JP7124432B2 - 鋼材 - Google Patents
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Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/5+(Cr+Mo+V)/15 … 式(1)
[1] 質量%で、
C:0.01~0.10%、
Si:0.04~0.40%、
Mn:0.60~1.50%、
Cu:0.02~0.24%
Sb:0.01~0.23%、
Al:0.005~0.050%、
Sn:0.001~0.20%、及び
Ca:0.00005~0.010%
Mo、Wの一方又は両方を合計で、0.01~0.30%、
P:0~0.020%、
S:0~0.015%、
N:0~0.005%、及び
O:0.0005~0.0035%
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
Caの含有量とOの含有量とが質量比(Ca/O)で、1.00以下であり、
CuとSbとの合計量が、質量%で0.05~0.25であり、
下記式(1)で求められるCeqが0.180~0.330であることを特徴とする鋼材。
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/5+(Cr+Mo+V)/15 … 式(1)
ここで、式(1)中C、Mn、Cu、Mo、Ni、Cr、Vは各元素の質量%に基づく含有量であり、含有しない場合は0である。
[2] 更に、質量%で、
Ni:0.30%以下、
As:0.30%以下、及び
Co:0.30%以下
からなる群より選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]に記載の鋼材。
[3] 更に、質量%で、
Cr:0.70%以下、
Ti:0.050%以下、
Nb:0.10%以下、
V:0.10%以下、
Zr:0.050%以下、
Ta:0.050%以下、及び
B:0.010%以下
からなる群より選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の鋼材。
[4] 更に、質量%で、
Mg:0.010%以下、及び
REM:0.010%以下
からなる群より選択される1種以上を含有することを特徴とする上記[1]~[3]の何れか1項に記載の鋼材。
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/5+(Cr+Mo+V)/15 … 式(1)
Cは、強度を向上させる元素であり、0.01%以上を含有させることが必要である。好ましくはC量を0.03%以上、より好ましくは0.05%以上とする。一方、C量が0.10%を超えると炭化物が増加し、耐酸性が劣化するため、C量を0.10%以下とする。好ましくはC量を0.09%以下、より好ましくは0.08%以下とする。
Siは、脱酸及び強度の向上に寄与する元素であり、また、酸化物の形態を制御するために、0.04%以上を含有させることが必要である。好ましくはSi量を0.05%以上とし、より好ましくは0.10%以上とする。一方、0.40%を超えるSiを含有させると酸化物が増加し、耐酸性を損なうため、Si量を0.40%以下とする。好ましくはSi量を0.30%以下とする。
Mnは、強度及び靭性を向上させる元素であり、0.60%以上を含有させる。好ましくはMn量を0.80%以上とする。一方、1.50%を超える量のMnを含有させると、粗大なMnSが生成し、耐食性や機械特性が劣化するため、Mn量を1.50%以下とする。好ましくはMn量を1.30%以下、より好ましくは1.20%以下とする。
Cuは、Sbと同時に含有させると、硫酸や塩酸に対する耐食性を顕著に発現する極めて重要な元素である。Sbと同時に含有させることで酸性環境での耐食性を確保するために必要なCu量は0.02%以上である。好ましくはCu量を0.03%以上、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.06%以上とする。一方、Cu量が0.24%を超えると熱間加工性が低下し、生産性を損なうため、0.24%以下とする。好ましくはCu量を0.23%以下、より好ましくは0.22%以下とする。
Sbは、上述のように、Cuと同時に含有させると耐酸性を向上させる極めて重要な元素であり、酸性環境での耐食性を確保するため、0.01%以上を含有させることが必要である。好ましくはSb量を0.02%以上、より好ましくは0.03%以上、更に好ましくは0.04%以上とする。一方、Sb量が0.23%を超えると熱間加工性が低下するので、0.23%以下とする。好ましくはSb量を0.22%以下、より好ましくは0.21%以下、更に好ましくは0.20%以下とする。
Alは、脱酸剤であり、0.005%以上を含有させることが必要である。好ましくはAl量を0.01%以上とする。一方、Alを過剰に含有させると、介在物の増加によって、耐酸性を損なうため、Al量を0.050%以下とする。好ましくはAl量を0.040%以下とする。
Snは、Cu及びSbと同時に含有させることで耐酸性を向上させる元素であり、0.001%以上を含有させることで効果を発揮する。より好ましくは0.0012%以上、更に好ましくは0.0015%以上とする。一方、Snを過剰に含有させると熱間加工性が低下するので、Sn量を0.20%以下とする。より好ましくはSn量を0.18%以下、更に好ましくは0.15%以下とする。
Caは、主に硫化物や酸化物の形態を制御し、鋼の清浄度を高める元素であり、その効果は0.00005%以上含有させることにより発揮される。好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.0005%以上とする。一方、Ca量が多すぎると鋼の機械特性を低下させるため、Ca量を0.010%以下とする。好ましくは0.008%、更に好ましくは0.005%である。
Mo及びWは、Cu及びSbと同時に含有させることにより、酸性環境での耐食性を向上させる元素である。Mo、Wは、一方を単独で含有させてもよく、両方を同時に含有させてもよい。特に、塩酸に対する耐食性を高めるために、Mo、Wの一方又は両方の合計の含有量を0.01%以上とする。好ましくは0.02%、より好ましくは0.03%以上、更に好ましくは0.04%以上とする。一方、Mo及びWを過剰に含有させると、腐食の起点となる炭化物を形成し、耐酸性を低下させる。更に、Mo及びWは高価な元素であるため、コストの観点からも、Mo、Wの一方又は両方の合計の含有量は0.30%以下とする。好ましくは0.25%以下、更に好ましくは0.20%以下である。
Pは、不純物であり、鋼材の機械特性や生産性を低下させるため、P量を0.020%以下とする。P量の下限は限定せず、0%でもよいが、コストの観点からP量は0.001%以上であってもよい。
Sは、不純物であり、熱間加工性や鋼材の機械特性を低下させるため、S量を0.015%以下とする。S量の下限は限定せず、0%でもよい。Sは、Cu及びSbと同時に含有させると、酸性環境での耐食性を向上させることから、S量は0.001%以上であってもよい。より好ましくはS量を0.005%以上、更に好ましくは0.008%以上としてもよい。
Nは、不純物であり、鋼材の機械特性や生産性を低下させるため、N量を0.005%以下とする。N量の下限は限定せず、0%でもよいが、コストの観点からN量を0.001%以上にしてもよい。微細な窒化物を機械特性等の向上に利用する場合、N量は0.002%以上であってもよい。
Oは、酸化物を生成する元素である。酸性環境において腐食の起点となる粗大な酸化物の生成を抑制するために、O量を0.0035%以下とする。好ましくはO量を0.0032%以下、より好ましくは0.0030%以下とする。一方、O量の下限を0.0005%未満にしようとすると製造コストが増大するため、コストの観点からO量は0.0005%以上とする。
Niは、酸性環境での耐食性を向上させる元素であり、Cuを含有する場合、Niは生産性を高める効果を発現する。Cuは、耐食性を向上させる効果が大きいが、偏析し易く、単独で含有させると鋳造後の割れを助長する場合がある。これに対して、NiはCuの偏析を軽減する作用がある。Niを含有させると、Cu偏析起因の鋳片の割れの抑制に加えて、偏析に起因する局部腐食の発生も抑制されるため、耐食性を向上させる効果が顕著に発現される。好ましくはNi量を0.01%以上とし、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.10%以上とする。一方、Niも高価な元素であるため、コストの観点からNi量を0.30%以下とする。より好ましくは0.25%以下とする。
Asは、Sb、Snに比べて効果は顕著ではないが、酸性環境での耐食性の向上に有効な元素であり、0.01%以上を含有させてもよい。より好ましくはAs量を0.02%以上、更に好ましくはAs量を0.05%以上とする。一方、Asを過剰に含有させると熱間加工性が低下するので、As量を0.30%以下とする。より好ましくはAs量を0.20%以下、更に好ましくは0.10%以下とする。
Coは、Sb、Snに比べて効果は顕著ではないが、酸性環境での耐食性を向上させる元素であり、0.01%以上を含有させてもよい。より好ましくはCo量を0.02%以上、更に好ましくはCo量を0.05%以上とする。一方、Coを過剰に含有させると経済性が低下するので、Co量を0.30%以下とする。より好ましくはCo量を0.20%以下、更に好ましくは0.10%以下とする。
Crは焼入れ性を高めて強度を向上させる元素であり、0.01%以上を含有させてもよい。より好ましくはCr量を0.05%以上とする。また、Crは耐候性を高める元素であるが、酸性環境での耐食性を低下させる場合があり、Cr量を0.70%以下とする。より好ましくはCr量を0.50%以下、更に好ましくは0.40%以下とする。
Tiは、窒化物を形成し、結晶粒の微細化や強度の向上に寄与する元素であり、0.001%以上を含有させてもよい。より好ましくはTi量を0.005%以上とする。一方、0.050%超のTiを含有させると、窒化物が粗大になり、機械特性が劣化することがあるため、Ti量を0.050%以下とする。より好ましくはTi量を0.040%以下、更に好ましくは0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。とする。
Nbは、Tiと同様に、窒化物を形成する元素であり、結晶粒の微細化や強度の向上を目的として、0.001%以上を含有させてもよい。より好ましくはNb量を0.005%以上とする。一方、0.10%超のNbを含有させると、機械特性が劣化することがあるため、Nb量を0.10%以下とする。より好ましくはNb量を0.050%以下、更に好ましくは0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。
Vは、Ti、Nbと同様、窒化物を形成する元素であり、主に、析出強化による強度の改善のために含有させてもよい。効果を得るために、V量を0.005%以上とすることが好ましい。一方、0.10%超のVを含有させると、機械特性が劣化することがあるため、V量を0.10%以下とする。より好ましくはV量を0.050%以下、更に好ましくは0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。
Zrは、Ti、Nb、Vと同様、窒化物を形成する元素であり、主に、析出強化による強度の改善のために含有させてもよい。効果を得るために、Zr量を0.005%以上とすることが好ましい。一方、Zrは高価な元素であり、また、0.050%超のZrを含有させると、機械特性が劣化することがあるため、Zr量を0.050%以下とする。より好ましくはZr量を0.040%以下、更に好ましくは0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。
Taは、強度の向上に寄与する元素であり、0.001%以上を含有させてもよい。また、メカニズムは必ずしも明らかでないが、Taは耐食性の向上にも寄与し、より好ましくはTa量を0.005%以上とする。一方、Taを過剰に含有させるとコストが上昇するため、Ta量を0.050%以下とする。より好ましくはTa量を0.040%以下、更に好ましくは0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。
Bは焼入性を向上させ、強度を高める元素である。効果を得るためには、B量を0.0003%以上にすることが好ましい。より好ましくはB量を0.0005%以上とする。一方、0.010%を超えるBを含有させても、効果が飽和し、母材、HAZの靭性が低下する場合があり、B量を0.010%以下とする。より好ましくはB量を0.0050%以下、更に好ましくは0.0030%以下、より一層好ましくは0.0020%以下とする。
Mgは、微細な酸化物を形成させるために、0.0001%以上を含有させてもよい。好ましくはMg量を0.0003%以上、より好ましくは0.0005%以上とする。一方、製造コストの観点から、Mg量を0.010%以下とする。より好ましくはMg量を0.005%以下、更に好ましくは0.003%以下とする。
REM(希土類元素)は、主に脱酸に用いられる元素であり、微細な酸化物を形成させるために、0.0001%以上を含有させてもよい。好ましくはREM量を0.0003%以上、より好ましくは0.0005%以上とする。一方、製造コストの観点から、REM量を0.010%以下とする。より好ましくはREM量を0.005%以下、更に好ましくは0.003%以下とする。
Caの含有量とOの含有量との質量比(Ca/O)は、鋼材表面で腐食起点となりやすい酸化物を抑制するための指標である。Caは耐酸性に影響を及ぼさない微細な酸化物を形成することで鋼の清浄度を高めるが、鋼中のOの量に対してCaを過剰に含有させると粗大な酸化物が過剰に生成し、耐酸性を低下させる。過剰な粗大酸化物の生成を抑制するには、Ca/Oを1.00以下にする必要がある。したがって、Ca/Oは1.00以下とする。好ましくは0.90以下、より好ましくは0.85以下、更に好ましくは0.83以下である。Ca/Oの下限値は特に限定されないが、Ca/Oが低すぎるとCa以外の酸化物生成が生成し、耐酸性を低下させるため、Ca/Oは、例えば0.005以上、好ましくは0.010以上、より好ましくは0.015以上である。
CuとSbとを複合して含有させることで鋼の耐酸性が向上するが、そのためにはCuとSbの合計量を0.05%以上にすることが必要である。CuとSbの合計量の好ましい下限は0.055%以上、より好ましい上限は0.057%以上、更に好ましい上限は0.06%以上である。一方、CuとSbの合計量が多過ぎると熱間加工性が低下するため、CuとSbの合計量を0.25%以下にする必要がある。CuとSbの合計の好ましい上限は0.22%以下、更に好ましい上限は0.2%以下である。
Ceqは、硬さの上昇による溶接性の劣化を示す指標であり、溶接性を確保するために、0.330以下、好ましくは0.300以下とする。一方。Ceqが低すぎると機械特性が不十分になるため、0.180以上、好ましくは0.190以上、より好ましくは0.200以上とする。Ceqは、下記式(3)に示されるように、公知の指標である。
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/5+(Cr+Mo+V)/15 … 式(1)
式(1)において、C、Mn、Cu、Mo、Ni、Cr、Vは各元素の質量%に基づく含有量を示し、含有しない場合は0である。
1)50%硫酸水溶液70℃に6時間浸漬
2)10.5%塩酸水溶液40℃に6時間浸漬
Ca/O比が範囲外の鋼No.AB、Cu量が少ない鋼No.AC、Sb量が少ない鋼No.AD、Cu量とSb量の合計が小さい鋼No.AEも、本発明の鋼に比べて塩酸及び硫酸に対する耐食性が低下している。鋼No.AFはCu量とSb量の合計が大きいため、加工性が低下している。Ceqが大きい鋼No.AGは溶接性が低下している。一方、鋼No.AHはCeqが小さく、強度が不十分である。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.01~0.10%、
Si:0.04~0.40%、
Mn:0.60~1.50%、
Cu:0.02~0.24%、
Sb:0.010~0.23%、
Al:0.005~0.050%、
Sn:0.001~0.200%、
Ca:0.00005~0.0035%、
Mo、Wの一方又は両方を合計で、0.01~0.30%、
P:0~0.020%、
S:0~0.015%、
N:0~0.005%、及び
O:0.0005~0.0035%
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
Caの含有量とOの含有量との質量比(Ca/O)が、1.00以下であり、
CuとSbとの合計量が、質量%で、0.05~0.25%であり、
下記式(1)で求められるCeqが0.180~0.330であることを特徴とする、鋼材。
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/5+(Cr+Mo+V)/15 … 式(1)
ここで、式(1)中C、Mn、Cu、Mo、Ni、Cr、Vは各元素の質量%に基づく含有量であり、含有しない場合は0である。 - 更に、質量%で、
Ni:0.30%以下、
As:0.30%以下、及び
Co:0.30%以下
からなる群より選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の鋼材。 - 更に、質量%で、
Cr:0.70%以下、
Ti:0.050%以下、
Nb:0.10%以下、
V:0.10%以下、
Zr:0.050%以下、
Ta:0.050%以下、及び
B:0.010%以下
からなる群より選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の鋼材。 - 更に、質量%で、
Mg:0.010%以下、及び
REM:0.010%以下
からなる群より選択される1種以上を含有することを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の鋼材。
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