JP2014056851A - 電磁シールド具及びワイヤハーネス - Google Patents

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Abstract

【課題】ワイヤハーネスの十分な耐久性を確保しつつ、電線及び筐体に対するシールド部材の後付けを可能にすること。
【解決手段】電磁シールド具1は、金属布3と、2組のブラケット2,4と、被膜5とを備える。2組のブラケット2,4各々は、2つの長尺部10及び連結部20,4を備え、金属布3における四方の外縁部のうちの第1の外縁部31及びその反対側の第2の外縁部32各々を電線9の周囲を囲む環状に保持する。2つの長尺部10は、導電性材料からなり、金属布3の外縁部に沿って直列に並ぶ状態で金属布3と接合されており、連結部20,4は、組み合わされた2つの長尺部10を環状に保持する。被膜5は、柔軟性を有する非金属材料からなり、金属布3の少なくとも一方の面に沿って成形されその面を覆っている。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両に搭載されるワイヤハーネスにおいてノイズ電磁波を遮蔽する電磁シールド具及びそれを備えたワイヤハーネスに関する。
従来、電線の変形に応じて変形自在なシールド部材としては、通常、特許文献1に示されるように、筒状の編組線が用いられている。特許文献1においては、電線が金属製の筐体の開口から筐体内へ配線される場合、筒状の編組線は、その一端が金属製の筐体における開口の枠部に被せられ、かしめリングにより筐体の開口の枠部に固定される。
なお、金属製の筐体における電線導入用の開口の枠部は、筐体における開口の部分に対してネジなどにより固定される独立した部材として設けられる場合もある。そのような独立した部材は、一般にシールドシェルと称される。以下の説明において、金属製の筐体における電線導入用の開口の枠部(シールドシェルを含む)のことをシールド枠部と称する。
特開2006−344398号公報
ところで、編組線は筒状であるため、電線は、基本的にはその末端にコネクタが取付けられる前に、編組線に挿通されることを要する。このことは、一般に先通しと称される。このように電線の先通しが必要となると、ワイヤハーネスの製造及び配線の手順の自由度が制限される。
仮に、電線の末端にコネクタが取付けられた後に電線に編組線を取り付けること、即ち、編組線の後付けを可能とするには、電線よりも外形の大きなコネクタなども挿通可能な、無駄に大きな編組線の採用が必要となる。そのようなことは、ワイヤハーネスの配設スペース、重量及び製造コストが増大することになり、非現実的である。
また、電線が先通しされた筒状の編組線をシールド枠部に被せる作業において、電線の軸心方向における編組線の位置をずらすことが必要となる。そのため、編組線の両端が、比較的近くに配置された2つの筐体のシールド枠部各々に被せられる場合、編組線の位置をずらすためのスペースの余裕が小さく、編組線をシールド枠部に被せる作業が難しくなる。
以上のことから、昨今、シールド部材の取り付けの作業性及び手順の自由度を高めるため、シールド部材の大型化を回避しつつ、電線及び筐体に対するシールド部材の後付けを可能にすることが求められている。
また、車両に搭載されるワイヤハーネスにおいては、電線とそれを囲む金属製の編組線とが振動により頻繁に接触する。そのため、電線の被覆の摩耗又は編組線を構成する金属素線の破断などを防止し、ワイヤハーネスの十分な耐久性を確保することが重要である。
そこで、本発明は、ワイヤハーネスの十分な耐久性を確保しつつ、電線及び筐体に対するシールド部材の後付けを可能にすることを目的とする。
本発明の第1の態様に係る電磁シールド具は、金属糸の織物である金属布と、2組のブラケットと、被覆とを備える。2組のブラケットは、上記金属布における四方の外縁部のうちの第1の外縁部及び該第1の外縁部の反対側の第2の外縁部各々を上記電線の周囲を囲む環状に保持する。さらに、2組の上記ブラケット各々は、2つの長尺部及び連結部を備える。2つの上記長尺部は、導電性材料からなり、上記金属布の外縁部に沿って直列に並ぶ状態で上記金属布と接合され、上記電線の両側から相互に組み合わされることによって上記電線を囲む環状に形成される部分である。上記連結部は、2つの上記長尺部各々の端部どうしを連結して2つの上記長尺部を環状に保持する部分である。また、上記被覆は、柔軟性を有する非金属材料からなり、上記金属布における少なくとも一方の面に沿って成形されている。さらに、上記被覆は、上記金属布の上記第1の外縁部及び上記第2の外縁部が2組の上記ブラケットにより環状に保持された状態において内側面となる上記金属布の第一の面に沿って成形されその第一の面を覆っている。
本発明の第2の態様に係る電磁シールド具は、第1の態様に係る電磁シールド具の一態様である。第2の態様に係る電磁シールド具において、上記被膜は、上記金属布における上記第一の面及びその反対側の第二の面に沿って成形され、上記金属布全体を密封している。
本発明の第3の態様に係る電磁シールド具は、第1の態様又は第2の態様に係る電磁シールド具の一態様である。第3の態様に係る電磁シールド具において、上記被膜はエラストマーからなる。
本発明の第4の態様に係る電磁シールド具は、第1の態様から第3の態様のいずれかに係る電磁シールド具の一態様である。第4の態様に係る電磁シールド具において、2組の上記ブラケット各々における2つの上記長尺部は、それら2つの長尺部の一端を繋ぎ可撓性を有する中継部とともに一連の部材により構成されている。
また、本発明は、電線と、その電線の周囲を囲う第1の態様から第4の態様のいずれかに係る電磁シールド具と、を備えるワイヤハーネスの発明として捉えられてもよい。
第1の態様に係る電磁シールド具において、2組のブラケット各々は、金属製の筐体の一部に固定され、金属布と筐体との電気的接続を中継する部材である。金属布は、2組のブラケットを介して筐体と電気的に接続され、筐体接地の状態となる。
第1の態様に係る電磁シールド具によれば、導電材料からなる2つの長尺部が、電線の両側から組み合わされて環状に保持されることにより、2つの長尺部と接合された金属布は、電線の周囲を囲む筒状に形成される。
即ち、第1の態様に係る電磁シールド具は、予め筒状に形成された部材ではないため、電線に対する後付けが可能である。
また、第1の態様に係る電磁シールド具においては、電線の周囲を囲うために過不足のない大きさの金属布が採用されれば良いため、配設スペース、重量及び製造コストの増大を伴うこともない。
また、第1の態様に係る電磁シールド具において、2組のブラケット各々を構成する2つの長尺部は、環状をなす状態で連結部により連結される。さらに、連結部が、組み合わされた2つの長尺部を環状に保持することにより、2つの長尺部と接合された金属布は、電線の周囲を囲む筒状に保持される。
即ち、2組のブラケットは、金属布を筒状に保持する役割と、金属布と筐体のシールド枠部との電気的な接続を維持する役割とを果たす。従って、第1の態様に係る電磁シールド具が採用された場合、従来の編組線及びかしめ金具の採用によって複数の部材が取り扱われる場合に比べ、部品の管理及び取り扱いの工数が簡素化される。
また、柔軟性を有する被膜が、金属布の内側面(第一の面)に形成されているため、電線と金属布とが直接接触することによって生じる電線の被覆の摩耗及び金属布を構成する金属素線の破断を防止することができる。その結果、ワイヤハーネスの十分な耐久性を確保することができる。
また、第2の態様によれば、金属布全体が被膜によって密封されているため、金属布とブラケットとが接触する部分への液体の浸入が防止される。その結果、金属布とブラケットとがそれぞれ異なる種類の金属材料で構成されている場合であっても、金属布及びブラケットの異種金属接触腐食を防ぐことができる。
また、第3の態様によれば、被膜の材料が、柔軟性及び耐久性に優れたエラストマーであるため、振動による電線及び金属布の劣化がより効果的に抑制される。
また、第4の態様によれば、2組のブラケット各々における2つの長尺部がそれぞれ別部材である場合よりも部品点数が減少する。そのため、筐体への電磁シールド具の取り付けの工数を低減することができる。
また、本発明の第5の態様に係るワイヤハーネスが採用されることにより、第1の態様に係る電磁シールド具について述べた効果と同様の効果が得られる。
本発明の第1実施形態に係る電磁シールド具1の平面図である。 電磁シールド具1における長尺部と金属布との接合部(圧着部)の断面図である。 電磁シールド具1の正面図である。 本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス100の正面図。 ワイヤハーネス100の平面図。 本発明の第2実施形態に係る電磁シールド具1Aの正面図である。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。以下に示される各実施形態に係る電磁シールド具は、車両に搭載されるワイヤハーネスの電線に取り付けられ、電線の周囲を囲む導電性の金属布によりノイズ電磁波を遮蔽する電装部品である。
<第1実施形態>
まず、図1〜5を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る電磁シールド具1及び本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス100の構成について説明する。
図1に示されるように、電磁シールド具1は、4つのブラケット本体部2と、4つのブラケット本体部2各々と接合された1枚の金属布3と、金属布3を覆う被膜5と、4つのブラケット本体部2のうち2つずつを環状に保持するための固定具である4つのネジ4と、により構成されている。
2つのブラケット本体部2及び2つのネジ4が1組のブラケットを構成しており、残り2つのブラケット本体部2及び残り2つのネジ4が他の1組のブラケットを構成している。以下の説明において、一列に配列された2つのブラケット本体部2及びそれらを組み合わされた状態で環状に保持するための2つのネジ4のことをブラケット2,4と総称する。即ち、電磁シールド具1は、2組のブラケット2,4を備える。
2組のブラケット2,4のうちの一方は、電線9の一方の端部が接続される機器を収容する筐体8の一部に固定され、2組のブラケット2,4のうちの他方は、電線9の他方の端部が接続される機器を収容する筐体8の一部に固定される。
また、図4,5に示されるように、ワイヤハーネス100は、複数の電線9と、複数の電線9の両端部各々を一定の位置関係で保持する電線保持部材91と、複数の電線9の周囲を一括して覆う電磁シールド具1とを備える。
<電線>
電線9は、導電材料からなる芯線と、芯線の周囲を覆う絶縁材料からなる絶縁被覆とにより構成された絶縁電線である。通常、電線9の端部の芯線には、不図示の金属端子が接続されている。
<電線保持部材>
電線保持部材91は、複数の電線9の端部を一定の位置関係で保持するとともに、複数の電線9相互間を電気的に絶縁する樹脂材料からなる部材である。なお、図3において、電線9及び電線保持部材91は仮想線(二点鎖線)により描かれている。
例えば、電線保持部材91は、非導電性の合成樹脂の部材である。この場合、電線保持部材91が、並列配置された複数の電線9の端部をインサート部とするインサート成形により成形された熱可塑性樹脂の部材であることが考えられる。電線保持部材91は、筐体に形成された開口に嵌め入れられ、これにより、筐体の開口における電線9と筐体との間の隙間が塞がれる。
<金属布>
電磁シールド具1を構成する金属布3は、金属糸の織物である。金属布3は、例えば銅を主成分とする金属の糸が縦方向及び横方向に交差して織られた網目構造を有する生地である。また、金属布3は、金属糸の生地に樹脂材料からなる柔軟性を有するフィルムが貼り付けられた構造を有する場合もある。金属布3は、導電性及び柔軟性を有する。
なお、金属布3は被膜5に覆われているため、図1,3〜5において、金属布3は隠れ線(破線)により描かれている。
以下の説明において、金属布3の四方の外縁部それぞれのことを、第1の外縁部31、第2の外縁部32、第3の外縁部33及び第4の外縁部34と称する。第1の外縁部31は、金属布3の四方の外縁のうち、取り付け対象となる電線9の長手方向における一端をなす外縁から内側へ一定の範囲を占める部分である。第2の外縁部32は、金属布3における第1の外縁部31に対し反対側の外縁から内側へ一定の範囲を占める部分である。
また、第3の外縁部33及び第4の外縁部34は、金属布3の四方の外縁部のうち第1の外縁部31及び第2の外縁部32以外の外縁部である。第3の外縁部33及び第4の外縁部34は、金属布3における電線9の周囲を囲む方向の両端部をなす外縁部であるともいえる。
電磁シールド具1において、金属布3は、第1の外縁部31において、後述する2組のブラケット2,4のうちの一方と接合されている。同様に、金属布3は、第2の外縁部32において、2組のブラケット2,4のうちの他方と接合されている。金属布3は、2組のブラケット2,4各々を介して2つの金属製の筐体8各々と電気的に接続され、筐体接地の状態となる。その詳細については後述する。
<ブラケット>
電磁シールド具1の2組のブラケット2,4各々において、ブラケット本体部2は、導電性材料からなる曲がった板状の部材である。ブラケット本体部2は、例えば、銅の合金、鉄又はステンレスなどの金属の部材であり、必要に応じて表面にメッキ層が形成されている。ブラケット本体部2は、金属製の筐体8の一部に固定され、金属布3と筐体8との電気的接続を中継する部材である。
図1〜3に示されるように、1組のブラケット2,4は2つのブラケット本体部2を含み、ブラケット本体部2各々は、1つの長尺部10と、長尺部10の両端各々に繋がる2つの庇部20とにより構成されている。
<ブラケット本体部:長尺部>
長尺部10各々は、曲がった板状の部分であり、磁気シールドの対象となる複数の電線9を跨いで架け渡される半環状に形成されている。そして、1組のブラケット2,4に含まれる2つの長尺部10は、電線9の両側から相互に組み合わされることによって電線9の周囲を囲む環状に形成される。
図3,4に示される例では、各長尺部10は、電線9を横断する中間部分が平坦な板状に形成されている。しかしながら、各長尺部10の形状は、例えば、その内側に嵌め入れられる電線保持部材91の形状などにより異なる。
また、1組のブラケット2,4に含まれる2つの長尺部10は、金属布3の外縁部に沿って直列に並ぶ状態で金属布3と接合されている。金属布3と長尺部10とは、例えば、圧着又は溶接などにより接合されている。2組のブラケット2,4のうちの一方における2つの長尺部10は、金属布3の第1の外縁部31に沿って直列に並ぶ状態で金属布3に接合されている。また、2組のブラケット2,4のうちの他方における2つの長尺部10は、金属布3の第2の外縁部32に沿って直列に並ぶ状態で金属布3に接合されている。
本実施形態における長尺部10各々は、金属布3の外縁部に圧着されるための以下の構造を有している。即ち、図2に示されるように、長尺部10各々は、基部13とその基部13に連なった折り返し部14とを有している。
長尺部10の基部13は、金属布3の外縁部(第1の外縁部31又は第2の外縁部32)に沿う部分である。基部13に連なった折り返し部14は、基部13に重ねられて折り返され、基部13との間に金属布3の外縁部を挟み込む部分である。長尺部10は、基部13と折り返し部14との間に金属布3の外縁部を挟み込むことにより金属布3の外縁部に圧着されている。なお、図2において、折り返される前の折り返し部14が仮想線で描かれている。
<ブラケット本体部:庇部>
庇部20各々は、長尺部10各々における長手方向の両端に連なり、長尺部10から側方へ張り出して形成された平坦な板状の部分である。
2つの長尺部10が環状に組み合わされた状態において、一方のブラケット本体部2の庇部20と他方のブラケット本体部2の庇部20とが重なる。また、庇部20各々には、それらが重なった状態において連通する貫通孔であり、ネジ4が装着されるネジ孔21が形成されている。
ブラケット本体部2は、庇部20各々が重ねられることによって環状に形成される。また、重ねられた2つの庇部20は、ネジ4が装着されることによって合体した状態に保持される。これにより、2つの長尺部10の端部どうしが連結され、2つの長尺部10は環状に保持される。
1組のブラケット2,4において、4つの庇部20及び4つのネジ4は、2つの長尺部10各々の端部どうしを連結して2つの長尺部10を環状に保持する連結部の一例である。
組み合わされた2つの長尺部10が環状に保持されると、2つの長尺部と接合された金属布は、電線9の周囲を囲む筒状に保持される。以下の説明において、金属布3の表裏両面のうち、金属布3の第1の外縁部31及び第2の外縁部31が2組のブラケット2,4により環状に保持された状態において内側面となる面のことを内側主面と称する。また、金属布3の表裏両面のうち、内側主面に対し反対側の面のことを外側主面と称する。
2つの庇部20各々におけるネジ孔21の内縁部には、ネジ4と螺合するネジ山が形成されていることが望ましい。これにより、ネジ4を庇部20に対して直接締め付けることが可能となり、2つの庇部20を合体させるためのナット部材が必要でなくなる。
もちろん、2つの長尺部10を環状に保持する連結部が、貫通孔が形成された2つの庇部20、ネジ4及びネジ4が締め付けられるナット部材により構成されてもよい。この場合、ナット部材が、重なる2つの庇部20の一方に予め溶接などにより固着されていることも考えられる。
以上に示したように、2組のブラケット2,4各々は、2つの長尺部10と、2つの長尺部10の両端部を連結する連結部20,4と、を備える。そして、2組のブラケット2,4各々は、金属布3における四方の外縁部のうちの第1の外縁部31及びその反対側の第2の外縁部32各々を電線9の周囲を囲む環状に保持する。
また、2組のブラケット2,4各々において、2つのブラケット本体部2は、電線保持部材91を挟み込んだ状態で環状に保持される。これにより、金属布3における第1の外縁部31及び第2の外縁部32が環状に保持され、金属布3全体が電線9の周囲を囲う筒状となる。
<被膜>
被膜5は、柔軟性を有する非金属材料からなり、金属布3における少なくとも一方の面に沿って成形された部材である。より具舘的には、被膜5は、金属布3における少なくとも内側主面に沿って成形されその内側主面を覆っている。
本実施形態における被膜5は、金属布3における内側主面及びその反対側の外側主面の各々に沿って成形され、金属布3全体を密封している。従って、本実施形態における被膜5は、金属布3におけるブラケット本体部2と接合された部分以外の全領域を隙間無く覆うとともに、ブラケット本体部2の長尺部10に密着して長尺部10と金属布3との間の隙間を塞いでいる。図1〜5に示される例では、被膜5は、金属布3におけるブラケット本体部2と接合された部分以外の全領域と、長尺部10における金属布3に接合された部分全体とを隙間無く覆う状態に成形されている。
被膜5は、例えば、熱可塑性エラストマーなどの柔軟性を有する熱可塑性の合成樹脂からなる材である。熱可塑性の合成樹脂からなる被膜5は、例えば、金属布3及びこれに接続されたブラケット本体部2をインサート品とするインサート成形によって成形される。
被膜5は、金属布3の表面に密着して成形された状態において、金属布3を筒状に変形させることを阻害しない程度の柔軟性を有していればよい。従って、その程度の柔軟性を有するエラストマー以外の材料が、被膜5の材料として採用されてもよい。
<筐体に対する電磁シールド具の固定の構造>
図4に示されるように、ワイヤハーネス100の電磁シールド具1は、筐体8の一部に固定される。図4に示される例では、電線9の両側から組み合わされた一対のブラケット本体部2は、その両端の2箇所の庇部20において、筐体8から張り出して形成された金属製の支持板82に対してネジ4により固定されている。2つの長尺部10を連結する連結構造が、ブラケット本体部2における両端の2箇所に設けられているため、電磁シールド具1は、図4に示されるような形態で筐体8の一部の支持板82に固定されることが可能である。
また、ワイヤハーネス100の電線9は、金属製の筐体8の外部から筐体8の開口を経て筐体8内へ亘って配線される。また、筐体8における電線導入用の開口の縁に、電線保持部材91が嵌め入れられる不図示の枠部が形成されている。
なお、図5に示されるように、ワイヤハーネス100の電磁シールド具1において、2組のブラケット2,4各々における長尺部10の長さL1が、金属布3の第3の外縁部33及び第4の外縁部34の長さL2よりも長いことが考えられる。
2組のブラケット2,4各々が、2つの筐体8各々の支持板82に固定された状態において、2つのブラケット本体部2各々と2つの筐体8各々とは電気的に接続される。そのため、2つのブラケット本体部2各々と接合された導電性の金属布3も、2つの筐体8各々に対して電気的に接続される。
金属布3は、電線9の周囲を囲む状態で、筐体8と電気的に接続されることにより、電線9に向かう、又は電線9から放射されるノイズ電磁波を遮蔽する。
<効果>
電磁シールド具1において、2組のブラケット2,4各々は、金属製の筐体8の一部に固定され、金属布3と筐体8との電気的接続を中継する。金属布3は、2組のブラケット2,4を介して筐体8と電気的に接続され、筐体接地の状態となる。
電磁シールド具1において、導電材料からなる2つの長尺部10は、電線9の両側から組み合わされて環状に保持され、これにより、2つの長尺部10と接合された金属布3は、電線9の周囲を囲む筒状に形成される。
即ち、電磁シールド具1は、予め筒状に形成された部材ではないため、電線9に対する後付けが可能である。より具体的には、電磁シールド具1は、端部にコネクタなどが取り付けられた後の電線9に対して装着されることが可能であるとともに、筐体8の外から内への配線が行われた後の電線9に対して装着されることも可能である。
また、電磁シールド具1においては、電線9の周囲を囲うために過不足のない大きさの金属布3が採用されれば良い。そのため、電磁シールド具1の採用にあたり、配設スペース、重量及び製造コストの増大を伴うこともない。
また、電磁シールド具1において、2組のブラケット2,4各々を構成する2つの長尺部10は、環状をなす状態で、庇部20及びネジ4で構成される連結部により連結される。さらに、その連結部が、組み合わされた2つの長尺部10を環状に保持することにより、2つの長尺部10と接合された金属布3は、電線9の周囲を囲む筒状に保持される。
即ち、2組のブラケット2,4は、金属布3を筒状に保持する役割と、金属布3と筐体8との電気的な接続を維持する役割とを果たす。従って、電磁シールド具1が採用された場合、従来の編組線及びかしめ金具の採用によって複数の部材が取り扱われる場合に比べ、部品の管理及び取り扱いの工数が簡素化される。
また、金属布3が柔軟性を有するため、電磁シールド具1は、曲がった経路に沿う電線9の周囲を囲むこともできる。
また、柔軟性を有する被膜5が、金属布3の内側主面(第一の面)に形成されているため、電線9と金属布3とが直接接触することによって生じる電線9の被覆の摩耗及び金属布3を構成する金属素線の破断を防止することができる。その結果、ワイヤハーネス100の十分な耐久性を確保することができる。
また、電磁シールド具1においては、金属布3全体が被膜5によって密封されているため、金属布3とブラケット本体部2とが接触する部分への液体の浸入が防止される。その結果、金属布3とブラケット本体部2とがそれぞれ異なる種類の金属材料で構成されている場合であっても、金属布3及びブラケット本体部2の異種金属接触腐食を防ぐことができる。
また、被膜5の材料が、柔軟性及び耐久性に優れたエラストマーである場合、振動による電線9及び金属布3の劣化がより効果的に抑制される。
また、2組のブラケット2,4各々の固定先である2つの筐体8が近くに配置されている場合、図5に示されるように、長尺部10の長さL1と、金属布3の第3の外縁部33及び第4の外縁部34の長さL2とが、L1>L2の関係になりがちである。そのように作業スペースの余裕が小さい場合においても、電磁シールド具1は、筐体8への取り付け作業において金属布3の位置を電線9の長手方向における一方にずらすことを必要としないため、容易な作業により取り付け可能である。
<第2実施形態>
次に、図6を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る電磁シールド具1Aについて説明する。この電磁シールド具1Aは、図1〜5に示された電磁シールド具1と比較して、2つの長尺部10の一方の端部の構造が異なる。図6において、図1〜5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド具1Aにおける電磁シールド具1と異なる点についてのみ説明する。
図6は電磁シールド具1Bの正面図である。なお、図6において、電線9及び電線保持部材91が仮想線(二点鎖線)で描かれている。
電磁シールド具1Aは、電磁シールド具1と同様に2組のブラケット2A,4を備えている。そして、電磁シールド具1Aのブラケット本体部2Aにおいては、2つの長尺部10は、中継部19を介して折り返した経路に沿って形成されている。そのため、2つの長尺部10と接合された金属布3及びそれを覆おう被膜5は、2つの長尺部10により、中間部において折り返された状態で保持されている。
中継部19は、折り返された板状の部分であり、2つの長尺部10各々の一端に連なって形成されている。即ち、2つの長尺部10及び中継部19は、一連の部材で構成されている。
中継部19は、折り返しの角度が変化する方向において可撓性を有している。図6に示されるように、中継部19の可撓性により、2つの長尺部10は、中継部19を支点として相対的に回動可能である。これにより、ブラケット本体部2Aは、それら各々の端部が離隔して内側が開放された開状態と、それら各々の端部が接する閉状態とに変形可能である。
図6において、開状態のブラケット本体部2Aが実線で描かれており、閉状態のブラケット本体部2Aが仮想線(二点鎖線)で描かれている。2つのブラケット本体部2A各々が開状態となることにより、2つのブラケット本体部2と接合された金属布3も、第3の外縁部33及び第4の外縁部34が離隔した開状態となる。また、2つのブラケット本体部2各々が閉状態となることにより、2つのブラケット本体部2と接合された金属布3は、第3の外縁部33及び第4の外縁部34が近接して筒状になる。
電磁シールド具1Aが採用された場合、電磁シールド具1が採用される場合と同様の効果が得られる。さらに、電磁シールド具1Aにおいては、2組のブラケット2A,4各々における2つの長尺部10は、中継部19とともに一連の部材で構成されている。そのため、電磁シールド具1Aが採用された場合、2つの長尺部10がそれぞれ別部材である場合よりも部品点数が減少する。そのため、筐体8への取り付けの工数を低減することができる。
<その他>
以上に示された各実施形態において、相互に組み合わされる2つの長尺部10が同じ形状で形成されているが、相互に組み合わされる2つの長尺部10が異なる形状で形成されることも考えられる。
また、電磁シールド具1,1Aにおいて、被膜5が金属布3の内側主面のみを覆っていることも考えられる。その場合でも、被膜5が電線9と金属布3との接触を防ぎ、少なくとも振動に起因するワイヤハーネスの劣化が抑制される。
また、電磁シールド具1,1Aにおいて、長尺部10の長さL1と金属布3の第3の外縁部33及び第4の外縁部34の長さL2との関係は、必ずしもL1>L2である場合に限られず、L1<L2である場合、或いはL1=L2である場合も考えられる。
なお、本発明に係る電磁シールド具及びワイヤハーネスは、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された実施形態を自由に組み合わせること、或いは実施形態を適宜、変形又は一部省略することによって構成されることも可能である。
1,1A 電磁シールド具
2,2A ブラケット本体部(ブラケット)
3 金属布
4 ネジ(連結部)
5 被膜
8 筐体
9 電線
10 長尺部
13 長尺部の基部
14 長尺部の折り返し部
19 中継部
20 庇部(連結部)
21 ネジ孔
31 金属布の第1の外縁部
32 金属布の第2の外縁部
33 金属布の第3の外縁部
34 金属布の第4の外縁部
82 筐体の支持板
91 電線保持部材
100 ワイヤハーネス

Claims (5)

  1. 金属糸の織物である金属布と、
    前記金属布における四方の外縁部のうちの第1の外縁部及び該第1の外縁部の反対側の第2の外縁部各々を前記電線の周囲を囲む環状に保持する2組のブラケットと、
    柔軟性を有する非金属材料からなり、前記金属布における少なくとも一方の面に沿って成形された被膜と、
    を備え、
    2組の前記ブラケット各々は、
    導電性材料からなり、前記金属布の外縁部に沿って直列に並ぶ状態で前記金属布と接合され、前記電線の両側から相互に組み合わされることによって前記電線を囲む環状に形成される2つの長尺部と、
    2つの前記長尺部各々の端部どうしを連結して2つの前記長尺部を環状に保持する連結部と、を備え、
    前記被膜は、
    前記金属布の前記第1の外縁部及び前記第2の外縁部が2組の前記ブラケットにより環状に保持された状態において内側面となる前記金属布の第一の面に沿って成形され前記第一の面を覆っている、電磁シールド具。
  2. 請求項1に記載の電磁シールド具であって、
    前記被膜は、前記金属布における前記第一の面及びその反対側の第二の面に沿って成形され、前記金属布全体を密封している、電磁シールド具。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の電磁シールド具であって、
    前記被膜はエラストマーからなる、電磁シールド具。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の電磁シールド具であって、
    2組の前記ブラケット各々における2つの前記長尺部は、該2つの長尺部の一端を繋ぎ可撓性を有する中継部とともに一連の部材により構成されている、電磁シールド具。
  5. 電線と、
    前記電線の周囲を囲う電磁シールド具と、を備えるワイヤハーネスであって、
    前記電磁シールド具は、
    金属糸の織物であり、前記電線の周囲を囲う金属布と、
    前記金属布における四方の外縁部のうちの第1の外縁部及び該第1の外縁部の反対側の第2の外縁部各々を前記電線の周囲を囲む環状に保持する2組のブラケットと、
    柔軟性を有する非金属材料からなり、前記金属布における少なくとも一方の面に沿って成形された被膜と、を備え、
    2組の前記ブラケット各々は、
    導電性材料からなり、前記金属布の外縁部に沿って直列に並ぶ状態で前記金属布と接合され、前記電線の両側から相互に組み合わされることによって前記電線を囲む環状に形成される2つの長尺部と、
    2つの前記長尺部各々の端部どうしを連結して2つの前記長尺部を環状に保持する連結部と、を備え、
    前記被膜は、
    前記金属布の前記第1の外縁部及び前記第2の外縁部が2組の前記ブラケットにより環状に保持された状態において内側面となる前記金属布の第一の面に沿って成形され前記第一の面を覆っている、ワイヤハーネス。
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