JP5280963B2 - 固体酸化物形燃料電池用接合材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
近年、SOFCの性能向上を目的として種々のセル構成材料が用いられるようになり、また、上記SOFCの動作温度よりも高い(例えば1200℃以上)温度下での熱処理によってセル構成材料同士を接合する必要性もでてきた。このことから、例えば1200℃以上のような高温条件下でもセル構成部材と同程度の熱膨張係数を有し得る接合部であって上記熱処理に十分に耐え得る強度(耐熱性)と気密性(シール性)とを高い次元で実現し得る接合部の形成が望まれていた。
しかし、上記特許文献に記載されるような従来の接合材料は、高耐熱性と高気密性とをともに両立させるという点で未だ十分ではない。
本発明に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)用接合材は、ガラスマトリックス中に安定化ジルコニア結晶に加えて、クリストバライト結晶(SiO2)および/またはリューサイト結晶(KAlSi2O6)のケイ素含有化合物が析出しているガラス(例えばガラスマトリックス中に上記安定化ジルコニアやケイ素含有化合物の微細結晶が分散状態で析出されるガラス、以下、「結晶含有ガラス」ということもある。)から構成されている。かかる接合材が上記のような結晶を含有することにより、該接合材は、SOFCの使用温度域(例えば800℃〜1200℃)およびそれ以上(1200℃以上)の高温域下に曝されても、該接合材に析出している結晶の溶解が好ましく防止されて、流動し難い。したがって、本発明に係る接合材によると、上記のような高温域(特に1200℃以上)に到達しても、該接合材を用いて形成された接合部(例えばSOFCセルと該セルを電気的に接続するインターコネクタとの接合部、またはSOFC(単)セルと該セルにガスを供給するガス管との接合部)が溶出する虞がなく、かかる接合部の耐熱性の向上を実現することができる。
また、本発明に係る接合材は、上記のような温度域においても柔軟性を有する。したがって、かかる接合材によると、該接合材を用いて形成された接合部に応力が生じた場合であっても、該応力を緩和してクラックや剥離等の発生を抑制することができ、かかる接合部の機械的強度の向上を実現することができる。
ここで、「燃料電池(具体的にはSOFC)」は、燃料極と空気極と固体電解質とを構成要素とする単セル、および該単セルを複数備えたいわゆるスタックを包含する用語である。
SiO2 60〜75質量%;
Al2O3 10〜20質量%;
Na2O 3〜15質量%;
K2O 5〜15質量%;
MgO 0〜 3質量%;
CaO 0〜 3質量%;
B2O3 0〜 3質量%;
から実質的に構成されている。そして、上記安定化ジルコニア結晶は、上記ガラス全体の1〜30質量%に相当する量で含まれている。
このような組成から構成される接合材は、接合対象(例えばSOFCセルと該セルを電気的に接続するインターコネクタとの接合部、またはSOFCセルと該セルにガスを供給するガス管との接合部)の熱膨張係数(熱膨張率)に近似した熱膨張係数を有し得る。このため、かかる接合材を用いて形成された接合部を備えるSOFCでは、上記使用温度域(例えば800℃〜1200℃)と非使用時の温度(常温)との間で昇温と降温とを繰り返して使用したり、あるいは上記使用温度域以上の高温下に曝す処理を施した場合であっても、上記接合部(シール部)からのガスのリークを防止し、長期にわたり高い気密性と機械的強度を保持することができる。またガスリークの防止により上記SOFCの電池性能も向上させることができる。
したがって、かかる接合材によると、高い耐熱性を備えた接合部を実現するとともに、優れた電池特性を備えた高性能のSOFCを実現することができる。
かかる熱膨張係数(典型的には、一般的な示差膨張方式(TMA)に基づく室温(25℃)〜500℃の間の平均値)は、例えば電極(例えば燃料極)材料、固体電解質材料あるいはガス管材料として好適に用いられ得るYSZ等のジルコニア系酸化物(ジルコニア系材料)やインターコネクタ材料として好適に用いられ得るランタンクロマイト系酸化物の熱膨張係数と近似する。また、かかる熱膨張係数は、SOFCセル全体、もしくはSOFCセルとガス管とからなるSOFCシステム全体としての熱膨張係数とも近似し得る。したがって、かかる構成の接合材を使用することによって、少なくとも1200℃(典型的にはそれ以上)の高温域に曝された後においても上記熱膨張係数を有して気密性と機械的強度とを高い次元で保持し得る接合(シール)部を形成させることができるとともに、このような接合部を備える高性能のSOFC(システム)を提供することができる。
本発明に係るSOFCでは、上記接合材を用いてセルとインターコネクタとが接合されているため、SOFCの使用温度域(例えば800℃〜1200℃)およびそれ以上(1200℃以上)の高温域下に曝されても、上記セルとインターコネクタとの接合部は高い気密性と機械的強度を保持することができる。したがって、本発明に係るSOFCによると、耐熱性と電池特性に優れた高性能のSOFCが実現される。
本発明に係るSOFCシステムでは、上記接合材を用いてSOFCとガス管とが接合されているため、SOFCの使用温度域(例えば800℃〜1200℃)およびそれ以上(1200℃以上)の高温域下に曝されても、上記SOFCとインターコネクタとの接合部は高い気密性と機械的強度を保持することができる。したがって、本発明に係るSOFCシステムによると、耐熱性と電池特性に優れた高性能のSOFCシステムが実現される。
かかる製造方法では、ガラスマトリックス中にケイ素含有化合物(すなわちクリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶)を析出させる結晶化処理を実施する前に、予め安定化ジルコニア粉末をガラスに添加しておき、上記全ての結晶を同時に析出させる。かかる方法によって得られる接合材は、上記ケイ素含有化合物をガラスマトリックス中に析出させた後に安定化ジルコニア粉末を添加することにより得られる接合材に比べて、例えば1200℃以上の高温域においてもその熱膨張係数を9×10−6K−1〜12×10−6K−1の範囲内に維持し得るため、SOFCの構成材料等の熱膨張係数により近似させることができ、SOFC用接合材として好ましく用いることができる。したがって、かかる接合方法によると、高温域下でも高い気密性と機械的強度を備えた接合部を形成可能なSOFC用として好適な接合材を提供することができる。
SiO2 60〜75質量%;
Al2O3 10〜20質量%;
Na2O 3〜15質量%;
K2O 5〜15質量%;
MgO 0〜 3質量%;
CaO 0〜 3質量%;
B2O3 0〜 3質量%;
から実質的に構成されるように調製されている。そして、上記安定化ジルコニア粉末を、上記ガラス原料粉末全体の1〜30質量%に相当する量で、上記ガラス原料粉末から調製されたガラスに添加する。
かかる製造方法によると、上記のような配合比で接合材が製造されることによって、高温域下でも高い気密性と機械的強度を備えた接合部を形成可能なSOFC用としてより好適な接合材を実現することができる。
かかる製造方法によると、上記のような条件で結晶化処理を行うことにより、ガラスマトリックス中に安定化ジルコニア結晶(例えばYSZ結晶)と、クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶とを同時に析出させることができ、このような結晶を含む結晶含有ガラスからなる接合材であってSOFC用としてより好適な接合材を実現することができる。
ここで安定化ジルコニア(部分安定化ジルコニアを包含する。)としては、安定化剤として機能する酸化物が添加されて安定化(もしくは部分安定化)されたものであればよく、例えば、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化スカンジウム(スカンジア;Sc2O3)、その他の希土類酸化物や、酸化カルシウム(カルシア;CaO)、酸化マグネシウム(マグネシア;MgO)等が酸化ジルコニウム(ジルコニア;ZrO2)に固溶されたものが挙げられる。特にイットリア安定化ジルコニア(YSZ)が好適である。
ここで開示される結晶含有ガラスは、SOFCの使用温度域(例えば700℃〜1200℃、好ましくは700℃〜1000℃、典型的には800℃〜1000℃)およびそれ以上(例えば1200℃以上)の高温域で溶融し難い組成のガラスが好ましい。この場合、ガラスの融点(軟化点)を上昇させる成分の添加または増加により、所望する高融点(高軟化点)を実現することができる。
このような結晶含有ガラスは、その主成分であるガラス成分として、SiO2、Al2O3、K2Oを必須構成成分として含む酸化物ガラスを含有することが好ましい。これら必須成分のほか、目的に応じて種々の成分(典型的には種々の酸化物成分)を付加的に含むことができる。
また、結晶含有ガラスの結晶成分のうち、クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶は、上記酸化物ガラスの構成成分から(後述の結晶化処理により)形成され(析出し)ており、かかる結晶の析出量は、結晶含有ガラス中の上記必須構成成分の含有率(組成率)によって適宜調整することができる。
特に限定されないが、上記結晶含有ガラスのガラス成分(すなわち上記酸化物ガラス)の組成としては、ガラス成分全体(クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶部分を含む)の酸化物換算の質量比で、SiO2が60〜75質量%、Al2O3が10〜20質量%、Na2Oが3〜15質量%、K2Oが5〜15質量%、MgOが0〜3質量%、CaOが0〜3質量%(好ましくは0.1〜3質量%)、およびB2O3が0〜3質量%が好ましい。
また、上述した酸化物成分以外の、本発明の実施において本質的ではない成分(例えばZnO、Li2O、Bi2O3、SrO、SnO、SnO2、CuO、Cu2O、TiO2、ZrO2、La2O3等)を種々の目的に応じて添加することができる。
上記結晶含有ガラス中の安定化ジルコニア結晶の配合量としては、上記ガラス成分全体の1質量%〜30質量%が好ましく、より好ましくは10質量%〜30質量%である。安定化ジルコニア結晶の配合量が1%未満であると、上記結晶含有ガラスからなる接合材において、該結晶含有ガラス中の他の結晶成分が再溶解し得る虞がある。また、少なくとも1200℃の温度下に曝された後の上記接合材の熱膨張係数(一般的な示差膨張方式(TMA)に基づく室温(25℃)〜500℃の間の平均値)が大幅に低下して接合対象部分の熱膨張係数との差が広がり、接合部に剥離やクラック等が生じて接合部の機械的強度が低下する虞がある。一方、上記安定化ジルコニア結晶の配合量が30質量%を超えると、結晶含有ガラス中の安定化ジルコニア結晶の含有量が多すぎてガラス成分が少なくなるため、接合部の緻密性が確保できず、高い気密性を有する接合部を形成できない虞がある。
ここで開示される接合材の製造方法は、以下の工程を包含することが好ましい。すなわち、かかる製造方法は、まず、ガラス原料粉末を用意し、該原料粉末を混合、溶融してガラスを調製すること、次に、上記調製したガラスを粉砕後、安定化ジルコニア粉末(例えばYSZ粉末)を添加、混合して、上記ガラスと上記安定化ジルコニアとの混合粉末を調製すること、および、上記混合粉末を結晶化処理することにより、上記ガラスのマトリックス中に安定化ジルコニア結晶と、クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶とを同時に析出させること、を包含する。ここで、かかる製造方法は、安定化ジルコニア粉末を添加する工程において、結晶化処理を実施する前のガラス粉末に安定化ジルコニアを添加し、該安定化ジルコニアの添加後の混合粉末に対して結晶化処理を行うことを特徴としている。安定化ジルコニア添加後の混合粉末を結晶化処理して安定化ジルコニアと上記ケイ素含有化合物とを同時に析出させてなる接合材では、予めケイ素含有化合物を析出させたガラスに安定化ジルコニアを添加(典型的には添加後に熱処理を実施)して得られる安定化ジルコニア結晶とケイ素含有化合物とを含む接合材に比べて、1200℃以上のような高温域下での熱膨張係数の低下を抑制する効果が向上し得る。
まず、かかる接合材(結晶含有ガラス)のガラス成分を構成する各種酸化物成分を得るための化合物(例えば各成分を含有する酸化物、炭酸塩、硝酸塩、複合酸化物等を含む工業製品、試薬、または各種の鉱物原料)および必要に応じてそれ以外の添加物をガラス原料粉末として用意する。かかる各粉末の平均粒子径としては、凡そ1μm〜10μm程度が好ましい。このような各化合物および添加物を所定の配合比で乾式または湿式のボールミル等の混合機に投入し、数〜数十時間混合する。このようにして得られた混和物(粉末)を、乾燥後、耐火性の坩堝に入れ、適当な高温(典型的には1000℃〜1500℃)条件下で加熱・溶融させる。このようにして上述のような組成からなるガラスを調製する。
この粉砕により得られたガラス粉末に対して、安定化ジルコニア粉末を上述のような所定の配合比で添加する。安定化ジルコニア粉末の平均粒子径としては、上記ガラス粉末と均一に混合された混合粉末を形成し易く、また後の結晶化処理において、安定化ジルコニア結晶が上記ケイ素含有化合物(すなわち、クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶)とともに好ましく析出し得るような大きさが好ましい。このような平均粒子径としては、0.1μm〜10μmが好ましく、より好ましくは0.5μm〜5μmである。
次いで、上記のようにして得られた混合粉末に対して結晶化処理を行う。この結晶化処理としては、例えば、上記混合粉末を室温から約100℃まで約1〜5℃/分の昇温速度で加熱し、800℃〜1000℃の温度域で30分〜60分程度保持することにより、ガラスマトリックス中に、安定化ジルコニア結晶に加えて上記ケイ素含有化合物(すなわちクリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶)を同時に析出させる。このようにして、結晶含有ガラスを得る。
こうして得られた結晶含有ガラスは、種々の方法で所望する形態に成形することができる。例えば、ボールミルで粉砕したり、適宜篩いがけ(分級)したりすることによって、所望する平均粒子径(例えば0.1μm〜10μm)の粉末状結晶含有ガラス(ガラス組成物)を得ることができる。
また、得られた粉末状結晶含有ガラスに対して、水を適量加えて上記と同様のボールミルを用いて混合する。その後、所定時間の乾燥処理を実施することにより、本発明に係る粉末状の接合材を得ることができる。
例えば、バインダーの好適例としてセルロースまたはその誘導体が挙げられる。具体的には、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩が挙げられる。バインダーは、ペースト全体の5〜20質量%の範囲で含まれることが好ましい。
かかる接合材は、種々の構造のSOFC(例えば、従来公知の平板型(Planar)、円筒型(Tubular)、あるいは円筒の周側面を垂直に押し潰したフラットチューブラー(Flat tubular)型等)に対して好ましく適用することができ、SOFCの形状またはサイズに特に限定されない。
また、かかるSOFCが備える燃料極および空気極は、従来のSOFCと同様でよく特に制限はない。例えば、燃料極としてはニッケル(Ni)とYSZのサーメット、ルテニウム(Ru)とYSZのサーメット等が好適に採用される。空気極としてはランタンコバルトネート(LaCoO3)系やランタンマンガネート(LaMnO3)系のペロブスカイト型酸化物が好適に採用される。これら材質からなる多孔質体をそれぞれ燃料極および空気極として使用することが好ましい。
また、高熱膨張性の材料をインターコネクタに用いる場合には、かかる好適な材料として、例えばLaの一部がSrで置換されたランタンクロマイト系酸化物(La0.7Sr0.3CrO3)等が挙げられる。
上記接合材40を付与することにより、緻密な固体電解質膜32とガス管54,56との間で生じ得る隙間が上記接合材1により塞がれ、多孔質な燃料極36が完全に覆われるような状態でガス管54,56とSOFC30とを接合、連結させることができる。このような接合により形成された接合部40は、例えば1200℃以上での高温域に曝されても高い気密性と機械的強度を有するため、かかるSOFCシステム100は、ガスリークが好ましく防止されて耐熱性と電池特性に優れた高性能のSOFCシステムを実現することができる。
なお、上記ガス管54,56の材質は特に制限されないが、例えば固体電解質32と同質材料であるYSZ等のジルコニア系酸化物の緻密体から形成されている場合には、上記接合材により固体電解質32と接合させ易く、好適に用いることができる。ガス管の形状、サイズについては、連結されるSOF30Cのサイズや接合部分の大きさに合わせて適宜設定され得る。
以上のように焼成して完成したガス管と上記SOFCとを上記接合材を用いて好ましく接合させることにより、上記SOFCシステムを構築することができる。なお、ガス管(未焼成の成形体)の焼成とペースト状接合材による接合部の形成とを同時に行ってもよい。
3〜8mol%イットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉末(平均粒径:約1μm)および酸化ニッケル(NiO)粉末に一般的なバインダー(ここではポリビニルアルコール(PVA)を使用した。)、および溶媒(ここでは水)を添加して混練した。次いで、この混練物(スラリーまたはペースト状の燃料極用成形材料)を用いてシート成形を行い、直径20mm×厚み1mm程度の円板形状の燃料極成形体を得た。
次いで、3〜8mol%YSZ粉末(平均粒径:約1μm)に上記と同様のバインダー、分散剤、および溶媒を添加して混練した。次いで、この混練物(ペースト状の固体電解質膜用成形材料)を上記燃料極成形体上に、直径16mm×厚み10μm〜30μmの円板状に印刷成形した。この燃料極成形体と該成形体上に支持された固体電解質膜とからなる未焼成の積層体を乾燥後、1200℃〜1400℃の焼成温度で大気中で焼成した。
次いで、LaSrO3粉末(平均粒径:約1μm)に一般的なバインダー(ここでは、エチルセルロースを用いた。)、および溶媒(ここではターピネオールを用いた。)を添加して混練した。次いで、この混練物(ペースト状の空気極用成形材料)を上記固体電解質膜上に、直径13mm×厚み10μm〜30μmの円板状に印刷成形した。次いで、1000℃〜1200℃の焼成温度で大気中で焼成した。このようにして、図2に示されるような、燃料極36と固体電解質膜32と空気極34とからなるアノード支持形SOFC80を作製した。
3〜8mol%YSZ粉末(平均粒径:約1μm)に上記と同様のバインダー、分散剤、および溶媒を添加して混練し、スラリーまたはペースト状のガス管用成形材料を調製した。次いで、かかる成形材料を押出成形等によって管状に成形した。得られた成形体を大気中で1300℃〜1600℃)で焼成し、2本の管状のガス管54,56(図2参照)を作製した。
ここで、以下に示すプロセスAの手順に従って、YSZの添加量の異なる接合材(サンプル1〜8)を作製した。
まず、平均粒径が約1μm〜10μmであるSiO2粉末、Al2O3粉末、Na2CO3粉末、K2CO3粉末、MgCO3粉末、CaCO3粉末およびB2O3粉末を、それぞれ以下の配合比、すなわち酸化物換算でSiO2が67.0質量%、Al2O3が13.9質量%、Na2Oが8.5質量%、K2Oが9.1質量%、MgOが0.6質量%、CaOが0.8質量%、B2O3が0.1質量%となるような配合比で混合し、ガラス原料粉末を得た。
次いで、このガラス原料粉末を1000℃〜1500℃の温度域(ここでは1450℃)で溶融してガラスを形成した。
得られたガラスを平均粒子径として2μm程度になるまで粉砕してガラス粉末を作製した。
3〜8mol%YSZ粉末(平均粒径:約1μm)を用意し、上記ガラス原料粉末の全質量に対して0質量%〜40質量%の範囲内で添加量を変え、YSZ粉末を各添加量で上記ガラス粉末に添加し、十分に混合した。このときの混合粉末の平均粒子径は1.5μm程度であった。このようにして、YSZ粉末の添加量が異なる組成の混合粉末を8種類調製した。
上記8種類の混合粉末を800℃〜1000℃の温度域(ここでは850℃±50℃)で30分〜60分間加熱する結晶化処理を実施した。このようにして組成が互いに異なる計8種類(サンプル1〜8)の結晶含有ガラスを調製した。各サンプル1〜8とYSZの添加量との相関を表1に示す。
これにより、サンプル2〜8では、ガラスマトリックス中に分散するようにYSZ結晶、クリストバライト結晶および/またはリューサイトの結晶が析出した。サンプル1ではクリストバライト結晶および/またはリューサイトの結晶が析出した。
次いで、得られた結晶含有ガラス(サンプル1〜8)を粉砕し、分級を行って、平均粒径約2μmの粉末状の結晶含有ガラス(すなわち接合材)を得た。
ここで、以下に示すプロセスBの手順に従って、YSZの添加量の異なる接合材(サンプル11〜18)を作製した。
まず、平均粒径が約1μm〜10μmであるSiO2粉末、Al2O3粉末、Na2CO3粉末、K2CO3粉末、MgCO3粉末、CaCO3粉末およびB2O3粉末を、それぞれ以下の配合比、すなわち酸化物換算でSiO2が67.0質量%、Al2O3が13.9質量%、Na2Oが8.5質量%、K2Oが9.1質量%、MgOが0.6質量%、CaOが0.8質量%、B2O3が0.1質量%となるような配合比で混合し、ガラス原料粉末を得た。
次いで、このガラス原料粉末を1000℃〜1500℃の温度域(ここでは1450℃)で溶融してガラスを形成した。
得られたガラスを平均粒子径として2μm程度になるまで粉砕してガラス粉末を作製した。
上記ガラス粉末を800℃〜1000℃の温度域(ここでは850℃±50℃)で30分〜60分間加熱する結晶化処理を実施した。結晶化処理により得られたガラス組成物を粉砕した。
次に、3〜8mol%YSZ粉末(平均粒径:約1μm)を用意し、上記ガラス原料粉末の全質量に対して0質量%〜40質量%の範囲内で添加量を変え、YSZ粉末を各添加量で上記結晶化処理後のガラス組成物に添加し、十分に混合した。このときの混合粉末の平均粒子径は1.5μm程度であった。このようにして、YSZ粉末の添加量が異なる組成の混合粉末を8種類調製した。
上記8種類の混合粉末を800℃〜1000℃で30分〜60分間熱処理を実施した。これにより、YSZの添加量が異なる8種類の結晶含有ガラスであってYSZ結晶と、クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶が含有される結晶含有ガラスを得た。かかる8種類の結晶含有ガラスをサンプル11〜18とした。各サンプル11〜18とYSZの添加量との相関を表1に示す。
次いで、得られた結晶含有ガラス(サンプル11〜18)を粉砕し、分級を行って、平均粒径約2μmの粉末状の結晶含有ガラス(すなわち接合材)を得た。
上記16種類のペースト状接合材(サンプル1〜8およびサンプル11〜18)をそれぞれ用いて接合処理を行った。具体的には、図2に示されるように、上記アノード支持形SOFC30の両側にガス管54,56を配置し、該ガス管54,56に挟まれたSOFC30における固体電解質膜32とガス管54,56との各間の隙間を塞ぐようにして接合材(各サンプル1〜8およびサンプル11〜18)を塗布した。これを80℃で乾燥した後、大気中で800℃〜1000℃の温度域で1時間保持(焼成)した。これにより、ガス管54,56とSOFC30とを接合し接合部40を形成した。このようにして、計16種類(サンプル1〜8およびサンプル11〜18)を用いてガス管54,56とSOFC30とが接合されたSOFCシステムの供試体(100)を構築した。
次に、上記構築した計16種類のサンプルを用いてガス管54,56とSOFC30とが接合されたSOFCシステムの供試体(100)について、接合部40からのガスリークの有無を確認するリーク試験を行った。具体的には、まず、サンプル1を備えたSOFCシステムの試供体について、該試供体を1200℃に加熱し、かかる温度条件下で燃料極36に向けて燃料ガス供給用ガス管56側から水素含有ガス(水素(H2)ガス3体積%および窒素(N2)ガス97体積%の混合ガス)を1時間供給することにより上記燃料極36を還元処理した。次いで、上記温度を1200℃に維持した状態で、空気供給用ガス管54側から空気を0.2Paの圧力下で100mL/分の流量で上記試供体に供給するとともに、燃料ガス供給用ガス管56側から燃料ガスとしてのヘリウム(He)ガスを0.2Paの圧力下100mL/分の流量で試供体に2時間供給した。ガスクロマトグラフィにより燃料極36側(すなわちガス管56側)からのHe排ガスの組成を測定し、該He排ガスに含まれるN2ガスの量から、接合部40から空気中のN2がリークしているか否かを評価した。サンプル2〜8およびサンプル11〜18についても同様にしてリーク試験を実施した。
ガスリークの評価結果を表1に示す。表1において、N2ガスのリーク率(He排ガス中に含まれるN2ガスの体積含有率)が1%以下のものを「無」と表示し、実用的な気密性を有しているものとした。表1に示されるように、YSZが無添加であるサンプル1およびサンプル11では、いずれも上記接合部40にクラックが生じ、ガスリークが認められた。したがって、プロセスAおよびBに依らず、YSZが無添加である接合材は1200℃のような高温域での使用には不適であることが確認された。また、サンプル8およびサンプル18では、いずれもYSZの添加量が多すぎたために接合部40の緻密性が不十分であったためにガスリークが認められた。上記サンプル1,8,11および18以外のサンプルでは、接合部40でのガスリークは好ましく防止されており、上記高温下でも優れた気密性および機械的強度を有することがわかった。
次に、上記構築した計16種類のサンプル(サンプル1〜8および11〜18)を用いてガス管54,56とSOFC30とが接合されたSOFCシステムの供試体(100)について、上記1200℃の温度下で2時間の燃料ガスおよび空気の供給を実施した後、上記サンプル1〜8および11〜18のペースト状接合材を使用して得られた各接合部40の熱膨張係数(ただし、示差膨張方式(TMA)に基づく室温(25℃)〜500℃の間の平均値))を測定した。この結果を表1に示す。
表1に示されるように、サンプル1および11では、その熱膨張係数が8×10−6K−1未満であった。また、プロセスAにより作製したサンプル2〜8については、いずれも9×10−6K−1〜12×10−6K−1の範囲内であった。これに対して、プロセスBにより作製したサンプル12〜18については、いずれも9×10−6K−1〜10.5×10−6K−1の範囲内であった。なお、ここで使用したYSZ固体電解質膜32およびYSZ製ガス管54,56の同条件での熱膨張係数は10.2×10−6K−1であった。
以上の結果から、プロセスAとBとで作製されたサンプル(接合材)を比較すると、同じYSZ添加量であってもプロセスAで作製されたサンプルの方が高い熱膨張係数を示しており、このことにより、YSZ粉末を添加してから上記ガラスの結晶化処理を行って結晶成分を同時に析出させるプロセスは、結晶化処理後にYSZ粉末を加えるプロセスに比べて、接合材に熱膨張係数低下の抑制力を付与し得ることがわかった。したがって、SOFCまたはSOFCシステム内において、例えば1200℃のような高温になっても熱膨張係数の変化が比較的小さい箇所を接合(シール)する場合には、プロセスAによって作製される接合材を用いる方が好ましいことが確認された。
12 固体電解質
14 空気極
16 燃料極
18A,18B インターコネクタ
20 接合部(接合材)
30 固体酸化物形燃料電池(SOFC)
32 固体電解質
34 空気極
36 燃料極
40 接合部(接合材)
54 空気供給用ガス管
56 燃料ガス供給用ガス管
100 固体酸化物形燃料電池システム(SOFCシステム)
Claims (6)
- ガラスを主成分とする固体酸化物形燃料電池用の接合材であって、
前記ガラスのマトリックス中には、安定化ジルコニア結晶と、クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶とが析出しており、
ここで、前記ガラスは、
酸化物換算の質量比で以下の組成:
SiO 2 60〜75質量%;
Al 2 O 3 10〜20質量%;
Na 2 O 3〜15質量%;
K 2 O 5〜15質量%;
MgO 0〜 3質量%;
CaO 0〜 3質量%;
B 2 O 3 0〜 3質量%;
から実質的に構成されており、
前記安定化ジルコニア結晶は、前記ガラス全体の1〜30質量%に相当する量で含まれている、固体酸化物形燃料電池用接合材。 - 前記接合材として、少なくとも1200℃の温度下に曝された後も熱膨張係数が9×10−6K−1〜12×10−6K−1を維持するように調製されている、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池用接合材。
- 燃料極と、空気極と、固体電解質とを備える複数のセルと、
該複数のセルを電気的に接続するために該セル間に配置および接合されるインターコネクタと
を備える固体酸化物形燃料電池であって、
前記セルと前記インターコネクタとの接合部が、請求項1または2に記載の接合材により形成されている、固体酸化物形燃料電池。 - 燃料極と、空気極と、固体電解質とを備える単数または複数のセルからなる固体酸化物形燃料電池と、
前記固体酸化物形燃料電池に接合されて該固体酸化物形燃料電池にガスを供給するためのガス管と、
を備える固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記固体酸化物形燃料電池と前記ガス管との接合部が、請求項1または2に記載の接合材により形成されている、固体酸化物形燃料電池システム。 - 固体酸化物形燃料電池用接合材を製造する方法であって:
ガラス原料粉末を用意し、該原料粉末を混合、溶融してガラスを調製すること、
ここで、前記ガラス原料粉末は、前記ガラスが酸化物換算の質量比で以下の組成:
SiO 2 60〜75質量%;
Al 2 O 3 10〜20質量%;
Na 2 O 3〜15質量%;
K 2 O 5〜15質量%;
MgO 0〜 3質量%;
CaO 0〜 3質量%;
B 2 O 3 0〜 3質量%;
から実質的に構成されるように調製されている;
前記調製したガラスを粉砕後、安定化ジルコニア粉末を前記ガラス原料粉末全体の1〜30質量%に相当する量で前記ガラス原料粉末から調製されたガラスに添加、混合して、前記ガラスと前記安定化ジルコニアとの混合粉末を調製すること;および、
前記混合粉末を結晶化処理することにより、前記ガラスのマトリックス中に安定化ジルコニア結晶と、クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶とを同時に析出させること;
を包含する、製造方法。 - 前記結晶化処理として、前記混合粉末を800℃〜1000℃の温度域で30分間〜60分間加熱する、請求項5に記載の製造方法。
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