JP2014026101A - 電子写真感光体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】気相成長法により円筒状基体の外周面にアモルファスシリコンで構成された堆積膜を形成する電子写真感光体の製造方法において、補助基体外周面の軸方向の温度分布に応じて、補助基体の外周面の表面粗さを予め調整し、堆積膜形成時に補助基体からの膜剥がれを抑制する。
【選択図】図2
Description
例えば、円筒状基体の両端に円筒状基体と同一の外径を有する補助基体を配置して、補助基体の温度を制御することで堆積膜の特性の均一化を図る技術が開示されている(特許文献1参照)。
a−Si感光体における堆積膜は円筒状基体の外周面に数μmオーダーのダストが付着した場合、堆積膜形成時にそのダストを核として異常成長、いわゆる「球状突起」が成長してしまうという性質を持っている。球状突起はダストを起点とした円錐形を逆転させた形をしており、正常堆積部分と球状突起部分の界面では局在準位が非常に多いために低抵抗化し、帯電電荷が界面を通って円筒状基体側に抜けてしまう。このため、球状突起のある部分は、画像上ではべた黒画像で白い点となって現れる(反転現像の場合はべた白画像に黒い点となって現れる)。このいわゆる「ポチ」と呼ばれる画像欠陥は年々規格が厳しくなっており、大きさによってはA3用紙に数個存在していても不良として扱われることがある。さらには、カラー複写機に搭載される場合にはさらに規格は厳しくなり、A3用紙に1個存在していても不良となる場合がある。
0.1×ΔT−5≦R2/R1≦0.35×ΔT+2
R2/R1は1以上、ΔTは80℃以下
の関係が成り立つ範囲で、前記補助基体の外周面を、軸方向に表面粗さが異なる複数の領域に分割し、堆積膜形成時の前記補助基体外周面の軸方向温度が、前記補助基体内で相対的に高い領域の表面粗さを相対的に小さく、相対的に低い領域の表面粗さを相対的に大きくしたことを特徴とする。
(1)密着性は極小値を持つ。
(2)極小値を境にして表面粗さを大きくしても、小さくしても密着性は向上する。
(3)表面粗さを増大させると密着性は向上していくが、徐々に効果は飽和していく。
(4)表面粗さを大きくする方向よりも、小さくする方向の方が密着性を高くできる。
上述の検討結果から、補助基体は、堆積膜形成時の軸方向の温度分布に応じて、外周面の表面粗さを調整するが、軸方向の温度分布は、円筒状基体から離れる方向で徐々に低下するため、温度低下に対応して、表面粗さを徐々に大きくするのが最も効果的である。表面粗さを徐々に大きくするには、例えば旋盤で切削加工する場合は、切削バイトの刃先の形状や切削条件を調整すると共に、切削バイトの送りスピードを変化させることで可能である。また、研磨加工を行う場合は、研磨部材の当接圧力、研磨処理時間を適宜変化させることで表面粗さを調整することが可能となる。また、補助基体の外周面の表面粗さの制御性や繰り返し再現性の向上の観点から、補助基体の外周面を、軸方向に複数の領域に分け、その領域の温度に応じて表面粗さを調整してもよい。
円筒状基体の材質は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタンやこれらの合金を用いることができる。中でも、アルミニウムまたはその合金は、a−Si堆積膜の密着性が高く、加工性や製造コストに優れるなどの理由で、好ましい材料として挙げることが出来る。
さらに高精度な円筒状基体が要求される場合は、端部形状や外径寸法、外周面の形状を所定の値にするため、旋盤による切削加工が施される。本発明に用いる円筒状基体は、a−Si堆積膜の密着性が高く、感光体特性に優れるなどの理由により、外周面を旋盤で鏡面に切削加工したものが好適である。
補助基体および円筒状基体の表面粗さは、算術平均粗さRa(JIS B0601:2001に規定)で評価した。Raは、次のようにして求められる。
本発明において算術平均粗さRaの測定は、JIS B0651:2001に準拠したフォームトレーサー SV−C4000S4(株式会社ミツトヨ)を用いて測定した。用いた触針の形状はJIS B0651:2001に従った。すなわち、先端形状は球状の先端をもつ円錐とし、先端半径2μm、円錐のテーパー角度60゜、測定力は0.75mNとした。
円筒状基体101の外周面に、図4に示すa−Si堆積膜401を形成することにより、a−Si感光体を製造することができる。図4は、a−Si感光体の層構成の一例を示す模式図である。図4において、堆積膜401は、円筒状基体101側から順に、電荷注入阻止層402、光導電層(感光層)403、表面層404で構成されている。
円筒状基体101は、上部補助基体102、下部補助基体103とともに、基体ホルダ104に装着され、堆積室106の内部の受台112の上に載置(設置)される。原料ガス導入管114は、円筒状基体101を取り囲むように複数本配設されており、その側面には、長手方向に沿って多数の細孔が設けられている。さらに、原料ガス導入管114には、原料ガス供給管117を介して不図示の原料ガス供給装置が接続されている。また、円筒状カソード電極109は、マッチングボックス115を介して高周波電源116に接続されている。
まず、堆積室106のゲート弁107を開け、円筒状基体101および、上部補助基体102、下部補助基体103が装着された基体ホルダ104を不図示の搬送機を用いて、受台112の上に載置してゲート弁107を閉める。
上部補助基体102の外周面を、円筒状基体101から遠い側(上部補助基体の上側)の50mm、円筒状基体101側(上部補助基体の下側)の70mmの2つの領域に分ける。そして上側の外周面の表面粗さRaを円筒状基体101の3倍に、下側の外周面の表面粗さRaを円筒状基体101と同じにした。
上述の加工は旋盤で行い、円筒状基体101の加工と同じ切削バイトを用い、刃先を当てる角度を調整して粗さの調整を行った。
堆積膜形成後の上部補助基体102および下部補助基体103の外観を、堆積室から取出し直後に目視で確認し、膜剥がれの有無を調べた。さらに堆積膜の密着性のラチチュードを確認するために、室温の純水に24時間浸けた後の膜剥がれの有無をチェックする過酷試験も行った。膜剥がれが有る場合は、剥がれ面積の大小を問わず、膜剥がれが見られる軸方向領域を調べた。結果を表3に示す。なお、上部補助基体102と下部補助基体103の結果はほぼ同じであったため、下部補助基体103の結果は省略する。
a−Si感光体をキヤノン(株)製複写機iRC6880Nに設置し、画像露光量を最小にして出力したA3サイズの画像を観察し、感光体1周分当たりの、直径0.10mm以上の白ポチ(画像欠陥の部分)の個数を数えた。
画像欠陥の評価は比較例1で得られた結果を100としたときの、相対評価で行い、評価結果を以下のようにランク付けした。この評価結果は、数字が小さいほど画像欠陥が少なく、良好であることを示す。
A ・・・ 70未満。
B ・・・ 70以上90未満。
C ・・・ 90以上110未満(変化無し)。
D ・・・ 110以上(悪化)。
得られた結果を表3に示す。
実施例1に対し、上部補助基体102の上側および下部補助基体103の下側の領域の外周面の表面粗さRaを円筒状基体101の10倍にした。
この加工は、補助基体の外周面全面に旋盤で鏡面加工を施した後、表面粗さを大きくする領域を#1500のサンドペーパーで研磨して粗さを調整した。
それ以外は実施例1と同様に、a−Si感光体を10本作製して、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表3に示す。
実施例1に対し、上部補助基体102の上側および下部補助基体103の下側の領域の外周面の表面粗さRaを円筒状基体101の15倍にした。
この加工は、補助基体の外周面全面に旋盤で鏡面加工を施した後、表面粗さを大きくする領域を#1000のサンドペーパーで研磨して粗さを調整した。
それ以外は実施例1と同様に、a−Si感光体を10本作製して、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表3に示す。
実施例1の上部補助基体102の円筒状基体101から遠い側(上部補助基体の上側)の50mmの領域を、さらに20mm(上側)と30mmとに分ける。そして20mmの領域の外周面の表面粗さRaを円筒状基体101の10倍にした。この加工は、実施例3と同様に#1500のサンドペーパーで研磨して粗さを調整した。
同様の加工を下部補助基体103にも実施した。同様の加工とは、円筒状基体101から遠い側(下部補助基体の下側)の50mmの領域を、さらに30mmと20mm(下側)との2つの領域に分ける。そして20mmの領域の外周面の表面粗さRaを円筒状基体101の10倍にした。
それ以外は実施例1と同様に、a−Si感光体を10本作製して、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表3に示す。
上部補助基体102を、長さが50mmと70mmとの2つに分割した。そして、長さが50mmのものの外周面に、#1500のサンドペーパーで研磨をして表面粗さRaを円筒状基体の10倍にした。また、長さ70mmのものの外周面は旋盤で鏡面加工した。これらの加工を施した後、50mmを上に、70mmを下(円筒状基体101側)に組み合わせて、上部補助基体102とした。
同様の加工を、長さが50mmと70mmとの2つに分割した下部補助基体103にも施し、70mmを上(円筒状基体101側)に、50mmを下に組み合わせて、下部補助基体103とした。
そして、実施例1と同様にa−Si感光体を10本作製して、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表3に示す。
上部補助基体102の外周面を、下端(円筒状基体101側、表面粗さRaが円筒状基体101と同じ)から上端(表面粗さRaが円筒状基体101の10倍)へ表面粗さを連続的に変化させた。
同様の加工を下部補助基体103にも実施した。同様の加工とは、下部補助基体103の上端(円筒状基体101側、表面粗さRaが円筒状基体101と同じ)から下端(表面粗さRaが円筒状基体101の10倍)へ表面粗さを連続的に変化させた。
上述の加工は、補助基体の外周面全面に旋盤で鏡面加工を施した後、#1500のサンドペーパーで研磨して粗さを調整する際の、当接圧力を補助基体の軸方向で変化させて粗さを調整した。
これらの補助基体を用いてa−Si感光体を10本作製し、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表3に示す。
上部補助基体102および下部補助基体103の外周面には、旋盤で円筒状基体101と同じ鏡面加工を行った。したがって、外周面の表面粗さRaは円筒状基体101と同じである。
これらの補助基体を用いてa−Si感光体を10本作製し、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表4に示す。
比較例1に対し、上部補助基体102および下部補助基体103の外周面の表面粗さRaを円筒状基体101の2倍にした。この加工は旋盤で行い、円筒状基体101の加工と同じ切削バイトを用い、刃先を当てる角度を調整して粗さの調整を行った。
これらの補助基体を用いてa−Si感光体を10本作製し、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表4に示す。
比較例1に対し、上部補助基体102および下部補助基体103の外周面の表面粗さRaを円筒状基体101の3倍にした。この加工は旋盤で行い、円筒状基体101の加工と同じ切削バイトを用い、刃先を当てる角度を調整して粗さの調整を行った。
これらの補助基体を用いてa−Si感光体を10本作製し、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表4に示す。
比較例1に対し、上部補助基体102および下部補助基体103の外周面の表面粗さRaを円筒状基体101の10倍にした。この加工は、#1500のサンドペーパーで研磨し、粗さを調整した。
これらの補助基体を用いてa−Si感光体を10本作製し、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表4に示す。
比較例1に対し、上部補助基体102および下部補助基体103の外周面の表面粗さRaを円筒状基体101の15倍にした。この加工は、#1000のサンドペーパーで研磨し、粗さを調整した。
これらの補助基体を用いてa−Si感光体を10本作製し、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表4に示す。
比較例1に対し、上部補助基体102および下部補助基体103の外周面の表面粗さRaを円筒状基体101の20倍にした。この加工は、#800のサンドペーパーで研磨し、粗さを調整した。
これらの補助基体を用いてa−Si感光体を10本作製し、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表4に示す。
比較例1に対し、上部補助基体102および下部補助基体103の外周面の表面粗さRaを円筒状基体101の30倍にした。この加工は、#600のサンドペーパーで研磨し、粗さを調整した。
これらの補助基体を用いてa−Si感光体を10本作製し、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表4に示す。
R2/R1≦(30−2)/80×ΔT+2=0.35×ΔT+2
(3−1)/(80−60)×(ΔT−60)+1=0.1×ΔT−5≦R2/R1
0.1×ΔT−5≦R2/R1≦0.35×ΔT+2
但し、R2/R1は1以上、ΔTは80℃以下 式(1)
102‥‥上部補助基体
103‥‥下部補助基体
104‥‥基体ホルダ
112‥‥受台
113‥‥ヒータ
Claims (4)
- 上部および/または下部に補助基体を設けた円筒状基体を減圧にし得る堆積室内に設置し、前記円筒状基体を内周側から加熱しながら、気相成長法により前記円筒状基体の外周面にアモルファスシリコンで構成された堆積膜を形成する電子写真感光体の製造方法において、
堆積膜形成時の前記円筒状基体の端部と前記補助基体の外周面の温度差をΔT、前記円筒状基体と前記補助基体の外周面の表面粗さをJIS B0601:2001で規定される算術平均粗さRaでそれぞれR1、R2とした時、
0.1×ΔT−5≦R2/R1≦0.35×ΔT+2
但し、R2/R1は1以上、ΔTは80℃以下
の関係が成り立つ範囲で、前記補助基体の外周面を、軸方向に表面粗さが異なる複数の領域に分割し、堆積膜形成時の前記補助基体外周面の軸方向温度が、前記補助基体内で相対的に高い領域の表面粗さを相対的に小さく、相対的に低い領域の表面粗さを相対的に大きくしたことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。 - 前記補助基体の外周面の表面粗さを、軸方向に連続的に変化させたことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記補助基体の外周面の表面粗さが相対的に大きい領域は、研磨部材で研磨加工したことを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記補助基体の材質が無酸素銅であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。
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