JP2014034633A - 有機部材の製造方法および当該製造方法により得られた有機部材 - Google Patents

有機部材の製造方法および当該製造方法により得られた有機部材 Download PDF

Info

Publication number
JP2014034633A
JP2014034633A JP2012176524A JP2012176524A JP2014034633A JP 2014034633 A JP2014034633 A JP 2014034633A JP 2012176524 A JP2012176524 A JP 2012176524A JP 2012176524 A JP2012176524 A JP 2012176524A JP 2014034633 A JP2014034633 A JP 2014034633A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
organic
liquid
resin
organic member
organic substance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012176524A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6024037B2 (ja
Inventor
Shusuke Yoshihara
秀輔 吉原
Junji Watanabe
順次 渡辺
Masatoshi Tokita
雅利 戸木田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kaneka Corp
Tokyo Institute of Technology NUC
Original Assignee
Kaneka Corp
Tokyo Institute of Technology NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kaneka Corp, Tokyo Institute of Technology NUC filed Critical Kaneka Corp
Priority to JP2012176524A priority Critical patent/JP6024037B2/ja
Publication of JP2014034633A publication Critical patent/JP2014034633A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6024037B2 publication Critical patent/JP6024037B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Abstract

【課題】微細な凹凸の形成が形成された有機部材を簡便に製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の有機部材の製造方法は、固化温度が25℃以上である溶融有機物質1と液体2とを接触させる接触工程を含む有機部材の製造方法であり、溶融有機物質1が固化した有機部材を得る製造方法であって、上記接触工程における、液体2の温度は有機物質の固化温度以下であり、液体2の表面張力は、30mN/m以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は有機部材の製造方法および当該製造方法により得られた有機部材に関する。
近年、樹脂表面に微細な凹凸の周期が形成されたシートが広く使用されており、例えば、液晶等の電子ディスプレイ用途にて、光拡散シート、輝度向上シート、光導波路シート、プリズムシート、ワイヤーグリッド偏光フィルム等が使用されている。
これまで樹脂表面上へ凹凸を形成する方法は種々知られており、特許文献1に記載のナノ構造体が形成された金型を用いて樹脂を成形し、金型表面を転写する方法、特許文献2に記載の熱収縮樹脂フィルムを加熱収縮することで樹脂表面を蛇行変形させる方法、特許文献3に記載のブロック共重合体のミクロ相分離構造を利用する方法、特許文献4に記載のフォトリソグラフィーを利用する方法、などが知られている。
特開2010−241903号公報(2010年10月28日公開) 特開2011−215492号公報(2011年10月27日公開) 国際公開第2011−007878号公報(2011年1月20日公開) 特開2012−081619号公報(2012年4月26日公開)
しかしながら、上述のような従来技術には、微細な凹凸の形成を簡便にできないという問題点がある。
すなわち、凹凸の形成にあたり、特許文献1、3では、金型(母型)に樹脂を射出し、その後、樹脂を剥離させる必要があり、特許文献2では、凹凸形成前に、表面平滑層が形成された積層シートを作製する必要がある。また、特許文献4では、フォトリソグラフィーを利用する必要がある。これらの製造方法によれば、樹脂表面に凹凸を形成できるものの、その製造工程は簡便とは言い難い。
上記課題を鑑み、本発明の目的は、微細な凹凸が形成された有機部材を簡便に製造できる製造方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、固化温度が25℃以上である有機物質を溶融状態にした後に、有機物質の固化温度以下でかつ、表面張力が30mN/m以上である液体に溶融状態の有機物質を浸すと、スティック&ブレイク現象により有機物質の表面に凹凸を形成しながら固化できることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明には、下記(1)〜(8)が含まれる。
(1)固化温度が25℃以上である溶融状態の有機物質と液体とを接触させる接触工程を含む有機部材の製造方法であり、上記接触工程における、上記液体の温度は有機物質の固化温度以下であり、上記液体の表面張力は、30mN/m以上であることを特徴とする有機部材の製造方法。
(2)上記有機物質を上記液体に浸すことによって上記接触工程を行い、上記有機物質を上記液体に浸す速度が、10mm/sec以上であることを特徴とする(1)に記載の有機部材の製造方法。
(3)上記溶融状態の有機物質を塗布した基材を上記液体に浸すことにより上記接触工程を行うことを特徴とする(1)または(2)に記載の有機部材の製造方法。
(4)上記接触工程において、上記基材に塗布する有機物質の厚さが2mm以下であることを特徴とする(3)に記載の有機部材の製造方法。
(5)上記有機物質が樹脂であることを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載の有機部材の製造方法。
(6)上記樹脂が、主として下記一般式(1)で示される繰り返し単位を少なくとも含有することを特徴とする請求項5に記載の有機部材の製造方法。
−M−OCO(CHCOO− ...(1)
(式中、−M−は、芳香族基、縮合芳香族基、脂環基または脂環式複素環基である2価の置換基、mは2〜22の整数を示す)
(7)上記−M−が、下記一般式(2)または(3)であることを特徴とする(6)に記載の有機部材の製造方法。
(式中、Rはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、F、Cl、Br、I、CN、またはNO、yは1〜4の整数、nは0〜4の整数を示す。)
(8)(1)〜(7)の何れかに記載の有機部材の製造方法によって製造されたことを特徴とする有機部材。
本発明の有機部材の製造方法によれば、(1)固化温度が25℃以上である溶融状態の有機物質と、(2)有機物質の固化温度以下であり、表面張力が30mN/m以上の液体とを接触させるという、簡便な操作にて有機部材を製造することができる。
(a)〜(c)は、本発明に係る有機部材の製造過程を示す側面図であり、(d)は、有機部材の凹凸構造を示す側面図である。 本発明の実施例1に係る有機部材の表面の凹凸の周期を示す原子間力顕微鏡図である。 本発明の実施例2に係る有機部材の表面の凹凸の周期を示す原子間力顕微鏡図である。 本発明の実施例3に係る有機部材の表面の凹凸の周期を示す原子間力顕微鏡図である。 本発明の実施例4に係る有機部材の表面の凹凸の周期を示す偏光光学顕微鏡図である。 本発明の実施例5に係る有機部材の表面の凹凸の周期を示す偏光光学顕微鏡図である。
以下で本願発明について詳細に説明する。本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を、それぞれ意味する。
本発明に係る有機部材を得る製造方法は、溶融状態の有機物質と液体とを接触させ、上記有機物質が固化した有機部材を得るものであり、液体の表面張力を利用して、表面に凹凸を有した有機部材が得られる。以下、当該製造方法について説明するが、まず、本製造方法にて使用する有機物質および液体等について説明する。
[1.有機物質]
本製造方法では、目的物である有機部材の素材として、固化温度が25℃以上の有機物質を用いる。本発明における固化温度とは、溶融状態の有機物質が固化する温度であり、特に、有機物質が非晶性樹脂であればガラス転移温度を示し、有機物質が結晶性樹脂であれば結晶化温度を示す。上記固化温度が25℃以上であることにより、得られた有機部材に形成された凹凸が20℃の室温にて保持される。また、凹凸が保持される温度の幅を広げ、有機部材の使用環境温度をより高めるためには有機物質の固化温度は60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。
一方、固化温度が25℃未満である有機物質を用いて本発明の製造方法を行った場合、凹凸が形成されないか、形成されたとしても、20℃の室温で凹凸が長時間保持されないため、本製造方法ではこのような有機物質を使用できない。
上記有機物質は、分子量が200以上であり、樹脂および低分子の有機化合物を含むものである。分子量が200以上であることで、固化した際に、有機物質が形状を保ち易い。上記樹脂は、数平均分子量が3000以上、低分子の有機化合物は、分子量が200以上、3000未満であるものとする。また、上記樹脂には少数のモノマーからなるオリゴマーも含まれる。
有機物質は、樹脂および低分子の有機化合物の何れであってもよいが、種類の選定が豊富で、凹凸を形成した有機部材が形状を好適に保持し易い観点から、有機物質として樹脂を用いることが好ましい。
上記樹脂の具体例としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。
上記ポリエステル系樹脂のうち、樹脂表面に凹凸が形成され易いことから、主として下記一般式(1)で示される繰り返し単位を少なくとも含有する樹脂を用いることが好ましい。
−M−OCO(CHCOO− ...(1)
(式中、−M−は、芳香族基、縮合芳香族基、脂環基または脂環式複素環基である2価の置換基、mは2〜22の整数を示す)
ここで「主として」とは、分子鎖の主鎖中に含まれる一般式(1)で示される繰り返し単位の量が、樹脂中の繰り返し単位の総量に対して50mol%以上、100mol%以下であり、好ましくは70mol%以上、100mol%以下であり、より好ましくは90mol%以上、100mol%以下であり、最も好ましくは実質的に100mol%である。50mol%未満の場合、凹凸が形成され難い場合がある。
目的物である有機部材が上記樹脂を含有すること、および、樹脂中の繰り返し単位のmol%は、H−NMR、質量分析などによって確認できる。
一般式(1)に示す樹脂の構造は、同一分子中に剛直基と柔軟性基を持つことが特徴であり、−M−が剛直基に相当し、−(CH−が柔軟性基に相当する。
上記−M−は、ベンゼン環を有する炭素数6〜12の炭化水素基、ナフタレン環を有する炭素数10〜20の炭化水素基、ビフェニル構造を有する炭素数12〜24の炭化水素基、ベンゼン環を3個以上有する炭素数14〜36の炭化水素基、縮合芳香族基を有する炭素数12〜36の炭化水素基および炭素数4〜36の脂環式複素環基からなる群から選択されるものであることが好ましい。
−M−の具体例としては、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、スチルベン、ナフタレン、アントラセニレン、1,2−ジフェニルエチレン、ジフェニルアセチレン、シクロヘキシル、ピリジル、ピリミジル、チオフェニレン、フェニルベンゾエート、フェニルベンズアミド、アゾベンゼン、2−ナフトエート、フェニル−2−ナフトエートおよびこれらの誘導体等から水素を2個除去した構造を持つ2価の基が挙げられるがこれらに限るものではない。また、−M−は無置換体であってもよく、脂肪族炭化水素基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基などの置換基によって水素原子が置換された誘導体であってもよい。
さらに−M−が下記一般式(2)または(3)であることが好ましい。これら剛直基は入手または合成が容易である。
(式中、Rはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、F、Cl、Br、I、CN、またはNO、yは1〜4の整数、nは0〜4の整数を示す。)
一般式(1)のmは凹凸をより形成し易いことから偶数であることが好ましく、光を透過するシートやフィルムの作製においては8〜22の偶数であることがより好ましく、10〜18の偶数であることがさらに好ましい。
本発明に係る上記樹脂は、公知のいかなる方法で製造されても構わない。樹脂の構造制御が簡便であるという観点から、剛直基の両末端に水酸基を有する化合物と柔軟性基の両末端にカルボキシル基を有する化合物とを反応させる製造方法が好ましい。
剛直基の両末端に水酸基を有する化合物と、柔軟性基の両末端にカルボキシル基を有する化合物とからなる樹脂の製造方法の一例としては、両末端に水酸基を有する剛直基を無水酢酸等の低級脂肪酸を用いて、一部ずつ、または一括して酢酸エステルとした後、別の反応槽または同一の反応槽で、柔軟性基の両末端にカルボキシル基を有する化合物と、剛直基の両末端が酢酸エステル化された化合物とを脱酢酸重縮合反応させる方法が挙げられる。
重合反応は、実質的に溶媒の存在しない状態で、通常、230〜350℃、好ましくは250〜330℃の温度で、窒素等の不活性ガスの存在下、常圧または減圧下にて、0.5〜5時間行われる。反応温度が230℃より低いと反応の進行は遅く、350℃より高い場合は分解等の副反応が起こり易い。減圧下で反応を行う場合、段階的に減圧度を高くすることが好ましい。急激に高真空度まで減圧した場合、モノマーが揮発するおそれがあるからである。到達真空度は100トル(1トル=1mmHg)以下が好ましく、50トル以下がより好ましく、10トル以下が特に好ましい。真空度が100トルを超える場合、重合反応に長時間を要する場合がある。重合反応では、多段階の反応温度を採用してもかまわないし、場合により昇温中あるいは最高温度に達したらすぐに反応生成物を溶融状態で抜き出し、回収することもできる。
重合工程にて用いられる低級脂肪酸の酸無水物としては、炭素数2〜5個の低級脂肪酸の酸無水物、たとえば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロム酢酸、無水ジブロム酢酸、無水トリブロム酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸等が挙げられるが、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリクロル酢酸が特に好適に用いられる。低級脂肪酸の酸無水物の使用量は、用いる剛直基が有する水酸基の合計に対し1.01〜1.50倍当量、好ましくは1.02〜1.2倍当量である。
本発明に係る樹脂は、本発明の効果を失わない程度に他のモノマーが共重合されていても構わない。例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸、カプロラクタム類、カプロラクトン類、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジアミン、脂肪族ジオール、脂環族ジカルボン酸、脂環族ジオール、芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオールおよび芳香族メルカプトフェノールが挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−5−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−7−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4”−ジカルボキシターフェニル、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4−カルボキシフェノキシ)ブタン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、ビス(3−カルボキシフェニル)エーテルおよびビス(3−カルボキシフェニル)エタン等、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
芳香族ジオールの具体例としては、例えばハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェノールエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンおよび2,2’−ジヒドロキシビナフチル等、ならびにこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミンの具体例としては、4−アミノフェノール、N−メチル−4−アミノフェノール、3−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルエーテル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルメタン、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルスルフィドおよび2,2’−ジアミノビナフチルならびにこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
芳香族ジアミンおよび芳香族アミノカルボン酸の具体例としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、N−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノフェニルスルフィド(チオジアニリン)、4,4’−ジアミノビフェニルスルホン、2,5−ジアミノトルエン、4,4’−エチレンジアニリン、4,4’−ジアミノビフェノキシエタン、4,4’−ジアミノビフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4’−ジアミノビフェニルエーテル(オキシジアニリン)、4−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸および7−アミノ−2−ナフトエ酸ならびにこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
カプロラクタム類およびカプロラクトン類の具体例としては、ε‐カプロラクタム、ε‐カプロラクトンなどが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
脂肪族ジアミンの具体例としては、1,2−エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、および1,12−ドデカンジアミンなどが挙げられる。
脂肪族ジオール、脂環族ジカルボン酸および脂環族ジオールの具体例としては、ヘキサヒドロテレフタル酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジオール、シス−1,4−シクロヘキサンジオール、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、トランス−1,3−シクロヘキサンジオール、シス−1,2−シクロヘキサンジオール、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール;などの直鎖状または分鎖状脂肪族ジオールなど、およびそれらの反応性誘導体が挙げられる。
芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオールおよび芳香族メルカプトフェノールの具体例としては、4−メルカプト安息香酸、2−メルカプト−6−ナフトエ酸、2−メルカプト−7−ナフトエ酸、ベンゼン−1,4−ジチオール、ベンゼン−1,3−ジチオール、2,6−ナフタレン−ジチオール、2,7−ナフタレン−ジチオール、4−メルカプトフェノール、3−メルカプトフェノール、6−メルカプト−2−ヒドロキシナフタレン、7−メルカプト−2−ヒドロキシナフタレンなど、およびそれらの反応性誘導体が挙げられる。
本発明に係る樹脂には、本発明の効果の発揮を失わない範囲で、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ウレタン樹脂等いかなる公知の樹脂も含有させても構わない。上記公知の樹脂のうち、好ましい具体例として、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶ポリマー、ナイロン6、ナイロン6,6等が挙げられる。これら公知の樹脂の使用量は、通常、本発明の有機物質である100重量部の樹脂に対し、0〜10000重量部の範囲である。
本発明の有機物質はその機械物性等の各種物性を改善する目的で充填剤を含有してもよい。充填剤の使用量は、好ましくは充填剤の体積%の上限として50体積%であり、より好ましくは40体積%であり、特に好ましくは30体積%である。充填剤の体積比が50体積%より多くなると、樹脂の機械物性が低下することがある。
充填剤としては、公知の有機充填剤および無機充填剤を広く使用できる。本発明の製造方法によって得られる有機部材が光を透過する必要のある場合には、無機充填材はナノメートルオーダーの直径を有する粒子、ナノファイバーなどが使用できる。
充填剤の形状については、種々の形状のものを適応可能である。例えば粒子状、微粒子状、ナノ粒子、凝集粒子状、チューブ状、ナノチューブ状、ワイヤ状、ロッド状、針状、板状、不定形、ラグビーボール状、六面体状、大粒子と微小粒子とが複合化した複合粒子状、液体、等種々の形状を例示することができる。また充填剤は天然物であってもよいし、合成されたものであってもよい。天然物の場合、産地等には特に限定はなく、適宜選択することができる。これら充填剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、形状、平均粒子径、種類、表面処理剤等が異なる2種以上を併用してもよい。
これら充填剤は、界面における有機物質の接着性を高めたり、作業性を容易にしたりするため、シラン処理剤等の各種表面処理剤で表面処理がなされたものであってもよい。表面処理剤としては特に限定されず、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、等従来公知のものを使用することができる。中でもエポキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、及び、アミノシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、ポリオキシエチレンシラン、等が樹脂の物性を低下させることが少ないため好ましい。充填剤の表面処理方法としては特に限定されず、通常の処理方法を利用できる。
本発明に係る樹脂には、上記ポリカーボネート等の樹脂および充填剤以外の添加剤として、さらに目的に応じて他のいかなる成分、例えば、補強剤、増粘剤、離型剤、カップリング剤、難燃剤、耐炎剤、顔料、着色剤、その他の助剤等を本発明の効果を失わない範囲で、添加することができる。これらの添加剤の使用量は、樹脂100重量部に対し、合計で0〜20重量部の範囲であることが好ましい。
樹脂に対する配合成分の配合方法としては特に限定されるものではない。なお、上記配合成分は樹脂に対して配合するものであり、ポリカーボネート等の樹脂、充填剤および添加剤などが含まれる。例えば、上述した成分や添加剤等を乾燥させた後、単軸、2軸等の押出機のような溶融混練機にて溶融混練することにより配合することができる。また、配合成分が液体である場合は、溶融混練機で混錬中の樹脂に対して、液体供給ポンプ等を用いて配合成分を配合することもできる。
樹脂以外の有機物質である低分子の有機化合物の具体例としては、炭素数18以上の鎖状炭化水素が挙げられ、例えばオクタデカン、ノナコサン、テトラコンタンなどが挙げられる。
[2.液体]
本製造方法において、液体は溶融状態の有機物質と接触させるものである。この液体の20℃における表面張力は、30mN/m以上である。表面張力が大きいほど、樹脂に凹凸を形成し易くなるため、液体の表面張力は40mN/m以上であることが好ましく、50mN/m以上であることがさらに好ましく、60mN/m以上であることが最も好ましい。上限値については特に限定されないが、液体として水銀を使用する場合、476mN/m以下であり、より実用的に水を使用する場合、72.75mN/m以下である。表面張力が30mN/m未満である場合、表面張力が低いため、有機物質に所望の凹凸を形成できない。
表面張力が30mN/m以上の液体としては、水、グリセロール、水銀、ホルムアミド、エチレングリコール、パラフィンオイルなどが挙げられる。一方、エタノール、メタノール、アセトン、ベンゼン、n−ヘキサン、n−ペンタンなどは表面張力が30mN/m未満であるため、本製造方法における液体として不適切である。
ただし、本発明の液体は、表面張力が30mN/m以上であればよいため、複数種類の液体を混合した混合液体を用いてもよい。例えば、水、エタノール、メタノールおよびアセトンを、表面張力が30mN/m以上となるよう適切な割合で混合した混合液体を用いることができる。
上記表面張力の測定方法としては、Wilhelmy法や懸滴法などが用いられる。
[3.接触工程]
本製造方法は、固化温度が25℃以上である溶融状態の有機物質と液体とを接触させる接触工程を含む有機部材の製造方法であり、有機物質を溶融状態にて用いる。本発明の溶融状態の有機物質(以下、適宜「溶融有機物質」と略す)とは、(1)非晶性有機物質であればガラス転移温度以上の温度に、(2)結晶性有機物質であれば結晶の融解温度(以下、「ガラス転移温度および結晶の融解温度」を共に溶融温度と称する)以上の温度に加熱された液体状(等方相)の有機物質を指す。
有機物質の加熱温度は、有機物質の溶融温度以上であればよいが、有機物質の熱劣化等を防ぐために、上限は溶融温度+100℃であることが好ましく、溶融温度+80℃であることがより好ましく、溶融温度+60℃であることがさらに好ましい。溶融有機物質の粘度に特に限定はないが、粘度が低いほど、液体の表面張力による、溶融有機物質の引き上げが容易に起こり易く、溶融有機物質に凹凸を形成し易いため好ましい。
有機物質の加熱は公知の方法にて行えばよく、特に限定されないが、例えば、ホットステージまたはホットプレートなどによる加熱方法が挙げられる。
上記溶融有機物質を樹脂の固化温度以下の液体に接触させると、溶融有機物質と液体と外気との3相界面にて、液体の表面張力によって溶融有機物質の一部が引き上げられ、凸部が形成され、凸部が形成されると共に凹部が形成される。かつ形成された凹凸は接触している液体に冷却され、固化する。溶融有機物質と液体とを接触させる過程で、この現象が連続的に進行し、有機物質の表面に凹凸の周期が形成されることとなる。この現象はスティック&ブレイク現象と呼ばれ、参考文献1:Langmuir,23,12142−12146(2007)、参考文献2:Langmuir 2008,24,4685−4692、参考文献3:J.Phys.Chem.C 2011,115,18729−18735に開示されている。スティック&ブレイク現象を利用して凹凸を形成する方法は、工程が他の方法と比較し簡便であることが特徴である。
図1(a)〜(c)は、本発明に係る有機部材の製造過程を示す側面図である。同図を用いて、有機物質の表面に凹凸が形成される過程を説明する。図1(a)は、矢印方向に沿って、溶融有機物質1を液体2に接触させた状態を示している。本製造方法では、溶融有機物質1と液体2とを接触させればよい。よって、溶融有機物質1を液体2へ移動させることによって接触させてもよく、液体2を溶融有機物質1へ移動させることによって接触させてもよい。また、溶融有機物質1と液体2との両方を移動させて両者を接触させてもよい。
溶融有機物質1の移動は、例えば、(1)溶融有機物質1を液体2へ落下させる、または、(2)図1(a)に示すように、基材3に溶融有機物質1を塗布した後、溶融有機物質1を塗布した基材3を液体2に浸すことによって行うことができる。薄いフィルム状の有機部材を得るためには、上記(2)の手法を用いることが好ましい。また、液体2の移動は、例えば、液体2を収容している容器を移動させることによって行うことができる。
図1(a)では、上記接触を、溶融有機物質1を液体2に浸すことによって行っている。この場合、液体2を移動させないため、液体2の液面に振動が生じ難く、溶融有機物質1に凹凸をより安定して形成できるため好ましい。
また、図1(a)では、溶融有機物質1を基材3に塗布した状態で、液体2に接触させている。接触工程において、基材3に塗布する溶融有機物質1の厚さは、フィルムに適する観点から、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましく、0.8mm以下であることがさらに好ましい。厚さの下限は、特に限定されないが、得られた有機部材が安定した強度を有するために1μm以上とすることができ、さらには5μm以上とすることができる。溶融有機物質1の厚さを上記範囲とすることで、表面に凹凸が形成された板状、シート状、またはフィルム状の有機部材を安定して製造できる。
なお、板状の有機部材とは、厚さ0.8mm以上2mm以下の有機部材を指し、シート状の有機部材とは、厚さ0.2mm以上0.8mm未満の有機部材を指し、フィルム状の有機部材とは、厚さ0.2mm未満の有機部材を指すものとする。
基材3の種類は特に限定されないが、ガラス、金属、その他の無機材料、樹脂等が挙げられる。基材3の形状としては、板状、シート状、フィルム状の形状を好適に適用できる。溶融有機物質1に凹凸を形成し、固化した後、有機部材は、凹凸を形成した有機物質が基材3に接着し、両者が複合した状態であってもよく、一方、凹凸を形成した有機物質を基材3から剥離し、凹凸を形成した有機物質のみからなっていてもよい。
液体2に接触した溶融有機物質1の一部は、液体2の表面張力によって引き上げられ、溶融有機物質1が表面張力に耐える(スティック)ことによって凸部が形成され、凸部が形成されると共に凹部が形成される。凸部が大きくなるにつれて液体の表面張力の限界を超えると、表面張力にて凸部を引き上げることができなくなる(ブレイク)。この状態で第1の凹凸の形成が終了する。この凹凸は液体2による冷却により固化し、保持される。
次に、図1(b)に示すように、第1の凸部の上側にある溶融有機物質1の一部が、液体2の表面張力によって引き上げられ(スティック)、第2の凸部が形成される。第1の凸部と同様に、第2の凸部の形成が完了し(ブレイク)、それと共に2つ目の凹部が形成され、第2の凹凸が液体2による冷却により固化し、保持される。さらに、図1(c)に示すように、第2の凸部と同様に、第3の凸部の形成が完了し、第3の凹凸が形成され、液体2による冷却により固化し、保持される。以上の工程を繰り返すことにより、有機物質に凹凸が形成され、表面に凹凸を有した有機部材が得られる。
このように、溶融有機物質1は液体2の表面張力にて連続的に変形を受けるため、溶融有機物質1の最も面積の広い面を液体2に対して傾斜させた状態で、溶融有機物質1と液体2とを接触させることが、凹凸が広範囲に形成された有機部材を得る観点から好ましい。また、接触のさせ易さから、傾斜の角度は、90°前後である80°以上、100°以下であることが好ましい。
本製造方法での接触工程では、液体2の温度を有機物質の固化温度以下に設定する。これにより、凹凸が形成された溶融有機物質1は、冷却により固化し、凹凸形状が保持される。液体2の下限の温度は特に限定されないが、液体状態を保つため、下限値は液体2の凝固点である。
また、液体2の上限の温度は、有機物質の固化温度以下であればよいが、効率的に固化を行う観点から、有機物質の固化温度−30℃以下であることが好ましく、有機物質の固化温度−60℃以下であることがさらに好ましい。すなわち、液体の温度範囲を、液体の凝固点以上、有機物質の固化温度−30℃以下に設定でき、さらに好ましくは、液体の凝固点以上、有機物質の固化温度−60℃以下に設定できる。
本製造方法では、低い速度で溶融有機物質1と液体2とを接触させたとしても、溶融有機物質1の一部が、液体2の表面張力によって持ち上げられ、表面に凹凸を有した有機部材が得られる。一方、高い速度で溶融有機物質1と液体2とを接触させたとしても、溶融有機物質1は固化温度が25℃以上であるため、液体2により冷却されることにより、凹凸が形成された有機部材が得られる。このため、溶融有機物質1と液体2とを接触させる速度(相対速度)は、特に限定されない。
しかしながら、凹凸が広範囲に形成された有機部材を目的物とする場合、接触速度が遅いと、液体2による冷却により、溶融有機物質1のうち液体2に未接触の部分が固化してしまう可能性がある。この場合、液体2に接触した部分には、凹凸が形成されるものの、液体2と未接触であり、すでに固化した部分には凹凸が形成できず、フィルム状の有機部材を得ることができない可能性がある。
したがって、面積の大きな有機部材を得る観点から、溶融有機物質1と液体2とを接触させる速度(以下適宜「接触速度」と称する)は、ある程度速いことが望ましく、10mm/sec以上であることが好ましく、20mm/sec以上であることがより好ましく、30mm/sec以上であることがさらに好ましく、40mm/sec以上であることが最も好ましい。10mm/sec未満である場合、上述したように、フィルム状の有機部材を得ることができない可能性がある。上記接触速度は、溶融有機物質1を液体2に浸す場合、溶融有機物質1を液体2に浸す速度を意味する。溶融有機物質1に凹凸が形成される限り、接触速度の上限は限定されないが、例えば、1000mm/sec以下とすることができる。
また、フィルム状の有機部材を形成する場合、生産効率から大面積とすることが好ましいため、100mm以上にて有機部材を形成できる。面積の上限は特に限定されないが、例えば、1m以下とすることができる。
なお、以下に参考文献1〜3と本発明との相違点について説明する。上記参考文献に記載の方法では粘弾性樹脂膜(固化温度が負の値である)を使用しており、形成された凹凸は時間経過と共に消滅する。また、上記粘弾性樹脂膜は柔らかいため、凹凸が形成され難く、0.1mm/分以上、400mm/分以下の速度で粘弾性膜を液体に浸している。このように、粘弾性樹脂膜の浸漬速度は、400mm/分以下と非常に低速であるため、生産効率が低く、特に、大面積の粘弾性樹脂に凹凸形状を形成するには長時間を要する。また、形成される凹凸の周期(ある凸部と、最も近くに位置する凸部との距離)は、200μm以上であり、微細な凹凸の周期とはいえない。このような凹凸の周期では、例えば、光学材料の用途に使用できない。さらに、粘弾性樹脂膜は室温で柔軟であり、凹凸が形成された後、室温で時間経過と共に凹凸形状が消滅する。このように、参考文献では、凹凸が形成されるメカニズムが解明されているものの、粘弾性樹脂膜に形成された凹凸は消滅するため、凹凸が形成された有機部材は開示されていない。
[4.有機部材]
本発明に係る有機部材とは、表面に凹凸を有した有機物質を指し、上述した基材に、凹凸が形成された有機物質も有機部材に含まれる。“表面に凹凸を有した”とは、有機部材の表面の少なくとも一部に上記凹凸が形成されていればよく、有機部材の全表面に凹凸が形成されていなくともよいことを示す。有機部材の用途に応じて凹凸が形成された面積は異なるが、例えば、有機部材の全表面のうち、下限については、5%以上、10%以上、15%以上とすることができ、上限については、100%以下、90%以下、80%以下、50%以下、40%以下、30%以下とすることができる。上記下限および上限は任意に組み合わせることが可能である。
凹凸とは、凸部および凹部が周期的に形成されたものであり、凹部の頂点(底部)から凸部の頂点までは滑らかに形成されている。図1(a)〜(c)では、凸部の先端は尖った形状となっているが、凹凸の形成条件を変更することにより、凸部の先端を滑らかな形状とすることもできる(図2を参照のこと)。
有機部材を種々の用途に用いるため、凹凸の周期は微細であることが好ましい。凹凸の平均周期が、0.1μm以上、5μm以下であることにより、有機部材を光学材料として機能させることができる。上記凹凸の周期とは、ある凸部の頂点から、最も近い凸部の頂点までの距離を示し、図1(d)では、距離Dで示される。また、凹凸の高さは、0.01μm以上、100μm以下であることが好ましい。凹凸の高さとは、上記有機部材における、ある凹部と最も近い凸部とにおいて、凹部の深さ(凹部の頂点)を基準(高さ0nm)とした場合の上記凸部の高さを示し、図1(d)では、高さHで示される。
本製造方法で製造された、表面に凹凸の周期を有する有機部材は、接触工程に応じて、棒状、雫状、板状、シート状またはフィルム状などとなり、特にその形状は限定されない。また、有機部材は、電子材料、磁性材料、触媒材料、構造体材料、光学材料、医療材料、自動車材料、建築材料、等の各種の用途に幅広く用いることが可能である。特に“表面に凹凸形状を有する”という特徴は、有機部材が光学材料として機能するにあたり有用である。本発明の有機部材の具体的用途としては、光拡散シート、輝度向上シート、光導波路シート、プリズムシート、回折格子、ワイヤーグリッド偏光フィルム、撥水・撥油シート、液晶化合物等の配向基板が挙げられる。
上記有機部材が製造された後、さらに、有機部材に形成された凹凸形状に各種の膜を塗布してもよい。膜の種類については特に限定されず、例えば、シリコン膜などの撥水膜;撥油膜;防湿膜;酸化防止膜;防汚膜;などを有機部材の機能を妨げない範囲で施すことができる。
次に、本発明の熱可塑性樹脂成形体について、実施例および比較例を挙げて、さらに詳細に説明するが、本発明は係る実施例のみに制限されるものではない。なお、以下に挙げる各試薬は特に特記しない限り和光純薬工業株式会社製の試薬を用いた。
[評価方法]
原子間力顕微鏡(AFM)観察:有機部材の表面の凹凸の周期について凸部間の幅を観察した。
偏光光学顕微鏡(POM)観察:有機部材の表面の凹凸の周期について凸部間の幅を観察した。
熱物性測定:示差走査熱量測定(DSC測定)にて、樹脂または低分子を50℃から280℃の範囲で1度、10℃/minで昇降温させ、2度目の10℃/minでの降温時の発熱ピークのピークトップから結晶性樹脂または低分子の固化温度(Tm1)を求めた。また昇温時の吸熱ピークのピークトップから等方相への転移点(Tm2)を求めた。
[実施例1]
還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌棒を備え付けた密閉型反応器に、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ドデカン二酸、無水酢酸をモル比でそれぞれ1:1.1:2.1の割合で仕込み、酢酸ナトリウムを触媒とし、常圧、窒素雰囲気下、145℃にてこれらを反応させ、均一な溶液を得た後、酢酸を留去しながら2℃/minで260℃まで昇温させ、260℃で1時間撹拌した。引き続きその温度を保ったまま、約40分かけて、反応圧力を10Torrまで減圧した後、減圧状態を維持した。減圧開始から3時間後、反応圧力を窒素ガスで常圧に戻し、樹脂をステンレス板上に払い出した。得られた樹脂の分子構造を表1に示す。樹脂の熱物性であるTm1は192℃、Tm2は246℃であった。得られた熱可塑性樹脂を260℃に加熱し、溶融させた後に溶融状態の樹脂を表面張力72.5mN/mの水中(20℃の水)に100mm/secの速さで、水面に対して重力方向に流し込み、樹脂を固化させた。図2に示すように、固化した樹脂表面に幅1μmの凹凸の周期がAFMにて観察された。
[比較例1]
溶融樹脂を流し込む液体を、水から表面張力22.4mN/mのエタノール(20℃のエタノール)に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂を固化させたが、樹脂の表面に凹凸の周期は観察されなかった。
[実施例2]
ドデカンニ酸をエイコサンニ酸に変更した以外は実施例1と同様にして有機部材を得た。用いた樹脂の分子構造を表1に示す。樹脂の熱物性であるTm1は165℃、Tm2は192℃であった。得られた樹脂を210℃に加熱し、溶融状態でガラス基板上に、20μmの厚さ、200mmの面積(幅10mm、長さ20mm)で塗布した後、ガラス基板ごと樹脂を水中(20℃の水)に100mm/secの速さで、図1(a)に示したように水面に対して重力方向に浸したところ、基材上に光を透過するフィルム状の有機部材を得た。図3に示すように、固化した樹脂表面に幅600nmの凹凸の周期がAFMにて観察された。
[実施例3]
水を表面張力が63.4mN/mのグリセロール(20℃のグリセロール)に変更した以外は実施例2と同様にして有機部材を得た。図4に示すように、固化した樹脂表面に800nm径の釣鐘状の凹凸の周期がAFMにて観察された。
[実施例4]
4,4’−ジヒドロキシビフェニルを2,6−ジヒドロキシナフタレンに変更した以外は実施例2と同様にして有機部材を得た。用いた樹脂の分子構造を表1に示す。樹脂の熱熱物性であるTm1は141℃、Tm2は155℃であった。得られた樹脂を170℃に加熱し、溶融状態でガラス基板上に、20μmの厚さ、200mmの面積(幅10mm、長さ20mm)で塗布した後、ガラス基板ごと表面張力58.2mN/mのホルムアミド(20℃)に100mm/secの速さで浸したところ、光を透過するフィルム状の有機部材を得た。図5に示すように、固化した樹脂表面に幅20μmの凹凸の周期が偏光光学顕微鏡にて観察された。なお、図5における矢印方向は、液体に対して溶融状態の樹脂を浸した方向を示す。図6についても同様である。
[実施例5]
テトラコンタン(Tm1、Tm2:80〜84℃)を100℃に加熱し、ガラス基板上に100μmの厚さにて溶融状態で塗布した。その後、ガラス基板ごとテトラコンタンを20℃の水中に100mm/secの速さで、図1(a)に示したように水面に対して重力方向に浸したところ、基材上にフィルム状の有機部材を得た。図6に示すように、固化したテトラコンタンの表面に幅が約160μmの凹凸の周期が偏光光学顕微鏡にて観察された。
[実施例6]
実施例2の樹脂を水中(20℃の水)に浸す速度を15mm/secにした以外は同様にして光を透過するシート状の有機部材を得た。固化した樹脂表面に幅1μmの凹凸の周期が偏光光学顕微鏡にて観察された。
[実施例7]
実施例2の樹脂を水中(20℃の水)に浸す速度を5mm/secにした以外は同様にして光を透過するシート状の有機部材を得た。ただし、溶融樹脂を塗布した幅10mm、長さ20mmの面積の内、長さ15mmまでは固化した樹脂表面に幅1μmの凹凸の周期が偏光光学顕微鏡にて観察されたが、残りの5mmは凹凸が形成されずに冷却固化した。
上記のように、実施例1では鮮明な凹凸形状を有する有機部材が得られたことが明白である。実施例1の有機部材の凹凸の周期は約1μmであり、非常に微細な凹凸の周期であることが分かる。また、実施例2にて樹脂原料としてエイコサンニ酸を用いた場合、さらに微細な凹凸の周期を有する有機部材が得られた。さらに、液体としてグリセロールを用いた場合、釣鐘状の凹凸の周期を形成でき、液体を変更した場合であっても、凹凸の周期が形成することができる。
実施例4では、剛直基Mを有する原料として、2,6−ジヒドロキシナフタレンを用いたところ、光透過性のシート状の有機部材を得ることができた。このように、本製造方法によれば、用いる原料に応じて、種々の機能を有する有機部材を得ることができる。実施例5では、低分子の有機化合物であるテトラコンタン(分子量:563.08)を用いたところ、凹凸の周期が形成された有機部材を得ることができた。このように、樹脂だけでなく、低分子の有機化合物である他の有機物質を原料とした場合であっても、本発明に係る有機部材を得ることが可能である。
以上より、本発明の樹脂表面凹凸体の製造方法によれば、簡便に樹脂表面に凹凸の周期を形成することができる。特に表面に凹凸の周期が形成された板状、シート状、フィルム状の有機部材は電気および電子工業分野等さまざまな状況で光学材料として用いることが可能であり、工業的に有用である。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、凹凸形状を有する有機部材を要する分野、特に、光学材料を用いる分野にて利用することができる。
1 溶融有機物質(溶融状態の有機物質)
2 液体
3 基材
D 距離
H 高さ

Claims (8)

  1. 固化温度が25℃以上である溶融状態の有機物質と液体とを接触させる接触工程を含む有機部材の製造方法であり、
    上記接触工程における、上記液体の温度は有機物質の固化温度以下であり、
    上記液体の表面張力は、30mN/m以上であることを特徴とする有機部材の製造方法。
  2. 上記有機物質を上記液体に浸すことによって上記接触工程を行い、
    上記有機物質を上記液体に浸す速度が、10mm/sec以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機部材の製造方法。
  3. 上記溶融状態の有機物質を塗布した基材を上記液体に浸すことにより上記接触工程を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の有機部材の製造方法。
  4. 上記接触工程において、上記基材に塗布する有機物質の厚さが2mm以下であることを特徴とする請求項3に記載の有機部材の製造方法。
  5. 上記有機物質が樹脂であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の有機部材の製造方法。
  6. 上記樹脂が、主として下記一般式(1)で示される繰り返し単位を少なくとも含有することを特徴とする請求項5に記載の有機部材の製造方法。
    −M−OCO(CHCOO− ...(1)
    (式中、−M−は、芳香族基、縮合芳香族基、脂環基または脂環式複素環基である2価の置換基、mは2〜22の整数を示す)
  7. 上記−M−が、下記一般式(2)または(3)であることを特徴とする請求項6に記載の有機部材の製造方法。
    (式中、Rはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、F、Cl、Br、I、CN、またはNO、yは1〜4の整数、nは0〜4の整数を示す。)
  8. 請求項1〜7の何れか1項に記載の有機部材の製造方法によって製造されたことを特徴とする有機部材。
JP2012176524A 2012-08-08 2012-08-08 有機部材の製造方法 Active JP6024037B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012176524A JP6024037B2 (ja) 2012-08-08 2012-08-08 有機部材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012176524A JP6024037B2 (ja) 2012-08-08 2012-08-08 有機部材の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014034633A true JP2014034633A (ja) 2014-02-24
JP6024037B2 JP6024037B2 (ja) 2016-11-09

Family

ID=50283818

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012176524A Active JP6024037B2 (ja) 2012-08-08 2012-08-08 有機部材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6024037B2 (ja)

Citations (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4822193B1 (ja) * 1969-04-02 1973-07-04
JPH05262863A (ja) * 1991-07-30 1993-10-12 Eniricerche Spa サーモトロピックコポリエステル
JPH06298928A (ja) * 1993-04-16 1994-10-25 Agency Of Ind Science & Technol ビフェニルジカルボン酸ポリエステル類の製造方法
JP2000052409A (ja) * 1998-08-12 2000-02-22 Tosoh Corp 樹脂製パイプの成形方法及び成形装置
JP2002254494A (ja) * 2001-02-28 2002-09-11 Inoac Corp 押出成形品および押出成形品の表面加工方法
JP2003103600A (ja) * 2001-09-27 2003-04-09 Inoac Corp 樹脂パイプの成形方法および樹脂パイプ成形装置
JP2003205546A (ja) * 2002-01-16 2003-07-22 Inoac Corp 樹脂パイプの表面加工方法および表面加工装置
JP2003276073A (ja) * 2002-03-26 2003-09-30 Sumitomo Chem Co Ltd 熱可塑性樹脂シートの製造方法および熱可塑性樹脂シート
JP2010037474A (ja) * 2008-08-07 2010-02-18 Polyplastics Co 全芳香族ポリエステル及びポリエステル樹脂組成物
JP2011084716A (ja) * 2009-09-18 2011-04-28 Kaneka Corp 熱可塑性樹脂組成物および放熱・伝熱用樹脂材料
JP2011084714A (ja) * 2009-09-16 2011-04-28 Kaneka Corp 押出成形用高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物

Patent Citations (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4822193B1 (ja) * 1969-04-02 1973-07-04
JPH05262863A (ja) * 1991-07-30 1993-10-12 Eniricerche Spa サーモトロピックコポリエステル
JPH06298928A (ja) * 1993-04-16 1994-10-25 Agency Of Ind Science & Technol ビフェニルジカルボン酸ポリエステル類の製造方法
JP2000052409A (ja) * 1998-08-12 2000-02-22 Tosoh Corp 樹脂製パイプの成形方法及び成形装置
JP2002254494A (ja) * 2001-02-28 2002-09-11 Inoac Corp 押出成形品および押出成形品の表面加工方法
JP2003103600A (ja) * 2001-09-27 2003-04-09 Inoac Corp 樹脂パイプの成形方法および樹脂パイプ成形装置
JP2003205546A (ja) * 2002-01-16 2003-07-22 Inoac Corp 樹脂パイプの表面加工方法および表面加工装置
JP2003276073A (ja) * 2002-03-26 2003-09-30 Sumitomo Chem Co Ltd 熱可塑性樹脂シートの製造方法および熱可塑性樹脂シート
JP2010037474A (ja) * 2008-08-07 2010-02-18 Polyplastics Co 全芳香族ポリエステル及びポリエステル樹脂組成物
JP2011084714A (ja) * 2009-09-16 2011-04-28 Kaneka Corp 押出成形用高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物
JP2011084716A (ja) * 2009-09-18 2011-04-28 Kaneka Corp 熱可塑性樹脂組成物および放熱・伝熱用樹脂材料

Also Published As

Publication number Publication date
JP6024037B2 (ja) 2016-11-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8946335B2 (en) Highly thermally conductive thermoplastic resin composition and thermoplastic resin
TWI359159B (en) Aromatic liquid-crystalline polyester
JP5087958B2 (ja) 液晶性樹脂組成物からなる成形品
JP6117178B2 (ja) 熱伝導性樹脂成形体および当該熱伝導性樹脂成形体の製造方法
WO2011132389A1 (ja) 高熱伝導性熱可塑性樹脂
TW201120088A (en) Liquid-crystal polymer and molded articles
JPS62179780A (ja) 発光素子装置
JP2007254716A (ja) 液晶性樹脂組成物およびそれからなる成形品
WO2012141272A1 (ja) 液晶ポリエステルの製造方法
TW201249925A (en) Method for producing liquid crystal polyester
JP2013155370A (ja) 熱伝導性熱可塑性樹脂成形体
EP2562201B1 (en) Thermoplastic resin with high thermal conductivity
JP5476203B2 (ja) 高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物
JP6024037B2 (ja) 有機部材の製造方法
JPS62100577A (ja) 熱伝導性組成物
US8853342B2 (en) Crosslinkable liquid crystalline polymer
KR20120101470A (ko) 라벨
JP5986728B2 (ja) 液晶ポリマー繊維
JP2005178056A (ja) 液晶性ポリエステル樹脂の成形加工法
JP6157204B2 (ja) 芳香族ポリエステルのフィブリル状結晶の製造方法
JP5795866B2 (ja) 高熱伝導性熱可塑性液晶樹脂および樹脂組成物の成形方法
JPWO2017175721A1 (ja) 偏光解消フィルムおよびその製造方法、並びにそれを用いた画像表示装置
WO1988000955A1 (en) Aromatic polyesters with good heat resistance
US20150274886A1 (en) Crosslinkable Soluble Aromatic Polyester
JPH0678427B2 (ja) コレステリック液晶性ポリエステルの製造法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150722

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20150722

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160518

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160524

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160722

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160823

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160920

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6024037

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250