JP5846076B2 - オーステナイト系耐熱合金 - Google Patents
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Description
f1=(1/2)W+Mo・・・(1)
f2=(1/2)W+Mo+Nb+2Ti・・・(2)
f3=Nb+2Ti・・・(3)
上記の式における元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
(a):Co:5%以下、
(b):Ca:0.05%以下、Mg:0.05%以下および希土類元素:0.2%以下、
(c):Zr:0.1%以下、Hf:0.2%以下およびB:0.01%以下、ならびに、
(d):V:1.5%以下、Ta:3%以下およびRe:3%以下。
Cは、従来の高温で使用されるオーステナイト系ステンレス鋼および耐熱合金において、炭化物を形成してクリープ強度を確保するための有効かつ重要な元素とされていた。しかし、本発明では、高温において炭化物に比べて安定な金属間化合物であるラーベス相、Ni3Nb相、Ni3Ti相、Ni3(Nb、Ti)相によって高強度化を実現する。Cの含有量が多くなると、上述した金属間化合物の析出量が減少して高強度化が困難になり、また炭化物が過剰に析出して靱性などの機械的性質が劣化する。さらに、Cの含有量が多い場合には、溶接性も低下する。したがって、Cの含有量は少なくする必要があるため、0.02%未満とした。Cの含有量は、0.015%以下とすることが好ましい。
Siは、脱酸ならびに合金の耐酸化性および耐水蒸気酸化性を高めるために必要な元素である。しかし、その含有量が過剰になると合金の熱間加工性が低下する。そのため、上限を設けて、Siの含有量を2%以下とした。Siの含有量は、好ましくは1%以下である。他の元素で脱酸作用が十分確保されている場合、特にSiの含有量について下限を設ける必要はない。なお、脱酸作用、耐酸化性および耐水蒸気酸化性等の効果を安定して得るためには、Si含有量は0.03%以上とするのが好ましく、0.06%以上とすればさらに好ましい。
Mnは、合金中に含まれる不純物のSと結合してMnSを形成し、熱間加工性を向上させる。一方、その含有量が過剰になると、合金が硬くなって脆くなり、かえって熱間加工性および溶接性を損なう。そのため、上限を設けて、Mnの含有量を2%以下とした。Mnの含有量は、好ましくは1.2%以下である。なお、熱間加工性改善作用を安定して得るためには、Mn含有量は、0.1%以上とすることが好ましく、0.2%以上とすればさらに好ましい。
Crは、耐酸化性、耐水蒸気酸化性および耐食性を確保するために重要な元素である。700℃以上の高温環境下での耐食性を18−8系のオーステナイト系ステンレス鋼以上にするためには、20%以上のCr含有量が必要である。前記の耐食性はCr含有量が多いほど向上するが、28%以上になると、組織安定性が低下してクリープ強度を損なう。また、オーステナイト組織を安定にするために高価なNiの含有量増加を余儀なくされるだけでなく、溶接性も低下する。したがって、Crの含有量を20%以上28%未満とした。Crの含有量は、22%以上とすることが好ましく、また26%以下とすることが好ましい。
Niは、オーステナイト組織を安定にする元素であり、耐食性の確保にも重要な元素である。上記のCr含有量とのバランスから、Niは35%を超える含有量とする必要がある。一方、過剰なNiはコスト上昇を招くだけでなく、クリープ強度の低下を招く。そのため、上限を設けて、Niの含有量を35%を超えて50%以下とした。Niの含有量は、40%を超えることが好ましく、42%以上であればさらに好ましい。また、Niの含有量は、48%以下とすることが好ましく、47%以下とすればさらに好ましい。
Wは、母相、すなわちマトリックスであるオーステナイト相に固溶して、固溶強化によるクリープ強度の向上に寄与し、またラーベス相などの金属間化合物の形成による結晶粒界および結晶粒内での析出強化によるクリープ強度の向上にも有効に作用する極めて重要な元素である。しかし、Wの含有量が多量になると、過剰な金属間化合物(ラーベス相あるいはσ相)の析出を生じさせるため、高温延性および/または熱間加工性を損なう。したがって、上限を設けて、Wの含有量を2.0〜7.0%とした。なお、Wの含有量は、3.0を超えることが好ましい。また、Wの含有量は、5.0%以下とすることが好ましく、5.0%未満とすることが一層好ましい。
Moは、母相、すなわちマトリックスであるオーステナイト相に固溶し、固溶強化によるクリープ強度の向上に寄与し、またラーベス相の析出を促進する元素であり、Wと類似した性質を有する。このため、上記したWの一部に代えてMoを含有してもよい。しかし、Moの含有量が多量になると、靱性を低下させるσ相の析出が促進し、特に2.5%以上になると、靱性の低下が著しくなる。このため、Moの含有量を2.5%未満(0%を含む)とした。Mo含有量の上限は、好ましくは2.0%である。なお、Moを含有させる場合、その含有量の下限は、0.5%とすることが好ましい。上記のMo含有量が0%とは、Moを含有させない場合である。
Nbは、金属間化合物(ラーベス相、Ni3Nb相およびNi3(Nb、Ti)相)の形成を促進して、結晶粒界および結晶粒内での析出強化に寄与し、クリープ強度の向上に有用な元素である。なお、後述のTiもNbと同様の作用を有する。このため、NbおよびTiのうちの1種以上を含有させる。しかし、Nbの含有量が多量になると、金属間化合物(ラーベス相、Ni3Nb相およびNi3(Nb、Ti)相)の体積率が過剰となって、脆化が生じ、特にNbの含有量が2.5%以上になると、長時間時効後の靱性の低下が著しくなる。このため、Nbの含有量を2.5%未満(0%を含む)とした。Nb含有量の上限は、好ましくは2.0%であり、より好ましくは1.8%である。なお、Nbを含有させる場合、その含有量の下限は、0.2%とすることが好ましく、0.5%とすればより好ましい。また、1.1%とすればさらに一層好ましい。上記のNb含有量が0%とは、Nbを含有させない場合である。
Tiは、析出強化相となる金属間化合物(ラーベス相、Ni3Ti相およびNi3(Nb、Ti)相)を形成して、結晶粒界および結晶粒内での析出強化に寄与し、クリープ強度を向上させる元素である。なお、前述のNbもTiと同様の作用を有する。このため、NbおよびTiのうちの1種以上を含有させる。しかし、Tiの含有量が多量になると、金属間化合物(ラーベス相、Ni3Ti相およびNi3(Nb、Ti)相)の体積率が過剰となって、高温延性および/または熱間加工性を損なう。また、長時間時効後の靱性も低下する。このため、Tiの含有量を3.0%未満(0%を含む)とした。Ti含有量の上限は、好ましくは2.5%であり、より好ましくは2.2%である。なお、Tiを含有させる場合、その含有量の下限は、0.005%とすることが好ましく、0.5%とすればより好ましい。また、0.8%とすればさらに一層好ましい。上記のTi含有量が0%とは、Tiを含有させない場合である。
Alは、脱酸作用を有するが、多量に含まれると、組織安定性が低下する。そのため、上限を設けてAlの含有量を0.3%以下とした。なお、Alの含有量は、0.0005%以上とすることが好ましい。また、Alの含有量は、0.25%以下とすることが好ましく、0.20%以下とすればさらに好ましい。
Pは、不純物として合金中に不可避的に混入するが、過剰なPは溶接性および熱間加工性を害する。そのため、上限を設けて、Pの含有量を0.04%以下とした。Pの含有量は、0.03%以下とすることが好ましく、少なければ少ないほどよい。
Sも上記のPと同様に不純物として合金中に不可避的に混入するが、過剰なSは溶接性および熱間加工性を害する。そのため、上限を設けて、Sの含有量を0.01%以下とした。Sの含有量は、0.008%以下とすることが好ましく、少なければ少ないほどよい。
Nは、オーステナイト組織を安定化する作用を有し、通常の溶解法では不可避的に含まれる元素である。しかし、多量のNは、CとともにTiなどと未固溶で残る炭窒化物を形成して靱性を損なう。したがって、上限を設けて、Nの含有量を0.05%以下とした。なお、Nの含有量は、0.04%以下とすることが好ましい。
(a)のCoは、Niと同様オーステナイト組織を安定化させる元素で、オーステナイト組織の安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。このため、必要に応じてCoを含有させてもよい。しかしながら、Coの含有量が5%を超えると、コストの増加を招く。したがって、Coを含有させる場合には、その含有量を5%以下とした。Co含有量の上限は、好ましくは3.0%である。
Caは、Sを硫化物として固定し、熱間加工性を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてCaを含有させてもよい。しかしながら、Caの含有量が0.05%を超えると、靱性、延性および清浄性を損なう。したがって、Caを含有させる場合には、その含有量を0.05%以下とした。Ca含有量の上限は、好ましくは0.01%である。
Mgは、Sを硫化物として固定し、熱間加工性を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてMgを含有させてもよい。しかしながら、Mgの含有量が0.05%を超えると、靱性、延性および清浄性を損なう。したがって、Mgを含有させる場合には、その含有量を0.05%以下とした。Mg含有量の上限は、好ましくは0.01%である。
希土類元素は、Sを硫化物として固定し、熱間加工性を向上させる作用を有する。また、希土類元素は、無害で安定な酸化物を形成して、O(酸素)の好ましくない影響を小さくし、耐食性、クリープ強度およびクリープ延性を向上させる作用も有する。このため、必要に応じて希土類元素を含有させてもよい。しかしながら、希土類元素の含有量が0.2%を超えると、酸化物等の介在物が多くなり、熱間加工性および溶接性を損なうだけでなく、コストの上昇を招く。したがって、希土類元素を含有させる場合には、その含有量を0.2%以下とした。希土類元素含有量の上限は、好ましくは0.1%である。
Zrは、主として粒界強化に寄与し、クリープ強度を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてZrを含有させてもよい。しかしながら、Zrの含有量が0.1%を超えると、溶接性および熱間加工性を損なう。したがって、Zrを含有させる場合には、その含有量を0.1%以下とした。Zr含有量の上限は、好ましくは0.06%である。
Hfは、主として粒界強化に寄与し、クリープ強度を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてHfを含有させてもよい。しかしながら、Hfの含有量が0.2%を超えると、溶接性および熱間加工性を損なう。したがって、Hfを含有させる場合には、その含有量を0.2%以下とした。Hf含有量の上限は、好ましくは0.06%である。
Bは、粒界強化元素としてクリープ強度を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてBを含有させてもよい。しかしながら、Bの含有量が0.01%を超えると、溶接性を損なう。したがって、Bを含有させる場合には、その含有量を0.01%以下とした。B含有量の上限は、好ましくは0.005%である。
Vは、炭窒化物を形成して、高温強度およびクリープ強度を向上させる。このため、必要に応じてVを含有させてもよい。しかしながら、Vの含有量が1.5%を超えると、高温耐食性が低下し、さらに脆化相であるσ相の析出を促進する。したがって、Vを含有させる場合には、その含有量を1.5%以下とした。V含有量の上限は、好ましくは1.0%である。
Taは、Nb、Tiと同様に金属間化合物を形成する元素であり、高温強度およびクリープ強度を向上させる。このため、必要に応じてTaを含有させてもよい。しかしながら、Taの含有量が3%を超えると、金属間化合物(ラーベス相)の析出量が過剰となり、熱間加工性および靱性を損なう。したがって、Taを含有させる場合には、その含有量を3%以下とした。Ta含有量の上限は、好ましくは2%である。
Reは、主として固溶強化元素として高温強度およびクリープ強度を向上させる。このため、必要に応じてReを含有させてもよい。しかしながら、Reの含有量が3%を超えると、熱間加工性および靱性を損なう。したがって、Reを含有させる場合には、その含有量を3%以下とした。Re含有量の上限は、好ましくは2%である。
本発明のオーステナイト系耐熱合金は、
f1=(1/2)W+Mo・・・(1)
で表されるf1が1.0〜5.0でなければならない。
本発明のオーステナイト系耐熱合金は、
f2=(1/2)W+Mo+Nb+2Ti・・・(2)
で表されるf2が2.0〜8.0でなければならない。
本発明のオーステナイト系耐熱合金は、
f3=Nb+2Ti・・・(3)
で表されるf3が0.5〜5.0でなければならない。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.02%未満、Si:0.15〜2%、Mn:2%以下、Cr:20%以上28%未満、Ni:35%を超えて50%以下、W:2.0〜7.0%、Mo:2.5%未満(0%を含む)、Nb:2.5%未満(0%を含む)、Ti:3.0%未満(0%を含む)、Al:0.3%以下、P:0.04%以下、S:0.01%以下およびN:0.05%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、さらに、下記の(1)式で表されるf1が1.0〜5.0、下記の(2)式で表されるf2が2.0〜8.0および下記の(3)式で表されるf3が0.5〜5.0であることを特徴とする、オーステナイト系耐熱合金。
f1=(1/2)W+Mo・・・(1)
f2=(1/2)W+Mo+Nb+2Ti・・・(2)
f3=Nb+2Ti・・・(3)
上記の式における元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。 - Feの一部に代えて、質量%で、下記の(a)から(d)までに示される元素から選択される1種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載のオーステナイト系耐熱合金。
(a):Co:5%以下、
(b):Ca:0.05%以下、Mg:0.05%以下および希土類元素:0.2%以下、
(c):Zr:0.1%以下、Hf:0.2%以下およびB:0.01%以下、ならびに、
(d):V:1.5%以下、Ta:3%以下およびRe:3%以下。
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