、電磁波ノイズ抑制効果がより向上することが確認された。例えば、図9では、周波数1.6GHzでは間隔T2≦100μm、周波数2.5GHzでは間隔T2≦120μmにおいて、それぞれ、抵抗体層を1層とする場合(図6)に比較して、電磁波ノイズ抑制効果の向上が認められた。
Claims (3)
- 基材及び該基材上に形成された、GHz帯域の高周波信号を伝送する配線層を有する配線基板と、
電磁波ノイズ抑制体と、
を備え、
前記電磁波ノイズ抑制体は、
電磁波ノイズを熱に変換する複数の抵抗体層と、
前記抵抗体層の間に介在する絶縁層と、
を有し、
前記複数の抵抗体層が、ニッケル−クロム合金からなる金属薄膜であって、少なくとも第1の抵抗体層及び第2の抵抗体層を有し、
前記第1の抵抗体層は、表面抵抗が20Ω/□以上90Ω/□以下の範囲内の金属薄膜であり、
前記絶縁層は、厚さが12μm以上120μm以下の範囲内の樹脂フィルムであり、
前記第2の抵抗体層は、表面抵抗が20Ω/□以上150Ω/□以下の範囲内の金属薄膜であり(ただし、前記第1の抵抗体層の表面抵抗と前記第2の抵抗体層の表面抵抗が、いずれも20Ω/□である場合を除く)、
前記第1の抵抗体層と前記第2の抵抗体層は、いずれも欠落部がなく、前記絶縁層の両側において互いに対向する領域に存在するように形成されており、
前記電磁波ノイズ抑制体の第1の抵抗体層側を、前記配線基板の配線層側に絶縁性を維持した状態で配置するとともに、前記第1の抵抗体層及び前記第2の抵抗体層の両方を、前記配線層と厚み方向に重なる領域に存在するように配置している回路基板。 - 前記第1の抵抗体層と前記配線基板の配線層との間隔が、5μm以上90μm以下の範囲内にある請求項1に記載の回路基板。
- 1GHz以上20GHz以下の動作周波数領域の電子部品に使用されるものである請求項1又は2に記載の回路基板。
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