JP2023066026A - 鋼材 - Google Patents

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悠 佐藤
Hisashi Sato
淳子 今村
Junko Imamura
工 西本
Takumi Nishimoto
慎 長澤
Shin Nagasawa
正行 児玉
Masayuki Kodama
真也 澤田
Shinya Sawada
紀正 川端
Norimasa Kawabata
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Abstract

【課題】酸腐食環境において耐食性を有し、かつ、熱間加工性および冷間加工性に優れた鋼材を提供する。
【解決手段】化学組成が、質量%で、C:0.0010~0.15%、Si:0.10~0.80%、Mn:0.50~1.00%、Cu:0.10~0.50%、Ni:0.010~0.80%、Cr:0.005~0.070%、Co:0.002~0.020%、MoおよびWの一方または両方:合計で0.001~0.30%、Al:0.01~0.10%、Ti:0.001~0.067%、N:0.0005~0.0050%、P:0.050%以下、S:0.00050~0.0200%、O:0.0010~0.0045%、残部:Feおよび不純物であり、FI:0.12~1.50であり、鋼材中にMnSおよびMnS酸化物を含み、MnSの個数密度が50.0/mm2未満であり、MnSの個数密度に対する、MnS酸化物の個数密度の比が0.10以上である、鋼材。
【選択図】 なし

Description

本発明は、鋼材に関する。
ボイラーの火炉および廃棄物焼却施設の焼却炉等では、水蒸気、硫黄酸化物、塩化水素等を含む排ガスが発生する。この排ガスは、排ガス煙突等において冷却されると、凝縮して硫酸および塩酸となり、硫酸露点腐食および塩酸露点腐食として知られるように、排ガス流路を構成する鋼材に対し、著しい腐食を引き起こす。
このような問題に対し、耐硫酸・塩酸露点腐食鋼および高耐食ステンレス鋼が提案されている。例えば、特許文献1~8では、Cu、Sb、Co、Crなどを添加した耐硫酸露点腐食性に優れた鋼材が提案されている。また、特許文献9では、CrおよびNiなどを添加した高耐食ステンレス鋼が提案されている。
特開2001-164335号公報 特開2003-213367号公報 特開2007-239094号公報 特開2012-57221号公報 国際公開第2018/038195号 国際公開第2018/038196号 国際公開第2018/038197号 国際公開第2018/038198号 特開平7-316745号公報
Cu、Sb、Cr等を含有する鋼材は、排ガス煙突のような硫酸腐食環境において、優れた耐食性を発揮する。しかし、ボイラーおよび焼却設備を長寿命化するために、さらなる耐食性の向上が期待されている。
また、排ガス煙突に加えて、ガス化溶融炉、熱交換器、ガス-ガスヒータ、脱硫装置、電気集塵機等に使用される鋼材、特に伝熱材(フィン材)に使用される鋼材には、施工性および生産性の観点から、耐食性だけでなく、熱間加工性および冷間加工性も要求される。
本発明は、上記の問題を解決し、硫酸腐食環境および塩酸腐食環境において優れた耐食性を有し、かつ、熱間加工性および冷間加工性に優れた鋼材を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、下記の鋼材を要旨とする。
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.0010~0.15%、
Si:0.10~0.80%、
Mn:0.50~1.00%、
Cu:0.10~0.50%、
Ni:0.010~0.80%、
Cr:0.005~0.070%、
Co:0.002~0.020%、
MoおよびWの一方または両方:合計で0.001~0.30%、
Al:0.01~0.10%、
Ti:0.001~0.067%、
N:0.0005~0.0050%、
P:0.050%以下、
S:0.00050~0.0200%、
O:0.0010~0.0045%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(i)式で定義されるFIが0.12~1.50であり、
鋼材中にMnSおよびMnS酸化物を含み、最大長さが2.0μm以上のMnSの個数密度が50.0/mm未満であり、かつ最大長さが2.0μm以上のMnSの個数密度に対する、最大長さが2.0μm以上のMnS酸化物の個数密度の比が0.10以上である、
鋼材。
FI=1000×((Cr/52)+(Ti/48)) ・・・(i)
但し、上記式中の元素記号は、鋼材中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
(2)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
B:0.10%以下、
Nb:0.10%以下、および
V:0.10%以下、
のうち少なくとも1種を含有するものである、
上記(1)に記載の鋼材。
(3)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Sn:0.30%以下、および
Sb:0.30%以下、
から選択される1種以上を含有するものである、
上記(1)または(2)に記載の鋼材。
(4)Al含有量とO含有量との質量比Al/Oが3.0~60.0である、
上記(1)または(2)に記載の鋼材。
本発明によれば、酸腐食環境において良好な耐食性を有し、熱間加工性および冷間加工性の双方に優れた鋼材を提供することが可能となる。
本発明者らは前記した課題を解決するために、鋼材の耐食性、熱間加工性、冷間加工性を詳細に調査した結果、以下の知見を得るに至った。
CrとTiとを同時に添加すると、単独添加以上に高温、高濃度となる酸環境における耐食性を向上させるが、過剰添加すると腐食の起点となる酸化物および窒化物が増加し、耐食性を劣化させることが分かった。そのため、Cr含有量およびTi含有量を所定の範囲とする必要があることを見出した。そこで、CrおよびTiの含有量の関係についてさらに詳細な検討を行い、下記(i)式で定義されるFIの関係式を導出した。そして、FIを適切な範囲とすることで、優れた耐食性が得られるという知見を得た。
FI=1000×((Cr/52)+(Ti/48)) ・・・(i)
本発明においては、SはCuとともに含有させることで耐食性を向上させる効果を有するため、極端な低減は好ましくない。その一方で、鋼の強度を確保する上で必須の元素であるMnがMnSを形成すると、酸腐食環境での耐食性を劣化させる。
Cu含有量をS含有量との関係において適正に調整することで、多くのSをCuSとして固定することができる。しかしながら、特にフィン材等に使用される鋼材は非常に薄く、腐食の影響を受けやすいため、MnSの混入を極力低減する必要がある。
この問題を解決するため本発明者らがさらなる検討を重ねた結果、MnSを微細化するとともに、酸素と結合させ、MnS酸化物とすることで無害化できることを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
(A)化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.0010~0.15%
Cは、鋼材の強度を向上させる元素である。しかしながら、C含有量が過剰であると耐食性または冷間加工性が低下する。そのため、C含有量は0.0010~0.15%とする。強度が要求される場合は、C含有量は0.0030%以上であるのが好ましい。また、C含有量は0.13%以下であるのが好ましく、0.10%以下であるのがより好ましい。
Si:0.10~0.80%
Siは、脱酸および強度の向上に寄与し、酸化物の形態を制御する元素である。しかしながら、Siが過剰に含有された場合、酸化物が増加し、耐食性を損なう。そのため、Si含有量は0.10~0.80%とする。Si含有量は0.15%以上であるのが好ましく、0.20%以上であるのがより好ましい。また、Si含有量は0.70%以下であるのが好ましく、0.60%以下であるのがより好ましい。
Mn:0.50~1.00%
Mnは、強度を向上させる元素である。しかしながら、Mnが過剰に含有された場合、粗大なMnSが生成し、耐食性および機械特性が劣化する。そのため、Mn含有量は0.50~1.00%とする。Mn含有量は0.60%以上であるのが好ましく、0.70%以上であるのがより好ましい。また、Mn含有量は0.95%以下であるのが好ましく、0.90%以下であるのがより好ましく、0.85%以下であるのがさらに好ましい。
Cu:0.10~0.50%
Cuは、硫酸および塩酸に対する耐食性を顕著に発現する元素である。しかしながら、Cuが過剰に含有された場合、熱間加工性が低下し、生産性を損なう。そのため、Cu含有量は0.10~0.50%とする。Cu含有量は0.20%以上、0.30%以上、または0.35%以上であるのが好ましい。また、Cu含有量は0.45%以下であるのが好ましく、0.40%以下であるのがより好ましい。
Ni:0.010~0.80%
Niは、酸腐食環境での耐食性を向上させる元素であり、加えてCuを含有する鋼において、製造性を高める効果を有する。Cuは、耐食性を向上させる効果が大きいが、偏析し易く、単独で含有させると鋳造後の割れを助長する場合がある。これに対して、NiはCuの表面偏析を軽減する作用がある。Niを含有させることで、Cuの偏析および鋳片割れの抑制に加えて、偏析に起因する局部腐食の発生も抑制されるため、耐食性を向上させる効果が得られる。しかしながら、Niは高価な元素であり、多量の含有は製鋼コストの増大を招く。そのため、Ni含有量を0.010~0.80%とする。Ni含有量は0.015%以上であるのが好ましく、0.030%以上であるのがより好ましく、0.045%以上であるのがさらに好ましい。また、Ni含有量は0.70%以下であるのが好ましく、0.60%以下であるのがより好ましい。
Cr:0.005~0.070%
Crは、焼入れ性を高めて強度を向上させるとともに、耐硫酸性を向上させる効果を有する元素である。しかしながら、Crが過剰に含有された場合、鋼材表面で腐食起点となりやすい酸化物を形成する。また、耐塩酸性を低下させる。そのため、Cr含有量は0.005~0.070%とする。Cr含有量は0.010%以上であるのが好ましく、0.020%以上であるのがより好ましく、0.030%以上であるのがさらに好ましい。また、Cr含有量は0.050%以下であるのが好ましい。
Co:0.002~0.020%
Coは、耐酸性を向上させる効果を有する元素である。特に、Cuと同時に含有させることで酸性環境において優れた耐食性を発揮する。しかしながら、Coが過剰に含有された場合、経済性が低下する。そのため、Co含有量は0.002~0.020%とする。Co含有量は0.004%以上であるのが好ましく、0.010%以上であるのがより好ましく、0.013%以上であるのがさらに好ましい。また、Co含有量は0.018%以下であるのが好ましく、0.016%以下であるのがより好ましい。
MoおよびWの一方または両方:合計で0.001~0.30%
MoおよびWは、Cuと同時に含有させることにより、酸腐食環境での耐食性を向上させる元素である。しかしながら、MoおよびWは高価な元素であるため、過剰な含有は経済性の低下を招く。また、酸化物を形成して耐食性を損なう。そのため、MoおよびWの合計含有量は0.001~0.30%とする。MoおよびWは、一方を単独で含有させてもよく、両方を同時に含有させてもよい。MoおよびWの合計含有量は0.005%以上であるのが好ましく、0.010%以上であるのがより好ましい。また、MoおよびWの合計含有量は0.25%以下であるのが好ましく、0.20%以下であるのがより好ましい。
Al:0.01~0.10%
Alは、脱酸剤として添加される。しかしながら、Alが過剰に含有された場合、介在物の増加によって耐食性を損なう。そのため、Al含有量は0.01~0.10%とする。Al含有量は0.02%以上であるのが好ましい。また、Al含有量は0.08%以下であるのが好ましい。
Ti:0.001~0.067%
Tiは、耐食性を向上させる元素である。特に、TiをCuおよびCoと同時に含有させることで酸性環境において優れた耐食性を発揮する。しかしながら、Tiが過剰に含有された場合、腐食の原因となる窒化物の増加によって、耐食性を損なう。そのため、Ti含有量は0.001~0.067%とする。Ti含有量は0.004%以上であるのが好ましく、0.010%以上であるのがより好ましく、0.015%以上であるのがさらに好ましい。また、Ti含有量は0.050%以下であるのが好ましく、0.040%以下であるのがより好ましい。
N:0.0005~0.0050%
Nは、微細な窒化物を形成し、鋼材の機械特性の向上に寄与する。しかしながら、Nが過剰に含有された場合、鋼材の機械特性および生産性を低下させる。そのため、N含有量は0.0005~0.0050%とする。N含有量は0.0010%以上であるのが好ましく、0.0020%以上であるのがより好ましい。また、N含有量は0.0040%以下であるのが好ましく、0.0030%以下であるのがより好ましい。
P:0.050%以下
Pは、不純物であり、鋼材の機械特性および生産性を低下させる。そのため、P含有量に上限を設けて0.050%以下とする。P含有量は0.030%以下であるのが好ましく、0.020%以下であるのがより好ましい。なお、P含有量は可能な限り低減することが好ましく、つまり含有量が0%でもよいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、P含有量は0.001%以上としてもよい。
S:0.00050~0.0200%
Sは、一般的に不純物であり、鋼材の機械特性および生産性を低下させる。しかしながら、本発明において、Sは、Cuと同時に含有させることにより、酸腐食環境での耐食性を向上させる効果を有する。そのため、S含有量は0.00050~0.0200%とする。S含有量は0.00100%以上、または0.00500%以上であるのが好ましい。また、S含有量は0.0180%以下であるのが好ましく、0.0150%以下であるのがより好ましい。
O:0.0010~0.0045%
Oは、MnSと結合することで、MnSを無害化し、耐食性および機械特性の悪化を防ぐ効果を有する元素である。しかしながら、Oが過剰に含有された場合、酸腐食環境において腐食の起点となる粗大な酸化物を生成する。そのため、O含有量は0.0010~0.0045%とする。O含有量は0.0013%以上であるのが好ましく、0.0020%以上であるのがより好ましい。また、O含有量は0.0043%以下であるのが好ましく、0.0035%以下であるのがより好ましい。
本発明の鋼の化学組成において、上記の元素に加えて、機械特性等を向上させるために、さらにB、NbおよびVのうち少なくとも1種を、以下に示す範囲において含有させてもよい。なお、これらの元素は、鋼材において必ずしも必須ではないことから、含有量の下限値は0%である。各元素の限定理由について説明する。
B:0.10%以下
Bは焼入性を向上させ、強度を高める元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Bを過剰に含有させても効果が飽和し、母材およびHAZの靭性が低下する場合がある。そのため、B含有量は0.10%以下とする。B含有量は0.050%以下であるのが好ましく、0.030%以下であるのがより好ましく、0.020%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、B含有量は0.0003%以上であるのが好ましく、0.0005%以上であるのがより好ましい。
Nb:0.10%以下
Nbは、Tiと同様に、窒化物を形成し、結晶粒の微細化および強度の向上に寄与する元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Nbが過剰に含有された場合、窒化物が粗大になり、機械特性が劣化する。そのため、Nb含有量は0.10%以下とする。Nb含有量は0.085%以下であるのが好ましく、0.070%以下であるのがより好ましく、0.050%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Nb含有量は0.005%以上であるのが好ましく、0.010%以上であるのがより好ましく、0.015%以上であるのがさらに好ましい。
V:0.10%以下
Vは、Ti、Nbと同様に、窒化物を形成し、結晶粒の微細化および強度の向上に寄与する元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Vが過剰に含有された場合、窒化物が粗大になり、機械特性が劣化する。そのため、V含有量は0.10%以下とする。V含有量は0.080%以下であるのが好ましく、0.060%以下であるのがより好ましく、0.040%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、V含有量は0.010%以上であるのが好ましい。
本発明の鋼の化学組成において、上記の元素に加えて、さらに、耐食性を向上させるために、SnおよびSbから選択される1種以上を、以下に示す範囲において含有させてもよい。なお、これらの元素は、鋼材において必ずしも必須ではないことから、含有量の下限値は0%である。各元素の限定理由について説明する。
Sn:0.30%以下
Snは、Cuと同時に含有させると酸腐食環境での耐食性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Snが過剰に含有された場合、熱間加工性が低下する。そのため、Sn含有量は0.30%以下とする。Sn含有量は0.25%以下であるのが好ましく、0.20%以下であるのがより好ましく、0.15%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Sn含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.02%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
Sb:0.30%以下
Sbは、Cuと同時に含有させると、硫酸および塩酸に対する耐食性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Sbが過剰に含有された場合、熱間加工性が低下し、生産性を損なう。そのため、Sb含有量は0.30%以下とする。Sb含有量は0.25%以下であるのが好ましく、0.20%以下であるのがより好ましく、0.15%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Sb含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.02%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
本発明の鋼材の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。ここで不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料その他の要因により混入する成分であって、本発明に係る鋼材に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
FI:0.12~1.50
FIは、鋼中にCrおよびTiを含有させた上で、腐食の起点となる酸化物および窒化物の形成を抑制するために導出された指標であり、優れた耐食性を得るために、FIは0.12~1.50とする。FIは0.20以上であるのが好ましく、0.30以上であるのがより好ましく、0.50以上であるのがさらに好ましい。また、FIは1.40以下であるのが好ましく、1.30以下であるのがより好ましく、1.20以下であるのがさらに好ましい。
FIは、下記(i)式で定義されるように、Cr原子の数とTi原子の数との合計から構成される。すなわち、Cr/52、Ti/48は、それぞれ、Cr、Tiの含有量を各元素の質量数で除した項である。
FI=1000×((Cr/52)+(Ti/48)) ・・・(i)
Al/O:3.0~60.0
上記のように、AlおよびOは、鋼材の耐食性に影響を及ぼす。O含有量が過剰となるとAl/Oが小さくなり、Al含有量が過剰となるとAl/Oが大きくなり、いずれの場合も酸化物が生成され、腐食起点となりやすい。そのため、Al/Oは3.0~60.0とするのが好ましい。Al/Oは、5.0以上であるのがより好ましく、10.0以上であるのがさらに好ましい。また、Al/Oは、50.0以下であるのがより好ましく、40.0以下であるのがさらに好ましい。
(B)介在物
本発明に係る鋼材は、鋼材中にMnSおよびMnS酸化物を含む。そして、最大長さが2.0μm以上のMnSの個数密度が50.0/mm未満である。加えて、最大長さが2.0μm以上のMnSの個数密度に対する、最大長さが2.0μm以上のMnS酸化物の個数密度の比が0.10以上である。
なお、最大長さが2.0μm未満のMnSは鋼材の耐食性にはほとんど影響を与えないため、本発明においては、最大長さが2.0μm以上の介在物を対象とすることとする。以下の説明では、最大長さが2.0μm以上のMnSを単にMnSと呼び、最大長さが2.0μm以上のMnS酸化物を単にMnS酸化物と呼ぶ。
上述のように、本発明の鋼材において、MnSの形成は避けられない。しかしながら、MnSは腐食の起点となり酸腐食環境での耐食性を劣化させる。そのため、MnSの個数密度を50.0/mm未満とする。MnSの個数密度は45.0/mm以下であるのが好ましく、40.0/mm以下であるのがより好ましい。
一方、MnおよびSの含有量の極端な低減は、本発明の鋼材においては、強度および耐食性を向上させる観点から好ましくない。これらを両立するためには、MnSを無害化する必要がある。MnSが酸素と結合し、MnS酸化物となると無害化され、腐食の起点とはなりづらくなる。そのことから、本発明においては、MnSの個数密度に対する、MnS酸化物の個数密度の比を0.10以上とする。上記の比は0.12以上であるのが好ましく、0.15以上であるのがより好ましい。
MnSの個数密度、およびMnS酸化物の個数密度は、走査電子顕微鏡(SEM)が備えるエネルギー分散型X線分析(EDS)により測定する。測定倍率は1000倍とし、視野内に検出されるMnSおよびMnS酸化物の最大長さを測定する。そして、それぞれ最大長さが2.0μm以上である介在物の個数を数え、視野面積で除することで、個数密度を求める。
介在物の同定は、EDSにより行い、MnとSとの合計含有量が90質量%以上である介在物をMnSと判断し、さらにOのピークが検出され、かつ、Oの含有量が18質量%以上であり、MnとSとOとの合計含有量が90質量%以上である介在物をMnS酸化物と判断する。
(C)製造方法
本発明の一実施形態に係る鋼材の製造方法について説明する。本実施形態に係る鋼材には、熱間圧延を施し、さらに必要に応じて冷間圧延を施して製造される鋼板、形鋼、鋼管等が含まれる。中でも、本発明に係る鋼材は、フィン材等に使用される薄板として好適に用いることができる。そのため、鋼材の厚さは、0.5~2.5mmであることが好ましく、0.7~2.3mmであることがより好ましく、1.0~1.6mmであることがさらに好ましい。
本実施形態に係る鋼材は、常法で鋼を溶製し、成分の調整後、鋳造して得られた鋼片を熱間圧延し、さらに必要に応じて冷間圧延を施して製造される。CuSの生成を促進し、MnSの生成を極力抑制するとともに、不可避的に鋼材中に存在するMnSおよびMnS酸化物の個数密度の比を上述した範囲とするためには、熱間圧延前の加熱温度を比較的低温とすることが重要であり、具体的には1000~1130℃とすることが好ましい。また、1000~1130℃の温度域であれば、長時間保持してもMnSは粗大化しないため、保持する時間は特に限定しないが、常法では、保持時間は5~20分とするのが一般的である。
熱間圧延前の加熱温度を低くすることで、MnSの成長を抑制するとともに、圧延時に微細化することが可能となる。微細化されたMnSは相対的に表面積が大きいため、酸素と結合しやすくなり、MnS酸化物となりやすくなる。MnSの個数密度を45.0/mm以下とし、MnSに対するMnS酸化物の個数密度の比を0.12以上とするためには、熱間圧延前の加熱温度は1080℃以下とすることがより好ましい。
一方、熱間圧延前の加熱温度を1000℃以上とすることで、圧延機への負担を軽減できる。そのため、熱間圧延前の加熱温度は1000℃以上とすることが好ましい。
熱間圧延後の熱延鋼板に対しては、コイル巻取り等の次工程が加えられる。その際、鋼板は温度低下するが、熱延完了から400℃に達するまでの時間は4時間以上であることが望ましい。この温度域にさらされることでMnSと酸素の結合が促進される。熱間圧延後、冷間圧延して冷延鋼板としてもよい。さらに冷間圧延後には熱処理を施してもよい。
得られた鋼板から鋼管を製造する場合は、鋼板を管状に成形して溶接すればよく、例えば、UO鋼管、電縫鋼管、鍛接鋼管、スパイラル鋼管等にすることができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。なお、以下に示す実施例での条件は、本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。また本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1に示す化学組成を有する鋼(A1~A13、B1~B11)を溶製し、鋼塊に対して表2に示す条件で熱間圧延を行い、厚さが20mmの熱延鋼板を製造した。ただし、加熱保持時間は15分とした。熱延後に巻き取りを模擬した冷却を行った後、さらに冷間圧延を行い、厚さが13mmの冷延鋼板とした。
Figure 2023066026000001
Figure 2023066026000002
得られた各鋼板からSEM観察用の試験片を切り出し、SEMが備えるEDSにより介在物の個数密度の測定を行った。測定倍率は1000倍とし、視野内に検出されるMnSおよびMnS酸化物の最大長さを測定し、それぞれ最大長さが2.0μm以上である介在物の個数を数え、視野面積で除することで、個数密度を求めた。
さらに、得られた各鋼板を用いて、以下に示す各種の性能評価試験を行った。
<耐硫酸性、耐塩酸性>
各鋼板から板厚1mm、幅25mm、長さ25mmの試験片を板厚中央部から採取し、湿式#400研磨で仕上げ、耐食性評価用の試験片とした。耐食性の評価は硫酸浸漬試験および塩酸浸漬試験によって行った。硫酸浸漬試験では、試験片を70℃の50%硫酸水溶液に6時間浸漬し、塩酸浸漬試験では、試験片を80℃の10%塩酸水溶液中に5時間浸漬した。
その後、硫酸浸漬試験および塩酸浸漬試験による試験片の腐食減量から、それぞれ腐食速度を算出した。本実施例においては、硫酸浸漬試験による腐食速度が15.0mg/cm/h以下である場合に、耐硫酸性に優れると判断し、塩酸浸漬試験による腐食速度が10.0mg/cm/h以下である場合に、耐塩酸性に優れると判断した。
<熱間加工性>
上記条件で圧延した熱間圧延材の表面を外観目視し、割れが生じていたものを×、割れが生じていないものを〇として、熱間加工性を評価した。
<引張強さおよび全伸び>
JIS Z 2241:2011に準拠して、厚さ1mmの引張試験片を作製し、引張試験を行い、引張強さおよび全伸びを求めた。引張強さが350MPa以上のものを○、350MPa未満のものを×とした。全伸びは冷間加工性の指標とし、30%以上のものを○、30%未満のものを×とした。
表3に、介在物の個数密度の測定結果、ならびに耐硫酸浸漬試験、耐塩酸浸漬試験、熱間加工性および引張試験の評価結果をまとめて示す。
Figure 2023066026000003
表3に示すように、本発明の規定をすべて満足する試験No.1~13では、いずれの性能評価試験においても優れた結果となった。これに対して、比較例である試験No.14~27では、耐硫酸性、耐塩酸性、熱間加工性および冷間加工性の少なくともいずれかにおいて、悪化する結果となった。
本発明の鋼材は、重油、石炭等の化石燃料、液化天然ガスなどのガス燃料、都市ごみなどの一般廃棄物、廃油、プラスチック、排タイヤ等の産業廃棄物および下水汚泥等を燃焼させるボイラーの排煙設備に使用することができる。具体的には、排煙設備の煙道ダクト、ケーシング、熱交換器、2基の熱交換器(熱回収器および再加熱器)で構成されるガス-ガスヒータ、脱硫装置、電気集塵機、誘引送風機、回転再生式空気予熱器のバスケット材および伝熱エレメント板などに好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.0010~0.15%、
    Si:0.10~0.80%、
    Mn:0.50~1.00%、
    Cu:0.10~0.50%、
    Ni:0.010~0.80%、
    Cr:0.005~0.070%、
    Co:0.002~0.020%、
    MoおよびWの一方または両方:合計で0.001~0.30%、
    Al:0.01~0.10%
    Ti:0.001~0.067%、
    N:0.0005~0.0050%、
    P:0.050%以下、
    S:0.00050~0.0200%、
    O:0.0010~0.0045%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    下記(i)式で定義されるFIが0.12~1.50であり、
    鋼材中にMnSおよびMnS酸化物を含み、最大長さが2.0μm以上のMnSの個数密度が50.0/mm未満であり、かつ最大長さが2.0μm以上のMnSの個数密度に対する、最大長さが2.0μm以上のMnS酸化物の個数密度の比が0.10以上である、
    鋼材。
    FI=1000×((Cr/52)+(Ti/48)) ・・・(i)
    但し、上記式中の元素記号は、鋼材中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
  2. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    B:0.10%以下、
    Nb:0.10%以下、および
    V:0.10%以下、
    のうち少なくとも1種を含有するものである、
    請求項1に記載の鋼材。
  3. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Sn:0.30%以下、および
    Sb:0.30%以下、
    から選択される1種以上を含有するものである、
    請求項1または請求項2に記載の鋼材。
  4. Al含有量とO含有量との質量比Al/Oが3.0~60.0である、
    請求項1または請求項2に記載の鋼材。
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