JP2016029213A - ステンレス鋼およびステンレス鋼管 - Google Patents

ステンレス鋼およびステンレス鋼管 Download PDF

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Abstract

【課題】耐食性確保には有利であるが高価なMoやNiの低減を前提に、これらの元素を低減させても優れた耐廃棄物灰腐食性を発揮するステンレス鋼を提供する。【解決手段】成分組成が、質量%で、C:0%超0.030%以下、Si:0%超2.0%以下、Mn:0%超2.0%以下、P:0%超0.045%以下、S:0%超0.03%以下、Cr:22〜27%、Ni:17〜21%、O:0%超0.02%以下、Al:0.001〜0.05%、Mo:0%以上1.0%以下、およびN:0.06〜0.3%を満たし、残部が鉄および不可避不純物であり、かつ下記式(1)を満たすことを特徴とするステンレス鋼。Cr+3Si+70N−400C≧24.0・・・(1)式(1)において、Cr、Si、N、Cは、質量%での各元素の鋼中含有量を示す。【選択図】図1

Description

本発明は、ステンレス鋼およびステンレス鋼管に関する。特には、廃棄物の焼却時に発生する灰や腐食性ガスが存在する環境下での耐腐食性に優れるステンレス鋼、および該ステンレス鋼を用いて得られるステンレス鋼管に関する。以下では、廃棄物の焼却時に発生する灰や腐食性ガスに対して腐食が生じにくい特性を「耐廃棄物灰腐食性」という。
都市ごみや産業廃棄物を燃焼させる設備では、高温でプラスチック等が焼却されるため、腐食性の焼却灰や腐食性ガスが発生する非常に過酷な腐食環境となる。この腐食環境にさらされる廃棄物ボイラー、バイオマスボイラー等の例えば過熱器管や再熱器管等には、一般にステンレス鋼が用いられている。ステンレス鋼は、高温で酸化されると表面にCr主体の酸化スケールが生成し、これが保護皮膜として作用することにより、高温で優れた耐食性を発揮する。しかしながら、NaClやKClが存在する環境下では、上記Cr主体の酸化スケールが腐食して保護皮膜が破壊され、酸素や硫黄、塩素が母相内部に拡散し、母相内部に分厚い酸化物や硫化物、塩化物が生成して腐食が進行しやすくなる。また塩素系ガスが存在する環境下においても、上記Cr主体の酸化スケールがオキシクロリネーション反応により揮発性の高いCrO2Cl2となり、前記酸化スケールによる保護性が低下して分厚いスケールが生成し、腐食が進行しやすくなる。
上記問題に対する対応策として、これまでにいくつかの技術が提案されている。例えば特許文献1には、Moを多量に添加することで耐廃棄物灰腐食性を向上させる技術が提案されている。また特許文献2には、Niを22〜25%含有させた耐高温腐食用鋼が示されている。しかしNiは、レアメタルに分類される貴重で且つ高価な元素であり、またMoも非常に高価な元素であるため、これらの多用はコスト高を招く。近年では、コストをより抑制したステンレス鋼が求められている。例えば以下に示す通り、CrやFe等の含有量の比率を規定することによって耐廃棄物灰腐食性を高めた技術も提案されている。
例えば特許文献3には、塩化物を含む溶融塩中において優れた耐食性を有するFe−Cr−Ni系合金鋼として、C:0.04%以下、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.05〜1.5%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Cr:18%を越え30%未満、Ni:10%を越え35%未満、Ca:0.0005〜0.005%を含有し、Crの含有量とFeの含有量との比Cr/Feが0.33を超え0.7未満、Niの含有量とFeの含有量との比Ni/Feが0.33を超え1.0未満である鋼が示されている。
特許文献4には、化石燃料または廃棄物類を燃焼せしめてエネルギー源とする設備において使用されるボイラー用鋼管等に用いられる高耐食性合金として、重量%で、C:0.05%以下、Si:1.0〜2.6%、Mn:0.02〜1.0%、Cr:20.0〜28.0%、Ni:18.0〜30.0%、Mo:4.0%以下、Al:0.05%以下を含有し、残りがFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、(Cr+2Si+0.5Mo)>Ni≧1.1(Cr+1.5Si+0.5Mo)−8,Mo(Cr−18)≧8を満たす合金が示されている。
また特許文献5には、廃棄物焼却プラントボイラ伝熱管用高耐食性オーステナイト系ステンレス鋼として、重量%で、C:0.05%以下、Si:2.0〜4.0%、Mn:0.5超〜2.0%、Ni:20〜25%未満、Cr:20〜30%、N:0.15%以下を含み、かつ「Si(%)×{Cr(%)−15.2}≧17.6%」および「Cr(%)+6×Si(%)≦48.0%」を同時に満足して、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなる鋼が開示されている。
しかしこれらの技術では、MoやNiを一定以下に低減させることを前提に、耐廃棄物灰腐食性を高めたものではない。
特開2000−213721号公報 特開平07−268565号公報 特開平08−041595号公報 特開平10−088293号公報 特開2000−192201号公報
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、MoやNiといった耐食性確保には有利であるが高価な元素の低減を前提に、これらの元素を低減させても優れた耐廃棄物灰腐食性を発揮するステンレス鋼、および該ステンレス鋼を用いて得られるステンレス鋼管を実現することにある。
上記課題を解決し得た本発明のステンレス鋼は、成分組成が、質量%で、C:0%超0.030%以下、Si:0%超2.0%以下、Mn:0%超2.0%以下、P:0%超0.045%以下、S:0%超0.03%以下、Cr:22〜27%、Ni:17〜21%、O:0%超0.02%以下、Al:0.001〜0.05%、Mo:0%以上1.0%以下、およびN:0.06〜0.3%を満たし、残部が鉄および不可避不純物であり、かつ下記式(1)を満たすところに特徴を有する。
Cr+3Si+70N−400C≧24.0・・・(1)
式(1)において、Cr、Si、N、Cは、質量%での各元素の鋼中含有量を示す。
上記ステンレス鋼は、更に、下記(a)〜(c)の少なくともいずれかを含んでいてもよい。尚、成分組成について、「%」は、以下「質量%」を意味する。
(a)Bを0%超0.05%以下
(b)CaおよびMgの少なくとも1種を、合計で0%超0.010%以下
(c)Ti:0%超0.05%以下、およびZr:0%超0.10%以下の少なくとも1種
本発明には、前記ステンレス鋼を用いて得られるステンレス鋼管も含まれる。該ステンレス鋼管として例えばシームレス鋼管が挙げられる。
前記ステンレス鋼管は、廃棄物ボイラー、またはバイオマスボイラーに用いることができる。
本発明によれば、MoやNiといった高価な元素の使用を低減しても、耐廃棄物灰腐食性に優れたステンレス鋼および該ステンレス鋼を用いて得られるステンレス鋼管を実現することができる。
図1は、Cr+3Si+70N−400Cと、腐食減量との関係を示す図である。
本発明者は、ステンレス鋼の比較的安価な成分範囲として、Mo含有量を1.0%以下かつNi含有量を21%以下とすることを前提に、MoやNiがこの範囲であっても耐廃棄物灰腐食性に優れたステンレス鋼および該ステンレス鋼を用いて得られるステンレス鋼管を得るべく、ステンレス鋼の成分組成について鋭意研究を行った。具体的には、成分組成が種々の鋼材を用い、腐食試験を行って腐食の程度を調査した。その結果、腐食が激しく、全面的に分厚い酸化スケールが生成する場合と、腐食が比較的軽微であり、薄い保護皮膜が残存する場合の2通りに分かれることがまず判明した。
次に、この腐食結果と成分組成の関係について更に鋭意調査を進めたところ、上記腐食の程度の相違は、Cr、Si、NおよびCの含有量と関係がある、換言すればCr、Si、NおよびCの含有量により生成する酸化スケールの性状が異なることを見出した。また、腐食が比較的軽微であり薄い保護皮膜が残存する場合は、いずれもN量が比較的高めのステンレス鋼であることも見出した。N量については後に詳述する。まずは、上記Cr、Si、NおよびCの含有量と耐廃棄物灰腐食性との関係から説明する。
本発明者は、上記4元素の含有量を変えて、これらの元素が耐廃棄物灰腐食性に及ぼす影響について検討を行った。その結果、鋼中の質量%でのCr量、Si量、N量およびC量を変数として含む「Cr+3Si+70N−400C」が、耐廃棄物灰腐食性と相関があることを見出した。以下では、上記「Cr+3Si+70N−400C」をZ値ということがある。
更に、優れた耐廃棄物灰腐食性として、後述する実施例で設定の腐食減量:0.025g/cm2以下を達成すべく、Z値のとりうる範囲について検討したところ、該Z値を24.0以上とすればよいことを見出した。つまり本発明では、Mo量を1.0%以下かつNi量を21%以下に抑えても、Cr、Si、NおよびCの各含有量が後述する範囲を満たすことを前提に、上記Z値を24.0以上とすれば、Cr主体の酸化物がより強固な保護皮膜として作用し、優れた耐廃棄物灰腐食性を発揮するオーステナイト系ステンレス鋼が得られることを見出した。上記Z値は、好ましくは28.5以上であり、より好ましくは30.0以上、更に好ましくは32.0以上である。尚、Z値は大きければ大きいほど好ましいが、本発明で規定の成分組成を考慮すると、その上限は、おおよそ54程度となる。
上記Z値を構成するCr、Si、NおよびCの各元素の作用効果は、以下に説明する。
まずNについて説明する。上述の通り、N量が高い材料は、腐食減量が低減しており、耐廃棄物灰腐食性の向上が示唆された。この理由について、未だ明確とはなっていないが、次のような効果によるものではないかと想定される。後述する実施例で示す廃棄物灰腐食試験後の試験片の断面を分析したところ、表層よりCrとOよりなる皮膜が観察された。この皮膜は保護皮膜として作用するCr23と考えられ、これが母相の腐食を抑制していると考えられる。しかしこのCr23は、前述の通りClが存在する環境では、オキシクロリネーション反応により揮発性の高いCrO2Cl2となり、前記Cr23による保護性が低下する。保護性が低下した箇所は、Cr23が新たに形成されるまで溶融した廃棄物灰と接触するため、電気化学的な全面腐食が進行すると考えられる。しかし一定以上のNが存在することによって、硝酸イオン等の腐食抑制剤が形成され、前記の電気化学的な全面腐食が抑制されて、耐廃棄物灰腐食性が向上したものと推測される。
尚、上記作用効果は、Nが固溶の状態で発揮されるものと考えられる。よって、窒化物を形成する元素であるTiやZrの含有量は極力抑える。これら元素のうち少なくともいずれかが含まれる場合であっても、後述の範囲内に抑えるようにする。
上記効果に加え、Nは母相中に固溶して強度を高めるのに有効な元素でもある。これらの観点から、本発明では、Nを0.06%以上積極的に含有させる。N量は、好ましくは0.08%以上であり、より好ましくは0.10%以上、更に好ましくは0.12%以上である。一方、Nが0.3%を超えて過剰に含まれると、熱間加工性が悪化する。よってN量は0.3%以下とする。設備上の制限を考慮すると、N量は、0.2%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.19%以下である。
上記N以外の各元素について、以下、含有量を規定した理由を説明する。
C:0%超0.030%以下
Cは、固溶強化により強度を向上させる元素である。該効果を得るには、C量を0.003%以上含有させてもよい。しかしながらCは、廃棄物ボイラーやバイオマスボイラー等の使用温度である400℃〜600℃の温度域において、Crと結合しクロム炭化物を形成する。その結果、保護皮膜として作用するCr23形成のためのCr量が減少し、耐廃棄物灰腐食性の低下を招く。この現象は、C量が0.030%超で顕著となる。よって本発明ではC量の上限値を0.030%以下とした。より優れた耐廃棄物灰腐食性を得るには、C量を0.025%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.021%以下、更に好ましくは0.018%以下である。
Si:0%超2.0%以下
Siは、母相と、保護皮膜として作用するCr23との界面に、緻密なSiO2を形成し、外部から侵入する酸素や硫黄、塩素の内方拡散を抑制し、耐廃棄物灰腐食性や耐水蒸気酸化特性の向上に寄与する元素である。またSiは脱酸に有用な元素でもある。該効果を発揮させるには、Siを0.10%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.20%以上、更に好ましくは0.30%以上である。しかしながら、Siが2.0%を超えて過剰に含まれると、σ相の形成が促進し靭性が低下する。よってSiの上限値を2.0%以下とした。Si量は、好ましくは2.0%未満、より好ましくは1.6%以下、更に好ましくは1.50%以下である。
Mn:0%超2.0%以下
Mnは、脱硫作用を示し、熱間加工性を改善する元素である。またオーステナイト相安定化の効果を示す元素でもある。これらの効果を発揮させるには、Mn量を0.5%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.80%以上である。しかしMnが2.0%を超えて過剰に含まれると、金属間化合物の形成を促進し、脆化を招く。よって本発明ではMn量を2.0%以下とする。Mn量は、好ましくは1.90%以下、より好ましくは1.80%以下である。
P:0%超0.045%以下
Pは、不可避不純物として混入する元素であり、過剰に含まれると溶接性が低下する。よってP量は0.045%以下に抑える。P量は、好ましくは0.035%以下、より好ましくは0.030%以下である。尚、P量は少ないほど好ましいが、ゼロとすることは困難であるため下限は0%超である。
S:0%超0.03%以下
Sも、Pと同様に不可避不純物として混入する元素である。Sが過剰に含まれると熱間加工性が悪化する。よってS量の上限を0.03%以下とした。S量は、好ましくは0.02%以下、より好ましくは0.01%以下、更に好ましくは0.005%以下である。尚、S量は少ないほど好ましいが、ゼロとすることは困難であるため下限は0%超である。
Cr:22〜27%
Crは、耐廃棄物灰腐食性を向上させるための重要な元素である。具体的には、保護皮膜として作用するCr23の主成分であることから、多量のCrにより強固な保護皮膜が形成され、この保護皮膜により酸素、硫黄、塩素の内方拡散が抑えられると考えられる。該効果を発揮させるため、Crを22%以上含有させる。Cr量は、好ましくは24%以上である。一方、Cr量が27%を超えると、オーステナイト安定化のために必要なNi含有量が増加し、コスト高を招く。またCrは、脆化の原因となるσ相の析出を促進させる元素でもある。よってCr量の上限は27%以下とした。Cr量は、好ましくは26.5%以下である。
Ni:17〜21%
Niは、オーステナイト相の安定化や、灰成分に塩分が含まれる環境下での耐食性向上に寄与すると共に、σ相の析出を抑制して靭性確保にも寄与する重要な元素である。これらの効果を発揮させるため、Ni量は17%以上とする。Ni量は、好ましくは18.0%以上、より好ましくは18.5%以上、更に好ましくは19.0%以上である。一方、Niは、上述の通り高価な元素であることから、本発明では、コスト低減のためにNi量の上限を21%以下とした。よりコストを低減させる観点から、Ni量は、20.5%以下とすることが好ましく、より好ましくは20.0%以下である。
O:0%超0.02%以下
Oが過剰に含まれると、熱間加工性の劣化や介在物性欠陥の発生を招く。よってO量は極力低い方がよく、本発明では0.02%以下とする。O量は、好ましくは0.015%以下、より好ましくは0.010%以下である。尚、O量は少ないほど好ましいが、ゼロとすることは困難であるため下限は0%超である。
Al:0.001〜0.05%
Alは脱酸のために0.001%以上含有させる。Al量は、好ましくは0.002%以上である。しかしながら、Alが0.05%を超えて過剰に含まれると、粒界にAlNが生じて靭性の低下を招く。よってAl量は0.05%以下とする。Al量は、好ましくは0.030%以下、より好ましくは0.020%以下である。
Mo:0%以上1.0%以下
Moは、耐廃棄物灰腐食性を向上させる効果がある。該効果を発揮させるには、Moを0.1%以上含有させることが好ましい。しかしMoは、上述の通り高価な元素であることから、本発明では、コスト低減のためにMoの上限を1.0%以下とした。よりコストを低減させる観点から、Mo量は、好ましくは0.80%以下であり、より好ましくは0.65%以下、更に好ましくは0.60%以下である。
本発明のステンレス鋼は、上記成分組成を満たし、残部は鉄および不可避不純物からなる。また、上記元素に加えて更に、下記のB等を適量含有させることにより、高温強度等を高めることができる。以下、これらの元素について詳述する。
B:0%超0.05%以下
Bは固溶強化により高温強度を向上させる元素である。該効果を発揮させるには、B量を0.001%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.002%以上である。一方、B量が過剰になると溶接性が損なわれる。よってB量は、0.05%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.01%以下である。
CaおよびMgの少なくとも1種を、合計で0%超0.010%以下
CaやMgは、OやSを固定することで鋼中の清浄度を向上させ、熱間加工性を向上させる効果を有する。この効果を十分に発揮させるには、CaおよびMgの少なくとも1種を、合計で0.001%以上含有させることが好ましく、より好ましくは合計で0.002%以上である。一方、これらの元素が過剰に含まれていても熱間加工性がかえって損なわれる。よって、CaおよびMgの少なくとも1種は、合計で0.010%以下とすることが好ましく、より好ましくは合計で0.005%以下である。
Ti:0%超0.05%以下、およびZr:0%超0.10%以下の少なくとも1種
TiやZrは、炭窒化物形成元素であり、高温での使用中に微細な炭窒化物を形成することで高温強度を向上させる元素である。しかしながらこれらの元素は、窒化物の形成傾向が強いことから、耐廃棄物灰腐食性の向上に寄与する固溶N量を低減させ、耐廃棄物灰腐食性の低下を招く場合がある。よって、Ti量は、0.05%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.03%以下である。またZr量は、0.10%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.07%以下である。
前記ステンレス鋼の製造方法は、前記成分組成を満たすようにすること以外は、特に限定されず、一般的に行われている方法で製造することができる。
本発明には、前記ステンレス鋼を用いて得られるステンレス鋼管も含まれる。該ステンレス鋼管として、シームレス鋼管、電縫鋼管、UOE鋼管やスパイラル鋼管等のアーク溶接鋼管、鍛接鋼管等が挙げられる。好ましくはシームレス鋼管である。前記シームレス鋼管は、熱間押し出しによる方法や、マンネスマン法により製造することができる。
本発明のステンレス鋼管は、例えば廃棄物ボイラー、またはバイオマスボイラーに用いられうる。より具体的には、例えば上記廃棄物ボイラー、またはバイオマスボイラーの、例えば過熱器管や再熱器管等に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
[供試材の製造]
真空誘導溶解炉を用いて、表1に示す成分組成を満たす20kgの円柱状のインゴットを溶製した。表1中「−」は添加していないことを意味する。
上記インゴットに、1250℃で30時間の熱処理を施した後、1200℃で熱間鍛造を行い、幅80mm×長さ200mm×厚さ20mmの板材を4枚得た。その後、1枚の板材を用いて、加工率30%で冷間圧延を実施し、次いで1150℃で5分間保持する熱処理を行った後に水冷し、供試材として幅80mm×長さ250mm×厚さ14mmの板材を得た。
[廃棄物灰腐食試験]
上記供試材を用い、下記の要領で廃棄物灰腐食試験を行って、耐廃棄物灰腐食性の評価を行った。
上記の板材から、ワイヤーカットにて15mm×15mm×2mmの板材を切り出し、該板材の6面全てに対し、♯1200までの機械研磨、アルミナ懸濁液によるバフ研磨、および化学研磨を順次施すことによって、表面の加工層を取り除き、腐食試験用の試験片とした。
腐食試験は、廃棄物焼却設備での使用を模擬し次の様にして行った。即ち、NaCl−KCl−Na2SO4−K2SO4をモル分率で38:28:20:14の比率で混合した合成灰に試験片を埋没させ、かつ腐食性ガスを模擬して、600℃に保持した0.1%HCl−0.05%SO2−10%CO2−2%CO−7.5%O2−20%H2O−bal.N2環境中で100時間保持した。そして、腐食試験後の試験片に生成した腐食生成物を、水酸化ナトリウム40質量%および炭酸ナトリウム60質量%の溶融塩電解にて除去し、(腐食生成物の除去前の試験片の質量)−(腐食生成物の除去後の試験片の質量)から腐食減量を算出した。そして単位面積当たりの腐食減量を求めた。この単位面積当たりの腐食減量が0.025g/cm2以下の場合を優れた耐廃棄物灰腐食性を示すと判断した。これらの結果を表1に併記する。尚、以下では、上記「単位面積当たりの腐食減量」を単に「腐食減量」という。
Figure 2016029213
表1より次のことがいえる。即ち、鋼材No.1〜12は、本発明で規定の成分組成を満たしており、特にZ値も規定範囲内にあるため、上記過酷な腐食環境下においても腐食減量が十分に抑制され、優れた耐廃棄物灰腐食性を示す。これに対し、鋼材No.13〜19は、本発明で規定の成分組成を満たさないため、上記腐食減量が多くなり、耐廃棄物灰腐食性に劣っている。
詳細には、No.13、15および18は、C量が多くZ値が低いため、耐廃棄物灰腐食性に劣る結果となった。
No.14は、Cr、NiおよびNが不足しており、かつCが過剰に含まれ、Z値が低いため、耐廃棄物灰腐食性に劣る結果となった。
No.16は、Nが不足しており、Zrが過剰に含まれ、かつZ値が低いため、耐廃棄物灰腐食性に劣る結果となった。
No.17は、Nが不足し、CとTiが過剰に含まれ、かつZ値が低いため、耐廃棄物灰腐食性に劣る結果となった。
No.19は、Crが不足し、かつZ値が低いため、耐廃棄物灰腐食性に劣る結果となった。
この実施例で得られたデータを用いて整理した、Z値、即ち、Cr+3Si+70N−400Cと、上記腐食減量との関係を図1に示す。この図1から、Z値が24.0を境として、これ以上であると、腐食減量が0.025g/cm2以下に十分抑制されていることがわかる。
耐廃棄物灰腐食性に優れた廃棄物ボイラー、バイオマスボイラーの過熱器管、再熱器管等を提供することができる。

Claims (7)

  1. 成分組成が、質量%で、
    C:0%超0.030%以下、
    Si:0%超2.0%以下、
    Mn:0%超2.0%以下、
    P:0%超0.045%以下、
    S:0%超0.03%以下、
    Cr:22〜27%、
    Ni:17〜21%、
    O:0%超0.02%以下、
    Al:0.001〜0.05%、
    Mo:0%以上1.0%以下、および
    N:0.06〜0.3%
    を満たし、残部が鉄および不可避不純物であり、かつ
    下記式(1)を満たすことを特徴とするステンレス鋼。
    Cr+3Si+70N−400C≧24.0・・・(1)
    式(1)において、Cr、Si、N、Cは、質量%での各元素の鋼中含有量を示す。
  2. 更に、質量%で、Bを0%超0.05%以下含む請求項1に記載のステンレス鋼。
  3. 更に、質量%で、CaおよびMgの少なくとも1種を、合計で0%超0.010%以下含む請求項1または2に記載のステンレス鋼。
  4. 更に、質量%で、Ti:0%超0.05%以下、およびZr:0%超0.10%以下の少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれかに記載のステンレス鋼。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のステンレス鋼を用いて得られるステンレス鋼管。
  6. シームレス鋼管である請求項5に記載のステンレス鋼管。
  7. 廃棄物ボイラー、またはバイオマスボイラーに用いられる請求項5または6に記載のステンレス鋼管。
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