JP2014069612A - 頭部保護エアバッグ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】膨張初期を含めて、エアバッグが側突時の乗員頭部を的確に保護でき、かつ、ロールオーバ時にも、エアバッグが乗員を的確に車内側に拘束可能な頭部保護エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】エアバッグ20が、連通部30で連通されて前後に並設される主膨張部29及び副膨張部31を有したアウタバッグ21と、主膨張部内の一部に配置される初期膨張部63と副膨張部内の一部に配置される閉塞膨張部64とを有したインナバッグ60と、を具備する。インナバッグは、膨張用ガスGを主膨張部内に流出可能な流出口71を有する。閉塞膨張部64は、初期膨張部の膨張完了後の乗員受止時や主膨張部29の膨張完了時に、連通部30の閉塞を解除可能に、連通部の内径寸法DIに対応した外径寸法DOで、かつ、副膨張部への挿入量ILとして、連通部30を経て、副膨張部31に挿入されて配設されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、車内側の窓の上縁側に折り畳まれて収納され、インフレーターからの膨張用ガスの流入時に、窓を覆うように展開膨張するエアバッグを備えた頭部保護エアバッグ装置に関する。
従来、頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグが、乗員頭部を保護する保護膨張部として、車両の側突(側面衝突)時に対応するように膨張する主膨張部と、車両のロールオーバ時に対応するように、主膨張部と前後方向で並んで膨張する副膨張部と、を備えて構成されるものがあった(例えば、特許文献1,2参照)。
これらのエアバッグでは、主膨張部が膨張を完了させた後、主膨張部と副膨張部とを区画していた折り重ね部やシーム等の弁機構を、主膨張部の内圧上昇に伴なって開け、副膨張部を膨張させて、広い面積で膨らんだ主膨張部と副膨張部とにより、乗員を車内側に拘束できるように、構成されていた。
特開2011−116155号公報 特開2008−56242号公報
しかし、従来の頭部保護エアバッグ装置では、膨張用ガスを供給するインフレーターの作動直後の短い時間の経過後、乗員頭部がエアバッグの主膨張部側に侵入してくる際、課題があった。すなわち、ロールオーバ対応の主膨張部は、容積が大きく、膨張初期では、全域をクッション性良く膨張させることができないからである。この対処として、主膨張部の容積を小さくすることが考えられるが、主膨張部が容積を小さくすれば、ロールオーバ時での主膨張部が、乗員の車外放出を的確に防止できるように、窓を大きく覆い難くなってしまう。さらに、主膨張部が小さな容積であると、既述の弁機構を開けて副膨張部に膨張用ガスを流すタイミングが早まり、一般的な側突時のタイミングで主膨張部に乗員頭部が侵入してくる場合、主膨張部の内圧が低くなっている場合も生ずる。
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張初期を含めて、エアバッグが側突時の乗員頭部を的確に保護でき、かつ、ロールオーバ時にも、エアバッグが乗員を的確に車内側に拘束可能な頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
<請求項1の説明>
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、車内側の窓の上縁側に折り畳まれて収納され、インフレーターからの膨張用ガスの流入時に、前記窓を覆うように展開膨張するエアバッグを備え、
該エアバッグが、乗員を保護するために膨張する保護膨張部を備え、
該保護膨張部が、前後に並設される主膨張部と副膨張部とを備え、
前記主膨張部が、膨張用ガスの上流側として、側突時の乗員を保護可能に、前記副膨張部より先に膨張する構成とした頭部保護エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、該エアバッグの外周側を構成するアウタバッグと、該アウタバッグ内に配設されるインナバッグと、を備え、
前記アウタバッグが、膨張用ガスを流入させるための上縁側に配置された筒状の流入口部、前記主膨張部、及び、前記副膨張部、を備えるとともに、前記主膨張部と前記副膨張部とを前後で区画し、かつ、部分的に連通させる連通部を上端側に設けるように配設される区画部、を備えて構成され、
前記インナバッグが、
前記流入口部内に配置されて前記インフレーターに接続される接続口部から、前記主膨張部と前記副膨張部との内部に部分的に進入するように配設されて、
膨張用ガスを前記主膨張部内に流出可能な流出口を有するとともに、膨張用ガスの流入当初に、乗員頭部を保護可能に前記アウタバッグ内で膨張する初期膨張部を備え、かつ、該初期膨張部の膨張時に前記初期膨張部に連なって膨んで、前記連通部を閉塞する閉塞膨張部を備えて構成され、
前記閉塞膨張部が、前記初期膨張部の膨張完了後の前記乗員受止時に、若しくは、前記主膨張部の膨張完了時に、前記連通部の閉塞を解除可能に、前記連通部の内径寸法に対応した外径寸法で、かつ、前記副膨張部への挿入量として、前記連通部を経て、前記副膨張部に挿入されて配設されていることを特徴とする。
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、作動時、インフレーターからの膨張用ガスがエアバッグのインナバッグにおける接続口部からインナバッグに流入すれば、まず、流出口から主膨張部へ膨張用ガスを流出しつつ、インナバッグの初期膨張部と閉塞膨張部とが膨張する。そのため、乗員頭部が膨張初期のエアバッグ側に進入してきても、インナバッグの初期膨張部がクッション性良く乗員頭部を受け止めることができる。
一方、インナバッグの初期膨張部と閉塞膨張部とが膨張しても、側突時の乗員頭部が直ちに進入しない場合には、閉塞膨張部が副膨張部側への連通部を閉塞しているため、インナバッグの流出口から流出する膨張用ガスが、副膨張部に流れることが抑制され、主膨張部の全体を迅速に膨張させることができ、通常側突時に主膨張部に進入する乗員頭部を、厚く全体を膨張させた主膨張部により、円滑に受け止めることができる。
そして、膨張初期のインナバッグの初期膨張部や厚く全体を膨張させた主膨張部が、側突時の乗員頭部を円滑に受け止めた際には、インナバッグが乗員頭部により車外側に押され、インナバッグの閉塞膨張部が、主膨張部側に引っ張られて連通部から離れ、連通部を開口させるため、主膨張部から連通部を経て、インナバッグの流出口から流出した膨張用ガスが、副膨張部に流入して、副膨張部の全体を厚く膨張させることとなる。
また、エアバッグの膨張初期に閉塞膨張部が連通部を閉塞した状態としていても、主膨張部が厚く膨張すれば、アウタバッグの連通部付近も膨張することから、閉塞膨張部の外径寸法より、アウタバッグの連通部の内径寸法が大きくなって、隙間が発生し、その隙間からインナバッグの流出口を経て流出した膨張用ガスが、副膨張部に流入して、副膨張部の全体を厚く膨張させることができる。
そのため、側突時に対応するタイミングより遅いタイミングで膨張を完了させて対処可能なロールオーバに対しては、副膨張部と主膨張部とが、ともに、厚く全体を膨張させることができて、エアバッグ側に進入してくる乗員を、的確に、車内側に拘束しておくことができる。
そして、上記のインナバッグの閉塞膨張部における連通部の閉塞と閉塞解除とは、インナバッグの副膨張部への挿入量を大きくしない状態として、連通部を挿通するインナバッグの外径寸法を、アウタバッグの連通部の内径寸法に対応させて、略同等、若しくは、膨張用ガスの流入前の状態で、若干、インナバッグの外径寸法をアウタバッグの連通部の内径寸法より大きくすることにより、容易に達成することができる。換言すれば、エアバッグの膨張初期のインナバッグの初期膨張部が、乗員頭部を受け止めた際に、閉塞膨張部が、全部、若しくは、部分的に、副膨張部側から抜けて、連通部から膨張用ガスが副膨張部に流れる隙間を開けることができるようなインナバッグの副膨張部への挿入量とし、かつ、主膨張部が膨らんで連通部の内径寸法が、連通部を閉塞していたインナバッグの部位の外径寸法より、大きくなって、連通部から膨張用ガスが副膨張部に流れる隙間を開けることができるような連通部の内径寸法とインナバッグの外径寸法との関係であればよい。
したがって、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、膨張初期を含めて、エアバッグが側突時の乗員頭部を的確に保護でき、かつ、ロールオーバ時にも、エアバッグが乗員を的確に車内側に拘束することができる。
<請求項2の説明>
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記インナバッグに設けられた流出口が、前記インナバッグの膨張完了時の状態で、車幅方向に略沿って膨張用ガスを流出させるように、配設されていることが望ましい。
このような構成では、インナバッグの初期膨張部を膨張させる際に、主膨張部が、厚みを直接増加させる方向で、流出口からの膨張用ガスを流入させることから、膨張初期の側突時の乗員頭部を、初期膨張部の厚さ寸法に加えて、膨張用ガスの噴き出す距離分の主膨張部の厚さ寸法が加わり、極力、厚く膨らんだ部位で、受け止めることができる。すなわち、主膨張部の全体が厚く膨らんでいなくとも、膨張初期の側突時の乗員頭部を、一層、クッション性良く、保護可能となる。
本発明の一実施形態の頭部保護エアバッグ装置が搭載された車両の車内側から見た正面図である。 実施形態の頭部保護エアバッグ装置に使用されるエアバッグを平らに展開させた状態を示す正面図である。 実施形態のエアバッグの構成部材を平らに展開させた状態の正面図である。 実施形態のエアバッグの膨張初期の状態を説明する部分正面図である。 実施形態のエアバッグの膨張初期の状態を説明する断面図であり、図4のVA−VA部位とVB−VB部位とに対応する。 実施形態のエアバッグが、膨張初期に、側突時の乗員頭部を受け止めた状態を説明する部分正面図である。 実施形態のエアバッグが、主膨張部の膨張を完了させた状態を説明する部分正面図である。 実施形態のエアバッグの全体が膨張を完了させた状態を説明する部分正面図である。 実施形態のエアバッグの全体が膨張を完了させた状態を説明する断面図であり、図8のIXA−IXA部位とIXB−IXB部位とに対応する。 実施形態の頭部保護エアバッグ装置が、エアバッグの膨張を完了させた状態を示す車両の車内側から見た正面図である。 実施形態のエアバッグのインナバッグの変形例を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sは、図1に示すように、エアバッグ20と、エアバッグ20に膨張用ガスを流入させるインフレーター16と、エアバッグカバー11と、取付ブラケット13,17と、を備えて構成されている。エアバッグ20は、車両Vの車内側における前席や後席の側方で前後に並設される窓(サイドウインド)W1,W2の上縁WU側において、フロントピラー部FPの下縁側から、中間ピラー部CPの上方を経て、リヤピラー部RPの上方まで、の範囲に、折り畳まれて収納されている。
インフレーター16は、図1に示すように、略円柱状のシリンダタイプとして、エアバッグ20における膨張用ガスを流入させるための流入口部23(接続口部61)に挿入され、エアバッグ20と連結されている。このインフレーター16は、取付ブラケット17により保持され、取付ブラケット17がボルト18止めされることにより、中間ピラー部CPの上方付近におけるルーフサイドレール部RRのインナパネル2に対し、ルーフヘッドライニング5の下縁5aに覆われて、取付固定されている。なお、インナパネル2は、車両Vのボディ(車体)1側の部材である。
また、このインフレーター16は、車両Vの側突(側面衝突)を検知した所定の制御装置により、作動されるものであり、その出力は、エアバッグ20(詳しくは、後述するアウタバッグ21)の容量に対応し、アウタバッグ21の後述する保護膨張部27が車両Vの側突時からロールオーバ時にわたって、所定の内圧を維持できるように、設定されている。
各取付ブラケット13は、取付ボルト14によって、エアバッグ20の後述する取付部45をインナパネル2に取付固定している。なお、各取付ボルト14は、インナパネル2におけるナット等を設けたねじ孔に、締結されている。
エアバッグカバー11は、図1に示すように、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラーガーニッシュ4の下縁4a側と、ルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング5の下縁5a側と、から構成されている。
エアバッグ20は、折畳可能な可撓性を有して構成されて、図2〜5に示すように、エアバッグ20の外周側を構成するアウタバッグ21と、アウタバッグ21内に配設されるインナバッグ60と、を備えて構成されている。
アウタバッグ21は、図1〜3,10に示すように、インフレーター16からの膨張用ガスGを流入させて、折り畳み状態から展開して、窓W1,W2、中間ピラー部CP、及び、リヤピラー部RPの車内側を覆うように展開膨張する。さらに、アウタバッグ21は、膨張完了時、下縁21bを、窓W1,W2の車内側における下縁側のベルトラインBLの車体側部材(図例ではドアトリム)DTに、支持されるように、構成されている。
また、アウタバッグ21は、図2〜5に示すように、膨張用ガスGを流入させて相互に対向する車内側壁部22aと車外側壁部22bとを離すように膨張するガス流入部22と、車内側壁部22aと車外側壁部22bとを結合させたような状態として膨張用ガスGを流入させない非流入部40と、を備えて構成されている。このアウタバッグ21は、前端側の取付部45(45F)付近を除いて、ポリアミドやポリエステル等の糸から袋織りして製造されている。
非流入部40は、周縁部41、取付部45、及び、閉じ部49、から構成されている。周縁部41は、ガス流入部22の周囲を囲むように形成されている。
取付部45は、アウタバッグ21の上縁21a側における周縁部41の上縁41aから上方へ突出するように、複数(実施形態では6個)形成されている。各取付部45には、取付ボルト14を挿通させる取付孔45aが、形成されている。各取付部45には、既述したように、ボディ1側のインナパネル2に取り付けるための取付ブラケット13が固着され、そして、各取付孔45aを挿通する取付ボルト14がインナパネル2の各ねじ孔に締結されることにより、各取付部45が、インナパネル2に固定される。前端の取付部45Fは、アウタバッグ21の袋織りで形成された周縁部41の前縁41cに対して、ポリアミド等の織布から形成された別体の布材を縫合して、形成されている。また、この取付部45Fは、フロントピラー部FPの下部付近に固定されて、エアバッグ20の膨張完了時、エアバッグ20の下縁21b側、具体的には、取付部45Fとフロントピラー部FPから離れた取付部45(45B)とを結ぶライン上に、強い張力を発揮させ、エアバッグ20における乗員Mの室内側への拘束性を良好にするように、構成されている(図10参照)。
閉じ部(区画部)49は、ガス流入部22内に進入するように、袋織り時に形成されて、ガス流入部22内を区画するように配設されている。実施形態の場合、閉じ部49は、略T字状の中央区画部50、前側区画部56、及び、後側区画部58を備えて構成されている。
中央区画部50は、略「T」の字の横棒部位の下縁区画部51と、下縁区画部51の前後方向の中央から下方に延びて、周縁部41の下縁41bに連なる前後区画部54と、を備えて構成されている。下縁区画部51は、後述する分岐通路部25の下縁側を区画している。前後区画部54は、膨張部位としての後述する前側保護膨張部28と後側保護膨張部35とを区画している。
また、下縁区画部51の前端には、下方に延びる前側屈曲部52が配設され、下縁区画部51の後端には、下方に延びる後側屈曲部53が配設されている。
前側区画部56は、後述する主膨張部29と副膨張部31とを前後で区画するように、周縁部41の下縁41b側から上方に延びるよう配設され、上端56aと周縁部41の上縁41aとの間に、主膨張部29から膨張用ガスGを副膨張部31に流入させるための連通部30を開口させている。
後側区画部58は、後側保護膨張部35側で、周縁部41の下縁41b側から上方に延びるよう配設されている。
ガス流入部22は、インフレーター16と接続される流入口部23、分岐通路部25、及び、保護膨張部27を備えて構成されている。流入口部23内には、実施形態の場合、インナバッグ60の接続口部61が配設され、インフレーター16には、インナバッグ60の接続口部61が接触して接続されることとなる。
分岐通路部25は、流入口部23の下部と連通して、アウタバッグ21の膨張完了時の前後方向の中央付近の上縁21a側で、前後方向に延びるように配設されている。具体的には、分岐通路部25は、周縁部41の上縁41aと中央区画部50の下縁区画部51との間に、配設されている。
保護膨張部27は、ガス流入部22の流入口部23と分岐通路部25付近とを除いた部位として、前側保護膨張部28と後側保護膨張部35とを備えて構成されている。前側保護膨張部28と後側保護膨張部35とは、中央区画部50の前後区画部54により前後で区画され、前側保護膨張部28は、膨張完了時、車両Vの前席側方の窓(フロントサイドウインド)W1と中間ピラー部CPの一部との車内側を覆い、後側保護膨張部35は、膨張完了時、後席側方の窓(リヤサイドウインド)W2とリヤピラー部RPとの車内側を覆う(図1,10参照)。
さらに、前側保護膨張部28は、前側区画部56で区画されて、前後に並設される主膨張部29と副膨張部31とを備えて構成されている。
主膨張部29は、副膨張部31より膨張用ガスGの上流側として、側突時の前席の乗員Mの頭部Hを保護可能に、副膨張部31より先に膨張するように、分岐通路部25の前端25aと連通している。
そして、副膨張部31は、車両Vのロールオーバ時に対応するように、主膨張部29と前後方向で並んで膨張するものであり、既述したように、主膨張部29と部分的に連通させる連通部30を上端後縁側に設けて、周縁部41の前縁41c側に配設されている。
インナバッグ60は、図2〜5に示すように、アウタバッグ21の流入口部23から分岐通路部25内に配設され、さらに、主膨張部29の一部となる上部29aと副膨張部31の一部となる上部31aとの内部に挿入されるように、配置されている。
すなわち、インナバッグ60は、アウタバッグ21の流入口部23内に配設されて、インフレーター16と接続される接続口部61と、接続口部61に連なりアウタバッグ21の分岐通路部25内に配設される分岐部62と、分岐部62と連なって主膨張部29の上部29a内に配設される初期膨張部63と、初期膨張部63と連なって副膨張部31の上部31a内に配設される閉塞膨張部64と、を備えて構成されている。分岐部62は、前部側の円筒状の前側導通部62aと、後部側の円筒状として後端を絞った形状の後側導通部62bと、を備えて構成されている。
インナバッグ60は、ポリアミドやポリエステル等の糸からなる織布を縫製したり、あるいは、袋織り等により形成されて、アウタバッグ21と同様に、可撓性を有した構成としている。
また、インナバッグ60は、前側保護膨張部28の主膨張部29に膨張用ガスGを流出するための前側流出口71と、後側保護膨張部35に膨張用ガスGを流出するための後側流出口70と、を備えて構成されている。後側流出口70は、アウタバッグ21の分岐通路部25の後端25b側に配置される分岐部62の円筒状の後側導通部62bの絞られた後端に、開口されている。前側流出口71は、膨張した初期膨張部63から略車幅方向の車内側Iや車外側Oに向けて、膨張用ガスGを流出可能に、上縁63aや下縁63bから離れた初期膨張部63に開口されて、複数配設されている。実施形態の場合、初期膨張部63の車内側Iと車外側Oとに3個ずつ配設されている。
なお、これらの流出口70,71は、膨張用ガスGの流入時、インナバッグ60が膨張を完了させた状態で、主膨張部29と後側保護膨張部35とへ迅速に膨張用ガスGを供給できる開口面積として構成されている。
さらに、初期膨張部63は、エアバッグ20内への膨張用ガスGの流入当初に、乗員Mの頭部Hを保護可能に、主膨張部29の上部29a側で厚く膨らむように、分岐部62の前側導通部62aより、平らに展開した上下方向の寸法を大きくしている。
また、閉塞膨張部64は、膨張時、副膨張部31の上部で膨らむ本体部65と、初期膨張部63に連なって連通部30で膨らむ円筒状の連結筒部66と、を備えて、インナバッグ60の膨張完了当初、連通部30を閉塞できるように、連結筒部66の外径寸法(図例では、平らに展開した上下方向の幅寸法)DOが設定されている。また、閉塞膨張部64は、平らに展開した上下方向の寸法に関し、連結筒部66より本体部65が大きくなるように設定されている。
そして、閉塞膨張部64は、初期膨張部63の膨張完了後の乗員Mの受止時に、若しくは、主膨張部29の膨張完了時に、連通部30の閉塞を解除可能に、連通部30の内径寸法(図例では、平らに展開した上下方向の開口幅寸法)DIに対応した連結筒部66の外径寸法DOで、かつ、副膨張部31への挿入量ILとして、連通部30を経て、副膨張部31に挿入されて配設されている。
換言すれば、インナバッグ60の閉塞膨張部64における連通部30の閉塞と閉塞解除とは、インナバッグ60の副膨張部31への挿入量ILを大きくしない状態として、連通部30を挿通するインナバッグ60の連結筒部66の外径寸法DOを、アウタバッグ21の連通部30の内径寸法DIに対応させて、略同等、若しくは、膨張用ガスGの流入前の状態で、若干、インナバッグ60の外径寸法DOをアウタバッグ21の連通部30の内径寸法DIより大きくすればよい。
すなわち、エアバッグ20の膨張初期における膨張を完了させたインナバッグ60の初期膨張部63が、乗員Mの頭部Hを受け止めた際に、閉塞膨張部64が、全部、若しくは、部分的に、副膨張部31側から抜けて、連通部30から膨張用ガスGが副膨張部31に流れる隙間E1(図6参照)を開けることができるようなインナバッグ60の副膨張部31への挿入量ILとし、かつ、主膨張部29が膨らんで連通部30の内径寸法DIが、連通部30を閉塞していたインナバッグ60の連結筒部66の外径寸法DOより、大きくなって、連通部30から膨張用ガスGが副膨張部31に流れる隙間E2(図7参照)を開けることができるような連通部30の内径寸法DIとインナバッグ60の外径寸法DOとの関係であればよい。
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sの車両Vへの搭載は、まず、平らに展開したアウタバッグ21の内部にインナバッグ60を挿入して、エアバッグ20を形成する。この時、既述したように、インナバッグ60は、閉塞膨張部64を、所定の挿入量IL分、副膨張部31の上部31a内に挿入しつつ、初期膨張部63を主膨張部29の上部29a内に配置させ、さらに、分岐部62を分岐通路部25内に配置させて、接続口部61を流入口部23内に配置させる。
ついで、インナバッグ60ごと、アウタバッグ21の下縁21b側を、取付部45を設けた上縁21a側に接近させるように折り畳み、さらに、破断可能な図示しない折り崩れ防止用のラッピング材により、エアバッグ20を巻く。
そして、エアバッグ20を折り畳んだ後、取付ブラケット17を取り付けたインフレーター16を、エアバッグ20の接続口部61と接続させ、また、エアバッグ20の各取付部45に取付ブラケット13を取り付けてエアバッグ組付体を形成する。
その後、取付ブラケット13を組み付けた各取付部45を、ボディ1側のインナパネル2の対応する取付部位に配置させ、各取付孔45aに挿通させる等して、取付ボルト14をねじ孔に締結し、さらに、取付ブラケット17をボルト18止めし、インフレーター16をインナパネル2に固定して、エアバッグ組付体をボディ1に取り付ける。ついで、インフレーター16に、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線し、フロントピラーガーニッシュ4やルーフヘッドライニング5をボディ1に取り付け、さらに、中間ピラーガーニッシュ7やリヤピラーガーニッシュ8をボディ1に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Sを、車両Vに搭載することができる。
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sの車両Vへの搭載後における車両Vの側突時、インフレーター16が作動し膨張用ガスGを吐出させれば、膨張用ガスGが、図2の二点鎖線に示すように、流れ、エアバッグ20のインナバッグ60が膨張するとともに、インナバッグ60の流出口70,71から前側保護膨張の主膨張部29や後側保護膨張部35に流れて、アウタバッグ21も膨張し、エアバッグ20が膨張を完了させることとなる(図10参照)。
そして、実施形態では、作動時、インフレーター16からの膨張用ガスGがエアバッグ20のインナバッグ60における接続口部61からインナバッグ60に流入すれば、エアバッグ20の前部側において、まず、前側流出口71から主膨張部29へ膨張用ガスGを流出しつつ、図4,5に示すように、インナバッグ60の初期膨張部63と閉塞膨張部64とが膨張する。そのため、乗員Mの頭部Hが膨張初期のエアバッグ20側に進入してきても、インナバッグ60の初期膨張部63がクッション性良く乗員Mの頭部Hを受け止めることができる。
一方、インナバッグ60の初期膨張部63と閉塞膨張部64とが膨張しても、側突時の乗員Mの頭部Hが直ちに進入しない場合には、閉塞膨張部64が副膨張部31側への連通部30を閉塞しているため、インナバッグ60の前側流出口71から流出する膨張用ガスGが副膨張部31に流れることが抑制され、主膨張部29の全体を迅速に膨張させることができ、通常側突時に主膨張部29に進入する乗員Mの頭部Hを、厚く全体を膨張させた主膨張部29により(図5のBの二点鎖線参照)、円滑に受け止めることができる。
そして、膨張初期のインナバッグ60の初期膨張部63や厚く全体を膨張させた主膨張部29が、側突時の乗員Mの頭部Hを円滑に受け止めた際には、インナバッグ60が乗員Mの頭部Hより車外側に押され、インナバッグ60の閉塞膨張部64が、図6の二点鎖線から破線に示すように、主膨張部29側に引っ張られて連通部30から離れ、隙間E1が発生して連通部30を開口させるため、主膨張部29から連通部30を経て、インナバッグ60の前側流出口71から流出した膨張用ガスGが、副膨張部31に流入して、副膨張部31の全体を厚く膨張させることとなる。
また、エアバッグ20の膨張初期に閉塞膨張部64が連通部30を閉塞した状態としていても、主膨張部29が厚く膨張すれば、アウタバッグ21の連通部30付近も膨張することから、図7に示すように、閉塞膨張部64の外径寸法DOより、アウタバッグ21の連通部30の内径寸法DIが大きくなって、隙間E2が発生し、その隙間Eからインナバッグ60の前側流出口71を経て流出した膨張用ガスGが、副膨張部31に流入して、副膨張部31の全体を厚く膨張させることができる。
そのため、側突時に対応するタイミング(インフレーター16の作動後の20〜50ms間程度)より遅いタイミング(インフレーター16の作動後の1.5〜6S間程度)で膨張を完了させて対処可能なロールオーバに対しては、副膨張部31と主膨張部29とが、ともに、厚く全体を膨張させることができて(図8,9,10参照)、エアバッグ20側に進入してくる乗員Mを、的確に、車内側に拘束しておくことができる。
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sでは、膨張初期を含めて、エアバッグ20が側突時の乗員Mの頭部Hを的確に保護でき、かつ、ロールオーバ時にも、エアバッグ20が乗員Mを的確に車内側に拘束することができる。
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sでは、インナバッグ60に設けられた前側流出口71が、図5のBに示すように、インナバッグ60の膨張完了時の状態で、車幅方向に略沿って膨張用ガスGを流出させるように、配設されている。
そのため、実施形態では、インナバッグ60の初期膨張部63を膨張させる際に、主膨張部29が、厚みを直接増加させる方向で、前側流出口71からの膨張用ガスGを流入させることから、図5のBに示すように、膨張初期の側突時の乗員Mの頭部Hを、初期膨張部63の厚さ寸法T0に加えて、膨張用ガスGの噴き出す距離分の主膨張部29の厚さ寸法T1が加わり、極力、厚く膨らんだ部位で、受け止めることができる。すなわち、主膨張部29の全体が厚く膨らんでいなくとも、膨張初期の側突時の乗員Mの頭部Hを、一層、クッション性良く、保護可能となる。
なお、流出口71から車幅方向に沿って膨張用ガスGを流出させる方向は、水平方向だけでなく、斜め下向きも含むものである。
また、インナバッグ60に設ける主膨張部29に膨張用ガスGを流す流出口としては、図11に示すインナバッグ60Aの流出口72のように、膨張用ガスGを下方へ流すように構成してもよい。
そしてまた、インナバッグの初期膨張部に設ける流出口は、図11に示すように、車幅方向に沿っって膨張用ガスを流出させる流出口71と膨張用ガスGを下向きに流出させる流出口72とを併用したり、あるいは、下向きに流出させる流出口72だけから構成してもよい。
16…インフレーター、20…エアバッグ、21…アウタバッグ、23…流入口部、27…保護膨張部、28…前側保護膨張部、29…主膨張部、30…連通部、31…副膨張部、56…前側区画部、60,60A…インナバッグ、61…接続口部、63…初期膨張部、64…閉塞膨張部、71…前側流出口、G…膨張用ガス、M…乗員、H…頭部、E…隙間、DI…(連通部の)内径寸法、DO…(インナバッグの連結筒部の)外径寸法、IL…挿入量、S…頭部保護エアバッグ装置。

Claims (2)

  1. 車内側の窓の上縁側に折り畳まれて収納され、インフレーターからの膨張用ガスの流入時に、前記窓を覆うように展開膨張するエアバッグを備え、
    該エアバッグが、乗員を保護するために膨張する保護膨張部を備え、
    該保護膨張部が、前後に並設される主膨張部と副膨張部とを備え、
    前記主膨張部が、膨張用ガスの上流側として、側突時の乗員を保護可能に、前記副膨張部より先に膨張する構成とした頭部保護エアバッグ装置であって、
    前記エアバッグが、該エアバッグの外周側を構成するアウタバッグと、該アウタバッグ内に配設されるインナバッグと、を備え、
    前記アウタバッグが、膨張用ガスを流入させるための上縁側に配置された筒状の流入口部、前記主膨張部、及び、前記副膨張部、を備えるとともに、前記主膨張部と前記副膨張部とを前後で区画し、かつ、部分的に連通させる連通部を上端側に設けるように配設される区画部、を備えて構成され、
    前記インナバッグが、
    前記流入口部内に配置されて前記インフレーターに接続される接続口部から、前記主膨張部と前記副膨張部との内部に部分的に進入するように配設されて、
    膨張用ガスを前記主膨張部内に流出可能な流出口を有するとともに、膨張用ガスの流入当初に、乗員頭部を保護可能に前記アウタバッグ内で膨張する初期膨張部を備え、かつ、該初期膨張部の膨張時に前記初期膨張部に連なって膨んで、前記連通部を閉塞する閉塞膨張部を備えて構成され、
    前記閉塞膨張部が、前記初期膨張部の膨張完了後の前記乗員受止時に、若しくは、前記主膨張部の膨張完了時に、前記連通部の閉塞を解除可能に、前記連通部の内径寸法に対応した外径寸法で、かつ、前記副膨張部への挿入量として、前記連通部を経て、前記副膨張部に挿入されて配設されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。
  2. 前記インナバッグに設けられた流出口が、前記インナバッグの膨張完了時の状態で、車幅方向に略沿って膨張用ガスを流出させるように、配設されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。
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