JP2014040354A - 多孔質電極形成用グリーンシート、焼成用補助シートおよびその利用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
本発明によって提供される多孔質電極形成用グリーンシート10は、少なくとも酸化ニッケルまたはジルコニアを含む多孔質電極を形成するためのグリーンシート10であって、少なくともニッケル成分またはジルコニウム成分を含む多孔質電極形成層30と、セラミック粉末を含まず、天然有機粉体から実質的に構成される補助層20、とからなる積層構造を有する。
【選択図】図1
Description
一方のジルコニア製の焼成治具を用いる場合は、グリーンシート中のNi成分との反応は抑制できるものの、焼成治具のジルコニアと燃料極中に含まれるジルコニアとが結合して融着しやすいという問題があった。燃料極に絶縁性のジルコニア成分が付着することで、かかる付着部の電気伝導性は低下してしまう。また、ジルコニア製の焼成治具は比較的高価であるため、このような融着の問題のある燃料極形成用グリーンシートの焼成において使用するのは極力避けたいのが実情である。
なお、この多孔質電極形成用グリーンシートを焼成することで多孔質電極の表面に上記天然有機粉体の焼成残渣が付着することがあり得るが、この焼成残渣は簡単に払い落とすことができる。また、万一多孔質電極に焼成残渣が付着していても、当該部分の電気伝導性は低下しないことが確認されている。
かかる550℃における焼成残渣は、汎用の食品成分表に示される「灰分」に等しく、この灰分の測定方法(直接灰化法)により求めることができる。すなわち、本明細書における灰分とは、所定の量の試料を、大気中、550℃の温度で焼成して灰化し、恒量となったときの灰の質量を、焼成前の試料に対する割合(%)として示したものである。
この550℃での焼成残渣成分(灰分)は、試料中のミネラル成分(無機質成分)の総量ととらえられているが、実際には、試料中のミネラル成分のうちの塩素、窒素、炭素などの一部の成分は加熱によって一部または全部が失われ、また有機物炭素が一部炭酸塩として残っている。そのため、灰分は、食品中のミネラル成分のおおよその量であると考えることができる。
ここに開示される発明では、上記の天然有機粉体の焼成残渣を、グリーンシートの焼成温度である1300℃程度より大幅に低い550℃での焼成残渣により評価し規定するようにしている。これは、550℃での焼成残渣が0.3質量%〜5質量%の範囲の天然有機粉体は、上記補助層として1300℃程度の高温で焼成された際にも約0.01質量%〜5質量%程度の適量の焼成残渣を生じ得ることによるものであり、適度な厚みの補助層により多孔質電極形成層と焼成治具等との接触を好適に防止できるために好ましい。以下、特にことわりのない限り、上記の550℃での焼成残渣を「灰分」と呼び、1300℃での焼成残渣を単に「焼成残渣」と呼ぶ。
以上のように、ここに開示される多孔質電極形成用グリーンシートは、従来より用いられてきた多孔質電極形成層に、ごく簡単な構成の補助層を備えたものであり、一見したところ平易な構成であるように見える。しかしながら、かかる構成により、簡便かつ低価格で求められる機能を必要かつ十分に達成し得る、これまでにない多孔質電極形成用グリーンシートが実現されたものといえる。
以上のように、ここに開示される焼成用補助シートは、一見ごく簡単な材料で構成することができ、かかる簡単な構成で、求められる機能を安価でかつ必要かつ十分に達成し得る、これまでにない焼成用補助シートであるといえる。
また、補助層20は、天然有機粉体22を含んでいる。ここで、天然有機粉体22は、大気中、550℃における焼成残渣(灰分)が焼成前質量を100質量%としたとき、0.3質量%〜5質量%の範囲であることが好ましい。かかる灰分が0.3質量%〜5質量%の範囲の天然有機粉体22は、補助層20中に含まれて1300℃程度の高温で焼成された際にも約0.01質量%〜5質量%程度の適量の焼成残渣を生じ得る。本発明者らの検証によると、1300℃ないしは1400℃程度における焼成残渣は、典型的には、550℃における焼成残渣(灰分)とほとんど変わらない。
ここに開示される多孔質電極130の製造方法は、少なくとも酸化ニッケルまたはジルコニアを含む多孔質構造を有する電極を製造する方法であって、
(1)550℃における焼成残渣が、焼成前質量を100質量%としたとき、0.3質量%〜5質量%の範囲である天然有機粉体22をシート状に成形して補助層20を用意すること、
(2)少なくともニッケル成分またはジルコニウム成分を含む多孔質電極用材料をシート状に成形して多孔質電極形成層30を用意すること、
(3)補助層20と多孔質電極形成層30とを貼り合わせて多孔質電極形成用グリーンシート10を形成すること、および、
(4)多孔質電極形成用グリーンシート10を焼成すること、
を包含している。
上記の工程(1)は、天然有機粉体22をシート状に成形して補助層20を用意する工程である。
補助層20は、天然有機粉体22を適切な媒体と混合する等してシート状に成形することで得ることができる。天然有機粉体22をシート状に成形する手法については特に限定されないが、典型的には、例えば、天然有機粉体22を水等の媒体と混合して適切なペースト状(スラリー状等であり得る。)に調製し、適切な手段にてシート状に成形する手法を好ましく採用することができる。補助層20は、必要であればバインダを含むこともできるが、バインダを含まない簡単な構成とすることができる。
以上の通りの灰分を有する天然有機粉体22としては、特に制限はなく、例えば、食品成分表(例えば、国立印刷局発行、五訂増補日本食品標準成分表等)を参照した際の灰分値が上記範囲の植物の粉体等の中から、適宜選択して用いることができる。もちろん、食品成分表に記された以外の天然有機粉体22も好ましく用いることができる。これらは、例えば、種子の中心に近い胚乳部や根の外皮を除いた中心部分が粉体とされたものがより広く市場に流通しているが、より外皮に近い部分を含む粉体とすることで灰分値を高めることができる。例えば、小麦粉の場合は、中心部に近い上級粉よりも、表皮部分に近い下級粉、さらには全粒粉の方が灰分値が高くなる傾向がある。
以上の天然有機粉体22の平均粒径については特に制限されないが、例えば、平均粒径0.1μm〜10μm程度を目安にすることが例示される。
なお、本明細書における「平均粒径」とは、特記しない限り、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置により測定した粒度分布における、積算値50%での粒径(50%体積平均粒子径)を意味するものとする。
補助層20の厚みとしては特に限定されず、例えば、天然有機粉体22の灰分値を考慮に入れるなどしつつ、多孔質電極形成層30と一体化して取り扱うに適切な厚みとすることができる。例えば、補助層20の厚みは、1mm〜10mm程度とすることが適当であり、好ましくはおよそ3mm〜8mm程度であり、特に好ましくは5mm〜6mm程度である。なお、後の積層工程において加圧を行う場合には、加圧後の補助層20の厚みが上記範囲内となるよう考慮することができる。
上記の工程(2)は、多孔質電極用材料をシート状に成形して多孔質電極形成層30を用意する工程である。ここで製造される電極は、少なくとも酸化ニッケルまたはジルコニアを含む。このような電極としては、典型的には、SOFC用の燃料極が挙げられ、典型的には、改質反応やシフト反応に活性の高いNiをベースとし、これを酸化物からなる電解質材料と混合したサーメットにより構成され得る。具体的には、Niと、ジルコニア系酸化物、セリア系酸化物、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)等とのサーメットが例示される。
多孔質電極形成層30には、上述した多孔質電極用材料および造孔材の他に、一般的な電極の構成成分として使用され得る一種または二種以上の材料を必要に応じて含有することができる。そのような材料の例として、上記多孔質電極用材料の結着剤(バインダ)として機能し得る各種の材料が挙げられる。かかるバインダは、補助層20を形成するのと同様に、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)やポリビニルアルコール(PVA)等のポリマー材料を好ましく用いることができる。バインダの配合量は、上記電極材料と造孔材との合計を100質量部としたとき、5質量部〜15質量部程度の割合で含まれるのが好ましい。なお、上記造孔材として澱粉粒子を用いる場合は、造孔材がバインダとしての機能をも果たし得ることから、バインダの割合は、上記電極材料と造孔材との合計を100質量部としたときの、その5質量部以下で含まれるのが好ましい。
その他、燃料極の成分として使用され得る材料としては、分散剤や可塑剤等の添加剤が挙げられる。分散剤としてはアクリル酸系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリカルボン酸系樹脂等の材料が好ましく用いられる。可塑剤としてはグリセリンやフタル酸エステル等の材料が好ましく用いられる。
このようにして用意される補助層20および多孔質電極形成層30を、工程(3)において積層する。この積層工程では、図2に示すように、多孔質電極形成層30に補助層20を貼り合わせて積層一体化する。この積層工程では、有機樹脂成分等からなるバインダを介して補助層20と多孔質電極形成層30とを接合し、一体化することも可能ではあるが、かかるバインダは必ずしも必要ではない。例えば、補助層20は天然有機粉体22を含むことから粘着力を有する状態であり得る。また、多孔質電極形成層30も、造孔材として澱粉粒子を用いた場合には、特に層30表面に露出している造孔材により粘着力を有する状態であり得る。したがって、上記いずれかあるいは両方の接着作用によって貼合することにより、低温かつ無加圧に近い状態(すなわち加圧されていない大気圧とほぼ等しい無加圧状態)で補助層20および多孔質電極形成層30を容易に接合することができる。
上記各シートを積層一体化する操作は、従来の一般的な加熱手段を特に限定することなく使用することができる。例えば、上記で用意された補助層20および多孔質電極形成層30を重ね合わせた後、積層方向の上下から熱板式の加熱ユニットで挟み込み、所定の圧力条件下で接合することが例示される。
なお、SOFC用の多孔質電極を製造する際には、上記の工程(1)〜(3)に加えて、さらに、固体電解質形成層32を形成する付加的工程を含むようにしても良い。かかる工程4においては、例えば図3に示したように、多孔質電極形成用グリーンシート10の表面のうち、多孔質電極形成層30側の表面に固体電解質材料を含む固体電解質形成層32を形成する。
固体電解質層132を構成するための固体電解質材料としては、従来からSOFCセルに用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、酸化(空気)雰囲気および還元(燃料ガス)雰囲気のいずれにおいても酸素イオン伝導性が高く、ガス透過性の無い緻密な層を形成できる材料から構成され得る。このような材料の好適な一例としては、ジルコニア系固体電解質が用いられる。典型的にはイットリア(Y2O3)で安定化したジルコニア(すなわち、YSZ)が用いられる。その他、好適なジルコニア系固体電解質として、カルシア(CaO)で安定化したジルコニア(すなわち、カルシア安定化ジルコニア:CSZ)、スカンジア(Sc2O3)で安定化したジルコニア(すなわち、スカンジア安定化ジルコニア:ScSZ)等が挙げられる。
このようにして、多孔質電極形成用グリーンシート10を形成した後に、上記焼成工程(4)を行う。焼成においては、焼成治具等の焼成治具50と接触するのが多孔質電極形成用グリーンシート10の補助層20となるように、多孔質電極形成用グリーンシート10を炉内に配置する(図3参照)。付加的に固体電解質形成層32を備える多孔質電極形成用グリーンシート10についても、同様に焼成することができる。
焼成では、多孔質電極形成用グリーンシート10における多孔質電極形成層130中に含まれる多孔質電極用材料を焼結させるとともに、造孔材を焼失させて気孔を形成することにより、多孔質構造の焼成体、すなわち多孔質電極130を得る(図4参照)。固体電解質形成層32を備える多孔質電極形成用グリーンシート10については、固体電解質材料の焼結が行われる。
補助層20については、焼成残渣122を残して補助層20のほぼ全体が消失する。しかしながら、この焼成残渣122が多孔質電極130と焼成治具50の間に介在するため、焼成途中および焼成後に至るまで、多孔質電極形成層30および多孔質電極130が焼成治具50に接触し反応することが防止される。
このようにして得られた多孔質電極130は、補助層20および焼成残渣122の存在により焼成治具50との接触が防止されているため、例えば、多孔質電極130と焼成治具50との間で反応は生じない。また、例えば、多孔質電極130と焼成治具50との間で融着は生じない。したがって、焼成治具50との反応により多孔質電極130からNi成分が消費(減少)されて組成のズレが生じたり、反応生成物に因る電気伝導性等の性能の低下が防止される。したがって、融着に起因する多孔質電極130の不良品を減少させることができ、同時に、焼成治具50の消耗を抑制することができる。なお、焼成残渣122については、焼成直後は多孔質電極130に付着するものが幾らかあるが、簡単な払落しやブロー等により容易に除去することができる。また、一部が多孔質電極130に付着したままであっても、多孔質電極130の電気伝導性等の特性に悪影響を及ぼすことはない。したがって、従来のように、多孔質電極形成層30に含ませるNi量をあらかじめ増量する必要や、高価なジルコニア製の焼成治具を損傷させたりすることがなく、製品性能の向上及び歩留まりの改善を実現することができる。
また、かかる補助層20は比較的安価な材料でかつ簡便に用意することができ、寸法、形状および柔軟性等の物性を容易に所望のものに調整して形成することが可能である。そして接着剤レスで多孔質電極形成層30に接合可能とされていることから、コストの面でも作業性の面でも容易に実施することが可能とされる。
また、上記の多孔質電極形成用グリーンシートおよび多孔質電極の詳細な構成および製造方法等は、SOFCを対象とするものに限定されることなく、酸化ニッケルまたはジルコニアを含む多孔質電極の広く一般のものを考慮することができる。
以下、上記で本発明の製造方法により作製した多孔質電極としてのSOFC用の燃料極130を用い、アノード支持形SOFC150を製造する場合について図3〜5に示す模式図を参照しつつ説明する。
なお、燃料極130と固体電解質層132の焼結温度は同程度の高温であるため、上記の実施形態のとおり、燃料極130と固体電解質層132とを同時に焼結するのが効率的である。したがって、燃料極130と固体電解質層132とを同時に焼成してなる、固体電解質層132を備える燃料極130についても、先に説明したものと同様であるため、その詳細な説明を省略する。
上記アノード支持形SOFCが備える固体電解質層132は、酸化物イオン伝導体により構成されている。固体電解質は、例えば、図5に示すように、上記燃料極130上に積層されており、該燃料極130の形状に応じてその形状等を適宜変更することができる。上記のとおり製造されたシート状の燃料極130の上に固体電解質層132を形成する場合は、以下の手順で行うことができる。
上記アノード支持形SOFCが備える空気極140は、一般的なSOFCと同様に、酸化雰囲気でも高耐久性の材料から構成されることが好ましい。例えば、ランタンコバルテート(LaCoO3)系、ランタンマンガネート(LaMnO3)系、ランタンフェライト(LaFeO3)系、またはランタンニッケラート(LaNiO3)系のペロブスカイト型酸化物、あるいはサマリウムコバルテート(SmCoO3)系ペロブスカイト型酸化物等の多孔質体から構成されることが好ましい。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
平均粒径が0.3μmのイットリア安定化ジルコニア粉末(以下、YSZと記す。)と、平均粒径が3μmの酸化ニッケル粉末(以下、NiOと記す。)とを、質量比が、YSZ:NiO=6:4となるように混合した。この混合粉末100質量%に、造孔材としてのカーボンを10質量%、バインダとしてのPVBを7質量%、可塑剤としてのフタル酸ジブチルを8質量%を溶媒とともに混練した。溶媒としては、2−プロパノールとトルエンとを質量比4:1で混合したものを使用した。この混練物(ペースト状組成物)をロール成形により100mm×100mm×厚み1mmのシート状に成形し多孔質電極形成層を作製した。
上記で作製した多孔質電極形成層の上に補助層を重ねて載せ、25℃、50MPaの条件で圧着することで、二層構造の多孔質電極形成用グリーンシートを用意した。
上記で用意した多孔質電極形成用グリーンシートを、焼成治具としてのアルミナセッター(三井金属鉱業株式会社製、アロスーパー995Y−1H)上に補助層の側を下にして載置し、大気雰囲気の下、1350℃で2時間の焼成を行った。これにより、補助層がほぼ燃えぬけ、多孔質電極1が得られた。
上記サンプル1と同様の多孔質電極形成層を、補助層無しに単独でアルミナセッターの上に載せて、大気雰囲気の下1350℃で2時間の焼成を行って多孔質電極2を得た。
上記サンプル1と同様の多孔質電極形成層を、補助層無しに単独で、アルミナセッターの表面に更にアルミナ目砂シートを敷いた上に載せて、大気雰囲気の下1350℃で2時間の焼成を行って多孔質電極3を得た。
上記サンプル1と同様の多孔質電極形成層を、補助層無しに単独で、ジルコニアセッターの表面に更にジルコニア目砂シートを敷いた上に載せて、大気雰囲気の下1350℃で2時間の焼成を行って多孔質電極4を得た。
上記で焼成された多孔質電極1〜4をとり出し、その下面(焼成治具に対向している面)を目視で観察することで、電極の下面と焼成治具との固着の有無を観察した。
上記で得られた多孔質電極1〜4の下面(セッター等に対向している点)を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、電極下面と焼成治具との反応の有無を観察した。観察は、各電極に対し5つの視野について行った。
また、この下面(表面)の元素分析を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−6490LA)を用いて、加速電圧:20kV、電子線スポットサイズ:55、観察倍率:5000倍の条件にて行った。
さらに、得られた多孔質電極1〜4を、800℃で水素を4%含むアルゴンガス雰囲気中で還元処理した後、常温(25℃)で下面の導電率測定を行った。
以上の結果を、下記の表2に示した。なお、導電率については、4端子法により多孔質電極の下面の任意の測定点(10点)において測定した結果から、平均値を算出し、上段に平均値、下段に測定値の範囲を示した。
表2に示した通り、多孔質電極1の下面を目視で観察したところ、補助層の燃え残りの灰がみられたものの刷毛により軽く払うことで容易に取り除くことができ、焼成治具との固着は確認できなかった。また、多孔質電極2についても、焼成治具との固着は確認できなかった。これに対し、多孔質電極3および4は、下面に目砂が付着しているのが確認できた。多孔質電極3の目砂は刷毛により容易に除去できるものであったが、多孔質電極4の目砂は容易に除去できないほど強く固着していた。
元素分析の結果から、多孔質電極2および3の下面にみられる反応生成物はニッケルアルミネートであり、多孔質電極中のNi成分がアルミナ成分と反応していることが確認できた。反応生成物の近傍では、上記表2のNi:Zr質量比として示したように、焼成後のNi成分量が、NiおよびZrの合計に対して、5質量%ほど低下していることが確認された。
なお、多孔質電極1および4については、アルミナ成分は検出されず、Zr成分に対するNi成分の割合も焼成前後で有意に変化することはなかった。
小麦粉(日清製粉株式会社製、中力小麦粉)、米粉(共立食品株式会社製、米の粉)、そば粉(有限会社大西製粉製、石臼びきそば粉)、でんぷん(日本コーンスターチ株式会社製、米澱粉)を焼成した際の焼成残渣量を調べた。焼成温度は、550℃、1400℃の2通りとした。焼成残渣は、粉体試料100gを各々アルミナるつぼに入れて150℃で予備灰化した後、前記の焼成温度で恒量となるまで焼成したときの灰の質量を測定することで算出した。その結果を表3に示した。
なお、小麦粉、米粉、そば粉を用いて作製した補助層と焼成治具との反応は確認できなかったが、でんぷんを用いた場合にはアルミナセッターとの反応が確認された。天然有機粉体としては、灰分が0.3質量%以上であるのが望ましいことが確認できた。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
20 補助層(焼成用補助シート)
22 天然有機粉体
30 多孔質電極形成層
32 固体電解質形成層
50 焼成治具
122 焼成残渣
130 多孔質電極(燃料極)
132 固体電解質層
140 空気極
150 アノード支持形SOFC
Claims (18)
- 少なくとも酸化ニッケルまたはジルコニアを含む多孔質電極を形成するためのグリーンシートであって、
少なくともニッケル成分またはジルコニウム成分を含む多孔質電極形成層と、
セラミック粉末を含まず、天然有機粉体から実質的に構成される補助層、とからなる積層構造を有する、多孔質電極形成用グリーンシート。 - 前記天然有機粉体の550℃における焼成残渣が、焼成前質量を100質量%としたとき、0.3質量%〜5質量%の範囲である、請求項1記載の多孔質電極形成用グリーンシート。
- 前記天然有機粉体は、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、米粉およびそば粉からなる群から選択されるいずれか1種または2種以上である、請求項1または2に記載の多孔質電極形成用グリーンシート。
- 前記多孔質電極形成層の厚みが0.1mm〜1.5mmで、
前記補助層の厚みが1mm〜10mmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔質電極形成用グリーンシート。 - 前記補助層は、前記天然有機粉体100質量部に対して、NaClが1質量部〜10質量部、水が35質量部〜55質量部の割合で配合されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多孔質電極形成用グリーンシート。
- 前記補助層は、天然有機粉体以外のバインダ成分を含まず、また、バインダ層を介さずに前記多孔質電極形成層と直接一体化されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多孔質電極形成用グリーンシート。
- 少なくとも酸化ニッケルまたはジルコニアを含むシート状の多孔質電極の未焼成体を焼成する際に該未焼成体の下面と炉材および焼成治具との融着を防止するシートであって、
セラミック粉末を含まず、実質的に天然有機粉体がシート状に成形されてなる、焼成用補助シート。 - 前記天然有機粉体の550℃における焼成残渣が、焼成前質量を100質量%としたとき、0.3質量%〜5質量%の範囲である、請求項7に記載の焼成用補助シート。
- 前記天然有機粉体は、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、米粉およびそば粉からなる群から選択されるいずれか1種または2種以上である、請求項7または8に記載の焼成用補助シート。
- 厚みが1mm〜10mmである、請求項7〜9のいずれか1項に記載の焼成用補助シート。
- 前記天然有機粉体100質量部に対して、NaClが1質量部〜10質量部、水が35質量部〜55質量部の割合で配合されている、請求項7〜10のいずれか1項に記載の焼成用補助シート。
- 天然有機粉体以外のバインダ成分を含まず粘着性を有し、前記多孔質電極の未焼成体にバインダ層を介さずに直接付着可能である、請求項7〜11のいずれか1項に記載の焼成用補助シート。
- 少なくとも酸化ニッケルまたはジルコニアを含む多孔質構造の電極を製造する方法であって、
セラミック粉末を含まず、実質的に天然有機粉体をシート状に成形して補助層を用意すること、
少なくともニッケル成分またはジルコニウム成分を含む多孔質電極用材料をシート状に成形して多孔質電極形成層を用意すること、
前記補助層と前記多孔質電極形成層とを貼り合わせて多孔質電極形成用グリーンシートを形成すること、および、
前記多孔質電極形成用グリーンシートを焼成すること、
を包含する、多孔質電極の製造方法。 - 前記補助層と前記多孔質電極形成層との貼り合わせは、前記補助層および前記多孔質電極形成層の成形とほぼ同時に行われる、請求項13に記載の多孔質電極の製造方法。
- 前記天然有機粉体100質量部に対して、NaClを1質量部〜10質量部、水を35質量部〜55質量部の割合で配合して混合し、シート状に成形することで補助層を用意する、請求項13または14に記載の多孔質電極の製造方法。
- 前記天然有機粉体として、550℃における焼成残渣が、焼成前質量を100質量%としたとき、0.3質量%〜5質量%の範囲である天然有機粉体を用いて補助層を用意する、請求項13〜15のいずれか1項に記載の多孔質電極の製造方法。
- 前記天然有機粉体が、小麦粉、そば粉、米粉およびライ麦粉からなる群から選択されるいずれか1種または2種以上である、請求項13〜16のいずれか1項に記載の多孔質電極の製造方法。
- さらに、
前記多孔質電極形成用グリーンシートにおける前記多孔質電極形成層の表面に、固体電解質材料を含む固体電解質形成層を形成すること、
を包含し、前記固体電解質形成層を備える多孔質電極形成用グリーンシートを焼成する、請求項13〜17のいずれか1項に記載の多孔質電極の製造方法。
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