JPH068482B2 - 靭性に優れたクロマイジング用Cr―Mo系耐熱鋼 - Google Patents

靭性に優れたクロマイジング用Cr―Mo系耐熱鋼

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JPH068482B2
JPH068482B2 JP9701589A JP9701589A JPH068482B2 JP H068482 B2 JPH068482 B2 JP H068482B2 JP 9701589 A JP9701589 A JP 9701589A JP 9701589 A JP9701589 A JP 9701589A JP H068482 B2 JPH068482 B2 JP H068482B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、ボイラ、化学工業、原子力用などの耐熱材料
としてクロマイジング処理をして使用されるCr−Mo系耐
熱鋼に関し、更に詳しくは、上記分野の熱交換器、配管
材料、鍛造品として使用されるクロマイジング用鋼であ
って、靱性、耐食性の改善されたCr−Mo系耐熱鋼に関す
る。
(従来の技術) ボイラ、化学工業、原子力用などの高温耐熱耐圧熱交換
器管としては、オーステナイトステンレス鋼、9〜12Cr
フェライト鋼、Cr含有量3.5%(この明細書において、
合金成分含有量についての%は全て重量%を意味する)
以下のCr−Mo系低合金鋼と炭素鋼に分類される。
上記のような材料のうち、Cr含有量が3.5%以下の低合
金鋼の特徴は、Crを含有することによって炭素鋼よりも
耐酸化性、高温耐食性および高温強度に優れること、一
方、オーステナイトステンレス鋼に比べ、安価で熱膨張
係数が小さくかつ応力腐食割れをおこさないこと、また
高Crフェライト鋼に比べても安価で熱伝導性、溶接性に
優れていることである。従って、この種の低合金鋼は古
くから広く使われており、その代表的なものとして2・
1/4Cr−Mo鋼(STBA24)、STBA22、STBA20などが規格化さ
れている。その他にも強度を重視して、Nb、V、Tiなど
による析出強化を利用した特開昭63−62848号公報記載
の鋼、強度と靱性を改善した特公昭64−7127号公報およ
び特公昭64−2185号公報の鋼などがある。しかしなが
ら、これらの低合金鋼は、高温耐食性の点で、オーステ
ナイトステンレス鋼には遥かに及ばない。
たとえば、火力発電ボイラ熱交換器では、管外面が重
油、石炭、LNGなどの燃焼ガスにさらされ、これらの燃
料中のNa、K、S、Vによる著しい腐食減肉を起こす。
従来、この対策として低合金鋼の表面にCr濃度の高い被
膜を生成させて耐食性を改善する、いわゆるクロマイジ
ング処理が有効とされている。しかしながら、既存の低
合金鋼にクロマイジング処理施した場合、処理後の冷却
中に母材の固溶CとCrが反応してCr炭化物を生成する結
果、Cr拡散層(通常表面から50μm〜数100μmの深
さ)内で粒界にCr欠乏層を生じ、腐食環境によっては著
しい孔食を生ずることが判明した。このような厳しい環
境として、近年開発がすすめられている石炭ガス化ボイ
ラがある。これまでの報告では、燃料中のCによるHC
孔食を生ずるため、既存の材料をクロマイジング処理
したものは耐食性不足という理由から使用できないこと
がわかった。
クロマイジング層にCr炭化物を生成させない材料とし
て、Nb、Tiを多量に添加したいわゆる安定化Cr−Mo鋼と
C量の低いフェライト単相型Cr−Mo鋼が考えられるが、
これらの材料には次のような問題がある。すなわち、ク
ロマイジング処理では1000℃以上で長時間の加熱処理を
行うため、これらの安定化鋼やC低フェライト鋼では結
晶粒が著しく粗大化してしまい、強度と靱性を損ない、
設計基準を満たさなくなる。特に、低Cフェライト単相
鋼は、強度、靱性ともに不足で全く実用に供することが
できない。
(発明が解決しようとする課題) 既存の耐熱鋼の中でも、安価でかつ熱伝導性、強度に優
れるCr−Mo低合金鋼のクロマイジング処理材の問題点
は、次の通りである。
(i)クロマイジング処理中のCr炭化物析出によりCr欠
乏層を生成し、耐食性が著しく劣化する。
(ii)C量を低くした既存のフェライト単相鋼では、
クロマイジング処理により結晶粒が粗大化し、著しい靱
性劣化をおこすとともに、強度不足で実用に適さない。
(iii)既存鋼のクロマイジング処理で、靱性の点か
ら結晶粒成長をおさえるため、1000℃以下の低温処理と
した場合、Cr拡散層生成に長時間を要するばかりか、50
μm以上の十分な厚さの拡散層を得ることができず実用
に耐えない。
(iv)Nb、Tiを多量添加したいわゆる安定化鋼として
も、クロマイジング処理による靱性劣化が著しく、強
度、溶接性、コスト高も合わせて、実用に向かない。
本発明の目的は、従来の低合金Cr−Mo鋼の特徴を生かし
ながら、クロマイジング処理を行っても耐食性劣化、強
度と靱性の低下を生じない全く新しいCr−Mo系耐熱鋼で
あって、特に耐HC孔食性が改善され、従来、材質的に
適用が困難であった厳しい腐食環境下でも使用できる鋼
を提供することにある。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは、低合金Cr−Mo鋼のクロマイジング処理に
よるCr炭化物の形成と結晶粒粗大化による靱性劣化、強
度低下の改善法を探究した結果、次の手段が有効である
ことを知った。
1)鋼に強度と靱性を付与する適量のCを添加するととも
に、Ti、Nbを適量複合添加することによって、クロマイ
ジング処理温度(1000〜1200℃)でα+τ2相組織とす
る。これによって結晶粒粗大化が抑制され、かつ冷却後
に微細なフェライト+炭化物の組織となり、強度、靱性
の劣化が防止できる。
2)Cr炭化物が生成しない限界固溶C量を求め、クロマイ
ジング処理中の固溶C量を調整するNb、Ti、N、Cの添
加量を調整する。これらは、多数の実験結果から得られ
る実験式によって調整することができる。
上記の知見を基とする本発明は、下記のクロマイジング
用耐熱鋼を要旨とする。
重量%で、C:0.02〜0.15%、Si:0.7%以下、P:
0.025%以下、S:0.015%以下、Mn:0.1〜1.5%、Ni:
0.8%以下、Cr:1.5〜3.5%、Mo:0.5〜2.2%、Ti:0.0
05〜0.6%、Nb:0.005〜0.9%、N:0.001〜0.05%、A
:0.001〜0.05%を含有し、さらに上記Nb、Ti、Nお
よびCの含有量が後述の(a)式を満足し、残部が鉄およ
び不可避的不純物から成る靱性に優れたクロマイジング
用Cr−Mo系耐熱鋼。
更に、V:0.01〜0.3重量%を含有する上記のCr−M
o系耐熱鋼。
更に、B:0.0001〜0.02重量%を含有する上記また
はのCr−Mo系耐熱鋼。
更に、それぞれ0.01〜0.2重量%のLa、Ce、Y、Ca、Z
r、Taのうちの1種以上を含有する上記、、または
のCr−Mo系耐熱鋼。
なお、(a)式とは、下記の実験式である。
但し、(a)式中の元素記号はその元素の含有量(重量
%)を意味する。
(作用) 以下、本発明の耐熱鋼を構成する合金元素の作用とその
含有量の限定理由、および前記(a)式の技術的意味につ
いて詳しく説明する。
C: Cは、鋼中のNb、Ti、Cr、Mo等と結合して炭化物を形成
し、強度を付与するが、それ自身がオーステナイト安定
化元素であるから、高温でτ相を形成させる相バランス
を調整する上で重要な役割をもつ。0.02%未満では、母
材中に完全固溶してフェライト単相となり、高温でτ変
態を起こさないため、鋼の靱性と強度が低くなって実用
に供せない。一方、0.15%を越えると、鋼は著しく硬化
して靱性が低下するとともに、クロマイジング層のCr炭
化物析出によってCr欠乏層を生ずるため、耐食性も劣化
する。よって、Cの適正含有量は0.02〜0.15%である。
Cr: Crは、低合金鋼の母材に耐食性、耐酸化性、高温強度を
与える不可欠な元素で、1.5%未満では母材の所定特性
が得られない。一方、3.5%を越える場合は、もはや低
合金鋼の長所を失い、靱性および溶接性が劣化し、熱伝
導性も悪くなる。従って、Cr含有量の適正範囲は、1.5
〜3.5%である。
Si: Siは脱酸剤として添加され、耐水蒸気酸化性能を高める
元素であるが、0.7%を越えると、靱性、加工性が著し
く低下し、強度に対しても有害である。特に低合金鋼で
は、P、Sの粒界偏析による焼もどし脆化を促進するの
で、上限を0.7%とした。
Mn: Mnは熱間加工性を改善し、組織の安定化に有効である
が、0.1%未満では十分な効果が得られず、1.5%を越え
ると鋼を硬化させ加工性、溶接性を損なうとともにSiと
同様に焼もどし脆化感受性を高める。よって、Mn量は0.
1〜1.5%とする。
PおよびS: PとSは鋼の不可避不純物であり、いずれも靱性、加工
性、溶接性に有害であり、特に焼もどし脆化を促進す
る。したがって、不純物として、Pは0.025%以下、S
は0.015%以下に抑制することとした。
Ni: Niはオーステナイト安定化元素であり、かつ靱性改善に
寄与するが、0.8%を越えて添加されると高温強度を損
なうとともに、変態温度が低下して実用的でなくなる。
したがって0.8%以下とした。
Moは固溶強化元素であるとともに、耐食性改善において
も重要な元素である。0.5%未満では耐熱鋼として十分
な強度が得られず、また耐食性改善の効果も乏しい。一
方、2.2%を越えると鋼は著しく硬化して靱性、加工
性、溶接性を損なう。よって、Moの適正含有量は0.5〜
2.2%である。
Ti: TiはNbとともに本発明鋼における重要な元素である。す
なわち、母材中のN、Cと結合して炭窒化物を生成し、
高温クロマイジング処理中のCr炭化物生成を阻止する。
0.005%未満では、炭窒化物生成が不十分であり、意図
する特性が得られない。一方、0.6%を越えると加工
性、溶接性を損なうとともに、Cがすべて炭化物として
安定化してしまい、鋼の組織がフェライト単相となり靱
性および強度を損なう。よって、Tiの適正含有量は0.00
5〜0.6%である。
Nb: NbはTiとともに、主にCと結合してCr炭化物生成を阻止
する。0.005%未満ではその効果が充分でなく、高温ク
ロマイジング処理中に著しい結晶粒成長によって脆化す
る。一方、0.9%を越える場合、加工性、溶接性を損な
うばかりか、組織がフェライト単相化して靱性、強度を
損なう。よって、Nbの含有量は0.005〜0.9%が適当であ
る。
N(窒素): Nは溶解時に原料や雰囲気から混入するが、Ti、Nbの炭
窒化物を形成して鋼の結晶粒の微細化により強度改善に
寄与する。0.001%未満では上記の効果はなく、0.05%
を越えると、Ti窒化物を多量に析出して靱性を損なう。
よって、Nの含有量は0.001〜0.05%とする。好ましい
範囲は、0.005〜0.015%である。
上記以外に必要に応じて含有させることができる合金成
分は次のようなものである。
V: Vは炭窒化物生成元素であるが、その作用はNb、Tiに比
べて小さい。しかし、微量添加することにより、靱性、
加工性を改善するとともに耐食性向上にも効果がある。
上記特性は0.01%未満では得られず、一方、0.3%を越
える場合は、かえって強度、靱性を損なう。よって、V
を添加する場合には、その含有量は0.01〜0.3%とす
る。
B: Bは極微量の添加により炭化物を分散、安定化させると
ともに、粒界強化と結晶粒の微細化にも寄与する。0.00
01%未満ではその効果がなく、0.02%を越えると溶接
性、加工性を損なうからBを使用する場合はその含有量
は0.0001〜0.02%とする。
La、Ce、Y、Ca、Zr、Ta: これらの元素は、1種または2種以上含有させると、不
純物元素であるP、S、O(酸素)と結合して鋼の靱
性、加工性、強度を改善する。それぞれ0.01%未満では
上記の効果を明らかでなく、0.2%を越えると介在物と
して窒化物、酸化物が増加し、靱性、強度を損なうの
で、これらの元素を添加するときは、その含有量をそれ
ぞれ0.01〜0.2%の範囲にするのがよい。
更に、Nb、Ti、N、Cの含有量は、前述の範囲内で且つ
下記(a)式の条件を満足するように調整することが本発
明の大きな特徴である。
この(a)式は、本発明者の多数の実験結果から得たもの
で、 は固溶C量の計算式を表す。以下、この式で計算される
値をP値という。このP値が−0.020(%)から0.030(%)の
範囲にあるのが本発明鋼の特徴である。
上記P値の式の第1項のCは、Cの含有量、第2項がTi
Cとして結合するC量の計算式、第3項がNbCとして結合
するC量の計算式を表す。したがって、上の式で表され
るP値は、全C含有量から炭化物として結合するC量を
引いた固溶C量を表す指標である。
後の実施例にも示すとおり、この固溶C量を適正範囲に
することによって始めて優れた靱性と十分な耐食性を備
えたクロマイジング用耐熱鋼となる。上式のP値が−0.
020(%)よりさらに小さくなる場合、すなわちC、Nに対
し、Ti、Nbを多量添加したいわゆる安定化型フェライト
鋼では、組織がフェライト単相になり、クロマイジング
処理中に著しく結晶粒成長を起こし靱性が劣化する。
一方、P値が0.030(%)を越える場合、すなわちC、Nに
対し十分にNb、Tiで安定化されていない時は、クロマイ
ジング処理中にCr拡散層の粒界に多量のCr炭化物が析出
し、Cr欠乏層ができて耐食性を著しく劣化させる。
本発明鋼の熱処理条件は、特に限定されるものではない
が、通常950〜1050℃での焼ならしと720〜800℃での焼
もどし処理、または950〜1050℃での加熱−徐冷による
焼なまし、もしくは950〜1050℃での加熱後の冷却途中
に720〜750℃で保持する等温焼なまし処理、が適用でき
る。また、熱処理を省略するか、あるいは650〜850℃程
度での残留ひずみ除去焼鈍だけにとどめてクロマイジン
グ処理に供してもかまわない。
クロマイジング処理は、通常1000〜1200℃で1時間以上
行い、数10μm以上のCr拡散層を得る。好ましい条件は
1100℃で10時間程度である。
後熱処理は、上記の焼ならし+焼もどし、焼なまし、等
温焼なまし、残留ひずみ除去焼鈍のいずれでもかまわな
いが、クロマイジング層を安定に保つため、750〜850℃
での軟化処理が好ましい。
(実施例) 第1表に示す化学組成の鋼を各50kg真空溶解炉で溶解
し、インゴットを1150〜950℃で鍛造して厚さ15mmの板
とした。A鋼〜S鋼は本発明鋼である。T鋼、U鋼、X
鋼は従来の2・1/4Cr-Mo鋼(STBA24)に少量のNb、Tiを添
加した比較鋼、V鋼、W鋼、Z鋼は過剰のNb、Tiを添加
した比較鋼、そしてY鋼はP値は本発明の条件を満たす
がC量が低い比較鋼である。
熱処理は省略して、後に示す寸法の各腐食試験片と機械
的試験用試験片を切出し、クロマイジング処理に供し
た。処理は通常用いられている粉末パック法で、鋼製容
器にクロム粉末(粒径8〜32メッシュ)Aおよ
びNHCを配合し、その中に前記各試験片を埋めこ
み、Hガスを通気しながら1100℃で10時間の拡散処理
を行った。これにより、100μm程度のCr拡散層が得ら
れた。後熱処理は、780℃×15分の軟化処理とした。
機械的試験および高温腐食試験の条件を次に示す。
(1)シャルピー衝撃試験 試験片:10×10×55(mm)、2mmVノッチ (JIS4号) 試験温度:0℃ (2)常温引張試験 試験片:φ6×GL30(mm) 試験温度:常温 (3)塩水噴霧腐食試験(JIS Z2371) 試験片:φ10×50(mm) 条件:5%NaC(35℃)で24時間 (4)塩化第二鉄溶液腐食試験 試験片:30×30×t3mm 溶液:FeC・6HO(50g/)+1/20
N HC 条件:30℃、50℃、65℃の各温度で、24時間 (5)硫酸浸漬腐食試験 試験片:30×30×t3(mm) 条件:0.1%、1%、5%の各濃度のH2SO4(40℃)で24時
間 (6)塩酸浸漬腐食試験 試験片:30×30×t3(mm) 条件:1%、5%の各濃度のHC(60℃)で24時間 (7)高温腐食試験 試験片:30×30×t3(mm) ガス組成:30vol.%H−44vol.%CO−10vol.%CO2−1
4vol.%H2O−0.6vol.%H2S−0.2vol.%HC−1.2vol.
%N 条件:600℃×100時間 第2表に常温引張性質と0℃でのシャルピー衝撃値を示
す。本発明鋼はいずれも引張強さ42kgf/mm2以上、耐力2
1kgf/mm2以上、0℃衝撃値15kgf-m/cm2以上と良好であ
る。
比較鋼では、過剰のNb、Tiを添加してフェライト単相に
したV鋼とZ鋼および低CのY鋼の強度、靱性が低く、
またW鋼も強度は高めだが靱性に劣る。
一方、少量のNb、Tiを添加したT鋼とU鋼、X鋼の強
度、靱性はよいが、次に述べる耐食性が劣る。
本発明鋼の機械的性質が良好なのは、クロマイジング処
理でも結晶粒の粗大化のないα+τ2相組織となってい
るからである。V鋼、W鋼、Z鋼、Y鋼はフェライト単
相のため、結晶粒粗大化が甚だしく靱性が低いため、使
用に適さない。
第1図は、第1表の0℃シャルピー衝撃値とP値との関
係を図示したものである。この図からわかるように、P
値で−0.020(%)以上が靱性良好な範囲である。
次に各種腐食試験結果を第3表および第2図から第5図
に示す。これらの表および図に明らかなように、どの腐
食試験でもP値が0.030(%)を越えると腐食による減量、
浸食深さは大きくなり、耐食性が劣化している。Nb、Ti
含有量の少ないT鋼、U鋼、およびX鋼について詳しく
調査した結果、Cr拡散層にCr炭化物が多量に生成し、か
つCr欠乏層ができて耐食性を劣化させていることがわか
った。
本発明鋼では、このような耐食性劣化原因となるCr炭化
物生成がきわめて少なく、かつCr欠乏層がない。これ
が、本発明鋼が優れた耐食性を示す主たる理由である。
これらの試験結果から、P値は−0.020(%)から0.030(%)
の範囲にあることが必要であり、それによって強度、靱
性に優れ、かつ耐食性のよいクロマイジング用鋼が得ら
れることが明らかになった。
(発明の効果) 本発明によって、クロマイジング処理後の靱性および耐
食性が極めて優れた耐熱鋼が提供される。この鋼は、オ
ーステナイト系耐熱鋼や高Crフェライト耐熱鋼に較べて
安価であるだけでなく、Cr−Mo系低合金鋼に特有の数々
の利点を備えている。本発明鋼はボイラ、化学工業、原
子力用などの腐食の厳しい環境で、クロマイジング処理
して用いる材料として実用価値が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
第1図は、固溶C量を示す実験式の値(P値)と0℃シ
ャルピー衝撃値との関係を示す図、 第2図は、同じくP値と塩化第二鉄腐食試験による腐食
減量との関係を示す図、 第3図は、同じくP値と硫酸浸漬腐食試験による腐食減
量との関係を示す図、 第4図は、同じくP値と塩酸浸漬腐食試験による腐食減
量との関係を示す図 第5図は、同じくP値と高温腐食試験による内部浸食深
さとの関係を示す図、である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.02〜0.15%、Si:0.7%
    以下、P:0.025%以下、S:0.015%以下、Mn:0.1〜
    1.5%、Ni:0.8%以下、Cr:1.5〜3.5%、Mo:0.5〜2.2
    %、Ti:0.005〜0.6%、Nb:0.005〜0.9%、N:0.001
    〜0.05%、A:0.001〜0.05%を含有し、さらに上記N
    b、Ti、NおよびCの含有量が下記の(a)式を満足し、残
    部が鉄および不可避的不純物から成る靱性に優れたクロ
    マイジング用Cr−Mo系耐熱鋼。 但し、(a)式中の元素記号はその元素の含有量(重量
    %)を意味する。
  2. 【請求項2】更に、V:0.01〜0.3重量%を含有する請
    求項(1)に記載のCr−Mo系耐熱鋼。
  3. 【請求項3】更に、B:0.0001〜0.02重量%を含有する
    請求項(1)または(2)に記載のCr−Mo系耐熱鋼。
  4. 【請求項4】更に、それぞれ0.01〜0.2重量%のLa、C
    e、Y、Ca、Zr、およびTaのうちの1種以上を含有する
    請求項(1)、(2)または(3)に記載のCr−Mo系耐熱鋼。
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