JP4619417B2 - 固体酸化物形燃料電池および接合材 - Google Patents
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Description
Oxide Fuel Cell:SOFC)は、種々のタイプの燃料電池の中でも発電効率が高く、更に低環境負荷であり、多様な燃料の使用が可能であることから、発電装置として開発が進められている。
SOFCの基本構造(即ち単セル)は、酸化物イオン伝導体から成る緻密な固体電解質(例えば緻密膜層)の一方の面に多孔質構造の空気極(カソード)が形成され、他方の面に多孔質構造の燃料極(アノード)が形成されることにより構成されている。そして、燃料極が形成された側の固体電解質の表面には燃料ガス(典型的には水素)が供給され、空気極が形成された側の固体電解質の表面には酸素を含むガス(典型的には空気)が供給される。
SOFCを構成する上記単セル1つのみでは得られる発電量が限られることから、一般には所望する電力を得るために上記単セル構造を複数積層したスタックとして用いられる。スタック構造のSOFCでは、セル間を隔離するためにセパレータ(インターコネクタとも呼ばれる)が用いられている。そして、セパレータと該セパレータに対向する固体電解質表面との間は高い気密性を確保した状態で接合(シール)される必要がある。
また、SOFCが通常800〜1200℃程度の高温域で好適に動作するという温度特性であるため、高温での酸化・還元雰囲気における化学耐久性や電気伝導性が高く、さらには電解質材料と熱膨張率が近いという観点からセパレータを形成する材料が選択される。例えば、ランタンクロマイト系酸化物(例えばLaCrO3、La0.8Ca0.2CrO3)等が好適なセパレータ形成材料として挙げられる。
そこで、本発明は、従来の接合方法(接合材料)と比較して、より高い気密性(シール性能)と機械的強度を実現し得る、SOFCの固体電解質とセパレータとの間を接合(シール)する方法を提供することを目的とする。また、そのような接合(シール)方法に用いる接合材(シール材)を提供することを他の目的とする。また、そのような接合方法(接合材)で固体電解質とセパレータとの間が接合(シール)されたことを特徴とするSOFCを提供することを他の目的とする。
ここで開示されるSOFCでは、上記セパレータは、ランタンまたはクロムの一部がアルカリ土類金属で置換された又は置換されていないランタンクロマイト系酸化物により形成されている。そして、上記固体電解質とセパレータとの接合部は、ガラスマトリックス中にリューサイト結晶が析出している接合材により形成されたことを特徴とする。
SiO2 60〜75質量%;
Al2O3 10〜20質量%;
Na2O 3〜10質量%;
K2O 5〜15質量%;
MgO 0〜3質量%;
CaO 0〜3質量%;
B2O3 0〜3質量%(好ましくは0.1〜3質量%);
から実質的に構成されていることが好ましい。
このような組成の接合部は、熱膨張率(熱膨張係数)が接合対象である上記組成の固体電解質及びセパレータと近似させることができる。そのため、ここで開示される上記構成の燃料電池は、典型的には800〜1000℃の範囲内であるような高温域で繰り返し使用しても(換言すれば常温からの昇温と使用後の降温とを繰り返しても)、上記固体電解質とセパレータとの接合部(シール部)からのガスのリークを防止し、長期にわたって高い気密性を保持することができる。従って、本発明によると、耐熱性及び耐久性に優れる燃料電池(SOFC)が提供される。
SiO2 60〜75質量%;
Al2O3 10〜20質量%;
Na2O 3〜10質量%;
K2O 5〜15質量%;
MgO 0〜3質量%;
CaO 0〜3質量%;
B2O3 0〜3質量%(好ましくは0.1〜3質量%);
から実質的に構成され、ガラスマトリックス中にリューサイト結晶が析出していることを特徴とする。
好適な一態様では、上記リューサイト含有ガラスを主成分として含むペースト状(スラリー状)の接合材(シール材)として提供される。
かかる構成の接合材を使用することによって、上述したような機械的強度や耐熱性に優れるSOFCを提供することができる。
かかる熱膨張係数はYSZ等のジルコニア系固体電解質及びランタンクロマイト系酸化物から成るセパレータの熱膨張係数と近似する。これにより、接合部(シール部)の耐熱性及び耐久性が特に優れるSOFCを提供することができる。
即ち、本発明により提供される方法は、固体電解質としてジルコニア系固体電解質を用意し、且つ、セパレータとしてランタンまたはクロムの一部がアルカリ土類金属で置換された又は置換されていないランタンクロマイト系酸化物により形成されているセパレータを用意する。そして、ここで開示されるいずれかの接合材を、上記用意した固体電解質とセパレータとを接続した部分に塗布すること、ならびに、上記塗布された接合材を、該接合材が上記塗布した部分から流出しない温度域で焼成することによって上記固体電解質とセパレータとの接続部分に、該接合材から成るガス流通を遮断する接合部を形成すること、を包含する。
かかる構成の方法によって、上述した効果を奏するSOFCを提供することができる。従って、本発明はまた他の側面として、ここで開示される接合材を使用してジルコニア系固体電解質と上記構成のランタンクロマイト系酸化物から成るセパレータとを上記接合方法により接合することを特徴とするSOFCの製造方法を提供する。
好ましくは、上記焼成温度(最高焼成温度)は1400〜1600℃の範囲内で設定される。
一般式:La(1−x)Ma(x)Cr(1−y)Mb(y)O3で表される酸化物を使用することができる。式中のMa及びMbは同一か又は相互に異なる1種又は2種以上のアルカリ土類金属であり、x及びyはそれぞれ0≦x<1、0≦y<1である。好適例として、LaCrO3或いはMa又はMbがカルシウムである酸化物(ランタンカルシアクロマイト)、例えばLa0.8Ca0.2CrO3が挙げられる。なお、上記一般式において酸素原子数は3であるように表示されているが、実際には組成比において酸素原子の数は3以下(典型的には3未満)であり得る。
例えば、所定の材料(例えば平均粒径0.1〜10μm程度のYSZ粉末、メチルセルロース等のバインダー、水等の溶媒)から成る成形材料を用いて押出成形等によって成形されたYSZ成形体を大気条件下で適当な温度域(例えば1300〜1600℃)で焼成し、所定形状(例えば板状又は管状)の固体電解質を作製する。
その固体電解質の一方の表面に、所定の材料(例えば平均粒径0.1μm〜10μm程度の上記ペロブスカイト型酸化物粉末、メチルセルロース等のバインダー、水等の溶媒)から成る空気極形成用スラリーを塗布し、大気条件下、適当な温度域(例えば1300〜1500℃)で焼成することにより、多孔質の膜状空気極を形成する。
次いで、固体電解質の他方の表面(空気極を形成していない表面)上に、適当な方法により、大気圧プラズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法等を用いて燃料極を形成する。例えば、プラズマによって溶融した原料粉体を固体電解質表面に吹き付けることにより上記サーメット材料から成る多孔質の膜状燃料極を形成する。
また、リューサイト結晶の析出量は、ガラス組成物中の上記必須構成成分の含有率(組成率)によって適宜調整することができる。
特に限定されないが、ガラス成分全体(リューサイト結晶部分を含む)の酸化物換算の質量比で、SiO2:60〜75質量%、Al2O3:10〜20質量%、Na2O:3〜10質量%、K2O:5〜15質量%、MgO:0〜3質量%、CaO:0〜3質量%、及びB2O3:0〜3質量%(好ましくは0.1〜3質量%)であるものが好ましい。
また、上述した酸化物成分以外の、本発明の実施において本質的ではない成分(例えばZnO、Li2O、Bi2O3、SrO、SnO、SnO2、CuO、Cu2O、TiO2、ZrO2、La2O3)を種々の目的に応じて添加することができる。
好ましくは、接合部を構成するガラスの熱膨張係数が9〜10×10−6K−1となるように、上述の各成分を調合してガラス組成物(接合材)を調製する。
得られた混和物(粉末)は、乾燥後、耐火性の坩堝に入れ、適当な高温(典型的には1000℃〜1500℃)条件下で加熱・溶融させる。
こうして得られたリューサイト含有ガラスは、種々の方法で所望する形態に成形することができる。例えば、ボールミルで粉砕したり、適宜篩いがけすることによって、所望する平均粒径(例えば0.1μm〜10μm)の粉末状ガラス組成物(即ち、本発明に係る接合材)を得ることができる。
例えば、バインダーの好適例としてセルロース又はその誘導体が挙げられる。具体的には、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、及びこれらの塩が挙げられる。バインダーは、ペースト全体の5〜20質量%の範囲で含まれることが好ましい。
3〜8mol%Y安定化ジルコニア粉末(平均粒径:約1μm)に一般的なバインダー(ここではポリビニルアルコール(PVA)を使用した。)、及び溶媒(ここでは水)を添加して混練した。次いで、この混練物を用いてプレス成形を行い、□30mm×30mm×厚み3mm程度の板形状の成形体を得た。そして、この成形体を大気中において1400〜1600℃(ここでは最高焼成温度:約1400℃)で焼成した。焼成後、焼成物の表面を研磨し、所望の外形寸法(30mm×30mm×厚み1mm)のYSZから成る薄板状固体電解質32(図2)を作製した。
La0.8Ca0.2CrO3粉末(平均粒径:約1μm)に一般的なバインダー(ここではポリビニルアルコール(PVA)を使用した。)、及び溶媒(ここでは水)を添加して混練した。次いで、この混練物を用いてプレス成形を行い、□30mm×30mm×厚み3mm程度の板形状の成形体を得た。そして、この成形体を大気中において1400〜1600℃(ここでは最高焼成温度:約1400℃)で焼成した。焼成後、焼成物の表面を研磨し、所望の外形寸法(30mm×30mm×厚み1mm)のランタンカルシアクロマイトから成る薄板状部材38(図2)を作製した。
表1に示す質量比で、平均粒径が約1〜10μmであるSiO2粉末、Al2O3粉末、Na2CO3粉末、K2CO3粉末、MgCO3粉末、CaCO3粉末及びB2O3粉末を混合し、計6種類(サンプル1〜6)の原料粉末を調製した(上記各種の炭酸塩に代えて各種の炭酸水素塩でもよい。)。
次いで、原料粉末を1000〜1500℃の温度域(ここでは1450℃)で溶融してガラスを形成した。その後、ガラスを粉砕し、800〜1000℃の温度域(ここでは850℃)で30分〜60分間の結晶化熱処理を行った。これにより、ガラスマトリックス中に分散するようにリューサイトの結晶が析出した。
次いで、ガラス粉末40質量部に、一般的なバインダー(ここではエチルセルロースを使用した。)3質量部と、溶剤(ここではターピネオールを使用した。)47質量部とを混合し、表1のサンプル1〜6に対応する計6種類のペースト状接合材を作製した。
上記6種類のペーストをそれぞれ接合材として用いて接合処理を行った。具体的には、図2に示すように、上記作製した薄板状固体電解質32と同形の薄板状セパレータ相当部材38の対向する二つの側方部に上記ペースト状接合材40を塗布して張り合わせた。そして80℃で乾燥後、大気中で1000〜1100℃の温度域(ここでは1050℃)で1時間焼成した。
結果、何れのサンプルのペーストを用いた場合も当該接合材の流出を生じることなく焼成が完了し、張り合わされた両部材32,38間の対向する一対の側方部に接合部40が形成された供試体(接合体)30を得た(図2)。
表1には、各サンプルのペーストを使用して得られる接合部の熱膨張係数(但し室温(25℃)から450℃の間の熱膨張の平均値)を示している。なお、ここで使用したYSZ固体電解質の同条件での熱膨張係数は10.2×10−6K−1であった。また、ここで使用した上記ランタンカルシアクロマイトから成る薄板状セパレータ相当部材の同条件での熱膨張係数は9.7×10−6K−1であった。
次に、上記構築した計6種類(サンプル1〜6)の供試体(接合体)30について、接合部40からのガスリークの有無を確認するリーク試験を行った。具体的には、供試体(接合体)30の接合部40が形成されていない開口部にエポキシ樹脂でガス配管(図示せず)を封着した。そして当該ガス配管から供試体30の両部材32,38間の中空部35に空気を0.2MPa加圧した条件で供給し、その状態で供試体30を水中に沈め、水中でバブル発生の有無を目視で調べた。結果を表1の該当欄に示す。
表1に示すように、接合部40の熱膨張係数が9〜10×10−6K−1であるサンプル1〜2については、ガス(空気)のリークは全く観察されなかった。他方、熱膨張係数が10×10−6K−1よりも大きいサンプル3〜6については、接合部40表面からのバブル発生、即ちガス(空気)のリークが認められた。
4 燃料ガス流路
10 SOFC
12 固体電解質
14 空気極
16 燃料極
18A,18B セパレータ
20 接合材(接合部)
30 接合体(供試体)
32 固体電解質
35 中空部
38 セパレータ相当部材
40 接合材(接合部)
Claims (4)
- 燃料極と、空気極と、ジルコニア系固体電解質と、該固体電解質と接合するセパレータとを備える固体酸化物形燃料電池であって、
前記セパレータは、ランタンまたはクロムの一部がアルカリ土類金属で置換された又は置換されていないランタンクロマイト系酸化物により形成されており、
前記固体電解質と前記セパレータとの接合部は、ガラスマトリックス中にリューサイト結晶が析出している接合材により形成されており、該接合部は酸化物換算の質量比で以下の組成の酸化物成分:
SiO 2 60〜75質量%;
Al 2 O 3 10〜20質量%;
Na 2 O 3〜10質量%;
K 2 O 5〜15質量%;
MgO 0〜3質量%;
CaO 0〜3質量%;
B 2 O 3 0〜3質量%;
から実質的に構成されている、燃料電池。 - 固体酸化物形燃料電池を構成する固体電解質とセパレータとを接合するための接合材であって、
酸化物換算の質量比で以下の組成の酸化物成分:
SiO2 60〜75質量%;
Al2O3 10〜20質量%;
Na2O 3〜10質量%;
K2O 5〜15質量%;
MgO 0〜3質量%;
CaO 0〜3質量%;
B2O3 0〜3質量%;
から実質的に構成され、
ガラスマトリックス中にリューサイト結晶が析出していることを特徴とする接合材。 - 熱膨張係数が9〜10×10 −6 K −1 となるように調製されている、請求項2に記載の接合材。
- 固体酸化物形燃料電池を構成する固体電解質とセパレータとを接合する方法であって、
前記固体電解質としてジルコニア系固体電解質を用意し、且つ、前記セパレータとしてランタンまたはクロムの一部がアルカリ土類金属で置換された又は置換されていないランタンクロマイト系酸化物により形成されているセパレータを用意すること、
請求項2又は3に記載の接合材を、前記用意した固体電解質と前記セパレータとを接続した部分に塗布すること、ならびに、
前記塗布された接合材を、該接合材が前記塗布した部分から流出しない温度域で焼成することによって、前記固体電解質と前記セパレータとの前記接続部分に、該接合材から成るガス流通を遮断する接合部を形成すること、
を包含する、方法。
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