JPH08120392A - 高効率廃棄物発電ボイラ過熱器管用オーステナイト系耐食合金 - Google Patents

高効率廃棄物発電ボイラ過熱器管用オーステナイト系耐食合金

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JPH08120392A
JPH08120392A JP28296794A JP28296794A JPH08120392A JP H08120392 A JPH08120392 A JP H08120392A JP 28296794 A JP28296794 A JP 28296794A JP 28296794 A JP28296794 A JP 28296794A JP H08120392 A JPH08120392 A JP H08120392A
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corrosion
alloy
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resistant alloy
corrosion resistant
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Nobuo Otsuka
伸夫 大塚
Shigeru Tokura
茂 戸倉
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 蒸気温度が450〜550℃と高い高効率な
廃棄物発電ボイラの過熱器管に使用するオーステナイト
系耐食合金を提供する。 【構成】 重量%で、C:0.03%以下、Si:0.4%
以下、Mn:2%以下、Cr:28〜32%、Ni:2
5〜35%、Mo:0.5〜1.5%、N:0.15〜0.35
%を含有し、更にB:0.001〜0.01%、Zr:0.0
1〜0.3%の1種または2種を含有し、残部がFeおよ
び不可避的不純物からなる。高効率廃棄物発電ボイラに
特有な高濃度のClが共存する高温腐食環境下での粒界
腐食が、不純物レベルの量のB,Zrにより抑制され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、都市ごみと称される一
般廃棄物を焼却して発電を行う廃棄物発電ボイラ、その
中でも特に、蒸気温度が400〜500℃と高い高効率
廃棄物発電ボイラの過熱器管に使用されるオーステナイ
ト系耐食合金に関する。なお、本明細書では%は特にこ
とわりのない限り重量%を意味する。
【0002】
【従来の技術】近年、都市ごみを有効活用するために、
そのごみ焼却に伴って発生するエネルギーを電力の形で
取り出す、いわゆる「ごみ発電」の試みが盛んになって
いる。この「ごみ発電」では、廃棄物発電ボイラで発生
させた蒸気の温度と圧力が、発電効率を決定する大きな
要因となり、特に、蒸気の温度を高くすることが発電効
率の大幅な改善につながる。
【0003】しかし、特に我が国では、都市ごみの高カ
ロリー化およびプラスチック分の増加等に伴い、廃棄物
発電ボイラ内で腐食性の高い塩素系ガスが高濃度に発生
し、更に塩化物系の灰分が廃棄物発電ボイラの過熱器管
に付着する。そのため、高温では過熱器管の腐食が著し
く、これにより蒸気温度が制限されていた。
【0004】すなわち、これまでの我が国の廃棄物発電
ボイラの場合、過熱器管には炭素鋼が使用されている
が、その過熱器管の蒸気温度は腐食の問題から最高でも
250〜300℃程度に留まっている。これ以上の温度
でボイラを設計すると、過熱器管で厳しい高温腐食が生
じ、プラントの安定操業に支障をきたすためである。
【0005】しかし、高効率な廃棄物発電を行うために
は、前述したように蒸気温度を高めることが必要であ
り、具体的には400〜500℃が望ましいとされてい
る。そのため、高温において塩素ガスおよび付着灰によ
る高温腐食に対して抵抗力のある過熱器管用材料が必要
になる。
【0006】このような要求に応える材料としては例え
ばオーステナイト系の耐食合金が有望であり、既に、ご
み焼却発熱ボイラの腐食環境で耐食性に優れる幾つかの
オーステナイト系耐食合金が開発されている。
【0007】例えば特開平4−6247号公報(文献
1)および特開平4−6248号公報(文献2)には、
Cr塩化物の揮発を防ぐためCr量を比較的低めとし、
全面腐食に対する耐食性は主としてSiを高めることで
確保したごみ焼却炉ボイラ用鋼が開示されている。
【0008】特開平4−350149号公報(文献3)
には、高濃度の溶融塩化物が付着する環境下で応力腐食
割れ感受性を低めるため、Ni量との兼ね合いでMo量
を調整した高Cr高Ni合金が示されている。
【0009】特開平5−9659号公報(文献4)に
は、Ni,AlおよびSiにより耐高温腐食性を向上さ
せ、同時に優れたクリープ破断強度および熱間加工性を
有するオーステナイト系ステンレス鋼が開示されてい
る。
【0010】特開平5−59497号公報(文献5)に
は、硫化物と塩化物の混合塩への溶解度が非常に少ない
酸化物被膜を表層において安定に形成するためAl,S
iを添加し、加工性、靱性の点から完全なオーステナイ
ト単相組織を得るためCr,Al,Si,Ni,Mn,
C,N量を調整した耐高温腐食材料が示されている。
【0011】特開平5−59475号公報(文献6)に
は、Al,Si,希土類金属を添加し、(Cr+Fe)
含有量とNi含有量の比を所定比に調整したNi基合金
が開示されている。
【0012】特開平5−70891号公報(文献7)に
は、ソーダ回収ボイラ用ではあるが、ごみ焼却ボイラに
も適用し得る材料として、燃焼ガスあるいは燃焼灰に含
まれるC成分によって生じる浸炭現象を伴う腐食に対す
る抵抗性に優れた高Cr,高Niの高温耐食合金が示さ
れており、特開平5−70892号公報(文献8)にも
文献7と同様の趣旨からCrとNiを高めた高温耐食合
金が示されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】これらのオーステナイ
ト系耐食合金は、それぞれの試験に示された高温腐食環
境下で、その耐食性、なかでも全面腐食に対する抵抗性
に優れる合金である。しかしながら、ごみ焼却廃熱ボイ
ラ管の高温腐食環境では、文献3にも示されているよう
に、オーステナイト系耐食合金の結晶粒界が付着灰中の
溶融塩化物により選択的に腐食損傷を受ける、いわゆる
粒界腐食が問題になる。高効率廃棄物発電ボイラの過熱
器管の腐食温度は蒸気温度よりも50℃程度高い450
〜550℃程度になるが、この温度域での粒界腐食まで
検討して開発された合金は、わずかに文献3,4,7,
8に示される4種類にすぎない。
【0014】しかし、これらの合金では、開発の際に想
定された高温腐食環境に大きな問題点がある。すなわ
ち、高効率廃棄物発電ボイラの過熱器管の場合、その管
表面に堆積した付着灰の管側部分ではClが20%以上
に濃化する可能性が危惧されるが、文献3,4,7,8
に示された合金ではClの濃化を高々18%程度までし
か想定していない。そのため、高効率廃棄物発電ボイラ
に特有な高濃度Clの溶融塩化物を伴う高温腐食環境下
では、これらの合金ならびにこれまで知られていた他の
オーステナイト系耐食合金は、たとえ全面腐食に対する
抵抗性に優れていても、粒界腐食が生じてしまい、管材
の損傷深さという点で大きな問題を有していた。
【0015】本発明の目的は、20%以上の高濃度Cl
を伴う450〜550℃の高温腐食環境下で優れた耐全
面腐食性および耐粒界腐食性を示す高効率廃棄物発電ボ
イラ過熱器管用オーステナイト系耐熱合金を提供するこ
とにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】高効率廃棄物発電ボイラ
の過熱器管を想定した高濃度Clの高温環境下における
粒界腐食を抑制する手段として、本発明者らは、文献3
で提案されているようにMoを添加する方法、C含有量
をできるだけ低くし、場合によりNb,Ti,Zr,V
などの炭化物形成元素を添加する方法、さらには文献
7,8に開示されているようにNを添加する方法などを
種々検討した。
【0017】しかしながら、高効率廃棄物発電ボイラ、
すなわち450〜550℃で高濃度Clの溶融塩化物が
付着するような高温腐食環境下では、いずれの方法も粒
界腐食の発生を避けることができず、既に述べた公知の
技術だけで粒界腐食を完全に抑制することは不可能との
結論に達した。
【0018】そこで新たな視点から種々の検討を加えた
結果、このような苛酷な腐食環境下で生じるオーステナ
イト系合金の粒界腐食については、これまでに明らかに
された粒界腐食機構だけでは完全に説明できない特殊な
腐食が起っていることが判明した。
【0019】すなわち従来の粒界腐食機構では、文献7
にも示されているように、結晶粒界に高温環境下で析出
するCr236 等の炭化物により、粒界近傍にCr欠乏
層が形成され、粒界腐食を促進するとの理解がなされて
いた。しかし、本発明者らが種々検討した結果による
と、高効率廃棄物発電ボイラのような苛酷な高温腐食環
境下では、結晶粒界近傍にCr欠乏層が形成されていな
くても粒界腐食が発生することが判明した。
【0020】そこで更に検討を続けた結果、Cr炭化物
が析出していないこのような「クリーン」な結晶粒界上
に生じる粒界腐食には、結晶粒界に偏析する不純物元素
が微妙に影響し、結晶粒界に特定の不純物元素を偏析さ
せることにより、その特殊な粒界腐食が抑制されるとの
知見を得ることができた。
【0021】すなわち、その特定の不純物元素とはB,
Zrである。不純物レベルの量のB,Zrを合金に添加
すると、これらの合金元素は通常の製品熱処理で結晶粒
界に容易に偏析し、「クリーン」な結晶粒界を有する合
金での粒界腐食を抑制し、その結果として高温環境下で
の溶融塩化物による粒界腐食を著しく抑制することがで
きる。
【0022】本発明はこのような新しい知見に基づくも
ので、重量%でC:0.03%以下、Si:0.4%以下、
Mn:2%以下、Cr:28〜32%、Ni:25〜3
5%、Mo:0.5〜1.5%、N:0.15〜0.35%を含
有し、更にB:0.001〜0.01%、Zr:0.01〜0.
3%の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可
避的不純物からなる高効率廃棄物発電ボイラ過熱器管用
オーステナイト系耐食合金を要旨とする。
【0023】
【作用】本発明の合金は、その化学組成の総合的な効果
として、蒸気温度が400〜500℃と高い高効率廃棄
物発電ボイラの過熱器管に問題なく使用できる優れた性
質をもつに至る。その化学組成を選定した基礎となる主
要な根拠をあげれば次の通りである。
【0024】C:Cは高温で使用中に鋼中のCrと結合
し、粒界腐食に塊状のCr炭化物として析出する。塊状
のCr炭化物が析出すると高温強度が劣化したり、付着
灰中の溶融塩化物と反応して粒界腐食を発生したりす
る。そのためCの含有量はできるだけ低くすることが望
ましく、0.03%が許容上限値である。
【0025】Si:Siは脱酸剤としてある程度の量の
添加が必要であるが、高温加熱時に粒界へのCr炭化物
の析出を促進させる合金元素でもあることから、Si量
を低めることにより高温腐食環境下での耐粒界腐食性を
向上させることができる。またオーステナイト系の高C
r合金ではSi量を低めることで、加熱脆化感受性を低
めることもできる。そのため、Si量はできるだけ低く
することが望ましく、0.4%が許容上限値である。
【0026】Mn:Mnはオーステナイト形成元素であ
るとともに脱酸剤として添加される。しかし、その含有
量が2%を超えると熱間加工性を劣化させることから、
その含有量の上限を2%とする。
【0027】Cr:Crは高温強度ならびに高温環境に
おける耐食性、とくに硫酸塩灰による全面腐食に対する
耐食性を向上させる優れた効果を示す。この効果は28
%以上で顕著となることから含有量の下限を28%とす
る。しかしながら32%を超えて含有すると、高温加熱
中に脆いα−Cr相が析出するようになり、合金の靱性
が著しく劣化することから、その上限を32%とする。
【0028】Ni:Niはオーステナイト形成元素であ
り、高温強度の確保や高温での耐食性、とくに塩化物灰
による全面腐食および粒界腐食に対する耐食性を向上さ
せる優れた効果を有する。しかし、Niは高価な合金元
素であることから、材料コストと上記の効果とのバラン
スを考慮してその含有量の上限を35%とした。一方N
i含有量が25%よりも低くなると塩化物灰に対する耐
食性が急激に低下するとともに、Crが28〜32%の
合金ではオーステナイト組織が不安定となることから、
その含有量の下限を25%とする。
【0029】Mo:Moは粒界腐食を抑制する作用を有
することから添加される。その効果は0.5%以上で認め
られるが、1.5%を超えて添加されると加熱による脆化
が著しくなることからMoの含有量は0.5〜1.5%が適
正範囲である。
【0030】N:Nはオーステナイト形成元素であるこ
とから、オーステナイト組織を安定させるため、高価な
Niのかわりに添加する。また、耐粒界腐食性を向上さ
せ、高温強度の向上にも有効な合金元素である。オース
テナイト組織を得ることおよび高温強度の確保の観点か
ら0.15%以上のNが必要である。Nはガス成分である
ため、固溶しうる限定によってその上限が決まる。Cr
とNiが本発明鋼の範囲内では、その上限は0.35%で
ある。従ってNの含有量は0.15〜0.35%とする。
【0031】B,Zr:BとZrはオーステナイト組織
の粒界腐食に偏析し、高温強度を高めることが知られて
いるが、本発明者らによって明らかにされたように、高
効率廃棄物発電ボイラの高温腐食環境に特有なCr炭化
物の析出を伴わない「クリーン」な結晶粒界上に生じる
粒界腐食を抑制する作用も有し、Cr炭化物の析出を伴
う粒界腐食に対する既存の対策と合わせることにより、
その腐食環境下での溶解塩化物による粒界腐食に対する
合金の抵抗性を著しく高めることができる。そして、そ
の作用はBにおいては0.001%以上、Zrでは0.01
%以上の添加で認められるようになる。しかしBの場合
0.01%を超える添加では熱間加工性が劣化し、Zrに
おいては0.3%を超えると耐粒界腐食性向上効果が飽和
し、コストをいたずらに高めることになる。そのためB
の含有量は0.001〜0.01%、Zrの含有量は0.01
〜0.3%とする。
【0032】なお熱間加工性をさらに改善するため、C
a,Mgの1種または2種を合計で0.01%まで添加す
ることができる。また脱酸をすみやかに行う目的から必
要に応じてAlを0.1%を上限して添加することができ
る。
【0033】本発明の合金は例えば電気炉で溶製し、V
ODまたはAODで精練したのちビレットとし、このビ
レットを素材として熱間押出法で製管して素管を得、こ
の素管を冷間抽伸により所定の寸法の管とする。最終の
溶体化熱処理は1100〜1150℃に加熱したのち急
冷する熱処理が望ましい。
【0034】
【実施例】以下に本発明の実施例を示し、比較例および
従来例と対比することにより、本発明の効果を明らかに
する。
【0035】実施例、比較例および従来例として用いた
合金の化学成分を表1および表2に示す。表中の1〜1
1は本発明合金、12〜25は比較合金、26はJIS
G3463で規格化されているSUS304TB(従
来合金)、27はASTMのB163 NO8825で
規格化されている825合金(従来合金)である。比較
合金のうち、合金22は文献2、合金23は文献4、合
金24は文献6、合金25は文献7にそれぞれ示された
合金に相当する。
【0036】本発明の合金はいずれもB,Zrの1種ま
たは2種を含有する。それに対し比較合金12〜25は
それぞれ次の点が本発明範囲外である。
【0037】合金12はB,Zrを含んでいない。合金
13,14はB,Zrをそれぞれ含むが、それぞれの量
が本発明範囲に達しない。合金15,16はB,Zrを
含まないことに加え、C量が低くMo量がそれぞれ3.0
1%、4.98%と高い。合金17はB,Zrを含むもの
のNを含まない。合金18はB含むもののN量が低い。
合金19はZrを含まない上にNi量およびCr量が低
い。合金20はZrを含むもののNi量およびCr量が
低い。合金21はB,Zrを含まない上にCr量が34.
62%と高い。合金22はB,Zrを含まない上にCr
量が低くSi量が4.73%と高い。合金23はBを所定
量含有するもののCおよびSiが多くCrが少なくAl
を3.10%と多く含む。合金24はB,Zrを含まない
上にSi,Ni,Moが多い。合金25はB,Zrを含
まぬ上にCr量が25.66%と低い。
【0038】表1中および表2中の1〜25の成分を有
する25種の合金を真空溶解炉で各30kg溶製し、イ
ンゴットを製作した。各インゴットを外削後1200℃
に5時間加熱し、1200から1050℃の温度範囲で
熱間鍛造を行い、厚み20mm,幅100mmのビレッ
トを製作した。ビレットはいったん1200℃で2時間
加熱による軟化焼鈍を行ったのち、冷間圧延により厚み
14mmの冷延板とした。溶体化熱処理は冷延板を11
50℃で1時間加熱後水冷する方法で行った。これらの
溶体化した板の肉厚中央部より、厚み3mm、幅15m
m、長さ25mmの腐食試験片を切り出し、次の高温腐
食試験に供した。また従来合金26,27は、市販の管
材の肉厚中央部から上記と同じ寸法の試験片を切り出
し、試験に供した。
【0039】高温腐食試験は、試験片表裏全表面に過熱
器管表面に付着する腐食性付着灰を模擬した合成灰(4
0.1%NaCl−29.9%K2SO4−20%CaSO4 −10%PbO,重量
%)を試験片単位表面積あたり40mg/cm2 塗布
後、排ガスを模擬した組成の腐食性ガス(1000ppmHCl−
50ppmSO2 −10%O2−10%CO2 −20%H2O −bal.N2, 体
積%)を通気させた試験炉中(550℃)で50時間加
熱する方法により行った。この合成灰のCl濃度は24.
3%に相当する。
【0040】前述したように、本腐食環境におけるオー
ステナイト系合金の高温腐食は、全面腐食と粒界腐食と
に大別される。腐食機構の異なる腐食をそれぞれ別個に
評価すべく、全面腐食は脱スケール後の腐食減量で、粒
界腐食は試験後の試験片横断面を100倍および500
倍の光学顕微鏡で観察し粒界侵食深さの最大値を測定す
ることで行った。測定結果を表3に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】全面腐食量(腐食減量)は合金のCr量と
Ni量に依存する。本発明の合金では腐食減量が9.1〜
11.2mg/cm2 と少なかったのに対し、CrとNi
量が少ない比較合金、例えば合金19では30.9mg/
cm2 、合金20では26.2mg/cm2 と大きな値と
なった。
【0045】粒界腐食については、B,Zrの1種また
は2種を含有する本発明の合金では粒界腐食がまったく
発生していないのに対し、これらの合金元素を含まぬ合
金、すなわち12,15,16,19,21,22,2
4〜27は100μmを超える大きな粒界腐食が発生し
た。合金13,14はB,Zrをそれぞれ含むが、それ
ぞれの量が少ないため、やはり大きな粒界腐食を生じ
た。合金17,18はBをそれぞれ0.004,0.005
%含み、合金17は更にZrを0.03%含むが、いずれ
もNを所定量含まぬため、粒界腐食が発生した。合金2
0はZrを0.06%含むが、Ni,Crが少ないため前
述したように全面腐食が著しく、粒界腐食も発生した。
合金23はBを0.004%含有するが、Alを3.01%
含むため大きな粒界腐食が発生した。
【0046】また、Larson-Miller パラメーター〔Tx
(20+log t ),Tは温度K,tは時間h〕により5
47℃で100,000時間加熱した条件に相当する60
0℃で3000時間加熱時効した後の0℃シャルピー衝
撃試験(試験片JIS 4号)によると、本発明の合金
はその衝撃値が100J/cm2 以上であり、加熱脆化
に対し優れた組織安定性を有することが確認できた。反
面Mo量の高い合金15,16は0℃シャルピー衝撃値
が50J/cm2 以下に低下し、1.5%を超えるMo量
の合金は加熱脆化しやすい材料であることがわかる。C
rが34.62%と高い合金21は加熱中に極めて脆いα
−Cr相が析出するため、時効後の0℃シャルピー衝撃
が10J/cm2 以下に著しく低下した。
【0047】更に、本発明の合金は高温強度、クリープ
破断強度も良好である。例えば合金2の550℃におけ
る高温強度は引張強度で561MPaあり、SUS30
4TBの450MPaよりも高い値を有する。また、そ
の合金2のクリープ破断強度は600℃ではSUS30
4HTBなみの高い強度を有する。
【0048】本発明の合金の熱間加工性については、1
275℃以下の温度域で十分な延性があるため、熱間押
出法によりパイプ形状に容易に加工できることも確認し
た。また本発明の合金からなる管は、過熱器管としての
施工性、たとえば冷間・熱間曲げ加工性や溶接性も、既
存のボイラチューブ材、例えばSUS304TB,SU
S347HTBなどと同等の性能を有する。
【0049】
【発明の効果】以上に説明した通り、本発明の高効率廃
棄物発電ボイラ過熱器管用オーステナイト系耐食合金
は、その過熱器管に特有な極めて苛酷な高温腐食環境下
で、優れた耐全面腐食性と耐粒界腐食性を示す。しか
も、熱間押出法により容易に製管でき、また過熱器管と
して十分な高温強度と時効脆化に対する優れた抵抗性を
有する。更に、施工性(加工性、溶接性)も従来のボイ
ラチューブ材なみと良好である。
【0050】従って、本発明の合金は、高効率廃棄物発
電ボイラの実用化に寄与し、これにより「ごみ発電」に
おける発電効率を飛躍的に高め、都市ごみのもつエネル
ギーを従来以上に効率よく電気エネルギーとして取り出
す効果を奏する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 F23G 5/46 Z

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%でC:0.03%以下、Si:0.4
    %以下、Mn:2%以下、Cr:28〜32%、Ni:
    25〜35%、Mo:0.5〜1.5%、N:0.15〜0.3
    5%を含有し、更にB:0.001〜0.01%、Zr:0.
    01〜0.3%の1種または2種を含有し、残部がFeお
    よび不可避的不純物からなる高効率廃棄物発電ボイラ過
    熱器管用オーステナイト系耐食合金。
JP28296794A 1994-10-21 1994-10-21 高効率廃棄物発電ボイラ過熱器管用オーステナイト系耐食合金 Pending JPH08120392A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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