JP2023114663A - 鋼材 - Google Patents

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慎 長澤
Shin Nagasawa
悠 佐藤
Hisashi Sato
工 西本
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Abstract

【課題】高濃度の硫酸腐食環境において優れた耐食性を有する鋼材を提供する。【解決手段】化学組成が、質量%で、C:0.01~0.20%、Si:0.04~0.40%、Mn:0.20~1.50%、Cu:0.05~1.00%、Sb:0.01~0.30%、Ni:0.01~0.50%、Al:0.005~0.050%、MoおよびWの一方または両方の合計:0.01~0.30%、P:0.020%以下、S:0.0005~0.015%、N:0.0100%以下、O:0.0005~0.0035%、Ca:0.0007~0.010%、残部:Feおよび不純物であり、鋼材中にMnS、Ca含有硫化物、およびCaS酸化物を含み、最大長さが2.0μm以上のMnSの個数密度が40.0/mm2未満であり、最大長さが4.0μm以上のCa含有硫化物、および最大長さが4.0μm以上のCaS酸化物の合計の個数密度が8.0/mm2未満である、鋼材。【選択図】 なし

Description

本発明は、鋼材に関する。
ボイラーの火炉および廃棄物焼却施設の焼却炉等では、水蒸気、硫黄酸化物、塩化水素等を含む排ガスが発生する。この排ガスは、排ガス煙突等において冷却されると、凝縮して硫酸および塩酸となり、硫酸露点腐食および塩酸露点腐食として知られるように、排ガス流路を構成する鋼材に対し、著しい腐食を引き起こす。
このような問題に対し、耐硫酸・塩酸露点腐食鋼および高耐食ステンレス鋼が提案されている。例えば、特許文献1~5では、Cu、Sb、Co、Crなどを添加した耐硫酸露点腐食性に優れた鋼材が提案されている。
特開2001-164335号公報 特開2003-213367号公報 特開2007-239094号公報 特開2012-57221号公報 国際公開2021/095183号
Cu、Sb、Cr等を含有する鋼材は、排ガス煙突のような硫酸露点腐食環境において、優れた耐食性を発揮する。しかし、ボイラーおよび焼却設備を長寿命化するためには、50%を超える濃度の硫酸が生成する厳しい硫酸露点腐食環境における、優れた耐食性が要求される。
本発明は、上記の問題を解決し、高濃度の硫酸露点腐食環境において優れた耐食性を有する鋼材を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、下記の鋼材を要旨とする。
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.01~0.20%、
Si:0.04~0.40%、
Mn:0.20~1.50%、
Cu:0.05~1.00%、
Sb:0.01~0.30%、
Ni:0.01~0.50%、
Al:0.005~0.050%、
MoおよびWの一方または両方の合計:0.01~0.30%、
P:0.020%以下、
S:0.0005~0.015%、
N:0.0100%以下、
O:0.0005~0.0035%、
Ca:0.0007~0.010%、
残部:Feおよび不純物であり、
鋼材中にMnS、Ca含有硫化物、およびCaS酸化物を含み、
最大長さが2.0μm以上のMnSの個数密度が40.0/mm未満であり、
最大長さが4.0μm以上のCa含有硫化物、および最大長さが4.0μm以上のCaS酸化物の合計の個数密度が8.0/mm未満である、
鋼材。
(2)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Sn:0.30%以下、
As:0.30%以下、
Co:0.30%以下、および
Bi:0.30%以下、
から選択される1種以上を含有するものである、
上記(1)に記載の鋼材。
(3)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Cr:1.0%以下、
Ti:0.050%以下、
Nb:0.10%以下、
V:0.10%以下、
Ta:0.050%以下、および
B:0.010%以下、
から選択される1種以上を含有するものである、
上記(1)または(2)に記載の鋼材。
(4)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Mg:0.010%以下、および
REM:0.010%以下、
から選択される1種以上を含有するものである、
上記(1)~(3)のいずれかに記載の鋼材。
本発明によれば、高濃度の硫酸露点腐食環境において優れた耐食性を有する鋼材を提供することが可能となる。
本発明者らは前記した課題を解決するために、鋼材の耐食性を詳細に調査した結果、以下の知見を得るに至った。
Mnは鋼の強度および靱性を確保する上で必須の元素であるが、一方でMnSを形成し酸腐食環境での耐食性を劣化させる。また、本発明においては、SはCuおよびSbとともに含有させることで耐食性を向上させる効果を有するため、極端な低減は好ましくない。
そこで、Caを必須添加し、鋼材中に含まれるSの一部または全部をCaSとして固定することで、MnSを無害化した。しかし、本発明者らの研究により、CaSも腐食の起点となり得ることが判明した。特に、高濃度の硫酸露点腐食環境においては、CaSが溶解しやすくなるため、CaSを起点とした腐食が顕在化することが判明した。
この問題を解決するため、本発明者らはさらなる検討を重ねた。その結果、鋼材中に存在したCaSは、Ca含有硫化物またはCaS酸化物であり、特に、粗大なCa含有硫化物およびCaS酸化物が腐食の起点となることを見出した。
粗大なCa含有硫化物およびCaS酸化物の生成を抑制する方法をさらに調査した。その結果、Ca含有硫化物およびCaS酸化物は鋳造時に生成し、熱延前の加熱では溶解しないことから、鋳造時に粗大化を抑制する必要があることが分かった。そのため、Caを含有させることに加えて、鋳造時のスラブ冷却速度を一定以上に制御することで、Ca含有硫化物およびCaS酸化物の凝集による粗大化を抑制することができることを見出した。
また、Caを含有させてもわずかに生成してしまうMnSについても、MnSを微細化するとともに、酸素と結合させ、MnS酸化物とすることで無害化することができる。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
(A)化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.01~0.20%
Cは、鋼材の強度を向上させる元素である。しかしながら、Cが過剰に含有された場合、溶接熱影響部を劣化させる。そのため、C含有量は0.01~0.20%とする。C含有量は0.03%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましい。また、C含有量は0.18%以下であるのが好ましく、0.15%以下であるのがより好ましい。
Si:0.04~0.40%
Siは、脱酸および強度の向上に寄与し、酸化物の形態を制御する元素である。しかしながら、Siが過剰に含有された場合、靭性を低下させる。そのため、Si含有量は0.04~0.40%とする。Si含有量は0.05%以上であるのが好ましく、0.10%以上であるのがより好ましい。また、Si含有量は0.30%以下であるのが好ましい。
Mn:0.20~1.50%
Mnは、強度および靱性を向上させる元素である。しかしながら、Mnが過剰に含有された場合、機械特性が劣化する。そのため、Mn含有量は0.20~1.50%とする。Mn含有量は0.50%以上であるのが好ましく、0.80%以上であるのがより好ましい。また、Mn含有量は1.20%以下であるのが好ましく、1.00%以下であるのがより好ましい。
Cu:0.05~1.00%
Cuは、Sbと同時に含有させると、硫酸に対する耐食性を顕著に発現する元素である。しかしながら、Cuが過剰に含有された場合、熱間加工性が低下し、生産性を損なう。そのため、Cu含有量は0.05~1.00%とする。Cu含有量は0.20%以上であるのが好ましい。また、Cu含有量は0.80%以下であるのが好ましく、0.50%以下であるのがより好ましい。
Sb:0.01~0.30%
Sbは、Cuと同時に含有させると、硫酸に対する耐食性を顕著に発現する元素である。しかしながら、Sbが過剰に含有された場合、熱間加工性が低下し、生産性を損なう。そのため、Sb含有量は0.01~0.30%とする。Sb含有量は0.03%以上であるのが好ましく、0.06%以上であるのがより好ましく、0.10%以上であるのがさらに好ましい。また、Sb含有量は0.20%以下であるのが好ましく、0.15%以下であるのがより好ましい。
なお、本発明においては、CuおよびSbを複合的に含有させるが、その合計含有量は0.05%以上、0.10%以上、0.20%以上、または0.30%以上であるのが好ましい。一方、熱間加工性を重視する場合においては、CuおよびSbの合計含有量は0.90%以下、0.80%以下、0.70%以下、または0.60%以下であるのが好ましい。
Ni:0.01~0.50%
Niは、酸腐食環境での耐食性を向上させる元素であり、加えてCuを含有する鋼において、製造性を高める効果を有する。Cuは、耐食性を向上させる効果が大きいが、偏析し易く、単独で含有させると鋳造後の割れを助長する場合がある。これに対して、NiはCuの表面偏析を軽減する作用がある。Niを含有させることで、Cuの偏析および鋳片割れの抑制に加えて、偏析に起因する局部腐食の発生も抑制されるため、耐食性を向上させる効果が得られる。しかしながら、Niは高価な元素であり、多量の含有は製鋼コストの増大を招く。そのため、Ni含有量を0.01~0.50%とする。Ni含有量は0.03%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましく、0.10%以上であるのがさらに好ましい。Ni含有量は0.40%以下であるのが好ましい。
Al:0.005~0.050%
Alは、脱酸剤として添加される。しかしながら、Alが過剰に含有された場合、溶接金属部の靭性を劣化させる。そのため、Al含有量は0.005~0.050%とする。Al含有量は0.010%以上であるのが好ましく、0.020%以上であるのがより好ましい。また、Al含有量は0.045%以下であるのが好ましく、0.040%以下であるのがより好ましい。
MoおよびWの一方または両方の合計:0.01~0.30%
MoおよびWは、CuおよびSbと同時に含有させることにより、酸腐食環境での耐食性を向上させる元素である。しかしながら、MoおよびWは高価な元素であるため、過剰な含有は経済性の低下を招く。そのため、MoおよびWの合計含有量は0.01~0.30%とする。MoおよびWは、一方を単独で含有させてもよく、両方を同時に含有させてもよい。MoおよびWの合計含有量は0.05%以上であるのが好ましく、0.10%以上であるのがより好ましい。また、MoおよびWの合計含有量は0.25%以下であるのが好ましく、0.20%以下であるのがより好ましい。
P:0.020%以下
Pは、不純物であり、鋼材の機械特性および生産性を低下させる。そのため、P含有量に上限を設けて0.020%以下とする。P含有量は0.015%以下であるのが好ましく、0.010%以下であるのがより好ましい。なお、P含有量は可能な限り低減することが好ましく、つまり含有量が0%でもよいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、P含有量は0.001%以上としてもよい。
S:0.0005~0.015%
Sは、一般的に不純物であり、鋼材の機械特性および生産性を低下させる。しかしながら、本発明において、Sは、CuおよびSbと同時に含有させることにより、酸腐食環境での耐食性を向上させる効果を有する。そのため、S含有量は0.0005~0.015%とする。S含有量は0.0010%以上、0.0050%以上、または0.010%以上であるのが好ましい。また、S含有量は0.0130%以下であるのが好ましく、0.0110%以下であるのがより好ましい。
N:0.0100%以下
Nは、不純物であり、鋼材の機械特性および生産性を低下させる。そのため、N含有量に上限を設けて0.0100%以下とする。N含有量は0.0080%以下であるのが好ましい。なお、N含有量は0%でもよいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、N含有量は0.0010%以上としてもよい。また、Nは、微細な窒化物として析出することで機械特性等の向上に寄与する効果を有する。その効果を得たい場合は、N含有量は0.0020%以上としてもよい。
O:0.0005~0.0035%
Oは、MnSと結合することで、MnSを無害化し、耐食性および機械特性の悪化を防ぐ効果を有する元素である。しかしながら、Oが過剰に含有された場合、酸腐食環境において腐食の起点となる粗大な酸化物を生成する。そのため、O含有量は0.0005~0.0035%とする。O含有量は0.0010%以上であるのが好ましく、0.0015%以上であるのがより好ましい。また、O含有量は0.0030%以下であるのが好ましく、0.0025%以下であるのがより好ましい。
Ca:0.0007~0.010%
Caは、主に硫化物の形態の制御に用いられる元素であり、また、微細な酸化物を形成させる効果を有する。しかしながら、Caが過剰に含有された場合、機械特性が損なわれる場合がある。そのため、Ca含有量は0.0007~0.010%とする。Ca含有量は0.0010%以上であるのが好ましく、0.0020%以上であるのがより好ましい。また、Ca含有量は0.0050%以下であるのが好ましい。
本発明の鋼の化学組成において、上記の元素に加えて、酸腐食環境での耐食性を向上させるために、さらにSn、As、Co、およびBiから選択される1種以上を、以下に示す範囲において含有させてもよい。なお、これらの元素は、鋼材において必ずしも必須ではないことから、含有量の下限値は0%である。各元素の限定理由について説明する。
Sn:0.30%以下
Snは、Cuと同時に含有させると酸腐食環境での耐食性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Snが過剰に含有された場合、熱間加工性が低下する。そのため、Sn含有量は0.30%以下とする。Sn含有量は0.25%以下であるのが好ましく、0.20%以下であるのがより好ましく、0.15%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Sn含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.02%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
As:0.30%以下
Asは、SbおよびSnに比べて顕著な効果はないが、酸腐食環境における耐食性の向上に有効な元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Asが過剰に含有された場合、熱間加工性が低下する。そのため、As含有量は0.30%以下とする。As含有量は0.20%以下であるのが好ましく、0.10%以下であるのがより好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、As含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.02%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
Co:0.30%以下
Coは、SbおよびSnに比べて顕著な効果はないが、酸腐食環境における耐食性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Coが過剰に含有された場合、経済性が低下する。そのため、Co含有量は0.30%以下とする。Co含有量は0.20%以下であるのが好ましく、0.10%以下であるのがより好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Co含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.02%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
Bi:0.30%以下
Biは、SbおよびSnに比べて顕著な効果はないが、酸性環境における耐食性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Biが過剰に含有された場合、熱間加工性が低下する。そのため、Bi含有量は0.30%以下とする。Bi含有量は0.20%以下であるのが好ましく、0.10%以下であるのがより好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Bi含有量は0.001%以上であるのが好ましく、0.002%以上であるのがより好ましく、0.005%以上であるのがさらに好ましい。
本発明の鋼の化学組成において、上記の元素に加えて、機械特性等を向上させるために、さらにCr、Ti、Nb、V、Ta、およびBから選択される1種以上を、以下に示す範囲において含有させてもよい。なお、これらの元素は、鋼材において必ずしも必須ではないことから、含有量の下限値は0%である。各元素の限定理由について説明する。
Cr:1.0%以下
Crは、焼入れ性を高めて強度を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Crは過剰に含有された場合、溶接性および靭性を劣化させる場合がある。そのため、Cr含有量は1.0%以下とする。Cr含有量は0.80%以下であるのが好ましく、0.50%以下であるのがより好ましく、0.30%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Cr含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.02%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
Ti:0.050%以下
Tiは、窒化物を形成し、結晶粒の微細化および強度の向上に寄与する元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Tiが過剰に含有された場合、窒化物が粗大になり、機械特性が劣化する。そのため、Ti含有量は0.050%以下とする。Ti含有量は0.040%以下であるのが好ましく、0.030%以下であるのがより好ましく、0.020%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Ti含有量は0.001%以上であるのが好ましく、0.002%以上であるのがより好ましく、0.005%以上であるのがさらに好ましい。
Nb:0.10%以下
Nbは、Tiと同様に、窒化物を形成し、結晶粒の微細化および強度の向上に寄与する元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Nbが過剰に含有された場合、窒化物が粗大になり、機械特性が劣化する。そのため、Nb含有量は0.10%以下とする。Nb含有量は0.090%以下であるのが好ましく、0.080%以下であるのがより好ましく、0.070%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Nb含有量は0.001%以上であるのが好ましく、0.005%以上であるのがより好ましく、0.010%以上であるのがさらに好ましい。
V:0.10%以下
Vは、Ti、Nbと同様に、窒化物を形成し、結晶粒の微細化および強度の向上に寄与する元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Vが過剰に含有された場合、窒化物が粗大になり、機械特性が劣化する。そのため、V含有量は0.10%以下とする。V含有量は0.080%以下であるのが好ましく、0.060%以下であるのがより好ましく、0.040%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、V含有量は0.001%以上であるのが好ましく、0.002%以上であるのがより好ましく、0.005%以上であるのがさらに好ましい。
Ta:0.050%以下
Taは、強度の向上に寄与する元素であり、また、メカニズムは必ずしも明らかでないが、耐食性の向上にも寄与するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Taは高価な元素であり、多量の含有は製鋼コストの増大を招く。そのため、Ta含有量は0.050%以下とする。Ta含有量は0.040%以下であるのが好ましく、0.030%以下であるのがより好ましく、0.020%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Ta含有量は0.001%以上であるのが好ましく、0.005%以上であるのがより好ましい。
B:0.010%以下
Bは焼入性を向上させ、強度を高める元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Bを過剰に含有させても効果が飽和し、母材およびHAZの靱性が低下する場合がある。そのため、B含有量は0.010%以下とする。B含有量は0.0080%以下であるのが好ましく、0.0060%以下であるのがより好ましく、0.0040%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、B含有量は0.0003%以上であるのが好ましく、0.0005%以上であるのがより好ましい。
本発明の鋼の化学組成において、上記の元素に加えて、脱酸および介在物の制御を目的として、さらにMgおよびREMから選択される1種以上を、以下に示す範囲において含有させてもよい。なお、これらの元素は、鋼材において必ずしも必須ではないことから、含有量の下限値は0%である。各元素の限定理由について説明する。
Mg:0.010%以下
Mgは、微細な酸化物を形成させるために、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Mgを過剰に添加することは製鋼コストの増大を招く。そのため、Mg含有量は0.010%以下とする。Mg含有量は0.0050%以下であるのが好ましく、0.0030%以下であるのがより好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Mg含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0003%以上であるのがより好ましく、0.0005%以上であるのがさらに好ましい。
REM:0.010%以下
REM(希土類元素)は、主に脱酸に用いられる元素であり、微細な酸化物を形成させるために、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、REMを過剰に添加することは製鋼コストの増大を招く。そのため、REM含有量は0.010%以下とする。REM含有量は0.0050%以下であるのが好ましく、0.0030%以下であるのがより好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、REM含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0003%以上であるのがより好ましく、0.0005%以上であるのがさらに好ましい。
ここで、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量は上記元素の合計量を意味する。なお、ランタノイドは、工業的には、ミッシュメタルの形で添加される。
本発明の鋼材の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。ここで不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料その他の要因により混入する成分であって、本発明に係る鋼材に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
(B)介在物
本発明に係る鋼材は、鋼材中にMnS、Ca含有硫化物、およびCaS酸化物を含む。そして、最大長さが2.0μm以上のMnSの個数密度が40.0/mm未満である。加えて、最大長さが4.0μm以上のCa含有硫化物、および最大長さが4.0μm以上のCaS酸化物の合計の個数密度が8.0/mm未満である。
なお、最大長さが2.0μm未満のMnSは鋼材の耐食性にはほとんど影響を与えないため、本発明においては、最大長さが2.0μm以上のMnSを対象とすることとする。以下の説明では、最大長さが2.0μm以上のMnSを単にMnSと呼ぶ。
また、最大長さが4.0μm未満のCa含有硫化物、および最大長さが4.0μm未満のCaS酸化物も、鋼材の耐食性にはほとんど影響を与えないため、最大長さが4.0μm以上のCa含有硫化物、および最大長さが4.0μm以上のCaS酸化物を対象とすることとする。以下の説明では、最大長さが4.0μm以上のCa含有硫化物を単にCa含有硫化物と呼び、最大長さが4.0μm以上のCaS酸化物を単にCaS酸化物と呼ぶ。
上述のように、本発明の鋼材において、MnSの形成は避けられない。しかしながら、MnSは腐食の起点となり硫酸露点腐食環境での耐食性を劣化させる。そのため、MnSの個数密度を40.0/mm未満に制限する必要がある。MnSの個数密度は35.0/mm以下であるのが好ましく、30.0/mm以下であるのがより好ましい。
一方、MnおよびSの含有量の極端な低減は、本発明の鋼材においては、耐食性を向上させる観点から好ましくない。そこで、本発明の鋼材においては、上述のように、Caを含有させることで、Sの一部または全部を固定し、MnSの生成を抑制する。しかし、高濃度の硫酸露点腐食環境においては、Ca含有硫化物およびCaS酸化物は腐食の起点となる。そのため、Ca含有硫化物およびCaS酸化物の合計の個数密度を8.0/mm未満に制限する必要がある。Ca含有硫化物およびCaS酸化物の合計の個数密度は、7.0/mm以下であるのが好ましく、6.5/mm以下であるのがより好ましい。
MnSの個数密度、ならびにCa含有硫化物およびCaS酸化物の合計の個数密度は、走査電子顕微鏡(SEM)が備えるエネルギー分散型X線分析(EDS)により測定する。まず、鋼板の板厚中央部において、測定倍率は1000倍とし、視野内に検出されるMnS、Ca含有硫化物、およびCaS酸化物の最大長さを測定する。そして、最大長さが2.0μm以上のMnSの個数を数え、視野面積で除することで、MnSの個数密度を求める。また、最大長さが4.0μm以上のCa含有硫化物、および最大長さが4.0μm以上のCaS酸化物の個数をそれぞれ数えて合計し、視野面積で除することで、Ca含有硫化物およびCaS酸化物の合計の個数密度を求める。
介在物の同定は、EDSにより行い、MnとSとの合計含有量が60質量%以上であり、Caの含有量が10質量%未満であり、かつ、Oの含有量が10質量%未満である介在物を、MnSと判断する。また、CaとSとの合計含有量が40質量%以上であり、Caの含有量が10質量%以上であり、かつ、Oの含有量が10質量%未満である介在物を、Ca含有硫化物と判断する。そして、CaとSとOとの合計含有量が50質量%以上であり、Caの含有量が10質量%以上であり、かつ、Oの含有量が10質量%以上である介在物を、CaS酸化物と判断する。
(C)製造方法
本発明の一実施形態に係る鋼材の製造方法について説明する。本実施形態に係る鋼材には、熱間圧延を施し、さらに必要に応じて冷間圧延を施して製造される鋼板、形鋼、鋼管等が含まれる。好ましくは板厚が0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上の鋼板である。
本実施形態に係る鋼材は、常法で鋼を溶製し、成分の調整後、鋳造して得られた鋼片を熱間圧延し、さらに必要に応じて冷間圧延を施して製造される。鋼材中に存在するCa含有硫化物およびCaS酸化物の合計の個数密度を上述した範囲に制御するためには、鋳造後の冷却速度を速くすることが重要であり、具体的には1400~1250℃の温度域における冷却速度を0.08℃/s以上とする。冷却速度の上限は特に設けないが、製造コストの観点から、3.0℃/s以下とすることが好ましい。冷却速度は、鋼塊の表面温度が1400℃から1250℃に到達する間に要した時間から算出する。
鋳造は、例えば、造塊法で行ってもよく、連続鋳造法で行ってもよい。また、各鋳造法において、冷却速度は下記の方法で調整することができる。造塊法では、例えば、鋳型のサイズを変更することにより冷却速度を調整できる。具体的には、鋳型の横断面の面積を調整することにより、冷却速度を調整できる。すなわち、冷却速度を速くしたければ、鋳型の長手方向に垂直な断面(以下、「横断面」ともいう。)の断面積を小さくすればよい。
連続鋳造法では、例えば、鋳型のサイズを変更することにより冷却速度を調整できる。具体的には、鋳型の横断面の面積を調整することにより、冷却速度を調整できる。また、鋳型下流に配列されたロール群において、ロール間に鋳片を冷却するための冷却ノズルが複数配置されている。そのため、これら複数の流体ノズルから噴射する流体(水に代表される冷却液、空気、またはそれらの混合流体)の流量を調節することによっても、冷却速度を調整できる。
鋼材中に存在するMnSの個数密度を上述した範囲に制御するためには、熱間圧延前の加熱温度を比較的低温とすることが重要であり、具体的には1000~1150℃とすることが好ましい。
熱間圧延前の加熱温度を低くすることで、MnSの成長を抑制するとともに、圧延時に微細化することが可能となる。微細化されたMnSは相対的に表面積が大きいため、酸素と結合しやすくなり、MnS酸化物となりやすくなる。MnSの個数密度を30.0/mm未満とするためには、熱間圧延前の加熱温度は1130℃以下とすることがより好ましい。
熱間圧延後の熱延鋼板に対しては、コイル巻取り等の次工程が加えられる。その際、鋼板は温度低下するが、熱延完了から400℃に達するまでの時間は4時間以上であることが望ましい。この温度域にさらされることでMnSと酸素との結合が促進される。熱間圧延後、冷間圧延して冷延鋼板としてもよい。さらに冷間圧延後には熱処理を施してもよい。
得られた鋼板から鋼管を製造する場合は、鋼板を管状に成形して溶接すればよく、例えば、UO鋼管、電縫鋼管、鍛接鋼管、スパイラル鋼管等にすることができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。なお、以下に示す実施例での条件は、本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。また本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1に示す化学組成を有する鋼(1~26)を溶製し、造塊法にて、鋳型の厚みを変えることで鋳造後の冷却速度を調整した。ここで、冷却速度は、鋼塊の表面温度が1400℃から1250℃に到達する間に要した時間から算出した。その後、鋼塊に対して表2に示す条件で熱間圧延を行い、厚さが8mmの熱延鋼板を製造した。一部の鋼板(鋼材No.1を使用した試験No.27)については、熱延後に巻き取りを模擬した冷却を行った後、さらに酸洗、冷間圧延および焼鈍を行い、厚さが4mmの冷延鋼板とした。
Figure 2023114663000001
Figure 2023114663000002
得られた各鋼板の板厚中央部からSEM観察用の試験片を切り出し、SEMが備えるEDSにより介在物の個数密度の測定を行った。まず、測定倍率は1000倍とし、視野内に検出されるMnS、Ca含有硫化物、およびCaS酸化物の最大長さを測定した。そして、最大長さが2.0μm以上のMnSの個数を数え、視野面積で除することで、MnSの個数密度を求めた。また、最大長さが4.0μm以上のCa含有硫化物、および最大長さが4.0μm以上のCaS酸化物の個数をそれぞれ数えて合計し、視野面積で除することで、Ca含有硫化物およびCaS酸化物の合計の個数密度を求めた。なお、表2における「CaS個数密度」は、Ca含有硫化物およびCaS酸化物の合計の個数密度を表す。
さらに、得られた各鋼板を用いて、耐硫酸性の評価試験を行った。
<耐硫酸性>
各鋼板から板厚3mm、幅25mm、長さ25mmの試験片を板厚中央部から採取し、湿式#400研磨で仕上げ、耐食性評価用の試験片とした。耐食性の評価は、試験片を80℃の60%硫酸水溶液に6時間浸漬する硫酸浸漬試験によって行った。
その後、硫酸浸漬試験による試験片の腐食減量から、それぞれ腐食速度を算出した。本実施例においては、硫酸浸漬試験による腐食速度が20.0mg/cm/h以下である場合に、耐硫酸性に優れると判断した。
なお、参考として、試験No.1、15、および29について、各鋼板から板厚3mm、幅25mm、長さ25mmの試験片を板厚中央部から採取し、湿式#400研磨で仕上げ、試験片を70℃の50%硫酸水溶液に6時間浸漬する硫酸浸漬試験も行った。また、硫酸浸漬試験による腐食速度が20.0mg/cm/h以下である場合に、耐硫酸性に優れると判断した。
表2に、介在物の個数密度の測定結果、および耐硫酸浸漬試験の評価結果をまとめて示す。
表2に示すように、本発明の規定を全て満足する試験No.1~27では、耐硫酸性に優れた結果となった。特に、本発明例である試験No.1および15では、70℃の50%硫酸水溶液での試験、および80℃の60%硫酸水溶液での試験の両方で、耐硫酸性に優れた結果となった。これに対して、比較例である試験No.28~31では、耐硫酸性が悪化する結果となった。特に、CaS個数密度が8.0/mm以上である試験番号No.29は、70℃の50%硫酸水溶液での試験では耐硫酸性に優れる結果であったが、より厳しい80℃の60%硫酸水溶液での試験では耐硫酸性が劣化する結果となった。
本発明の鋼材は、重油、石炭等の化石燃料、液化天然ガスなどのガス燃料、都市ごみなどの一般廃棄物、廃油、プラスチック、排タイヤ等の産業廃棄物および下水汚泥等を燃焼させるボイラーの排煙設備に使用することができる。具体的には、排煙設備の煙道ダクト、ケーシング、熱交換器、2基の熱交換器(熱回収器および再加熱器)で構成されるガス-ガスヒータ、脱硫装置、電気集塵機、誘引送風機、回転再生式空気予熱器のバスケット材および伝熱エレメント板などに好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.01~0.20%、
    Si:0.04~0.40%、
    Mn:0.20~1.50%、
    Cu:0.05~1.00%、
    Sb:0.01~0.30%、
    Ni:0.01~0.50%、
    Al:0.005~0.050%、
    MoおよびWの一方または両方の合計:0.01~0.30%、
    P:0.020%以下、
    S:0.0005~0.015%、
    N:0.0100%以下、
    O:0.0005~0.0035%、
    Ca:0.0007~0.010%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    鋼材中にMnS、Ca含有硫化物、およびCaS酸化物を含み、
    最大長さが2.0μm以上のMnSの個数密度が40.0/mm未満であり、
    最大長さが4.0μm以上のCa含有硫化物、および最大長さが4.0μm以上のCaS酸化物の合計の個数密度が8.0/mm未満である、
    鋼材。
  2. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Sn:0.30%以下、
    As:0.30%以下、
    Co:0.30%以下、および
    Bi:0.30%以下、
    から選択される1種以上を含有するものである、
    請求項1に記載の鋼材。
  3. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Cr:1.0%以下、
    Ti:0.050%以下、
    Nb:0.10%以下、
    V:0.10%以下、
    Ta:0.050%以下、および
    B:0.010%以下、
    から選択される1種以上を含有するものである、
    請求項1または請求項2に記載の鋼材。
  4. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Mg:0.010%以下、および
    REM:0.010%以下、
    から選択される1種以上を含有するものである、
    請求項1~請求項3のいずれかに記載の鋼材。

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