JP2014043621A - オーステナイト系耐熱鋼 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C<0.02%、Si≦2%、Mn≦2%、Cr:15〜26%、Ni:20〜35%、Al≦0.3%、P≦0.04%、S≦0.01%、N≦0.05%を含むとともに、Ti≦3.0(0%を含む)、V≦3.0(0%を含む)、Nb<2.3%(0%を含む)およびTa≦2.0(0%を含む)から選択される1種以上を含み、かつ〔1.5≦2Ti+2V+Nb+(1/2)Ta≦6.0〕を満たし、残部はFeおよび不純物からなるオーステナイト系耐熱鋼。Feの一部に代えて、特定量の、W、Mo、Co、Ca、Mg、希土類元素、B、Zr、HfおよびReから選択される1種以上の元素を含有してもよい。
【選択図】なし
Description
f1=2Ti+2V+Nb+(1/2)Ta・・・(1)
上記の式(1)における元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
f2=(1/2)W+Mo・・・(2)
上記の式(2)における元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
(a):Co:5%以下
(b):Ca:0.05%以下、Mg:0.05%以下および希土類元素:0.2%以下
(c):B:0.01%以下、Zr:0.2%以下およびHf:0.2%以下、ならびに
(d):Re:3%以下
Cは、従来の高温で使用されるオーステナイト系ステンレス鋼および耐熱鋼において、炭化物を形成してクリープ強度を確保するための有効かつ重要な元素とされていた。しかし、本発明では、高温において炭化物に比べて安定な金属間化合物(ラーベス相および/またはNi3M相(M:Nb、Ta、TiおよびVの1種以上))によって高強度化を実現する。
Siは、製鋼時の脱酸ならびに鋼の耐酸化性および耐水蒸気酸化性を高めるために必要な元素である。しかし、その含有量が過剰になると鋼の熱間加工性が低下する。そのため、上限を設けて、Siの含有量を2%以下とした。Siの含有量は、好ましくは1.0%以下である。他の元素で脱酸作用が十分確保されている場合、特にSiの含有量について下限を設ける必要はない。
Mnは、鋼中に含まれる不純物のSと結合してMnSを形成し、熱間加工性を向上させる。一方、その含有量が過剰になると、鋼が硬くなって脆くなり、かえって熱間加工性および溶接性が損なわれる。そのため、上限を設けて、Mnの含有量を2%以下とした。Mnの含有量は、好ましくは1.2%以下である。
Crは、耐酸化性、耐水蒸気酸化性および耐食性を確保するために重要な元素である。700℃以上の高温環境下での有効な耐酸化特性、耐水蒸気酸化特性および耐高温腐食特性を得るためには、15%以上のCr含有量が必要である。前記の耐食性はCr含有量が多いほど向上するが、26%を超えると、組織安定性が低下してクリープ強度が損なわれる。さらに、オーステナイト組織を安定にするために高価なNiの含有量増加を余儀なくされるだけでなく、溶接性も低下する。したがって、Crの含有量を15〜26%とした。Crの含有量は、17%以上とすることが好ましく、また24%以下とすることが好ましい。
Niは、オーステナイト組織を安定にする元素であり、耐食性の確保にも重要な元素であり、20%以上の含有量とする必要がある。一方、過剰なNiはコスト上昇を招くだけでなく、クリープ強度の低下を招く。そのため、上限を設けて、Niの含有量を20〜35%とした。Niの含有量は、25%を超えることが好ましく、28%以上であればさらに好ましい。また、Niの含有量は、33%以下とすることが好ましく、31%以下とすればさらに好ましい。
Alは、脱酸作用を有するが、多量に含まれると、組織安定性が低下する。そのため、上限を設けてAlの含有量を0.3%以下とした。なお、Alの含有量は、0.0005%以上とすることが好ましい。また、Alの含有量は、0.25%以下とすることが好ましく、0.20%以下とすればさらに好ましい。
Pは、不純物として鋼中に不可避的に混入する元素であるが、過剰なPは溶接性および熱間加工性を害する。そのため、上限を設けて、Pの含有量を0.04%以下とした。Pの含有量は、0.03%以下とすることが好ましく、少なければ少ないほどよい。
Sも上記のPと同様に不純物として鋼中に不可避的に混入する元素であるが、過剰なSは溶接性および熱間加工性を害する。そのため、上限を設けて、Sの含有量を0.01%以下とした。Sの含有量は、0.008%以下とすることが好ましく、少なければ少ないほどよい。
Nは、オーステナイト組織を安定化する作用を有し、通常の溶解法では不可避的に含まれる元素である。しかし、多量のNは、CとともにTiなどと未固溶で残る炭窒化物を形成して靱性が損なわれる。したがって、上限を設けて、Nの含有量を0.05%以下とした。なお、Nの含有量は、0.04%以下とすることが好ましい。
f1=2Ti+2V+Nb+(1/2)Ta・・・(1)
で表されるf1が1.5〜6.0を満たす必要がある。
Tiは、析出強化相となる金属間化合物(ラーベス相およびNi3M相(M:Ti))を形成して、結晶粒界および結晶粒内での析出強化に寄与し、クリープ強度を向上させる元素である。なお、V、NbおよびTaもTiと同様の作用を有する。このため、Ti、V、NbおよびTaから選択される1種以上を含有させる。しかし、Tiを単独またはV、NbやTaと複合で含有させるときの含有量が多量になると、金属間化合物(ラーベス相およびNi3M相(M:Nb、Ta、TiおよびVの1種以上))の体積率が過剰となり、高温延性および/または熱間加工性が損なわれる。また、長時間時効後の靱性も低下する。このため、Tiの含有量を3.0%以下(0%を含む)とした。なお、Tiの含有量は、0.2%以上とすることが好ましく、また2.5%以下とすることが好ましい。上記のTi含有量が0%とは、Tiを含有させない場合である。
Vは、析出強化相となる金属間化合物(ラーベス相およびNi3M相(M:V))の析出を促進して、結晶粒界および結晶粒内での析出強化に寄与し、クリープ強度を向上させる元素である。なお、Ti、NbおよびTaもVと同様の作用を有する。このため、Ti、V、NbおよびTaから選択される1種以上を含有させる。しかし、Vの単独またはTi、NbやTaとの複合での含有量が多量になると、金属間化合物(ラーベス相およびNi3M相(M:Nb、Ta、TiおよびVの1種以上))の体積率が過剰となり、高温延性および/または熱間加工性が損なわれる。また長時間時効後の靱性も低下する。このため、Vの含有量を3.0%以下(0%を含む)とした。なお、Vの含有量は、0.2%以上とすることが好ましく、また2.0%以下とすることが好ましい。上記のV含有量が0%とは、Vを含有させない場合である。
Nbは、金属間化合物(ラーベス相およびNi3M相(M:Nb))の形成を促進し、結晶粒界および結晶粒内での析出強化に寄与し、クリープ強度の向上に有用な元素である。なお、Ti、VおよびTaもNbと同様の作用を有する。このため、Ti、V、NbおよびTaから選択される1種以上を含有させる。しかし、Nbの単独またはTi、VやTaとの複合での含有量が多量となると、金属間化合物(ラーベス相およびNi3M相(M:Nb、Ta、TiおよびVの1種以上))の体積率が過剰となり、脆化が生じる。このため、Nbの含有量を2.3%未満(0%を含む)とした。なお、Nbの含有量は、0.1%以上とすることが好ましく、また1.8%以下とすることが好ましい。上記のNb含有量が0%とは、Nbを含有させない場合である。
Taは、金属間化合物(ラーベス相およびNi3M相(M:Ta))の形成を促進し、結晶粒界および結晶粒内での析出強化に寄与し、クリープ強度の向上に有用な元素である。なお、Ti、VおよびNbもTaと同様の作用を有する。このため、Ti、V、NbおよびTaから選択される1種以上を含有させる。しかし、Taの単独またはTi、VやNbとの複合での含有量が多量となると、金属間化合物(ラーベス相およびNi3M相(M:Nb、Ta、TiおよびVの1種以上))の体積率が過剰となり、脆化が生じる。このため、Taの含有量を2.0%以下(0%を含む)とした。なお、Taの含有量は、0.1%以上とすることが好ましく、また1.5%以下とすることが好ましい。上記のTa含有量が0%とは、Taを含有させない場合である。
f1=2Ti+2V+Nb+(1/2)Ta・・・(1)
で表されるf1が1.5未満では、金属間化合物(ラーベス相および/またはNi3M相(M:Nb、Ta、TiおよびVの1種以上))の形成によるクリープ強度の向上が達成されない。一方、f1が6.0を超えると、良好なクリープ延性ならびに、長時間時効後の優れた延性および靱性を確保できない。したがって、f1を1.5〜6.0とした。f1は、2.0を超えることが好ましい。なお、式(1)における元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
Wは、母相、すなわちマトリックスであるオーステナイト相に固溶して、固溶強化によるクリープ強度の向上に寄与し、またラーベス相などの金属間化合物の形成による結晶粒界および結晶粒内での析出強化によるクリープ強度の向上にも有効に作用する元素である。このため、必要に応じてWを含有させてもよい。しかし、Wの含有量が多量になると、過剰な金属間化合物(ラーベス相あるいはσ相)の析出を生じさせるため、高温延性および/または熱間加工性が損なわれる。したがって、Wを含有させる場合には、その含有量を7.0%以下とした。W含有量の上限は、好ましくは5.0%である。
f2=(1/2)W+Mo・・・(2)
で表されるf2が1.0〜5.0も満たす必要がある。
Moは、母相、すなわちマトリックスであるオーステナイト相に固溶し、固溶強化によるクリープ強度の向上に寄与し、またラーベス相の析出を促進する元素であり、Wと類似した性質を有する。このため、必要に応じてMoを含有させてもよい。しかし、Moの含有量が多量になると、靱性を低下させるσ相の析出が促進し、特に3.0%を超えると、靱性の低下が著しくなる。このため、Mo含有させる場合には、その含有量を3.0%以下とした。Mo含有量の上限は、好ましくは2.0%である。
f2=(1/2)W+Mo・・・(2)
で表されるf2が1.0〜5.0も満たす必要がある。
WおよびMoから選択される1種以上を含有させる場合に、その含有量が上述した範囲にあっても、
f2=(1/2)W+Mo・・・(2)
で表されるf2が1.0未満では、固溶強化および金属間化合物(ラーベス相)の形成によるクリープ強度の向上が達成されない。一方、f2が5.0を超えると、過剰なラーベス相が析出し、また有害なσ相が安定化して、熱間加工性および靱性の劣化が著しくなる。したがって、f2を1.0〜5.0とした。f2は、2.0を超えることが好ましい。なお、式(2)における元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
(a)のCoは、Niと同様オーステナイト組織を安定化させる元素で、オーステナイト組織の安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。このため、必要に応じてCoを含有させてもよい。しかしながら、Coの含有量が5%を超えると、コストの増加を招く。したがって、Coを含有させる場合には、その含有量を5%以下とした。Co含有量の上限は、好ましくは3.0%である。
Caは、Sを硫化物として固定し、熱間加工性を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてCaを含有させてもよい。しかしながら、Caの含有量が0.05%を超えると、靱性、延性および清浄性が損なわれる。したがって、Caを含有させる場合には、その含有量を0.05%以下とした。Ca含有量の上限は、好ましくは0.01%である。
Mgは、Sを硫化物として固定し、熱間加工性を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてMgを含有させてもよい。しかしながら、Mgの含有量が0.05%を超えると、靱性、延性および清浄性が損なわれる。したがって、Mgを含有させる場合には、その含有量を0.05%以下とした。Mg含有量の上限は、好ましくは0.01%である。
希土類元素は、Sを硫化物として固定し、熱間加工性を向上させる作用を有する。また、希土類元素は、無害で安定な酸化物を形成して、O(酸素)の好ましくない影響を小さくし、耐食性、クリープ強度およびクリープ延性を向上させる作用も有する。このため、必要に応じて希土類元素を含有させてもよい。しかしながら、希土類元素の含有量が0.2%を超えると、酸化物等の介在物が多くなり、熱間加工性および溶接性が損なわれるだけでなく、コストの上昇を招く。したがって、希土類元素を含有させる場合には、その含有量を0.2%以下とした。希土類元素含有量の上限は、好ましくは0.1%である。
Bは、粒界強化元素としてクリープ強度を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてBを含有させてもよい。しかしながら、Bの含有量が0.01%を超えると、溶接性が損なわれる。したがって、Bを含有させる場合には、その含有量を0.01%以下とした。B含有量の上限は、好ましくは0.005%である。
Zrは、主として粒界強化に寄与し、クリープ強度を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてZrを含有させてもよい。しかしながら、Zrの含有量が0.2%を超えると、溶接性および熱間加工性が損なわれる。したがって、Zrを含有させる場合には、その含有量を0.2%以下とした。Zr含有量の上限は、好ましくは0.08%である。
Hfは、主として粒界強化に寄与し、クリープ強度を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてHfを含有させてもよい。しかしながら、Hfの含有量が0.2%を超えると、溶接性および熱間加工性が損なわれる。したがって、Hfを含有させる場合には、その含有量を0.2%以下とした。Hf含有量の上限は、好ましくは0.06%である。
(d)のReは、主として固溶強化元素として高温強度およびクリープ強度を向上させる。このため、必要に応じてReを含有させてもよい。しかしながら、Reの含有量が3%を超えると、熱間加工性および靱性が損なわれる。したがって、Reを含有させる場合には、その含有量を3%以下とした。Re含有量の上限は、好ましくは2%である。
Claims (3)
- 質量%で、C:0.02%未満、Si:2%以下、Mn:2以下、Cr:15〜26%、Ni:20〜35%、Al:0.3%以下、P:0.04%以下、S:0.01%以下およびN:0.05%以下を含むとともに、Ti:3.0%以下(0%を含む)、V:3.0%以下(0%を含む)、Nb:2.3%未満(0%を含む)およびTa:2.0%以下(0%を含む)から選択される1種以上を含み、かつ下記の式(1)で表されるf1が1.5〜6.0を満たし、残部はFeおよび不純物からなることを特徴とするオーステナイト系耐熱鋼。
f1=2Ti+2V+Nb+(1/2)Ta・・・(1)
上記の式(1)における元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。 - Feの一部に代えて、質量%で、W:7.0%以下およびMo:3.0%以下から選択される1種以上を含有し、かつ下記の式(2)で表されるf2が1.0〜5.0であることを特徴とする、請求項1に記載のオーステナイト系耐熱鋼。
f2=(1/2)W+Mo・・・(2)
上記の式(2)における元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。 - Feの一部に代えて、質量%で、下記の(a)から(d)までに示される元素から選択される1種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のオーステナイト系耐熱鋼。
(a):Co:5%以下
(b):Ca:0.05%以下、Mg:0.05%以下および希土類元素:0.2%以下
(c):B:0.01%以下、Zr:0.2%以下およびHf:0.2%以下、ならびに
(d):Re:3%以下
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