JP2023061275A - 鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】硫酸露点腐食環境において優れた耐食性を有し、かつ、高い降伏応力を有する鋼材を提供する。【解決手段】化学組成が、質量%で、C:0.010~0.20%、Si:0.04~1.00%、Mn:0.20~2.00%、Cu:0.10~1.00%、Al:0.005~0.10%、Cr:0.40~3.00%、Ti:0.010~0.50%、Ni:0.01~0.50%、P:0.050%以下、S:0.050%以下、N:0.0015~0.0100%、O:0.0035%以下、残部:Feおよび不純物であり、鋼材中にTiNを含み、最大長さが1.0μm以上2.0μm未満のTiNの個数密度が0.5/mm2以上であり、最大長さが4.0μm以上のTiNの個数密度が15/mm2未満であり、かつ最大長さが1.0μm以上のTiNの個数密度に対する、最大長さが1.0μm以上2.0μm未満のTiNの個数密度の比が0.20以上である、鋼材。【選択図】 なし

Description

本発明は、鋼材に関する。
ボイラーの火炉および廃棄物焼却施設の焼却炉等では、水蒸気、硫黄酸化物、塩化水素等を含む排ガスが発生する。この排ガスは、排ガス煙突等において冷却されると、凝縮して硫酸および塩酸となり、硫酸露点腐食および塩酸露点腐食として知られるように、排ガス流路を構成する鋼材に対し、著しい腐食を引き起こす。
このような問題に対し、耐硫酸・塩酸露点腐食鋼および高耐食ステンレス鋼が提案されている。例えば、特許文献1~4では、Cu、Sb、Co、Crなどを添加した耐硫酸露点腐食性に優れた鋼材が提案されている。
特開2001-164335号公報 特開2003-213367号公報 特開2007-239094号公報 特開2012-57221号公報
Cu、Sb、Cr等を含有する鋼材は、排ガス煙突のような硫酸腐食環境において、優れた耐食性を発揮する。しかし、減温塔の灰掃き出し羽根などは350℃を超える高温の環境で使用される。さらに、ガス中に硫黄酸化物を含むため、温度が低下した場合、鋼材は硫酸露点腐食環境で使用されることになる。このような環境で使用される材料は優れた耐硫酸露点腐食性に加えて、常温における高い降伏応力を有する必要がある。
本発明は、上記の問題を解決し、硫酸露点腐食環境において優れた耐食性を有し、かつ、高い降伏応力を有する鋼材を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、下記の鋼材を要旨とする。
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.010~0.20%、
Si:0.04~1.00%、
Mn:0.20~2.00%、
Cu:0.10~1.00%、
Al:0.005~0.10%、
Cr:0.40~3.00%、
Ti:0.010~0.50%、
Ni:0.01~0.50%、
P:0.050%以下、
S:0.050%以下、
N:0.0015~0.0100%、
O:0.0035%以下、
残部:Feおよび不純物であり、
鋼材中にTiNを含み、最大長さが1.0μm以上2.0μm未満のTiNの個数密度が0.5/mm以上であり、最大長さが4.0μm以上のTiNの個数密度が15/mm未満であり、かつ最大長さが1.0μm以上のTiNの個数密度に対する、最大長さが1.0μm以上2.0μm未満のTiNの個数密度の比が0.20以上である、
鋼材。
(2)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Mo:0.10%以下、
W:0.10%以下、
Sn:0.30%以下、
Sb:0.30%以下、
As:0.30%以下、
Co:0.30%以下、および
Bi:0.30%以下、
から選択される1種以上を含有するものである、
上記(1)に記載の鋼材。
(3)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Nb:0.10%以下、
V:0.10%以下、
Ta:0.050%以下、および
B:0.010%以下、
から選択される1種以上を含有するものである、
上記(1)または(2)に記載の鋼材。
(4)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Ca:0.010%以下、
Mg:0.010%以下、および
REM:0.010%以下、
から選択される1種以上を含有するものである、
上記(1)~(3)のいずれかに記載の鋼材。
(5)25℃における降伏応力が310MPa以上であることを特徴とする、
上記(1)~(4)のいずれかに記載の鋼材。
本発明によれば、硫酸露点腐食環境において優れた耐食性を有し、かつ、高い降伏応力を有する鋼材を提供することが可能となる。
本発明者らは前記した課題を解決するために、鋼材の耐食性および降伏応力を詳細に調査した結果、以下の知見を得るに至った。
降伏応力を高めるためには、TiNによるピン留め効果が有効である。しかし、粗大なTiNは腐食の起点となり、耐食性を劣化させる。特に、硫黄酸化物を含むガスが冷却され、非常に厳しい硫酸露点腐食環境となると、鋼材中のTiNによる耐食性劣化の影響はさらに大きくなることがわかった。そのため、TiNの大きさを適切な範囲とすることにより、鋼の降伏応力を維持しつつ、耐食性を向上させることができることを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
(A)化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.010~0.20%
Cは、鋼材の強度を向上させる元素である。しかしながら、Cが過剰に含有された場合、炭化物が増加し、耐食性が劣化する。そのため、C含有量は0.010~0.20%とする。強度が要求される場合は、C含有量は0.050%以上であるのが好ましい。また、C含有量は0.15%以下であるのが好ましく、0.10%以下であるのがより好ましい。
Si:0.04~1.00%
Siは、脱酸および強度の向上に寄与し、酸化物の形態を制御する元素である。しかしながら、Siが過剰に含有された場合、酸化物が増加し、耐食性を損なう。そのため、Si含有量は0.04~1.00%とする。Si含有量は0.10%以上であるのが好ましく、0.20%以上であるのがより好ましい。また、Si含有量は0.70%以下であるのが好ましく、0.60%以下であるのがより好ましい。
Mn:0.20~2.00%
Mnは、強度を向上させる元素である。しかしながら、Mnが過剰に含有された場合、粗大なMnSが生成し、耐食性および機械特性が劣化する。そのため、Mn含有量は0.20~2.00%とする。Mn含有量は0.50%以上であるのが好ましく、0.60%以上であるのがより好ましい。また、Mn含有量は1.70%以下であるのが好ましく、1.50%以下であるのがより好ましく、1.30%以下であるのがさらに好ましい。
Cu:0.10~1.00%
Cuは、硫酸に対する耐食性を顕著に発現する元素である。しかしながら、Cuが過剰に含有された場合、熱間加工性が低下し、生産性を損なう。そのため、Cu含有量は0.10~1.00%とする。Cu含有量は0.15%以上、0.20%以上、または0.25%以上であるのが好ましい。また、Cu含有量は0.85%以下であるのが好ましく、0.70%以下であるのがより好ましい。
Al:0.005~0.10%
Alは、脱酸剤として添加される。しかしながら、Alが過剰に含有された場合、介在物の増加によって耐食性を損なう。そのため、Al含有量は0.005~0.10%とする。Al含有量は0.010%以上であるのが好ましい。また、Al含有量は0.07%以下であるのが好ましい。
Cr:0.40~3.00%
Crは、焼入れ性を高めて強度を向上させるとともに、耐硫酸性を向上させる効果を有する元素である。しかしながら、Crが過剰に含有された場合、鋼材表面で腐食起点となりやすい酸化物を形成する。そのため、Cr含有量は0.40~3.00%とする。Cr含有量は0.50%以上であるのが好ましく、0.60%以上であるのがより好ましく、0.65%以上であるのがさらに好ましい。また、Cr含有量は2.50%以下であるのが好ましい。
Ti:0.010~0.50%
Tiは、窒化物を形成し、結晶粒の微細化および強度の向上に寄与する元素である。しかしながら、Tiが過剰に含有された場合、腐食の原因となる窒化物の増加によって、耐食性を損なう。そのため、Ti含有量は0.010~0.50%とする。Ti含有量は0.013%以上であるのが好ましく、0.015%以上であるのがより好ましく、0.020%以上であるのがさらに好ましい。また、Ti含有量は0.40%以下であるのが好ましく、0.30%以下であるのがより好ましい。
Ni:0.01~0.50%
Niは、酸腐食環境での耐食性を向上させる元素であり、加えてCuを含有する鋼において、製造性を高める効果を有する。Cuは、耐食性を向上させる効果が大きいが、偏析し易く、単独で含有させると鋳造後の割れを助長する場合がある。これに対して、NiはCuの表面偏析を軽減する作用がある。Niを含有させることで、Cuの偏析および鋳片割れの抑制に加えて、偏析に起因する局部腐食の発生も抑制されるため、耐食性を向上させる効果が得られる。しかしながら、Niは高価な元素であり、多量の含有は製鋼コストの増大を招く。そのため、Ni含有量を0.01~0.50%とする。Ni含有量は0.03%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましく、0.08%以上であるのがさらに好ましい。また、Ni含有量は0.40%以下、0.29%未満、0.25%以下、0.20%以下であるのが好ましく、0.15%以下であるのがより好ましい。
P:0.050%以下
Pは、不純物であり、鋼材の機械特性および生産性を低下させる。そのため、P含有量に上限を設けて0.050%以下とする。P含有量は0.030%以下であるのが好ましく、0.025%以下であるのがより好ましい。なお、P含有量は可能な限り低減することが好ましく、つまり含有量が0%でもよいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、P含有量は0.001%以上としてもよい。
S:0.050%以下
Sは、不純物であり、鋼材の機械特性および生産性を低下させる。そのため、S含有量に上限を設けて0.050%以下とする。S含有量は0.040%以下であるのが好ましく、0.030%以下であるのがより好ましい。なお、S含有量は可能な限り低減することが好ましく、つまり含有量が0%でもよいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、S含有量は0.001%以上、または0.005%以上としてもよい。
N:0.0015~0.0100%
Nは、微細な窒化物を形成し、鋼材の機械特性の向上に寄与する。しかしながら、Nが過剰に含有された場合、鋼材の機械特性および生産性を低下させる。そのため、N含有量は0.0015~0.0100%とする。N含有量は0.0020%以上であるのが好ましく、0.0030%以上であるのがより好ましい。また、N含有量は0.0090%以下であるのが好ましく、0.0080%以下であるのがより好ましい。
O:0.0035%以下
Oは、不純物であり、酸腐食環境において腐食の起点となる粗大な酸化物を生成する。そのため、O含有量に上限を設けて、0.0035%以下とする。O含有量は0.0030%以下であるのが好ましく、0.0025%以下であるのがさらに好ましい。なお、O含有量は可能な限り低減することが好ましく、つまり含有量は0%でもよいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、O含有量は0.0013%以上、0.0020%以上としてもよい。
本発明の鋼の化学組成において、上記の元素に加えて、さらに耐食性を向上させるために、Mo、W、Sn、Sb、As、Co、およびBiから選択される1種以上を、以下に示す範囲において含有させてもよい。なお、これらの元素は、鋼材において必ずしも必須ではないことから、含有量の下限値は0%である。各元素の限定理由について説明する。
Mo:0.10%以下
Moは、Cu、Crと同時に含有させることにより、酸性環境での耐食性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Moは高価な元素であるため、過剰な含有は経済性の低下を招く。そのため、Mo含有量は0.10%以下とする。Mo含有量は0.09%以下であるのが好ましく、0.08%以下であるのがより好ましい。なお、上記効果をより確実に得たい場合には、Mo含有量は0.01%以上とするのが好ましく、0.02%以上とするのがより好ましく、0.03%以上とするのがさらに好ましい。
W:0.10%以下
Wは、Moと同様にCu、Crと同時に含有させることにより、酸性環境での耐食性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Wも高価な元素であるため、過剰な含有は経済性の低下を招く。そのため、W含有量は0.10%以下とする。W含有量は0.09%以下であるのが好ましく、0.08%以下であるのがより好ましい。なお、上記効果をより確実に得たい場合には、W含有量は0.01%以上とするのが好ましく、0.02%以上とするのがより好ましく、0.03%以上とするのがさらに好ましい。
Sn:0.30%以下
Snは、Cuと同時に含有させると酸腐食環境での耐食性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Snが過剰に含有された場合、熱間加工性が低下する。そのため、Sn含有量は0.30%以下とする。Sn含有量は0.25%以下であるのが好ましく、0.20%以下であるのがより好ましく、0.15%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Sn含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.02%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
Sb:0.30%以下
Sbは、Cuと同時に含有させると、硫酸に対する耐食性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Sbが過剰に含有された場合、熱間加工性が低下し、生産性を損なう。そのため、Sb含有量は0.30%以下とする。Sb含有量は0.25%以下であるのが好ましく、0.20%以下であるのがより好ましく、0.15%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Sb含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.02%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
As:0.30%以下
Asは、SbおよびSnに比べて顕著な効果はないが、酸腐食環境における耐食性の向上に有効な元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Asが過剰に含有された場合、熱間加工性が低下する。そのため、As含有量は0.30%以下とする。As含有量は0.20%以下であるのが好ましく、0.10%以下であるのがより好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、As含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.02%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
Co:0.30%以下
Coは、SbおよびSnに比べて顕著な効果はないが、酸腐食環境における耐食性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Coが過剰に含有された場合、経済性が低下する。そのため、Co含有量は0.30%以下とする。Co含有量は0.20%以下であるのが好ましく、0.10%以下であるのがより好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Co含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.02%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
Bi:0.30%以下
Biは、SbおよびSnに比べて顕著な効果はないが、酸性環境における耐食性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Biが過剰に含有された場合、熱間加工性が低下する。そのため、Bi含有量は0.30%以下とする。Bi含有量は0.20%以下であるのが好ましく、0.10%以下であるのがより好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Bi含有量は0.001%以上であるのが好ましく、0.002%以上であるのがより好ましく、0.005%以上であるのがさらに好ましい。
本発明の鋼の化学組成において、上記の元素に加えて、機械特性等を向上させるために、さらにNb、V、Ta、およびBから選択される1種以上を、以下に示す範囲において含有させてもよい。なお、これらの元素は、鋼材において必ずしも必須ではないことから、含有量の下限値は0%である。各元素の限定理由について説明する。
Nb:0.10%以下
Nbは、Tiと同様に、窒化物を形成し、結晶粒の微細化および強度の向上に寄与する元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Nbが過剰に含有された場合、窒化物が粗大になり、機械特性が劣化する。そのため、Nb含有量は0.10%以下とする。Nb含有量は0.09%以下であるのが好ましく、0.08%以下であるのがより好ましく、0.07%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Nb含有量は0.005%以上であるのが好ましく、0.010%以上であるのがより好ましく、0.015%以上であるのがさらに好ましい。
V:0.10%以下
Vは、Ti、Nbと同様に、窒化物を形成し、結晶粒の微細化および強度の向上に寄与する元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Vが過剰に含有された場合、窒化物が粗大になり、機械特性が劣化する。そのため、V含有量は0.10%以下とする。V含有量は0.08%以下であるのが好ましく、0.06%以下であるのがより好ましく、0.04%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、V含有量は0.005%以上であるのが好ましい。
Ta:0.050%以下
Taは、強度の向上に寄与する元素であり、また、メカニズムは必ずしも明らかでないが、耐食性の向上にも寄与するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Taは高価な元素であり、多量の含有は製鋼コストの増大を招く。そのため、Ta含有量は0.050%以下とする。Ta含有量は0.040%以下であるのが好ましく、0.030%以下であるのがより好ましく、0.020%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Ta含有量は0.001%以上であるのが好ましく、0.005%以上であるのがより好ましい。
B:0.010%以下
Bは焼入性を向上させ、強度を高める元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Bを過剰に含有させても効果が飽和し、母材およびHAZの靭性が低下する場合がある。そのため、B含有量は0.010%以下とする。B含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.006%以下であるのがより好ましく、0.004%以下であるのがさらに好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、B含有量は0.0003%以上であるのが好ましく、0.0005%以上であるのがより好ましい。
本発明の鋼の化学組成において、上記の元素に加えて、脱酸および介在物の制御を目的として、さらに、Ca、Mg、およびREMから選択される1種以上を、以下に示す範囲において含有させてもよい。なお、これらの元素は、鋼材において必ずしも必須ではないことから、含有量の下限値は0%である。各元素の限定理由について説明する。
Ca:0.010%以下
Caは、主に硫化物の形態の制御に用いられる元素であり、また、微細な酸化物を形成させるために、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Caが過剰に含有された場合、機械特性が損なわれる場合がある。そのため、Ca含有量は0.010%以下とする。Ca含有量は0.005%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Ca含有量は0.0005%以上であるのが好ましく、0.0010%以上であるのがより好ましく、0.0020%以上であるのがさらに好ましい。
Mg:0.010%以下
Mgは、微細な酸化物を形成させるために、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Mgを過剰に添加することは製鋼コストの増大を招く。そのため、Mg含有量は0.010%以下とする。Mg含有量は0.005%以下であるのが好ましく、0.003%以下であるのがより好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、Mg含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0003%以上であるのがより好ましく、0.0005%以上であるのがさらに好ましい。
REM:0.010%以下
REM(希土類元素)は、主に脱酸に用いられる元素であり、微細な酸化物を形成させるために、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、REMを過剰に添加することは製鋼コストの増大を招く。そのため、REM含有量は0.010%以下とする。REM含有量は0.005%以下であるのが好ましく、0.003%以下であるのがより好ましい。なお、上記の効果をより確実に得たい場合には、REM含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0003%以上であるのがより好ましく、0.0005%以上であるのがさらに好ましい。
ここで、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量は上記元素の合計量を意味する。なお、ランタノイドは、工業的には、ミッシュメタルの形で添加される。
本発明の鋼材の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。ここで不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料その他の要因により混入する成分であって、本発明に係る鋼材に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
(B)介在物
本発明に係る鋼材は、鋼材中にTiNを含む。そして、最大長さが1.0μm以上2.0μm未満のTiNの個数密度が0.5/mm以上であり、最大長さが4.0μm以上のTiNの個数密度が15/mm未満である。加えて、最大長さが1.0μm以上のTiNの個数密度に対する、最大長さが1.0μm以上2.0μm未満のTiNの個数密度の比が0.20以上である。
なお、最大長さが1.0μm未満のTiNは鋼材の耐食性および降伏応力にはほとんど影響を与えないため、本発明においては、最大長さが1.0μm以上の介在物を対象とすることとする。
上述のように、本発明の鋼材において、TiNを形成することで、降伏応力を向上させることができる。しかしながら、粗大なTiNは腐食の起点となり、硫酸露点腐食環境における耐食性が劣化する。そのため、最大長さが4.0μm以上のTiNの個数密度を15/mm未満とする。最大長さが4.0μm以上のTiNの個数密度は、12/mm以下であるのが好ましく、10/mm以下であるのがより好ましい。
一方、降伏応力の向上には、TiNの個数密度が高いことが重要である。そして、TiNの個数密度を高めるためには、TiNを微細化することが有効である。したがって、本発明においては、最大長さが1.0μm以上2.0μm未満のTiNの個数密度が0.5/mm以上である。最大長さが1.0μm以上2.0μm未満のTiNの個数密度は、0.7/mm以上であるのが好ましく、1.0/mm以上であるのがより好ましい。また、最大長さが1.0μm以上のTiNの個数密度に対する、最大長さが1.0μm以上2.0μm未満のTiNの個数密度の比が0.20以上である。上記の比は、0.25以上であるのが好ましく、0.30以上であるのがより好ましい。
TiNの個数密度は、走査電子顕微鏡(SEM)が備えるエネルギー分散型X線分析(EDS)により測定する。測定倍率は1000倍とし、視野内に検出されるTiNの最大長さを測定する。そして、最大長さが1.0μm以上であるTiNの個数、最大長さが4.0μm以上であるTiNの個数、および最大長さが1.0μm以上2.0μm未満であるTiNの個数を数え、視野面積で除することで、個数密度、および個数密度の比を求める。
TiNの同定は、EDSにより行い、TiとNとの合計含有量が90質量%以上である介在物をTiNと判断する。
(C)板厚
本発明に係る鋼材の厚さは、特に規定しないが、0.3~10.0mmであることが好ましく、0.5~5.0mmであることがより好ましい。
(D)降伏応力
本発明に係る鋼材の降伏応力は、25℃において310MPa以上であることが好ましく、320MPa以上であることがより好ましい。
(E)製造方法
本発明の一実施形態に係る鋼材の製造方法について説明する。本実施形態に係る鋼材には、熱間圧延を施し、さらに冷間圧延および熱処理を施して製造される鋼板、形鋼、鋼管等が含まれる。
本実施形態に係る鋼材は、常法で鋼を溶製し、成分の調整後、鋳造して得られた鋼片を熱間圧延し、さらに冷間圧延を施して製造される。TiNは、鋼片の段階ですでに析出しているが、熱間圧延を施すに際し、比較的高温に加熱することで、Tiを固溶させ、粗大なTiNの個数密度を低減することができる。また、後述の工程においてTiNを微細に析出させることができる。そのため、具体的には1220~1400℃とすることが好ましい。
熱間圧延前の加熱温度を1400℃超では、いたずらにエネルギーを消費し、製造コストが上昇する。そのため、熱間圧延前の加熱温度を1400℃以下とすることが好ましい。
一方、熱間圧延前の加熱温度を1220℃以上とすることで、粗大なTiNを溶解させ、粗大なTiNの個数密度を低下させることができる。また、熱間圧延前の加熱温度を1220℃以上とすることで、最大長さが4.0μm以上のTiNの個数密度を15/mm未満とすることが可能となる。さらに、最大長さが4.0μm以上のTiNの個数密度を12/mm以下とするためには、熱間圧延前の加熱温度は1250℃以上とすることがより好ましい。
熱間圧延後の熱延鋼板に対しては、コイル巻取り等の次工程が加えられる。その際、鋼板は温度低下するが、熱延完了から400℃に達するまでの時間は4時間以上であることが望ましい。このような条件で冷却し、鋼板中に1.0μm未満の超微細なTiNを生成させておくことで、冷間圧延後の熱処理を施すことにより、最大長さが1.0μm以上2.0μm未満のTiNの個数密度を0.5/mm以上とすることができ、最大長さが1.0μm以上2.0μm未満のTiNの個数密度比を0.20以上とすることができる。
熱間圧延後、冷間圧延して冷延鋼板とする。さらに冷間圧延後には熱処理を施す。冷間圧延後に750~850℃の温度域で熱処理を施すことにより、TiNの最大長さを調整し、鋼板の降伏応力を維持しつつ、耐食性を向上させることができる。冷間圧延後の熱処理温度を750℃以上とすることで、最大長さが1.0μm以上2.0μm未満のTiNの個数密度を0.5/mm以上とすることができ、所望の降伏応力を得ることができる。
一方、冷間圧延後の熱処理温度を850℃以下とすることで、強度上昇に寄与しない最大長さが2.0μm以上4.0μm未満のTiNの増加を抑制することができる。そのため、最大長さが1.0μm以上のTiNの個数密度に対する、最大長さが1.0μm以上2.0μm未満のTiNの個数密度の比を0.20以上とすることができ、所望の降伏応力を得ることができる。そのため、冷間圧延後の熱処理温度は750~850℃とすることが好ましい。
得られた鋼板から鋼管を製造する場合は、鋼板を管状に成形して溶接すればよく、例えば、電縫鋼管、鍛接鋼管、スパイラル鋼管等にすることができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。なお、以下に示す実施例での条件は、本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。また本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1に示す化学組成を有する鋼(A~W)を溶製し、鋼塊に対して表2に示す条件で熱間圧延を行い、厚さが20mmの熱延鋼板を製造した。熱延後に巻き取りを模擬した冷却を行った後、さらに冷間圧延を行い、厚さが13mmの冷延鋼板とした。
Figure 2023061275000001
Figure 2023061275000002
得られた各鋼板からSEM観察用の試験片を切り出し、SEMが備えるEDSにより介在物の個数密度の測定を行った。測定倍率は1000倍とし、視野内に検出されるTiNの最大長さを測定し、最大長さが1.0μm以上であるTiNの個数、最大長さが4.0μm以上であるTiNの個数、および最大長さが1.0μm以上2.0μm未満であるTiNの個数を数え、視野面積で除することで、個数密度、および個数密度の比を求めた。
さらに、得られた各鋼板を用いて、以下に示す各種の性能評価試験を行った。
<耐硫酸性>
各鋼板から板厚1mm、幅25mm、長さ25mmの試験片を板厚中央部から採取し、湿式#400研磨で仕上げ、耐食性評価用の試験片とした。耐食性の評価は、試験片を60℃の40%硫酸水溶液に6時間浸漬する硫酸浸漬試験によって行った。
その後、硫酸浸漬試験による試験片の腐食減量から、それぞれ腐食速度を算出した。本実施例においては、硫酸浸漬試験による腐食速度が20.0mg/cm/h以下である場合に、耐硫酸性に優れると判断した。
<降伏応力>
JIS Z 2241:2011に準拠して、厚さ1mmの引張試験片を作製し、引張試験を行い、降伏応力を求めた。降伏応力が310MPa以上のものを、降伏応力に優れると判断した。
表3に、介在物の個数密度の測定結果、ならびに耐硫酸浸漬試験および引張試験の評価結果をまとめて示す。
Figure 2023061275000003
表3に示すように、本発明の規定をすべて満足する試験No.1~21では、いずれの性能評価試験においても優れた結果となった。これに対して、比較例である試験No.22~31では、耐硫酸性および降伏応力の少なくともいずれかにおいて、悪化する結果となった。
本発明の鋼材は、重油、石炭等の化石燃料、液化天然ガスなどのガス燃料、都市ごみなどの一般廃棄物、廃油、プラスチック、排タイヤ等の産業廃棄物および下水汚泥等を燃焼させるボイラーの排煙設備に使用することができる。具体的には、減温塔の灰掃き出し羽根などに好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. C:0.010~0.20%、
    Si:0.04~1.00%、
    Mn:0.20~2.00%、
    Cu:0.10~1.00%、
    Al:0.005~0.10%、
    Cr:0.40~3.00%、
    Ti:0.010~0.50%、
    Ni:0.01~0.50%、
    P:0.050%以下、
    S:0.050%以下、
    N:0.0015~0.0100%、
    O:0.0035%以下、
    残部:Feおよび不純物であり、
    鋼材中にTiNを含み、最大長さが1.0μm以上2.0μm未満のTiNの個数密度が0.5/mm以上であり、最大長さが4.0μm以上のTiNの個数密度が15/mm未満であり、かつ最大長さが1.0μm以上のTiNの個数密度に対する、最大長さが1.0μm以上2.0μm未満のTiNの個数密度の比が0.20以上である、
    鋼材。
  2. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Mo:0.10%以下、
    W:0.10%以下、
    Sn:0.30%以下、
    Sb:0.30%以下、
    As:0.30%以下、
    Co:0.30%以下、および
    Bi:0.30%以下、
    から選択される1種以上を含有するものである、
    請求項1に記載の鋼材。
  3. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Nb:0.10%以下、
    V:0.10%以下、
    Ta:0.050%以下、および
    B:0.010%以下、
    から選択される1種以上を含有するものである、
    請求項1または請求項2に記載の鋼材。
  4. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Ca:0.010%以下、
    Mg:0.010%以下、および
    REM:0.010%以下、
    から選択される1種以上を含有するものである、
    請求項1~請求項3のいずれかに記載の鋼材。
  5. 25℃における降伏応力が310MPa以上であることを特徴とする、
    請求項1~請求項4のいずれかに記載の鋼材。
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