JP5547789B2 - オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼に関する。
安定した電力供給の維持を目的に太陽光など再生可能エネルギーが注目されているが、世界的に見れば火力発電が主要な発電方法であることに変りはない。特に、石炭火力発電は豊富な資源・安価な原料コストを背景に新興国を中心に拡大すると考えられている。しかしながら、石炭火力発電は発電電力量当りのCO2排出量が大きいため、発電ボイラーの蒸気を高温・高圧化することによって発電効率の改善が行われている。このような状況の下、ボイラーの熱交換部に使用されるボイラーチューブ材料に要求される耐熱性は年々、益々厳しくなっている。
火力発電用ボイラーチューブには高温強度、耐酸化性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼が用いられている。特に、温度環境が高く、腐食性が厳しい部分にはSUS310に代表される25Cr系のステンレス鋼が使用されている。これらのボイラーチューブは500〜700℃の高温環境に晒されるだけでなく、鋼管内部を高圧の水蒸気が通るため優れたクリープ特性が必要となる。そのため、元素の添加による固溶強化だけでなく、様々な種類の析出強化を利用している。つまり、鋼材に含まれる析出元素を製造段階で一旦固溶させ、ボイラーチューブが晒される500〜700℃の温度で固溶していた元素が微細な析出物を形成することでクリープ特性を強化している。
このような析出強化はボイラーチューブのクリープ強度を向上させるものの、靭性の低下をもたらすという問題がある。靭性が低い場合には運転時・点検時に負荷される衝撃によってボイラーチューブに亀裂や割れが発生し易くなり、ボイラーが噴破する可能性が高まる。
従来から、靭性を高めるためにはステンレス鋼に含まれるSiやAl、S(硫黄)、O(酸素)を低減することが有効とされている。既存の火力発電用のボイラーチューブ材料では脱酸効果を得られる範囲でSi、Alを低減することによってσ相などの脆化相の形成を抑制し、MnやCa、Mgを添加することでSの影響を低減している(例えば、特許文献1、2参照)。
一方、25Cr−20Ni系などの耐熱ステンレス鋼に添加可能な元素としてTa(タンタル)がある。特許文献3〜7には、Taを含む、Ti、Nb、V、Mo、W、Reなどから選択的にこれを添加することで、炭素の固定化による耐食性の向上や熱間加工性の向上、高温強度の向上が図られる旨記載されている。
特開平7−278757号公報 特開平4−358043号公報 特開2004−156126号公報 特開2002−69591号公報 特開2006−291290号公報 国際公開第2009/044802号パンフレット 国際公開第2009/044796号パンフレット
特許文献1〜7に記載の技術によれば、高温環境(例えば、500〜700℃)に長期間晒された場合であっても、靭性をある程度高く維持することは可能である。しかしながら、前述したように、年々、益々厳しくなる耐熱性の要求を満たすには十分とは言えない状況になりつつある。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、高温環境に長期間晒された後でも優れた靭性を維持し得るオーステナイト系ステンレス鋼を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意研究開発した結果、オーステナイト系ステンレス鋼に特定の数値範囲でTaを含有させることによって、ボイラー等での使用環境、すなわち、高温環境に長期間晒される環境を模擬した時効熱処理後の靭性を優れたものとできることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、Ta:0.25〜0.8質量%、C:0.01〜0.15質量%、Si:0.1〜1.0質量%、Mn:0.1〜2.5質量%、P:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、S:0.005質量%以下(0質量%を含まない)、Ni:15〜25質量%、Cr:20〜30質量%、Nb:0.1〜0.8質量%、B:0.0005〜0.005質量%、およびN:0.10〜0.35質量%をそれぞれ含有し、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴としている。
前記構成によれば、特に、Taを特定の数値範囲で含有させているので、結晶粒界に析出する析出物の析出量を抑制することができる。その結果、優れた時効後靭性を発揮させることが可能となる。
本発明は、さらに、W:4質量%以下、Mo:4質量%以下、Cu:4質量%以下、V:0.2質量%以下、Ti:0.2質量%以下、Zr:0.2質量%以下、Hf:0.2質量%以下、希土類元素:0.15質量%以下、Ca:0.005質量%以下、およびMg:0.005質量%以下からなる群のうちのいずれか一つ以上を含有し、且つ前記V、前記Ti、前記Zr、前記Hfを含む場合は、これらの含有量の合計が0.4質量%以下とするのが好ましい。
前記構成によれば、含有させる元素に応じて、高温強度や耐酸化性を向上させることができる。
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、高温環境に長期間晒された後でも優れた靭性を維持することができる。
次に、本発明を実施するための形態(実施形態)について詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、Ta:0.25〜0.8質量%、C:0.01〜0.15質量%、Si:0.1〜1.0質量%、Mn:0.1〜2.5質量%、P:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、S:0.005質量%以下(0質量%を含まない)、Ni:15〜25質量%、Cr:20〜30質量%、Nb:0.1〜0.8質量%、B:0.0005〜0.005質量%、およびN:0.10〜0.35質量%をそれぞれ含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる。
以下、本実施形態を構成する各元素とその含有量について説明する。
[Ta:0.25〜0.8質量%]
析出物の形成には、結晶粒界への析出と、結晶粒内への析出とがあり、結晶粒界に形成される析出物が粒界を覆う状態になると靭性が低下することが従来から知られている。しかし、本発明ではTaを0.25〜0.8質量%含有させているので、結晶粒界に析出する析出物の析出量を抑制することができる。その結果、優れた時効後靭性を発揮させることが可能となる。かかる効果を奏するためには、Ta含有量を0.25〜0.8質量%とする必要がある。Ta含有量が0.25質量%未満になると前記効果が十分に奏されず、0.8質量%を超えるとTaが炭化物や窒化物として過剰に析出してしまい、靭性が低下するだけでなく低荷重負荷時のクリープ特性も低下してしまう。Taは、前記した効果を十分に得るため0.3質量%以上含有させることが特に好ましい。一方で、良好な靭性および高価な金属であるTaの添加に伴うコストの上昇を鑑みると0.6質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、NiとCrの含有量が25Cr−20Niオーステナイト系ステンレス鋼と同等の化学成分組成を有するものであるが、前記Ta以外の各元素の化学成分組成(C、Si、Mn、P、S、Ni、Cr、Nb、B、N)も適切に調整する必要がある。これらの成分による作用および範囲設定理由は下記の通りである。
[C:0.01〜0.15質量%]
Cは、高温の使用環境において炭化物を形成し、伝熱管として必要な高温強度とクリープ強度を向上させる作用を有する元素である。強化機構となる炭化物の析出量を確保するためにはCを0.01質量%以上含有させる必要がある。しかしながら、C含有量が過剰になって0.15質量%を超えると粗大な炭化物となり、更なる強化が得られない。C含有量は0.03質量%以上とするのが好ましく、0.05質量%以上とするのがより好ましい。また、C含有量は0.10質量%以下とするのが好ましく、0.07質量%以下とするのがより好ましい。
[Si:0.1〜1.0質量%]
Siは、溶鋼中で脱酸作用を有する元素である。また、微量の含有であっても、耐酸化性の向上に有効に作用する。これらの効果を発揮させるためには、Si含有量は0.1質量%以上とする必要がある。しかしながら、Si含有量が過剰になって1.0質量%を超えると、σ相の形成を招き、靭性の低下をもたらすことになる。Si含有量は0.2質量%以上とするのが好ましく、0.3質量%以上とするのがより好ましい。また、Si含有量は0.7質量%以下とするのが好ましく、0.5質量%以下とするのがより好ましい。
[Mn:0.1〜2.5質量%]
MnはSiと同様に、溶鋼中で脱酸作用を有する元素であり、またオーステナイトを安定化させる作用がある。これらの効果を発揮させるためには、Mn含有量は0.1質量%以上とする必要がある。しかしながら、Mn含有量が過剰になって2.5質量%を超えると、熱間加工性を阻害することになる。Mn含有量は0.5質量%以上とするのが好ましく、1.0質量%以上とするのがより好ましい。また、Mn含有量は2.0質量%以下とするのが好ましく、1.5質量%以下とするのがより好ましい。
[P:0.05質量%以下(0質量%を含まない)]
Pは不可避不純物である。P含有量が増加すると溶接性を損なうため、0.05質量%以下とする必要がある。P含有量は0.04質量%以下とするのが好ましく、0.03質量%以下に抑制するのがより好ましい。
[S:0.005質量%以下(0質量%を含まない)]
Sは不可避不純物である。S含有量が増加すると熱間加工性を劣化させるため、0.005質量%以下とする必要がある。S含有量は0.003質量%以下とすることが好ましく、0.001質量%以下にすることがより好ましい。
[Ni:15〜25質量%]
Niは、オーステナイトを安定化させる作用があり、オーステナイト相を維持するためには15質量%以上含有させる必要がある。しかしながら、Ni含有量が過剰になって25質量%を超えると、コストの増加をもたらすことになる。Ni含有量は17質量%以上とするのが好ましく、19質量%以上とするのがより好ましい。また、Ni含有量は23質量%以下とするのが好ましく、21質量%以下とするのがより好ましい。
[Cr:20〜30質量%]
Crは、ステンレス鋼としての耐食性を発現するために必須の元素である。優れた耐食性を発揮させるためには、Crは20質量%以上含有させる必要がある。しかしながら、Cr含有量が過剰になって30質量%を超えると、高温強度の低下を招くフェライト相が増加する。Cr含有量は22質量%以上とするのが好ましく、24質量%以上とするのがより好ましい。また、Cr含有量は28質量%以下とするのが好ましく、26質量%以下とするのがより好ましい。
[Nb:0.1〜0.8質量%]
Nbは、炭化物、窒化物または炭窒化物を析出させることで、高温強度の改善に有効な元素である。また、これらの析出物が結晶粒の粗大化を抑制し、Crの拡散を促進することで、副次的に耐食性向上の作用を発揮する。これらの効果を有効に発揮させるのに必要な析出量を確保するためには、Nbは0.1質量%以上含有させる必要がある。しかしながら、Nb含有量が0.8質量%を超えて過剰になると、析出物が粗大化し、靭性の低下を招くことになる。Nb含有量は0.15質量%以上とするのが好ましく、0.2質量%以上とするのがより好ましく、0.25質量%以上とするのがさらに好ましい。また、Nb含有量は0.5質量%以下とするのが好ましく、0.3質量%以下とするのがより好ましい。
[B:0.0005〜0.005質量%]
Bは、鋼中に固溶することで、主要な強化機構の一つであるM236型炭化物(Mは炭化物形成元素)の形成を促進させる作用がある。こうした効果を有効に発揮させるためには、B含有量は0.0005質量%以上とする必要がある。しかしながら、B含有量が過剰になると熱間加工性や溶接性の低下を招くため、0.005質量%以下とする必要がある。B含有量は0.001質量%以上とするのが好ましく、0.0015質量%以上とするのがより好ましい。また、B含有量は0.003質量%以下とするのが好ましく、0.0025質量%以下とするのがより好ましい。
[N:0.10〜0.35質量%]
Nは、鋼中に固溶することで固溶強化によって高温強度を向上させる作用があり、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼の高温強度を担う重要な元素の一つである。この効果を有効に発揮させるためには、N含有量は0.10質量%以上とする必要がある。しかしながら、N含有量が過剰になって0.35質量%を超えると、熱間加工性を阻害してしまう。N含有量は0.20質量%以上とするのが好ましく、0.23質量%以上とするのがより好ましい。また、N含有量は0.30質量%以下とするのが好ましく、0.27質量%以下とするのがより好ましい。
[残部:鉄および不可避不純物]
本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼に含有される元素は上記の通りであって、残部は鉄および不可避不純物となるが、スクラップ原料に由来するSn、Pb、Sb、As、Znなどの低融点不純物金属は、熱間加工時や高温環境での使用時に粒界の強度を低下させるため、熱間加工性や長期使用後の耐脆化割れを改善するためには低濃度に抑えることが望ましい。
以上、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼について説明した。本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼によれば、Taを特定の数値範囲で含有し、また、前記したTa以外の各元素も適切に調整している。そのため、後記する実施例の項目で具体的に説明するように、ボイラー等での使用環境、すなわち、高温環境に長期間晒される環境を模擬した時効熱処理後の靭性(靭性値)を優れたものとすることができる。従って、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、ボイラー等の伝熱管(ボイラーチューブ)材料として好適に用いることができる。すなわち、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、ボイラー等で長期間、高温環境に晒された後でも優れた靭性を維持するため、運転中および/または点検中に生じる衝撃にも耐えられることから、長期間に渡って信頼を維持することができるボイラーチューブ材料とすることができる。
本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、必要に応じてさらに、W:4質量%以下、Mo:4質量%以下、Cu:4質量%以下、V:0.2質量%以下、Ti:0.2質量%以下、Zr:0.2質量%以下、Hf:0.2質量%以下、希土類元素:0.15質量%以下、Ca:0.005質量%以下、およびMg:0.005質量%以下からなる群のうちのいずれか一つ以上を含有し、且つ前記V、前記Ti、前記Zr、前記Hfを含む場合は、これらの含有量の合計が0.4質量%以下とすることができる。このようにすると、含有させる元素に応じて、高温強度や耐酸化性を向上させることができる。
以下、本実施形態を構成する各元素とその含有量について説明する。
[W:4質量%以下、Mo:4質量%以下]
WおよびMoは、固溶強化によって高温強度を向上させる効果があり、必要によって含有させることで高温強度を上昇させることができる。しかしながら、W含有量が4質量%を超えて過剰になると粗大な金属間化合物を形成して高温延性の低下を招く。そのため、W含有量は4質量%以下(0質量%を含まない)とすることが好ましく、3質量%以下とするのがより好ましく、2質量%以下とするのがさらに好ましい。
また、Mo含有量が4質量%を超えて過剰になると熱間加工性を阻害する。そのため、Mo含有量は4質量%以下(0質量%を含まない)とすることが好ましく、3質量%以下とするのがより好ましく、2質量%以下とするのがさらに好ましい。
なお、前記したような効果を有効に発揮させるには、W含有量は0.1質量%以上とするのが好ましく、0.5質量%以上とするのがより好ましい。同様に、Mo含有量は0.1質量%以上とするのが好ましく、0.5質量%以上とするのがより好ましい。但し、これらの元素は含有させることによって前記したような作用を発揮するが、それと同時にコスト増を招くため、必要な強化量と許容されるコストに応じて含有量を設定するのが好ましい。
[Cu:4質量%以下]
Cuは、鋼中に整合析出物(母材と原子配列が連続的であるような析出物)を形成し、高温クリープ強度を著しく向上させる元素であり、ステンレス鋼における主要な強化機構の一つである。しかしながら、Cu含有量が過剰になって4質量%を超えてもその効果は飽和してしまう。そのため、Cu含有量は4質量%以下(0質量%を含まない)とするのが好ましく、3.7質量%以下とするのがより好ましく、3.5質量%以下とするのがさらに好ましい。なお、前記した効果を発揮させるためには、Cu含有量を0.2質量%以上とするのが好ましく、2質量%以上とするのがより好ましく、2.5質量%以上とするのがさらに好ましい。
[V:0.2質量%以下、Ti:0.2質量%以下、Zr:0.2質量%以下、Hf:0.2質量%以下]
V、Ti、ZrおよびHfは、Nbと同様な作用を発揮するものの、複合添加することで析出物が更に安定化して長期間の高温強度の維持にも有効である。しかしながら、これらの含有量が過剰になると鋼材中に固溶させることができず、介在物の増加による靭性の低下を招くことになる。そのため、V、Ti、ZrおよびHfのそれぞれの含有量は0.2質量%以下(0質量%を含まない)とするのが好ましく、0.15質量%以下とするのがより好ましく、0.1質量%以下とするのがさらに好ましい。なお、前記した効果を有効に発揮させるためには、V、Ti、ZrおよびHfのそれぞれの含有量は0.02質量%以上とするのが好ましく、0.04質量%以上とするのがより好ましく、0.06質量%以上とするのがさらに好ましい。但し、これらの元素を複数含む場合、含有量の合計が0.4質量%を超えて含有すると前述の通り未固溶の介在物が増加してしまう。そのため、これらの元素を複数含む場合は、これらの元素の含有量の合計が0.4質量%以下となるようにするのが好ましい。
[希土類元素:0.15質量%以下]
本発明で用いることのできる希土類元素としては、Sc、Y、La、Ce、Ndに代表されるランタノイド元素17種が挙げられる。
希土類元素は、ステンレス鋼の耐酸化性を向上させる作用があるため、高温高圧蒸気が流れる伝熱管内面の酸化スケールの生成を抑制することができる。希土類元素が0.15質量%を超えて含有されると高温環境で粒界の一部が溶融して熱間加工性を阻害する。そのため、希土類元素の含有量は0.15質量%以下とすることが好ましく、0.1質量%以下とするのがより好ましく、0.05質量%以下とするのがさらに好ましい。なお、前記したような効果を有効に発揮させるため、希土類元素の含有量は0.01質量%以上とするのが好ましく、0.015質量%以上とするのがより好ましく、0.02質量%以上とするのがさらに好ましい。かかるオーステナイト系ステンレス鋼とすることによって、靭性の優れたボイラー用伝熱管(ボイラーチューブ)を提供することができる。なお、希土類元素は前記した各元素を個々に添加して含有させることもできるが、これらの元素を含む所謂ミッシュメタルを添加することによって前記した各元素を含有させることもできる。なお、ミッシュメタルを用いると前記した各元素の分離コストが削減できるので、採算性を向上させることができる。
[Ca:0.005質量%以下、Mg:0.005質量%以下]
CaおよびMgは、脱硫・脱酸元素として働く。しかしながら、これらの元素の含有量が過剰になると、溶解作業中に溶鋼の突沸が生じるなどの作業上の制約を受ける。そのため、CaおよびMgの含有量はいずれも0.005質量%以下(0質量%を含まない)とするのが好ましく、0.002質量%以下とするのがより好ましい。なお、前記した効果を有効に発揮させるため、CaおよびMgの含有量はいずれも0.0002質量%以上とするのが好ましく、0.0005質量%以上とするのがより好ましい。
[本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼の製造]
前記した本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、例えば、一次精錬において、それぞれ前記した化学成分組成となるように各元素を添加して溶解し、その後は常法に従って二次精錬等の製造プロセスを順次行うことにより、製造することができる。
次に、本発明の所望の効果を奏する実施例を示して本発明について具体的に説明する。
下記表1の試験No.1〜19に示す化学成分組成からなる各種鋼材を溶解し、真空溶解炉(VIF)にて溶製した20kgインゴットを幅120mm×厚さ20mmの寸法に熱間鍛造加工し、1250℃で熱処理を施した後、冷間圧延によって厚さ13mmまで加工した。その後、1220℃で5分の熱処理を再度実施して、これを母材とした。
なお、下記表1の試験No.1〜19に示す鋼材のうち、試験No.1〜12は本発明で規定する化学成分組成を満足する鋼材(本発明鋼)である。また、試験No.13〜19は本発明で規定する化学成分組成を外れる鋼材(比較鋼)である。そして、このうち試験No.19は既存鋼である「火SUS310J1HTB」相当鋼である。この「火SUS310J1HTB」相当鋼(試験No.19)は、25Cr−20Niオーステナイト系ステンレス鋼に属し、ボイラー伝熱管(ボイラーチューブ)として使用実績のある鋼種である。なお、表1において斜字体および下線を付して示している数値は、本発明で規定する化学成分組成を外れていることを示している。また、表1中の「−」は、該当する元素を添加していないことを示す。希土類元素の添加原料として、Ce、La、Ndを含むミッシュメタルを用いた。
Figure 0005547789
これらの母材から機械加工によって40×60mmのサンプルを作製し、大気炉を用いて700℃で300hrの時効熱処理を行った。時効熱処理後、水冷した後にサンプルを取り出し、JIS Z 2242のノッチ深さ2mmのVノッチ試験片をN数が2となるよう1つの鋼種につき、2本のシャルピー衝撃試験片を作製した。シャルピー衝撃試験はJIS Z 2242に準拠し、0℃で試験を行った。
シャルピー衝撃試験の測定結果(靭性値(シャルピー衝撃値[J/cm2]))を下記表2に示す。
Figure 0005547789
表2に示す測定結果から、次のように考察できる。
本発明で規定する化学成分組成を満足する鋼(本発明鋼:試験No.1〜12)は、既存鋼(試験No.19)や、本発明で規定する化学成分組成から外れた比較鋼(試験No.13〜18)に比べて靭性値が優れており、時効処理後の靭性低下が抑制されていることが確認された。従って、本発明鋼は、ボイラー等の伝熱管(ボイラーチューブ)材料として好適に用い得ることが強く示唆された。すなわち、本発明鋼は、ボイラー等で長期間、高温環境に晒された後でも優れた靭性を維持するため、運転中および/または点検中に生じる衝撃にも耐えられることから、長期間に渡って信頼を維持することができるボイラーチューブ材料が得られることが強く示唆された。
なお、試験No.17と試験No.18は、それぞれSiとS(硫黄)が本発明で規定する化学成分組成を外れた(上限値を超えた)場合である。従来知見にあるようにSiやSが極めて高い鋼材については靭性値が低くなることが確認された。つまり、このような鋼材ではTaを特定量含有させたとしても、十分に高い靭性値を得ることはできないことが確認された。つまり、試験No.1〜12のように、SiとSは、本発明で規定している化学成分組成を満足するように制御しつつ、Taを本発明で規定している特定量含有させることによって、靭性の改善が得られることが確認された。
以上、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼について、発明を実施するための形態および実施例により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。

Claims (2)

  1. Ta:0.25〜0.8質量%、
    C:0.01〜0.15質量%、
    Si:0.1〜1.0質量%、
    Mn:0.1〜2.5質量%、
    P:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、
    S:0.005質量%以下(0質量%を含まない)、
    Ni:15〜25質量%、
    Cr:20〜30質量%、
    Nb:0.1〜0.8質量%、
    B:0.0005〜0.005質量%、および
    N:0.10〜0.35質量%をそれぞれ含有し、
    残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
  2. さらに、
    W:4質量%以下、
    Mo:4質量%以下、
    Cu:4質量%以下、
    V:0.2質量%以下、
    Ti:0.2質量%以下、
    Zr:0.2質量%以下、
    Hf:0.2質量%以下、
    希土類元素:0.15質量%以下、
    Ca:0.005質量%以下、および
    Mg:0.005質量%以下からなる群のうちのいずれか一つ以上を含有し、且つ
    前記V、前記Ti、前記Zr、前記Hfを含む場合は、これらの含有量の合計が0.4質量%以下
    であることを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
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