JP2005163163A - 堆積膜形成装置、及び堆積膜形成方法 - Google Patents

堆積膜形成装置、及び堆積膜形成方法 Download PDF

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哲也 唐木
Junichiro Hashizume
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Tatsuji Okamura
竜次 岡村
Nobufumi Tsuchida
伸史 土田
Takashi Otsuka
崇志 大塚
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Abstract

【課題】 本発明は、電気的特性を犠牲にすることなく容易に母線方向の膜厚分布を均一にする事を可能とし、さらに、球状突起の減少、堆積膜形成時間の短縮、原料ガス利用効率の向上が達成され、生産コストの低下が実現可能となる堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 円筒状基体を同一円周上に等間隔で配置し、高周波電力を前記円筒状基体の配置円外から導入することで、複数の基体上に、良好な特性を有する堆積膜形成装置・方法において、同一円周上に配置された基体の配置円の略中央部に、上蓋と接触した円筒状導電性部材を設置して堆積膜形成を行うことを特徴とするものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、基体上に堆積膜を形成する装置および方法に関する。とりわけ機能性膜、特に半導体デバイス、電子写真感光体、画像入力用ラインセンサー、撮影デバイス、光起電力デバイス等に用いる堆積膜の形成装置および形成方法に関する。
従来、半導体デバイス、電子写真感光体、画像入力用ラインセンサー、撮影デバイス、光起電力デバイス、その他各種エレクトロニクス素子、光学素子等の形成に用いる堆積膜形成方法として、プラズマCVD法、イオンプレーティング法、プラズマエッチング法等、高周波電力によって生起されたプラズマを用いた方法が多数知られており、そのための装置も実用に付されている。
例えばプラズマCVD法、すなわち、原料ガスを高周波グロー放電により分解し、基板上に薄膜状の堆積膜を形成する方法は好適な堆積膜形成手段として実用化されており、例えば電子写真用水素化アモルファスシリコン堆積膜の形成等に利用され、そのための装置も各種提案されている。
特に、VHF帯の高周波電力を用いたプラズマCVD(以下、「VHF−PCVD」と略記する。)法が注目を浴びており、このVHF−PCVD法を用いた各種堆積膜の開発が積極的に進められている。これは、VHF−PCVD法では堆積膜の堆積速度が比較的速く、また高品質な堆積膜が得られるため、製品の低コスト化、高品質化を同時に達成し得るものと期待されるためである。そして、複数のa−Si系の電子写真感光体を同時に形成できて、生産性が高い堆積膜形成装置の開発が進められている。
例えば、カソード電極を反応容器の外側に複数配置し、カソード電極と対向電極間にある反応容器の一部を誘電体部材とすることで、大面積で均質な高周波放電が容易に達成され、大面積基体へのプラズマ処理を均一且つ高速に行うことが可能になる装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このような堆積膜形成装置として、図2に模式的な構成図を示す。
図2(a)は概略断面図、図2(b)は図2(a)の切断線A−A’に沿う概略断面図である。反応容器201は201(a)と201(b)からなり、201(a)は誘電体部材で構成されており、反応容器201の下部には排気配管209が接続され、排気配管209の他端は不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)に接続されている。反応容器201の中心部を取り囲むように、堆積膜の形成される複数の円筒状基体205が互いに平行になるように同一円周上に配置されている。複数の円筒状基体205は基体加熱用ヒーター207を内蔵した基体支持体206によって各々保持されている。そして、反応容器201内にはSiH4、GeH4、H2、CH4、B2H6、PH3、Ar、He等のガスボンベからなる不図示のガス供給装置に接続されたガス供給手段210があり、反応容器201の外には高周波電極202が設置されている。高周波電極202には、高周波電源203がマッチングボックス204と高周波電力分岐手段212を介して接続されている。さらに、円筒状基体205は各々の回転機構208によって、回転可能に構成されている。
図2の装置における堆積膜の形成は次の手順のように行われる。
まず、反応容器201内に円筒状基体205を設置し、不図示の排気装置により反応容器201内を排気する。その後、ガス供給手段210からAr、He等の不活性ガスを反応容器201内に導入し、所定の圧力になるように流量及び排気速度を調整する。続いて、基体加熱用ヒーター207に通電し、円筒状基体205の温度が所定の温度になるように加熱制御する。
その後、SiH4、GeH4、H2、CH4、B26、PH3、等のガスをガス供給手段210から反応容器201内に導入して所望のガス成分、圧力になるように流量及び排気速度を調整する。
以上のようにして成膜の準備が完了した後、以下の手順で各層の形成を行う。
例えば105MHzの高周波電源203を所望の電力に設定して、マッチングボックス204、高周波電力分岐手段212、高周波電極202を通じて反応容器201内に高周波電力を導入し、円筒状基体205をアノードとして作用させてグロー放電を生起させる。この放電エネルギーによって反応容器201内に導入されたガスが分解され、円筒状基体205上に所定の堆積膜が形成されるところとなる。所望の膜厚の形成が行われた後、高周波電力の供給を止め、反応容器201内へのガスの流入を止め、堆積膜の形成を終える。
ガス種、高周波電力、圧力、円筒状基体温度を必要に応じて変更しながら、同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の堆積膜が形成される。
堆積膜形成の均一化を図るために、層形成を行っている間は、円筒状基体205を回転機構208によって所定の速度で回転させることが望ましい。
特開平9−310181号公報
このような従来の堆積膜形成装置及び方法により、膜堆積速度の向上による基体処理時間の短縮、同時処理可能基体数の増加、堆積膜特性の均一性・再現性の向上が達成され、生産コストの安い、実用的な特性と均一性を持つ電子写真感光体を得ることが可能になった。また真空反応容器内の清掃を厳格に行えばある程度欠陥の少ない電子写真感光体を得ることは可能である。
しかしながら、これらの堆積膜を用いた製品に対する市場の要求レベルは日々高まっており、この要求に応えるべく、より高品質の堆積膜が求められるようになっている。
すなわち、近年、急激に需要が広がっているカラー複写機においては、これまで以上に画像欠陥に対する要求が厳しい。ところが、電子写真感光体のように大面積で比較的厚い堆積膜が要求される製品においては、その感光体の製造工程が長時間に渡るために製造工程中にダストが発生しやすく、且つ、堆積面の面積が広いため、自ずとダストが付着する確率も高まる傾向がある。このダスト起因の堆積膜の異常成長は画像欠陥に直結するため、極力なくすことが必要となってきた。
従って、膜堆積速度が速く、光学的及び電気的諸特性の要求を満足し、かつ電子写真プロセスによる画像形成時に画像欠陥が少ない堆積膜を高収率で得るためには、改善すべき問題が残存していた。
上記の感光体の製造工程で発生する堆積膜の異常成長とは次のようなものである。
a−Si膜は基体表面に数μmオーダーのダストが付着していた場合、成膜中にそのダストを核として異常成長、いわゆる「球状突起」が成長してしまうという性質を持っている。球状突起はダストを起点とした円錐形を逆転させた形をしており、正常堆積部分と球状突起部分の界面では局在準位が非常に多いために低抵抗化し、帯電電荷が界面を通って基体側に抜けてしまう。このため、球状突起のある部分は、画像上ではべた黒画像で白い点となって現れる(反転現像の場合はべた白画像に黒い点となって現れる)。このいわゆる「ポチ」と呼ばれる画像欠陥は年々規格が厳しくなっており、大きさによってはA3用紙に数個存在していても不良として扱われることがある。さらには、カラー複写機に搭載される場合にはさらに規格は厳しくなり、A3用紙に1個存在していても不良となる場合がある。
この球状突起は、ダストを起点としているため、使用する基体は成膜前に精密に洗浄され、成膜装置に設置する行程は全てクリーンルームあるいは真空下で作業が行われる。このようにして、成膜開始前に基体上に付着するダストは極力少なくするよう努力されてきており、効果を上げてきた。しかし、球状突起の発生原因は基体上に付着したダストのみではない。すなわち、a−Si感光体を製造する場合、要求される膜厚が数μmから数10μmと非常に厚いため、成膜時間は数時間から数十時間に及び、この間にa−Si膜は基体のみではなく、反応炉壁や反応炉内の構造物にも堆積する。これらの炉壁、構造物は基体のように管理された表面や温度を有していないため、場合によっては密着力が弱く、長時間に渡る成膜中に膜剥がれを起こす場合があった。成膜中に僅かでも剥がれが発生すると、それがダストとなり、堆積中の感光体表面に付着し、これが起点となって球状突起の異常成長が発生してしまう。従って、高い歩留まりを維持していくためには、成膜前の基体の管理のみならず、成膜中における成膜炉内の膜剥がれの防止についても慎重な管理が必要とされ、a−Si感光体の製造を難しいものにしていた。
本発明の目的は、上述のごとき従来の電子写真感光体及び電子写真感光体の製造における諸問題を、電気的特性を犠牲にすることなく克服して、安価に安定して歩留まり良く製造し得る、長手方向の膜厚の均一性が優れており画像の均一性が良く、画像欠陥が少なく高画質な電子写真感光体の製造を可能にする堆積膜形成装置、及び堆積膜形成方法を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、複数の円筒状基体を同一円周上に等間隔に配置し、高周波電力導入手段を反応容器の外部に配置して高周波電力を導入することで、基体上に良好な特性を有する堆積膜を形成することが可能となる堆積膜形成装置及び方法において、同一円周上に配置された円筒状基体に囲まれた領域の内部に、アースに落とされた導電性の円筒状部材を設置することによって大幅に球状突起の発生を減らすことが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
また、図1に示す装置の様に、高周波電力導入手段102が導電性部材からなる上蓋101(b)の上部側に設置された高周波電力分岐手段112により分岐されている場合に、アースに落とされた導電性の円筒状部材111を上蓋101(b)と接触させることにより、円筒状基体に形成される堆積膜の特性向上が為されることを見出した。
即ち、本発明は、誘電体部材で構成された反応容器壁と、少なくとも排気口を備えた接地された底板と、接地された導電性部材からなる上蓋によって構成された減圧可能な反応容器内に、同一円周上に配置された複数の円筒状基体と、原料ガス導入手段と、前記反応容器の外部に配置された複数の高周波電力導入手段とを有し、前記高周波電力導入手段に高周波電力を印加し、前記反応容器内にグロー放電を発生させることにより、前記反応容器内に導入された原料ガスを分解し、前記複数の円筒状基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成装置において、前記高周波電力導入手段が導電性部材からなる上蓋の上部側に設置された高周波電力分岐手段により分岐されており、前記円筒状基体の配置円内に導電性円筒状部材が配置され、前記円筒状部材が導電性上蓋と接触し、底板からは離れていることを特徴とする堆積膜形成装置に関する。
本発明によれば、複数の基体上に、良好な特性を有する堆積膜を均一に再現性良く、高い膜堆積速度で形成できると同時に、球状突起に起因する画像欠陥を極めて少なくすることが可能である。
また、本発明によれば、複数の円筒状基体を同一円周上に等間隔に配置し、高周波電力導入手段を反応容器の外部に配置して高周波電力を導入することで、基体上に良好な特性を有する堆積膜を形成する堆積膜装置及び方法において、同一円周上に配置された円筒状基体に囲まれた領域の内部に、アースに落とされた導電性の円筒状部材を上蓋に接触させて設置することによって、電気的特性を犠牲にすることなく大幅に球状突起の発生を減らすことが可能となった。さらに、堆積膜形成時間の短縮、原料ガス利用効率の向上が達成され、生産コストの低下が実現可能となる。
上記の効果が得られる本発明の形態について、以下、詳述する。
本発明者らは、複数の円筒状基体を同一円周上に等間隔に配置し、高周波電力導入手段を反応容器の外部に配置した堆積膜形成装置において、堆積膜の密着性を向上させてダストの発生を低減する方法を検討したところ、円筒状基体の周りの構成が非対称となっていることに気がついた。この非対称性は、大雑把に言って、円筒状基体の配置円の内側と外側に分けて考えることができ、内側と外側で膜の密着性や応力などが異なっている可能性が考えられた。
そこで、この非対称性がどのような影響を及ぼしているかを確認するために、円筒状基体を静止状態にして成膜を行い、円筒状基体の周方向の球状突起分布を調べた。すると、やはり球状突起数は周方向に均等に発生しているのではなく、円筒状基体の配置円の内側に多く発生していることが判明した。つまり、このような形態の堆積膜形成装置において球状突起を改善し、カラー複写機での使用にも耐えるレベルまで画像欠陥を低減するためには、主に、この内側の球状突起を低減する必要があることが判明した。
円筒状基体の配置円の内側で球状突起が多く発生する理由は、現在不明だが、堆積膜形成装置の構造を見たとき、円筒状基体が並んだ円周の外側は堆積膜形成装置の炉壁が面しているのに対して、内部側には炉壁はなく、このような空間の形状の違いが原因となって付着した堆積膜の膜応力の差を発生させ、密着性に影響を与えているのだろうと想像している。
これに対して、複数の円筒状基体の内部空間に本発明によるところの円筒状部材を設置した堆積膜形成装置において円筒状基体の周方向の球状突起数分布を調べたところ、内側で球状突起の発生率が低減しており、周方向で球状突起分布はほぼ均等になっていることが判明した。これは、複数の円筒状基体の内部空間に設置した円筒状部材が内部側の炉壁に相当する機能を持ち、擬似的ながら内部と外部の構造が対称になったためではないかと考えている。
円筒状部材は、炉壁と同様の誘電体材料にした場合、炉壁〜円筒状基体間の距離と円筒状基体〜円筒状部材の距離をほぼ等しくしたときに最も球状突起の低減効果が最も現れた。しかし、このときの副作用として、円筒状部材にも堆積膜が付着するため、円筒状基体に堆積する膜の堆積速度が低下してしまう現象が現れた。そこで、本発明者らは球状突起改善効果と堆積速度の維持が両立する構成についてさらに検討した。
その結果、円筒状部材の材質を誘電体材料から導電性材料(例えば金属材料)に変更し、かつ、接地することにより、球状突起低減効果を維持しながら円筒状部材の直径を小さくすることが可能であることが判明した。一方、堆積速度は円筒状部材の直径を小さくすることで向上することが確認され、ある程度以下の大きさにすれば、実質、堆積速度の低下は無視しうる程度にまで改善することが確認された。
また、図1に示す装置の様に、高周波電力導入手段102が導電性部材からなる上蓋101(b)の上部側に設置された高周波電力分岐手段112により分岐されている場合に、アースに落とされた導電性の円筒状部材111を上蓋101(b)と接触させることにより、円筒状基体に形成される堆積膜の特性向上が為されることを見出した。
これは、この様な装置形態において、上蓋や導電性の円筒状部材111は上蓋101(b)を介して直流的には接地されているが、高周波的には若干のインピーダンス成分を有しているために、円筒状部材111を底板を介して接地するよりは、円筒状部材111を上蓋101(b)を介して接地するほうが、高周波電力分岐手段112、高周波電力導入手段102、円筒状部材111及び上蓋101(b)により形成される高周波電力の導入経路の電力伝送効率が向上し、反応空間内部の放電分布が改善されて円筒状基体105近傍のプラズマ密度が向上したり、プラズマの安定性が改善されたりすることにより、円筒状基体105上の堆積膜の膜質が向上すると推察される。
上記のように、本発明において堆積速度を低下させずに、かつ、球状突起改善効果を維持するためには、円筒状部材の直径をある特定の範囲にする必要がある。すなわち、円筒状部材の直径を、複数の円筒状基体に囲まれた空間に内接する内接円の直径(すなわち複数の円筒状基体の中心軸を結ぶ円の直径から円筒状基体の直径を引いた値)に対して0.1倍〜0.8倍、更に好ましくは0.2倍〜0.5倍とするときに限って、球状突起改善効果と堆積速度維持が両立することが判明した。
以下、図面を用いて本発明の堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法について詳細に説明する。
図1は本発明の堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法で、複数の電子写真感光体を同時に形成できる生産性の極めて高い装置の一例を模式的に示したものである。
図1(a)は概略断面図、図1(b)は図1(a)の切断線A−A’に沿う概略断面図である。図1に示す堆積膜製造装置は、原料ガスが分解される成膜空間を誘電体部材101(a)と上蓋101(b)から成る反応容器101により円柱状領域に制限し、円柱状成膜空間の中心軸が円筒状基体105配置円の中心を通る構成とし、さらに、円筒状基体105の配置円外に設置された高周波電力導入手段102を誘電体部材101(a)の外部に位置させることにより、原料ガスの利用効率が向上し、同時に、形成される堆積膜中の欠陥を減少させることが可能となる。
反応容器101の下部には排気配管109が接続され、排気配管109の他端は不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)に接続されている。反応容器101の中心部を取り囲むように、堆積膜を形成される複数の円筒状基体105が互いに平行になるように同一円周上に配置されている。複数の円筒状基体105は基体加熱用ヒーター107を内蔵した基体支持体106によって各々保持されている。そして、反応容器101内には概略中央に略平行に円筒状部材111、SiH4、GeH4、H2、CH4、B26、PH3、Ar、He等のガスボンベからなる不図示のガス供給装置に接続されたガス供給手段110があり、反応容器101の外には高周波電力導入手段102が設置されている。高周波電力導入手段102には、高周波電源103がマッチングボックス104と高周波電力分岐手段112を介して接続されている。さらに、円筒状基体105は各々の回転機構108によって、回転可能になっている。
ここで、円筒状部材111について説明する。円筒状部材の材料は、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス、金、銀、銅、ニッケル、クロム、チタンなど、金属材料を用いる。
円筒状部材111の表面の少なくとも一部は、鏡面に仕上げられていても良い。鏡面に仕上げられた表面は特異的にa−Si堆積膜の密着性が良く、成膜中のダスト発生を抑えることができる。特にアルミニウムの鏡面がa−Si堆積膜の密着性に関して最適である。
円筒状部材111の表面を鏡面仕上げにする場合には、鏡面旋盤を用いることで容易に加工することができる。また、研磨剤により表面を研磨することによって鏡面仕上げすることもできる。
また、円筒状部材111の表面を鏡面以外に仕上げる場合には、算術平均粗さ(Ra)が1μm以上20μm以下の範囲であることが好ましい。これは、Raを1μm以上とすることでa−Si堆積膜との接触面積が増加し、密着性に良好な影響を及ぼすからである。一方、Raが大き過ぎると逆にダストを取り込みやすくなり、これが吐き出された際に球状突起の原因になってしまうことがある。よって、Raは1μm以上20μm以下の範囲であることが好ましい。
さらに、円筒状部材111の表面は、Raを上記の範囲内にすると同時に平均傾斜角(θa)を9度以上20度以下の範囲に制御することが好ましい。θaとは、表面粗さの傾きに相当する指標であり、これを9〜20度の範囲とすることにより表面の凹凸が深くなり、より密着性が向上する。なお、平均傾斜角(θa)とは図3に示すように測定曲線の局部傾斜の絶対値を合計し、平均した値(Δa)の逆正接(θa=tan-1Δa)で表される。
また、Raを上記の範囲内にすると同時に局部山頂の平均間隔(S)を30μm以上100μm以下の範囲にすることも好ましい。Sとは、凹凸の凸部の間隔に相当する指標であり、この値を30〜100μmとすることにより、やはり表面の凹凸が深くなり、より密着性が向上する。
更に、Raとθa、Sをすべて上記の範囲内にすることで、特に密着性の向上が顕著になることが本発明者の実験によって明らかとなった。これは、Ra、θa、Sを一定の範囲にすることで部材と堆積膜との接触面積をより最適な範囲にでき、部材に堆積する膜の応力が緩和されやすい状態になって密着性が増したためであると考えている。
本発明で用いた表面粗さの測定はJIS B0601−1994に基づき、Surftest SJ−400(株式会社ミツトヨ)を用いカットオフ0.8mm、基準長さ2.5mm、評価長さ4mmとして測定を行った。
円筒状部材111の表面粗さを上記の範囲に制御するためには、ブラスト加工や、溶射材で被覆すれば良い。ブラスト加工や溶射は、コスト面から、あるいは表面粗さの制御性の高さや、コーティング対象物の大きさ・形状の制限を受けにくいため好ましい。
溶射の具体的手段に特に制限はないが、例えばプラズマ溶射、減圧プラズマ溶射、高速フレーム溶射、低温溶射などのコーティング法により表面をコーティングしてもよい。具体的な溶射材料としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、二酸化チタン、鉄等が挙げられる。円筒状部材の表面を被覆する溶射材の厚さは特に制限はないが、耐久性および均一性を増すため、また、製造コストの面から1μm〜1mmが好ましく、10μm〜500μmがより好ましい。
本発明の堆積膜形成装置101では、円筒状部材111は導電性上蓋101(b)と電気的に接触しており、導電性上蓋101(b)は、接地されていることが望ましい。接地することによって、高周波電力分岐手段112に対して擬似的な対向電極的な作用をしているものと推測される。
本発明においては高周波電力の周波数が50〜450MHzの範囲において、画像欠陥の低減効果が特に高くなる。これは、50MHzよりも低い周波数領域においては、プラズマが安定して生成可能な圧力が急激に高まることに起因していると思われる。本発明者らの検討によれば、例えば周波数が13.56MHzの場合には、プラズマが安定して生成可能な圧力は、周波数が50MHz以上の場合と比べ約1桁から半桁高いことが確認されている。このような高い圧力においては、成膜空間中においてポリシラン等のパーティクルが生じ易く、このパーティクルが堆積膜中に取り込まれると球状突起を発生させやすくなる。本発明において、高周波電力の周波数を50MHz以上とすることにより、プラズマ生成圧力を充分低くすることができるため、パーティクルの発生確率は激減し、円筒状基体全周にわたって良好な堆積膜が形成されるものと考えられる。
また、450MHzよりも高い周波数領域においては、プラズマの均一性の低下により450MHz以下の場合と比べて膜特性の均一性に差が生じてしまう。このような膜特性の均一性に差ができると、同時に膜の応力にも差が生じ、その境界付近で膜剥がれが生じやすくなる。このため、画像欠陥が悪化しやすい。周波数が450MHzよりも高い周波数領域においては、電力導入手段近傍での電力の吸収が大きく、ここで電子の生成が最も頻繁に為されるため、プラズマ不均一を生じ易く、堆積膜の特性むらにつながりやすい。450MHz以下の周波数においては、電力導入手段近傍での極端な電力吸収が生じにくいため、プラズマ均一性、さらには膜特性の均一性が高くなる。
また、高周波電源103は、装置に適した高周波電力を発生することが出来ればいかなるものでも好適に使用出来る。さらに、高周波電源103の出力変動率には特に制限は無い。
本発明で使用されるマッチングボックス104は高周波電源103と負荷の整合を取ることができるものであればいかなる構成のものでも好適に使用出来る。また、整合を取る方法としては、自動的に調整されるものが製造時の煩雑さを避けるために好適であるが、手動で調整されるものであっても本発明の効果に全く影響は無い。また、マッチングボックス104が配置される位置に関しては整合が取れる範囲においてどこに設置してもなんら問題はないが、マッチングボックス104から高周波電力導入手段102までの配線のインダクタンスを出来るだけ小さくするような配置とした方が広い負荷条件で整合を取ることが可能になるため望ましい。
高周波電力導入手段102及び高周波電力分岐手段112の材質としては銅、アルミニウム、金、銀、白金、鉛、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン、ステンレスなどは熱伝導が良く、電気伝導も良いので好適である。これらの材料中の2種以上からなる複合材料なども好適に用いられる。
高周波電力導入手段102の数としては、円筒状基体105と同数もしくは円筒状基体105の1/2とすることが更に好ましい。円筒状基体105の1/2とする場合には、近接する2つの円筒状基体105との距離が等しくなるよう配置することが最適である。複数の高周波電力導入手段102への電力の供給は、例えば、1つの高周波電源103からマッチングボックス104を介した後、電力供給路を高周波電力分岐手段112で分岐させて行うことができる。また例えば、1つの高周波電源103から電力供給路を高周波電力分岐手段112で分岐させた後、複数のマッチングボックスを介して電力供給を行ってもよく、さらには例えば、個々の高周波電力導入手段102ごとに別個の高周波電源およびマッチングボックスを設けてもよいが、全ての高周波電力導入手段102から導入される高周波電力の周波数が完全に一致するという点、装置コストの点、装置の大きさの点から、1つの高周波電源から全ての高周波電力導入手段102に電力供給されることが好ましい。
高周波電力導入手段102としては棒状、筒状、板状等のカソード電極や、同軸構造体の外部導体に開口部を設けそこから電力供給する手段等が用いることができる。
本発明で使用される反応容器101の誘電体部材101(a)の材料としては、セラミックス材料が好ましく、具体的には、アルミナ、ジルコニア、ムライト、コージュライト、炭化珪素、チッ化ホウ素、チッ化アルミ、チッ化珪素等が挙げられ、これらの少なくとも一つを含む材料によって構成されていると堆積膜の密着性が高く、球状突起発生防止のために有効であるので好ましい。これらの中でも、アルミナ、チッ化ホウ素、チッ化アルミは誘電正接や絶縁抵抗等の電気特性にすぐれ、高周波電力の吸収が少ないことからより好ましい。また、加工の容易さから電子写真感光体を作製する際には、形状は円筒形状が好ましいが、必要に応じて楕円形、多角形形状を用いても良く、作製する部材に応じて形状を選択すれば良い。
反応容器101の誘電体部材101(a)表面は、球状突起低減効果を増すために算術平均粗さ(Ra)が1μm以上20μm以下の範囲であることが好ましい。また、Raを上記の範囲内にすると同時に平均傾斜角(θa)を9度以上20度以下の範囲に制御する、或いはRaを上記の範囲内にすると同時に局部山頂の平均間隔(S)を30μm以上100μm以下の範囲にすることがより好ましい。さらに、Ra、θa、Sを全て上記の範囲内にすることで画像欠陥改善効果が特に顕著になる。
反応容器101の上蓋101(b)の材質としては銅、アルミニウム、金、銀、白金、鉛、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン、ステンレスなどは導電性で熱伝導が良いので好適である。これらの材料中の2種以上からなる複合材料なども好適に用いられる。
円筒状基体105は、使用目的に応じた材質を有するものであれば良い。材質においては銅、アルミニウム、金、銀、白金、鉛、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン、ステンレスは電気伝導が良好のため好適である。さらに、これらの材料中の2種以上からなる複合材料も耐熱性が向上するために望ましい。
基体加熱用ヒーター107は真空仕様である発熱体であればよく、具体的にはシース状ヒーター、板状ヒーター、セラミックヒーター、カーボンヒーター等の電気抵抗発熱体、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等の熱放射ランプ発熱体、液体、気体等を温媒とし熱交換手段による発熱体等が挙げられる。基体加熱用ヒーター107の表面材料としてはステンレス、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属類、セラミック、耐熱性高分子樹脂等を使用することができる。
図1の堆積膜形成装置を用いた堆積膜の形成は、例えば概略以下のようにして行われる。
まず、基体ホルダー106に保持した円筒状基体105を反応容器101内に設置し、不図示の排気装置により排気口109を通して反応容器101内を排気する。続いて、発熱体107により円筒状基体105を所定の温度に加熱・制御する。
円筒状基体105が所定の温度となったところで、原料ガス供給手段110を介して、原料ガスを反応容器101内に導入する。原料ガスの流量が設定流量となり、また、反応容器101内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源103からマッチングボックス104を介して高周波電力導入手段102へ所定の高周波電力を供給する。供給された高周波電力によって、反応容器101内にグロー放電が生起し、原料ガスは励起・解離して円筒状基体105上に堆積膜が形成される。
所望の膜厚の形成が行なわれた後、高周波電力の供給を止め、続いて原料ガスの供給を停止して堆積膜の形成を終える。多層構造の堆積膜を形成する場合には、同様の操作を複数回繰り返す。この場合、各層間においては、上述したように1つの層の形成が終了した時点で一旦放電を完全に停止し、次層のガス流量、圧力に設定が変更された後、再度放電を生起して次層の形成を行なってもよいし、あるいは、1つの層の形成終了後一定時間でガス流量、圧力、高周波電力を次層の設定値に徐々に変化させることにより連続的に複数層を形成してもよい。また、各層の間で一旦、反応容器101内の残留ガスを充分真空引きすることで、層と層の間で異なるガス種を使う場合の汚染の心配がなくなるため好ましい。
堆積膜の形成中、必要に応じて円筒状基体105を回転機構108により所定の速度で回転させてもよい。
本発明を用いることにより、例えば図4に示すようなa−Si系電子写真感光体が形成可能である。
図4(a)に示す電子写真感光体1200は、基体1201の上に、水素原子またはハロゲン原子を構成要素として含むアモルファスシリコンを有する光導電性を有する光導電層1202が設けられている。
図4(b)に示す電子写真感光体1200は、支持体1201の上に、a−Siからなり光導電性を有する光導電層1202と、アモルファスシリコン系(又はアモルファス炭素系)表面層1203が設けられて構成されている。
図4(c)に示す電子写真感光体1200は、支持体1201の上に、アモルファスシリコン系電荷注入阻止層1204と、a−Siからなり光導電性を有する光導電層1202と、アモルファスシリコン系(又はアモルファス炭素系)表面層1203が設けられて構成されている。
図4(d)に示す電子写真感光体1200は、支持体1201の上に、光導電層1202が設けられている。この光導電層1202はa−Siからなる電荷発生層1205及び電荷輸送層1206とからなり、その上にアモルファスシリコン系(又はアモルファス炭素系)表面層1203が設けられている。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
実施例1
図1に示す堆積膜形成装置を用い、直径80mm、長さ358mmの円筒状のアルミニウム合金製の基体105上に、高周波電源103の発振周波数を50MHzとして表1に示す条件に従い、前述の堆積膜形成方法でa−Si堆積膜から成る電子写真感光体を形成した。
円筒状部材111の材質はステンレス製とし、直径は、円筒状基体に囲まれた領域の直径の0.3倍とし、長さは、反応容器の高さの0.8倍とした。円筒状部材の表面は、ブラスト加工により、Ra=4.1μm、θa=14度、S=50μmとした。
Figure 2005163163
比較例1-1
図5に示す堆積膜形成装置を用い、実施例1と同様にして表1の条件でa−Si感光体の形成を行った。本比較例では円筒状部材は、反応容器下部のベース部に設置され接地されている。円筒状部材111の材質はステンレス製とし、直径は、円筒状基体に囲まれた領域の直径の0.3倍、長さは、反応容器の高さの0.8倍とした。円筒状部材の表面は、ブラスト加工により、Ra=4.1μm、θa=14度、S=50μmとした。
比較例1-2
図2に示す堆積膜形成装置を用い、実施例1と同様にして表1の条件でa−Si感光体の形成を行った。本比較例では円筒状部材は設けなかったが、その他の成膜条件は実施例1と全く同様とした。
実施例1、比較例1-1、比較例1-2で作成したa−Si電子写真感光体は、下記の方法で評価を行った。
(球状突起数)
得られた感光体の表面を光学顕微鏡で観察した。そして、20μm以上の大きさの球状突起の数を数え、10cm2当たりの個数を調べた。
得られた結果は、比較例1-2での値を100%とした場合の相対比較でランク付けを行った。
◎…30%未満
○〜◎…30%以上50%未満
○…50%以上70%未満
△〜○…70%以上95%未満
△…95%以上105%未満
×…105%以上に増加
(画像欠陥)
本テスト用に改造したキヤノン製複写機iR5000に本実施例で作製した電子写真感光体を設置し、プロセススピード265mm/sec、前露光(波長660nmのLED)光量4lx・s、主帯電器の電流値1000μAの条件にて画像形成を行い、A3サイズの黒原稿を複写した。こうして得られた画像を観察し、直径0.3mm以上の球状突起に起因する白ポチの個数を数えた。
得られた結果は、比較例1-2での値を100%とした場合の相対比較でランク付けを行った。
◎…30%未満
○〜◎…30%以上50%未満
○…50%以上70%未満
△〜○…70%以上95%未満
△…95%以上105%未満
×…105%以上に増加
(帯電能)
電子写真装置の主帯電器に一定の電流(例えば1000μA)を流し、現像器位置にセットした表面電位計(TREK社Model344)の電位センサーにより暗部電位を測定した。したがって、暗部電位が大きいほど帯電能が良好であることを示す。帯電能測定は感光体母線方向全領域に渡って行い、その平均値とした。帯電能の評価結果は、比較例1-2の結果を基準とした。
◎…20%以上の良化
○〜◎…15%以上20%未満の良化
○…10%以上15%未満の良化
△〜○…5%以上10%未満の良化
△…5%未満の良化
×…悪化
(感度)
現像器位置での暗部電位が一定値(例えば450V)となるよう主帯電器電流を調整した後、原稿に反射濃度0.1以下の所定の白紙を用い、現像器位置での明部電位が所定の値となるよう像露光(波長655nmの半導体レーザー)を調整した際の像露光量により評価する。したがって、像露光量が少ないほど感度が良好であることを示す。感度測定は感光体母線方向全領域に渡って行い、その平均値とした。したがって、数値が小さいほど良好である。感度の評価結果は、比較例1-2の結果を基準とした。
◎…40%以上の良化
○〜◎…30%以上40%未満の良化
○…20%以上30%未満の良化
△〜○…10%以上20%未満の良化
△…10%未満の良化
×…悪化
(光メモリー)
現像器位置における暗部電位が所定の値となるように主帯電器の電流値を調整した後、所定の白紙を原稿とした際の明部電位が所定の値となるよう像露光光量を調整する。この状態でキヤノン製ゴーストテストチャート(部品番号:FY9−9040)に反射濃度1.1、直径5mmの黒丸を貼り付けたものを原稿台に置き、その上にキヤノン製中間調チャートを重ねておいた際のコピー画像において、中間調コピー上に認められるゴーストチャートの直径5mmの黒丸の反射濃度と中間調部分の反射濃度との差を測定することにより行った。光メモリーの測定は、感光体母線方向全領域に渡って行い、その平均値とした。したがって、数値が小さいほど良好である。光メモリーの評価結果は、比較例1-2の結果を基準とした。
◎…40%以上の良化
○〜◎…30%以上40%未満の良化
○…20%以上30%未満の良化
△〜○…10%以上20%未満の良化
△…10%未満の良化
×…悪化
比較例1-2に対する、実施例1、比較例1-1の評価結果を表2に示す。表2から分かるように、複数の円筒状基体に囲まれた領域の中央に円筒状部材を設けることによって球状突起、画像欠陥が大幅に改善されることが分かる。また、予期しなかった効果であるが、帯電能、感度、光メモリーといった電子写真感光体の特性に関しても改善が見られることが判明した。
即ち、本発明の装置構成のように、導電性部材からなる上蓋の上部側に設置された高周波電力分岐手段によって、前記複数の高周波電力導入手段へ接続されている場合において、円筒状部材を上蓋と接触させておくことで、更に帯電能、感度、光メモリーといった電子写真感光体の特性に関しても改善が見られることが判明した。
Figure 2005163163
実施例2
図1に示す堆積膜形成装置を用い、直径80mm、長さ358mmの円筒状のアルミニウム合金製の基体105上に、高周波電源103の発振周波数を105MHzとして表3に示す条件に従い、前述の堆積膜形成方法でa−Si堆積膜から成る電子写真感光体を形成した。
本実施例では、円筒状部材111はニッケル製とし、直径が円筒状基体に囲まれた領域の内接円の直径の0.05倍〜0.85倍となるように変化させた。
それぞれの円筒状部材の表面粗さは、ニッケル材の溶射によりRa=約6.7μm、θa=約11度、S=約78μmに調整した。
Figure 2005163163
上記の方法で得られた電子写真感光体は、実施例1と同様の評価を行った。さらに、堆積速度を以下の方法で評価した。
(堆積速度)
成膜の終わった電子写真感光体の総膜厚を測定した。測定は、電子写真感光体の中央部分を渦電流式膜厚計(株式会社フィッシャーインストルメンツ製 FISCHERSCOPE MMS)で測定した。得られた膜厚をトータルの成膜時間で割ることにより堆積速度を算出した。評価は、比較例1-2の電子写真感光体の堆積速度を100%としたときの相対値で表した。
実施例2の結果を比較例1-2の結果を基準として表4に示す。表4から分かるように、円筒状部材の直径は複数の円筒状基体に囲まれた領域に対して0.1〜0.8倍としたときに特に球状突起数、画像欠陥に改善が見られることが分かる。また、円筒状部材の直径を小さくしていっても特性は良好なまま保たれ、かつ、堆積速度は速くなっていく。特に0.5倍以下の範囲では比較例1-2とほぼ同等の堆積速度が得られており、非常に良好である。
Figure 2005163163
実施例3
図1に示す堆積膜形成装置を用い、直径80mm、長さ358mmの円筒状アルミニウム合金製の基体105上に、表5に示す条件に従い、前述の堆積膜形成方法でa−Si堆積膜から成る電子写真感光体を形成した。円筒状部材111の材質は鉄製とし、直径は、円筒状基体に囲まれた領域の直径の0.4倍とした。円筒状部材の表面は、ブラスト加工により、Ra=2.6μm、θa=9度、S=30μmとした。
本実施例では、高周波電源103の発振周波数を45MHz〜500MHzの単周波数、及び重畳周波数とした。
Figure 2005163163
実施例3の結果を比較例1-2の結果を基準として表6に示す。表6から分かるように、高周波電力の周波数は50〜450MHzの範囲とすることによって、単周波数でも重畳でも、より顕著に本発明の効果が得られることが分かる。
Figure 2005163163
実施例4
図1に示す堆積膜形成装置を用い、直径80mm、長さ358mmの円筒状アルミニウム合金製の基体105上に、表5に示す条件に従い、前述の堆積膜形成方法でa−Si堆積膜から成る電子写真感光体を形成した。円筒状部材111はステンレス製とし、その直径は、円筒状基体の内部空間の直径の0.5倍とした。高周波電源103の発振周波数は105MHzと60MHzの重畳周波数とした。
本実施例では、円筒状部材の表面をブラスト加工により算術平均粗さRa、平均傾斜角θa、局部山頂の平均間隔Sを表7に示す様々に数値に変化させた。
実施例4の結果を比較例1-2の結果を基準として表7に示す。表7の結果から分かるように、本発明においては、円筒状部材の表面粗さに関して、Raを1〜20μm、θaを9〜20度、Sを30〜100μmの範囲とすることによってより顕著に球状突起、画像欠陥低減効果が得られることが分かる。
Figure 2005163163
実施例5
図1に示す堆積膜形成装置を用い、直径80mm、長さ358mmの円筒状アルミニウム合金製の基体105上に、表5に示す条件に従い、前述の堆積膜形成方法でa−Si堆積膜から成る電子写真感光体を形成した。円筒状部材111はステンレス製とし、その直径は、円筒状基体の内部空間の直径の0.5倍とした。高周波電源103の発振周波数は105MHzと60MHzの重畳周波数とした。
本実施例では、円筒状部材の表面をアルミニウム材、ニッケル材、ステンレス材、二酸化チタン材の4種類の材料を用いた溶射により、算術平均粗さRaを約5μm、平均傾斜角θaを約15度、局部山頂の平均間隔Sを約45μmとした。
得られた4本の電子写真感光体を実施例4と同様に評価を行ったところ、アルミニウム材、ニッケル材、ステンレス材、二酸化チタン材、いずれの材料においても実施例1と同様の結果が得られた。このことから、円筒状部材の表面を荒らす手法は溶射であっても好適に用いられることが判明した。
本発明に関わる堆積膜形成装置の一例を示した模式的な構成図である。 従来のVHF帯の周波数を用いたVHFプラズマCVD法による電子写真感光体の製造装置の一例を示した模式的な構成図である。 平均傾斜角(θa)の定義を説明するための模式図である。 本発明により形成可能な電子写真感光体の層構成の一例を示した図である。 本発明に関わる堆積膜形成装置の一例を示した模式的な構成図である。
符号の説明
101 反応容器
101(a)誘電体部材
101(b)上蓋
102 高周波電力導入手段
103 高周波電源
104 マッチングボックス
105 円筒状基体
106 基体支持体
107 基体加熱用ヒーター
108 回転機構
109 排気配管
110 ガス供給手段
111 円筒状部材
201 反応容器
201(a)誘電体部材
201(b)上蓋
202 高周波電力導入手段
203 高周波電源
204 マッチングボックス
205 円筒状基体
206 基体支持体
207 基体加熱用ヒーター
208 回転機構
209 排気配管
210 ガス供給手段
501 反応容器
501(a)誘電体部材
501(b)上蓋
502 高周波電力導入手段
503 高周波電源
504 マッチングボックス
505 円筒状基体
506 基体支持体
507 基体加熱用ヒーター
508 回転機構
509 排気配管
510 ガス供給手段
1200 電子写真感光体
1201 支持体
1202 光導電層
1203 表面層
1204 電荷注入阻止層
1205 電荷発生層
1206 電荷輸送層

Claims (10)

  1. 誘電体部材で構成された反応容器壁と、少なくとも排気口を備えた接地された底板と、接地された導電性部材からなる上蓋によって構成された減圧可能な反応容器内に、同一円周上に配置された複数の円筒状基体と、原料ガス導入手段と、前記反応容器の外部に配置された複数の高周波電力導入手段とを有し、前記高周波電力導入手段に高周波電力を印加し、前記反応容器内にグロー放電を発生させることにより、前記反応容器内に導入された原料ガスを分解し、前記複数の円筒状基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成装置において、
    導電性部材からなる上蓋の上部側に設置された高周波電力分岐手段によって、前記複数の高周波電力導入手段へ接続されており、
    前記円筒状基体の配置円内に導電性円筒状部材が配置され、
    前記円筒状部材が導電性上蓋と接触し、底板からは離れていることを特徴とする堆積膜形成装置。
  2. 前記円筒状部材が円筒状基体の配置円の中央に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の堆積膜形成装置。
  3. 前記円筒状部材の外径が前記複数の円筒状基体の内部空間の内接円の直径の0.1倍〜0.8倍であることを特徴とする請求項1乃至2に記載の堆積膜形成装置。
  4. 前記円筒状部材の算術平均粗さRaが1μm以上20μm以下の範囲にあるであることを特徴とする請求項1乃至3に記載の堆積膜形成装置。
  5. 前記円筒状部材の表面粗さが、ブラスト加工、あるいは溶射加工によって調整されていることを特徴とする請求項4に記載の堆積膜形成装置。
  6. 前記高周波電力導入手段が、前記複数の円筒状基体の配置円と中心を同じくする同心円上に等間隔で設置されている請求項1乃至5に記載の堆積膜形成装置。
  7. 前記高周波電力の周波数が50〜450MHzの範囲であることを特徴とする請求項1乃至6に記載の堆積膜形成装置。
  8. シリコン原子を母材とした非単結晶材料を堆積することを特徴とする請求項1乃至7に記載の堆積膜形成装置。
  9. 電子写真感光体に用いられる堆積膜を形成することを特徴とする請求項1乃至8に記載の堆積膜形成装置。
  10. 請求項1乃至9記載の堆積膜形成装置を用いた堆積膜形成方法。
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