JP2012046721A - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、ポリフェニレンスルフィド樹脂が本来有する耐薬品性や難燃性、機械的強度を大きく損なうことなく、柔軟で引張破断伸度が極めて向上したポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得ることを課題とする。さらには、高温条件に長時間晒された後も、比較的高い引張伸度が保持されたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得ることを課題とする。
【解決手段】(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂99〜60重量%、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体1〜40重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物を0.1〜10重量部配合してなることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は柔軟で、引張破断伸度に極めて優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関し、さらには高温条件下で長時間晒された後も、比較的高い引張伸度が保持されたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形品に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略すことがある)樹脂は優れた耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性などエンジニアリングプラスチックとしては好適な性質を有しており、射出成形、押出成形用を中心として各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品などに使用されている。
しかし、PPS樹脂は、ナイロンやPBTなどの他のエンジニアリングプラスチックに比べ、柔軟性が低く引張特性に劣るため、適用が限定されているのが現状であり、その改良が強く望まれている。
これまで、PPS樹脂とポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体(以下PEI−シロキサン共重合体と略すことがある)の組成物に関連した、いくつかの報告がなされている。例えば、特許文献1には、ポリ(イミド−シロキサン)ブロックコポリマーと熱可塑性プラスチックとを混合してなるポリマーブレンドが開示されている。しかし、具体的に熱可塑性プラスチックとしてPPS樹脂の例示は無く、PPS樹脂中へポリ(イミド−シロキサン)ブロックコポリマーを良分散させる相溶化剤として、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基を有する化合物を添加することについても何ら記載されていない。また、PPS樹脂中にポリ(イミド−シロキサン)共重合体を500nm以下の粒径に微分散化することによって、優れた引張伸度が発現することについては何ら記載されていない。更に、200℃という高温で処理した後にも、比較的高い引張伸度が保持されるPPS樹脂とポリ(イミド−シロキサン)ブロックコポリマーの組成物については何ら記載されていなかった。
特許文献2には、サーモトロピック液晶ポリエステルおよびシロキサンポリエーテルイミド共重合体を含む樹脂組成物に、その他成分として、ポリスルフィドをブレンドしても良いことが開示されている。しかし、ポリスルフィド中へシロキサンポリエーテルイミド共重合体を良分散させる相溶化剤として、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基を有する化合物を添加することについては何ら記載されていない。また、特許文献2の目的は、液晶ポリエステルについて、機械的特性の異方性を低減することにあり、PPS樹脂中にシロキサンポリエーテルイミド共重合体を500nm以下の粒径に微分散化することによって、PPS樹脂の引張伸度が飛躍的に向上することに関しては何ら記載されていない。更に、200℃という高温で処理した後にも、比較的高い引張伸度が保持されるポリスルフィドとシロキサンポリエーテルイミド共重合体との組成物については何ら記載されていなかった。
特許文献3には、ポリ(フェニレンエーテル)樹脂とポリ(アリーレンスルフィド)樹脂からなる相溶系ブレンドに、シロキサンコポリマー樹脂を添加した樹脂組成物が開示されている。しかし、ポリ(アリーレンスルフィド)樹脂中へシロキサンコポリマー樹脂を良分散する相溶化剤として、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基を有する化合物を添加することについては何ら記載されていない。また、特許文献3の主目的は、ポリ(フェニレンエーテル)樹脂とポリ(アリーレンスルフィド)樹脂からなる相溶系ブレンドに、ハロゲンおよび燐系難燃剤を含むことなく難燃性を付与することにあり、ポリ(アリーレンスルフィド)樹脂中にシロキサンコポリマーを500nm以下の粒径に微分散化することによって、優れた引張伸度が発現することについては何ら記載されていない。更に、200℃という高温で処理した後にも、比較的高い引張伸度が保持されるポリ(アリーレンスルフィド)樹脂とシロキサンコポリマー樹脂の組成物については何ら記載されていなかった。
特許文献4には、高分子量線状ポリエステルおよびポリエーテルイミドとオルガノポリシロキサンコポリマーを含む樹脂組成物に、添加剤としてポリフェニレンスルフィドを含む、難燃性の熱可塑性樹脂組成物が開示されている。しかし、ポリフェニレンスルフィド中へポリエーテルイミドとオルガノポリシロキサンコポリマーを良分散させる相溶化剤として、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基を有する化合物を添加することについては何ら記載されていない。また、特許文献4の目的は、非ハロゲン系の難燃性ポリエステルを得ることであり、ポリフェニレンスルフィド中にポリエーテルイミドとオルガノポリシロキサンコポリマーを500nm以下の粒径に微分散化することによって、優れた引張伸度が発現することについては何ら記載されていない。更に、200℃という高温で処理した後にも、比較的高い引張伸度が保持されるポリフェニレンスルフィドおよびポリエーテルイミドとオルガノポリシロキサンコポリマーの組成物については何ら記載されていなかった。
この様に、いずれの特許文献においても、PPS樹脂中にポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体を良分散させる相溶化剤として、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基を有する化合物を添加することについては何ら記載されていない。また、PPS樹脂中にポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体を500nm以下の粒径に微分散化することによって、優れた引張伸度が発現することについては何ら記載されていない。更に、200℃という高温で処理した後にも、比較的高い引張伸度が保持されるPPS樹脂とポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の組成物については何ら記載されていなかった。
特開昭63−199737号公報(特許請求の範囲) 特開平4―246458号公報(特許請求の範囲) 特開平8−269318号公報(特許請求の範囲) 特開平7−166040号公報(特許請求の範囲)
本発明は、ポリフェニレンスルフィド樹脂が本来有する耐薬品性や難燃性、機械的強度を大きく損なうことなく、柔軟で引張破断伸度が極めて向上したポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得ることを課題とする。さらには、高温条件に長時間晒された後も、比較的高い引張伸度が保持されたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形品を得ることを課題とする。
そこで本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリフェニレンスルフィド樹脂とポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体、さらにアミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物を配合することにより、ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体がポリフェニレンスルフィド樹脂中に良分散する結果、引張破断伸度が飛躍的に向上し、さらには高温条件に長時間晒された後も、比較的高い引張伸度が保持されることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下の通りである。
1.(a)と(b)の合計を100重量%として、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂99〜60重量%、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体1〜40重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物を0.1〜10重量部配合してなることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
2.前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物のモルフォロジー(相構造)において、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続相(海相)を形成し、前記(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体が数平均分散粒子径500nm以下で分散した分散相(島相)を形成した海−島構造を有することを特徴とする1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
3.前記(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物が、アルコキシシラン化合物であることを特徴とする1〜2のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
4.前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、アルカリ金属およびアルカリ土類金属分を合計して200ppm以上含有することを特徴とする1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
5.ASTM4号ダンベル成形片の引張破断伸び(テンシロンUTA2.5T引張試験機を用いてチャック間距離64mm、引張速度10mm/minで測定)が、50%以上であることを特徴とする1〜4のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
6.200℃で300時間処理した後のASTM4号ダンベル成形片の引張破断伸び(テンシロンUTA2.5T引張試験機を用いてチャック間距離64mm、引張速度10mm/minで測定)が、15%以上であることを特徴とする1〜5のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
7.1〜6のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品、
8.成形品が押出成形品であることを特徴とする7に記載の成形品、
である。
本発明によれば、柔軟で引張破断伸度が飛躍的に向上したポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が得られる。また、高温条件下に長時間晒された後も、比較的高い引張伸度が保持されることから、高温連続使用される用途に好適なポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形品が得られる。さらに、低温条件下においても、比較的高い引張伸度が発現することから、氷点以下の凍結条件下で使用される用途にも好適なポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形品が得られる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂
本発明で用いられる(a)PPS樹脂は、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
Figure 2012046721
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。また(a)PPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
Figure 2012046721
かかる構造を一部有するPPS共重合体は、融点が低くなるため、このような樹脂組成物は成形性の点で有利となる。
本発明で用いられる(a)PPS樹脂の溶融粘度に特に制限はないが、より優れた引張破断伸度を得る意味からその溶融粘度は高い方が好ましい。例えば80Pa・s(310℃、剪断速度1000/s)を越える範囲が好ましく、100Pa・s以上がさらに好ましく、150Pa・s以上がさらに好ましい。上限については溶融流動性保持の点から600Pa・s以下であることが好ましい。
なお、本発明における溶融粘度は、310℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。
以下に、本発明に用いる(a)PPS樹脂の製造方法について説明するが、上記構造の(a)PPS樹脂が得られれば下記方法に限定されるものではない。
まず、製造方法において使用するポリハロゲン芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ-p-キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度の(a)PPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9から2.0モル、好ましくは0.95から1.5モル、更に好ましくは1.005から1.2モルの範囲が例示できる。
[スルフィド化剤]
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95から1.20モル、好ましくは1.00から1.15モル、更に好ましくは1.005から1.100モルの範囲が例示できる。
[重合溶媒]
重合溶媒としては有機極性溶媒を用いるのが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25から6.0モル、より好ましくは2.5から5.5モルの範囲が選ばれる。
[分子量調節剤]
生成する(a)PPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
[重合助剤]
比較的高重合度の(a)PPS樹脂をより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られる(a)PPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらに有機カルボン酸塩としてはアルカリ金属カルボン酸塩が、アルカリ金属塩化物としては塩化リチウムが好ましい。
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル〜2モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1〜0.6モルの範囲が好ましく、0.2〜0.5モルの範囲がより好ましい。
また水を重合助剤として用いる場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.3モル〜15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6〜10モルの範囲が好ましく、1〜5モルの範囲がより好ましい。
これら重合助剤は2種以上を併用することももちろん可能であり、例えばアルカリ金属カルボン酸塩と水を併用すると、それぞれより少量で高分子量化が可能となる。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
[重合安定剤]
重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モル、より好ましくは0.04〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが容易である点からより好ましい。
次に、本発明に用いる(a)PPS樹脂の好ましい製造方法について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明するが、勿論この方法に限定されるものではない。
[前工程]
(a)PPS樹脂の製造方法において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるスルフィド化剤も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.3〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
[重合反応工程]
有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることにより(a)PPS樹脂を製造する。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜240℃、好ましくは100〜230℃の温度範囲で、有機極性溶媒とスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を混合する。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
かかる混合物を通常200℃〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。
一般に、最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜260℃で一定時間反応させた後、270〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃〜260℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選ばれる。
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である場合がある。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
なお、ポリハロゲン化芳香族化合物(ここではPHAと略記)の転化率は、以下の式で算出した値である。PHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(A)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(B)上記(A)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
[回収工程]
(a)PPS樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。回収方法については、公知の如何なる方法を採用しても良い。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いても良い。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全行程において同一速度で徐冷する必要はなく、ポリマー粒子が結晶化析出するまでは0.1〜1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用しても良い。
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つであり、この回収方法の好ましい一つの方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選ばれる。
[後処理工程]
(a)PPS樹脂は、上記重合、回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄、アルカリ金属やアルカリ土類金属処理を施されたものであってもよい。
酸処理を行う場合は次のとおりである。(a)PPS樹脂の酸処理に用いる酸は、(a)PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられるが、硝酸のような(a)PPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液に(a)PPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、PH4の水溶液を80〜200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のPHは4以上例えばPH4〜8程度となっても良い。酸処理を施された(a)PPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理による(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理を行う場合は次のとおりである。(a)PPS樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満では(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。
熱水洗浄による(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無く、所定量の水に所定量の(a)PPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。(a)PPS樹脂と水との割合は、水の多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、(a)PPS樹脂200g以下の浴比が選ばれる。
また、処理の雰囲気は、末端基の分解が好ましくないので、これを回避するため不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、この熱水処理操作を終えた(a)PPS樹脂は、残留している成分を除去するため温水で数回洗浄するのが好ましい。
有機溶媒で洗浄する場合は次のとおりである。(a)PPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、(a)PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中に(a)PPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒で(a)PPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。
アルカリ金属、アルカリ土類金属処理する方法としては、上記前工程の前、前工程中、前工程後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、重合行程前、重合行程中、重合行程後に重合釜内にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、あるいは上記洗浄工程の最初、中間、最後の段階でアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法などが挙げられる。中でももっとも容易な方法としては、有機溶剤洗浄や、温水または熱水洗浄で残留オリゴマーや残留塩を除いた後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法が挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属は、酢酸塩、水酸化物、炭酸塩などのアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの形でPPS中に導入するのが好ましい。また過剰のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩は温水洗浄などにより取り除く方が好ましい。上記アルカリ金属、アルカリ土類金属導入の際のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン濃度としてはPPS1gに対して0.001mmol以上が好ましく、0.01mmol以上がより好ましい。温度としては、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。上限温度は特にないが、操作性の観点から通常280℃以下が好ましい。浴比(乾燥PPS重量に対する洗浄液重量)としては0.5以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。
本発明においては、引張破断伸度に極めて優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得る観点から、有機溶媒洗浄と80℃程度の温水または前記した熱水洗浄を数回繰り返すことにより残留オリゴマーや残留塩を除いた後、酸処理もしくはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩で処理する方法が好ましい。
その他、(a)PPS樹脂は、重合終了後に酸素雰囲気下においての加熱および過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱による熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。
熱酸化架橋による高分子量化を目的として乾式熱処理する場合には、その温度は160〜260℃が好ましく、170〜250℃の範囲がより好ましい。また、酸素濃度は5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。酸素濃度の上限には特に制限はないが、50体積%程度が限界である。処理時間は、0.5〜100時間が好ましく、1〜50時間がより好ましく、2〜25時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
また、熱酸化架橋を抑制し、揮発分除去を目的として乾式熱処理を行うことが可能である。その温度は130〜250℃が好ましく、160〜250℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
但し、(a)PPS樹脂は、本発明の目標を達成するために熱酸化架橋処理による高分子量化を行わない実質的に直鎖状のPPSであることが好ましい。また本発明では、溶融粘度の異なる複数の(a)PPS樹脂を混合して使用しても良い。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、柔軟で引張破断伸度に極めて優れると共に、高温条件下で長時間晒された後も、比較的高い引張伸度が保持される。かかる特性を発現するためには、(a)PPS樹脂中に含まれるアルカリ金属およびアルカリ土類金属分の合計が200ppm以上であることが好ましく、より好ましくは500ppm以上であり、更には700ppm以上であることが好ましい。
これは例えば、相溶化剤である(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基などの官能基を有する化合物が、エポキシ化合物である場合、(a)PPS樹脂中に含まれるアルカリ金属およびアルカリ土類金属分の合計が200ppm以上になると、(a)PPS樹脂と(c)エポキシ基を有する化合物との反応が促進され、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体がより微分散化される結果、高い引張破断伸度が発現しやすくなるためである。特に相溶化剤が(c)エポキシ基を有する化合物である場合、(a)PPS樹脂中に含まれるアルカリ金属およびアルカリ土類金属はNaであることがより好ましい。
また、相溶化剤である(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基を有する化合物の官能基の種類に関わらず、(a)PPS樹脂中に含まれるアルカリ金属およびアルカリ土類金属分の合計が200ppm以上になると、耐熱安定性が向上する結果、高温条件下で長時間晒された後も、比較的高い引張伸度が保持される。
一方、相溶化剤である(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基などの官能基を有する化合物が、アミノ基、イソシアネート基を有する化合物である場合、(a)PPS樹脂中に含まれるアルカリ金属およびアルカリ土類金属分の合計が200ppm未満になる方が、(a)PPS樹脂との反応は進行しやすいこともある。しかし、前述した耐熱安定性を向上する観点からは、(a)PPS樹脂中に含まれるアルカリ金属およびアルカリ土類金属分の合計が200ppm以上になることが好ましい。従って、アルカリ金属およびアルカリ土類金属分の合計が200ppm未満の(a)PPS樹脂と(c)アミノ基、イソシアネート基を有する化合物との反応が完結した後に、前記したアルカリ金属またはアルカリ土類金属処理した(a)PPS樹脂を添加し、最終的な(a)PPS樹脂中に含まれるアルカリ金属およびアルカリ土類金属分の合計が200ppm以上になるよう調節することが好ましい方法として例示できる。その他、(a)PPS樹脂中に含まれるアルカリ金属およびアルカリ土類金属分の合計が200ppm未満および200ppm以上のPPSを同時に併用して(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基を有する化合物との反応に供することも勿論可能である。
アルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量が200ppmを下回る量である場合、耐熱安定性の向上効果が不十分となり好ましくない。アルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量の上限に制限はないが、耐湿熱性や電気絶縁性を損なわない観点から、1000ppm以下が好ましい。なお、ここで言うアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量は、PPS樹脂を灰化した灰分の水溶液を試料とし、原子吸光法により測定した値である。
(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体
本発明で使用するポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体は、ポリエーテルイミドの繰り返し単位と、ポリシロキサンの繰り返し単位とからなる通常公知の共重合体が挙げられる。好ましくは、以下構造式(化3)で示される繰り返し単位および以下構造式(化4)で示される繰り返し単位からなる。
Figure 2012046721
Figure 2012046721
なお、上記構造式(化3、4)中のTは、−O−または−O−Z−O−であり、2価の結合手は、3,3’−、3,4’−、4,3’−、4,4’−位にあり、Zは以下構造式(化5)で示される2価の基からなる群および以下構造式(化6)で示される2価の基からなる群より選択される。
Figure 2012046721
Figure 2012046721
上記構造式(化6)中のXは、C1−5のアルキレン基またはそのハロゲン化誘導体、−CO−、−SO−、−O−、−S−からなる群から選択される。
上記構造式(化3、化4)中のRは、6〜20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基およびそのハロゲン化誘導体、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、3〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基ならびに以下構造式(化7)で示される基からなる群より選択される2価の有機基である。ここで、QはC1−5のアルキレン基またはそのハロゲン化誘導体、−CO−、−SO−、−O−、−S−からなる群より選択される。
Figure 2012046721
上記構造式(化4)中のmおよびnはそれぞれ1〜10の整数であり、gは1〜40の整数である。
また、特に好ましくは、上記構造式(化3、4)の構造にさらに以下構造式(化8)で示される繰り返し単位を含有する。
Figure 2012046721
なお、上記構造式(化8)中のMは、以下構造式(化9)で示される群より選択され(式中のBは−S−または−CO−)、R’は上記で定義したRと同様であるか、以下構造式(化10)で示される2価の基である(式中のmおよびnはそれぞれ1〜10の整数であり、gは1〜40の整数である)。
Figure 2012046721
Figure 2012046721
上記したポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の製造方法としては、以下構造式(化11)で示される芳香族ビス(エーテル無水物)と、以下構造式(化12)で示される有機ジアミンとからポリエーテルイミドを製造する公知の方法において、上記構造式(化12)の有機ジアミンの一部または全てを以下構造式(化13)で示されるアミン末端オルガノシロキサンで置き換えることにより製造される。
Figure 2012046721
Figure 2012046721
Figure 2012046721
なお、上記構造式(化11)中のT、構造式(化12)中のR、構造式(化13)中のn、m、gは上記で定義したものと同様である。
本発明で使用するポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体のいずれでも良いが、中でもブロック共重合体が柔軟で優れた引張破断伸度を達成する上で好ましい。ポリ(エーテルイミド−シロキサン)ブロック共重合体としては、以下構造式(化14)に代表される化学構造が例示できる。
Figure 2012046721
ここで、上記構造式(化14)中のaは1〜10000の整数、nは1〜50の整数、mは2〜40の整数、Rは4価の芳香族基であって以下構造式(化15)から選択される。
Figure 2012046721
上記式(化15)中のTは、C1−5のアルキレン基またはそのハロゲン化誘導体、−CO−、−SO−、−O−、−S−、および−O−Z−O−の2価の基から選択される。なお、Zは前記と同様である。
は前記したRと同様である。
およびRはそれぞれ独自にC1−8のアルキル基、そのハロゲン置換またはニトリル置換誘導体およびC6−13のアリール基から選択される。
上記したポリ(エーテルイミド−シロキサン)ブロック共重合体の製造方法としては、以下構造式(化16)の水酸基末端ポリイミドオリゴマーを以下構造式(化17)のシロキサンオリゴマーとエーテル化条件下で反応させる公知の方法が例示できる。
Figure 2012046721
Figure 2012046721
但し、n、m、R〜Rは、前記の定義の通りである。また、上記構造式(化17)中のxは、上記構造式(化16)の水酸基末端ポリエーテルイミドオリゴマー中の水酸基との反応により置換されてエーテル結合を形成することの出来るハロゲン、ジアルキルアミノ基、アシル基、アルコキシ基、水素原子である。
その他、ポリ(エーテルイミド−シロキサン)ブロック共重合体の製造方法としては、芳香族ビス(エーテル無水物)と、有機ジアミンとからポリエーテルイミドを製造する公知の方法において、反応剤を逐次的に添加することによっても勿論合成可能である。
本発明で使用するポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体のガラス転移温度について、特に制限はないが、耐熱性と柔軟性の観点から、140℃以上220℃以下で有ることが好ましく、150℃以上190℃以下であることがより好ましく、160℃以上180℃以下で有ることがさらに好ましい。
(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物
本発明では、柔軟で引張破断伸度が飛躍的に向上したポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得るべく、(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物を、相溶化剤として添加することが必要である。
エポキシ基含有化合物としてはビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、サリゲニン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールS、トリヒドロキシ−ジフェニルジメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,5−ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2,2,5,5,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサンなどのビスフェノール類のグリシジルエーテル、ビスフェノールの替わりにハロゲン化ビスフェノールを用いたもの、ブタンジオールのジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系エポキシ化合物、フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系化合物、N−グリシジルアニリン等のグリシジルアミン系化合物等々のグリシジルエポキシ樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油等の線状エポキシ化合物、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド等の環状系の非グリシジルエポキシ樹脂などが挙げられる。
またその他ノボラック型エポキシ樹脂も挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂はエポキシ基を2個以上有し、通常ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させて得られるものである。また、ノボラック型フェノール樹脂はフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られる。原料のフェノール類としては特に制限はないがフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール、p−ターシャリーブチルフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびこれらの縮合物が挙げられる。
またその他エポキシ基を有するオレフィン共重合体も挙げられる。かかるエポキシ基を有するオレフィン共重合体(エポキシ基含有オレフィン共重合体)としては、オレフィン系(共)重合体にエポキシ基を有する単量体成分を導入して得られるオレフィン共重合体が挙げられる。また、主鎖中に二重結合を有するオレフィン系重合体の二重結合部分をエポキシ化した共重合体も使用することができる。
オレフィン系(共)重合体にエポキシ基を有する単量体成分を導入するための官能基含有成分の例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのエポキシ基を含有する単量体が挙げられる。
これらエポキシ基含有成分を導入する方法は特に制限なく、α−オレフィンなどとともに共重合せしめたり、オレフィン(共)重合体にラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。
エポキシ基を含有する単量体成分の導入量はエポキシ基含有オレフィン系共重合体の原料となる単量体全体に対して0.001〜40モル%、好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であるのが適当である。
本発明で特に有用なエポキシ基含有オレフィン共重合体としては、α−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを共重合成分とするオレフィン系共重合体が好ましく挙げられる。上記α−オレフィンとしては、エチレンが好ましく挙げられる。また、これら共重合体にはさらに、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸およびそのアルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル等を共重合することも可能である。
またかかるオレフィン共重合体はランダム、交互、ブロック、グラフトいずれの共重合様式でも良い。
α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを共重合してなるオレフィン共重合体は、中でも、α−オレフィン60〜99重量%とα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステル1〜40重量%を共重合してなるオレフィン共重合体が特に好ましい。
上記α,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとしては、具体的にはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルおよびエタクリル酸グリシジルなどが挙げられるが、中でもメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。
α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを必須共重合成分とするオレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体(”g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−ポリスチレン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−アクリロニトリルースチレン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−PMMA、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体が挙げられる。
さらにエポキシ基を有するアルコキシシランが挙げられる。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物などが例示できる。
アミノ基含有化合物としてはアミノ基を有するアルコキシシランが挙げられる。かかる化合物の具体例としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
イソシアネート基含有化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,5−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどのイソシアネート化合物やγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリクロロシランなどのイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物を例示することができる。
中でも優れた引張破断伸度を達成する上で、イソシアネート基を1個以上含む化合物またはエポキシ基を2個以上含む化合物であることが好ましく、さらにはイソシアネート基を含有するアルコキシシランやエポキシ基を含有するアルコキシシランであることがより好ましい。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物における(a)PPS樹脂と(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の配合割合は、(a)と(b)の合計を100重量%として、(a)/(b)=99〜60重量%/1〜40重量%の範囲である。(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体が1重量%未満では、引張破断伸度の向上効果に乏しく、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体が40重量%を越える範囲では相構造が安定しないばかりか、溶融流動性が著しく阻害されてしまうため好ましくない。さらに(a)PPS樹脂と(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の好ましい配合割合は、(a)/(b)=97〜80重量%/3〜20重量%であり、材料コストと引張破断伸度向上のバランスを考慮すると(a)/(b)=95〜85重量%/5〜15重量%の範囲がさらに好ましい。
本発明における(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物の配合量は、(a)PPS樹脂と(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の合計100重量部に対し、0.05〜10重量部の範囲であり、0.1〜5重量部の範囲が好ましく、0.2〜3重量部の範囲がより好ましい。(c)官能基を有する化合物の配合量が0.05重量部を下回る場合、安定した高い引張破断伸度を得ることが難しく、10重量部を越える範囲では、溶融流動性が著しく阻害されてしまうため好ましくない。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、(a)PPS樹脂が本来有する耐熱性、耐薬品性、難燃性を損なうことなく、優れた引張破断伸度を有する他、高温条件下で長時間晒されても高い引張破断伸度が保持され得る。かかる特性を発現させるためには、モルフォロジー(相構造)において、(a)PPS樹脂が海相(連続相あるいはマトリックス)を形成し、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体が島相(分散相)を形成することが好ましい態様として例示できる。
さらに、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の数平均分散粒子径が500nm以下であることが好ましく、より好ましくは300nm以下、更には100nm以下であることが特に好ましい。下限としては生産性の点から1nm以上であることが好ましい。(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の数平均分散粒子径が500nmを越える範囲であると、引張破断伸度は十分に向上しないため好ましくない。
また、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、リサイクル利用した際にも、安定して優れた靱性を有することが望ましい。即ち、一度射出成形した後に、その成形片を粉砕し、再び射出成形を行った成形片においても、(a)PPS樹脂が海相(連続相あるいはマトリックス)を形成し、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体が島相(分散相)を形成することが好ましい。さらに、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の数平均分散粒子径が500nm以下であることが好ましく、より好ましくは300nm以下、更には100nm以下であることが特に好ましい。下限としては生産性の点から1nm以上であることが好ましい。
かかる相構造を形成するためには、後述する溶融混練の過程において、せん断力を比較的強くすることが好ましい方法として例示できる。
なおここでいう数平均分散粒子径は、(a)PPS樹脂の融解ピーク温度+20℃の成形温度でASTM4号ダンベル試験片を成形し、その中心部から−20℃にて0.1μm以下の薄片をダンベル片の断面積方向に切削し、日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50〜60万倍)にて、1万〜2万倍に拡大して観察した際の任意の100個の、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の分散部分について、まずそれぞれの最大径と最小径を測定して平均値をその分散粒子径とし、その後それらの平均値を求めた数平均分散粒子径である。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、優れた引張破断伸度を有する他、高温条件下で長時間晒されても高い引張破断伸度が保持されるが、実用性の観点から、ASTM4号ダンベル成形片の引張破断伸び(テンシロンUTA2.5T引張試験機を用いてチャック間距離64mm、引張速度10mm/minで測定)が50%以上であることが望ましく、さらには70%以上であることがより好ましい。引張破断伸びが50%を下回る場合、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる各種成形品を組み付ける際に破壊が起こり易くなり好ましくない。
また、200℃で300時間処理した後のASTM4号ダンベル成形片の引張破断伸び(テンシロンUTA2.5T引張試験機を用いてチャック間距離64mm、引張速度10mm/minで測定)が15%以上であることが望ましく、20%以上であることがさらに好ましい。200℃で300時間処理した後の引張破断伸びが15%を下回る場合、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる各種成形品を、自動車のエンジン周辺部品などとして高温で連続使用した際に破壊が起こり易くなるため好ましくない。
かかる特性を発現するためには、前述した(a)PPS樹脂中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属分が200ppm以上であること、前述した(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の数平均分散粒子径が500nm以下であること、また、後述する溶融混練の過程において、せん断力を比較的強くすることなどが好ましい方法として例示できる。
樹脂組成物の製造方法
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法としては、単軸、二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機に原料を供給して、(a)PPS樹脂の融解ピーク温度+5〜100℃の加工温度で溶融混練する方法などを代表例として挙げることができる。この際、二軸の押出機を使用し、せん断力を比較的強くすることが好ましい。具体的には、L/D(L:スクリュー長さ、D:スクリュー直径)が20以上、好ましくは30以上であり、ニーディング部を2箇所以上、好ましくは3箇所以上有する二軸押出機を使用し、スクリュー回転数を150〜1000回転/分、好ましくは300〜1000回転/分として、混合時の樹脂温度が(a)PPS樹脂の融解ピーク温度+10〜70℃となるように混練する方法などを好ましく用いることができる。L/Dの上限については特に制限しないが、60以下が経済性の観点から好ましい。また、ニーディング部箇所の上限についても特に制限しないが、生産性の観点から10箇所以下であることが好ましい。
原料の混合順序については特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、これと更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後、2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することも勿論可能である。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、柔軟で引張破断伸度が飛躍的に向上したものである。かかる特性を発現するためには、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体を500nm以下の数平均分散粒径に微分散化させることが好ましく、より好適な溶融混練方法についてさらに詳述すると、全ての原材料を配合し上記の方法により溶融混練してペレット化した後、さらに1回以上溶融混練する方法、(a)PPS樹脂と(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物とを予め溶融混練して反応を促進した後、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体とさらに溶融混練する方法などが挙げられる。
後者については、(a)PPS樹脂と(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物とを配合し予め溶融混練してペレット化した後、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体と配合してさらに溶融混練しても良いし、(a)PPS樹脂と(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物とを配合して予め溶融混練中に、サイドフィーダーを用いて(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体を押出機の途中から供給して溶融混練することも可能である。
また、一部の(a)PPS樹脂と(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体と(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物とを溶融混練して、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の高濃度マスターを調製した後、(a)PPS樹脂を配合してさらに一回以上溶融混練することにより、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体を所望の割合に希釈する混練方法も好ましい手法として例示できる。
特に、本発明の引張破断伸度に極めて優れ、高温条件下で長時間晒されても高い引張伸度を保持するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得るためには、前述の通り、(a)PPS樹脂中に含まれるアルカリ金属およびアルカリ土類金属分の合計が200ppm以上であることが好ましい。従って、(a)PPS樹脂と(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物との反応を促進する観点から、アルカリ金属およびアルカリ土類金属分の合計が200ppm未満の(a)PPS樹脂を用いて(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の高濃度マスターを調製した後、アルカリ金属およびアルカリ土類金属分の合計が200ppm以上、好ましくは500ppm以上の(a)PPS樹脂を配合してさらに一回以上溶融混練することにより、最終的に得られるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物中の(a)PPS樹脂中に含まれるアルカリ金属およびアルカリ土類金属分の合計を200ppm以上に調節することが可能である。
なお、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の高濃度マスターに加える(a)PPS樹脂の溶融粘度は自由に選択でき、これによって最終的に生成するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の流動性を容易に制御することも可能である。
また、(a)PPS樹脂と(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物との反応を促進する観点から、アルカリ金属およびアルカリ土類金属分の合計が200ppm未満の(a)PPS樹脂を用いて(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の高濃度マスターを調製した後、アルカリ金属およびアルカリ土類金属分の合計が200ppm以上、好ましくは500ppm以上の(a)PPS樹脂を射出成形などの成形加工の際に配合して希釈することにより、最終的に得られるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物成形品の(a)PPS樹脂中に含まれるアルカリ金属およびアルカリ土類金属分の合計を200ppm以上に調節することも勿論可能である。
その他、原材料を溶融混練あるいは共通溶媒などに溶解して分子レベルで均一に相溶させた後、スピノーダル分解により、数平均分散粒子径が500nm以下の分散構造を持った樹脂組成物を製造する方法も例示できるが、簡便性、経済性の観点からは、分子相溶を経ない反応型非相溶系ポリマーアロイの範疇で溶融混練することにより製造する方法が好ましい。
無機フィラー
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物には、必須成分ではないが、本発明の効果を損なわない範囲で無機フィラーを配合して使用することも可能である。かかる無機フィラーの具体例としてはガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、あるいはフラーレン、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、シリカ、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材が用いられ、なかでもガラス繊維、シリカ、炭酸カルシウムが好ましく、さらに炭酸カルシウムやシリカが、防食材、滑材の効果の点から特に好ましい。またこれらの無機フィラーは中空であってもよく、さらに2種類以上併用することも可能である。また、これらの無機フィラーをイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。中でも炭酸カルシウムやシリカ、カーボンブラックが、防食材、滑材、導電性付与の効果の点から好ましい。
かかる無機フィラーの配合量は、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂と(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の合計100重量部に対し、30重量部以下の範囲が選択され、10重量部未満の範囲が好ましく、1重量部未満の範囲がより好ましく、0.8重量部以下の範囲が更に好ましい。下限は特に無いが0.0001重量部以上が好ましい。無機フィラーの配合は材料の弾性率向上に有効である反面、30重量部を越えるような多量の配合は靱性の大きな低下をもたらすため、好ましくない。無機フィラーの含有量は、靱性と剛性のバランスから用途により適宜変えることが可能である。
その他の添加物
さらに、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体以外の樹脂を添加配合しても良い。その具体例としては、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、エチレン・1−ブテン共重合体などのエポキシ基を含有しないオレフィン系重合体、共重合体などが挙げられる。
また、改質を目的として、以下のような化合物の添加が可能である。ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、(3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)などの様なフェノール系酸化防止剤、(ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト)などのようなリン系酸化防止剤、その他、水、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。上記化合物は何れも組成物全体の20重量%を越えると(a)PPS樹脂本来の特性が損なわれるため好ましくなく、10重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の添加がよい。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、吹込成形、射出圧縮成形など、各種成形手法により成形可能であるが、中でも射出成形用途として有用である。射出成形用途の具体例としては、例えば、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、機遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネットなどの電気機器部品、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスク等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭・事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器・精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース等の自動車・車両関連部品等々を例示できる。中でも、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、室温、高温のみならず、低温環境下でも優れた靭性が発現する優れた特性から、流体配管用の部材、給湯器用の配管、バルブ部材として有用である。
また、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、柔軟で引張破断伸度に極めて優れるとともに、高温条件下で長時間晒された後も高い引張伸度が保持される他、耐熱性が高く、熱劣化が起こりにくい特徴から、比較的成形加工温度が高く、溶融滞留時間の長い押出成形用途としても特に有用である。押出成形により得られる成形品としては、丸棒、角棒、シート、フィルム、チューブ、パイプなどが挙げられ、更に具体的な用途としては、給湯器モーター、エアコンモーター、駆動モーター用などの電気絶縁材料、フィルムコンデンサー、スピーカー振動板、記録用の磁気テープ、プリント基板材料、プリント基板周辺部品、半導体パッケージ、半導体搬送トレイ、工程・離型フィルム、保護フィルム、自動車用フィルムセンサー、ワイヤーケーブルの絶縁テープ、リチウムイオン電池内の絶縁ワッシャー、熱水や冷却水、化学薬品用のチューブ、自動車用の燃料チューブ、熱水配管、化学プラントなどの薬品配管、超純水や超高純度溶媒用の配管、自動車配管、フロンや超臨界二酸化炭素冷媒用の配管パイプ、研磨装置用のワークピース保持リングなどが例示できる。その他、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道、発電設備のモーターコイル用巻線の被覆成形体、家電用の耐熱電線ケーブル、自動車内の配線に使用されるフラットケーブル等のワイヤーハーネスやコントロールワイヤー、通信、伝送用、高周波用、オーディオ用、計測用などの信号用トランスまたは車載用トランスの巻線の被覆成形体などが例示できる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例において、材料特性については下記の方法により評価した。
[射出成形]
住友−ネスタール射出成形機SG75を用い、樹脂温度310℃、金型温度150℃でASTM4号ダンベル試験片を成形した。
[押出成形]
樹脂温度320℃にて、フォーミング・ダイを空冷しながら、単軸押出機を用い、2500mm/hrの速度で直径50mmの丸棒を押出成形した。得られた丸棒の中心部を切削加工し、引張試験用のASTM4号ダンベル試験片を得た。
[押出成形性の評価]
前記押出成形により得られた丸棒を300mmの長さに切断し、丸棒表面に生じた突起および黒色異物を目視観察により数えた。突起および黒色異物の合計数が1個以下を○、2〜5個を△、6個以上を×として評価した。
[分散粒径]
前記、射出成形したASTM4号ダンベル試験片の中央部を樹脂の流れ方向に対して直角方向に切断し、その断面の中心部から、−20℃で0.1μm以下の薄片を切削し、日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50〜60万倍)にて、1万倍に拡大して観察した際の任意の100個の、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の分散部分について、まずそれぞれの最大径と最小径を測定して平均値をその分散粒子径とし、その後それらの平均値である数平均分散粒子径を求めた。
[未処理成形品の23℃引張試験]
前記、射出成形または押出成形により得られたASTM4号ダンベル試験片につき、テンシロンUTA2.5T引張試験機を用い、23℃下、チャック間距離64mm、引張速度10mm/minの条件で引張破断伸度を測定した。
[200℃×300時間処理成形品の23℃引張試験]
前記、射出成形または押出成形により得られたASTM4号ダンベル試験片を200℃に設定したギヤオーブンに入れ、300時間処理してから室温で放冷した後、テンシロンUTA2.5T引張試験機を用い、23℃下、チャック間距離64mm、引張速度10mm/minの条件で引張破断伸度を測定した。
[未処理成形品の−20℃引張試験]
前記、射出成形により得られたASTM4号ダンベル試験片を、冷却恒温槽を具備したインストロンジャパンカンパニィリミテッド社製5581型万能材料試験機を用い、−20℃下、チャック間距離64mm、引張速度10mm/minの条件で引張破断伸度を測定した。
[PPS樹脂中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属含有量]
(a)PPS樹脂5gを500℃の電気炉で灰化した後、0.1規定塩酸水溶液、0.1%塩化ランタン水溶液で希釈した水溶液を試料とし、島津製作所社製原子吸光分光光度計AA−6300を用いた原子吸光法により測定した。
[参考例1](a)PPS樹脂の重合(a−1)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次にp−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたa−1は、溶融粘度が200Pa・s(310℃、剪断速度1000/s)、アルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量が65ppmであった。
[参考例2](a)PPS樹脂の重合(a−2)
PPS洗浄時における0.05重量%酢酸水溶液をイオン交換水とした以外は、参考例1と同様にして脱水、重合、洗浄、乾燥を行った。得られたa−2は、溶融粘度が250Pa・s(310℃、剪断速度1000/s)、アルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量が706ppmであった。
[参考例3](a)PPS樹脂の重合(a−3)
PPS洗浄時における0.05重量%酢酸水溶液を0.05重量%酢酸カルシウム一水和物水溶液とした以外は、参考例1と同様にして脱水、重合、洗浄、乾燥を行った。得られたa−3は、溶融粘度が280Pa・s(310℃、剪断速度1000/s)、アルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量が276ppmであった。
[参考例4](b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体
b−1:ガラス転移温度が170℃のポリ(エーテルイミド−シロキサン)ブロック共重合体(SABICイノベーティブプラスチックス社製“SILTEM1500”)
b−2:ガラス転移温度が200℃のポリ(エーテルイミド−シロキサン)ブロック共重合体(SABICイノベーティブプラスチックス社製“SILTEM1700”)
[参考例5]ポリエーテルイミド単独重合体
b’−1:ガラス転移温度が217℃のポリエーテルイミド単独重合体(SABICイノベーティブプラスチックス社製“ULTEM1010”)
[参考例6]オレフィン系樹脂
b’−2:エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体(住友化学社製“ボンドファースト”BF−E)
b’−3:エチレン・1−ブテン共重合体(三井化学社製“タフマー”TX610)
[参考例7]アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物
c−1:エポキシクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製“EPICLON”N−695)
c−2:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(関東化学株式会社製試薬)
c−3:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製KBE903)
c−4:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製KBE−9007)
c−5:2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−303)
[実施例1〜8、10〜13]
表1、表2に示す(a)PPS樹脂と(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体と(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物を、表1、表2に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(L/D=45、ニーディング部5箇所)を用い、スクリュー回転数300rpmにて、ダイス出樹脂温度が330℃以下となるようにシリンダー温度を設定し溶融混練した。ダイスから吐出するストランドは水浴中で急冷してから、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットは、不透明であった。次いで、130℃で一晩乾燥したペレットを射出成形に供し、成形片における(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の数平均分散粒子径、未処理成形品の23℃引張破断伸度、200℃×300時間処理成形品の23℃引張破断伸度、未処理成形品の−20℃引張破断伸度を測定した。結果は表1、表2に示すとおりであった。
[実施例9]
スクリュー回転数を200rpmとした以外は、実施例8と同様に溶融混練、射出成形した後、成形片における(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の数平均分散粒子径、未処理成形品の23℃引張破断伸度、200℃×300時間処理成形品の23℃引張破断伸度、未処理成形品の−20℃引張破断伸度を測定した。結果は表2に示すとおりであった。
[実施例14]
(a)PPS樹脂としてa−1を70重量%、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体としてb−1を30重量%、(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物としてc−4を3重量部、からなる原料をドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(L/D=45、ニーディング部5箇所)を用い、スクリュー回転数300rpmにて、ダイス出樹脂温度が330℃以下となるようにシリンダー温度を設定し溶融混練した。ダイスから吐出するストランドは水浴中で急冷してから、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットは、不透明であった。
次いで、130℃で1晩乾燥した前記ペレットを34重量%、(a)PPS樹脂としてa−3を66重量%、からなる原料をドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(L/D=45、ニーディング部5箇所)を用い、スクリュー回転数300rpmにて、ダイス出樹脂温度が330℃以下となるようにシリンダー温度を設定し溶融混練した。ダイスから吐出するストランドは水浴中で急冷してから、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットは、不透明であった。
130℃で一晩乾燥したペレットを射出成形に供し、成形片における(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の数平均分散粒子径、未処理成形品の23℃引張破断伸度、200℃×300時間処理成形品の23℃引張破断伸度、未処理成形品の−20℃引張破断伸度を測定した。最終的に得られるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の組成割合、それから算出されるPPS中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量、各種物性測定結果は表2に示すとおりであった。
[実施例15]
(a)PPS樹脂としてa−1を70重量%、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体としてb−1を30重量%、(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物としてc−4を3重量部、からなる原料をドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(L/D=45、ニーディング部5箇所)を用い、スクリュー回転数300rpmにて、ダイス出樹脂温度が330℃以下となるようにシリンダー温度を設定し溶融混練した。ダイスから吐出するストランドは水浴中で急冷してから、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットは、不透明であった。
次いで、130℃で1晩乾燥した前記ペレットを34重量%、(a)PPS樹脂としてa−1を66重量%、からなる原料をドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(L/D=45、ニーディング部5箇所)を用い、スクリュー回転数300rpmにて、ダイス出樹脂温度が330℃以下となるようにシリンダー温度を設定し溶融混練した。ダイスから吐出するストランドは水浴中で急冷してから、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットは、不透明であった。
130℃で一晩乾燥したペレットを射出成形に供し、成形片における(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の数平均分散粒子径、未処理成形品の23℃引張破断伸度、200℃×300時間処理成形品の23℃引張破断伸度、未処理成形品の−20℃引張破断伸度を測定した。最終的に得られるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の組成割合、それから算出されるPPS中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量、各種物性測定結果は表2に示すとおりであった。
[比較例1]
(a)PPS樹脂としてa−1のみを、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(L/D=45.5、ニーディング部5箇所)を用い、スクリュー回転数300rpmにて、ダイス出樹脂温度が330℃以下となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。
130℃で一晩乾燥したペレットを射出成形に供し、未処理成形品の23℃引張破断伸度、200℃×300時間処理成形品の23℃引張破断伸度、未処理成形品の−20℃引張破断伸度を測定した。結果は表3に示すとおりであった。
[比較例2]
(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物を添加しない以外は、実施例1〜5と同様に溶融混練、射出成形した後、成形片における(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の数平均分散粒子径、未処理成形品の23℃引張破断伸度、200℃×300時間処理成形品の23℃引張破断伸度、未処理成形品の−20℃引張破断伸度を測定した。結果は表3に示すとおりであった。
[比較例3]
表3に示す(a)PPS樹脂と(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体と(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物を、表3に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(L/D=45、ニーディング部5箇所)を用い、スクリュー回転数300rpmにて、ダイス出樹脂温度が330℃以下となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。
130℃で一晩乾燥したペレットを射出成形に供し、成形片における(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の数平均分散粒子径、未処理成形品の23℃引張破断伸度、200℃×300時間処理成形品の23℃引張破断伸度、未処理成形品の−20℃引張破断伸度を測定した。結果は表3に示すとおりであった。
[比較例4]
(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の替わりに、ポリエーテルイミド単独重合体b’−1を使用した以外は、実施例11と同様に溶融混練、射出成形した後、成形片におけるポリエーテルイミド単独重合体b’−1の数平均分散粒子径、未処理成形品の23℃引張破断伸度、200℃×300時間処理成形品の23℃引張破断伸度、未処理成形品の−20℃引張破断伸度を測定した。結果は表3に示すとおりであった。
[比較例5]
(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の替わりに、ポリエーテルイミド単独重合体b’−1を使用した以外は、実施例14と同様に溶融混練、射出成形した後、成形片におけるポリエーテルイミド単独重合体b’−1の数平均分散粒子径、未処理成形品の23℃引張破断伸度、200℃×300時間処理成形品の23℃引張破断伸度、未処理成形品の−20℃引張破断伸度を測定した。結果は表3に示すとおりであった。
[比較例6]
(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の替わりに、オレフィン系樹脂b’−2およびb’−3を表3に示した割合で使用した以外は、実施例11と同様に溶融混練、射出成形した後、成形片におけるオレフィン系樹脂b’−2およびb’−3の数平均分散粒子径、未処理成形品の23℃引張破断伸度、200℃×300時間処理成形品の23℃引張破断伸度、未処理成形品の−20℃引張破断伸度を測定した。結果は表3に示すとおりであった。
[実施例16]
実施例11にて得られたペレットを130℃で一晩乾燥した後、押出成形に供して丸棒の成形を行うとともに、押出成形性を評価した。次いで、得られた丸棒の中心部を切削加工し、引張試験用のASTM4号ダンベル試験片を採取した後、未処理成形品および200℃×300時間処理成形品の23℃引張試験を行った。結果は表4に示すとおりであった。
[比較例7]
比較例4にて得られたペレットを130℃で一晩乾燥した後、押出成形に供して丸棒の成形を行うとともに、押出成形性を評価した。次いで、得られた丸棒の中心部を切削加工し、引張試験用のASTM4号ダンベル試験片を採取した後、未処理成形品および200℃×300時間処理成形品の23℃引張試験を行った。結果は表4に示すとおりであった。
[比較例8]
比較例6にて得られたペレットを130℃で一晩乾燥した後、押出成形に供して丸棒の成形を行うとともに、押出成形性を評価した。次いで、得られた丸棒の中心部を切削加工し、引張試験用のASTM4号ダンベル試験片を採取した後、未処理成形品および200℃×300時間処理成形品の23℃引張試験を行った。結果は表4に示すとおりであった。
Figure 2012046721
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上記実施例1〜16と比較例1〜8の結果を比較して説明する。実施例1〜15のいずれにおいても、未処理品の引張破断伸度は、比較例1で示したPPS樹脂単体に比較して、飛躍的に向上した。また、アルカリ金属およびアルカリ土類金属含有量が200ppm以上のPPSを用いた実施例10〜12、14では、200℃×300時間処理成形品の引張破断伸度も高いまま保持された。
実施例1〜15のいずれにおいても、(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物を添加することにより、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の分散粒径は500nm以下に微分散化した。一方、(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物を添加しなかった比較例2では、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の分散粒径は500nmを越え、未処理品の引張破断伸度も低い結果であった。
(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体を45%とした比較例3では、相構造が不安定となり、はっきりとした海−島構造が認められず、未処理品の引張破断伸度も低い結果であった。
(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の替わりにポリエーテルイミド単独重合体を使用した比較例4、5では、ポリエーテルイミド単独重合体が500nm以下の粒径で微分散化し、未処理品の引張破断伸度もある程度向上する結果であるが、200℃×300時間処理成形品の引張破断伸度は、それぞれ対応する実施例11、14に比較して極めて低い結果であった。
(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体の替わりにオレフィン系樹脂を使用した比較例6では、オレフィン系樹脂が500nm以下の粒径で微分散化し、未処理品の引張破断伸度もある程度向上する結果であるが、200℃×300時間処理成形品の引張破断伸度は、対応する実施例11に比較して低い結果であった。
実施例11で得られたペレットを押出成形に供した実施例16において、押出成形性は極めて良好であり、突起や黒色異物は全く認められなかった。また、比較的成形加工温度が高く、溶融滞留時間の長い押出成形品の引張伸度は、未処理品、200℃×300hr処理品の如何に関わらず、射出成形品とほぼ同等の高伸度を示した。
比較例4で得られたペレットを押出成形に供した比較例7において、押出成形性は良好であったものの、押出成形により得られた200℃×300hr処理品の引張破断伸度は、射出成形により得られた200℃×300hr処理品同様、低いものであった。また、引張弾性率は実施例16に比較して高く、燃料チューブ用途などに必要とされる柔軟性に乏しかった。
比較例6で得られたペレットを押出成形に供した比較例8において、オレフィン系樹脂の熱劣化およびゲル化起因と推定される突起、黒色異物が丸棒中に多数観察され、押出成形性は劣る結果であった。押出成形により得られた未処理品の引張破断伸びは、比較的溶融滞留時間の短い射出成形により得られた未処理品の引張破断伸びに比べ、かなり劣るものであった。

Claims (8)

  1. (a)と(b)の合計を100重量%として、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂99〜60重量%、(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体1〜40重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物を0.1〜10重量部配合してなることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  2. 前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物のモルフォロジー(相構造)において、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続相(海相)を形成し、前記(b)ポリ(エーテルイミド−シロキサン)共重合体が数平均分散粒子径500nm以下で分散した分散相(島相)を形成した海−島構造を有することを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  3. 前記(c)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物が、アルコキシシラン化合物であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  4. 前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、アルカリ金属およびアルカリ土類金属分を合計して200ppm以上含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  5. ASTM4号ダンベル成形片の引張破断伸び(テンシロンUTA2.5T引張試験機を用いてチャック間距離64mm、引張速度10mm/minで測定)が、50%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  6. 200℃で300時間処理した後のASTM4号ダンベル成形片の引張破断伸び(テンシロンUTA2.5T引張試験機を用いてチャック間距離64mm、引張速度10mm/minで測定)が、15%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品。
  8. 成形品が押出成形品であることを特徴とする請求項7に記載の成形品。
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