JP7014042B2 - 鋼材 - Google Patents
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CI=(Cu/64)/(S/32) … 式(1)
DI=(Cu/64)/(Ni/59) … 式(2)
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/5+(Cr+Mo+V)/15 … 式(3)
[1] 質量%で、
C:0.0010%以上、0.010%未満、
Si:0.03~0.60%、
Mn:0.10~1.50%、
S:0.001~0.015%、
Cu:0.05~0.50%、
Sb:0.02~0.30%、
Ni:0.02~0.50%、
Al:0.005~0.080%、
P:0~0.025%、
N:0~0.008%、及び
O:0~0.0035%
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
下記(1)で求められるCIが17.0~30.0であり、下記(2)式で求められるDIが1.00~3.00であり、下記(3)式で求められるCeqが0.100~0.220であることを特徴とする鋼材。
CI=(Cu/64)/(S/32) … 式(1)
DI=(Cu/64)/(Ni/59) … 式(2)
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/5+(Cr+Mo+V)/15 … 式(3)
ここで、式中、S、C、Mn、Cu、Sb、Ni、Cr、V、Nは各元素の質量%に基づく含有量を示し、含有しない場合は0である。
[2] 更に、質量%で、
Cr:1.00%以下、
Mo:0.50%以下
W :0.50%以下
Sn:0.30%以下、
As:0.30%以下、
Co:0.30%以下、及び
Bi:0.010%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする[1]に記載の鋼材。
[3] 更に、質量%で、
Ti:0.050%以下、
Nb:0.10%以下、
V:0.10%以下、
Zr:0.050%以下、
Ta:0.050%以下、及び
B:0.010%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする[1]又は[2]に記載の鋼材。
[4] 更に、質量%で、
Ca:0.010%以下、
Mg:0.010%以下、及び
REM:0.010%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする[1]~[3]の何れか1項に記載の鋼材。
CI=(Cu/64)/(S/32) … 式(1)
DI=(Cu/64)/(Ni/59) … 式(2)
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/5+(Cr+Mo+V)/15 … 式(3)
これら式(1)~式(3)を満足することで、優れた耐食性、熱間加工性及び溶接性を有する鋼材を得ることに成功した。
Cは、強度を高める元素であるが、冷間加工性に悪影響を及ぼす元素であるため、C量を0.010%未満とする。好ましくはC量を0.008%以下とする。冷間加工性を高めるには、C量は少ないほど好ましいが、製造コストを考慮して、C量を0.0010%以上とする。強度が要求される場合は、C量を0.0030%以上とすることが好ましい。
Siは、脱酸及び強度の向上に寄与する元素であり、また、酸化物の形態を制御するために、0.03%以上を含有させることが必要である。好ましくはSi量を0.05%以上とし、より好ましくは0.10%以上とする。一方、0.60%を超えるSiを含有させると酸化物が増加し、耐酸性を損なうため、Si量を0.60%以下とする。好ましくはSi量を0.40%以下、より好ましくは0.30%以下とする。
Mnは、強度及び靭性を向上させる元素であり、0.10%以上を含有させる。好ましくはMn量を0.30%以上とする。更に好ましくは0.50%以上である。一方、1.50%を超える量のMnを含有させると、粗大なMnSが生成し、耐食性や機械特性が劣化するため、Mn量を1.50%以下とする。好ましくはMn量を1.00%以下、より好ましくは0.80%以下とする。
Sは、Cuとの組み合わせによってCuSを形成することで予想以上の耐食性を発揮する元素であり、0.001%以上含有させることが必要である。好ましくは0.003%以上であり、より好ましくは0.005%以上とする。一方、熱間加工性や鋼材の機械特性を低下させるため、S量を0.015%以下とする。より好ましくは0.008%以下にするとよい。
Cuは、Sbと同時に含有させると、硫酸や塩酸に対する耐食性を顕著に発現する極めて重要な元素である。酸性環境での耐食性を確保するために、Cu量を0.05%以上とすることが必要である。好ましくはCu量を0.15%以上、より好ましくは0.20%以上とする。一方、Cu量が0.50%を超えると熱間加工性が低下し、製造性を損なうため、0.50%以下とする。好ましくはCu量を0.40%以下、より好ましくは0.30%以下とする。
Sbは、上述のように、Cuと同時に含有させると耐酸性を向上させる極めて重要な元素であり、酸性環境での耐食性を確保するため、0.02%以上を含有させることが必要である。好ましくはSb量を0.10%以上とする。一方、Sb量が0.30%を超えると熱間加工性が低下するので、0.30%以下とする。好ましくはSb量を0.15%以下とする。
Niは、Cuを含有する鋼において、製造性を高める効果を発現する。Cuは、耐食性を向上させる効果が大きいが、偏析し易く、単独で含有させると鋳造後の割れを助長する場合がある。これに対して、NiはCuの偏析を軽減する作用がある。Niを含有させると、Cu偏析起因の鋳片の割れの抑制に加えて、偏析に起因する局部腐食の発生も抑制されるため、耐食性を向上させる効果が顕著に発現されるため、Ni量を0.02%以上含有させる。好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上、更に好ましくは0.15%以上とする。一方、Niも高価な元素であるため、コストの観点からNi量を0.50%以下とする。より好ましくは0.30%以下、更に好ましくは0.25%以下とする。
Alは、脱酸剤であり、0.005%以上を含有させることが必要である。好ましくはAl量を0.020%以上とする。一方、Alを過剰に含有させると、介在物の増加によって、耐酸性を損なうため、Al量を0.080%以下とする。好ましくはAl量を0.050%以下とする。
Pは、不純物であり、鋼材の機械特性や製造性を低下させるため、P量を0.025%以下とする。P量の下限は限定せず、0%でもよいが、コストの観点からP量は0.001%以上であってもよい。
Nは、不純物であり、鋼材の機械特性や製造性を低下させるため、N量を0.008%以下とする。N量の下限は限定せず、0%でもよいが、コストの観点からN量を0.001%以上にしてもよい。微細な窒化物を機械特性等の向上に利用する場合、N量は0.002%以上であってもよい。
Oは、酸化物を生成する元素である。酸性環境において腐食の起点となる粗大な酸化物の生成を抑制するために、O量を0.0035%以下とする。好ましくはO量を0.0030%以下、より好ましくは0.0025%以下とする。O量の下限は限定せず、0%でもよいが、コストの観点からO量は0.0005%以上であってもよい。
Crは焼入れ性を高めて強度を向上させる元素であり、0.01%以上を含有させてもよい。より好ましくはCr量を0.05%以上とする。また、Crは耐候性を高める元素であるが、酸性環境での耐食性を低下させる場合があり、Cr量を1.00%以下とする。好ましくはCr量を0.70%以下、より好ましくは0.50%以下、更に好ましくは0.30%以下、より一層好ましくは0.10%以下とする。
Moは、Cu及びSbと同時に含有させることにより、酸性環境での耐食性を向上させる元素である。特に、塩酸に対する耐食性を高めるためには、Mo量を0.01%以上とする。好ましくは0.10%以上とする。一方、Moは高価な元素であるため、コストの観点から、含有量を0.50%以下とする。好ましくはMo量を0.30%以下とする。
Wは、Mo同様にCu及びSbと同時に含有させることにより、酸性環境での耐食性を向上させる元素である。特に、塩酸に対する耐食性を高めるためには、W量を0.01%以上とする。好ましくは0.10%以上とする。一方、Wは高価な元素であるため、コストの観点から、含有量を0.50%以下とする。好ましくはW量を0.30%以下とする。
Snは、酸性環境での耐食性を向上させる元素であり、0.01%以上を含有させてもよい。より好ましくはSn量を0.02%以上、更に好ましくはSn量を0.05%以上とする。一方、Snを過剰に含有させると熱間加工性が低下するので、Sn量を0.30%以下とする。より好ましくはSn量を0.20%以下とする。
Asは、Sb、Snに比べて効果は顕著ではないが、酸性環境での耐食性の向上に有効な元素であり、0.01%以上を含有させてもよい。より好ましくはAs量を0.02%以上、更に好ましくはAs量を0.05%以上とする。一方、Asを過剰に含有させると熱間加工性が低下するので、As量を0.30%以下とする。より好ましくはAs量を0.20%以下、更に好ましくは0.10%以下とする。
Coは、Sb、Snに比べて効果は顕著ではないが、酸性環境での耐食性を向上させる元素であり、0.01%以上を含有させてもよい。より好ましくはCo量を0.02%以上、更に好ましくはCo量を0.05%以上とする。一方、Coを過剰に含有させると経済性が低下するので、Co量を0.30%以下とする。より好ましくはCo量を0.20%以下、更に好ましくは0.10%以下とする。
Biは、Sb、Snに比べて効果は顕著ではないが、酸性環境での耐食性を向上させる元素であり、0.001%以上を含有させてもよい。より好ましくはBi量を0.002%以上、更に好ましくはBi量を0.005%以上とする。一方、Biを過剰に含有させると熱間加工性が低下するので、Bi量を0.010%以下とする。より好ましくはBi量を0.007%以下、更に好ましくは0.005%以下とする。
Tiは、窒化物を形成し、結晶粒の微細化や強度の向上に寄与する元素であり、0.001%以上を含有させてもよい。より好ましくはTi量を0.005%以上とする。一方、0.050%超のTiを含有させると、窒化物が粗大になり、機械特性が劣化することがあるため、Ti量を0.050%以下とする。より好ましくはTi量を0.040%以下、更に好ましくは0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。
Nbは、Tiと同様に、窒化物を形成する元素であり、結晶粒の微細化や強度の向上を目的として、0.001%以上を含有させてもよい。より好ましくはNb量を0.005%以上とする。一方、0.10%超のNbを含有させると、機械特性が劣化することがあるため、Nb量を0.10%以下とする。より好ましくはNb量を0.050%以下、更に好ましくは0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。
Vは、Ti、Nbと同様、窒化物を形成する元素であり、主に、析出強化による強度の改善のために含有させてもよい。効果を得るために、V量を0.005%以上とすることが好ましい。一方、0.10%超のVを含有させると、機械特性が劣化することがあるため、V量を0.10%以下とする。より好ましくはV量を0.050%以下、更に好ましくは0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。
Zrは、Ti、Nb、Vと同様、窒化物を形成する元素であり、主に、析出強化による強度の改善のために含有させてもよい。効果を得るために、Zr量を0.005%以上とすることが好ましい。一方、Zrは高価な元素であり、また、0.050%超のZrを含有させると、機械特性が劣化することがあるため、Zr量を0.050%以下とする。より好ましくはZr量を0.040%以下、更に好ましくは0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。
Taは、強度の向上に寄与する元素であり、0.001%以上を含有させてもよい。また、メカニズムは必ずしも明らかでないが、Taは耐食性の向上にも寄与し、より好ましくはTa量を0.005%以上とする。一方、Taを過剰に含有させるとコストが上昇するため、Ta量を0.050%以下とする。より好ましくはTa量を0.040%以下、更に好ましくは0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。
Bは焼入性を向上させ、強度を高める元素である。効果を得るためには、B量を.0003%以上にすることが好ましい。より好ましくはB量を0.0005%以上とする。一方、0.010%を超えるBを含有させても、効果が飽和し、母材、HAZの靭性が低下する場合があり、B量を、0.010%以下とする。より好ましくはB量を0.0050%以下、更に好ましくは0.0030%以下、より一層好ましくは0.0020%以下とする。
Caは、主に硫化物の形態の制御に用いられる元素であり、また、微細な酸化物を形成させるために、0.0005%以上を含有させてもよい。好ましくはCa量を0.001%以上、より好ましくは0.002%以上とする。一方、0.010%を超えるCaを含有させると機械特性が損なわれる場合があるため、Ca量を0.010%以下とする。より好ましくはCa量を0.005%以下とする。
Mgは、微細な酸化物を形成させるために、0.0001%以上を含有させてもよい。好ましくはMg量を0.0003%以上、より好ましくは0.0005%以上とする。一方、製造コストの観点から、Mg量を0.010%以下とする。より好ましくはMg量を0.005%以下、更に好ましくは0.003%以下とする。
REM(希土類元素)は、主に脱酸に用いられる元素であり、微細な酸化物を形成させるために、0.0001%以上を含有させてもよい。好ましくはREM量を0.0003%以上、より好ましくは0.0005%以上とする。一方、製造コストの観点から、REM量を0.010%以下とする。より好ましくはREM量を0.005%以下、更に好ましくは0.003%以下とする。
耐酸性腐食指数CIは、鋼板表面にCuSの皮膜を形成させつつ、腐食の起点となりやすい介在物を抑制するために重要な指標である。皮膜を生成させるためにはCuとSが必要であるが、Sは過剰に含有させると腐食の起点となる介在物を形成するため、耐酸性を顕著に向上させるには、Cu及びSのバランスが重要となる。CIが30.0を超えると、CuS皮膜が鋼材表面に形成しにくくなり、十分な耐食性が得られない。一方、CIが17.0未満であると、介在物が腐食の起点となりやすくなり、耐食性が低下する場合がある。したがって、CI値は17.0~30.0とする。耐酸性腐食指数CIは、耐酸性を確実に良好なものとするために、好ましくは18.0以上、より好ましくは20.0以上である。また、耐酸性腐食指数CIは、耐食性をより一層向上させるために、好ましくは28.0以下、より好ましくは26.0以下である。
CI=(Cu/64)/(S/32) … 式(1)
赤熱脆化指数DIは、結晶粒界や地鉄表面に偏析するCuによる表面割れをNiを含有させることにより抑制するための指標であり、熱間加工性を確保するために重要である。Cuの含有量に対してNiの含有量が少ないと熱間加工性が低下するため、赤熱脆化指数DIは3.00以下とする必要がある。赤熱脆化指数DIを小さくすることが熱間加工性を確保するためには好ましいが、1.00未満では効果が飽和する。また、Cuが不足して耐酸性の向上の効果が不十分にならないように、赤熱脆化指数DIを1.00以上にすることが必要である。赤熱脆化指数DIは、耐酸性を確実に良好なものとするために、好ましくは1.20以上、より好ましくは1.40以上である。また、赤熱脆化指数DIは、熱間加工性をより一層向上させるために、好ましくは2.80以下、より好ましくは2.60以下である。
DI=(Cu/64)/(Ni/59) … 式(2)
Ceqは、硬さの上昇による冷間加工性の劣化を示す指標であり、冷間加工性を確保するために、0.220以下とする。好ましくはCeqを0.210以下、より好ましくは0.200以下とする。一方。Ceqが低すぎると機械特性が不十分になるため、0.100以上とする。好ましくはCeqを0.110以上、より好ましくは0.120以上とする。
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/5+(Cr+Mo+V)/15 … 式(3)
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.0010%以上、0.010%未満、
Si:0.03~0.60%、
Mn:0.10~1.50%、
S:0.001~0.015%、
Cu:0.05~0.50%、
Sb:0.02~0.30%、
Ni:0.02~0.50%、
Al:0.005~0.080%、
P:0~0.025%、
N:0~0.008%、及び
O:0~0.0035%
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
下記(1)で求められるCIが17.0~30.0であり、下記(2)式で求められるDIが1.00~3.00であり、下記(3)式で求められるCeqが0.100~0.220であることを特徴とする鋼材。
CI=(Cu/64)/(S/32) … 式(1)
DI=(Cu/64)/(Ni/59) … 式(2)
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/5+(Cr+Mo+V)/15 … 式(3)
ここで、式中、S、C、Mn、Cu、Sb、Ni、Cr、V、Nは各元素の質量%に基づく含有量を示し、含有しない場合は0である。 - 更に、質量%で、
Cr:1.00%以下、
Mo:0.50%以下
W :0.50%以下
Sn:0.30%以下、
As:0.30%以下、
Co:0.30%以下、及び
Bi:0.010%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋼材。 - 更に、質量%で、
Ti:0.050%以下、
Nb:0.10%以下、
V:0.10%以下、
Zr:0.050%以下、
Ta:0.050%以下、及び
B:0.010%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼材。 - 更に、質量%で、
Ca:0.010%以下、
Mg:0.010%以下、及び
REM:0.010%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の鋼材。
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