JP2006009042A - 堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法 - Google Patents

堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の電子写真感光体における諸問題を克服して、低コスト且つ安定した製造が可能で、堆積膜特性の優れた、画像欠陥が少ない電子写真感光体の製造可能な堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも一部が誘電体材料により構成された減圧可能な反応容器内に複数の円筒状基体を配置し、反応容器内へ原料ガス導入手段より供給された原料ガスを高周波電力導入手段より導入された高周波電力により分解して円筒状基体上に堆積膜を形成するための堆積膜形成装置において、円筒状基体は同一円周上に等間隔で配置され、高周波電力導入手段は反応容器の外側に配置され、且つ、反応容器の外周を一周せしめて覆う形状であり、円筒状基体が配置される配置円内に設置されている接地された円筒状部材を有することを特徴とする。
【選択図】図1−1

Description

本発明は、円筒状基体上に堆積膜、取り分け機能性膜、特に高周波電力により生成されるプラズマを用いた半導体デバイス、電子写真感光体等の堆積膜を利用した光受容部材を形成するのに適した堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法に関するものである。
従来、半導体デバイス、電子写真感光体、画像入力用ラインセンサー、撮影デバイス、光起電力デバイス等を形成するための真空処理方法には、プラズマCVD法、イオンプレーティング法、プラズマエッチング法等、高周波電力により生成されるプラズマを用いた堆積膜形成方法が知られており、そのための装置も数多く実用化されている。その中でも高周波電力を用いたプラズマプロセスは、様々な材料を用いた堆積膜の形成が可能であり、酸化膜や窒化膜等の絶縁性の材料形成にも使用できる等、様々な利点より使用されている。
例えば、プラズマCVD法を用いた堆積膜形成方法、つまり、高周波電力のグロー放電により原料ガスを分解し、その分解種を基体上に形成させることによって堆積膜を形成する方法が好適な堆積膜形成手段として実用化されている。この方法を用いた例として、原料ガスにシランガスを用いてアモルファスシリコン(以下「a−Si」とも記す)薄膜の形成が広く知られ、そのための装置も各種提案されている。
特に、VHF帯の高周波電力を用いたプラズマCVD(以下、「VHF−PCVD」とも略記する)法が注目を浴びており、この方法を用い各種堆積膜形成装置の開発が積極的に進められている。これは、VHF−PCVD法では、堆積膜の堆積速度が比較的速く、又、高品質な堆積膜が得られるため、製品の低コスト化、高品質化を同時に達成し得るものと期待されるためである。そして、このVHF−PCVD法を用いて、特に、a−Si系電子写真用の複数の感光体を同時に形成でき、高い生産性が得られる堆積膜形成装置の開発が進められている。
このような従来の堆積膜形成装置には、反応容器の一部を誘電材とし、カソード電極を反応容器の外側に複数配置することで、大面積で均質な高周波放電を容易に発生させることができ、大面積基体へのプラズマ処理を均一且つ高速に行うことが可能になる装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
又、電極の外周を一周せしめて覆った絶縁性部材と導電性部材の積層構造から成る高周波電力導入手段を介して電極に高周波電力を印加することで、反応容器内へ均一に高周波電力を印加することが可能となるため、大面積基体への堆積膜速度及び堆積される堆積膜特性の改善が改善される装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
更に、同一円周上に複数配置された円筒状基体の配置円の内外に第1及び第2の高周波電力導入手段を備え、各々が高周波電源に接続された第1及び第2の高周波電力導入手段に印加される高周波電力を独立に制御可能にすることで、優れた特性を有する堆積膜を低コストで安定して生産可能な装置が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
特許第3437376号公報(第14頁、図11) 特開平7−288194号公報 特開平11−92932号公報
このような従来の電子写真感光体形成装置及び方法により、膜堆積速度の向上による基体処理時間の短縮、同時処理可能基体数の増加、堆積膜特性の均一性・再現性の向上が達成され、生産コストが安く、実用的な特性と均一性を有する電子写真感光体を製造可能とした。又、生産において真空反応容器内の清掃を厳格に行うことによって、或る程度欠陥の少ない電子写真感光体が製造可能となった。
しかしながら、これら堆積膜を用いた製品に対する市場の要求が日々高まってきており、より高品質な堆積膜を形成可能な装置及び方法が求められているのが現状である。例えば、電子写真感光体においては、画像欠陥低減、堆積膜特性及び均一性の向上が挙げられる。
先ず、画像欠陥に関しては、近年、急激に需要が広がっているカラー複写機において、これまで以上に画像欠陥低減が求められている。
ところが、電子写真感光体のように大面積で比較的厚い堆積膜が求められる製品においては、製造工程が長時間に渡るために製造工程中にダストが発生し易く、且つ、堆積膜が形成される面積が広いため、自ずとダストが付着する確率も高まる傾向がある。このような原因により、電子写真感光体表面にダストが付着してしまうと、それに起因して堆積膜の異常成長が生じてしまう。写真感光体を用いた電子写真プロセスにおけて、この異常成長が画像欠陥の発生に直結するため、極力無くすことが必要となってきている。
上記電子写真感光体の製造工程で発生する堆積膜の異常成長とは次のようなものである。
a−Si:H膜は基体表面に数μmオーダーのダストが付着していた場合、堆積膜形成中にそのダストを核として異常成長、所謂「球状突起」が成長してしまうという性質を持っている。この突起はダストを起点とした円錐形を逆転させた形をしており、正常に堆積膜が形成された部分とこの突起部分の界面では局在準位が非常に多いために低抵抗化し、帯電電荷が界面を通って基体側へと抜けてしまうという性質を持っている。
このため、突起のある部分は、画像上ではベタ黒画像で白い点となって現れる(反転現像の場合はベタ白画像に黒い点となって現れる)。この所謂「ポチ」と呼ばれる画像欠陥は年々規格が厳しくなっており、大きさによってはA3用紙に数個存在していても不良として扱われることがある。更には、カラー複写機に搭載される場合には更に規格は厳しくなり、A3用紙に1個存在していても不良となる場合がある。
この突起は、ダストを起点としているため、使用する基体は成膜前に精密に洗浄され、成膜装置に設置する行程は全てクリーンルーム或は真空下で作業が行われる。このようにして、成膜開始前に基体上に付着するダストは極力少なくするよう努力されてきており、効果を上げてきた。
しかし、突起の発生原因は基体上に付着したダストのみではない。即ち、a−Si:H感光体を製造する場合、要求される膜厚が数μmから数10μmと非常に厚いため、堆積膜形成時間は数時間から数十時間に及ぶ。この間に、a−Si:H膜は基体のみではなく、反応容器内壁や反応容器内の構造物にも堆積する。これらの内壁、構造物等は基体のような管理された表面を有していないため、場合によっては密着力が弱く、長時間に渡る堆積膜の形成おいて膜剥がれを起こす場合があった。このような膜剥がれが僅かでも発生してしまうと、それがダストとなって感光体表面に付着し、これが起点となって突起の異常成長が発生して突起が生じてしまう。従って、高い歩留まりを維持していくためには、堆積膜形成前の基体の管理のみならず、堆積膜形成中における反応容器内の膜剥がれの防止についても慎重な管理が必要とされ、a−Si:H感光体の製造を難しいものにしていた。
次に、堆積膜特性及び均一性に関しては、特にデジタル電子写真装置やカラー電子写真装置において、画像濃度ムラの低減が必要となるため、これまで以上の堆積膜特性及び均一性が求められる。これは、上記電子写真装置により、文字原稿のみならず、写真、絵、デザイン画等のハーフトーンを含む原稿の出力が頻繁に行われるため、軽微な画像濃度のむらも視覚的に明らかになるためである。このために、堆積膜特性、具体的には、帯電能、感度を向上させることによる階調性の向上とともに、基体上に堆積膜を均一に形成することが必要となってきている。
更に、堆積膜特性の均一性が不十分であると、堆積膜特性が生産毎にばらつきが生じるため、製品品質の低下、良品率の低下に繋がってしまう。又、複数の堆積膜の積層する光受容体の場合、この特性のばらつきにより、或る層の膜特性が低下してしまうと、他の層とのマッチングも悪化するため、電子写真感光体全体として大きく影響を受けることになってしまう。特に、電子写真感光体のような大面積への堆積膜の形成では、局所的な膜質低下であっても、その部分のみを除去することができないため、その影響は大きい。このように、堆積膜特性の均一性を向上させ、堆積膜特性のばらつきを抑制することは、堆積膜全体としての特性向上、堆積膜形成コストの低下に大きく貢献するものである。
このような電子写真感光体特性の向上を目指し、堆積膜形成条件、堆積膜積層構成の最適化もなされているが、同時に、堆積膜形成装置及び方法の面での改善も強く望まれている。
よって、このような状況下において、上述した従来の堆積膜形成装置、堆積膜形成方法においても、画像欠陥の低減、堆積膜特性や均一性の向上に関して、未だ改善の余地が残されているのが現状である。
そこで、本発明は上記課題の解決を目的とするものである。即ち、本発明の目的は、上述のような従来の電子写真感光体における諸問題を克服して、低コスト且つ安定した製造が可能で、堆積膜特性の優れた、画像欠陥が少ない電子写真感光体を製造可能な堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法を提供することにある。
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、堆積膜形成装置及び方法において、反応容器内のプラズマ分布、プラズマ強度の均一性を向上させるために高周波電力導入手段の形状及び円筒状基体の配置円内の空間を工夫することで画像欠陥低減、堆積膜特性及び均一性向上に大きな効果があることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
詳細に記述すると、
(1)少なくとも一部が誘電体材料により構成された減圧可能な反応容器内に複数の円筒状基体を配置し、該反応容器内へ原料ガス導入手段より供給された原料ガスを高周波電力導入手段より導入された高周波電力により分解し、該円筒状基体上に堆積膜を形成するための堆積膜形成装置において、前記円筒状基体は同一円周上に等間隔で配置され、前記高周波電力導入手段は該反応容器の外側に配置され、且つ、該反応容器の外周を一周せしめて覆う形状であり、前記円筒状基体が配置される配置円内に設置されている円筒状部材を有しており、該円筒状部材が接地されていことを特徴とする堆積膜形成装置に関する。
(2)(1)に記載の堆積膜形成装置において、前記円筒状部材は、前記円筒状基体に対して平行に設置されていることを特徴とする堆積膜形成装置に関する。
(3)(1)又は(2)に記載の堆積膜形成装置において、前記円筒状部材は、前記円筒状基体の配置円中央に設置されていることを特徴とする堆積膜形成装置に関する。
(4)(1)〜(3)に記載の堆積膜形成装置において、前記円筒状部材は、冷却機構を具備していることを特徴とする堆積膜形成装置に関する。
(5)(1)〜(4)に記載の堆積膜形成装置において、前記高周波電力導入手段が、前記円筒状基体の長手方向に複数配置されていることを特徴とする堆積膜形成装置に関する。
(6)(1)〜(5)に記載の堆積膜形成装置において、前記高周波電力導入手段は、1つの高周波電力導入手段に対して複数の高周波電力印加点を有することを特徴とする堆積膜形成装置に関する。
(7)(1)〜(6)に記載の堆積膜形成装置において、前記高周波電力印加点は、前記円筒状基体の配置に対して対称となるように設けられていることを特徴とする堆積膜形成装置に関する。
(8)(1)〜(7)に記載の堆積膜形成装置において、前記堆積膜形成装置の高周波電力導入手段に印加する高周波電力の周波数は、50MHz以上450MHz以下であることを特徴とする堆積膜形成装置に関する。
(9)(1)〜(8)に記載の堆積膜形成装置において、前記堆積膜形成装置は、電子写真感光体の製造装置であることを特徴とする堆積膜形成装置に関する。
(10)少なくとも一部が誘電体材料により構成された減圧可能な反応容器内に複数の円筒状基体がを配置し、該反応容器内へ原料ガス導入手段より供給された原料ガスを高周波電力導入手段より導入された高周波電力により分解し、該円筒状基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成方法において、前記円筒状基体を同一円周上に等間隔で配置し、該円筒状基体が配置される配置円内に設置した円筒状部材を接地し、該反応容器の外側に配置した、該反応容器の外周を一周せしめて覆う形状の該高周波電力導入手段より導入された高周波電力により原料ガスを分解し、該円筒状基体上に堆積膜を形成を該反応容器の外側に配置し、円筒状部材を該円筒状基体が配置される配置円内に設置することを特徴とする堆積膜形成方法に関する。
(11)(10)に記載の堆積膜形成方法において、冷却機構により前記円筒状部材を冷却して堆積膜を形成することを特徴とする堆積膜形成方法に関する。
(12)(10)〜(11)に記載の堆積膜形成方法において、前記高周波電力導入手段への高周波電力の印加は、1つの高周波電力導入手段に対して複数の点から印加することを特徴とする堆積膜形成方法に関する。
(13)(10)〜(12)に記載の堆積膜形成方法において、前記高周波電力導入手段への高周波電力の印加は、前記円筒状基体の配置に対して対称となるように印加することを特徴とする堆積膜形成方法に関する。
(14)(10)〜(13)に記載の堆積膜形成方法において、前記円筒状基体上に形成される堆積膜は、電子写真感光体の光受容層として使用される堆積膜であることを特徴とする堆積膜形成方法に関する。
本発明によるプラズマCVD法を用いた堆積膜形成装置及び方法によれば、従来技術に比べ球状突起数を少なく、堆積膜特性の均一性が高い堆積膜を再現性良く製造することができる。これにより、上述した堆積膜形成装置及び方法を用いることで、従来の電子写真感光体における諸問題を解決し、低コスト且つ安定した製造が可能で、更に、近年要求されている高画質に対応できる堆積膜特性の優れた、画像欠陥が少ない電子写真感光体の製造が可能となる。
本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明で用いた堆積膜製造装置の一例を示した模式的な概略図であり、図1−1は概略垂直断面図、図1−2は図1−1の切断線A−A’に沿う概略水平断面図である。
図1に示す堆積膜形成装置は、円筒状の誘電体部材から成る反応容器側壁101、上蓋107及び底板から成る、内部を減圧可能な反応容器を有している。反応容器の底部には排気孔111を介して排気配管が接続され、排気配管の他端は不図示の排気装置に接続されている。堆積膜が形成される複数の円筒状基体102は、反応容器側壁101の中心を取り囲むように配置され、基体加熱用ヒーター110を内蔵した基体支持体109によって各々保持されており、基体支持体109は駆動機構112により各々の円筒状基体102が回転可能となっている。
又、反応容器内に原料ガス導入手段105が設置され、原料ガス導入手段105の他端には不図示の原料ガス導入手段が接続されている。更に、反応容器側壁101の外側には、高周波電力導入手段103が設置され、高周波電源116から出力された高周波電力は、マッチングボックス115を経て、高周波電力導入手段103の印加点113から成膜空間となる反応容器内に供給される。
本発明において、反応容器の外周を一周覆う形状を有する高周波電力導入手段103により高周波電力を反応容器内に導入することを特徴としている。
図12及び図13に従来例を示す。図12は12本の棒状の高周波電力導入手段1203を円筒状基体1202に対して対称に配置し、図13は6本の棒状の高周波電力導入手段1303を円筒状基体1303に対して対称に配置した装置形態である。従来例に示すような棒状の電極の場合、円筒状基体1202,(1303)に対して対称的に配置しても反応容器側壁1201,(1301)の周方向でプラズマを均一に発生させることが難しい場合があり、その結果、プラズマが局所的に弱い場所で球状突起が増加する場合があった。
ところが、図1のように高周波電力導入手段103を反応容器側壁101の外周を一周覆う形状にすることにより、反応容器の周方向におけるプラズマの均一性が向上するため、球状突起数を減少させることが可能となる。
又、図2に示すように高周波電力導入手段203への高周波電力の印加点213を増加させることで、高周波電力導入手段上に発生する定在波の落ち込みを減少させることが可能となる。これにより、反応容器側壁201の周方向におけるプラズマの均一性を更に向上させることが可能となる。図3に示すように、前記高周波電力の印加点313の数は多くなるほど上記効果は得られるが、装置構成上及び円筒状基体302上に形成される堆積膜の均一性の点から、前記印加点313は円筒状基体302に対して対称となるように設けることが好ましい。
更に、図6に示すように反応容器601の垂直方向におけるプラズマの均一性向上のために、円筒状基体602の長手方向に複数の高周波電力導入手段603を設けることがより好ましい。
更に、高周波電力導入手段に高周波電力を印加した際に発生してしまう定在波による反応容器内のプラズマの不均一性を防ぐためには、2つ以上の異なる周波数の高周波電力を印加することも又効果的である。この方法としては、図5に示すように周波数の異なる高周波電力をマッチングボックス515を介して各々異なる印加点513にて高周波電力導入手段503へと印加しても、図4に示すように予め複数の互いに異なる周波数の高周波電力導入手段416、417からの高周波電力を合成した高周波電力を高周波電力導入手段403へと印加しても良い。
高周波電力導入手段の形状は、高周波電力の表皮効果を考慮して、表面積をできるだけ大きい形状にするのが好ましく、又、整合の取り易さや加工のし易さ等を考慮すると、円筒状が最適である。
又、高周波電力導入手段に用いる材質は、導電性が高いものであれば特に制限はないが、インタグタンスをできるだけ小さくするという目的から用いる材質は、透磁率の小さいものが好ましい。具体的には、銅、アルミ、銀、金、白金、鉛、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン等の金属、及びこれらの合金が好ましい。
本発明において、円筒状基体102の配置円内に円筒状部材を設置することを特徴としている。
この円筒状部材の材質に関しては特に制限はないが、導電性材料を用いる場合、アルミニウム、鉄、ステンレス、金、銀、銅、ニッケル、クロム、チタン等、金属材料は加工が容易で、耐久性が高く、又、再利用の利便性等の点でも好ましい。又、これらの材料中の2種以上から成る複合材料等も好適に用いることができる。
円筒状部材の材質として導電性部材を用いる場合には、円筒状部材を電気的に接地する方が好ましい。これは、接地することで、高周波電力導入手段に対して類似的な対向電極的な作用をしているものと推測される。
しかし、円筒状部材は、例えば円筒状部材用の高周波電源を用意したり、1台の高周波電源から高周波電力導入手段と円筒状部材に出力を分岐して整合を取ったりといったコストや手間を掛けることなく、接地するだけで充分に本発明の効果、即ち円筒状基体上における堆積速度を低下させることなく、球状突起の発生を抑制する効果を得ることができる。このため、円筒状部材の設置には、堆積膜形成装置自体のコスト、更には電子写真感光体の製造コストの増大を殆ど招くことがない。
又、円筒状部材104の材質に誘電体材料を用いる場合には、セラミックス材料が好ましく、具体的には、アルミナ、ジルコニア、ムライト、コージュライト、炭化珪素、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化珪素等が挙げられ、これらの材料中の2種以上から成る複合材料等も好適に用いることができる。これらの中でも特に、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミは誘電正接や絶縁抵抗等の電気特性に優れ、高周波電力の吸収が少ないことからより好ましい。これらの材質で作られた円筒状部材は、円筒状基体で囲まれる空間内の放電空間を占有するため、堆積膜の均一性の向上と突起を低減するという効果を得ることができる。又、上記誘電体材料は、堆積膜との密着性が高いため、誘電体材料を用いた円筒状部材による球状突起の増加という弊害は殆ど見られない。
又、円筒状部材を円筒状基体に対し平行、又は/及び円筒状基体の配置円の中央に設置することで、円筒状基体と円筒状部材との間隔がより一定となるため、各円筒状基体に対して同等の効果が得られることから、各々の円筒状基体上に形成される堆積膜の均一性が向上する。
更に、円筒状部材を冷却することにより、突起数の低減に大きな改善効果が確認された。これは、反応空間の中央部に位置する円筒状部材を冷却することで、1つは円筒状部材からの膜剥がれの低減によるダストの減少効果と、もう1つは円筒状基体と円筒状部材の温度勾配が大きくなり、反応容器内に漂うダストが円筒状部材側に引き付けられる効果によるものであると本発明者等は考えている。
又、円筒状部材を冷却することで、プラズマ処理中の円筒状基体の温度も低下する。このため、より高い高周波電力を高周波電力導入手段に印加することが可能となるため、より良質な堆積膜の形成が可能となる。更に、反応容器内に導入される高周波電力が高いほど、円筒状基体付近のプラズマ電位が高くなるので、ダストがつきにくい状態が可能になるため、更なる球状突起数の低減が可能となる。
円筒状基体の温度上昇の問題は、高パワー導入や堆積速度の向上の際に生じる問題であり、円筒状部材の冷却が円筒状部材の温度上昇を抑え、プラズマ処理条件のラチチュードを広げる効果がある。
円筒状部材の内部は、冷却媒体が循環できるように構成されている。冷却方法としては、水冷、空冷等が必要に応じて用いることができる。又、円筒状部材の温度を特に制御したい場合には、温度制御された冷却媒体を使用することもできる。
本発明において、堆積膜形成装置の原料ガス導入手段に関しては特に制限はなく、成膜空間内に均一にガスを導入可能であればどのような形態であっても構わない。
本発明において、高周波電力の周波数が50〜450MHzの範囲において、画像欠陥の低減効果が特に高くなる。これは、50MHzよりも低い周波数領域においては、プラズマが安定して生成可能な圧力が急激に高まることに起因していると思われる。本発明者等の検討によれば、例えば周波数が13.56MHzの場合には、プラズマが安定して生成可能な圧力は、周波数が50MHz以上の場合と比べ約1桁から半桁高いことが確認されている。このような高い圧力においては、成膜空間中においてポリシラン等のパーティクルが生じ易く、このパーティクルが堆積膜中に取り込まれると球状突起を発生させ易くなる。本発明において、高周波電力の周波数を50MHz以上とすることにより、プラズマ生成圧力を充分低くすることができるため、パーティクルの発生確率は激減し、円筒状基体102全周に亘って良好な堆積膜が形成されるものと考えられる。
又、450MHzよりも高い周波数領域においては、プラズマの均一性の低下により450MHz以下の場合と比べて膜特性の均一性に差が生じてしまう。このような膜特性の均一性に差ができると、同時に膜の応力にも差が生じ、その境界付近で膜剥がれが生じ易くなる。このため、画像欠陥が悪化し易い。周波数が450MHzよりも高い周波数領域においては、電力導入手段近傍での電力の吸収が大きく、ここで電子の生成が最も頻繁になされるため、プラズマ不均一を生じ易く、堆積膜の特性むらに繋がり易い。
450MHz以下の周波数においては、電力導入手段近傍での極端な電力吸収が生じにくいため、プラズマ均一性、更には膜特性の均一性が高くなる。
本発明で使用される反応容器側壁の誘電体部材の材料としては、セラミックス材料が好ましく、具体的には、アルミナ、ジルコニア、ムライト、コージュライト、炭化珪素、チッ化ホウ素、チッ化アルミ、チッ化珪素等の少なくとも1つ以上を含む材料によって構成されていると堆積膜の密着性が高く、突起発生防止のために有効であるので好ましい。これらの中でも、アルミナ、チッ化ホウ素、チッ化アルミは誘電正接や絶縁抵抗等の電気特性に優れ、高周波電力の吸収が少ないことからより好ましい。
図1の堆積膜形成装置を用いた堆積膜の形成は、例えば概略以下のようにして行われる。
先ず、基体支持体109により保持された円筒状基体102を反応容器内に設置し、不図示の排気装置により排気孔111を通して反応容器内を排気する。続いて、発熱体110により円筒状基体102を所定の温度に加熱・制御する。
円筒状基体102が所定の温度となったところで、原料ガス導入手段105を介して、原料ガスを反応容器内に導入する。原料ガスの流量が設定流量となり、又、反応容器内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源116からマッチングボックス115を介して高周波電力導入手段103へ所定の高周波電力を供給する。供給された高周波電力によって、反応容器内にグロー放電が生起し、原料ガスは励起・解離して円筒状基体102上に堆積膜が形成される。
所望の膜厚の形成が行なわれた後、高周波電力の供給を止め、続いて原料ガスの供給を停止して堆積膜の形成を終える。多層構造の堆積膜を形成する場合には、同様の操作を複数回繰り返す。この場合、各層間においては、上述したように1つの層の形成が終了した時点で一旦放電を完全に停止し、次層のガス流量、圧力に設定が変更された後、再度放電を生起して次層の形成を行っても良く、或は1つの層の形成終了後一定時間でガス流量、圧力、高周波電力を次層の設定値に徐々に変化させることにより連続的に複数層を形成しても良い。又、各層の間で一旦、反応容器内の残留ガスを充分真空引きすることで、層と層の間で異なるガス種を使う場合の汚染の心配がなくなるため好ましい。
堆積膜の形成中、必要に応じて円筒状基体102を回転機構により所定の速度で回転させても良い。
本発明を用いることにより、例えば図9に示すような層構成のa−Si系電子写真感光体の形成が可能である。
図9(a)に示す電子写真用感光体は、円筒状基体901の上に、水素原子又はハロゲン原子を構成要素として含むアモルファスシリコン(以下「a−Si:H,X」とも表記する)を有する光導電性を有する光導電層902が設けられている。
図9(b)に示す電子写真用感光体は、円筒状基体901の上に、a−Si:H,Xから成り、光導電性を有する光導電層902と、アモルファスシリコン系又はアモルファス炭素系表面層903が設けられて構成されている。
図9(c)に示す電子写真用感光体は、円筒状基体901の上に、アモルファスシリコン系電荷注入阻止層904と、a−Si:H,Xからなり光導電性を有する光導電層902と、アモルファスシリコン系又はアモルファス炭素系表面層903が設けられて構成されている。
図9(d)に示す電子写真用感光体は、円筒状基体901の上に、光導電層902が設けられている。この光導電層はa−Si:H,Xから成る電荷発生層905及び電荷輸送層906とから成り、その上にアモルファスシリコン系又はアモルファス炭素系表面層903が設けられている。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
図1に示す堆積膜形成装置を用いて、円筒状基体(直径80mm、長さ358mmの鏡面加工を施した円筒状のアルミニウムシリンダー)上に下記表1に示す条件で、阻止層、光導電層、表面層の順に成膜を行い、電子写真感光体を作製した。このとき、周波数が105MHzである高周波電力を出力可能な高周波電源を用いた。高周波電力導入手段103は、厚さが3mm、反応容器の円筒軸方向の長さが反応容器の円筒軸方向の長さの0. 1倍であるアルミニウム製の円筒形状で、反応容器の円筒軸方向中央位置に反応容器の外周にできるだけ接触させて設置した。又、円筒状部材(直径80mm、長さ420mm)は円筒状基体の配置円の中心に設置し、材質をアルミニウム、端部を閉口させ、電気的に接地させた。更に、電子写真感光体作製時に用いる各ガス種は各層内で一定の流量とした。
Figure 2006009042
上記条件で作製した電子写真感光体の突起数、突起数差、膜厚ムラ、膜厚差、帯電能ムラ、帯電能差及び感度ムラを下記の条件により測定した。
[突起数]
突起数の測定は、30mm×251mmの範囲内にある長径10μm以上の球状突起の数を測定した。測定場所は電子写真感光体の中央を0mm、垂直方向上を+、垂直方向下を−とし、電子写真感光体の長手方向+130mm、+90mm、0mm、−90mm、−130mmの位置を中心とし、幅30mmを周方向で一周(251mm)にある計5点の球状突起の合計を求めた。同様に6本の電子写真感光体を測定し、6本の球状突起数の平均を球状突起突起数とした。従って、突起数が少ないほど良好であることを示す。
[突起数差]
上記球状突起数で測定した6本の電子写真感光体における0mm位置での球状突起数の最大値と最小値の差を求め、これを6本の電子写真感光体間の球状突起数差とした。従って、球状突起数差が小さいほど、6本の電子写真感光体間での差が少ないことを示す。
[膜厚ムラ]
膜厚ムラの測定は、電子写真感光体の長手方向において中心を0mmとし、0mmから上下20mm間隔で計17点の膜厚を測定し、測定値の最大値と最小値の差を求め、6本の電子写真感光体の平均を膜厚ムラとした。従って、膜厚ムラが小さいほど良好であることを示す。
[膜厚差]
上記膜厚ムラで測定した6本の電子写真感光体における0mm位置での膜厚の最大値と最小値の差を求め、これを6本の電子写真感光体間の膜厚差とした。従って、膜厚差が小さいほど、6本の電子写真感光体間での差が少ないことを示す。
[帯電能ムラ]
帯電能ムラの測定は、作製した電子写真感光体を電子写真装置(評価用に改造したキヤノン製iR5000)にセットして電位特性の評価を行った。その際、プロセススピード265mm/sec、前露光量(波長660nmのLED)4lux・sec、帯電器の電流値1000μAの条件にて電子写真装置の現像器位置にセットした表面電位計(TREK社のModel 344)の電位センサーにより像露光(波長655nmの半導体レーザー)を照射しない状態での感光体の表面電位を測定し、それを帯電能とした。測定場所は、膜厚測定と同じ電子写真感光体の長手方向+130mm、+90mm、0mm、−90mm、−130mmの位置で帯電能を測定し、測定値の最大値と最小値の差を求め、6本の電子写真感光体の平均を帯電能ムラとした。従って、帯電能ムラが小さいほど良好であることを示す。
[帯電能差]
上記帯電能ムラで測定した6本の電子写真感光体における0mm位置での帯電能の最大値と最小値の差を求め、これを6本の電子写真感光体間の帯電能差とした。従って、帯電能差が小さいほど、6本の電子写真感光体間での差が少ないことを示す。
[感度ムラ]
感度ムラの測定は、帯電能ムラ測定と同じ条件で表面電位が400V(暗電位)になるように帯電器の電流値を調整した後、像露光(波長655nmの半導体レーザー)を照射し、像露光光源の光量を調整して、表面電位が50V(明電位)となるようにし、そのときの露光量を感度とした。測定場所は膜厚測定と同じ電子写真感光体の長手方向+130mm、+90mm、0mm、−90mm、−130mmの位置で感度を測定し、測定値の最大値と最小値の差を求め、6本の電子写真感光体の平均を感度ムラとした。従って、この長手方向の感度ムラが小さいほど良好であることを示す。
<比較例1>
図10に示す堆積膜形成装置を用いて、上記表1に示す条件により電子写真感光体を作製した。
<比較例2>
図11に示す堆積膜形成装置を用いて、上記表1に示す条件により電子写真感光体を作製した。
実施例1、比較例1及び比較例2によって得られた球状突起数、球状突起数差、膜厚ムラ、膜厚差、帯電能ムラ、帯電能差及び感度ムラについて、比較例1の各測定値を100として相対評価を行った。この結果を表2に示す。
Figure 2006009042
表2より、図10のような円筒状基体の配置円の中心に円筒状部材を配置し、棒状の高周波電力導入手段を用いた装置形態及び図11のような円筒状基体の配置円内に円筒状部材を配置せず、反応容器の外周を覆うような円筒状の高周波電力導入手段を用いた装置形態よりも、図1のような円筒状基体の配置円内に円筒状部材を設置し、反応容器の外周を覆うような円筒状の高周波電力導入手段を用いた本発明の装置形態を用いて電子写真感光体を作成する方が、球状突起数、電子写真特性及び再現性の優れた電子写真感光体を作成することが可能であった。
このような差が生じた原因として、以下のように考えられる。図10のように、円筒状基体の配置円内に円筒状基体を配置することにより、円筒状部材が擬似的な対向電極として作用するため、従来例に示す装置形態よりも反応容器水平断面方向の高周波電力が均一に導入することが可能となる。その結果、従来例の装置形態で生じたプラズマの強い範囲と弱い範囲の両方に接するキャップ、基板支持体からの膜剥がれを抑制することが可能となるため、球状突起数を減少させることが可能となる。
しかし、棒状の高周波電力導入手段を用いたことにより、反応容器周方向での十分なプラズマの均一性が得られにくいため、局所的にプラズマの弱い場所が生じ、その結果、突起数の増加及び6本間の再現性が低下してしまうと考えられる。又、図11のように、反応容器の外周を覆う円筒状の高周波電力導入手段を用いることにより、反応容器周方向でのプラズマの均一性が向上するため棒状の高周波電力導入手段を用いるよりも6本間の再現性が向上する。
しかし、円筒状部材を配置していないことにより、キャップ及び基板支持体からの膜剥がれが生じるため突起数が増加し、更に、反応容器内でのプラズマ分布の均一性が得られないため、膜厚ムラ及び特性ムラが悪化し易くなると考えられる。
一方、図1に示す本発明の実施形態では、円筒状基体の配置円内に円筒状部材を配置し、更に反応容器の外周を覆う円筒状の高周波電力導入手段を用いたことにより、円筒状基体の配置円内に設置された円筒状部材が擬似的な対向電極としての作用をするために、反応容器全体に高周波電力が従来以上に均一に導入された結果、各々の電子写真感光体における膜厚及び特性の均一性が向上し、又、プラズマの均一性の向上によりキャップ及び基板支持体等のプラズマが接する場所でも膜剥がれも減少するため、突起数も減少したと考えられる。同時に、高周波電力導入手段を反応容器の外周を覆う形状にしたことにより、反応容器の周方向でのプラズマの均一性が向上したことから、更に突起の低減、電子写真感光体特性の向上、6本間の再現性が向上したものと考えられる。
図2に示す堆積膜形成装置を用いて、実施例1と同様に上記表1に示す条件により電子写真感光体を作製した。但し、高周波電力導入手段への高周波電力の導入は3箇所の印加点より行い、各々の印加点は120°間隔となるようにし、印加点が円筒状基体の間になるようにした。
図3に示す堆積膜形成装置を用いて、実施例1と同様に上記表1に示す条件により電子写真感光体を作製した。但し、高周波電力導入手段への高周波電力の導入は6箇所の印加点より行い、各々の印加点は60°間隔となるようにし、印加点が円筒状基体の間になるようにした。
図4に示す堆積膜形成装置を用いて、下記表3の条件により電子写真感光体を作製した。但し、図4は、図3の高周波電源の数を2台とし、2つの異なる周波数の高周波電力を重畳した後に高周波電力導入手段へと印加したする堆積膜形成装置である。このとき、第1高周波電源は105MHz、第2高周波電源は60MHzの周波数の高周波電力を出力可能な高周波電源を用いた。
Figure 2006009042
図5に示す堆積膜形成装置を用いて、実施例4と同様に上記表3に示す条件により電子写真感光体を作製した。但し、図5は、図3の高周波電源の数を2台とし、120°間隔の3つの印加点に第1高周波電源は105MHz、120°間隔の別の3つの印加点に第2高周波電源は60MHzの周波数の高周波電力をそれぞれ印加する堆積膜形成装置である。
実施例2〜5によって得られた突起数、突起数差、膜厚ムラ、膜厚差、帯電能ムラ、帯電能差及び感度ムラについて、実施例1の各測定値を100として相対評価を行った。この結果を表4に示す。
Figure 2006009042
表4より、高周波電力導入手段への高周波電力の印加点を増やすことにより、突起数、電子写真感光体特性が向上し、特に6本間でのばらつきが良好となった。更に、2つの異なる周波数の高周波電力を重畳して高周波電力導入手段に印加する、又、2つの異なる周波数の高周波電力をそれぞれ高周波電力導入手段に印加することでも同様に、突起数、電子写真感光体特性が向上し、特に6本間でのばらつきが良好となった。
このような差が生じた原因としては、高周波電力導入手段上に形成される高周波電力による定在波で生じるプラズマの不均一性を高周波電力導入手段への高周波電力の印加点の増加、2つの異なる周波数の高周波電力の重畳、2つの異なる周波数の高周波電力をそれぞれ高周波電力導入手段へ印加することにより改善でき、更に円筒状基体の配置円内に設置された円筒状部材によりプラズマの均一性が向上するため、6本の電子写真感光体間のばらつきが少なく、再現性を向上させることが可能になると考えられる。
図6に示す堆積膜形成装置を用いて、実施例1と同様に上記表1に示す条件により電子写真感光体を作製した。但し、図6は図3の高周波電力導入手段の数を2つとし、この2つの高周波電力導入手段を反応容器の円筒軸方向の長さを3分割した位置に各々設置した堆積膜形成装置である。
図7に示す堆積膜形成装置を用いて、実施例4と同様に上記表3に示す条件により電子写真感光体を作製した。但し、図7は図5の高周波電力導入手段の数を2つにした堆積膜形成装置であり、高周波電力導入手段の設置位置は実施例6と同様にした。
図8に示す堆積膜形成装置を用いて、実施例4と同様に上記表3に示す条件により電子写真感光体を作製した。但し、図8は図7の円筒状部材が冷却機構を有する堆積膜形成装置であり、水により円筒状部材を冷却可能な装置構成とした。
実施例6〜8によって得られた突起数、突起数差、膜厚ムラ、膜厚差、帯電能ムラ、帯電能差及び感度ムラについて、実施例1の各測定値を100として相対評価を行った。この結果を表5に示す。
Figure 2006009042
表5より、高周波電力導入手段の数を増やすことにより、突起数、電子写真感光体特性が向上し、特に電子写真感光体の長手方向における突起数、膜厚ムラ、帯電能ムラ、感度ムラが良好となった。更に、円筒状部材を冷却することにより、良好な電子写真感光体特性を維持したまま、更に突起数が良好となった。
このような差が生じた原因としては、高周波電力導入手段を電子写真手感光体の長手方向に複数設けることにより、反応容器内でのプラズマ分布の均一性が更に向上したため、電子写真感光体特性の長手方向ムラの改善が可能となると考えられる。更に、円筒状部材を冷却することにより、円筒状部材からの膜剥がれが低減することで突起の原因となるダストの発生を抑えるとともに、反応容器内の温度勾配が生じることで円筒状基体へのダストの吸着を抑制することができるために突起数の減少が可能となると考えられる。
本発明の第1の実施形態を示す堆積膜形成装置の概略垂直断面図である。 図1−1の切断線A−A’に沿う概略水平断面図である。 本発明の第2の実施形態を示す堆積膜形成装置の概略水平断面図である。 本発明の第3の実施形態を示す堆積膜形成装置の概略水平断面図である。 本発明の第4の実施形態を示す堆積膜形成装置の概略垂直断面図である。 図4−1の切断線A−A’に沿う概略水平断面図である。 本発明の第5の実施形態を示す堆積膜形成装置の概略垂直断面図である。 図5−1の切断線A−A’に沿う概略水平断面図である。 本発明の第6の実施形態を示す堆積膜形成装置の概略垂直断面図である。 図6−1の切断線A−A’に沿う概略水平断面図である。 本発明の第7の実施形態を示す堆積膜形成装置の概略垂直断面図である 図7−1の切断線A−A’に沿う概略水平断面図である。 本発明の第8の実施形態を示す堆積膜形成装置の概略垂直断面図である 図8−1の切断線A−A’に沿う概略水平断面図である。 本発明により形成可能な電子写真用光受容部材の層構成の一例を示した図である。 比較例1で用いた堆積膜形成装置の概略垂直断面図である。 図10−1の切断線A−A’に沿う概略水平断面図である。 比較例2で用いた堆積膜形成装置の概略垂直断面図である。 図11−1の切断線A−A’に沿う概略水平断面図である。 VHF帯の周波数を用いたVHFプラズマCVD法による従来の堆積膜形成装置の一例を示した模式的な垂直断面図である。 図11−1の切断線A−A’に沿う概略水平断面図である。 第2のVHF帯の周波数を用いたVHFプラズマCVD法による従来の堆積膜形成装置の一例を示した模式的な垂直断面図である。 図13−1の切断線A−A’に沿う概略水平断面図である。
符号の説明
101、201、301、401、501、601、701、801、1001、1101、1201、1301 反応容器側壁
102、202、302、402、502、602、702、802、1002、1102、1202、1303 円筒状基体
103、203、303、403、503、603、703、803、1003、1103、1203、1303 高周波電力導入手段
104、204、304、404、504、604、704、804、1004 円筒状部材
105、205、305、405、505、605、705、805、1105、1305 原料ガス導入手段
106、206、306、406、506、606、706、806、1006、1106、1206、1306 シールド
107、407、507、607、707、807、1007、1107、1207、1307 上蓋
108、408、508、608、708、808、1108、1308 キャップ
109、409、509、609、709、809、1009、1109、1209、1309 基体支持体
110、410、510、610、710、810、1010、1110、1210、1310 ヒーター
111、211、311、411、511、611、711、811、1111、1311 排気孔
112、412、512、612、712、812、1112、1312 駆動機構
113、213、313、413、513、613、713、813、1013、1113、1213、1313 印加点
114、214、314、414、514、614、714、814、1014、1114、1214 ケーブル
115、215、315、415、515、615、715、815、1015、1115、1215、1315 マッチングボックス
116、216、316、416、516、616、716、816、1016、1116、1216、1316 第1高周波電源
417、517、717、817、1317 第2高周波電源
818 冷却機構
900 電子写真用感光体
901 円筒状基体
902 光導電層
903 表面層
904 電荷注入阻止層
905 電荷発生層
906 電荷輸送層
1019、1219 原料ガス供給手段
1020、1220 真空排気手段
1021、1221 コンデンサ
1022、1222 第2シールド
1323 第2高周波電力導入手段

Claims (14)

  1. 少なくとも一部が誘電体材料により構成された減圧可能な反応容器内に複数の円筒状基体を配置し、該反応容器内へ原料ガス導入手段より供給された原料ガスを高周波電力導入手段より導入された高周波電力により分解し、該円筒状基体上に堆積膜を形成するための堆積膜形成装置において、
    前記円筒状基体は同一円周上に等間隔で配置され、前記高周波電力導入手段は前記反応容器の外側に配置され、且つ、該反応容器の外周を一周せしめて覆う形状であり、円筒状基体が配置される配置円内に設置されている円筒状部材を有しており、円筒状部材が接地されていることを特徴とする堆積膜形成装置。
  2. 前記円筒状部材は、前記円筒状基体に対して平行に設置されていることを特徴とする請求項1記載の堆積膜形成装置。
  3. 前記円筒状部材は、前記円筒状基体の配置円中央に設置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の堆積膜形成装置。
  4. 前記円筒状部材は、冷却機構を具備していることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の堆積膜形成装置。
  5. 前記高周波電力導入手段が、前記円筒状基体の長手方向に複数配置されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の堆積膜形成装置。
  6. 前記高周波電力導入手段は、1つの高周波電力導入手段に対して複数の高周波電力印加点を有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の堆積膜形成装置。
  7. 前記高周波電力印加点は、前記円筒状基体の配置に対して対称となるように設けられていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の堆積膜形成装置。
  8. 前記高周波電力導入手段に印加する高周波電力の周波数は、50MHz以上450MHz以下であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の堆積膜形成装置。
  9. 電子写真感光体の製造装置であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の堆積膜形成装置。
  10. 少なくとも一部が誘電体材料により構成された減圧可能な反応容器内に複数の円筒状基体がを配置し、該反応容器内へ原料ガス導入手段より供給された原料ガスを高周波電力導入手段より導入された高周波電力により分解し、該円筒状基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成方法において、
    前記円筒状基体を同一円周上に等間隔で配置し、該円筒状基体が配置される配置円内に設置した円筒状部材を接地し、前記反応容器の外側に配置した、該反応容器の外周を一周せしめて覆う形状の該高周波電力導入手段より導入された高周波電力により前記原料ガスを分解し、前記円筒状基体上に堆積膜を形成することを特徴とする堆積膜形成方法。
  11. 冷却機構により前記円筒状部材を冷却して堆積膜を形成することを特徴とする請求項10記載の堆積膜形成方法。
  12. 前記高周波電力導入手段への高周波電力の印加は、1つの高周波電力導入手段に対して複数の点から印加することを特徴とする請求項10又は11記載の堆積膜形成方法。
  13. 前記高周波電力導入手段への高周波電力の印加は、前記円筒状基体の配置に対して対称となるように印加することを特徴とする請求項10〜12の何れかに記載の堆積膜形成方法。
  14. 前記円筒状基体上に形成される堆積膜は、電子写真感光体の光受容層として使用される堆積膜であることを特徴とする請求項10〜13の何れかに記載の堆積膜形成方法。
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