JP2014066059A - 段板取付構造および段板取付方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な美観および段板の取付強度を十分に確保できる段板取付構造を提供する。
【解決手段】段板2が側板1の段板取付用木口11に連結具4を介して固定される。連結具4は、段板取付用木口11から突出するように配置される突出部7と、突出部7を側板1に固定する固定部6と、突出部7の先端に突出部6内に押込可能に設けられる押込操作部とを備え、押込操作によって突出部7が拡開変形する。段板2の裏面側に連結具4に対応して連結具被覆凹部25が形成される。連結具被覆凹部25内に突出部7を収容しつつ、段板2を段板取付用木口11に押え付けることによって、押込操作部が連結具被覆凹部25の奥壁面に押し込まれて突出部7が拡開変形し、拡開変形した突出部7の外周面が連結具被覆凹部15の内周側面に係合することによって、段板2が側板1に固定される。
【選択図】図4
【解決手段】段板2が側板1の段板取付用木口11に連結具4を介して固定される。連結具4は、段板取付用木口11から突出するように配置される突出部7と、突出部7を側板1に固定する固定部6と、突出部7の先端に突出部6内に押込可能に設けられる押込操作部とを備え、押込操作によって突出部7が拡開変形する。段板2の裏面側に連結具4に対応して連結具被覆凹部25が形成される。連結具被覆凹部25内に突出部7を収容しつつ、段板2を段板取付用木口11に押え付けることによって、押込操作部が連結具被覆凹部25の奥壁面に押し込まれて突出部7が拡開変形し、拡開変形した突出部7の外周面が連結具被覆凹部15の内周側面に係合することによって、段板2が側板1に固定される。
【選択図】図4
Description
この発明は、木質製の階段等に適用される段板取付構造および段板取付方法に関する。
一般住宅等の木質製屋内階段としてひな壇階段が周知である。ひな壇階段は、互いに平行で斜め上方に向けて配置され、かつ所定間隔おきに水平な段板取付用木口が形成された一対の側板を備え、一対の側板において対応する段板取付用木口に段板を固定するようにしている。
このような段板取付構造においては、段板を側板の木口に最終的には接着剤によって固定するのが通例であるが、接着剤が養生硬化するまで、不用意に段板が浮き上がらないように、接着剤と併用して、釘やビス等の機械的な固定手段によって段板を側板に対し固定しておくのが一般的である。
段板を機械的に固定する方法は、階段の裏面側(下面側)からの作業による方法と、階段の表面側(上面側)からの作業による方法とに大別される。
階段の裏面側からの作業によって段板を固定する方法としては例えば、逆L字状の連結金具の水平片を段板の裏面側にビス留めするとともに、垂直片を側板の内側面にビス留めすることにより、段板を側板に固定する方法が周知である。
また階段の表面側からの作業によって段板を固定する方法としては、段板の表面側からビスやフィニッシュネイル等の固定手段を段板に打ち込んで側板に固定する方法が周知である。
階段裏面側から固定する前者の方法では、段板を取り付ける毎に、階段の表面側と裏面側とを往き来する必要があり、段板取付作業が非常に面倒になってしまう。
また、階段表面側から固定する後者の方法では、ビスやフィニッシュネイル等の固定手段の頭部が段板の表面に少なからず露出するため、後の化粧工程において、固定手段が確実に隠蔽されるように、厚みの厚い巾木や見切り材を取り付ける必要があり、意匠上好ましくない。
一方、下記特許文献1の段板取付構造は、側板の段板取付用木口に形成したダボ孔にダボの下側半分を差し込むとともに、上側半分を段板の裏面側に形成したダボ孔に差し込むことにより、段板を側板に仮固定する方法が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1に示す段板取付構造では、ダボがダボ孔から容易に抜け出してしまい、段板を十分な強度で安定した状態に側板に仮固定することができないおそれがある。このため、接着剤が硬化する前に、不用意にも段板が浮き上がってしまい、段板を精度良く組み付けることができなくなってしまう場合がある。
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、良好な美観を確保できる上さらに、段板を十分な強度で安定した状態に側板に固定することができる段板取付構造および段板取付方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
[1]段板の裏面に設けられた取付面を、側板の段板取付用木口によって構成された取付面に載置してその段板を連結具を介して前記側板に固定するようにした段板取付構造であって、
前記連結具は、前記側板および前記段板のいずれか一方の部材の取付面から突出するように配置される突出部と、その突出部を前記一方の部材に対し固定する固定部と、前記突出部の先端に、軸心方向に沿って前記突出部内に押込可能に設けられる押込操作部とを備え、前記押込操作部を押し込むことによって前記突出部が径方向に拡開変形するように構成され、
残り一方の部材の取付面に前記連結具に対応して連結具被覆凹部が形成され、
前記連結具被覆凹部内に前記突出部を収容しつつ、前記段板を前記段板取付用木口に押え付けることによって、前記押込操作部が前記連結具被覆凹部の奥壁面に押し込まれて前記突出部が拡開変形するとともに、その拡開変形した突出部の外周面が前記連結具被覆凹部の内周側面に係合して抜け止めされることによって、前記段板が前記側板に前記連結具を介して固定されるようになっていることを特徴とする段板取付構造。
前記連結具は、前記側板および前記段板のいずれか一方の部材の取付面から突出するように配置される突出部と、その突出部を前記一方の部材に対し固定する固定部と、前記突出部の先端に、軸心方向に沿って前記突出部内に押込可能に設けられる押込操作部とを備え、前記押込操作部を押し込むことによって前記突出部が径方向に拡開変形するように構成され、
残り一方の部材の取付面に前記連結具に対応して連結具被覆凹部が形成され、
前記連結具被覆凹部内に前記突出部を収容しつつ、前記段板を前記段板取付用木口に押え付けることによって、前記押込操作部が前記連結具被覆凹部の奥壁面に押し込まれて前記突出部が拡開変形するとともに、その拡開変形した突出部の外周面が前記連結具被覆凹部の内周側面に係合して抜け止めされることによって、前記段板が前記側板に前記連結具を介して固定されるようになっていることを特徴とする段板取付構造。
[2]前記突出部は、周方向に分割された複数の分割片によって構成されるとともに、
前記押込操作部は、前記複数の分割片によって囲まれたピン押込孔に押込可能に挿入配置されるインサートピンによって構成され、
前記インサートピンが前記ピン押込孔に押し込まれた際に、そのインサートピンの外周面によって前記複数の分割片が径方向に押し広げられることによって、前記突出部が拡開変形するようになっている前項1に記載の段板取付構造。
前記押込操作部は、前記複数の分割片によって囲まれたピン押込孔に押込可能に挿入配置されるインサートピンによって構成され、
前記インサートピンが前記ピン押込孔に押し込まれた際に、そのインサートピンの外周面によって前記複数の分割片が径方向に押し広げられることによって、前記突出部が拡開変形するようになっている前項1に記載の段板取付構造。
[3]前記突出部は、弾性変形によって拡開変形するように構成される一方、
前記連結具は、前記押込操作部が前記突出部内に押し込まれた後の状態である押込状態に保持して前記突出部を拡開状態に保持するための押込状態保持手段を備えている前項1または2に記載の段板取付構造。
前記連結具は、前記押込操作部が前記突出部内に押し込まれた後の状態である押込状態に保持して前記突出部を拡開状態に保持するための押込状態保持手段を備えている前項1または2に記載の段板取付構造。
[4]前記押込状態保持手段は、前記押込操作部に設けられた押込状態保持用突起と、前記突出部に設けられた押込状態保持用凹部とを備え、前記押込操作部が前記突出部内に押し込まれた際に、前記押込状態用突起が前記押込状態保持用凹部に係合することにより、前記押込操作部がその移動が規制されて押込状態に保持されるようになっている前項3に記載の段板取付構造。
[5]前記連結具は、前記押込操作部が前記突出部内に押し込まれる前の状態である初期状態に保持するための初期状態保持手段を備えている前項1〜4のいずれか1項に記載の段板取付構造。
[6]前記初期状態保持手段は、前記押込操作部に設けられた初期状態保持用突起と、前記突出部に設けられた初期状態保持用凹部とを備え、初期状態において、前記初期状態保持突起が前記初期状態保持用凹部に係合することにより、前記押込操作部の移動が規制されるようになっている前項5に記載の段板取付構造。
[7]前記一方の部材に連結具取付凹部が形成され、
前記連結具の固定部が、前記連結具取付凹部内に嵌め込まれて固定されている前項1〜6のいずれか1項に記載の段板取付構造。
前記連結具の固定部が、前記連結具取付凹部内に嵌め込まれて固定されている前項1〜6のいずれか1項に記載の段板取付構造。
[8]前記一方の部材が前記側板によって構成され、
前記連結具取付凹部は、前記側板の内側面および前記段板取付用木口の双方に開口し、かつ側板の内側面から側板の厚さ方向に連続する連結具取付溝によって構成され、
前記連結具の固定部が、前記側板の内面側から前記連結具取付溝に嵌め込まれて固定されている前項7に記載の段板取付構造。
前記連結具取付凹部は、前記側板の内側面および前記段板取付用木口の双方に開口し、かつ側板の内側面から側板の厚さ方向に連続する連結具取付溝によって構成され、
前記連結具の固定部が、前記側板の内面側から前記連結具取付溝に嵌め込まれて固定されている前項7に記載の段板取付構造。
[9]前記連結具被覆凹部は、開口縁部よりも奥部の広さが広いアリ溝状に形成されている前項1〜8のいずれか1項に記載の段板取付構造。
[10]段板の裏面に設けられた取付面を、側板の段板取付用木口によって構成された取付面に載置してその段板を連結具を介して前記側板に固定するようにした段板取付方法であって、
前記連結具として、前記側板および前記段板のいずれか一方の部材の取付面から突出するように配置される突出部と、その突出部を前記一方の部材に対し固定する固定部と、前記突出部の先端に、軸心方向に沿って前記突出部内に押込可能に設けられる押込操作部とを備え、前記押込操作部を押し込むことによって前記突出部が径方向に拡開変形するように構成されたものを準備しておき、
残り一方の部材の取付面に前記連結具に対応して連結具被覆凹部を形成しておき、
前記連結具被覆凹部内に前記突出部を収容しつつ、前記段板を前記段板取付用木口に押え付けることによって、前記押込操作部を前記連結具被覆凹部の奥壁面に押し込んで前記突出部を拡開変形させるとともに、その拡開変形した突出部の外周面を前記連結具被覆凹部の内周側面に係合して抜け止めすることによって、前記段板を前記側板に前記連結具を介して固定するようにしたことを特徴とする段板取付方法。
前記連結具として、前記側板および前記段板のいずれか一方の部材の取付面から突出するように配置される突出部と、その突出部を前記一方の部材に対し固定する固定部と、前記突出部の先端に、軸心方向に沿って前記突出部内に押込可能に設けられる押込操作部とを備え、前記押込操作部を押し込むことによって前記突出部が径方向に拡開変形するように構成されたものを準備しておき、
残り一方の部材の取付面に前記連結具に対応して連結具被覆凹部を形成しておき、
前記連結具被覆凹部内に前記突出部を収容しつつ、前記段板を前記段板取付用木口に押え付けることによって、前記押込操作部を前記連結具被覆凹部の奥壁面に押し込んで前記突出部を拡開変形させるとともに、その拡開変形した突出部の外周面を前記連結具被覆凹部の内周側面に係合して抜け止めすることによって、前記段板を前記側板に前記連結具を介して固定するようにしたことを特徴とする段板取付方法。
発明[1]の段板取付構造によれば、段板および側板のいずれか一方の部材の取付面から突出配置される突出部と、その突出部先端に設けられた押込操作部とを備え、その押込操作部の押込操作によって突出部が拡開変形するように構成された連結具が一方の部材に固定されるとともに、残り一方の部材の取付面に突出部を覆う連結具被覆凹部を形成しているため、段板を段板取付用木口に載置して押し付ければ、連結具被覆凹部の奥壁面によって押込操作部が押し込まれて突出部が拡開変形して、突出部の外周部が連結具被覆凹部の内周側面に係合し、連結具が連結具被覆凹部内に抜け止め状態に固定される。こうして段板を十分な強度で安定した状態に側板に簡単に固定でき、例えば接着剤が硬化するまで段板の浮き上がりを防止でき、段板を側板に確実に接着固定することができる。さらに本発明において、連結具は、連結具被覆凹部に収容されるため、段板表面側に釘やビス等の固定手段の頭部が露呈することがなく、良好な美観を得ることができる。
発明[2]の段板取付構造によれば、インサートピンの押込によって突出部を確実に拡開変形させることができ、段板をより安定した状態に側板に固定することができる。
発明[3][4]の段板取付構造によれば、段板取付前に謝って、押込操作部を押し込んで突出部を拡開させてしまったとしても、押込操作部を引き抜けば、突出部は弾性復帰することにより元の縮径した状態に戻すことができる。従って、連結具は、何度でもやり直して使用することができ、無駄に廃棄する必要がなく、経済的に有益である。また押込操作部を押し込んだ際に、押込状態保持手段によって押込状態に保持できるため、支障無く、段板を側板に安定した状態に固定することができる。
発明[5][6]の段板取付構造によれば、段板を側板に組み付ける前に、押込操作部が不用意に押し込まれてしまう等の不具合を防止できるため、段板の組付作業をより一層スムーズに行うことができる。
発明[7]の段板取付構造によれば、連結具を側板に十分な強度でより確実に固定することができる。
発明[8]の段板取付構造によれば、連結具を側板に十分な強度で簡単に固定することができる。
発明[9]の段板取付構造によれば、段板をなお一層安定した状態に側板に固定することができる。
発明[10]の段板取付方法によれば、上記と同様に、良好な美観を確保できる上さらに、段板を十分な強度で安定した状態に側板に固定することができる。
図1はこの発明の実施形態である段板取付構造が適用された木質製ひな壇階段をその一部を分解して示す斜視図である。なお以下の説明においては、階段を上る際に向かっている方向を「前方」、階段を下りる際に向かっている方向を「後方」として説明する。
図1に示すように、このひな壇階段は、一対の側板1,1と、一対の側板1,1に支持される複数の段板2および複数の蹴込板3とを基本的な構成要素として備えている。そして本実施形態の階段においては、各段板2を一対の側板1,1に組み付けるに際して、接着剤と、後に詳述する特有構成の連結具4とを併用して段板2を側板1に組み付けるものである。
一対の側板1,1は、左右方向(階段巾方向)に間隔をおいて互いに平行に、かつ斜め上方に向けて延びるように配置された状態で、家屋の構造材に固定されている。言うまでもなく、側板1は、組立予定の屋内階段の傾斜角度(勾配)に対応する傾斜角度に配置される。
側板1の上側縁部には、その上側縁部が階段状に切り欠かれることによって、水平な切り口と、垂直な切り口とが交互に並んで配置されるように形成されている。このうち、水平な切り口が段板取付用木口11として構成されるとともに、垂直な切り口が蹴込板取付用木口12として構成されている。
図2および図3に示すように、各段板取付用木口11の前後2箇所の位置には、連結具取付部としての連結具取付凹部15が形成されている。
この連結具取付凹部15は、上側部によって構成される入口部16と、下側部によって構成される奥部17とを備えている。入口部16は、側板1の段板取付用木口11と、内側面との双方に開口しており、木口11側の開口と内面側の開口とが連通連続されている。奥部17は、側板1の内側面に開口しており、入口部16と連通接続されている。
側板1の内面側から見た状態において、入口部16は矩形状に形成されるとともに、奥部17は入口部16に対し前後方向のサイズが大きく形成されており、同方向に長い長円形状に形成されている。
なお、連結具取付凹部15は、後述する連結具4の固定部6に対応する形状に形成されている。
また、連結具取付凹部15は、側板1の厚さ方向(階段巾方向)に対し直交する平面で切断した際の断面形状が、側板1の厚さ方向の位置にかかわらず同じ形状に形成されるものである。従ってこの連結具取付凹部15は、側板1の厚さ方向に連続して延び、かつ段板取付用木口12に開口する溝(連結具取付溝)として捉えることができる。
本実施形態においては、この連結具取付凹部15を、側板1の内面側からの溝付加工によって形成するようにしている。このため、側板1の外形仕上げ加工と、溝状の連結具取付凹部15の溝付加工とを、1度の切削加工処理で連続して行うことができるため、側板1の外形仕上げ加工と、溝状の連結具取付凹部15の溝付加工とを別々の異なる種類の加工方法で行う場合と比較して、溝付加工を効率良くスムーズに行うことができる。従って、側板1、ひいては階段構成部材の製作を容易に行うことができる。
一方、図1および図4に示すように、段板2は、その裏面側(下面側)における両側端部が、一対の側板1,1間において対応する段板取付用木口11,11に取り付けられるものである。この段板2の裏面21における両側端部の前後2箇所には、段板取付用木口11の連結具取付凹部15にそれぞれ対応して、連結具被覆凹部25がそれぞれ形成されている。
この連結具被覆凹部25は、段板2の側端面と、裏面21との双方に開口しており、側端面の開口と裏面21の開口とが連通接続されている。図4および図5Bに示すように連結具被覆凹部25は、裏面側開口から上方(奥部)に向かうに従って、次第に前後寸法が大きくなるようなアリ溝状に形成されている。換言すれば、段板2の外側面から見た状態において、連結具被覆凹部25は、逆向きの略等脚台形の形状に形成されている。
なお連結具被覆凹部25の断面形状は、後述する連結具4の突出部7が拡開変形した際の断面形状に対応する形状に形成されている。
また連結具被覆凹部25は、段板2の長さ方向(階段巾方向)に対し直交する平面で切断した際の断面形状が、段板2の長さ方向の位置にかかわらず同じ形状に形成されるものである。従って連結具被覆凹部25は、段板2の長さ方向に連続して延び、かつ段板裏面側に開口する溝(連結具被覆溝)として捉えることができる。
図1に示すように、段板2の裏面21における前端縁には、長さ方向(階段巾方向)に連続して延び、かつ裏面側に開口する蹴込板取付溝22が形成されている。
なお本実施形態において、段板2における溝状の連結具被覆凹部25は、段板裏面側からの溝付加工(切削加工)によって形成することができる。
ここで、本実施形態においては、側板1によって一方の部材が構成されるとともに、段板2によって残り一方の部材が構成されている。さらに側板1の段板取付用木口11および段板2の裏面21によってそれぞれ取付面が構成されている。
図6は実施形態のひな壇階段に適用された連結具4を示す内側面図、図7A〜図7Cはその連結具4の連結具本体5を示す図、図8A、図8Bは連結具4のインサートピン8を示す図である。なお以下の説明において、連結具4(連結具本体5およびインサートピン8)の軸方向とは、図6の紙面に向かって上下方向であり、径方向とは、軸方向に対し直交する方向である。
これらの図に示すように、この連結具4は、段板2を側板1に仮固定するのに用いられるものであって、POM(ポリアセタール)等の硬質合成樹脂の一体成形品によって構成される連結具本体5と、同じくPOM等の硬質合成樹脂の一体成形品によって構成されるインサートピン8とを備えている。
なお本実施形態において、連結具4の素材は、特に限定されるものではないが、量産性等を考慮すると、本実施形態のような合成樹脂によって構成するのが好ましい。
連結具本体5は、先端(上端)が開口され、かつ基端(下端)が閉塞された略有底筒状の形状を基本形状としている。
すなわち連結具本体5は、基端側(下部側)に配置される固定部6と、先端側(上部側)に配置される突出部7とを備え、これらが一体に形成されている。
連結具本体5には、突出部7の先端(上端)において開口するピン押込孔51が軸心に沿って形成されている。
突出部7は、ピン押込孔51を筒孔とする略筒状に形成されている。この突出部7は、軸方向のスリット70,70によって周方向に2分割された一対の縦割り半筒状の分割片71,71によって構成されている。
そして突出部7は、図5Aに示すように一対の半筒状分割片71,71が互いに相反する方向(外径方向)に弾性変形(撓み変形)可能に構成されており、その弾性変形によって、突出部7の特に先端側(上端側)が径方向に拡開変形できるようになっている。
各半筒状分割片71,71の外周面には、周方向に連続し、かつ軸方向に所定の間隔おきに複数の抜け止め突片72がそれぞれ一体に形成されている。
一対の分割片71,71におけるスリット70,70を挟んだ対向縁部には、その上下方向(軸心方向)の中間位置および下端位置に、互いに対向する初期状態保持用凹部73,73および押込状態保持用凹部74,74がそれぞれ形成されている。後に詳述するが、この保持用凹部73,74は、インサートピン8を初期状態や押込状態(ロック状態)に保持するためのものである。
図7A(a)に示すように連結具本体5の固定部6には、上記ピン押込孔51を筒孔とする有底筒状部が設けられ、その底壁部には、ロック解除用作業孔52が形成されている。このロック解除用作業孔52は、その軸心がピン押込孔51の軸心と一致するように配置され、かつピン押込孔51に連通している。なお後に詳述するが、このロック解除用作業孔52は、不用意にインサートピン8がピン押込孔51の奥までに押し込まれてしまったような場合に、そのインサートピン8を抜き取る際に用いられる。
連結具本体5の固定部6における下端部には、前後両側に膨出するようにして、側面視(図7B参照)において、略半円形状の抜け止め膨出部61,61が一体に形成されている。さらに固定部6における上端部の前後両側縁部、膨出部61,61の上側縁部および膨出部61,61の下側縁部には、それらの各縁部に沿って抜け止めフィン62が一体に形成されている。
また固定部6の内側面(図7A(a)の左側面)には、内側方向(径方向)に張り出すように叩き付け部63が一体に形成されている。後に詳述するが、この叩き付け部63は、連結具4を側板1の連結具取付凹部15に装着固定する際に利用されるものである。
ここで、固定部6は、側面視(図7B参照)において、その上側部が矩形状に形成されるとともに、下側部が横長の長円形状に形成されており、この固定部6の側面視形状に倣って、上記した側板1の連結具取付凹部15の側面視形状(断面形状)が形成されている(図2,3等参照)。従って、連結具本体5の固定部6は、側板1の連結具取付凹部15内にその内面側から適合状態に嵌め込み可能に構成されている。
図6、図8Aおよび図8Bに示すように、インサートピン8は、連結具本体5のピン押込孔51に挿入可能なインサート部81と、インサート部81の上端に一体に形成されたヘッド部85とを備えている。
インサート部81の上側部には、前後方向に膨出するように押し開き部82,82が形成されている。この押し開き部82,82の外側面は、挿入側(先端側)に向かうに従って次第に軸心に近づくように傾斜するテーパー面に形成されており、そのテーパー面にガイドされることによって、後述するように押し開き部82,82を連結具本体5のピン押込孔51にスムーズに挿入できるようになっている。
なお図面上では理解し難いが、インサート部81における押し開き部82,82よりも下側の外側面も、挿入側(先端側)に向かうに従って次第に軸心に近づくように僅かに傾斜するテーパー面に構成されている。
またインサートピン8のヘッド部85は、インサート部81に比べて、径方向のサイズが大きく、ヘッド部85の上面の面積が大きく確保されている。
さらにインサート部81の両側面には、連結具本体5のスリット70,70に対応して、係合突起83,83が形成されている。この係合突起83,83は、連結具本体5の初期状態保持用凹部73,73および押込状態保持用凹部74,74のいずれかに係合可能に構成されている。例えば図5Bおよび図6に示すように、インサートピン8のインサート部81が、連結具本体5のピン押込孔51に先端開口部から挿入されて、インサート部81の係合突起83,83が、連結具本体5の押込状態保持用凹部73,73に係合した状態(初期状態)では、その係合によって、インサートピン8の軸心方向(挿入方向および引抜方向)の移動が制限される。これにより、インサートピン8がピン押込孔51の途中まで挿入された状態(初期状態)でインサートピン8が保持されて、インサートピン8が不用意に連結具本体5の奥まで挿入されてしまったり、不用意に抜け出してしまう等の不具合が防止される。
なお初期状態においては、インサートピン8の押し開き部82,82が、連結具本体5のピン押込孔51に挿入されず、連結具本体5の突出部7よりも上方に配置されて、インサートピン8の上部が突出部7から上方(先端側)に飛び出すように配置されている。
また初期状態から、インサートピン8がさらに押し込まれて、インサート部81の係合突起83,83が、連結具本体5の押込状態保持用凹部74,74に係合した状態(押込状態)では、その係合によって、インサートピン8の軸心方向の移動が制限される。これにより押込状態でインサートピン8が保持されて、インサートピン8が不用意に抜け出してしまう等の不具合が防止される。
さらにこの押込状態においては図5Aに示すように、インサートピン8の押し開き部82,82が、連結具本体5のピン挿入孔51に挿入され、その押し開き部82,82によって、突出部7の両半筒状分割片71,71が外径方向に弾性変形し、突出部7が拡開変形した状態となっている。
ここで本実施形態においては、係合突起83によって、初期状態保持用突起または押込状態保持用突起が構成されている。さらに係合突起83および初期状態保持用凹部73によって初期状態保持手段が構成されるとともに、係合突起83および押込状態保持用凹部74によって押込状態保持手段が構成されている。またインサートピン8によって押込操作部が構成されている。
以上の構成の連結具4は、図6に示す初期状態に組み立てておき、この初期状態の連結具4を側板1に組み付ける。
すなわち図3等に示すように、初期状態の連結具4の固定部6における外側、つまり叩き付け部63が形成されていない側を、側板1の連結具取付凹部15における内面側の開口に対向させて配置し、その状態で、連結具4の固定部6を連結具取付凹部15内にその内面側の開口から押し込んで凹部15内に嵌め込む。この場合、木槌等によって、連結具4の叩き付け部63を叩いて、連結具4の固定部6を嵌め込むことにより、連結具4の固定部6を連結具取付凹部15内に確実に嵌め込むことができる。
こうして連結具4を嵌め込んだ状態では、図4および図5Bに示すように連結具4の突出部7が側板1の段板取付用木口12から上方に突出した状態に配置されている。さらに嵌め込まれた連結具4は、初期状態であるため、インサートピン8である押込操作部を突出部7内に押込可能となっている。
また連結具取付凹部15に嵌め込まれた連結具4の固定部6は、その外周に設けられた抜け止めフィン62によって、連結具取付凹部15の内面側の開口から内側に抜け出すのが防止される。さらにこの嵌め込み状態においては、連結具4の抜け止め膨出部61が連結具取付凹部15の奥部17の内周面に係合するため、連結具4の固定部6が、連結具取付凹部15の段板取付用木口11側の開口から上方に抜け出すのが防止される。さらに膨出部61が連結具取付凹部15の奥部17における内周側面に係合することによって、連結具4の軸回り方向(周方向)の回転も確実に防止することができる。こうして連結具4が側板1の連結具躯定凹部15に安定状態に確実に取り付けられる。
ここで、本実施形態において、連結具4を連結具取付凹部15内に確実に嵌め込んだ状態では図7Aの想像線に示すように、連結具4の叩き付け部63の先端面が側板1の内側面よりも少し内側に飛び出すように配置されている。このため、叩き付け部63を叩き付けて連結具4を連結具取付凹部15内に嵌め込む際に、叩き付け部63が連結具取付凹部15の内側にめり込んでしまうことがなく、連結具4を所定位置まで嵌り込むまで、叩き付け部63を確実に叩き付けることができる。
こうして組付予定の一対の側板1の各連結具取付凹部15に連結具4をそれぞれ装着した後、その側板1を用いて、以下に示すように階段を組み立てるものである。
なお、本実施形態において、連結具4を一対の側板1に装着する作業は、階段を組み立てる前に予め現場で行っても良いし、現場に機材を搬入する前に予め工場等で行っておいても良い。さらに連結具4を側板1に装着する際には、上記したようにインサートピン8を連結具本体5に挿入して連結具4を組み立てた後、その連結具4を側板1に装着するようにしても良いし、連結具本体5を側板1に装着した後、その本体5にインサートピン8を挿入して連結具4を組み立てるようにしても良い。
こうして連結具4を装着した一対の側板1,1を家屋構造体の所定の位置に固定する。なお本実施形態においては、階段組立前に、連結具4を側板1の装着するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、階段の組立作業と並行して適宜、連結具4を側板1に装着するようにしても良い。
次に一対の側板1,1に、蹴込板3と、段板2とを下側から順に交互に組み付けていく。すなわち1段目の蹴込板3を一対の側板1,1における最下端の蹴込板取付用木口12,12に取り付ける。この場合例えば、最下端の蹴込板取付用木口12,12間において床面上に受け材としての桟木を固定しておき、その桟木に1段目の蹴込板3の裏面側下端縁を接着剤によって固定する。さらに必要に応じて、かくし釘やフィニッシュネイル等で1段目の蹴込板3を側板1,1の蹴込板取付用木口12,12等に固定する。
次に1段目の段板2を一対の側板1,1における1段目の段板取付用木口12,12に固定する。すなわち、段板取付用木口12,12に接着剤を塗布した後、段板2の裏面両側縁部に設けられた連結具被覆凹部25内に、側板1側の連結具4の突出部7がそれぞれ収容されるようにして、段板2の裏面両側縁部を段板取付用木口12,12上に載置して押さえ込む。このとき図5Aに示すように、連結具4におけるインサートピン8のヘッド部85が、段板2における連結具被覆凹部25の天井面(奥壁面)に押し込まれて、インサートピン8が連結具本体5のピン押込孔51内に押し込まれる。これにより、インサートピン8の押し開き部82によって、連結具本体5の一対の半筒状分割片71が外径方向に押し曲げられて外側に弾性変形することにより、突出部7が拡開変形する。
こうして拡開した突出部7の抜け止め突片72が連結具被覆凹部25の内周側面に食い込み、連結具4の突出部7が連結具被覆凹部25に強固に固定されて抜け止めされ、段板2の裏面両側端部が段板取付用木口12に密着した状態に配置される。従って、段板2の両側縁部が浮き上がる等の不具合を確実に防止でき、接着剤が養生硬化するまで、段板2を側板1,1に密着させた状態に維持でき、接着剤によって段板2を側板1,1に確実に固定することができる。
なお、1段目の蹴込板3の上端縁部は、1段目の段板2の蹴込板取付溝22内に収容するように配置されている。
また本実施形態においては、インサートピン8のヘッド部85を径大に形成して、ヘッド部の上端面(押込面)を大きく形成しているため、インサートピン8のヘッド部85が、段板2の連結具被覆凹部25の天井面(奥壁面)に押し込まれる際に、ヘッド部85が連結具被覆凹部25の天井面における広い範囲に接触する。このため、ヘッド部85が連結具被覆凹部25の天井面に押し込まれる際の応力が、天井面の広い範囲に分散するため、応力の局部集中を回避することができる。従って、連結具被覆凹部25の天井面の一部が破損したり、凹んだりするような不具合を確実に防止することができて、連結具被覆凹部25の天井面によるヘッド部85の押込操作を確実に行うことができる。
さらに本実施形態においては、インサートピン8が連結具本体5に押し込まれた際に、インサートピン8の係合突起83が連結具本体5の押込状態保持用凹部74に係合することによって、インサートピン8が挿入された状態、つまり連結具本体4の突出部7が拡開した状態に維持される。このため、インサートピン8が不用意に抜け出て突出部7が縮径し、連結具4による段板2の側板1への連結が解除してしまうという不具合を確実に防止でき、良好な連結状態を維持することができる。
一方、1段目の段板2を組み付けた後は、2段目の蹴込板3を組み付ける。すなわち側板1,1における2段目の蹴込板取付用木口12,12の前面側に、2段目の蹴込板3を配置して、その蹴込板3の下端縁部を1段目の段板2の前端面に差し込む。そして必要に応じて、かくし釘やフィニッシュネイルを2段目の蹴込板3の裏面側から1段目の段板2に打ち込むとともに、かくし釘やフィニッシュネイルを蹴込板3の表面側から側板1,1の蹴込板取付用木口12に打ち込んで固定する。
こうして2段目の蹴込板3を組み付けた後、上記と同様にして、2段目の段板2を組み付ける。
以下同様にして、蹴込板3と段板2とを交互に組み付ける一方、必要に応じて、巾木等の化粧部材(図示省略)や、手摺(図示省略)を取り付けることにより、本実施形態のひな壇階段が組み立てられる。
以上のように本実施形態の階段によれば、インサートピン8の押込によって先端側の突出部7が拡開変形する連結具4を、その突出部7を段板取付用木口12から突出するように側板1に固定する一方、段板2の裏面21に連結具4の突出部7を収容する連結具被覆凹部25を形成しているため、段板2を段板取付用木口12に載置して押し付けることにより、連結具被覆凹部25の天井面(奥壁面)によってインサートピン8が押し込まれて突出部7が拡開変形して、突出部7の外周部が連結具被覆凹部25の内周側面に係合し、連結具4が連結具被覆凹部25内に抜け止め状態に固定される。従って、段板2が段板取付用木口12に密着した状態に保持されて、段板2の両側縁部が浮き上がる等の不具合を確実に防止できる。これにより、接着剤が養生硬化するまで、段板2を側板1,1に確実に密着できて、段板2を側板1,1に不具合なく接着固定することができる。
しかも、段板2を段板取付用木口12に押し付けるだけで簡単に、側板1に固定することができ、段板取付作業を効率良く行うことができる。
さらに本実施形態においては、段板2を側板1に組み付けた際には、段板2の裏面21側に設けられた連結具被覆凹部25内に連結具4が収容されるため、段板2の表面側に、連結具7や、釘やビス等の固定手段の頭部が露呈することがない。このため、固定手段の頭部を隠蔽するために特別な化粧を施す必要がなく、通常の簡単な化粧を施すだけで簡単に仕上げることができ、シンプルで好ましい美観を得ることができる。さらに化粧作業に必要な労力を軽減することができるため、階段組立作業を容易に行うことができる。
その上さらに、本実施形態においては、拡開状態の突出部8の形状に対応させて、連結具被覆凹部25を入口部よりも奥部が広いアリ溝状に形成しているため、突出部8が拡開した際に、その突出部8が連結具被覆凹部25内に適合状態に収容され、突出部8の連結具被覆凹部25からの抜け止めをより一層確実に図ることができ、段板2の側板1に対する取付強度をより一層高めることができる。
また本実施形態においては、側板1の段板取付用木口12に形成される連結具取付凹部15を、側板1の側面側(内面側)からの溝付加工によって形成するものであるため、連結具取付凹部15を簡単に形成することができる。すなわち、木口12側から溝状の連結具取付凹部15を形成する場合、木口12は巾が狭くスペース的に制約があり、加工が困難となってしまう。そこで、本実施形態においては、スペース的にゆとりがある側面からの加工によって、連結具取付凹部15を形成しているため、スペース的に制約され難く、連結具取付凹部15を簡単に形成することができる。
また本実施形態においては、連結具4の本体5に初期状態保持用凹部73および押込状態保持用凹部74を形成し、段板2の組付前には、インサートピン8の係合突起83を初期状態保持用凹部73に係合させて、インサートピン8を初期状態に保持している。このため、施工現場への機材搬入時や階段組立時等に、インサートピン8が連結具本体5から抜け落ちたり、インサートピン8が連結具本体5に必要以上に挿入されてしまう等の不具合を確実に防止でき、機材搬入作業や階段組立作業を効率良くスムーズに行うことができる。
また本実施形態においては、連結具4の本体5を硬質合成樹脂によって作製して、その本体5の突出部7をその分割片71,71の弾性変形により拡開変形させて抜け止め作用を発揮するものであるため、何度でもやり直すことができるとともに、再利用も可能である。
すなわち仮に、本発明の連結具4の本体5を、一般的なアンカーボルトの材料としての用いられる金属によって作製した場合、連結具本体5の突出部7は拡開変形時には塑性変形するため、拡開変形する前の縮径な状態に戻すことが困難である。このため、段板取付前に不注意等により、インサートピン8を押し込んでしまうと、突出部7を元の縮径形状に戻すことができず、連結具4を廃棄せざるを得ず、経済的に不利益である。
これに対し、本実施形態においては、連結具本体5の突出部7を弾性変形によって拡開変形させるものであるため、段板取付前に謝って、インサートピン8を押し込んで突出部7を拡開させてしまったとしても、インサートピン8を引き抜けば、突出部7は弾性復帰することにより元の縮径した状態に戻すことができる。つまり、本実施形態の連結具4は、何度でもやり直すことができ、経済的に非常に有益である。さらに階段をリフォームするような場合においても、以前に使用していた連結具4を、使用後に、再利用することも可能であり、材料の有効利用を図ることができて、より一層経済的に有益である。
しかも、本実施形態においては、段板組付前に不用意にインサートピン8が連結具本体5に必要以上に差し込まれてしまった場合、簡単に修復することができる。すなわち本実施形態においては、連結具本体5の底壁にロック解除用作業孔52を形成しているため、段板組付前に、インサートピン8がロック状態まで差し込まれて、インサートピン8の係合突起83が押込状保持用凹部74に係合して、その状態で保持されていたとしても、径の小さいドライバーやキリ等の工具を、連結具本体5のロック解除用作業孔52に差し込んで、その工具によって、インサートピン8を抜き出し方向に強く押し込めば良い。これにより、インサートピン8の係合突起83が押込状態保持用凹部74から外れて、インサートピン8を抜き出すことができ、インサートピン8を所定の位置(初期状態)に戻すことができる。
また仮に、初期状態のインサートピン8の全体を連結具本体5から完全に引き抜く必要が生じたとしても、上記と同様に、ドライバー等をロック解除用作業孔52に差し込んで、インサートピン8を強く押し込めば、インサートピン8を連結具本体5から取り外すことができる。
また本実施形態においては、連結具4の連結具本体5およびインサートピン8を硬質合成樹脂の一体成形品によって構成しているため、合成樹脂の熱成形によって効率良く簡単に製造することができ、コストを削減することができる。
なお上記実施形態においては、段板2の裏面21側に形成される連結具被覆凹部25を、溝状に形成しているが、それだけに限られず、本発明においては例えば、連結具被覆凹部25を、有底の孔(穴)状に形成するようにしても良い。
さらに上記実施形態においては、側板1に形成される連結具取付凹部15を、溝状に形成しているが、それだけに限られず、孔(穴)状に形成するようにしても良い。
また上記実施形態においては側板1の連結具取付部としての連結具取付凹部15の奥部17に、連結具本体5における固定部6の抜け止め膨出部61を係合させることによって、連結具4を連結具取付凹部15に対し抜け止め状に固定するようにしているが、本発明においては、連結具取付部に対する連結具の固定方法は特に限定されるものではない。例えば接着剤、ビス、釘等によって、連結具を側板1の連結具取付用木口に12に固定するようにしていも良い。さらに連結具4の固定部の外周に雄ねじを刻設するとともに、側板1の連結具取付部に雌ねじ(ねじ切り孔)を形成しておき、そのねじ切り孔に連結具4の固定部をねじ込むことにより、連結具4を側板に固定するようにしても良い。この場合、連結具本体5におけるスリット70にマイナスドライバーの先端を差し込んで、そのドライバーの回転操作によって連結具本体5を回転させることにより、連結具本体5を簡単にねじ込むことができる。
また上記実施形態においては、連結具4の固定部6を側板1の連結具取付凹部15に収容するようにしているが、本発明においては、連結具の固定部を側板に必ずしも埋設する必要はない。例えば連結具の固定部を、接着剤によって直接、側板の段板取付用木口に固定したり、連結具の固定部にフランジ等を形成しておき、そのフランジを接着剤や、釘、ビス等によって固定するようにしても良い。要は連結具4の固定部が側板等の部材に固定されてさえいえれば良い。
また上記実施形態においては、連結具4の突出部7を2つの分割片71によって構成しているが、本発明においては、分割片の数は特に限定されるものではなく、連結具4の突出部7を、3つ以上の分割片によって構成するようにしても良い。もっとも本実施形態のように、連結具被覆凹部を溝状に形成する場合には、連結具被覆凹部を構成する溝の両側内面に、2つの分割片を確実に係止することができるため、連結具4の突出部7を2つの分割片によって構成するのが好ましい。
図9はこの発明の第1変形例としての連結具4の突出部9を示す側面図である。同図に示すように、この第1変形例における連結具4において、インサートピン8におけるインサート部81に設けられる押し開き部821は、上記実施形態の連結具4における押し開き部82と比較して、インサート部81の最上端の位置に設けられるとともに、軸心方向の長さが短く形成されている。
その他の構成は上記実施形態と実質的に同様であるため、同一又は相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
この変形例においては、インサートピン8の押込に伴って、突出部7が徐々に拡開するのではなく、インサートピン8の押込が完了する直前に、突出部7が急速に拡開する。このため、連結具4の突出部7が連結具被覆凹部25の途中で引っ掛かって、突出部7を連結具被覆凹部25内に十分に差し込めない等の差込不足が生じたり、拡開した突出部7の接触により連結具被覆凹部25の内周側面が傷付くような不具合を確実に防止することができる。すなわち、突出部7が徐々に拡開するような場合には、突出部7を連結具被覆凹部25内に挿入している途中の段階で、突出部7の抜け止め突片72が、連結具被覆凹部25の内周面に当接係止してしまい、突出部7を連結具被覆凹部25内に十分に挿入できなかったり、連結具被覆凹部25の内周側面が傷付いてしまうおそれがある。
換言すると、連結具被覆凹部25を、入口部から奥部にかけて巾寸法が一定の下向きコ字溝状に形成したような場合において、突出部7が徐々に拡開するように構成しておくと、インサートピン8の差込途中に、突出部7が連結具被覆凹部25の内周側面に引っ掛かる可能性が高くなる。従って、連結具被覆凹部25をコ字溝状に形成するよう場合には特に、第1変形例のように、インサートピン8の押込が完了する直前に突出部7が急速に拡開するように構成するのが望ましい。
このように第1変形例においては、インサートピン8の押込が完了する直前に、つまり突出部7の連結具被覆凹部25内への挿入が完了する直前に、突出部7が急速に拡開するため、突出部7を連結具被覆凹部25内に十分に挿入した状態で突出部7を拡開させることができる。従って、連結具4の差込不足が発生したり、凹部内周面の破損したりするのを確実に防止でき、段板2をバラツキ無く常時安定した状態で組み付けることができる。
もっとも上記実施形態においては、連結具被覆凹部25を、奥部に向かうに従って次第に巾寸法が広くなるようなアリ溝状に形成しているため、突出部7が連結具被覆凹部25内に挿入される際に、たとえ突出部7が徐々に拡開したとしても、挿入途中に、突出部7が連結具被覆凹部25の内周側面に引っ掛かるようなことがなく、連結具4の突出部7を確実に奥まで挿入することができる。
図10Aはこの発明の第2変形例としての連結具を初期状態で示す側面図、図10Bは押込状態で示す側面図である。両図に示すように、この第2変形例における連結具4においては、連結具4の本体5におけるスリット70の上端に、一対の半筒状分割片71,71間に架け渡されるようにしてブリッジ75が一体に形成されている。
その他の構成は、上記実施形態と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
この第2変形例においては、段板取付時に、インサートピン8が連結具本体5の突出部7内に押し込まれた際には、図10Bに示すように、突出部7が拡開するのに伴って、ブリッジ75が破断するようになっている。この破断時には、「プチン」という破断音が発生するため、その破断音の有無によって、突出部7の拡開、つまり側板と段板との連結が行われた否かを判断でき、作業者は、実際に視認できなくとも、連結の適否を正確に把握することができる。
なおこの第2変形例においては、インサートピン8の係合突起83が、ブリッジ75に係止することによって、インサートピン8の抜け止め、つまりインサートピン8を初期状態に保持することができる。従って、この第2変形例においては、係合突起83およびブリッジ75は、インサートピン8(押込操作部)を初期状態に保持するための初期状態保持手段として機能している。
さらにこの変形例においては、係合突起83およびブリッジ75が初期状態保持手段として機能するため、インサートピン8を初期状態に保持するための初期状態保持凹部73(図5B等参照)を省略することもできる。
図11Aはこの発明の第3変形例としての連結具4における連結具本体5の突出部7を示す図、図11Bは第3変形例としての連結具4におけるインサートピン8を示す図である。同図に示すように、この第3変形例における連結具4においては、半筒状分割片71における周方向の中間位置に軸心方向が長い長孔76が形成されるとともに、その長孔76に対応してインサートピン8に抜け止めフィン77が形成されている。そして、インサートピン8が連結具本体5のピン押込孔51内に差し込まれた状態では、抜け止めフィン77が長孔76に軸心方向にスライド自在に収容されている。
この第3変形例においては、抜け止めフィン77が長孔76の上端部に係止することによって、インサートピン8の連結具本体5に対する抜け止めが図られるようになっている。
この第3変形例において、抜け止めフィン77および長孔76は、インサートピン8の抜け止めを図るものであるため、初期状態保持手段として機能する。
さらにこの変形例においては、上記変形例2と同様、抜け止めフィン44および長孔76が初期状態保持手段として機能するため、インサートピン8を初期状態に保持するための初期状態保持凹部73(図5B等参照)を省略することもできる。
図12A(a)はこの発明の第4変形例としての連結具4の突出部周辺を初期状態で示す側面図、同図(b)は押込状態で示す側面図、図12Bはその連結具4のインサートピン8を示す側面図である。
これらの図に示すように、この第4変形例としての連結具4の本体5における一対の半筒状分割片71.71の対向縁部の上端に、係合凹部731,731が形成される。さらにその係合凹部731に対応して、インサートピン8のインサート部81における押し開き部82に、周方向に長い押込状態保持用突起832が形成されるとともに、その突起832よりも挿入方向側に、周方向に短い初期状態保持用突起831が形成されている。
この連結具4においては、段板組付前には、連結具本体5に差し込まれたインサートピン8の初期状態保持用突起831が、係合凹部731に係合することによって、インサートピン8が初期状態に保持されるようになっている。さらにインサートピン8が押し込まれて突出部7が拡開した際には、インサートピン8の押込状態保持用突起832が、係合凹部731に係合することによって、インサートピン8が押し込まれた状態(押込状態)に保持されるようになっている。
換言すると、上記実施形態においては、連結具本体5側に2つの凹部73,74が形成され、かつインサートピン8側に1つの突起83が形成されているのに対し、この第4変形例においては、連結具本体5側に1つの凹部731が形成され、かつインサートピン8側に2つの突起831,832が形成されている。
なお、この第4変形例においては、係合凹部731によって、初期状態保持用凹部または押込状態保持用凹部が構成されている。さらに係合凹部731および初期状態保持用突起831によって初期状態保持手段が構成されるとともに、係合凹部731および押込状態保持用突起832によって押込状態保持手段が構成されている。
また上記実施形態においては、側板に連結具を取り付けるとともに、段板に連結具被覆凹部を形成するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、段板に連結具を取り付けるとともに、側板に連結具被覆凹部を形成するようにしても良い。つまり、上記実施形態では、側板によって一方の部材を構成するとともに、段板によって残り一方の部材を構成するようにしているが、それだけに限られず、本発明は、段板によって一方の部材を構成するとともに、側板によって残り一方の部材を構成するようにしても良い。
もっとも、上記実施形態のように連結具を埋設状態に固定するような場合には、加工性等の観点から、連結具を側板に取り付けるのが好ましい。
この発明の段板取付構造は、例えば一般住宅等の屋内に組み付けられる木質製階段に適用することができる。
1:側板
11:段板取付用木口
15:連結具取付凹部(連結具取付溝)
2:段板
21:裏面
25:連結具被覆凹部(連結具被覆溝)
4:連結具
51:ピン押込孔
6:固定部
7:突出部
71:半筒状分割片
73:初期状態保持用凹部
74:押込状態保持用凹部
8:インサートピン(押込操作部)
83:係合突起(初期状態保持用突起、押込状態保持用突起)
11:段板取付用木口
15:連結具取付凹部(連結具取付溝)
2:段板
21:裏面
25:連結具被覆凹部(連結具被覆溝)
4:連結具
51:ピン押込孔
6:固定部
7:突出部
71:半筒状分割片
73:初期状態保持用凹部
74:押込状態保持用凹部
8:インサートピン(押込操作部)
83:係合突起(初期状態保持用突起、押込状態保持用突起)
Claims (10)
- 段板の裏面に設けられた取付面を、側板の段板取付用木口によって構成された取付面に載置してその段板を連結具を介して前記側板に固定するようにした段板取付構造であって、
前記連結具は、前記側板および前記段板のいずれか一方の部材の取付面から突出するように配置される突出部と、その突出部を前記一方の部材に対し固定する固定部と、前記突出部の先端に、軸心方向に沿って前記突出部内に押込可能に設けられる押込操作部とを備え、前記押込操作部を押し込むことによって前記突出部が径方向に拡開変形するように構成され、
残り一方の部材の取付面に前記連結具に対応して連結具被覆凹部が形成され、
前記連結具被覆凹部内に前記突出部を収容しつつ、前記段板を前記段板取付用木口に押え付けることによって、前記押込操作部が前記連結具被覆凹部の奥壁面に押し込まれて前記突出部が拡開変形するとともに、その拡開変形した突出部の外周面が前記連結具被覆凹部の内周側面に係合して抜け止めされることによって、前記段板が前記側板に前記連結具を介して固定されるようになっていることを特徴とする段板取付構造。 - 前記突出部は、周方向に分割された複数の分割片によって構成されるとともに、
前記押込操作部は、前記複数の分割片によって囲まれたピン押込孔に押込可能に挿入配置されるインサートピンによって構成され、
前記インサートピンが前記ピン押込孔に押し込まれた際に、そのインサートピンの外周面によって前記複数の分割片が径方向に押し広げられることによって、前記突出部が拡開変形するようになっている請求項1に記載の段板取付構造。 - 前記突出部は、弾性変形によって拡開変形するように構成される一方、
前記連結具は、前記押込操作部が前記突出部内に押し込まれた後の状態である押込状態に保持して前記突出部を拡開状態に保持するための押込状態保持手段を備えている請求項1または2に記載の段板取付構造。 - 前記押込状態保持手段は、前記押込操作部に設けられた押込状態保持用突起と、前記突出部に設けられた押込状態保持用凹部とを備え、前記押込操作部が前記突出部内に押し込まれた際に、前記押込状態用突起が前記押込状態保持用凹部に係合することにより、前記押込操作部がその移動が規制されて押込状態に保持されるようになっている請求項3に記載の段板取付構造。
- 前記連結具は、前記押込操作部が前記突出部内に押し込まれる前の状態である初期状態に保持するための初期状態保持手段を備えている請求項1〜4のいずれか1項に記載の段板取付構造。
- 前記初期状態保持手段は、前記押込操作部に設けられた初期状態保持用突起と、前記突出部に設けられた初期状態保持用凹部とを備え、初期状態において、前記初期状態保持突起が前記初期状態保持用凹部に係合することにより、前記押込操作部の移動が規制されるようになっている請求項5に記載の段板取付構造。
- 前記一方の部材に連結具取付凹部が形成され、
前記連結具の固定部が、前記連結具取付凹部内に嵌め込まれて固定されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の段板取付構造。 - 前記一方の部材が前記側板によって構成され、
前記連結具取付凹部は、前記側板の内側面および前記段板取付用木口の双方に開口し、かつ側板の内側面から側板の厚さ方向に連続する連結具取付溝によって構成され、
前記連結具の固定部が、前記側板の内面側から前記連結具取付溝に嵌め込まれて固定されている請求項7に記載の段板取付構造。 - 前記連結具被覆凹部は、開口縁部よりも奥部の広さが広いアリ溝状に形成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の段板取付構造。
- 段板の裏面に設けられた取付面を、側板の段板取付用木口によって構成された取付面に載置してその段板を連結具を介して前記側板に固定するようにした段板取付方法であって、
前記連結具として、前記側板および前記段板のいずれか一方の部材の取付面から突出するように配置される突出部と、その突出部を前記一方の部材に対し固定する固定部と、前記突出部の先端に、軸心方向に沿って前記突出部内に押込可能に設けられる押込操作部とを備え、前記押込操作部を押し込むことによって前記突出部が径方向に拡開変形するように構成されたものを準備しておき、
残り一方の部材の取付面に前記連結具に対応して連結具被覆凹部を形成しておき、
前記連結具被覆凹部内に前記突出部を収容しつつ、前記段板を前記段板取付用木口に押え付けることによって、前記押込操作部を前記連結具被覆凹部の奥壁面に押し込んで前記突出部を拡開変形させるとともに、その拡開変形した突出部の外周面を前記連結具被覆凹部の内周側面に係合して抜け止めすることによって、前記段板を前記側板に前記連結具を介して固定するようにしたことを特徴とする段板取付方法。
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