JP6212920B2 - 金属材料 - Google Patents
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Description
F1=2×Zn+Sn+10×Pb ・・・(i)
0.003≦F1≦0.025 ・・・(ii)
ただし、上記の式中の各元素記号は、金属材料中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
(a)Co:5%以下、
(b)Nb:1%以下およびV:1%以下、
(c)B:0.05%以下、Mg:0.05%以下、Ca:0.05%以下、Zr:0.2%以下およびHf:0.2%以下、ならびに
(d)Y:0.05%以下、La:0.05%以下、Ce:0.05%以下およびNd:0.05%以下。
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において、各元素の含有量の「%」は、「質量%」を意味する。
Cは高温耐食性を向上させるのに重要な元素の1つである。また、炭化物が析出することによって、高温での引張強さおよび高温クリープ強度を高める効果を有する。そのため、高温で使用する金属材料は、C含有量を高くするのが一般的である。しかしながら、本発明が対象とする塩化物含有燃焼灰付着下では、Cが塩化物含有燃焼灰と反応して、金属材料の粒界に沿った腐食を引き起こす。これはCr含有量が少ない金属材料に特に顕著であり、一般の高温用材料とは異なる成分設計を要する。そのため、本発明ではC含有量を0.025%以下に制限する。一方、極端にC含有量を下げることは、高温強度を確保できないばかりか、精錬時のコスト増を招くため、C含有量は0.005%以上とする。C含有量は0.008%以上であるのが好ましい。また、C含有量は0.023%以下であるのが好ましく、0.020%以下であるのがより好ましい。
Siは一般的に高温における耐酸化性を高める元素である。この効果を発揮させるためには、0.05%以上のSiを含有させる必要がある。一方、1.5%を超える量のSiを含有させると脆化相の析出を促進し、高温クリープ強度が低下する。したがって、Si含有量は0.05〜1.5%とする。Si含有量は0.1%以上であるのが好ましく、0.7%以下であるのが好ましい。
Mnは脱酸能力を有するほか、加工性および溶接性を向上させる元素であるので、0.05%以上含有させる。また、Mnはオーステナイト生成元素であることから、Niの一部をMnで置換することも可能である。ただし、過剰に含有させると酸化皮膜の保護性能を阻害することから、Mnの含有量は0.05〜2%とする。Mn含有量は0.1%以上であるのが好ましく、0.3%以上であるのがより好ましい。また、Mn含有量は1.5%以下であるのが好ましく、1.2%以下であるのがより好ましく、1.0%以下であるのがさらに好ましい。
Pは不純物として不可避的に混入するが、その量が過剰であると熱間加工性および溶接性を低下させるので、Pの含有量は0.035%以下とする。P含有量は0.03%以下であるのが好ましい。
Sは、Pと同様に、不純物として不可避的に混入するが、その量が過剰であると熱間加工性および溶接性を低下させるので、Sの含有量は0.01%以下とする。S含有量は0.005%以下であるのが好ましく、0.002%以下であるのがより好ましい。
Cuは高温クリープ強度を向上させるのに有効な元素である。さらに、塩化物含有燃焼灰付着下ではNiと同様に、腐食速度を低下させる効果を発揮する。そのため、Cuは0.01%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰に含有させると延性を損なうので1.5%以下とする。Cu含有量は0.05%以上であるのが好ましい。また、Cu含有量は1.3%以下であるのが好ましく、0.9%以下であるのがより好ましく、0.5%以下であるのがさらに好ましい。
Crは高温での耐酸化性の改善および塩化物含有燃焼灰付着下の高温耐食性の向上に有効な元素である。これらの効果を発揮させるためには、18%以上のCrを含有させる必要がある。一方、21.5%を超えて含有させると組織安定性を損ない、脆化相が析出することで高温クリープ強度を低下させる。したがって、Cr含有量は18〜21.5%とする。Cr含有量は18.5%以上であるのが好ましく、21.0%以下であるのが好ましい。
NiはCuと同様に、オーステナイト形成元素であり、高温における引張強さおよび高温クリープ強度を高める。さらに、塩化物含有燃焼灰付着下ではCuと同様に、腐食速度を低下させる効果を発揮する。そのため、23%以上のNiを含有させる必要がある。しかしながら、30%を超えて含有させてもコスト増を招くだけでなく、かえって高温クリープ強度を低下させる。したがって、Ni含有量は23〜30%とする。Niは25%を超えて含有させるのが好ましい。また、Ni含有量は28%以下であるのが好ましい。
sol.Alは高温環境における水蒸気酸化特性を向上させる効果を有する。しかし、多量に含有させるとHAZ割れ感受性を高め、さらにクリープ延性も低下させるため、その含有量を0.15%以下に制限する。Al含有量は0.1%以下であるのが好ましく、0.09%以下であるのがより好ましい。なお、上記の効果を得たい場合は、0.03%を超える量のsol.Alを含有させるのが好ましい。Al含有量は0.035%以上であるのがより好ましく、0.04%以上であるのがさらに好ましい。
Tiは析出強化によるクリープ強度向上に有効な元素であるが、Alと同様に金属間化合物を析出する、および/または炭化物を析出することでHAZ割れ感受性を高め、さらにクリープ延性も低下させる。HAZ割れ感受性を抑制するには、Tiの含有量を可能な範囲で制限して粒内への金属化合物および炭化物の析出を少なくすることが有効である。そのため、本発明では、その含有量を0.1%以下に制限する。Ti含有量は0.08%以下であるのが好ましく、0.06%以下であるのがより好ましい。なお、上記のクリープ強度向上効果を得たい場合は、0.005%以上のTiを含有させるのが好ましい。
Nはオーステナイト形成元素であり、コスト高となるNi成分の一部を置換することで高温における引張強さおよび高温クリープ強度を高める効果を有する。さらに、炭窒化物による析出強化を活用することで、さらに高温クリープ強度を向上させる。これらの効果を得るには、0.11%以上のNを含有させる必要がある。しかしながら、Nの含有量が0.2%を超えると加工性を阻害する。したがって、Nの含有量は0.11〜0.2%とする。N含有量は0.11%以上であるのが好ましく、0.12%以上であるのがより好ましい。また、N含有量は0.18%以下であるのが好ましく、0.17%以下であるのがより好ましい。
Oは金属材料を溶製する際に原料等から混入してくる不純物元素である。酸化物系介在物が微細分散することで結晶粒が微細化され靱性および水蒸気酸化特性を向上させる。この効果を得るためには、0.001%以上のOを含有させる必要がある。一方、0.05%を超えて含有させると、鋼中に酸化物系介在物が多量存在し、加工性が低下するほか、金属材料表面の疵の原因になる。したがって、O含有量は0.001〜0.05%とする。O含有量は0.002%以上であるのが好ましく、0.03%以下であるのが好ましい。
W:5.5〜9%
Re:5.5〜9%
Mo、WおよびReは本発明において重要な元素である。これらの元素はいずれも高温強度および塩化物含有燃焼灰付着下における高温耐食性を向上させる効果を有する。高温強度および高温耐食性を向上させるためには、Mo、WおよびReから選択される1種以上をそれぞれ5.5%以上含有させる必要がある。一方、Mo、WおよびReの含有量がそれぞれ9%を超えると加工性が低下し、材料を劣化させる。したがって、Mo、WおよびReから選択される1種以上の含有量は、それぞれ5.5〜9%とする。これらの含有量は8.5%以下であるのが好ましく、8%以下であるのがより好ましい。これらの元素のうちの2種を含有させる場合には、合計含有量を18%以下とするのが好ましい。
Sn:0.015%以下
Pb:0.001%以下
Zn、SnおよびPbの含有量を低く制限することは、本発明において高温耐食性を向上させるために最も重要である。Zn、SnおよびPbは溶解時に不純物として不可避的に混入し、塩化物含有燃焼灰付着下の高温耐食性を著しく劣化させる。これら元素は、高温使用中に金属材料表面生成する酸化皮膜と金属との界面に偏析し、反応により塩化物を形成する。その結果、酸化皮膜の保護性を低下させる。これら悪影響を改善するため、それぞれの含有量を、Zn:0.005%以下、Sn:0.015%以下およびPb:0.001%以下とする。Zn含有量は0.004%以下であるのが好ましく、Sn含有量は0.012%以下であるのが好ましく、Pb含有量は0.0008%以下であるのが好ましい。
0.001≦F1≦0.025
高温耐食性を向上させるためには、上記の各元素の含有量を規定するのみでなく、合計量として表面偏析の大きさを考慮した2×Zn+Sn+10×Pbで表されるF1値を0.025%以下とする必要がある。F1値は0.020%以下であるのが好ましい。なお、上記の式中の各元素記号は、金属材料中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
Co:5%以下
Coはオーステナイト相を安定にする作用を有するため、Ni成分の一部を置換することができるので、必要に応じて含有させても良い。ただし、含有量が5%を超えるとコスト増を招くほか、熱間加工性も低下する場合があるので、含有させる場合のCo含有量は5%以下とする。Co含有量は3%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合は0.01%以上のCoを含有させるのが好ましい。
Nb:1%以下
V:1%以下
NbおよびVは、いずれも炭窒化物として析出し、高温クリープ強度を向上させる。これらのうちの1種または2種を必要に応じて含有させても良い。ただし、これらの含有量がそれぞれ1%を超えると溶接性を低下させる場合がある。したがって、含有させる場合のNbおよびVの含有量はそれぞれ1%以下とする。NbおよびVの含有量はそれぞれ0.6%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、NbまたはVの少なくともどちらか一方を0.01%以上含有させるのが好ましい。
B:0.05%以下
Mg:0.05%以下
Ca:0.05%以下
Zr:0.2%以下
Hf:0.2%以下
これらは、いずれも熱間加工性を向上させる作用を有するため、これらから選択される1種以上を必要に応じて含有させても良い。ただし、B、MgおよびCaを含有させる場合には、それらの含有量がそれぞれ0.05%を超えると溶接性およびクリープ延性を低下させる場合があるので、それらの含有量はそれぞれ0.05%以下とする。また、Zrを含有させる場合には、その含有量が0.2%を超えると酸化物または窒化物を形成して、クリープ延性を低下させる場合があるので、その含有量は0.2%以下とする。さらに、Hfを含有させる場合には、その含有量が0.2%を超えると酸化物を形成して、加工性および溶接性を低下させる場合があるので、その含有量は0.2%以下とする。なお、上記のB、MgまたはCaの効果を得たい場合には、0.0005%以上含有させるのが好ましい。また、上記のZrまたはHfの効果を得たい場合には、0.001%以上含有させるのが好ましい。
Y:0.05%以下
La:0.05%以下
Ce:0.05%以下
Nd:0.05%以下
Y、La、CeおよびNdは、いずれも酸化皮膜の保護性を高め、耐酸化性および高温耐食性を向上させる作用を有するため、これらから選択される1種以上を必要に応じて含有させても良い。ただし、これらの元素の含有量が0.05%を超えると加工性を低下させる場合がある。したがって、含有させる場合のY、La、CeおよびNdの含有量は0.05%以下とする。Y、La、CeおよびNdの含有量はそれぞれ0.04%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、0.0005%以上含有させるのが好ましい。
本発明に係る金属材料は、溶解に使用する原料、特にスクラップ等の原料に対し、高精度の分析を実施して、不純物中のZn、SnおよびPbの含有量が、前述のZn:0.005%以下、Sn:0.015%以下、Pb:0.005%以下を満足するものを抽出し、電気炉、AOD炉、VOD炉、VIM炉等を用いて溶解することで製造することができる。
Claims (3)
- 金属材料の化学組成が、質量%で、C:0.005〜0.025%、Si:0.05〜1.5%、Mn:0.05〜2%、P:0.035%以下、S:0.005%以下、Cu:0.01〜1.5%、Cr:18〜21.5%、Ni:23〜30%、sol.Al:0.15%以下、Ti:0.1%以下、N:0.11〜0.2%およびO:0.001〜0.05%と、Mo:5.5〜9%、W:5.5〜9%およびRe:5.5〜9%から選択される1種以上と、Zn:0.0005〜0.005%、Sn:0.001〜0.015%およびPb:0.0001〜0.0008%と、残部Feおよび不純物とからなり、下式(i)および(ii)を満足することを特徴とする金属材料。
F1=2×Zn+Sn+10×Pb ・・・(i)
0.003≦F1≦0.025 ・・・(ii)
ただし、上記の式中の各元素記号は、金属材料中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。 - 前記金属材料の化学組成が、質量%で、さらに下記の(a)から(d)までに示す1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載の金属材料。
(a)Co:5%以下、
(b)Nb:1%以下およびV:1%以下、
(c)B:0.05%以下、Mg:0.05%以下、Ca:0.05%以下、Zr:0.2%以下およびHf:0.2%以下、ならびに
(d)Y:0.05%以下、La:0.05%以下、Ce:0.05%以下およびNd:0.05%以下。 - 400℃を超える蒸気温度となるボイラの燃焼ガス雰囲気中で使用されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属材料。
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