JP5807418B2 - モーター冷却用放熱部材 - Google Patents

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Description

本発明は、耐振動性、耐高速応力性、熱伝導性、軽量性に優れたモーター冷却用放熱部材に関するものである。
近年、地球温暖化やエネルギー問題に関して、環境低負荷に対する観点から様々な取り組みがなされている。なかでも次世代自動車の候補として駆動機構に電気モーター使用した、燃料電池自動車、電気自動車、ガソリンエンジンとモーターを併用したハブリッド自動車など走行中の二酸化炭素や窒素酸化物の排出を低減するためモーターの高性能化が進められている。
駆動機構にモーターを用いるに際して、従来のガソリン内燃機関と同様に自動車のシャーシ上にモーターを設置し、動力伝達機構を経由してタイヤに駆動力を伝える方式の他に、モーターをタイヤホイール内に組み込んで動力を伝達するインホイールモーター方式などが開発されている。インホイールモーター方式は、ガソリン内燃機関(エンジン)車と同等以上の車両室内空間が得られ、さらにタイヤ各輪が独立駆動することによって車の走行安定性が向上できる技術として注目され、自動車メーカーを中心に開発が進められている。
一方、駆動機構にモーターを用いる為にはモーターの出力向上、インホイールモーターとして用いる場合は、小型化と走行時の路面から受ける衝撃に対する部品の安全性が必要となってくる。
モーター出力向上には、モーターステーター(固定子)磁極部の絶縁処理を施した部分に直接巻線が巻き付けられた集中巻方式のモーターが多く用いられている。その際、ローター(固定子)を着磁する工程において、従来は外部の着磁ヨークに巻線を施した着磁専用の着磁治具にて着磁を施していた。しかしながら、ケース等に組み込む際にローターに塵や埃が付着したり、ローターの磁力によりステーターに組み込む際に、ステーターにぶつかり破損する恐れがあり、取り扱いが大変困難であった。そこで近年、ステーターの巻線を着磁巻線として、あらかじめローターをステーターに組み込み、ローター内の永久磁石を着磁する(ステーター巻線に高電圧を数回付加する)組み込み着磁方式が行われるようになってきた。しかし、着磁時の高電圧付与の際に、ステーター着磁巻線の強力な着磁磁界により、ローターを引きつけようとする力が働く。その結果、ローターはケースに固定されているために、逆にステーターの巻き線がローターに強力に引きつけられる応力が働く結果となる。これにより、巻線を絶縁保護している部材や、それに接続している部材は、高電圧付加時、すなわち瞬間的に一定方向に高速な応力が加わる。この強力な応力によりステーターの部材が破損する課題が多くなっている。その結果、モーターの絶縁性が損なわれ焼損したり、モーター寿命の低下につながるという課題がある。
モーター出力向上に伴い、モーター運転時の銅損や鉄損による発熱量が大きくなる、発生した熱はモーターの寿命を低下させるため、モーター機外へ効率良く放熱する課題がある。
インホイールモーターとしてホイルに搭載する場合は、搭載方式にもよるが、車体のサスペンションより下、すなわちタイヤに直接搭載される。そのためホイル内に収納できるよう小型化が必要であること。タイヤに直接搭載されることにより路面振動を受けることによるモーター、および周辺部品の耐振動性の向上が望まれている。
また、車の航続距離をのばすには軽量化が最も効果があると言われており、モーターおよび周辺部品の軽量化は環境性能を考慮した場合重要である。
上記課題に対し、耐振動性、耐高速応力性、熱伝導性、軽量性に優れた新たなモーター冷却用放熱部材が求められている。
ところで、ポリアリーレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略す場合がある)とポリアリーレンエーテル系樹脂と、強化材と水酸化マグネシウムを含有する樹脂組成物を成形し、該成形品の反射面となる面に金属膜を設けることを特徴とするランプリフレクタ(例えば、特許文献1参照)が知られている。
また、電気・電子部品、自動車部品に用いる樹脂組成物として、特許文献2には、ポリアリーレンサルファイド樹脂および水酸化マグネシウムを主成分とする金属酸化物を含有する耐アーク性などの電気特性に優れる樹脂組成物が、特許文献3には、ポリアリーレンスルフィド樹脂と水酸化マグネシウムと繊維状充填材および/または非繊維状充填材を配合してなる耐トラッキング性が改善された樹脂組成物が、特許文献4には、ポリアリーレンサルファイド樹脂にガラス繊維、タルクおよび水酸化マグネシウムを含む成形表面外観、耐アーク性に優れた樹脂組成物が、特許文献7には、ポリフェニレンスルフィド樹脂に水酸化マグネシウムと炭酸カルシウムからなる切削加工性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物がそれぞれ記載されている。
また、電気機器部品用途などに用いることができるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物として、特許文献5には、ポリフェニレンスルフィド樹脂にポリオレフィン系重合体および/またはポリオレフィン系共重合体、シリコーン、フッ素樹脂から選ばれる1種または2種以上と水酸化マグネシウムと繊維状および/または非繊維状充填材からなる耐トラッキングに優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が開示されている。
さらに、特許文献6には、ライトソケットなどに用いることができるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物として、特許文献5には、ポリフェニレンスルフィド樹脂に表面処理が施されていない水酸化マグネシウムと繊維状および/または非繊維状充填材からなる耐トラッキング性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が開示されている。
しかし、これらの文献のいずれにも、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が耐振動性、および耐高速応力性、熱伝導性、軽量性に優れており、放熱性の必要なモーター冷却用放熱部材に適することは開示されていない。
特開平5−320506号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開平1−318068号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2001−288363号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開平2−64158号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開平8−291253号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2002−167510号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2008−81580号公報(特許請求項の範囲、実施例)
しかしながら、近年のモーター出力向上による発熱量増加のおける放熱対策、着磁工程での耐高速応力性、さらに出力増加および搭載環境における振動増加とモーターの小型、軽量化対策として、金属を代替することができる、耐振動性、耐高速応力性に優れ、かつ熱伝導性、軽量性のよい樹脂組成物を成形してなるモーター冷却用放熱部材が求められている。
よって、本発明は上述の課題を解決し、耐振動性、耐高速応力性、軽量性、熱伝導性に優れたモーター冷却用放熱部材を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を有する。
1.(A)と(B)と(C)の合計を100重量%として(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂25〜45重量%と(B)水酸化マグネシウム10〜60重量%および(C)繊維径が5〜8μmのガラス繊維15〜65重量%を配合してなり、熱流計法で測定した熱伝導率が0.8W/m・K以上である樹脂組成物を成形してなるモーター冷却用放熱部材
.前記樹脂組成物が、前記(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対して、さらに(D)オレフィン系樹脂を1〜10重量部配合してなる樹脂組成物である1記載のモーター冷却用放熱部材。
.前記樹脂組成物が、前記(B)100重量部に対して、さらに(E)タルクおよび/またはマイカを1〜45重量部配合してなる樹脂組成物である1〜いずれか記載のモーター冷却用放熱部材。
.モーターステーター周辺部材に用いられる1〜いずれか記載のモーター冷却用放熱部材。
.インホイールモーターに搭載される1〜いずれか記載のモーター冷却用放熱部材。
本発明のモーター冷却用放熱部材は耐振動性、耐高速応力性、軽量性、熱伝導性に優れる。本発明のモーター冷却用放熱部材によれば、射出成形機等を用いて連続的に所望の形状に加工することが可能であり、優れた耐振動性、耐高速応力性、軽量性、熱伝導性を有するモーター冷却用放熱部材を得ることが可能である。
本発明のモーター冷却用放熱部材は、モーターおよびモーター周辺から発生する熱を外部へ伝達し、放熱させる放熱筐体や放熱フィン、冷媒循環系の筐体やキャップなどの放熱が必要であり、かつモーター駆動時の振動に耐えうる部材、ローター永久磁石着磁工程をステーター組み込み状態で行うステーター部材に有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる(A)PPS樹脂の代表例としては、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリーレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられ、中でもポリアリーレンスルフィドが特に好ましく使用される。かかるポリアリーレンスルフィドは、下記構造式で示される繰り返し単位を好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む重合体であり、上記繰り返し単位が70モル%以上の場合には、耐熱性が優れる点で好ましい。
Figure 0005807418
また、かかるポリアリーレンスルフィド樹脂は、その繰り返し単位の30モル%以下を、下記の構造式を有する繰り返し単位などで構成することが可能であり、ランダム共重合体、ブロック共重合体であってもよく、それらの混合物であってもよい。
Figure 0005807418
かかるポリアリーレンスルフィド樹脂は、通常公知の方法、つまり特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法あるいは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造することができる。
本発明においては、上記のようにして得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化などの種々の処理を施した上で使用することも、もちろん可能である。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を加熱により架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。この場合の加熱処理温度としては、好ましくは150〜280℃、より好ましくは200〜270℃の範囲が選択して使用され、処理時間としては、好ましくは0.5〜100時間、より好ましくは2〜50時間の範囲が選択されるが、この両者をコントロールすることによって、目標とする粘度レベルを得ることができる。かかる加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率良く、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧(好ましくは7,000Nm−2以下)下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間の条件で加熱処理する方法を例示することができる。かかる加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率良く、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を有機溶媒で洗浄する場合に、洗浄に用いる有機溶媒としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく使用することができる。例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが使用される。これらの有機溶媒のなかでも、特にN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどが好ましく使用される。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
かかる有機溶媒による洗浄の具体的方法としては、有機溶媒中にポリアリーレンスルフィド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でポリアリーレンスルフィド樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分な効果が得られる。なお、有機溶媒洗浄を施されたポリアリーレンスルフィド樹脂は、残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。上記水洗浄の温度は50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を熱水で処理する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるポリアリーレンスルフィド樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のポリアリーレンスルフィド樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。ポリアリーレンスルフィド樹脂と水との割合は、水の多い方がよく、好ましくは水1リットルに対し、ポリアリーレンスルフィド樹脂200g以下の浴比で使用される。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を酸処理する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、酸または酸の水溶液にポリアリーレンスルフィド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、および硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などが用いられる。これらの酸のなかでも、特に酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたポリアリーレンスルフィド樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水で数回洗浄することが好ましい。上記水洗浄の温度は50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが好ましい。また、洗浄に用いる水は、酸処理によるポリアリーレンスルフィド樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。
本発明で用いられるポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度は、成形時の成形品の歪みを低減し、かつ得られた樹脂組成物に組成ムラ(特性バラツキ)をなくすために300℃、剪断速度1000/秒の条件下で80Pa・s以下であることが好ましく、50Pa・s以下がより好ましく、30Pa・s以下であることが更に好ましい。溶融粘度の下限については特に制限はないが、5Pa・s以上であることが好ましい。また溶融粘度の異なる2種以上のポリアリーレンスルフィド樹脂を併用して用いてもよい。
なお、ポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度は、キャピログラフ(東洋精機(株)社製)装置を用い、ダイス長10mm、ダイス孔直径0.5〜1.0mmの条件により測定することができる。
本発明に用いる(B)水酸化マグネシウムは、化学式Mg(OH)で示される無機物を80重量%以上含む比較的純度の高い水酸化マグネシウムが挙げられ、熱伝導率、機械的強度や溶融粘度の点から、好ましくはMg(OH)で示される無機物を80重量%以上、CaO含量5重量%以下、塩素含量1重量%以下、より好ましくはMg(OH)を95重量%以上含みかつ、CaO含量1重量%以下、塩素含量0.5重量%以下、さらに好ましくは、Mg(OH)98重量%以上含みかつ、CaO含量0.1重量%以下、塩素含量0.1重量%以下の高純度水酸化マグネシウムが適している。
本発明で使用される水酸化マグネシウムの形状は、粒子状、フレーク状、繊維状いずれでもよいが分散性などの観点から粒子状、フレーク状が最も好適である。また、その粒子径に関して特に限定はないが、樹脂組成物の機械的強度や溶融粘性のバランス上、レーザー回折法によって測定した平均粒子径が0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.3〜4μmの範囲のものが適当である。
この(B)水酸化マグネシウムを、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシランなどのビニルシラン化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン化合物、ステアリン酸、オレイン酸、モンタン酸、ステアリルアルコールなどの長鎖脂肪酸または長鎖脂肪族アルコールで表面処理して使用することは好ましく、特にエポキシシラン化合物、アミノシラン化合物で表面処理した(B)水酸化マグネシウムの適用は熱伝導性向上効果、耐振動性、耐高速応力性、軽量性の点で好適である。
本発明に用いる(C)繊維径4〜11μmのガラス繊維は、繊維径がSEM(走査型電子顕微鏡)で観察したガラス繊維の断面の直径が4〜11μmの範囲であるガラス繊維が挙げられ、流動性、機械的強度、耐高速応力性の点から繊維径が上記範囲であることが好ましい。特に繊維径が5〜8μmの範囲のものが流動性、機械的強度、耐高速応力性を高位でバランス化できる点で好ましい。繊維径が4μm未満であると樹脂組成物の混練時にガラスが折損し、流動性が著しく低下する他、機械的強度、耐高速応力性も低下する。繊維径が11μmより大きくなると、組成物中のガラス繊維の本数が減少することになり、ガラス繊維による補強効果が得にくくなることから機械的強度、耐高速応力性が劣るようになる。
ガラス繊維の形態としては、チョップドガラス繊維、ミルドガラス繊維等いずれのものでも使用することができるが、樹脂組成物の流動性、モーター冷却用放熱部材の機械的強度の点からチョップドガラス繊維が好ましい。
かかる(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂、(B)水酸化マグネシウムおよび(C)繊維径4〜11μmのガラス繊維の配合量は、(A)と(B)と(C)の合計を100重量%として(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂25〜45重量%と(B)水酸化マグネシウム10〜60重量%および(C)繊維径が4〜11μmのガラス繊維15〜65重量%の範囲、より好ましくは(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂25〜40重量と(B)水酸化マグネシウム15〜60重量%および(C)繊維径が4〜11μmのガラス繊維15〜60重量%、さらに好ましくは(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂25〜35重量%と(B)水酸化マグネシウム20〜60重量%および(C)繊維径4〜11μmのガラス繊維15〜55重量%の範囲である。ポリフェニレンスルフィド樹脂が25重量%より少ないと流動性が低下する。また、45重量%より多いとモーター冷却用放熱部材としての熱伝導性が得られない。水酸化マグネシウムが10重量%より少ないと水酸化マグネシウム分散不足などにより、熱伝導性が低下する。また、60重量%より多いと流動性低下や樹脂組成物混練時の装置の負荷が増大し製造が困難になる。繊維径4〜11μmのガラス繊維が15重量%より少ないと機械的強度、耐高速応力性が低下する。また、65重量%より多いと熱伝導性が不足する他、流動性低下や樹脂組成物混練時の装置の負荷が増大し製造が困難になる。
本発明のモーター冷却用放熱部材を構成する樹脂組成物は、上記のとおりポリフェニレンスルフィド樹脂と水酸化マグネシウムと繊維径4〜11μmのガラス繊維を配合することにより、熱流計法で測定した熱伝導率が0.8W/m・K以上のものを得ることができる。ここで、熱伝導率は、樹脂組成物からなる角形成形品(50mm×50mm×3mm厚み、フィルムゲート)を作成し、この成形品の両表面を深さ0.5mm切削して厚さ2mmにし、さらに切削を行い縦×横(20mm×20mm)の試験片としたものを用いて熱流計法熱伝導率測定装置(リガク社製GH−1S)により測定した値である。
本発明のモーター冷却用放熱部材を構成する樹脂組成物の熱伝導率は、発熱するモーターおよびモーター周辺部材に接触し熱源となるモーター周辺の熱を放散し、モーター本体の温度上昇を最大限に抑制するため、熱伝導率0.8W/m・K以上であることが好ましく、熱伝導率1.0W/m・K以上がより好ましく、熱伝導率1.2W/m・K以上がさらに好ましい。熱伝導率が0.8W/m・K未満であるとモーターの温度上昇による放熱効果が低くなり、モーター寿命が低下する。
また、本発明では、モーター冷却用放熱部材の靭性付与によるさらなる機械的強度、耐高速応力性向上の観点から、モーター冷却用放熱部材を構成する樹脂組成物に、さらに(D)オレフィン系樹脂を前記(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対し対して1〜10重量部配合することが好ましい。
本発明で用いる(D)オレフィン系樹脂は、オレフィンを(共)重合した重合体であり、具体的には、オレフィン系(共)重合体、およびそれらにエポキシ基、酸無水物基、アイオノマーなどの官能基を有する単量体成分(以下、官能基含有成分と略す。)を導入して得られるオレフィン系(共)重合体(変性オレフィン系(共)重合体)などが挙げられる。
本発明においてオレフィン系樹脂は1種または2種以上で使用することも可能である。
オレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、イソブチレンなどのα−オレフィン単独または2種以上を重合して得られる重合体、α−オレフィンとアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのα,β−不飽和酸およびそのアルキルエステルとの共重合体が挙げられる。
オレフィン系重合体の好適な具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体などが挙げられる。
変性オレフィン系(共)重合体にエポキシ基、酸無水物基、アイオノマーなどの官能基を有する単量体成分を導入するための官能基含有成分の例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物などの酸無水物基を含有する単量体、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのエポキシ基を含有する単量体、カルボン酸金属錯体などのアイオノマーを含有する単量体が挙げられる。
これら官能基含有成分を導入する方法は特に制限なく、共重合せしめたり、オレフィン重合体にラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。官能基含有成分の導入量は変性オレフィン重合体全体に対して0.001〜40モル%、好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であるのが適当である。
本発明に特に有用なオレフィン重合体にエポキシ基、酸無水物基、アイオノマーなどの官能基有する単量体成分を導入して得られるオレフィン(共)重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体(“g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体の亜鉛錯体、エチレン/メタクリル酸共重合体のマグネシウム錯体、エチレン/メタクリル酸共重合体のナトリウム錯体などを挙げることができる。
好ましいものとしては、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
とりわけ好ましいものとしては、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられる。
上記(D)オレフィン系樹脂の配合量は前記(A)、(B)、(C)成分の合計100重量部に対して、1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部、より好ましくは3〜6重量部である。オレフィン系樹脂を1重量部以上配合することで、柔軟性および耐衝撃性を改良する効果が得られるので好ましく、機械的強度、耐高速応力性も向上する。また、10重量部以下配合することで、樹脂組成物の熱安定性が損なわれることがなく、組成物を製造する際の溶融混練時の増粘を抑えることもでき、また良好な射出成形性を維持することができるので好ましい。
本発明で用いる(E)タルクおよび/またはマイカは、具体的には、タルクは含水ケイ酸マグネシウムであり、純度に特に制限はない。レーザー回折法によって測定したタルクの平均粒子径が1〜50μmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは5〜40μmであり、10〜30μmの範囲のものがモーター冷却用放熱部材のさらなる耐振動性向上の観点からより好ましい。
マイカは、層状ケイ酸塩鉱物の一種でフィロケイ酸塩類に分類されている。構成元素により白雲母、金雲母、黒雲母に分けられるが、鉄などの不純物の少ない白雲母が好ましい。レーザー回折法によって測定したマイカの平均粒子径は1〜50μmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは5〜40μmであり、10〜30μmの範囲のものがモーター冷却用放熱部材のさらなる耐振動性向上の観点から好ましい。
上記(E)タルクおよび/またはマイカの配合量は、前記(B)成分100重量部に対して、1〜45重量部、好ましくは5〜35重量部、より好ましくは10〜25重量部である。タルクおよび/またはマイカを1重量部以上配合することで、さらなる耐振動性向上を改良する効果が得られるので好ましく、機械的強度も向上する。また45重量部以下配合することで、樹脂組成物の流動性、熱伝導性を損なうことがなく、組成物を製造する際の溶融混練時の増粘を抑えることができ、良好な射出成形性を維持できる。また、モーター冷却用放熱部材の放熱効果も維持することができるので好ましい。
上記(E)のタルクおよび/またはマイカは、本発明の効果を損なわない範囲で表面処理されていてもよく、表面処理を施すための処理剤としては、表面改質剤、収束剤があげられ、具体的には、脂肪酸、ワックス、非イオン系界面活性剤、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物、リン系化合物、アルミナなどのアルミニウム塩、二酸化ケイ素などのケイ酸塩、二酸化チタンなどのチタニウム塩等があげられる。
さらに、本発明で用いる樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、無機微粒子、有機リン化合物、金属酸化物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、モンタン酸ワックス類、モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素、ポリエチレンワックス、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン、ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等の酸化防止剤、耐候剤および紫外線防止剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、発泡剤、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック、メタリック顔料等)、染料(ニグロシン等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンの組み合わせ等)などの通常の添加剤を添加することができる。
本発明のモーター冷却用放熱部材を構成する樹脂組成物は、通常公知の方法で製造される。例えば、(A)成分、(B)成分、(C)成分中および、必要に応じて(D)成分、(E)成分などのその他の必要な添加剤を予備混合して、または予備混合することなく押出機などに供給して十分溶融混練することにより調製される。具体的には原料の混合物を単軸あるいは二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどの通常公知の溶融混練機に供して260〜400℃の温度で混練する方法などを例として挙げることができる。また、原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原材料を溶融混練する方法、あるいは一部の原料を単軸あるいは二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。好ましくはポリフェニレンスルフィド樹脂、オレフィン系樹脂を溶融混練後、水酸化マグネシウム、繊維径4〜11μmのガラス繊維、タルクおよび/またはマイカを添加、溶融混練して製造する方法である。中でも二軸押出機を用いて、ポリフェニレンスルフィド樹脂、オレフィン系樹脂を供給、溶融混練後、サイドフィーダーを用いて水酸化マグネシウム、4〜11μmのガラス繊維、タルクおよび/またはマイカを供給、混練した後、真空状態に曝して発生するガスを除去する方法を好ましく挙げることができる。このような押出工程でポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得ることにより各成分の分散状態が良好な材料を得ることができる。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
本発明では、樹脂組成物を、通常の成形方法(射出成形、プレス成形、インジェクションプレス成形など)により、溶融成形することによりモーター冷却用放熱部材を成形する。なかでも量産性の点から射出成形、インジェクションプレス成形により成形することが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、成形加工性に優れているだけでなく、耐振動性、耐高速応力性、熱伝導性、軽量性に優れているという未知なる属性を有しており、モーターの発熱に対する放熱性が必要とされる部材、その発生した熱を放散する金属に接する部材、構成部品、周辺部品、筐体に適している。特に近年開発が進んでいる駆動機構がガソリンとモーターを併用しているハイブリッド自動車や駆動機構がモーターのみの燃料電池自動車、電気自動車のモーター冷却用放熱部材として用いることが可能である。さらには、耐高速応力性が必要とされる、ローター永久磁石着磁工程をステーター組み込み状態で行うモーターステーター部材や、振動に対する信頼性が必要とされるインホイールモーター方式のモーター冷却用放熱部材に好適に用いることができる。
モーター冷却用放熱部材として具体的には、空冷式、水冷循環式、オイル循環式等のモーター冷却方式に用いられるものであって、モーターステーター周辺の筐体、モーターステーター筐体内部の冷却水循環路および/または冷却オイル循環路の放熱部材、モーター発熱部から金属、セラミックスなどの冷却部材を経由して大気中および/または冷却水、冷却オイルへと伝達する放熱配管、配管保持器具、キャップ、放熱フィンなど各種放熱性が必要とされる冷却部品などが挙げられる。これらモーター冷却用放熱部材は、モーター冷却用放熱部材として、本発明の樹脂組成物からなる成形体と金属やセラミックスなどとの複合体として用いることもできる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
参考例1 ポリフェニレンスルフィド樹脂
PPSの調製
撹拌機および底に弁の付いた20リットルオートクレーブに、47%水硫化ナトリウム(三協化成)2383g(20.0モル)、96%水酸化ナトリウム831g(19.9モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)3960g(40.0モル)、およびイオン交換水3000gを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水4200gおよびNMP80gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は0.17モルであった。また、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの硫化水素の飛散量は0.021モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン(シグマアルドリッチ)2942g(20.0モル)、NMP1515g(15.3モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。その後、400rpmで撹拌しながら、200℃から227℃まで0.8℃/分の速度で昇温し、次いで274℃まで0.6℃/分の速度で昇温し、274℃で50分保持した後、282℃まで昇温した。オートクレーブ底部の抜き出しバルブを開放し、窒素で加圧しながら、内容物を撹拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去し、ポリアリーレンスルフィド(PPS)と塩類を含む固形物を回収した。
得られた固形物およびイオン交換水15120gを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した17280gのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。
得られたケークおよびイオン交換水11880gを、撹拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水17280gを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。得られたケークを80℃で熱風乾燥し、さらに120℃で24時間で真空乾燥することにより、乾燥PPSを得た。得られたPPSは、ポリスチレン換算の重量平均分子量が20000であった。
なお、重量平均分子量は以下の方法で測定した。
ポリマー5mg、1−クロロナフタレン 5gをサンプル瓶に計り取り、210℃に設定した高温濾過装置(センシュー科学製SSC−9300)に入れ、5分間(1分間予備加熱、4分間攪拌)加熱した後、高温濾過装置から取り出し、室温になるまで放置し、サンプル調整を行った。ついで以下の測定条件で重量平均分子量を測定した。
・GPC測定条件
装置 : センシュー科学 SSC−7100
カラム名 : センシュー科学 GPC3506×1
溶離液 : 1−クロロナフタレン(1−CN)
検出器 : 示差屈折率検出器
検出器感度 : Range 8
検出器極性 : +
カラム温度 : 210℃
プレ恒温槽温度 : 250℃
ポンプ恒温槽温度 : 50℃
検出器温度 : 210℃
サンプル側流量 : 1.0mL/min
リファレンス側流量 : 1.0mL/min
試料注入量 : 300μL
検量線作成試料 : ポリスチレン。
参考例2 水酸化マグネシウム
B1:協和化学工業社製“KISUMA5EU”。
参考例3 ガラス繊維
C1:日本電気硝子社製チョップドストランド“T−747H”繊維径10.5μm
C2:日本電気硝子社製チョップドストランド“T−790DE”繊維径6μm
C3:日本電気硝子社製チョップドストランド“T−717”、繊維径13μm
繊維径は、JIS“R−3420”(1978年4月1日制定、最新改正日2006年9月1日)に則って測定を行った。
参考例4 オレフィン系樹脂
D1:住友化学工業社製“BF−E”、エチレン/グリシジルメタクリレート=88/12重量%共重合体
D2:三井化学社製“タフマーA4085”、エチレン/ブテン−1=82/18重量%共重合体。
参考例5 タルク
E1:富士タルク社製タルク“NK−64”、平均粒子径19μm
E2:富士タルク社製タルク“NK−48”、平均粒子径26μm。
参考例6 マイカ
E3:ヤマグチマイカ社製工業用湿式粉砕雲母粉“A−21”、平均粒子径22μm
E4:ヤマグチマイカ社製工業用湿式粉砕雲母粉“A−41”、平均粒子径47μm。
参考例7 アルミナ
F1:昭和電工社製“AL−43KT”、平均粒子径 4.6μm。
参考例8 黒鉛
F2:ティムカル・ジャパン社製“KS−75”、平均粒子径75μm。
実施例1〜8、比較例1〜5
スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−44)を用いて、表1に示す参考例1のポリフェニレンスルフィド樹脂および、参考例4のオレフィン系樹脂を元込め部から添加し、参考例2の水酸化マグネシウムおよび、参考例3のガラス繊維、参考例5のタルク、参考例6のマイカを中間添加口から投入し、樹脂温度300℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行い、ペレットを得た。ついで130℃の熱風乾燥機で5時間乾燥した後、後述する評価を行った。結果を表1に示す。
比較例6〜11
スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−44)を用いて、表2に示す参考例1のポリフェニレンスルフィド樹脂および、参考例4のオレフィン系樹脂を元込め部から添加し、参考例2の水酸化マグネシウムおよび、参考例3のガラス繊維、参考例7のアルミナ参考例8の黒鉛を中間添加口から投入し、樹脂温度300℃、スクリュー転数200rpmで溶融混練を行い、ペレットを得た。ついで130℃の熱風乾燥機で5時間乾燥した後、後述する評価を行った。結果を表2に示す。
(1)耐振動性
射出成形機プロマット(25t)(住友重機械工業社製)を用い、シリンダー温度320℃、金型温度150℃の温度条件で、JIS K7113記載のJIS2号試験片形状(厚み2mm)の成形品を成形品長手方向の両端から試験片中心部に射出した樹脂組成物が突き当てになるよう、成形下限圧+5MPaで20個成形した。
次いで得られた成形品をステンレス製容器に成形品の幅方向と並行になるように容器の底に並べた。成形品の入ったステンレス容器を、水の入った超音波洗浄機US−10PS(エヌエスディ社製:発振子、38kHzBLT自励発振)に入れ5分間作動させ、得られた成形品の内10個について振動処理を行った。振動処理をしていない成形品(振動処理前成形品)10個と振動処理後の成形品(振動処理後成形品)10個について、支点間距離30mmの曲げ試験用支持台上に設置し、成形品突き当て部分(試験片中心部)にDIGITAL FORE GAUGE“MODEL PDG−50(MARUBISHI社製)を押し当てて成形品が破断する際の最大値(Kgf)を測定し、各々10個の平均値を振動処理前強度と振動処理後強度とした。
振動処理後に成形品突き当て部分が破断していた場合は、破断した成形品数を「振動処理後破断成形品数」として明記した。また、耐振動性測定の際には、振動処理で破断した成形品は数値0Kgfとして平均値の算出に使用した。
耐振動性は、下記式(1)で算出した。
耐振動性 =(振動処理後破断強度)/(振動処理前破断強度)×100・・・式(1)
上記式の耐振動性の数値が100に近いほど、耐振動性が優れる。
(2)耐高速応力性
射出成形機UH1000(80t)(日精樹脂工業社製)を用い、シリンダー温度320℃、金型温度150℃の温度条件で、ASTM D790曲げ試験に用いる曲げ試験片(127mm×13mm×3.1mm厚み)を各50個作製した。この成形品を万能材料試験機RTA−1T(オリエンテック社製)を用いASTM D790用曲げ試験治具を装着し、ロードセル定格200kgf、レンジ40%、支店間距離100mm、クロスヘッド速度100mm/minで荷重計測点から変位量2.0mmまで荷重を付加したらクロスヘッドを停止し、測定開始位置に戻す。これを一個の試験片に対して2回繰り返し、各50本測定する。曲げ試験片が破断した個数が少ないほど耐高速応力性に優れる。
(3)熱伝導率
射出成形機UH1000(80t)(日精樹脂工業社製)を用い、シリンダー温度320℃、金型温度150℃の温度条件で、角形成形品(50mm×50mm×3mm厚み、フィルムゲート)を作製し、この成形品の両表面を深さ0.5mm切削して厚さ2mmの試験片としたものを用いて熱流計法熱伝導率測定装置“GH−1S”(リガク社製)により熱伝導率を測定した。この値が高いほど熱伝導性に優れる。
(4)軽量性
射出成形機UH1000(80t)(日精樹脂工業社製)を用い、シリンダー温度320℃、金型温度150℃の温度条件で、角形成形品(50mm×50mm×3mm厚み、フィルムゲート)を作製し、この成形品を固体密度測定装置を用いて密度を測定した。アルミニウムの比重は2.7であり、セラミックスの中でも軽量であるコーディエライトの比重は2.6あることから、比重2.0以下であれば軽量性に優れる。
Figure 0005807418
Figure 0005807418
表1と表2の結果からも明らかなように、本発明の樹脂組成物からなるモーター冷却用放熱部材は、優れた耐振動性および耐高速応力性、熱伝導性を達成し、かつ金属やセラミックスなどと比較して軽量であることから、モーター出力の向上に伴う発熱量の増大に対して放熱性に優れ、ハイブリッド自動車や燃料電池自動車、電気自動車に代表されるモーター駆動の車に適用が可能であり、かつ、ローター着磁時の耐高速応力性に優れ、さらなる振動性が要求されるインホイールモーター方式のモーターに適用することが可能なモーター冷却用放熱部材である。

Claims (5)

  1. (A)と(B)と(C)の合計を100重量%として(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂25〜45重量%と(B)水酸化マグネシウム10〜60重量%および(C)繊維径が5〜8μmのガラス繊維15〜65重量%を配合してなり、熱流計法で測定した熱伝導率が0.8W/m・K以上である樹脂組成物を成形してなるモーター冷却用放熱部材。
  2. 前記樹脂組成物が、前記(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対して、さらに(D)オレフィン系樹脂を1〜10重量部配合してなる樹脂組成物である請求項1記載のモーター冷却用放熱部材。
  3. 前記樹脂組成物が、前記(B)100重量部に対して、さらに(E)タルクおよび/またはマイカを1〜45重量部配合してなる樹脂組成物である請求項1〜いずれか記載のモーター冷却用放熱部材。
  4. モーターステーター周辺部材に用いられる請求項1〜いずれか記載のモーター冷却用放熱部材。
  5. インホイールモーターに搭載される請求項1〜いずれか記載のモーター冷却用放熱部材。
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