JP5886794B2 - 耐熱性ガラス接合材およびその利用 - Google Patents

耐熱性ガラス接合材およびその利用 Download PDF

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Description

本発明は、耐熱性ガラス接合材に関する。詳しくは、B、Na、AsおよびPb成分を含まないガラス接合材に関する。
金属材料は、各種の産業分野において様々なデバイス、機器、装置に広く使用されている。かかる金属材料からなる部材(金属部材)の接合には、該金属部材の用途や接合条件等に応じて様々な接合材料が使い分けられている。
例えば、高温域(例えば600℃〜1100℃の高温域)で使用される酸素イオン伝導モジュール(典型的には、酸素分離膜モジュールや固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)システム)では、該モジュールを構成する金属部材(例えば金属製の配管)とセラミック部材(例えば酸素分離膜や固体電解質)との接合に、以下の特徴を有する接合材が多用されている。
(1) 接合温度(軟化点)が被接合部材の融点よりも低いこと。
(2) 使用温度域(例えば600℃〜1100℃)において耐熱性に優れること。
(3) 熱膨張係数が被接合部材(セラミック部材や金属部材)と同程度かそれより若干低いこと。
これらの特徴を備え得る接合材の例として、特許文献1〜6が挙げられる。特許文献1および2には、ガラスマトリックス中にリューサイト結晶(KAlSiあるいは4SiO・Al・KO)を析出させたガラス接合材が開示されている。また、特許文献3には、B−ZnO−BaO系ガラスとセラミックフィラーからなるガラス複合体が開示されている。
特開2010−184826号公報 特開2009−199970号公報 特開2005−035845号公報 特開2003−238201号公報 特許第5116185号 特開2012−162445号公報
一般に、このようなガラス接合材には、ガラスの溶解性の向上や熱膨張係数を調節するためのホウ素(B)成分、および/または、ガラスに流動性を与えて軟化点を下げるためのナトリウム(Na)成分が含まれる。しかしながら、ホウ素成分(典型的にはB)は、ガラスの耐湿性の低下やSOFCの性能劣化を引き起こす要因となり得る。また、ナトリウム成分(典型的にはNaO)は、ガラスの安定性の低下を引き起こす原因となり得る。さらに、リューサイト結晶の析出したガラスマトリックス中にナトリウム成分が存在すると、該リューサイトがサニディン((K,Na)AlSi)へと転化することがあり得る。かかる場合、被接合部材との熱膨張係数の整合がとれなくなり、接合部の気密性が低下することがあり得る。
このような事情から、ホウ素成分および/またはナトリウム成分を含まず、且つ、上記のような特徴を有する(例えば、被接合部材と同程度かそれより若干低い熱膨張係数を有する)ガラス接合材が求められている。
本発明は上述したような従来の問題を解決すべく創出されたものであり、その目的は、ホウ素(B)成分およびナトリウム(Na)成分を含まず、高温域(例えば600℃〜1100℃)においても金属部材と他部材(例えばセラミック部材や金属部材)との接合部を気密に保持することのできる耐熱性ガラス接合材を提供することである。また、他の目的は、かかる接合材を用いてなる接合部を備えた酸素イオン伝導モジュールを提供することである。
ここに開示される耐熱性ガラス接合材は、少なくとも一の金属部材と一の他部材(例えば、セラミック部材や金属部材)とを接合するために用いることができる。かかるガラス接合材は、ガラスマトリックスと該マトリックスに析出したリューサイト結晶(KAlSiあるいは4SiO・Al・KO)とから構成され、30℃から500℃までの熱膨張係数が10×10−6−1〜13×10−6−1である。また、上記ガラスマトリックスは、B、Na、AsおよびPb成分を含まず、K、Si、Al、Biおよび少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物を実質的な構成成分とする。
ここに開示されるガラス接合材のガラスマトリックスは、ナトリウム成分を含有することなくガラスの軟化点を下げるためにビスマス成分を含んでいる。これによって、比較的低い接合温度で接合部を形成することができる。また、ここに開示されるガラス接合材のガラスマトリックスは、ホウ素成分を含有することなくガラスの熱膨張係数を調節するためにカリウム成分を含んでおり、且つ、該マトリックス中にリューサイト結晶を析出させている。これによって、熱膨張係数を比較的高い値に維持することができ、熱膨張係数の高い金属部材との整合をとることができる。さらに、ホウ素成分およびナトリウム成分を含有しないことで、上述のような不具合(すなわち、ガラスの安定性の低下やSOFCの性能低下)を防止することができる。したがって、ここに開示されるガラス接合材によれば、高温域においても金属部材と他部材(例えばセラミック部材や金属部材)との接合部を高い気密性と機械的強度で長期にわたり維持することが可能な、耐熱性や耐久性に優れた接合部を実現することができる。加えて、ここに開示されるガラス接合材のガラスマトリックスはヒ素成分および鉛成分をも含まないため、環境性や安全性の観点からも好ましい。
なお、本明細書において「熱膨張係数」とは、30℃から500℃までの温度領域において熱機械分析装置(Thermomechanical Analysis:TMA)を用いて測定した平均膨張係数(平均線膨張係数)であり、試料の初期長さに対する試料長さの変化量を温度差で割った値をいう。熱膨張係数の測定は、JIS R 3102(1995)に準じて行うことができる。また、耐熱性ガラス接合材を構成するガラスマトリックスに関して「実質的な構成成分とする」とは、上記主構成成分のみからなるものと、該主構成成分以外の副次的成分を、酸化物換算のモル比で、ガラスマトリックス全体の5mol%以下(好ましくは4mol%以下、より好ましくは3mol%以下、特に好ましくは1mol%以下)の割合で含むものと、を包含する用語である。
好適な一態様では、上記リューサイト結晶の含有量は、上記ガラスマトリックスと上記リューサイト結晶との合計を100質量%としたときに、1質量%以上15質量%以下である。リューサイト結晶をガラス接合材全体の1質量%以上の割合で析出させることで、SiOおよびA1の含有によって低下しがちな熱膨張係数を比較的高い値(例えば、被接合部材の熱膨張係数と同程度かそれより若干低い値)で維持することができる。また、リューサイト結晶をガラス接合材全体の15質量%以下の割合とすることで、金属部材との接合性(濡れ性)を向上することができる。
なお、本明細書において「リューサイト結晶の含有量」とは、内部標準法を用いて、粉末X線回折(X-ray diffraction:XRD)の測定結果から算出した値をいう。
好適な一態様では、ガラス接合材の30℃から1000℃までの屈伏点が620℃〜655℃である。これにより、一の金属部材と一の他部材とをより低い接合温度(例えば700℃〜900℃)で好適に接合することができる。換言すれば、本発明の他の側面として、一の金属部材と一の他部材とを700℃〜900℃で接合する方法が提供される。
なお、本明細書において「屈伏点」とは、30℃から1000℃までの温度領域において熱機械分析装置(TMA)を用いて測定した試料長さの変化量と温度との関係を表す熱膨張曲線における極大点の温度(降伏点)をいう。
好適な一態様では、上記ガラスマトリックスは、酸化物換算のモル比で以下の組成を有する。
O 16〜20mol%
SiO 60〜70mol%
Al 2〜5.5mol%
Bi 3〜5mol%
MgO、CaO及びSrOのうちの少なくとも1種 6〜10mol%
このような組成のガラスマトリックスを含むことにより、高温域における接合部の物理的安定性を向上させることができ、本願発明の効果を更に高いレベルで安定的に発揮することができる。
好適な一態様では、上記一の金属部材は、熱膨張係数が10×10−6−1〜22×10−6−1の金属材料により構成されている。このような金属部材としては、例えばステンレス鋼が挙げられる。例えば、フェライト系ステンレス鋼(SUS430)の熱膨張係数は凡そ10×10−6−1〜13×10−6−1である。このような金属材料からなる金属部材は、ここに開示されるガラス接合材と熱膨張係数が近似しているため、より高い気密性で接合部を形成することができる。さらに、600℃〜1100℃程度の高温域においても、かかる接合部を長期に渡り安定的に維持することができる。
また、好適な他の一態様では、上記一の他部材は、セラミック部材である。ここに開示されるガラス接合材は、セラミック部材に用いられる材料(例えば、酸素分離膜の材料として好適なペロブスカイト型酸化物や、該酸素分離膜を支持する多孔質基材の材料として好適な酸化マグネシウム、あるいは、固体電解質の材料として好適なイットリア安定化ジルコニア等のジルコニア系酸化物)と熱膨張係数が近似している。したがって、ここに開示されるガラス接合材によれば、異種部材間の接合部、すなわち金属部材とセラミック部材との接合部を高い気密性で維持することができ、優れた耐久性を発揮することができる。
ここに開示されるガラス接合材は、比較的低い接合温度で一の金属部材と一の他部材(例えば、セラミック部材や金属部材)とを接合することができ、且つ、高温域においても該接合部を長期に渡り高い気密性で維持することができる。したがって、かかる特徴を活かして、酸素イオン伝導モジュールにおいて好適に使用することができる。換言すれば、ここに開示される他の側面として、上記接合材を焼成してなる接合部を備えた酸素イオン伝導モジュールが提供される。すなわち、以下の(I),(II)が提供される。
(I)酸化物イオン伝導性を有するセラミック(例えばペロブスカイト型酸化物や酸化マグネシウム)からなる酸素分離膜を備えた酸素分離膜エレメントと、上記酸素分離膜エレメントに接合された金属部材(例えば金属製のガス管)と、を備える酸素分離膜モジュールであって、上記酸素分離膜エレメントと上記金属部材との接合部分には、上記ガラス接合材を焼成してなる封止部が形成されている、酸素分離膜モジュール。
(II)酸化物イオン伝導性を有するセラミック(例えばジルコニア系酸化物)からなる固体電解質を備えた固体酸化物形燃料電池(SOFC)と、上記固体酸化物形燃料電池に接合された金属部材(例えば金属製のインターコネクタ)と、を備える固体酸化物形燃料電池システムであって、上記固体酸化物形燃料電池と上記金属部材との接合部分には、上記ガラス接合材を焼成してなる封止部が形成されている、固体酸化物形燃料電池システム。
本発明は、他の側面として、少なくとも一の金属部材と一の他部材とを接合するためのガラス接合材の製造方法を提供する。かかる製造方法は、以下の(1)〜(3)の工程を包含する。
(1)酸化物換算のモル比で以下の組成を有するガラス原料粉末を用意すること。
O 16〜20mol%
SiO 60〜70mol%
Al 2〜5.5mol%
Bi 3〜5mol%
MgO、CaO及びSrOのうちの少なくとも1種 6〜10mol%
(2)該原料粉末を溶融した後に急冷して、ガラスマトリックスを調製すること。
(3)上記調製したガラスマトリックスを結晶化処理する(例えば、上記原料粉末を900℃〜1100℃の温度で10分〜60分熱処理する)ことにより、上記ガラスマトリックス中にリューサイト結晶を析出させること。
そして、上記結晶化処理は、上記ガラスマトリックスと上記リューサイト結晶との合計を100質量%としたときに、上記リューサイト結晶の析出量が1質量%以上15質量%以下となるよう行う。かかる方法によれば、上述のようなガラス接合材を好適に製造することができる。
酸素分離膜エレメントと該エレメントに接合された金属製のガス管とを備えた酸素分離膜モジュールの一形態を模式的に示す断面図である。 SOFC(単セル)と該単セルに接合された金属製のインターコネクタとを備えたSOFCシステムの一形態を模式的に示す分解斜視図である。 サンプル4(S4)のX線回折測定の結果を示すチャートである。 実施形態2の評価方法を説明するための模式図である。 実施形態2のリーク試験の試験方法を説明するための模式的な断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けないセラミック部材や金属部材の成形方法、酸素イオン伝導モジュールの一般的な製造プロセス等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
≪耐熱性ガラス接合材≫
ここに開示される耐熱性ガラス接合材は、少なくとも一の金属部材と一の他部材とを接合するためのガラス接合材であって、ガラスマトリックスと、該マトリックス中に析出したリューサイト結晶(KAlSiあるいは4SiO・Al・KO)と、から構成される。また、ここに開示される耐熱性ガラス接合材は、30℃から500℃までの熱膨張係数が10×10−6−1〜13×10−6−1である。かかる熱膨張係数は被接合部材である金属部材やセラミック部材の熱膨張係数に近似するため、該被接合部材との熱膨張係数の整合をとることができる。好適な一態様では、ここに開示される耐熱性ガラス接合材の30℃から1000℃までの屈伏点が620℃〜655℃である。これにより、金属部材と他部材との接合を比較的低い温度(例えば700℃〜900℃)で安定的に行うことができる。
ここに開示される耐熱性ガラス接合材のガラスマトリックス(ガラス組成物)は、B、Na、As、Pb成分を含まず、典型的にはさらにLi成分を含まず、且つ、K、Si、Al、Bi、アルカリ土類金属酸化物(すなわち、Mg,Ca,Sr,Ba、例えばMgおよび/またはCa)を実質的な構成成分とすることによって特徴づけられる。必須構成成分としてのK、Si、Al、Bi、アルカリ土類金属酸化物は、典型的には酸化物(すなわち、酸化カリウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等)の形態でガラスマトリックス中に含まれる。
カリウム成分(典型的には、酸化カリウム(KO))は、リューサイト結晶を構成する成分であり、熱膨張係数を高める成分でもある。ガラスマトリックス全体に占めるカリウム成分の割合は、上記熱膨張係数の範囲を実現する限りにおいて特に限定されないが、酸化物換算のモル比で、凡そ16mol%以上(例えば16.5mol%以上)であって、20mol%以下とすることが好ましい。これにより、好適な量のリューサイト結晶をガラスマトリックス中に析出させることができる。また、ガラス接合材の熱膨張係数を比較的高い値に維持することができる。
ケイ素成分(典型的には、酸化ケイ素(SiO))は、リューサイト結晶を構成する成分であり、ガラスの骨格を構成する主成分である。ガラスマトリックス全体に占めるケイ素成分の割合は、上記熱膨張係数の範囲を実現する限りにおいて特に限定されないが、酸化物換算のモル比で、凡そ60mol%以上(例えば61mol%以上、好ましくは62mol%以上、特には63mol%以上)であって、70mol%以下(例えば69.5mol%以下)とすることが好ましい。これにより、好適な量のリューサイト結晶をガラスマトリックス中に析出させることができる。また、ガラス接合材の軟化点が高くなりすぎることを防止することができ、比較的低い温度で金属部材と他の部材とを接合することができる。さらに、耐水性、耐薬品性、耐熱衝撃性のうちの少なくとも1つを向上させることができる。
アルミニウム成分(典型的には、酸化アルミニウム(Al))は、リューサイト結晶を構成する成分であり、ガラスマトリックス溶融時の流動性を制御して付着安定性に関与する成分でもある。ガラスマトリックス全体に占めるアルミニウム成分の割合は、上記熱膨張係数の範囲を実現する限りにおいて特に限定されないが、酸化物換算のモル比で、凡そ2mol%以上(例えば2.5mol%以上)であって、5.5mol%以下(例えば5mol%以下)とすることが好ましい。これにより、好適な量のリューサイト結晶をガラスマトリックス中に析出させることができる。また、金属部材と他の部材とを安定的に(均質に)接合することができる。さらに、耐薬品性を向上させることができる。
ビスマス成分(典型的には、酸化ビスマス(Bi))は、熱膨張係数を調整するとともに、ガラスマトリックスの軟化点を低下させる効果が高い成分である。ガラスマトリックス全体に占めるビスマス成分の割合は、上記熱膨張係数の範囲を実現する限りにおいて特に限定されないが、酸化物換算のモル比で、凡そ3mol%以上(例えば3.5mol%以上)であって、5mol%以下(例えば4.5mol%以下)とすることが好ましい。これにより、ガラス接合材の軟化点が高くなりすぎることを防止することができ、比較的低い温度で金属部材と他の部材とを接合することができる。また、ガラス接合材の熱膨張係数を比較的高い値に維持することができる。
アルカリ土類金属成分(典型的には、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO))は、ガラスマトリックスの熱的安定性を向上させる(熱膨張係数を調整する)ことができる成分である。ガラスマトリックス全体に占めるアルカリ土類金属成分の割合は、上記熱膨張係数の範囲を実現する限りにおいて特に限定されないが、酸化物換算のモル比で、凡そ6mol%以上(例えば7mol%以上)であって、10mol%以下(例えば9mol%以下)とすることが好ましい。これにより、ガラスマトリックスの熱膨張係数を調整することができる。また、これらの成分を入れることによりガラスマトリックスが多成分系で構成されるため、物理的安定性を向上することができる。
上記に加えて、マグネシウム成分(MgO)はガラスマトリックス溶融時の粘度調整を行うことができる成分でもある。また、カルシウム成分(CaO)はガラスマトリックスの硬度を上げて耐摩耗性を向上させ得る成分でもある。このため、ガラスマトリックス中にマグネシウム成分および/またはカルシウム成分を含むことが好ましく、両方を含むことが特に好ましい。例えば、ガラスマトリックス全体に占めるマグネシウム成分の割合は、酸化物換算のモル比で、凡そ2〜3mol%とすることが好ましい。また、ガラスマトリックス全体に占めるカルシウム成分の割合は、酸化物換算のモル比で、凡そ4〜6mol%(例えば4.5〜6mol%)とすることが好ましい。
好ましい一態様では、かかるガラスマトリックスは、酸化物換算のモル比で、以下の組成:
O 16〜20mol%(より好ましくは16.5〜20mol%)
SiO 60〜70mol%(より好ましくは63〜69.5mol%)
Al 2〜5.5mol%(より好ましくは2.5〜5mol%)
Bi 3〜5mol%(より好ましくは3.5〜4.5mol%)
MgO、CaO及びSrOのうちの少なくとも1種 6〜10mol%(より好ましくは7〜9mol%)
から実質的に構成される。ガラスマトリックスをこのような組成とすることで、接合部の物理的安定性を向上させることができ、本願発明の効果を更に高いレベルで発揮することができる。
ここに開示される耐熱性ガラス接合材のガラスマトリックスは、上述した5種の主要構成成分から構成されていてもよく、あるいは、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上記以外の任意の成分を含むものであってもよい。そのような添加成分としては、酸化物の形態で、例えば、ZnO、TiO、ZrO、V、Nb、FeO、Fe、Fe、CuO、CuO、SnO、SnO、P、La、CeO等が挙げられる。これら構成成分の割合は、ガラスマトリックス全体の凡そ5mol%以下(典型的には3mol%以下、例えば2mol%以下)とすることが好ましい。
なお、ここに開示される耐熱性ガラス接合材のガラスマトリックス中には、ホウ素(B)成分、ナトリウム(Na)成分、ヒ素(As)成分、鉛(Pb)成分を含まない。換言すれば、ここに開示される耐熱性ガラス接合材のガラスマトリックスには、これらの成分を積極的には添加しない(不可避的な不純物として混入することは許容され得る)。ホウ素成分は、ガラスの耐湿性低下やSOFCの性能劣化を引き起こす要因となり得るため、好ましくない。ナトリウム成分は、ガラスの安定性低下を引き起こす原因となり得るため、好ましくない。ヒ素成分や鉛成分は、人体や環境に対して悪影響となり得るため、環境性や作業性、安全性の観点から好ましくない。
また、ここに開示される耐熱性ガラス接合材のガラスマトリックス中には、リューサイト結晶が析出している。換言すれば、ここに開示されるガラス接合材は、リューサイト結晶含有ガラスである。かかる結晶の析出量は、上記熱膨張係数の範囲を実現する限りにおいて特に限定されないが、ガラスマトリックスとリューサイト結晶との合計を100質量%としたときに、1質量%以上(典型的には2質量%以上、例えば3質量%以上、特には4質量%以上)であって15質量%以下(典型的には14質量%以下、例えば13質量%以下)であることが好ましい。これによって、より高いレベルで金属部材との熱膨張係数の整合をとることができ、耐熱性および耐久性に優れた接合部をより安定的に実現することができる。なお、結晶の析出量は、例えば、上記構成元素(必須構成元素)の組成比率や、後述する結晶化処理条件によって調整することができる。
≪耐熱性ガラス接合材の製造方法≫
このようなガラス接合材の製造方法は特に制限されないが、例えば、先ず、K、Si、Al、Biおよび少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物を実質的な構成成分とするガラス原料粉末を調製すること;次に、該原料粉末を溶融した後に急冷してガラスマトリックス(ガラス質中間体)を調製すること;次に、上記調製したガラスマトリックスを結晶化処理することによって、上記ガラスのマトリックス中にリューサイト結晶を析出させること;によって行い得る。以下、各工程について詳しく説明する。
ガラス原料粉末の調製では、例えば、上記のような各構成成分を含有する酸化物、炭酸塩、硝酸塩、複合酸化物等を含む工業製品、試薬、または各種の鉱物原料を用意し、これらが所望の組成となるよう混合する。原料粉末の調製は、例えばボールミル等の混合機に上記原料を投入し、数時間〜数十時間混合することによって行うことができる。好適な一態様では、かかるガラス原料粉末が、酸化物換算のモル比で、KOが16〜20mol%;SiOが60〜70mol%;Alが2〜5.5mol%;Biが3〜5mol%;MgO、CaO及びSrOのうちの少なくとも1種が6〜10mol%;の組成となるよう調製する。
次に、このようにして得られたガラス原料粉末を乾燥した後、高温(典型的には1000〜1500℃)条件下で加熱・溶融して、冷却または急冷することでガラス(ガラス質中間体)を調製することができる。好適な一態様では、得られたガラス(ガラス質中間体)を適当な大きさ(粒径)となるまで粉砕し、ガラス(ガラス質中間体)粉末を作製する。ガラス質中間体の平均粒径は、例えば0.5μm〜50μm(典型的には1μm〜10μm)とすることが好ましい。
次に、上記調製したガラス質中間体を結晶化処理(熱処理)する。これにより、ガラスマトリックス中にリューサイト結晶を析出させることができ、結晶含有ガラスを得ることができる。結晶化処理は、結晶化を誘起し得る温度域(例えば800〜1200℃、好ましくは900〜1100℃)で、上記ガラス質中間体を所定時間(典型的には5分以上、例えば10分〜60分)保持するとよい。好適な一態様では、得られた結晶含有ガラスを粉砕や篩いがけ(分級)によって、ガラスカレットまたはガラスパウダー等の形態に調製する。これにより、一層高気密で高品質な接合部を実現することができる。結晶含有ガラスの平均粒径は、用途にもよるが、例えば0.1μm〜10μm程度とすることが好ましい。
得られた結晶含有ガラス(粉砕後のガラスカレットおよびガラスパウダー)は、用途に適した形態に適宜加工することができる。例えば、任意の形状に圧縮成形した後、ガラス粒子同士が互いに結着する程度に仮焼してペレットの状態で接合に供しても良い。
あるいは、有機バインダや有機溶剤等とともに混合してペースト状に調製してもよい。有機バインダとしては、通常この種のガラスペーストに用いられている各種のバインダを用いることができる。例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系高分子や、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アミン系樹脂等を用いることができる。また、有機溶剤についても同様であって、例えば、ターピネオール、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、各種のグリコール等を用いることができる。ペースト状のガラス接合材は、所望の用途に応じて適切な粘度に調整することによって、塗布または印刷等の形態で被接合部材(金属部材等)に付与することが可能である。したがって、複雑な形状の被接合部材の接合、あるいは、複雑な接合形態での接合を、簡便且つ好適に実施することができる。なお、ペーストの分散、混合方法についても特に限定される事項はなく、例えば、従来公知の三本ロールミル等を用いて行うことができる。
≪接合方法≫
上記のようにして準備したペレット状またはペースト状のガラス接合材は、従来のガラス接合材と同様に用いることができる。例えば、先ず、上記のようにしてガラス接合材を調製する。次に、被接合部材として、少なくとも一の金属部材と一の他部材とを用意する。次に、金属部材と一の他部材とが相互に接触・接続するよう配置し、当該接続部位に、上記ペレット状またはペースト状のガラス接合材を付与(配置または塗布)する。そして、この複合体を乾燥後、該ガラス接合材の軟化点以上の温度域(典型的には600℃以上、例えば700℃〜900℃)で焼成する。これによって、被接合部材間に気密性に優れた接合部を形成することができる。
≪被接合部材≫
接合対象(被接合部材)としての金属部材には、ここに開示されるガラス接合材と熱膨張係数が比較的近い各種の金属材料からなる部材を用いることができる。例えば、熱膨張係数がここに開示されるガラス接合材と同程度か、それよりも若干高い金属材料からなる部材を用いることが好適である。かかる金属材料の熱膨張係数としては、おおよその目安として、30℃から500℃までの熱膨張係数が10×10−6−1〜22×10−6−1程度であることが例示される。このような金属材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム、クロム、鉄、ニッケル、銅、銀、マンガン、およびこれらの合金が例示される。より具体的には、フェライト系やオーステナイト系のステンレス鋼、純アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン、アルミニウム青銅等)、銀、銀合金(洋銀等)、銅、銅合金(リン青銅等)等であり得る。ここに開示されるガラス接合材によれば、従来のガラス接合材とは異なり、熱膨張係数の高い金属部材と接する接合部に優れた耐熱性や長期耐久性を付与することができる。
また、他部材としては特に制限されないが、例えば、金属部材やセラミック部材が例示される。例えば、ここに開示されるガラス接合材と同程度の熱膨張係数を有するセラミック製の部材を好適に用いることができる。換言すれば、ここに開示されるガラス接合材は、例えば、金属部材同士の接合や、金属部材−セラミック部材間(異種部材間)の接合等に広く使用することができる。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。
≪酸素分離膜エレメント≫
ここに開示されるガラス接合材は、酸素イオン伝導モジュールにおいて好適に使用することができる。酸素イオン伝導モジュールの一好適例として、以下では、酸素分離膜モジュール(酸素分離装置)の場合を例に説明する。かかる酸素分離膜モジュールは、少なくとも、一の金属部材(典型的には、金属製のガス管)と、一の他部材(典型的には、セラミック製の酸素分離膜エレメント)とを備える。そして、該金属部材と酸素分離膜エレメントとの間には、ここに開示されるガラス接合材を焼成してなる接合部(封止部)が形成されていることで特徴づけられる。当該ガラス接合材を用いることで、金属部材と酸素分離膜エレメント(典型的には酸素分離膜材)との間を気密に接合(封止)することができ、例えばガス管内を流通するガス(例えば酸素含有ガス)を安定的に酸素分離膜エレメントへと供給することができる。
金属部材としてのガス管は、酸素分離膜エレメントに酸素含有ガス(典型的には空気)を供給するための部材である。かかるガス管は、従来の酸素分離膜モジュールで採用されているものと同様でよい。具体的には、アルミニウム、クロム、鉄、ニッケル、銅、ステンレス鋼等からなるものが例示される。他部材としての酸素分離膜エレメントは、酸化物イオン伝導性を有する緻密な酸素分離膜材を備えており、典型的には当該膜材が支持体としての多孔質基材上に固着された形態である。酸素分離膜材を構成するセラミック材料としては、酸素イオン伝導体であるペロブスカイト構造をとるものであればよい。具体的には、(LaSr)CoO、(LaSr)(CoNi)O、(LaSr)(CoFe)O、(LaSr)(TiFe)O等の複合酸化物材料が例示される。多孔質基材としては、従来の膜エレメントで採用されている種々のセラミック多孔質体を使用することができる。具体的には、上記酸素分離膜材と同様の組成を有するセラミック多孔質体、マグネシア(MgO)、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素等からなるものが例示される。
なお、酸素分離膜モジュールの製造方法は、従来公知の製造方法に準じればよく特別な処理を必要としないため、詳細な説明は省略する。
図1に、酸素分離膜モジュールの一形態の断面図を模式的に示す。かかる酸素分離膜モジュール50は、大まかに言って、酸素分離膜エレメント10とガス管20とを備える。酸素分離膜エレメント10は、管状(円筒状)の多孔質基材12の外周表面13に、酸素分離膜材14が形成された構成である。また、酸素分離膜エレメント10の多孔質基材12の軸方向の両端部(端面)には、管状(例えば該エレメントと同径)のガス管20が連結し、連結面35が形成されている。かかる連結面35には、酸素分離膜エレメント10とガス管20とが気密に接合封止されるよう、ここに開示されるガラス接合材を付与してなる封止部30が形成されている。本実施形態では、封止部30は、連結面35を越えて酸素分離膜材14の一部を覆うよう付設されている。好適な一態様では、酸素分離膜モジュール50は、酸素分離膜エレメント10とガス管20に加え、酸素分離膜エレメント10を収容するチャンバー40を備える。かかるチャンバー40を備えることで、該チャンバー40内に他のガス(例えば炭化水素ガス)を供給することができ、これによって、該チャンバー内で、例えば炭化水素ガスと酸素分離膜14によって分離された酸素ガスとを反応(例えば部分酸化反応)させることができる。
≪固体酸化物形燃料電池(SOFC)システム≫
酸素イオン伝導モジュールの一好適例として、以下では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムの場合を例に説明する。かかるSOFCシステムは、少なくとも、一の金属部材(典型的には金属製のガス管やインターコネクタ)と、一の他部材(典型的には、セラミック製の酸素分離膜を含む単セル)とを備える。そして、該金属部材(ガス管やインターコネクタ)と単セルとの間には、ここに開示されるガラス接合材を焼成してなる接合部(封止部)が形成されていることで特徴づけられる。当該ガラス接合材を用いることで、例えば800〜1100℃程度の高温域に曝されても金属部材と単セルとの間を長期間気密に保持可能な接合部を実現し得る。さらに、当該接合部に完全な絶縁性を付与することができ、耐熱性と電池特性に優れた高性能のSOFCシステムを実現することができる。
金属部材としては、単セルにガス(例えば酸素含有ガス、典型的には空気)を供給するためのガス管や、SOFCの単セル同士を電気的に接続してスタックを構築するために該単セル間に配置されるインターコネクタが例示される。このような金属部材については、従来のSOFCシステムで採用されているものと同様でよい。具体的には、アルミニウム、クロム、鉄、ニッケル、銅、ステンレス鋼等からなるものが例示される。他部材としての単セルは、酸化物イオン伝導体からなる緻密な固体電解質の一方の面に多孔質構造の空気極(カソード)が、他方の面に多孔質構造の燃料極(アノード)が形成され、構成されている。固体電解質としては、イットリア安定化ジルコニア(Yttria stabilized zirconia:YSZ)やガドリニアドープセリア(Gadolinia doped ceria:GDC)からなるものが例示される。空気極としては、ランタンコバルトネート(LaCoO)系やランタンマンガネート(LaMnO)系のペロブスカイト型酸化物からなるものが例示される。燃料極としては、ニッケル(Ni)とYSZのサーメットからなるものが例示される。
なお、SOFCシステムの製造方法は、従来公知の製造方法に準じればよく特別な処理を必要としないため、詳細な説明は省略する。
図2に、SOFCシステムの一形態の分解斜視図を模式的に示す。かかるSOFCシステム100は、SOFC(単セル)60A,60Bが、金属製のインターコネクタ70を介して複数層積み重なったスタックとして構成されている。単セル60A,60Bは、層状の固体電解質64の両面が、それぞれ層状の燃料極(アノード)62と空気極(カソード)66とで挟まれたサンドイッチ構造を備えている。図面中央に配されるインターコネクタ70Aは、その両面を二つの単セル60A,60Bで挟まれており、一方のセル対向面72がセル60Aの空気極66と対向(隣接)し、他方のセル対向面76がセル60Bの燃料極62と対向(隣接)している。かかるインターコネクタ70Aのセル対向面72,76と、それぞれ対応する単セル60A,60B側の燃料極62あるいは空気極66の対向面との間には、ここに開示される接合材を付与してなる封止部(図示せず)が形成されている。また、セル対向面72には複数の溝が形成されており、供給された酸素含有ガス(典型的には空気)が流れる空気流路74を構成している。同様に、反対側のセル対向面76にも複数の溝が形成されており、供給された燃料ガス(典型的にはHガス)が流れるための燃料ガス流路78を構成している。かかる形態のインターコネクタ70では、典型的には空気流路74と燃料ガス流路78とが互いに直交するように形成されている。
以下、本発明に関する幾つかの試験例を説明するが、本発明をかかる試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
<実施形態1>
ここでは、ガラス原料粉末の組成や結晶化処理条件を相互に異ならせた場合のガラス接合材の性状(結晶の割合や熱膨張係数、屈伏点等)の差異を評価した。
本試験においては、計9種類のガラス接合材のサンプル(S1〜7)を作製した。具体的には、先ず、表1に示す組成のガラス原料粉末を1400〜1500℃で溶融した後、急冷した。次に、これを粉砕してから、表1に示す条件(温度・時間)で結晶化処理した。そして、粉砕・分級を行うことで、平均粒径が凡そ10μmのガラス接合材(S1〜7)を作製した。また、比較例として、市販の耐熱ガラス(PYREX(登録商標)、コーニング社製)を準備した。
Figure 0005886794
〔熱膨張係数および屈伏点の評価〕
上記作製したガラス接合材(S1〜7)およびPYREXガラスを、それぞれ7mm×7mm×50mmの角柱状にプレス成形し、800℃で10分間仮焼きした。仮焼き後、ダイヤモンドカッターでΦ5mm×10〜20mm程度の円柱状に切り出して、測定用の試験片とした。この試験片を、熱機械分析装置(株式会社リガク製、TMA8310)を用いて評価した。具体的には、室温(25℃)から1000℃まで10℃/分の一定速度で昇温したときの、30℃から500℃の間の平均線膨張量から熱膨張係数を算出した。また、得られた熱膨張曲線の極大値を屈伏点とした。
結果を、表2に示す。上記作製したガラス接合材(S1〜7)においては、ホウ素(B)成分およびナトリウム(Na)成分を含まなくとも、高い熱膨張係数を実現することができた。また、熱膨張係数の値は、サンプルの番号が大きくなるにつれて小さくなっていた。
Figure 0005886794
〔ガラスマトリックス中の結晶相の評価〕
上記作製したガラス接合材(S1〜7)およびPYREXガラスについて、それぞれ粉末X線回折(XRD)を行い、結晶析出の有無を確認した。また、結晶の析出が確認された場合には、結晶相の同定および内部標準法を用いた結晶相の定量を行った。結果を、表2に示す。また、図3に、典型例としてサンプル4(S4)のXRDのチャートを示す。
表2および図3に示すように、上記作製したガラス接合材(S1〜7)では、すべてリューサイト結晶(KAlSi)の析出が確認された。また、各サンプルの結晶相の割合は、サンプルの番号が大きくなるにつれて少なくなっていた。
〔接合性評価〕
上記作製したガラス接合材(S1〜7)およびPYREXガラスを、それぞれΦ15mm×2.5mmの円盤状にプレス成形し、ペレットを作製した。このペレットを、フェライト系ステンレス鋼(SUS430、熱膨張係数:10×10−6−1〜13×10−6−1)製の基板上に載せ、大気中、850℃で30分間焼成することで、ペレットと基板との接合を試みた。その後、それぞれの積層体について接合されているか、接合されている場合には気密な接合が実現されているかを確認した。具体的には、先ず、ピンセットを用いてペレットが基板から剥がせるかどうかで機械的に接合されているか否かを確認した。接合が確認できた接合体については、次いで浸透探傷検査を行い、クラックの有無を確認した。
結果を、表2に示す。表2において「○」は両者が機械的に接合され、且つ、クラックが確認されなかったことを、「×」は接合不良(剥離)または接合部にクラックが認められたことを表している。
表2に示すように、S1,S2−1,PYREXは、基板と良好に接合されていなかった。また、S2−2,S3−1は、浸透探傷検査においてクラックが認められた。これに対し、S3−2,S4,S5,S6,S7は、基板(フェライト系ステンレス鋼)と良好に接合されていた。このことから、被接合部材と同程度の熱膨張係数(10×10−6−1〜13×10−6−1)を有する結晶含有ガラス接合材を用いることで、クラックが無く、気密性の高い接合部を実現できることがわかった。
さらに、以下(1)〜(3)の性状を少なくとも1つ有する結晶含有ガラス接合材が好ましいこともわかった。
(1)30℃から1000℃の屈伏点が620℃〜655℃である。
(2)リューサイト結晶の含有量が、1質量%〜15質量%である。
(3)ガラスマトリックスの組成として、酸化物換算のモル比で以下の組成を含む(表1参照)。
O 16〜20mol%
MgO 2〜3mol%
CaO 4〜6mol%
SiO 60〜70mol%
Al 2〜4.5mol%
Bi 3〜4.5mol%
<実施形態2>
ここでは、SOFC用接合材料としての検討を行った。具体的には、先ず、上記作製したガラス接合材(S1〜7)およびPYREXガラスを、それぞれΦ15mm×2.5mmの円盤状にプレス成形し、真空中で、屈伏点より100℃高い温度で20分焼成した。得られた焼成体を、図4に模式的に示すように、外形12mm、内径5mm、厚さ2.5mmの大きさに加工して、ガラスリング120を作製した。次に、燃料極と空気極と固体電解質とを備えたSOFCチューブセル110を押し出し成型によって作製した。次に、図4に示すようなフェライト系ステンレス鋼(SUS430)製の円筒形状の治具130に上記作製したSOFCチューブセル110を差し込み、クリアランス部分を覆い隠すようにガラスリング120を配置した。この積層体(例1〜8)を、それぞれ850℃で30分熱処理することによって、チューブセル110とガラスリング120との接合を試みた。
〔接合性評価〕
この積層体(例1〜8)について、上記と同様に接合性評価を行った。結果を、表3に示す。
Figure 0005886794
〔リーク試験〕
上記作製した積層体(例1〜8)について、接合部からのガスリークが生じているか否かを確認した。具体的には、図5に示すように、室温で、チューブセル110の一の端部に封止栓140を取り付け、他の一の端部から5kPaの圧力、l00ml/分の流量で、窒素ガスを供給した。そしてガス供給量から出口流量を差し引くことで、流量降下量を算出した。結果を、表3に示す。表3においては、流量降下量が5ml/分以内の場合を「○」と示した。
表3に示すように、例1,例2−1,例8では、チューブセルとガラスリングとが機械的に接合されていなかった。また、例2−2,例3−1では、浸透探傷検査においてクラックが認められた。これに対し、例3−2,例4,例5,例6,例7では、両者の接合性が良好だった。このことから、S3−2,S4,S5,S6,S7に係るガラス接合材は、SOFC(単セル)と金属部材とを良好に接合することができ、SOFC用接合材料として使用可能なことがわかった。
<実施形態3>
ここでは、酸素分離膜モジュール用接合材料としての検討を行った。具体的には、先ず、上記得られたガラス接合材(S1〜7)およびPYREXガラスを、それぞれバインダと分散材と溶媒とともに混合し、ペースト状に調製した。次に、多孔質基材(セラミック多孔質体)上にイオン伝導部材である酸素分離膜材(ペロブスカイト構造をとるセラミック材料)を備えた酸素分離膜エレメントを準備した。次に、上記調製したペーストを、上記酸素分離膜エレメントと金属製のガス配管との接続部分に塗布して、60〜100℃で乾燥させた後、800〜1000℃で焼成した。これにより、酸素分離膜エレメントとガス配管を接合し、酸素分離膜モジュール(例11〜18)を作製した。
〔接合性評価・リーク試験〕
この酸素分離膜モジュール(例11〜18)について、上記実施形態2と同様に、接合性評価を行った。結果を、表4に示す。
また、上記作製した酸素分離膜モジュール(例11〜18)について、接続部分からのガスリークが生じているか否かを確認した。具体的には、図1に示すように、チャンバー内に酸素分離膜モジュールを配置し、0.2Paの圧力、100mL/分の流量で該チャンバー内にヘリウム(He)ガスを供給した。また、ガス配管には0.2Paの圧力下、100mL/分の流量で2時間、空気を供給し続けた。そして、ガスクロマトグラフィによってチャンバーの排出口から排出されたHe排ガスの組成を測定し、該He排ガスに含まれる窒素(N)ガスの量からリークの有無を評価した。結果を、表4に示す。表4においては、窒素ガスのリーク率(すなわち、He排ガス中に含まれるNガスの体積含有率)が、1%以下の場合を「○」と示した。
Figure 0005886794
表4に示すように、接合性評価およびリーク試験の結果は、上記実施形態2と同様だった。このことから、S3−2,S4,S5,S6,S7に係るガラス接合材は、酸素分離膜エレメントと金属部材とを良好に接合することができ、酸素分離膜モジュール用接合材料としても使用可能なことがわかった。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
10 酸素分離膜エレメント
12 多孔質基材
13 外周表面
14 酸素分離膜
20 ガス管
30 接合部(封止部)
35 連結面
40 チャンバー
50 酸素分離膜モジュール
60 SOFC(単セル)
62 燃料極(アノード)
64 固体電解質層
66 空気極(カソード)
70 インターコネクタ
100 固体酸化物形燃料電池システム(SOFCシステム)

Claims (11)

  1. 少なくとも一の金属部材と一の他部材とを接合するためのガラス接合材であって、
    ガラスマトリックスと、該マトリックス中に析出したリューサイト結晶と、から構成され、
    30℃から500℃までの熱膨張係数が10×10−6−1〜13×10−6−1であり、
    ここで、前記ガラスマトリックスは、B、Na、AsおよびPb成分を含まず、K、Si、Al、Biおよび少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物を実質的な構成成分とする、結晶含有ガラス接合材。
  2. 前記ガラスマトリックスと前記リューサイト結晶との合計を100質量%としたときに、前記リューサイト結晶の含有量は1質量%以上15質量%以下である、請求項1に記載のガラス接合材。
  3. 30℃から1000℃までの屈伏点が620℃〜655℃である、請求項1または2に記載のガラス接合材。
  4. 前記ガラスマトリックスは、酸化物換算のモル比で以下の組成:
    O 16〜20mol%、
    SiO 60〜70mol%、
    Al 2〜5.5mol%、
    Bi 3〜5mol%、
    MgO、CaO及びSrOのうちの少なくとも1種 6〜10mol%、
    を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のガラス接合材。
  5. 前記一の金属部材は、熱膨張係数が10×10−6−1〜22×10−6−1の金属材料により構成されている、請求項1〜4のいずれかに記載のガラス接合材。
  6. 前記一の金属部材と前記他部材とを700℃〜900℃で接合するように構成されている、請求項1〜5のいずれかに記載のガラス接合材。
  7. 前記一の金属部材はフェライト系ステンレス鋼からなる、請求項1〜6のいずれかに記載のガラス接合材。
  8. 酸化物イオン伝導性を有するセラミックからなる固体電解質を備えた固体酸化物形燃料電池と、
    前記固体酸化物形燃料電池に接合された金属部材と、
    を備える固体酸化物形燃料電池システムであって、
    前記固体酸化物形燃料電池と前記金属部材との接合部分には、請求項1〜7のいずれかに記載のガラス接合材の焼成体からなる封止部が形成されている、固体酸化物形燃料電池システム。
  9. 酸化物イオン伝導性を有するセラミックからなる酸素分離膜を備えた酸素分離膜エレメントと、
    前記酸素分離膜エレメントに接合された金属部材と、
    を備える酸素分離膜モジュールであって、
    前記酸素分離膜エレメントと前記金属部材との接合部分には、請求項1〜7のいずれかに記載のガラス接合材の焼成体からなる封止部が形成されている、酸素分離膜モジュール。
  10. 少なくとも一の金属部材と一の他部材とを接合するためのガラス接合材の製造方法であって、以下の工程:
    酸化物換算のモル比で以下の組成:
    O 16〜20mol%、
    SiO 60〜70mol%、
    Al 2〜5.5mol%、
    Bi 3〜5mol%、
    MgO、CaO及びSrOのうちの少なくとも1種 6〜10mol%、
    を有するガラス原料粉末を用意すること;
    該原料粉末を溶融した後に急冷して、ガラスマトリックスを調製すること;および
    前記調製したガラスマトリックスを結晶化処理することにより、前記ガラスのマトリックス中にリューサイト結晶を析出させること;
    を包含し、
    ここで、前記ガラス原料粉末は、B、Na、AsおよびPb成分を含まず、
    前記結晶化処理は、前記ガラスマトリックスと前記リューサイト結晶との合計を100質量%としたときに、前記リューサイト結晶の析出量が1質量%以上15質量%以下となるよう行う、製造方法。
  11. 前記結晶化処理において、前記原料粉末を900℃〜1100℃の温度で10分〜60分熱処理する、請求項10に記載の製造方法。
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