JP2014062235A - 耐水性熱伝導性樹脂組成物および成形品 - Google Patents

耐水性熱伝導性樹脂組成物および成形品 Download PDF

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隆弘 小林
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Abstract

【課題】湿熱環境での重量変化、寸法性、機械物性および熱伝導性に優れた樹脂組成物および成形品を提供する。
【解決手段】
(A)、(B)との合計量100重量%として、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂20〜50重量%、(B)マグネシア50〜80重量%配合してなる耐水性熱伝導性樹脂組成物であって、(B)マグネシアの、平均粒子径(D50)をBET比表面積で除した値が100〜800の範囲であることを特徴とする耐水性熱伝導性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、高温高湿度処理後の重量増加率抑制、寸法変化率抑制、強度保持率に優れており、さらに熱伝導性と、湿熱と乾燥を繰り返した際の成形品の耐久性に優れた耐水性熱伝導性樹脂組成物およびそれを成形して得られる成形品に関するものである。
熱可塑性樹脂、特に機械的特性、熱的性質に優れるエンジニアリングプラスチックスはその優れた特性を活かして様々な用途において使用されている。エンジニアリングプラスチックスの一種であるポリアリーレンスルフィド樹脂は優れた耐熱性、剛性、寸法安定性、および難燃性などエンジニアリングプラスチックスとして好適な性質を有していることから、射出成形用を中心として各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品などの用途に使用されている。
近年、地球温暖化や資源エネルギー問題に関して、環境低負荷に対する観点から様々な取り組みがなされている。なかでも自動車では、駆動機構に電気モーターを使用した電気自動車、ガソリンエンジンなどの内燃機関と電気モーターを併用したハイブリッド自動車など走行中の二酸化炭素や窒素酸化物の排出量の低減、つまり燃料消費を低減するために電気モーターの高性能・高出力化が進められている。
モーター性能向上には、駆動に必要な電力についてバッテリーから送られてくる電圧を昇圧するコンバーターと、直流電圧を交流電圧に交換し、モーターを駆動するユニットを搭載したパワーコントロールユニット(以下PCUと称することがある)の性能向上も進められている。
モーターの高出力化にともない、モーター運転時の銅損や鉄損による発熱量が増大するため、周辺部材は高温にさらされる。発生した熱はモーター出力の低下、モーター寿命の低下を招くため、冷却することが重要であり、熱源から効率よく排熱する為に周辺部品に冷却液を循環させたり、空冷させたりする点に、冷却方法の課題がある。
また、PCUにおいても高出力化するために、PCUを構成する複数の半導体パワー素子(トランジスタとダイオードからなる電流をオン・オフするスイッチング素子)をそれぞれ大電力化することから、それに伴う温度上昇に対する排熱など、冷却機構部品の冷却性能向上の課題がある。
さらに、自動車以外の電気電子機器においても高性能化による電力出力向上に伴う温度上昇において、機器内部部品保護の為の冷却機構部品の冷却性能向上の課題がある。冷却方式は、空冷より冷却液を循環する方式の方が効率よく排熱できるが、冷却機構部品には軽量化、形状の自由度等から熱可塑性樹脂への、高温高湿度環境での耐久性、熱伝導性、加工性に優れた新たな材料が求められている。
ところで、ポリフェニレンサルファイド樹脂などの樹脂と、高純度の水酸化マグネシウムを焼成し、カップリング剤で表面処理した樹脂充填用酸化マグネシウムを配合した樹脂組成物が、耐湿性に優れること(例えば、特許文献1参照)が知られている。
例えば特許文献2には、合成樹脂にケイ素系被覆剤を被覆した、特定範囲のBET比表面積と平均2次粒子径の酸化マグネシウムを配合し、耐水性、熱伝導性にバランスがとれた樹脂組成物が記載されている。例えば特許文献3には、(メジアン径)/(比表面積から求められる比表面積径)の比が3以下、つまり凝集が少なく、D90/D10が4以下、つまり粒径分布幅が狭い酸化マグネシウム粒子を配合し、高充填性、熱伝導性を改善した樹脂組成物が開示されており、酸化マグネシウムをアルコキシシランで表面処理し、疎水性を改善することが記載されている。例えば特許文献4には、ポリアリーレンサルファイド樹脂にリン含有被覆酸化マグネシウムとアルコキシシラン化合物を配合し、成形性、耐湿熱性、熱伝導性にバランスがとれた樹脂組成物が記載されている。
特開昭61−91232号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2011−68757号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2011−20870号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2006−282783号公報(特許請求の範囲、実施例)
しかし、特許文献1の製造方法で得られる酸化マグネシウムを配合してなる樹脂組成物であっても、未だ高温高湿度処理後の寸法変化、強度保持率が不十分であると推測される。また、特許文献2および3に記載の酸化マグネシウムを配合してなる樹脂組成物であっても、PCT(プレッシャークッカーテスト)のような、高温高湿度環境での重量増加率、寸法変化率、強度保持率が不十分であると推測される。さらに、特許文献4に記載の樹脂組成物は、PCT処理後の曲げ強度保持率が改善されていると記載されているが、依然として強度保持率については不十分であった。
本発明は、前述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたものである。従って本発明は高温高湿度処理後の重量増加率、寸法変化率、強度保持率に優れ、さらに熱伝導性と、湿熱と乾燥を繰り返した際の成形品の耐久性に優れた耐水性熱伝導性樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を有する。
1.(A)および(B)の合計量を100重量%として、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂20〜50重量%、(B)マグネシア50〜80重量%を配合してなる耐水性熱伝導性樹脂組成物であって、(B)マグネシアの、平均粒子径(D50)をBET比表面積で除した値が100〜800の範囲であることを特徴とする耐水性熱伝導性樹脂組成物。
2.前記(B)マグネシアが硬焼マグネシアであることを特徴とする1に記載の耐水性熱伝導性樹脂組成物。
3.(B)マグネシア100重量部に対して、(C)酸性リン酸エステル、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤から選ばれる少なくとも1種以上の表面処理剤0.1〜1.5重量部により表面処理されたものであることを特徴とする1〜2いずれか記載の耐水性熱伝導性樹脂組成物。
4.(B)マグネシアが平均粒子径(D50)30〜100μmであり、累積粒度分布の粒子径D90/D10が2〜10の範囲であることを特徴とする1〜3いずれか記載の耐水性熱伝導性樹脂組成物。
5.(B)マグネシアの純度が97.0%以上である1〜4いずれか記載の耐水性熱伝導性樹脂組成物。
6.前記(A)と(B)の合計100重量部に対して、さらに(D)繊維状充填材を5〜55重量部配合してなる1〜5いずれか記載の耐水性熱伝導性樹脂組成物。
7.前記(A)と(B)の合計100重量部に対して、さらに(E)オレフィン系樹脂を2〜12重量部配合してなる1〜6いずれか記載の耐水性熱伝導性樹脂組成物。
8.1〜7のいずれか記載の耐水性熱伝導性樹脂組成物を射出成形することを特徴とする成形品。
9.成形品を、温度121℃、湿度100%RH、2気圧の条件下で48時間保管したときの重量増加率が1%以下であることを特徴とする8記載の成形品。
10.成形品の熱伝導率が0.8W/m・K以上であることを特徴とする8または9記載の成形品。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高温高湿度処理後の重量増加率、寸法変化率、強度保持率に優れ、熱伝導性および、湿熱と乾燥を繰り返した際の成形品の耐久性に優れる。本発明の耐水性熱伝導性樹脂組成物によれば、射出成形機等を用いて連続的に所望の形状に加工することが可能であり、優れた耐水性を有する成形品ならびに金属やセラミックスとの複合体を得ることが可能である。
本発明の成形品は、部材の周辺が高温高湿度下にさらされる際に成形品の劣化が抑制されることにより、内部部品の保護や、内部部品の特性低下の抑制が必要とされる発熱体の冷却機構部品や、自動車のモーター周辺部品およびパワーコントロールユニット周辺部品等に有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂について説明する。
まず、ポリアリーレンスルフィド樹脂の代表例としては、ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略す場合もある)、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられ、中でもポリフェニレンスルフィドが特に好ましく使用される。かかるポリフェニレンスルフィドは、下記構造式で示される繰り返し単位を好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む重合体であり、上記繰り返し単位が70モル%以上の場合には、耐熱性が優れる点で好ましい。
Figure 2014062235
また、かかるポリフェニレンスルフィド樹脂は、その繰り返し単位の30モル%以下を、下記の構造式を有する繰り返し単位などで構成することが可能であり、ランダム共重合体、ブロック共重合体であってもよく、それらの混合物であってもよい。
Figure 2014062235
かかるポリアリーレンスルフィド樹脂は、通常公知の方法、つまり特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法あるいは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造することができる。
本発明においては、上記のようにして得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸などによる洗浄などの種々の処理を施した上で使用することも、もちろん可能である。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を加熱により架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。この場合の加熱処理温度としては、好ましくは150〜280℃、より好ましくは200〜270℃の範囲が選択して使用され、処理時間としては、好ましくは0.5〜100時間、より好ましくは2〜50時間の範囲が選択されるが、この両者をコントロールすることによって、目標とする粘度レベルを得ることができる。かかる加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率良く、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧(好ましくは7,000Nm−2以下)下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間の条件で加熱処理する方法を例示することができる。かかる加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率良く、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を有機溶媒で洗浄する場合に、洗浄に用いる有機溶媒としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく使用することができる。例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが使用される。これらの有機溶媒のなかでも、特にN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどが好ましく使用される。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
かかる有機溶媒による洗浄の具体的方法としては、有機溶媒中にポリアリーレンスルフィド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でポリアリーレンスルフィド樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分な効果が得られる。なお、有機溶媒洗浄を施されたポリアリーレンスルフィド樹脂は、残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。上記水洗浄の温度は50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を熱水で洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるポリアリーレンスルフィド樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のポリアリーレンスルフィド樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。ポリアリーレンスルフィド樹脂と水との割合は、水の多い方がよく、好ましくは水1リットルに対し、ポリアリーレンスルフィド樹脂200g以下の浴比で使用される。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を酸で洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、酸または酸の水溶液にポリアリーレンスルフィド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、および硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などが用いられる。これらの酸のなかでも、特に酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたポリアリーレンスルフィド樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水で数回洗浄することが好ましい。上記水洗浄の温度は50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが好ましい。また、洗浄に用いる水は、酸処理によるポリアリーレンスルフィド樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。
本発明に用いる(B)マグネシアは、マグネシア粒子の平均粒径(D50、単位:μm)をBET比表面積(単位:m/g)で除した値が100〜800の範囲にコントロールされていることを特徴とするものである。 マグネシアを充填材として使用する場合、水と接触した場合や高湿度環境に曝された場合に水酸化マグネシウムに変換されやすい性質を有している。とりわけ、高温高湿度環境下では、著しく水酸化マグネシウムに変換され、マグネシアを配合した樹脂組成物では、重量増加および寸法変化に伴う強度保持率の低下が起こる。
上述した粒径とBET比表面積がコントロールされた範囲のマグネシアは、マグネシア粒子が水酸化マグネシウムに変換される要因である粒子表面が平滑であることを示しており、上述したパラメーターを満たすマグネシアが高温高湿度環境下での耐水性に優れていることを見いだし、本発明に至ったものである。
さらに優れた高温高湿度環境下での耐水性の点から、マグネシア粒子の平均粒径(D50、単位:μm)をBET比表面積(単位:m/g)で除した値が150〜700の範囲であることが好ましい。マグネシア粒子の平均粒径(D50、単位:μm)をBET比表面積(単位:m/g)で除した値が200〜550の範囲であることがより好ましい。
平均粒径(D50、単位:μm)をBET比表面積(単位:m/g)で除した値が100未満の場合、粒子表面の平滑性が乏しいため、耐水性に劣る。そのため、高温高湿度環境下での重量増加率、寸法変化率、強度保持率が悪化し、樹脂組成物の形状保持が困難になる。または、マグネシア粒子径が著しく微細で、樹脂組成物の溶融混練時の負荷が増大し、製造が困難になるばかりか、マグネシア微細粒子が多量に樹脂組成物中に存在することにより、水酸化マグネシウム変換因子が増大し、高温高湿度環境下での耐水性が悪化する。
平均粒径(D50、単位:μm)をBET比表面積(単位:m/g)で除した値が800を超える場合、マグネシア粒子径が著しく大きく、樹脂組成物中での分散性が悪化し、高温高湿度環境下での強度保持率が低下する。または、マグネシア粒子が著しく凝集している場合があり、樹脂組成物の溶融混練時の負荷が増大し、製造困難になる。溶融混練時、および成形時に凝集が解砕され、マグネシア粒子の表面積が増大することによる、高温高湿度環境下での耐水性が低下する。
なお、平均粒径(D50、単位:μm)は島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−3100を用いて測定された体積基準の平均粒径である。測定方法については、粒径分布の項に詳述する。
なお、BET比表面積(単位:m/g)は十分に乾燥させ真空脱気したマグネシアに、窒素ガスを吸着させ、吸着したガス量とマグネシアの質量から求めたマグネシアの単位質量あたりの表面積である。
本発明に用いる(B)マグネシアの平均粒径(D50、単位:μm)は、20〜150μmであることが好ましく、30〜100μmがより好ましく、40〜80μmがさらに好ましい。平均粒子径が20μm以上の場合、樹脂組成物の溶融混練時の負荷が少なく、製造が容易になる。また、樹脂組成物へのマグネシアの分散性が安定し、熱伝導性、強度保持率が高位にバランス化される為好ましい。平均粒子径の上限は、150μmが好ましい。150μm以下の場合、樹脂組成物へのマグネシアの分散性が安定し、熱伝導性、強度保持率が高位にバランス化される為好ましい。
本発明に用いる(B)マグネシアのBET比表面積(単位:m/g)は、0.1〜1.0m/gであることが好ましく、0.1〜0.8m/gがより好ましく、0.1〜0.6m/gがさらに好ましい。BET比表面積が0.1m/g以上の場合、マグネシア表面活性基による、樹脂組成物へのマグネシアの分散性が良くなる傾向にあり、強度保持率や高温高湿度環境下での耐水性が向上する傾向にあり好ましい。BET比表面積の上限は1.0m/gが好ましい。1.0m/g以下の場合、表面活性基が多いことによる水酸化マグネシウム変換因子が増大することがないため、高温高湿度環境下での耐水性が低下しない。
本発明に用いる(B)マグネシアは、硬焼マグネシアが好ましい。マグネシアの製造方法には、炭酸マグネシウム(マグネサイトともいう)を焼成する方法と、海水あるいは塩化マグネシウム水溶液(苦汁またはかん水)に水酸化カルシウムを加えて水酸化マグネシウムを生成させ、これを濾過、乾燥した後、焼成する方法とがある。
上記の水酸化マグネシウムを焼成して製造されるマグネシアは、焼成温度によって呼び名が変わり、水酸化マグネシウムを1500℃以上の高温で焼成したものは硬焼(重焼、死焼ともいう)マグネシアまたはマグネシアクリンカーと呼ばれる。前記マグネシアは、粒子表面活性基が少なく、耐水性に優れる。
また、水酸化マグネシウムを450〜1300℃で焼成して得られるマグネシアは軽焼(または仮焼)マグネシアと呼ばれる。軽焼マグネシアは、粒子表面の活性が比較的大きく、硬焼マグネシアと比較して耐水性が劣る傾向にある。
硬焼マグネシアは、耐水性が高く、本発明の効果をより一層高めることができる。上記のように硬焼マグネシアは、1500℃以上で焼成されたものであるが、1600℃以上がより好ましく、1800℃以上で焼成されたものが耐水性の点でより好ましい。焼成温度の上限は2500℃程度であるが、高温になるほど、著しい粒子の凝集が発生するなど粒子径および形状の制御が困難になることから、2000℃が硬焼マグネシアの焼成温度の上限としては好ましい。
ここでいう焼成温度は、マグネシア焼成工程中の最大の温度のことである。
焼成時間は、所望の粒径や形状などにより特に限定されないが、粒子状のマグネシアを得るためには高温になるほど、短時間になる傾向がある。
また、1800〜2000℃で焼成された硬焼マグネシアの場合、粒子が凝集したような形状のものが存在することがあるが、上記焼成温度で得られた硬焼マグネシア粒子は強固に焼成されているため、本発明の耐水性熱伝導性樹脂組成物を製造する際の溶融混練時や射出成形時で粒子が解砕されることはない。硬焼マグネシアとしては、例えばRF−98(宇部マテリアルズ社製)等が挙げられる。
さらに、1800〜2000℃で焼成された硬焼マグネシアの場合、粒子表面の活性基と粒径が高位でバランス化されることにより、樹脂組成物の耐水性、熱伝導性において最も好ましい。
本発明に用いる(B)マグネシアにおいて、マグネシア間の空隙率を低下させ、より密に充填することで熱伝導性と高温高湿度処理後の強度保持率を高位でバランス化させるため、粒径が特定の範囲内に分布していることが好ましく、具体的にはレーザー光回折によって測定された累積粒度分布曲線より得られる累積度90%粒度(D90)と累積度10%粒度(D10)の比(D90/D10)が2〜10の範囲であることが好ましく、2〜6の範囲がより好ましく、2〜4の範囲がさらに好ましい。 さらにマグネシアを細密充填化により、熱伝導性および高温高湿度処理後の強度保持率を最大限に発揮させるため、レーザー光回折法によって得られた(B)マグネシアの平均粒径(D50)が30〜100μmであることが好ましく、40〜80μmがより好ましい。
本発明で用いる(B)マグネシアを上記のような粒度分布にするには、例えば平均粒径や粒径分布の異なるマグネシアを2種以上併用する方法や、篩い分け等により粒度毎に分画したものを、所望の粒径分布になるよう混合する方法などが採用できる。
なお、上記粒径分布は、レーザー光回折式粒度分布測定装置により測定される各粒子径区間における粒子径(%)をプロットした曲線より示されるものであり、累積粒度分布曲線は、その粒子径以下の粒子量(%)を累積した曲線であり、特定の粒子径以下の粒子量が全体の何%であるかを表すものである。
レーザー光回折法による測定は、溶媒等の分散可能な液体を分散媒として濃度100ppmでレーザー光回折式粒度分布測定装置(例えば島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−3100)を用いて測定する。
本発明に用いる(B)マグネシアの純度は、97.0%以上の純度を有するものが好ましい。高純度のマグネシアは熱伝導性が高く、本発明の効果をより一層高めることができる。このように高純度化したマグネシアは、高温かつ長時間焼成することにより得ることができる。上記のようにマグネシアの純度としては97.0%以上であることが好ましく、97.5%以上であることがより好ましく、98.0%以上であることがさらに好ましい。純度の上限としては、特に制限はなく、99.5%以下であれば市場からの入手は容易であり、熱伝導性の向上効果も十分に発揮できる上で好ましい。ここで、純度とは蛍光X線分析によって求められた値を示す。
本発明において(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂と(B)マグネシアとの比率は、用いるマグネシアの特性を発揮し、かつ溶融加工性とのバランスの点から、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂と(B)マグネシアの合計量100重量%に対して(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂20〜50重量%、(B)マグネシア50〜80重量%であり、好ましくは(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂25〜45重量%、(B)マグネシア55〜75重量%、より好ましくは(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂30〜40重量%、(B)マグネシア60〜70重量%が好ましい。
(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂が20重量%未満、および(B)マグネシアが80重量%を超える場合、耐水性熱伝導性樹脂組成物を製造する際の溶融練時の負荷が増大し、製造が困難である。また、溶融成形時の流動性が不足し成形品を得ることが困難となる。
(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂が50重量%を超える、および(B)マグネシアが50重量%未満の場合、マグネシアを密に充填することができないため、熱伝導性が低下し、高温高湿度処理後の強度保持率も低下傾向となる。
本発明に用いられる(C)表面処理剤としては、酸性リン酸エステル、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤から選ばれる少なくとも1種以上の表面処理剤が挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、下記式(1)に示される酸性リン酸エステルが挙げられる。
Figure 2014062235
(式中、nは1または2、RはC5〜C24のアルキル基またはアルケニル基を示す)
前記式(1)においてRはC5〜C24のアルキル基またはアルケニル基であり、アルケニル基は直鎖でもよく、また分岐していてもよい。RはC7〜C20のアルキル基が好ましく、C10〜C18のアルキル基がより好ましい。また、nは1または2であり、リン酸エステルはモノエステル型および/またはジエステル型いずれでもよい。または、モノエステル型とジエステル型の混合物であってもよい。
酸性リン酸エステルの例としては、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、イソドデシルアシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート等が挙げられ、なかでもイソデシルアシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェートがマグネシアの更なる耐水性を向上させ、湿熱処理後の吸水率、寸法変化の点で好ましい。
本発明で用いられる(C)表面処理剤のシラン系カップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシランなどのビニルシラン化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン化合物、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリロキシシラン化合物、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシラン化合物等が挙げられ、なかでもβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランがマグネシアとポリアリーレンスルフィ樹脂との親和性を向上させ、湿熱処理後の強度保持率の点で好ましい。
本発明で用いられる(C)表面処理剤のチタネート系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルパロイフォスフェート)チタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N,N−ジアミノエチル)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルフォスフェート)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)フォスフェートチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)エチレンチタネート等が挙げられ、なかでもイソプロピルトリイソステアロイルチタネートがマグネシアの更なる耐水性を向上させ、湿熱処理後の吸水率、寸法変化の点で好ましい。
本発明で用いられる(C)表面処理剤のアルミネート系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが挙げられる。
本発明で用いられる(C)表面処理剤は、(B)マグネシア100重量部に対して0.1〜1.5重量部が好ましく、0.2〜1.2重量部がさらに好ましく、0.3〜0.9重量部がより好ましい。表面処理剤の量が0.1重量部以上の場合、湿熱処理後の吸水率、寸法変化率、強度保持率の改善効果が高位でバランス化される為、好ましい。また、1.5重量部以下配合することで、表面処理したマグネシア同士が凝集し、ポリアリーレンスルフィド樹脂への分散性が低下することなく、湿熱処理後の強度保持率、熱伝導性が向上する為に好ましい。
本発明に用いる(D)繊維状充填材とは、具体的に例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、石膏繊維、セラミック繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、チタン酸バリウムストロンチウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー等が挙げられ、ガラス繊維あるいは炭素繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いられるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また上記フィラーはエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、シラン化合物、チタネート系化合物、アルミ系化合物で被覆あるいは集束されていてもよい。
なかでも、ガラス繊維は樹脂組成物の絶縁性を保持し、湿熱処理と乾燥を繰り返した際の成形品の強度保持率などの耐久性に優れている点で好ましい。
また、ここでいうガラス繊維の材質としては、Eガラス、Hガラス、Aガラス、Cガラス、天然石英ガラス、合成石英ガラスなどが挙げられ、Eガラス、Hガラスが特に好ましい。ガラス繊維の形態としては、チョップドガラス繊維、ミルドガラス繊維等いずれのものでも使用することができるが、樹脂組成物の流動性、樹脂組成物の成形品の強度の点からもチョップドガラス繊維が好ましい。
かかる(D)繊維状充填材の配合量は、(A)および(B)の合計を100重量部として、(D)繊維状充填材を5〜55重量部である。より好ましくは10〜40重量部、さらに好ましくは20〜35重量部である。(D)成分が5重量部以上配合することで、湿熱と乾燥を繰り返した際の、強度保持率の改良が得られるので好ましい。また、55重量部以下配合することで、樹脂組成物を製造する際の溶融混練時の装置の負荷増大を抑制し、成形品の成形時流動性不足による空気の巻き込みによる、熱伝導性低下を抑制することができるので好ましい。
また、(D)繊維状充填材の配合量は、樹脂組成物を製造する際の溶融混合と、成形品を製造する際の溶融成形を容易にするために、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂と(B)マグネシアの合計量を100重量部としたときの(B)マグネシアの配合量が、60重量部以上の場合は、(D)繊維状充填材は、40重量部以下であることが好ましく、35重量部以下であることがより好ましく、25重量部以下であることがさらに好ましい。
また、本発明では、耐水性熱伝導性樹脂組成物の靱性付与によるさらなる湿熱と乾燥時の強度保持率向上の観点から、さらに(E)オレフィン系樹脂を前記(A)および(B)の合計100重量部に対して2〜12重量部配合することが好ましい。
本発明で用いる(E)オレフィン系樹脂は、オレフィンを(共)重合した重合体であり、具体的には、オレフィン系(共)重合体、およびそれらにエポキシ基、酸無水物基、アイオノマーなどの官能基を有する単量体成分(以下、官能基含有成分と略す。)を導入して得られるオレフィン系(共)重合体(変性オレフィン系(共)重合体)などが挙げられる。
本発明においてオレフィン系樹脂は1種または2種以上で使用することも可能である。
オレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、イソブチレンなどのα−オレフィン単独または2種以上を重合して得られる重合体、α−オレフィンとアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのα,β−不飽和酸およびそのアルキルエステルとの共重合体が挙げられる。
オレフィン系重合体の好適な具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体などが挙げられる。
オレフィン系(共)重合体にエポキシ基、酸無水物基、アイオノマーなどの官能基を有する単量体成分を導入するための官能基含有成分の例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物などの酸無水物基を含有する単量体、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのエポキシ基を含有する単量体、カルボン酸金属錯体などのアイオノマーを含有する単量体が挙げられる。
これら官能基含有成分を導入する方法は特に制限はなく、共重合せしめたり、オレフィン重合体にラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。官能基含有成分の導入量は変性オレフィン重合体全体に対して0.001〜40モル%、好ましくは、0.01〜35モル%の範囲内であるのが適当である。
本発明に有用なオレフィン重合体にエポキシ基、酸無水物基、アイオノマーなどの官能基を有する単量体成分を導入して得られる変性オレフィン(共)重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体(“g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体の亜鉛錯体、エチレン/メタクリル酸共重合体のマグネシウム錯体、エチレン/メタクリル酸共重合体のナトリウム錯体などを挙げることができる。
好ましいものとしては、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
とりわけ好ましいものとしては、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられる。
上記(E)オレフィン系樹脂の配合量は前記(A)および(B)成分の合計100重量部に対して、2〜12重量部が好ましく、3〜10重量部がさらに好ましく、4〜8重量部がより好ましい。オレフィン系樹脂を2重量部以上配合することで、柔軟性および湿熱と乾燥を繰り返す際の成形品割れを改良する効果が得られるので好ましい。また、12重量部以下配合することで、樹脂組成物の熱安定性が損なわれることがなく、組成物を製造する際の溶融混練時の増粘を抑えることもでき、また良好な射出成形性を維持することができるので好ましい。
本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品は、PCT(プレッシャークッカーテスト)装置にて、温度121℃、湿度100%RH、2気圧の条件下で、48時間保管後の成形品の重量増加率が1.0%以下であることが、高温高湿度下での機械強度保持や、熱伝導性の点など実用性の点で好ましい。成形品の重量増加率は、0.8%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。0.3%以下が成形品の高温高湿度下での長期実用性の点で最も好ましい。
本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品は、熱流計法で測定した熱伝導率が0.8W/m・K以上であることが好ましい。ここで、熱伝導率は、樹脂組成物からなる角形成形品(幅50mm×長さ50mm×厚み3mm、フィルムゲート)を作製し、この成形品の流れ方向に沿って成形品中心を基点として切削を行い、幅18mm×長さ18mmの試験片としたものを用いて熱流計法熱伝導率測定装置(リガク社製GH−1S)により測定した値である。
本発明の樹脂組成物の熱伝導率は、自動車などに搭載されるモーター部品やパワーコントロールユニット部品などの周辺部材に用いられる際に、モーター部やパワーコントロールユニット内部の半導体やコイルなどの電子部品から発生した熱を放散し、熱によるモーターや半導体、コイル等の電子部品の劣化抑制ならびに出力低下抑制、さらには熱源の熱を効率良く系外へ放散する為に循環している冷却水等へ連続的に樹脂組成物の劣化無く、放散させることを最大限に発揮するため、熱伝導率0.8W/m・K以上であることが好ましく、熱伝導率1.0W/m・K以上がより好ましく、熱伝導率1.2W/m・K以上がさらに好ましい。熱伝導率が0.8W/m・K未満であると発熱部分の温度上昇による放熱効果の低下、耐湿熱状況下での樹脂組成物の強度低下によるモーターや電子部品の出力低下や製品寿命が低下する。
さらに、本発明で用いる樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、無機微粒子、有機リン化合物、金属酸化物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、モンタン酸ワックス類、モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素、ポリエチレンワックス、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン、ステアリン酸、セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等の酸化防止剤、耐候剤および紫外線防止剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダートアミン系等)、耐熱安定剤(ヒンダートフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、発泡剤、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック、メタリック顔料等)、染料(ニグロシン等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれら臭素化難燃剤と三酸化アンチモンの組み合わせ等)などの通常の添加剤を添加することができる。
本発明の耐水性熱伝導性樹脂組成物は、通常公知の方法で製造される。例えば、(A)成分、(B)成分および、必要に応じて(C)成分、(D)成分、(E)成分などの必要な添加剤を予備混合して、または予備混合することなく押出機などに供給して十分溶融混練することにより調製される。具体的には原料の混合物を単軸あるいは二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどの通常公知の溶融混練機に供して250〜400℃の温度で混練する方法などを例として挙げることができる。また、原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を上記の方法により溶融混練する方法、あるいは一部の原料を単軸あるいは二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。
好ましくは(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂、(E)オレフィン系樹脂を溶融混練後、(B)マグネシア、(C)表面処理剤、(D)繊維状充填材を添加、溶融混練して製造する方法である。成形品の耐久性を改良するために、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂、(E)オレフィン系樹脂を溶融混練後、(B)マグネシア、(C)表面処理剤を添加した後、(D)繊維状充填材を添加、溶融混練して製造する方法がさらに好ましい。
中でも二軸押出機を用いて、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂、(E)オレフィン系樹脂を供給、溶融混練後、サイドフィーダーを用いて(B)マグネシア、(C)表面処理剤を供給、さらにサイドフィーダーを用いて(D)繊維状充填材を供給、混練した後、真空状態に曝して発生するガスを除去する方法を好ましく挙げることができる。
このような押出工程で耐水性熱伝導性樹脂組成物を得ることにより各成分の分散状態が良好で、(D)繊維状充填材の折損を最小限に抑制し、成形品耐久性が改良された材料を得ることができる。
また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
本発明では、樹脂組成物を、通常の成形方法(射出成形、プレス成形、インジェクションプレス成形など)により、溶融成形することにより成形品を成形する。なかでも量産性の点から射出成形、インジェクションプレス成形により成形することが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高温高湿度環境での重量増加率、寸法変化率、強度保持率、優れているというだけでなく、熱伝導性、および湿熱と乾燥が繰り返される環境での成形品の耐久性に優れているという特性を有している。また、本発明の耐水性熱伝導性樹脂組成物とのインサート成形等により、金属との複合使用される部材に適している。それら部材の周辺が高温高湿度と乾燥下にさらされる際に金属と本発明の耐水性熱伝導性樹脂組成物との複合化が高度に保たれることにより、製品を保護、製品特性低下抑制が必要とされる部材に適している。特に近年開発が進んでいる駆動機構が、ガソリンエンジンと電気モーターを併用しているハイブリッド(HEV)自動車や、駆動機構がモーターのみで走行する燃料電池自動車、電気(EV)自動車のモーター周辺部品および、モーターを駆動させるためにバッテリーの出力を制御するパワーコントロールユニット周辺部品に好適に用いることが可能である。周辺部品には、モーターやパワーコントロールユニットを冷却する機構が構成されており、発熱部分の冷却するために、冷却水を循環する機構が組み込まれている周辺部材に特に好適に用いることが可能である。
モーター周辺部品として具体的には、モーターステーター周辺の筐体、モーターステーター内部の冷却水循環路および/または冷却オイル循環路周辺部品、モーターインシュレーター、コイルボビン、コイルを封止している熱硬化性樹脂の外枠、モーター駆動電極の保護枠、モーター冷却水および/またはオイル配管、配管保持器具、キャップなど高温や高湿度下で使用される部材、さらには金属、熱硬化性樹脂と接する部品が挙げられる。
パワーコントロールユニット周辺部品として具体的には、昇圧コンバーター筐体、インバーター筐体、モータージェネレーターECU筐体、パワーコントロールユニット筐体、さらには昇圧コンバーターおよび/またはインバーターおよび/またはモータージェネレーターECU内部の電極や端子などの金属、半導体および/または半導体が搭載されている回路基板を封止している熱硬化性樹脂と接する部品が挙げられる。これらの部材は、本発明の耐水性熱伝導性樹脂組成物からなる成形体と金属や熱硬化性樹脂またはセラミックスなどとの複合体として用いることもできる。
また、本発明の耐水性熱伝導性樹脂組成物は上記部材の他に、上記以外の部材として、ハウジングなどの構造部品、電装部品ケースなどに適している。センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、磁気ヘッドケース、パワーモジュール、端子台、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、あるいは給湯機や風呂の湯量、温度センサーなどの水回り機器部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、ライターなどに代表される機械関連部品;顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される高額機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシャルメーターベース、リレーブロック、インヒビタースイッチ、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、湯温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、デュストリビューター、スタータースイッチ、イグニッションコイルおよびそのボビン、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、走行駆動部以外のモーター関連部品(ワイパー可動部、パワーウインドウ可動部、ラジエターモーター用ブラッシュホルダー、インシュレーター、ローター、モーターコア、バスリング)等の自動車・車両関連部品、その他各種用途にも適用可能である。特に小型精密化による製品設計自由度および成形品の温度や湿度変化による成形品特性低下抑制、かつ機械強度、流動性に優れることから、特に成形品の形状自由度が要求され、自動車部品用途、電気・電子部品用途、熱機器部品用途等に有用である。
本発明の耐水性熱伝導性樹脂組成物は、金属および熱硬化性樹脂と接していても良く、熱可塑性樹脂組成物を金属にインサート成形する方法や、熱可塑性樹脂組成物の成形品に熱硬化性樹脂を注入し硬化させる方法などが挙げられる。ここでいう金属とは、例えばアルミニウム、銅、鉄、スズ、ニッケル、亜鉛等が挙げられ、アルミニウム合金または、ステンレス鋼等の合金でも良い。また、表面がアルミニウム、スズ、ニッケル、金、銀等でメッキ加工されたものでも好ましく用いることができる。なかでもアルミニウム、アルミニウム合金が好ましい。
熱硬化性樹脂とは、例えばエポキシ樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、アリルエステル樹脂等が挙げられるが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂等が好ましく、なかでもエポキシ樹脂、シリコーン樹脂が注型時の流動性、硬化物の耐湿熱性の点でより好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、以下の実施例は、例示的なものであり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
参考例1 ポリフェニレンスルフィド樹脂
<PPS−1の調整>
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.91kg(69.80モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン10.48kg(71.27モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温した。270℃で100分反応した後、オートクレーブの底栓弁を開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。
得られた固形物およびイオン交換水76リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した76リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。
得られたケークおよびイオン交換水90リットルを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、pHが7になるよう酢酸を添加した。オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水76リットルを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。得られたPPSをPPS−1とした。PPS−1は、融点281℃であった。301℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した際の溶融粘度は30Pa・sであった。
マグネシア
M−1:宇部マテリアルズ社製“RF−98”、
平均粒子径(D50)49.9μm、
(D10)31.9μm、(D90)82.9μm
(D90)/(D10)=2.6
BET比表面積0.1m/g、
平均粒子径/BET比表面積=499
硬焼マグネシア(焼成温度1800〜2000℃)
MgO純度97.2%。
M−2:協和化学社製“パイロキスマ3320”粒径大ロット
平均粒子径(D50)26.0μm
(D10)9.6μm、(D90)41.5μm
(D90)/(D10)=4.3
BET比表面積0.1m/g、
平均粒子径/BET比表面積=260
硬焼マグネシア(焼成温度1500℃)
MgO純度99.0%。
M−3:協和化学工業社製“パイロキスマ3320”粒径小ロット
平均粒子径(D50)17.0μm
(D10)5.5μm、(D90)36.9μm
(D90)/(D10)=6.7
BET比表面積0.5m/g
平均粒子径/BET比表面積=34
硬焼マグネシア(焼成温度1500℃)
MgO純度99.6%。
M−4:宇部マテリアルズ社製“RF−10C”
平均粒子径(D50)14.7μm
(D10)4.9μm、(D90)69.9μm
(D90)/(D10)=14.3
BET比表面積0.7m/g
平均粒子径/BET比表面積=21
硬焼マグネシア(焼成温度1800〜2000℃)
MgO純度98.7%。
M−5:タテホ化学工業社製“クールフィラーCF2−100”
平均粒子径(D50)27.0μm
(D10)11μm、(D90)52μm
(D90)/(D10)=4.7
BET比表面積0.8m2/g
平均粒子径/BET比表面積=33.8
軽焼マグネシア(焼成温度1000〜1300℃)
MgO純度99.0%以上。
M−6:協和化学工業社製“パイロキスマ3350”
平均粒子径(D50)69.2μm
(D10)41.0μm、(D90)123.9μm
(D90)/(D10)=3.0
BET比表面積0.1m/g
平均粒子径/BET比表面積=692
硬焼マグネシア(焼成温度1500℃)
MgO純度99.0%
M−7:協和化学工業社製“パイロキスマN”
平均粒子径(D50)52.5μm
(D10)29.6μm、(D90)96.9μm
(D90)/(D10)=3.3
BET比表面積0.1m/g
平均粒子径/BET比表面積=525
硬焼マグネシア(焼成温度1500℃)
MgO純度99.0%
表面処理剤
H−1:酸性リン酸エステル
2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、城北化学工業社製“JP−508”
H−2:シラン系カップリング剤
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、信越化学工業社製“KBM−303”
H−3:チタネート系カップリング剤
イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、味の素ファインテクノ社製“プレンアクトKRTTS”
H−4:アルミネート系カップリング剤
アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、味の素ファインテクノ社製“プレンアクトAL−M”。
繊維状充填材
G−1:日本電気硝子社製チョップドストランド“T−747H”繊維径10.5μm。
オレフィン系樹脂
E−1:住友化学工業社製“BF−E”、エチレン/グリシジルメタクリレート=88/12重量%共重合体
E−2:三井化学社製“タフマーA4085”、エチレン/ブテン−1共重合体。
実施例1〜5、26、27、比較例1〜4
スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−44)を用いて、表1に示す配合量で、参考例1のポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS−1)を元込め部から添加し、マグネシアを中間添加口から投入し、表1に示す加工温度で、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行い、ペレットを得た。ついで130℃の熱風乾燥機で5時間乾燥した後、後述する評価を行った。結果を表1に示す。
比較例5
スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−44)を用いて、表1に示す配合量で、参考例1のポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS−1)を元込め部から添加し、マグネシアを中間添加口から投入し、表1に示す加工温度で、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行ったが、押出機混練トルクが上昇し、ペレットを取得することができなかった。
Figure 2014062235
実施例6〜12、28、29
スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−44)を用いて、表2に示す配合量で、参考例1のポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS−1)を元込め部から添加し、マグネシアにあらかじめ表面処理剤をドライブレンドしたものを中間添加口(サイドフィーダー1)から投入し、表2に示す加工温度で、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行い、ペレットを得た。ついで130℃の熱風乾燥機で5時間乾燥した後、後述する評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2014062235
実施例13〜21、30
スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−44)を用いて、表3に示す配合量で、参考例1のポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS−1)を元込め部から添加し、マグネシアにあらかじめ表面処理剤をドライブレンドしたものを中間添加口(サイドフィーダー1)から投入し、繊維状充填材を最終添加口(サイドフィーダー2)から投入し、表3に示す加工温度で、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行い、ペレットを得た。ついで130℃の熱風乾燥機で5時間乾燥した後、後述する評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 2014062235
実施例22〜25
スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−44)を用いて、表4に示す配合量で、参考例1のポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS−1)およびオレフィン系樹脂を元込め部から添加し、マグネシアにあらかじめ表面処理剤をドライブレンドしたものを中間添加口(サイドフィーダー1)から投入し、繊維状充填材を最終添加口(サイドフィーダー2)から投入し、表4に示す加工温度で、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行い、ペレットを得た。ついで130℃の熱風乾燥機で5時間乾燥した後、後述する評価を行った。結果を表4に示す。
Figure 2014062235
(1)湿熱処理後吸水率(重量増加率)
溶融混練で得られたペレットを、射出成形機UH1000(80t)(日精樹脂工業社製)を用い、表1から表4の加工温度および金型温度条件で、幅30mm×長さ30mm×厚み3mm(フィルムゲート)の試験片を10個作製した。次いで得られた試験片1個ずつの重量を精密天秤で量り、処理前試験片重量とした。試験片をPCT(プレッシャークッカーテスト)装置、エスペック社製“EHS−411”にて温度121℃、湿度100%RH、2気圧で48時間処理した後、処理前の試験片重量から、処理後の試験片10個毎の重量を量り、処理後試験片重量とした。重量増加率は、下記式(1)で算出した。
重量増加率 =(処理後試験片重量)/(処理前試験片重量)×100・・・式(1)
上記式で算出した試験片10個毎の重量増加率の平均値を、湿熱処理後吸水率(%)とした。湿熱処理後吸水率が低いほど、重量増加率が抑制されるので、耐水性に優れる。
(2)湿熱処理後最大寸法変化率
溶融混練で得られたペレットを、射出成形機UH1000(80t)(日精樹脂工業社製)を用い、表1から表4の加工温度および金型温度条件で、幅30mm×長さ30mm×厚み3mm(フィルムゲート)の試験片を10個作製した。次いで得られた試験片1個ずつの幅と長さ方向の寸法をノギスで測定し、処理前寸法とした。試験片をPCT(プレッシャークッカーテスト)装置、エスペック社製“EHS−411”にて温度121℃、湿度100%RH、2気圧で48時間処理した後、処理前の試験片の幅と長さ方向から、処理後の試験片10個毎の寸法の最大値を測定し、処理後寸法とした。最大寸法変化率は、下記式(2)で算出した。
最大寸法変化率 =(処理後寸法)/(処理前寸法)×100・・・式(2)
上記式で算出した試験片10個毎の最大寸法変化率の平均値を、湿熱処理後最大寸法変化率(%)とした。湿熱処理後最大寸法変化率が低いほど、寸法変化が抑制されるので、耐水性に優れる。
(3)湿熱処理後強度保持率
溶融混練で得られたペレットを、射出成形機UH1000(80t)(日精樹脂工業社製)を用い、表1から表4の加工温度および金型温度条件で、幅100mm×長さ100mm×厚み3mm(フィルムゲート)の角形成形品を10枚成形し、流れ方向に沿って成形品中心を基点として両側に12.7mm幅で各2枚、計20枚曲げ強度試験片をそれぞれ作製した。次いで得られた試験片10枚をASTM D790に準拠し、曲げ強度の測定を行い、その平均値を処理前曲げ強度とした。残りの試験片10枚をPCT(プレッシャークッカーテスト)装置、エスペック社製“EHS−411”にて温度121℃、湿度100%RH、2気圧で48時間処理した後、ASTM D790に準拠し、曲げ強度の測定を行い、その平均値を処理後曲げ強度とした。湿熱処理後強度保持率は、下記式(3)で算出した。
湿熱処理後強度保持率=(処理後曲げ強度)/(処理前曲げ強度)×100
・・・式(3)
上記式の湿熱処理後強度保持率(%)の数値が100に近いほど、強度保持される為、耐水性に優れる。
(4)熱伝導率
溶融混練で得られたペレットを、射出成形機UH1000(80t)(日精樹脂工業社製)を用い、表1から表4の加工温度および金型温度条件で、幅50mm×長さ50mm×厚み3mm(フィルムゲート)の角形成形品を作製し、流れ方向に沿って成形品中心を基点として幅18mm×長さ18mmの試験片を作製した。次いで得られた試験片を用いて、熱流計法熱伝導率測定装置(リガク社製GH−1S)により熱伝導率を測定した。この値が高いほど熱伝導性に優れる。
(5)湿熱乾燥サイクル率
溶融混練で得られたペレットを、射出成形機UH1000(80t)(日精樹脂工業社製)を用い、表1から表4の加工温度および金型温度条件で、5mm×5mm×40mm長さのアルミ製角柱の両端5mmから、厚さ5mmで長さ30mmを覆うように成形し(成形部外径寸法は、15mm×15mm×30mm長さ)、湿熱乾燥サイクル試験片を20個作製した。次いで得られた試験片をPCT(プレッシャークッカーテスト)装置、エスペック社製“EHS−411”にて温度121℃、湿度100%RH、2気圧で10時間処理した後、熱風乾燥機にて110℃で10時間乾燥する(湿熱と乾燥1回で1サイクル)。上記湿熱処理と乾燥の1サイクル、5サイクル、10サイクル終了時点に、目視で成形品に割れが発生しているか確認を行った。湿熱乾燥サイクル率(%)は、下記式(4)で算出した。
湿熱乾燥サイクル率 =(1−((割れた成形品)/20))×100・・・式(4)
上記式の湿熱乾燥サイクル率(%)の数値が100%に近いほど、湿熱乾燥サイクル率に優れている。

Claims (10)

  1. (A)および(B)の合計量を100重量%として、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂20〜50重量%、(B)マグネシア50〜80重量%を配合してなる耐水性熱伝導性樹脂組成物であって、(B)マグネシアの、平均粒子径(D50)をBET比表面積で除した値が100〜800の範囲であることを特徴とする耐水性熱伝導性樹脂組成物。
  2. 前記(B)マグネシアが硬焼マグネシアであることを特徴とする請求項1に記載の耐水性熱伝導性樹脂組成物。
  3. (B)マグネシア100重量部に対して、(C)酸性リン酸エステル、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤から選ばれる少なくとも1種以上の表面処理剤0.1〜1.5重量部により表面処理されたものであることを特徴とする請求項1〜2いずれか記載の耐水性熱伝導性樹脂組成物。
  4. (B)マグネシアが平均粒子径(D50)30〜100μmであり、累積粒度分布の粒子径D90/D10が2〜10の範囲であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の耐水性熱伝導性樹脂組成物。
  5. (B)マグネシアの純度が97.0%以上である請求項1〜4いずれか記載の耐水性熱伝導性樹脂組成物。
  6. 前記(A)と(B)の合計100重量部に対して、さらに(D)繊維状充填材を5〜55重量部配合してなる請求項1〜5いずれか記載の耐水性熱伝導性樹脂組成物。
  7. 前記(A)と(B)の合計100重量部に対して、さらに(E)オレフィン系樹脂を2〜12重量部配合してなる請求項1〜6いずれか記載の耐水性熱伝導性樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか記載の耐水性熱伝導性樹脂組成物を射出成形することを特徴とする成形品。
  9. 成形品を、温度121℃、湿度100%RH、2気圧の条件下で48時間保管したときの重量増加率が1%以下であることを特徴とする請求項8記載の成形品。
  10. 成形品の熱伝導率が0.8W/m・K以上であることを特徴とする請求項8または9記載の成形品。
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