JP2005015877A - 堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】被処理基体を均一にプラズマ処理することが可能で画像欠陥を低減可能な堆積膜形成装置および堆積膜形成方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一部が誘電体部材で構成された減圧可能な反応容器101と、反応容器101内部に配置された複数の円筒状基体105及びガス供給手段110と、反応容器101の外部に配置された複数の高周波電極102を有し、高周波電極102に高周波電力を印加して反応容器101内にグロー放電を発生させることにより、反応容器101内に導入された原料ガスを分解し、複数の円筒状基体105上に堆積膜を形成する堆積膜形成装置において、反応容器101内部概略中央に円筒状の誘電体部材111を設置したことを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも一部が誘電体部材で構成された減圧可能な反応容器101と、反応容器101内部に配置された複数の円筒状基体105及びガス供給手段110と、反応容器101の外部に配置された複数の高周波電極102を有し、高周波電極102に高周波電力を印加して反応容器101内にグロー放電を発生させることにより、反応容器101内に導入された原料ガスを分解し、複数の円筒状基体105上に堆積膜を形成する堆積膜形成装置において、反応容器101内部概略中央に円筒状の誘電体部材111を設置したことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高周波電力によって生起されたプラズマを用いた堆積膜形成、エッチング等、半導体デバイス、電子写真用感光体、画像入力用ラインセンサー、撮影デバイス、光起電力デバイス等の形成に用いる堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体デバイス、電子写真用感光体、画像入力用ラインセンサー、撮影デバイス、光起電力デバイス、その他各種エレクトロニクス素子、光学素子等の形成に用いる堆積膜形成方法として、プラズマCVD法、イオンプレーティング法、プラズマエッチング法等、高周波電力によって生起されたプラズマを用いた方法が多数知られており、そのための装置も実用に付されている。
【0003】
例えばプラズマCVD法、すなわち、原料ガスを高周波グロー放電により分解し、基板上に薄膜状の堆積膜を形成する方法は好適な堆積膜形成手段として実用化されており、例えば電子写真用水素化アモルファスシリコン(以下、「a−Si:H」と表記する)堆積膜の形成等に利用され、そのための装置も各種提案されている。
【0004】
特に、VHF帯の高周波電力を用いたプラズマCVD(以下、「VHF−PCVD」と略記する。)法が注目を浴びており、このVHF−PCVD法を用いた各種堆積膜の開発が積極的に進められている。
【0005】
これは、VHF−PCVD法では堆積膜の堆積速度が比較的速く、また高品質な堆積膜が得られるため、製品の低コスト化、高品質化を同時に達成し得るものと期待されるためである。
【0006】
そして、複数のa−Si系電子写真用の光受容部材を同時に形成できて、生産性が高い堆積膜形成装置の開発が進められている。
【0007】
例えば、カソード電極を反応容器の外側に複数配置し、カソード電極と対向電極間にある反応容器の一部を誘電体部材とすることで、大面積で均質な高周波放電が容易に達成され、大面積基体へのプラズマ処理を均一且つ高速に行うことが可能になる装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
このような堆積膜形成装置の一例として、図2に模式的な構成図を示す。
【0009】
図2(a)は概略断面図、図2(b)は図2(a)の切断線A−A’に沿う概略断面図である。反応容器201は誘電体部材201(a)と上蓋201(b)から成る。反応容器201の下部には排気配管209が接続され、排気配管209の他端は不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)に接続されている。反応容器201の中心部を取り囲むように、堆積膜の形成される複数の円筒状基体205が互いに平行になるように同一円周上に配置されている。複数の円筒状基体205は基体加熱用ヒーター207を内蔵した基体支持体206によって各々保持されている。そして、反応容器201内にはSiH4、GeH4、H2、CH4、B2H6、PH3、Ar、He等のガスボンベからなる不図示のガス供給装置に接続されたガス供給手段210があり、反応容器201の外には高周波電極202が設置されている。高周波電極202には、高周波電源203がマッチングボックス204と高周波電力分岐手段212を介して接続されている。さらに、円筒状基体205は各々の回転機構208によって、回転可能になっている。
【0010】
【特許文献1】
特開平9−310181号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の堆積膜形成装置により、良好なプラズマ処理や堆積膜の形成がなされるが、製造される製品に対する市場の要求が日々高まっており、より高品質の製品を製造可能な堆積膜形成装置および堆積膜形成方法が求められている。
【0012】
例えば、電子写真感光体の場合には、電子写真装置のプロセススピードの向上、装置の小型化、低価格化等の要求が非常に高く、これらを実現可能な感光体特性、具体的には帯電能、感度等の向上、あるいは生産時の良品率の向上が不可欠となっている。また、近年その普及が目覚しいデジタル電子写真装置やカラー電子写真装置においては、文字原稿のみならず、例えば写真、絵、デザイン画等の画像のコピーも頻繁に行われるため、従来以上に電子写真感光体に前回コピーした画像が次の画像に残留する、いわゆる光メモリーを低減することが求められている。また、この種の電子写真装置は、画像の濃度ムラを低減するために、比較的大きな面積の基体上に膜厚、膜品質共に均一な膜を形成することが求められている。
【0013】
そして、上記従来の堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法を用いた場合には、製造条件によっては処理特性の均一性を広い範囲で得られず、近年要求されている均一性レベルを得ることが難しく電子写真用感光体としては不十分な場合があった。
【0014】
さらに、近年の電子写真装置の高性能化に対応して電子写真装置の高画質化が要求され、それに伴い現像の解像力が向上し、画像欠陥に関しても、個数、大きさ共に従来以上に低減することが必要とされている。特に、急激に需要が広がっているカラー複写機においては、これまで以上に画像欠陥に対する要求が厳しい。ところが、電子写真用感光体のように大面積で比較的厚い堆積膜が要求される製品においては、その感光体の製造工程が長時間に渡るために製造工程中にダストが発生しやすく、且つ、大面積堆積面に付着しやすい。このダスト起因の堆積膜の異常成長は画像欠陥に直結するため、極力なくすことが必要となってきた。従って、膜堆積速度が速く、光学的及び電気的諸特性の要求を満足し、かつ電子写真プロセスによる画像形成時に画像欠陥が少ない堆積膜を高収率で得るためには、改善すべき問題が残存している。
【0015】
上記の感光体の製造工程で発生する堆積膜の異常成長とは次のようなものである。
【0016】
a−Si:H膜は基体表面に数μmオーダーのダストが付着していた場合、成膜中にそのダストを核として異常成長、いわゆる「球状突起」が成長してしまうという性質を持っている。球状突起はダストを起点とした円錐形を逆転させた形をしており、正常堆積部分と球状突起部分の界面では局在準位が非常に多いために低抵抗化し、帯電電荷が界面を通って基体側に抜けてしまう。このため、球状突起のある部分は、画像上ではべた黒画像で白い点となって現れる(反転現像の場合はべた白画像に黒い点となって現れる)。このいわゆる「ポチ」と呼ばれる画像欠陥は年々規格が厳しくなっており、大きさによってはA3用紙に数個存在していても不良として扱われることがある。さらには、カラー複写機に搭載される場合にはさらに規格は厳しくなり、A3用紙に1個存在していても不良となる場合がある。
【0017】
この球状突起は、ダストを起点としているため、使用する基体は成膜前に精密に洗浄され、成膜装置に設置する行程は全てクリーンルームあるいは真空下で作業が行われる。このようにして、成膜開始前に基体上に付着するダストは極力少なくするよう努力されてきており、効果を上げてきた。しかし、球状突起の発生原因は基体上に付着したダストのみではない。すなわち、a−Si感光体を製造する場合、要求される膜厚が数μmから数10μmと非常に厚いため、成膜時間は数時間から数十時間に及び、この間にa−Si膜は基体のみではなく、成膜炉壁や成膜炉内の構造物にも堆積する。これらの炉壁、構造物は基体のように管理された表面や温度を有していないため、場合によっては密着力が弱く、長時間に渡る成膜中に膜剥がれを起こす場合があった。成膜中に僅かでも剥がれが発生すると、それがダストとなり、堆積中の感光体表面に付着し、これが起点となって球状突起の異常成長が発生してしまう。従って、高い歩留まりを維持していくためには、成膜前の基体の管理のみならず、成膜中における成膜炉内の膜剥がれの防止についても慎重な管理が必要とされ、a−Si感光体の製造を難しいものにしていた。
【0018】
本発明は、被処理基体を均一にプラズマ処理することが可能で画像欠陥を低減可能な堆積膜形成装置および堆積膜形成方法を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するため、本発明に係る堆積膜形成装置は、少なくとも一部が誘電体部材で構成された減圧可能な反応容器と、該反応容器内部に配置された複数の円筒状基体及び原料ガス導入手段と、該反応容器の外部に配置された複数の高周波電極を有し、該高周波電極に高周波電力を印加して該反応容器内にグロー放電を発生させることにより、該反応容器内に導入された原料ガスを分解し、該複数の円筒状基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成装置において、該反応容器内部概略中央に円筒状の誘電体部材を設置したことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る堆積膜形成方法は、上述した堆積膜形成装置を用いて、電子写真感光体として用いられる円筒状基体にプラズマ処理を施す。
【0021】
図2のように複数の円筒状基体を同一円周上に等間隔に配置し、高周波電力導入手段を反応容器の外部に設置した堆積膜形成装置においては、円筒状基体の周りの構成が非対称となっており、大雑把に言って、円筒状基体の配置円の内側と外側に分けて考えることができる。
【0022】
例えば、図2のような従来の堆積膜形成装置において、通常、回転しながら成膜している円筒状基体を静止状態にして堆積膜を形成し、円筒状基体の周方向のどこに球状突起が多いかを調べてみると、球状突起数は周方向に均等に発生しているのではなく、円筒状基体の配置円の内側に多く発生していることが分かる。従って、このような形態の堆積膜形成装置において球状突起を減らし、a−Si:H感光体をカラー複写機にも使えるレベルまで画像欠陥を低減するためには、主に、この内部側の球状突起を低減する必要があることが分かる。
【0023】
円筒状基体の配置円の内部側で球状突起が多い理由の詳細は分からないが、堆積膜形成装置の構造を見たとき、円筒状基体が並んだ円周の外側は反応容器の炉壁が面しているのに対して、内部側には炉壁はなく、このような空間の形状の違いが形成される堆積膜の電気的特性や付着した堆積膜の密着性に差を出しているのだろうと考えている。
【0024】
これに対して、本発明によるところの反応容器内部概略中央に円筒状の誘電体部材を設置した堆積膜形成装置において、同様に円筒状基体を静止で堆積膜を形成し、円筒状基体の周方向における電気的特性や球状突起数の分布を調べたところ、内部側の電気的特性が改善されて電気的特性はほぼ均一になり、且つ、内部側で球状突起の発生率が低減し、円筒状基体の周方向で球状突起数はほぼ均一になっていることが判明した。これは、反応容器内部概略中央に設置した円筒状の誘電体部材が円筒状基体の内部側の炉壁に相当する機能を持ち、擬似的ながら内部と外部の構造が対称になったために電気的特性や球状突起の改善効果が得られたものと考えている。
【0025】
本発明の反応容器を構成する誘電体部材及び反応容器内部概略中央に設置される円筒状の誘電体部材の表面は、算術平均粗さ(Ra)が1μm以上20μm以下の範囲であることが好ましい。これは、Raが小さ過ぎると平坦な部分が多くなり、微小な膜剥がれ防止効果が十分な表面積を維持できず、また、Raが大き過ぎるとダストを取り込みやすくなり、これが吐き出された際に球状突起の核になってしまうためであると考えられる。よって、Raは1μm以上20μm以下の範囲であることが好ましい。
【0026】
さらに、反応容器を構成する誘電体部材及び反応容器内部概略中央に設置される円筒状の誘電体部材の表面は、Raを上記の範囲内にして平均傾斜角(θa)が9度以上20度以下の範囲にした場合、或いは、Raを上記の範囲内にして局部山頂の平均間隔(S)が30μm以上100μm以下の範囲にした場合に本発明の効果がより顕著になり、Raを上記の範囲内にしてθa、且つ、Sを上記の範囲内にすると特に本発明の効果が顕著になることが本発明者の実験によって明らかとなった。これは、Raに加えてθa、Sを一定の範囲にすることで部材と堆積膜との接触面積をより最適な範囲にでき、部材に堆積する膜の応力が緩和されやすい状態になって密着性が増したためであると考えている。なお、本発明で用いた表面粗さの測定はJIS B0601−1994に基づき、Surftest SJ−400(株式会社ミツトヨ)を用いカットオフ0.8mm、基準長さ0.8mm、評価長さ4mmとして測定を行った。なお、平均傾斜角(θa)とは図2に示すように測定曲線の局部傾斜の絶対値を合計し、平均した値(Δa)の逆正接(θa=tan−1Δa)で表される。
【0027】
本発明の反応容器を構成する誘電体部材及び反応容器内部概略中央に設置される円筒状の誘電体部材の表面粗さを上記の範囲に制御するためにはは、ブラスト加工を行ったり、溶射材で被覆すれば良い。ブラスト加工や溶射は、コスト面から、あるいは表面粗さの制御性の高さや、コーティング対象物の大きさ・形状の制限を受けにくいため好ましい。溶射の具体的手段に特に制限はないが、例えばプラズマ溶射、減圧プラズマ溶射、高速フレーム溶射、低温溶射などのコーティング法により表面をコーティングしてもよい。具体的な溶射材料としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、二酸化チタン、鉄等が挙げられる。円筒状部材の表面を被覆する溶射材の厚さは特に制限はないが、耐久性および均一性を増すため、また、製造コストの面から1μm〜1mmが好ましく、10μm〜500μmがより好ましい。
【0028】
本発明においては高周波電力の周波数が50〜450MHzの範囲において、画像欠陥の低減効果が特に高くなる。
【0029】
これは、50MHzよりも低い周波数領域においては、プラズマが安定して生成可能な圧力が急激に高まることに起因していると思われる。本発明者らの検討によれば、例えば周波数が13.56MHzの場合には、プラズマが安定して生成可能な圧力は、周波数が50MHz以上の場合と比べ約1桁から半桁高いことが確認されている。このような高い圧力においては、成膜空間中においてポリシラン等のパーティクルが生じ易く、このパーティクルが堆積膜中に取り込まれると球状突起を発生させやすくなる。本発明において、高周波電力の周波数を50MHz以上とすることにより、プラズマ生成圧力を充分低くすることができるため、パーティクルの発生確率は激減し、円筒状基体全周にわたって良好な堆積膜が形成されるものと考えられる。
【0030】
また、450MHzよりも高い周波数領域においては、プラズマの均一性の差により450MHz以下の場合と比べて膜特性の均一性に差が生じてしまう。このような膜特性の均一性に差ができると、同時に膜の応力にも差が生じ、その境界付近で膜剥がれが生じやすくなる。このため、画像欠陥が悪化しやすい。周波数が450MHzよりも高い周波数領域においては、電力導入手段近傍での電力の吸収が大きく、ここで電子の生成が最も頻繁に為されるため、プラズマ不均一を生じ易く、堆積膜の特性むらにつながりやすい。450MHz以下の周波数においては、電力導入手段近傍での極端な電力吸収が生じにくいため、プラズマ均一性、さらには膜特性の均一性が高くなる。
【0031】
本発明の反応容器を構成する誘電体部材及び該応容器内部概略中央に設置される円筒状の誘電体部材はアルミナ、ジルコニア、ムライト、コージュライト、炭化珪素、チッ化ホウ素、チッ化アルミ、チッ化珪素等が挙げられ、これらの少なくとも一つを含む材料によって構成されていると堆積膜の密着性が高く、球状突起発生防止のために有効であるので好ましい。これらの中でも、アルミナ、チッ化ホウ素、チッ化アルミは誘電正接や絶縁抵抗等の電気特性にすぐれ、高周波電力の吸収が少ないことからより好ましい。
【0032】
そして、本発明の堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法は、例えば、円筒状基体の面内方向において、膜厚、膜質共に極めて均一な堆積膜を高速で形成し得るプラズマCVDによる堆積膜形成装置として適用するのに好適である。すなわち、プラズマの均一性ならびに長時間の安定性を向上させ、膜厚や膜質の均一性に優れ、且つ、膜質も良好な堆積膜を再現性良く形成し、欠陥の発生を大幅に低減して歩留を飛躍的に向上させた堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法であり、アモルファスシリコン電子写真用感光体のように多層構成で数十μmの厚さの堆積膜形成を行う際の形成装置及び形成方法に好適に適用され得るものである。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法について詳細に説明する。
【0034】
図1は本発明の堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法で、複数の電子写真用光受容部材を同時に形成できる生産性の極めて高い装置の一例を模式的に示したものである。
【0035】
図1(a)は概略断面図、図1(b)は図1(a)の切断線A−A’に沿う概略断面図である。反応容器101は101(a)と101(b)からなり、101(a)は誘電体部材で構成されており、反応容器101の下部には排気配管109が接続され、排気配管109の他端は不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)に接続されている。反応容器101の中心部を取り囲むように、堆積膜の形成される6本の円筒状基体105が互いに平行になるように同一円周上に配置されている。6本の円筒状基体105は基体加熱用ヒーター107を内蔵した基体支持体106によって各々保持されている。そして、反応容器101内には概略中央に円筒状の誘電体部材111、SiH4、GeH4、H2、CH4、B2H6、PH3、Ar、He等のガスボンベからなる不図示のガス供給装置に接続されたガス供給手段110があり、反応容器101の外には高周波電源103が接続されたマッチングボックス104を通して高周波電力分岐手段112に接続されている高周波電極102が設置されている。さらに、円筒状基体105は各々の回転機構108によって、回転可能なようになっている。
【0036】
基体加熱用ヒーター107は真空使用である発熱体であればよく、具体的にはシース状ヒーター、板状ヒーター、セラミックヒーター、カーボンヒーター等の電気抵抗発熱体、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等の熱放射ランプ発熱体、液体、気体等を温媒とし熱交換手段による発熱体等が挙げられる。基体加熱用ヒーター107の表面材料としてはステンレス、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属類、セラミック、耐熱性高分子樹脂等を使用することができる。
【0037】
反応容器101は少なくとも一部が誘電体部材で構成された減圧可能な反応容器であればよく、例えば図1の場合では101(a)は誘電体部材、101(b)は金属で構成されている。
【0038】
本発明の反応容器を構成する誘電体部材101(a)及び反応容器内部概略中央に設置される円筒状の誘電体部材111の表面は、球状突起低減効果を増すためには算術平均粗さ(Ra)が1μm以上20μm以下の範囲であることが好ましい。さらに、Raを上記の範囲内にして平均傾斜角(θa)が9度以上20度以下の範囲にした場合、或いは、Raを上記の範囲内にして局部山頂の平均間隔(S)が30μm以上100μm以下の範囲にした場合に画像欠陥改善効果がより顕著になり、Raを上記の範囲内にしてθa、且つ、Sを上記の範囲内にすると特に画像欠陥改善効果が顕著になる。
【0039】
また、反応容器101の誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111の材料としては、セラミックス材料が好ましく、具体的には、アルミナ、ジルコニア、ムライト、コージュライト、炭化珪素、チッ化ホウ素、チッ化アルミ、チッ化珪素等が挙げられ、これらの少なくとも一つを含む材料によって構成されていると堆積膜の密着性が高く、球状突起発生防止のために有効であるので好ましい。これらの中でも、アルミナ、チッ化ホウ素、チッ化アルミは誘電正接や絶縁抵抗等の電気特性にすぐれ、高周波電力の吸収が少ないことからより好ましい。また、加工の容易さから電子写真用感光体を作製する際には、形状は円筒形状が好ましいが、必要に応じて楕円形、多角形形状を用いても良く、作製する部材に応じて形状を選択すれば良い。
【0040】
反応容器101の金属101(b)の材質としては銅、アルミニウム、金、銀、白金、鉛、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン、ステンレスなどは熱伝導が良いので好適である。これらの材料中の2種以上からなる複合材料なども好適に用いられる。
【0041】
円筒状基体105は、使用目的に応じた材質を有するものであれば良い。材質においては銅、アルミニウム、金、銀、白金、鉛、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン、ステンレスは電気伝導が良好のため好適である。さらに、これらの材料中の2種以上からなる複合材料も耐熱性が向上するために望ましい。
【0042】
高周波電極102及び高周波電力分岐手段112の材質としては銅、アルミニウム、金、銀、白金、鉛、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン、ステンレスなどは熱伝導が良く、電気伝導も良いので好適である。これらの材料中の2種以上からなる複合材料なども好適に用いられる。また、加工の容易さから電子写真用感光体を作製する際には、形状は円筒形状が好ましいが、必要に応じて楕円形、多角形形状を用いても良く、作製する部材に応じて形状を選択すれば良い。
【0043】
使用される高周波電源103の発振周波数は、50〜450MHzの範囲において、画像欠陥の低減効果が特に高くなる。
【0044】
これは、50MHzよりも低い周波数領域においては、プラズマが安定して生成可能な圧力が急激に高まることに起因していると思われる。本発明者らの検討によれば、例えば周波数が13.56MHzの場合には、プラズマが安定して生成可能な圧力は、周波数が50MHz以上の場合と比べ約1桁から半桁高いことが確認されている。このような高い圧力においては、成膜空間中においてポリシラン等のパーティクルが生じ易く、このパーティクルが堆積膜中に取り込まれると球状突起を発生させやすくなる。本発明において、高周波電力の周波数を50MHz以上とすることにより、プラズマ生成圧力を充分低くすることができるため、パーティクルの発生確率は激減し、円筒状基体全周にわたって良好な堆積膜が形成されるものと考えられる。
【0045】
また、450MHzよりも高い周波数領域においては、プラズマの均一性の差により450MHz以下の場合と比べて膜特性の均一性に差が生じてしまう。このような膜特性の均一性に差ができると、同時に膜の応力にも差が生じ、その境界付近で膜剥がれが生じやすくなる。このため、画像欠陥が悪化しやすい。周波数が450MHzよりも高い周波数領域においては、電力導入手段近傍での電力の吸収が大きく、ここで電子の生成が最も頻繁に為されるため、プラズマ不均一を生じ易く、堆積膜の特性むらにつながりやすい。450MHz以下の周波数においては、電力導入手段近傍での極端な電力吸収が生じにくいため、プラズマ均一性、さらには膜特性の均一性が高くなる。また、出力は、装置に適した電力を発生することが出来ればいかなる出力のものでも好適に使用出来る。さらに、高周波電源の出力変動率には特に制限は無い。
【0046】
使用されるマッチングボックス104は高周波電源と負荷の整合を取ることができるものであればいかなる構成のものでも好適に使用出来る。また、整合を取る方法としては、自動的に調整されるものが製造時の煩雑さを避けるために好適であるが、手動で調整されるものであっても本発明の効果に全く影響は無い。また、マッチングボックスが配置される位置に関しては整合が取れる範囲においてどこに設置してもなんら問題はないが、マッチングボックスから高周波電極間の配線のインダクタンスを出来るだけ小さくするような配置とした方が広い負荷条件で整合を取ることが可能になるため望ましい。
【0047】
図1の装置における堆積膜の形成は次の手順のように行われる。
【0048】
まず、反応容器101内に円筒状基体105を設置し、不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)により反応容器101内を排気する。その後、ガス供給手段110からAr、He等の不活性ガスをそれぞれ反応容器101内に導入し、所定の圧力になるように流量及び排気速度を調整する。続いて、基体加熱用ヒーター107を加熱し、円筒状基体105の温度が所定の温度になるように制御する。
【0049】
その後、SiH4、GeH4、H2、CH4、B2H6、PH3、等のガスをガス供給手段110から反応容器101内に導入して所望のガス成分、圧力になるように流量及び排気速度を調整する。
【0050】
以上のようにして成膜の準備が完了した後、以下の手順で各層の形成を行う。
【0051】
例えば105MHzの高周波電源103を所望の電力に設定して、マッチングボックス104、高周波電力分岐手段112、高周波電極102を通じて反応容器101内に高周波電力を導入し、円筒状基体105をアノードとして作用させてグロー放電を生起させる。この放電エネルギーによって反応容器101内に導入されたガスが分解され、円筒状基体105上に所定の堆積膜が形成されるところとなる。所望の膜厚の形成が行われた後、高周波電力の供給を止め、反応容器101内へのガスの流入を止め、堆積膜の形成を終える。
【0052】
同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の光受容層が形成される。
【0053】
堆積膜形成の均一化を図るために、層形成を行っている間は、円筒状基体105を回転機構108によって所定の速度で回転させることが望ましい。
【0054】
さらに、上述のガス種は各々の層の作製条件にしたがって変更が加えられることは言うまでもない。
【0055】
【実施例】
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。
【0056】
《実施例1》
図1に示した堆積膜形成装置において、アルミニウム製の直径80mmの円筒状基体上に表1に示した条件により円筒状基体側から順に電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなるアモルファスシリコン電子写真用感光体を作製した。この際、発振周波数が105MHzの高周波電源103を用い、反応容器101の誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111はアルミナとした。また、この時の誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111のRa=3.7μm、θa=15度、S=78μmであった。
【0057】
《比較例1》
図2に示した堆積膜形成装置において、アルミニウム製の直径80mmの円筒状基体上に表1に示した条件により円筒状基体側から順に電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなるアモルファスシリコン電子写真用感光体を作製した。この際、高周波電力の発振周波数は105MHzであり、反応容器201の誘電体部材201(a)はアルミナとした。また、この時の誘電体部材201(a)のRa=0.5μm、θa=8度、S=150μmであった。
【0058】
このようにして実施例1、比較例1で作製した電子写真用感光体について、以下のように帯電能、感度、光メモリー、帯電能むら、感度むら、光メモリーむら、画像欠陥の評価を行った。
【0059】
本テスト用に改造したキヤノン製複写機iR5000に作製した電子写真用感光体を設置し、プロセススピード265mm/sec、前露光(波長660nmのLED)光量4lx・s、帯電器の電流値1000μAの条件にて電子写真装置の現像器位置にセットした表面電位計(TREK社Model344)の電位センサーにより像露光(波長655nmの半導体レーザー)を照射しない状態での感光体の表面電位を測定し、それを帯電能とした。
【0060】
そして、上述の条件で表面電位が400V(暗電位)になるように帯電器の電流値を調整した後、像露光を照射し、像露光光源の光量を調整して、表面電位が50V(明電位)となるようにし、そのときの露光量を感度とした。
【0061】
また、上述の条件において暗電位になるように帯電器の電流を調整した後、一旦明電位となるような露光量の像露光を照射し、続けて帯電器の電流値はそのままで像露光を照射せずに測定した表面電位と暗電位との差を光メモリーとした。
【0062】
これらの、帯電能、感度、光メモリー各々については母線方向全域にわたって測定し平均値で評価した。そして、母線方向の帯電能むら、感度むら、光メモリーむらは平均値に対する最大値と最小値の差の比として評価した。
【0063】
さらに、画像欠陥はベタ黒画像(画像密度100%)において得られた画像の同一面積内にある直径0.1mm以上の白ポチの数で評価した。
【0064】
帯電能、感度、光メモリー、帯電能むら、感度むら、光メモリーむらおよび画像欠陥の評価は比較例1を基準にし以下のようにした。
[帯電能、感度、光メモリー、帯電能むら、感度むら、光メモリーむら]
◎◎:20%以上の良化
◎:10%以上20%未満の良化
○:10%未満の良化
△:同等
[画像欠陥]
◎◎◎:80%以上の良化
◎◎:50%以上80%未満の良化
◎:30%以上50%未満の良化
○:30%未満の良化
△:同等
実施例1及び比較例1の評価結果を表2に示す。表2から明らかなように、実施例1ではいずれの項目においても比較例1より改善されており比較例1との間に明確な差が認められた。
【0065】
また、実施例1で作製された電子写真用感光体は、画像特性においてもハーフトーン画像にムラは無く均一で良好な画像が得られることが分かった。さらに文字原稿を複写したところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得られた。そして写真原稿の複写においても原稿に忠実で鮮明な画像を得ることができ極めて良好なものであった。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
《実施例2》
実施例1において、誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111のRa、θa及びSを以下の(a)〜(f)と変化させた以外は実施例1と同様にしてアモルファスシリコン電子写真用感光体を作製した。
(a)Ra=0.5μm、θa=5度、S=20μm
(b)Ra=1μm、θa=5度、S=20μm
(c)Ra=7μm、θa=5度、S=20μm
(d)Ra=14μm、θa=5度、S=20μm
(e)Ra=20μm、θa=5度、S=20μm
(f)Ra=22μm、θa=5度、S=20μm
実施例2で作製した電子写真用感光体を実施例1と同様に評価した結果を表3に示す。表3から明らかなように(a)〜(f)いずれにおいても本発明の効果が得られ、Raを1μm以上20μm以下にした場合に画像欠陥が良化する効果が増すことが分かる。
【0069】
また、実施例2で作製された電子写真用感光体は、画像特性においてもハーフトーン画像にムラは無く均一で良好な画像が得られることが分かった。さらに文字原稿を複写したところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得られた。そして写真原稿の複写においても原稿に忠実で鮮明な画像を得ることができ極めて良好なものであった。
【0070】
【表3】
【0071】
《実施例3》
実施例1において、誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111のRa、θa及びSを以下の(a)〜(f)と変化させた以外は実施例1と同様にしてアモルファスシリコン電子写真用感光体を作製した。
(a)Ra=4μm、θa=5度、S=20μm
(b)Ra=4μm、θa=9度、S=20μm
(c)Ra=4μm、θa=12度、S=20μm
(d)Ra=4μm、θa=17度、S=20μm
(e)Ra=4μm、θa=20度、S=20μm
(f)Ra=4μm、θa=22度、S=20μm
実施例3で作製した電子写真用感光体を実施例1と同様に評価した結果を表4に示す。表4から明らかなように(a)〜(f)いずれにおいても本発明の効果が得られ、θaを9度以上20度以下にした場合に画像欠陥が良化する効果がより顕著になることが分かる。そして、表面粗さとの関係を調べたところ、Raを1μm以上20μm以下にした場合にのみこのような効果が得られることが分かった。即ち、Raを1μm以上20μm以下にしてθaを9度以上20度以下にした場合に画像欠陥が良化する効果がより顕著になることが分かった。
【0072】
また、実施例3作製された電子写真用感光体は、画像特性においてもハーフトーン画像にムラは無く均一で良好な画像が得られることが分かった。さらに文字原稿を複写したところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得られた。そして写真原稿の複写においても原稿に忠実で鮮明な画像を得ることができ極めて良好なものであった。
【0073】
【表4】
【0074】
《実施例4》
実施例1において、誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111のRa、θa及びSを以下の(a)〜(f)と変化させた以外は実施例1と同様にしてアモルファスシリコン電子写真用感光体を作製した。
(a)Ra=4μm、θa=5度、S=20μm
(b)Ra=4μm、θa=5度、S=30μm
(c)Ra=4μm、θa=5度、S=50μm
(d)Ra=4μm、θa=5度、S=80μm
(e)Ra=4μm、θa=5度、S=100μm
(f)Ra=4μm、θa=5度、S=120μm
実施例4で作製した電子写真用感光体を実施例1と同様に評価した結果を表5に示す。表5から明らかなように(a)〜(f)いずれにおいても本発明の効果が得られ、Sを30μm以上100μm以下にした場合に画像欠陥が良化する効果がより顕著になることが分かる。そして、表面粗さとの関係を調べたところ、Raを1μm以上20μm以下にした場合にのみこのような効果が得られることが分かった。即ち、Raを1μm以上20μm以下にしてSを30μm以上100μm以下にした場合に画像欠陥が良化する効果がより顕著になることが分かった。
【0075】
また、実施例4作製された電子写真用感光体は、画像特性においてもハーフトーン画像にムラは無く均一で良好な画像が得られることが分かった。さらに文字原稿を複写したところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得られた。そして写真原稿の複写においても原稿に忠実で鮮明な画像を得ることができ極めて良好なものであった。
【0076】
【表5】
【0077】
《実施例5》
実施例1において、誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111のRa、θa及びSを以下の(a)〜(f)と変化させた以外は実施例1と同様にしてアモルファスシリコン電子写真用感光体を作製した。
(a)Ra=4.3μm、θa=16度、S=20μm
(b)Ra=4.3μm、θa=16度、S=30μm
(c)Ra=4.3μm、θa=16度、S=50μm
(d)Ra=4.3μm、θa=16度、S=80μm
(e)Ra=4.3μm、θa=16度、S=100μm
(f)Ra=4.3μm、θa=16度、S=120μm
実施例5で作製した電子写真用感光体を実施例1と同様に評価した結果を表6に示す。表6から明らかなように(a)〜(f)いずれにおいても本発明の効果が得られ、Sを30μm以上100μm以下にした場合に画像欠陥が良化する効果が特に顕著になることが分かる。そして、表面粗さとの関係を調べたところ、Raを1μm以上20μm以下にし、且つ、θaを9度以上20度以下にした場合にのみこのような効果が得られることが分かった。即ち、Raを1μm以上20μm以下、且つ、θaを9度以上20度以下、且つ、Sを30μm以上100μm以下にした場合に画像欠陥が良化する効果が特に顕著になることが分かった。
【0078】
また、実施例5で作製された電子写真用感光体は、画像特性においてもハーフトーン画像にムラは無く均一で良好な画像が得られることが分かった。さらに文字原稿を複写したところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得られた。そして写真原稿の複写においても原稿に忠実で鮮明な画像を得ることができ極めて良好なものであった。
【0079】
【表6】
【0080】
《実施例6》
実施例1において、高周波電力の発振周波数を以下の(a)〜(f)と変化させた以外は実施例1と同様にしてアモルファスシリコン電子写真用感光体を作製した。
(a)30MHz、(b)50MHz、(c)150MHz、(d)300MHz、
(e)450MHz、(f)500MHz
実施例6で作製した電子写真用感光体を実施例1と同様に評価した結果を表7に示す。表7から明らかなように高周波電力の発振周波数を50〜450MHzの範囲にすることでより本発明の効果が得られることが分かる。
【0081】
また、実施例6で作製された電子写真用感光体は、画像特性においてもハーフトーン画像にムラは無く均一で良好な画像が得られることが分かった。さらに文字原稿を複写したところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得られた。そして写真原稿の複写においても原稿に忠実で鮮明な画像を得ることができ極めて良好なものであった。
【0082】
【表7】
【0083】
《実施例7》
図1に示した堆積膜形成装置において、アルミニウム製の直径80mmの円筒状基体上に表1に示した条件により円筒状基体側から順に電荷注入阻止層、光導電層(第一の層領域、第二の層領域)、表面層からなるアモルファスシリコン電子写真用感光体を作製した。この際、発振周波数が105MHzの高周波電源103に加えて不図示の高周波電源として発振周波数が60MHzのものを用い、反応容器101の誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111は窒化アルミとした。また、この時の誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111のRa=4.5μm、θa=18度、S=90μmであった。
【0084】
実施例7で作製した電子写真用感光体を実施例1と同様に評価したところ実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0085】
また、実施例7で作製された電子写真用感光体は、画像特性においてもハーフトーン画像にムラは無く均一で良好な画像が得られることが分かった。さらに文字原稿を複写したところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得られた。そして写真原稿の複写においても原稿に忠実で鮮明な画像を得ることができ極めて良好なものであった。
【0086】
【表8】
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、被処理基体を均一にプラズマ処理することが可能で画像欠陥を低減可能な堆積膜形成装置および堆積膜形成方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の堆積膜形成方法を用いて光受容部材を形成するのに供される堆積膜形成装置の一例を示す模式図である。
【図2】従来の堆積膜形成方法を用いて光受容部材を形成するのに供される堆積膜形成装置の一例を示す模式図である。
【図3】図3は平均傾斜角(θa)の定義を説明するための模式図である。
【符号の説明】
101 反応容器
102 高周波電極
103 高周波電源
104 マッチングボックス
105 円筒状基体
106 基体支持体
107 基体加熱用ヒーター
108 回転機構
109 排気配管
110 ガス供給手段
111 円筒状の誘電体部材
112 高周波電力分岐手段
【発明の属する技術分野】
本発明は高周波電力によって生起されたプラズマを用いた堆積膜形成、エッチング等、半導体デバイス、電子写真用感光体、画像入力用ラインセンサー、撮影デバイス、光起電力デバイス等の形成に用いる堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体デバイス、電子写真用感光体、画像入力用ラインセンサー、撮影デバイス、光起電力デバイス、その他各種エレクトロニクス素子、光学素子等の形成に用いる堆積膜形成方法として、プラズマCVD法、イオンプレーティング法、プラズマエッチング法等、高周波電力によって生起されたプラズマを用いた方法が多数知られており、そのための装置も実用に付されている。
【0003】
例えばプラズマCVD法、すなわち、原料ガスを高周波グロー放電により分解し、基板上に薄膜状の堆積膜を形成する方法は好適な堆積膜形成手段として実用化されており、例えば電子写真用水素化アモルファスシリコン(以下、「a−Si:H」と表記する)堆積膜の形成等に利用され、そのための装置も各種提案されている。
【0004】
特に、VHF帯の高周波電力を用いたプラズマCVD(以下、「VHF−PCVD」と略記する。)法が注目を浴びており、このVHF−PCVD法を用いた各種堆積膜の開発が積極的に進められている。
【0005】
これは、VHF−PCVD法では堆積膜の堆積速度が比較的速く、また高品質な堆積膜が得られるため、製品の低コスト化、高品質化を同時に達成し得るものと期待されるためである。
【0006】
そして、複数のa−Si系電子写真用の光受容部材を同時に形成できて、生産性が高い堆積膜形成装置の開発が進められている。
【0007】
例えば、カソード電極を反応容器の外側に複数配置し、カソード電極と対向電極間にある反応容器の一部を誘電体部材とすることで、大面積で均質な高周波放電が容易に達成され、大面積基体へのプラズマ処理を均一且つ高速に行うことが可能になる装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
このような堆積膜形成装置の一例として、図2に模式的な構成図を示す。
【0009】
図2(a)は概略断面図、図2(b)は図2(a)の切断線A−A’に沿う概略断面図である。反応容器201は誘電体部材201(a)と上蓋201(b)から成る。反応容器201の下部には排気配管209が接続され、排気配管209の他端は不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)に接続されている。反応容器201の中心部を取り囲むように、堆積膜の形成される複数の円筒状基体205が互いに平行になるように同一円周上に配置されている。複数の円筒状基体205は基体加熱用ヒーター207を内蔵した基体支持体206によって各々保持されている。そして、反応容器201内にはSiH4、GeH4、H2、CH4、B2H6、PH3、Ar、He等のガスボンベからなる不図示のガス供給装置に接続されたガス供給手段210があり、反応容器201の外には高周波電極202が設置されている。高周波電極202には、高周波電源203がマッチングボックス204と高周波電力分岐手段212を介して接続されている。さらに、円筒状基体205は各々の回転機構208によって、回転可能になっている。
【0010】
【特許文献1】
特開平9−310181号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の堆積膜形成装置により、良好なプラズマ処理や堆積膜の形成がなされるが、製造される製品に対する市場の要求が日々高まっており、より高品質の製品を製造可能な堆積膜形成装置および堆積膜形成方法が求められている。
【0012】
例えば、電子写真感光体の場合には、電子写真装置のプロセススピードの向上、装置の小型化、低価格化等の要求が非常に高く、これらを実現可能な感光体特性、具体的には帯電能、感度等の向上、あるいは生産時の良品率の向上が不可欠となっている。また、近年その普及が目覚しいデジタル電子写真装置やカラー電子写真装置においては、文字原稿のみならず、例えば写真、絵、デザイン画等の画像のコピーも頻繁に行われるため、従来以上に電子写真感光体に前回コピーした画像が次の画像に残留する、いわゆる光メモリーを低減することが求められている。また、この種の電子写真装置は、画像の濃度ムラを低減するために、比較的大きな面積の基体上に膜厚、膜品質共に均一な膜を形成することが求められている。
【0013】
そして、上記従来の堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法を用いた場合には、製造条件によっては処理特性の均一性を広い範囲で得られず、近年要求されている均一性レベルを得ることが難しく電子写真用感光体としては不十分な場合があった。
【0014】
さらに、近年の電子写真装置の高性能化に対応して電子写真装置の高画質化が要求され、それに伴い現像の解像力が向上し、画像欠陥に関しても、個数、大きさ共に従来以上に低減することが必要とされている。特に、急激に需要が広がっているカラー複写機においては、これまで以上に画像欠陥に対する要求が厳しい。ところが、電子写真用感光体のように大面積で比較的厚い堆積膜が要求される製品においては、その感光体の製造工程が長時間に渡るために製造工程中にダストが発生しやすく、且つ、大面積堆積面に付着しやすい。このダスト起因の堆積膜の異常成長は画像欠陥に直結するため、極力なくすことが必要となってきた。従って、膜堆積速度が速く、光学的及び電気的諸特性の要求を満足し、かつ電子写真プロセスによる画像形成時に画像欠陥が少ない堆積膜を高収率で得るためには、改善すべき問題が残存している。
【0015】
上記の感光体の製造工程で発生する堆積膜の異常成長とは次のようなものである。
【0016】
a−Si:H膜は基体表面に数μmオーダーのダストが付着していた場合、成膜中にそのダストを核として異常成長、いわゆる「球状突起」が成長してしまうという性質を持っている。球状突起はダストを起点とした円錐形を逆転させた形をしており、正常堆積部分と球状突起部分の界面では局在準位が非常に多いために低抵抗化し、帯電電荷が界面を通って基体側に抜けてしまう。このため、球状突起のある部分は、画像上ではべた黒画像で白い点となって現れる(反転現像の場合はべた白画像に黒い点となって現れる)。このいわゆる「ポチ」と呼ばれる画像欠陥は年々規格が厳しくなっており、大きさによってはA3用紙に数個存在していても不良として扱われることがある。さらには、カラー複写機に搭載される場合にはさらに規格は厳しくなり、A3用紙に1個存在していても不良となる場合がある。
【0017】
この球状突起は、ダストを起点としているため、使用する基体は成膜前に精密に洗浄され、成膜装置に設置する行程は全てクリーンルームあるいは真空下で作業が行われる。このようにして、成膜開始前に基体上に付着するダストは極力少なくするよう努力されてきており、効果を上げてきた。しかし、球状突起の発生原因は基体上に付着したダストのみではない。すなわち、a−Si感光体を製造する場合、要求される膜厚が数μmから数10μmと非常に厚いため、成膜時間は数時間から数十時間に及び、この間にa−Si膜は基体のみではなく、成膜炉壁や成膜炉内の構造物にも堆積する。これらの炉壁、構造物は基体のように管理された表面や温度を有していないため、場合によっては密着力が弱く、長時間に渡る成膜中に膜剥がれを起こす場合があった。成膜中に僅かでも剥がれが発生すると、それがダストとなり、堆積中の感光体表面に付着し、これが起点となって球状突起の異常成長が発生してしまう。従って、高い歩留まりを維持していくためには、成膜前の基体の管理のみならず、成膜中における成膜炉内の膜剥がれの防止についても慎重な管理が必要とされ、a−Si感光体の製造を難しいものにしていた。
【0018】
本発明は、被処理基体を均一にプラズマ処理することが可能で画像欠陥を低減可能な堆積膜形成装置および堆積膜形成方法を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するため、本発明に係る堆積膜形成装置は、少なくとも一部が誘電体部材で構成された減圧可能な反応容器と、該反応容器内部に配置された複数の円筒状基体及び原料ガス導入手段と、該反応容器の外部に配置された複数の高周波電極を有し、該高周波電極に高周波電力を印加して該反応容器内にグロー放電を発生させることにより、該反応容器内に導入された原料ガスを分解し、該複数の円筒状基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成装置において、該反応容器内部概略中央に円筒状の誘電体部材を設置したことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る堆積膜形成方法は、上述した堆積膜形成装置を用いて、電子写真感光体として用いられる円筒状基体にプラズマ処理を施す。
【0021】
図2のように複数の円筒状基体を同一円周上に等間隔に配置し、高周波電力導入手段を反応容器の外部に設置した堆積膜形成装置においては、円筒状基体の周りの構成が非対称となっており、大雑把に言って、円筒状基体の配置円の内側と外側に分けて考えることができる。
【0022】
例えば、図2のような従来の堆積膜形成装置において、通常、回転しながら成膜している円筒状基体を静止状態にして堆積膜を形成し、円筒状基体の周方向のどこに球状突起が多いかを調べてみると、球状突起数は周方向に均等に発生しているのではなく、円筒状基体の配置円の内側に多く発生していることが分かる。従って、このような形態の堆積膜形成装置において球状突起を減らし、a−Si:H感光体をカラー複写機にも使えるレベルまで画像欠陥を低減するためには、主に、この内部側の球状突起を低減する必要があることが分かる。
【0023】
円筒状基体の配置円の内部側で球状突起が多い理由の詳細は分からないが、堆積膜形成装置の構造を見たとき、円筒状基体が並んだ円周の外側は反応容器の炉壁が面しているのに対して、内部側には炉壁はなく、このような空間の形状の違いが形成される堆積膜の電気的特性や付着した堆積膜の密着性に差を出しているのだろうと考えている。
【0024】
これに対して、本発明によるところの反応容器内部概略中央に円筒状の誘電体部材を設置した堆積膜形成装置において、同様に円筒状基体を静止で堆積膜を形成し、円筒状基体の周方向における電気的特性や球状突起数の分布を調べたところ、内部側の電気的特性が改善されて電気的特性はほぼ均一になり、且つ、内部側で球状突起の発生率が低減し、円筒状基体の周方向で球状突起数はほぼ均一になっていることが判明した。これは、反応容器内部概略中央に設置した円筒状の誘電体部材が円筒状基体の内部側の炉壁に相当する機能を持ち、擬似的ながら内部と外部の構造が対称になったために電気的特性や球状突起の改善効果が得られたものと考えている。
【0025】
本発明の反応容器を構成する誘電体部材及び反応容器内部概略中央に設置される円筒状の誘電体部材の表面は、算術平均粗さ(Ra)が1μm以上20μm以下の範囲であることが好ましい。これは、Raが小さ過ぎると平坦な部分が多くなり、微小な膜剥がれ防止効果が十分な表面積を維持できず、また、Raが大き過ぎるとダストを取り込みやすくなり、これが吐き出された際に球状突起の核になってしまうためであると考えられる。よって、Raは1μm以上20μm以下の範囲であることが好ましい。
【0026】
さらに、反応容器を構成する誘電体部材及び反応容器内部概略中央に設置される円筒状の誘電体部材の表面は、Raを上記の範囲内にして平均傾斜角(θa)が9度以上20度以下の範囲にした場合、或いは、Raを上記の範囲内にして局部山頂の平均間隔(S)が30μm以上100μm以下の範囲にした場合に本発明の効果がより顕著になり、Raを上記の範囲内にしてθa、且つ、Sを上記の範囲内にすると特に本発明の効果が顕著になることが本発明者の実験によって明らかとなった。これは、Raに加えてθa、Sを一定の範囲にすることで部材と堆積膜との接触面積をより最適な範囲にでき、部材に堆積する膜の応力が緩和されやすい状態になって密着性が増したためであると考えている。なお、本発明で用いた表面粗さの測定はJIS B0601−1994に基づき、Surftest SJ−400(株式会社ミツトヨ)を用いカットオフ0.8mm、基準長さ0.8mm、評価長さ4mmとして測定を行った。なお、平均傾斜角(θa)とは図2に示すように測定曲線の局部傾斜の絶対値を合計し、平均した値(Δa)の逆正接(θa=tan−1Δa)で表される。
【0027】
本発明の反応容器を構成する誘電体部材及び反応容器内部概略中央に設置される円筒状の誘電体部材の表面粗さを上記の範囲に制御するためにはは、ブラスト加工を行ったり、溶射材で被覆すれば良い。ブラスト加工や溶射は、コスト面から、あるいは表面粗さの制御性の高さや、コーティング対象物の大きさ・形状の制限を受けにくいため好ましい。溶射の具体的手段に特に制限はないが、例えばプラズマ溶射、減圧プラズマ溶射、高速フレーム溶射、低温溶射などのコーティング法により表面をコーティングしてもよい。具体的な溶射材料としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、二酸化チタン、鉄等が挙げられる。円筒状部材の表面を被覆する溶射材の厚さは特に制限はないが、耐久性および均一性を増すため、また、製造コストの面から1μm〜1mmが好ましく、10μm〜500μmがより好ましい。
【0028】
本発明においては高周波電力の周波数が50〜450MHzの範囲において、画像欠陥の低減効果が特に高くなる。
【0029】
これは、50MHzよりも低い周波数領域においては、プラズマが安定して生成可能な圧力が急激に高まることに起因していると思われる。本発明者らの検討によれば、例えば周波数が13.56MHzの場合には、プラズマが安定して生成可能な圧力は、周波数が50MHz以上の場合と比べ約1桁から半桁高いことが確認されている。このような高い圧力においては、成膜空間中においてポリシラン等のパーティクルが生じ易く、このパーティクルが堆積膜中に取り込まれると球状突起を発生させやすくなる。本発明において、高周波電力の周波数を50MHz以上とすることにより、プラズマ生成圧力を充分低くすることができるため、パーティクルの発生確率は激減し、円筒状基体全周にわたって良好な堆積膜が形成されるものと考えられる。
【0030】
また、450MHzよりも高い周波数領域においては、プラズマの均一性の差により450MHz以下の場合と比べて膜特性の均一性に差が生じてしまう。このような膜特性の均一性に差ができると、同時に膜の応力にも差が生じ、その境界付近で膜剥がれが生じやすくなる。このため、画像欠陥が悪化しやすい。周波数が450MHzよりも高い周波数領域においては、電力導入手段近傍での電力の吸収が大きく、ここで電子の生成が最も頻繁に為されるため、プラズマ不均一を生じ易く、堆積膜の特性むらにつながりやすい。450MHz以下の周波数においては、電力導入手段近傍での極端な電力吸収が生じにくいため、プラズマ均一性、さらには膜特性の均一性が高くなる。
【0031】
本発明の反応容器を構成する誘電体部材及び該応容器内部概略中央に設置される円筒状の誘電体部材はアルミナ、ジルコニア、ムライト、コージュライト、炭化珪素、チッ化ホウ素、チッ化アルミ、チッ化珪素等が挙げられ、これらの少なくとも一つを含む材料によって構成されていると堆積膜の密着性が高く、球状突起発生防止のために有効であるので好ましい。これらの中でも、アルミナ、チッ化ホウ素、チッ化アルミは誘電正接や絶縁抵抗等の電気特性にすぐれ、高周波電力の吸収が少ないことからより好ましい。
【0032】
そして、本発明の堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法は、例えば、円筒状基体の面内方向において、膜厚、膜質共に極めて均一な堆積膜を高速で形成し得るプラズマCVDによる堆積膜形成装置として適用するのに好適である。すなわち、プラズマの均一性ならびに長時間の安定性を向上させ、膜厚や膜質の均一性に優れ、且つ、膜質も良好な堆積膜を再現性良く形成し、欠陥の発生を大幅に低減して歩留を飛躍的に向上させた堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法であり、アモルファスシリコン電子写真用感光体のように多層構成で数十μmの厚さの堆積膜形成を行う際の形成装置及び形成方法に好適に適用され得るものである。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法について詳細に説明する。
【0034】
図1は本発明の堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法で、複数の電子写真用光受容部材を同時に形成できる生産性の極めて高い装置の一例を模式的に示したものである。
【0035】
図1(a)は概略断面図、図1(b)は図1(a)の切断線A−A’に沿う概略断面図である。反応容器101は101(a)と101(b)からなり、101(a)は誘電体部材で構成されており、反応容器101の下部には排気配管109が接続され、排気配管109の他端は不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)に接続されている。反応容器101の中心部を取り囲むように、堆積膜の形成される6本の円筒状基体105が互いに平行になるように同一円周上に配置されている。6本の円筒状基体105は基体加熱用ヒーター107を内蔵した基体支持体106によって各々保持されている。そして、反応容器101内には概略中央に円筒状の誘電体部材111、SiH4、GeH4、H2、CH4、B2H6、PH3、Ar、He等のガスボンベからなる不図示のガス供給装置に接続されたガス供給手段110があり、反応容器101の外には高周波電源103が接続されたマッチングボックス104を通して高周波電力分岐手段112に接続されている高周波電極102が設置されている。さらに、円筒状基体105は各々の回転機構108によって、回転可能なようになっている。
【0036】
基体加熱用ヒーター107は真空使用である発熱体であればよく、具体的にはシース状ヒーター、板状ヒーター、セラミックヒーター、カーボンヒーター等の電気抵抗発熱体、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等の熱放射ランプ発熱体、液体、気体等を温媒とし熱交換手段による発熱体等が挙げられる。基体加熱用ヒーター107の表面材料としてはステンレス、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属類、セラミック、耐熱性高分子樹脂等を使用することができる。
【0037】
反応容器101は少なくとも一部が誘電体部材で構成された減圧可能な反応容器であればよく、例えば図1の場合では101(a)は誘電体部材、101(b)は金属で構成されている。
【0038】
本発明の反応容器を構成する誘電体部材101(a)及び反応容器内部概略中央に設置される円筒状の誘電体部材111の表面は、球状突起低減効果を増すためには算術平均粗さ(Ra)が1μm以上20μm以下の範囲であることが好ましい。さらに、Raを上記の範囲内にして平均傾斜角(θa)が9度以上20度以下の範囲にした場合、或いは、Raを上記の範囲内にして局部山頂の平均間隔(S)が30μm以上100μm以下の範囲にした場合に画像欠陥改善効果がより顕著になり、Raを上記の範囲内にしてθa、且つ、Sを上記の範囲内にすると特に画像欠陥改善効果が顕著になる。
【0039】
また、反応容器101の誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111の材料としては、セラミックス材料が好ましく、具体的には、アルミナ、ジルコニア、ムライト、コージュライト、炭化珪素、チッ化ホウ素、チッ化アルミ、チッ化珪素等が挙げられ、これらの少なくとも一つを含む材料によって構成されていると堆積膜の密着性が高く、球状突起発生防止のために有効であるので好ましい。これらの中でも、アルミナ、チッ化ホウ素、チッ化アルミは誘電正接や絶縁抵抗等の電気特性にすぐれ、高周波電力の吸収が少ないことからより好ましい。また、加工の容易さから電子写真用感光体を作製する際には、形状は円筒形状が好ましいが、必要に応じて楕円形、多角形形状を用いても良く、作製する部材に応じて形状を選択すれば良い。
【0040】
反応容器101の金属101(b)の材質としては銅、アルミニウム、金、銀、白金、鉛、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン、ステンレスなどは熱伝導が良いので好適である。これらの材料中の2種以上からなる複合材料なども好適に用いられる。
【0041】
円筒状基体105は、使用目的に応じた材質を有するものであれば良い。材質においては銅、アルミニウム、金、銀、白金、鉛、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン、ステンレスは電気伝導が良好のため好適である。さらに、これらの材料中の2種以上からなる複合材料も耐熱性が向上するために望ましい。
【0042】
高周波電極102及び高周波電力分岐手段112の材質としては銅、アルミニウム、金、銀、白金、鉛、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン、ステンレスなどは熱伝導が良く、電気伝導も良いので好適である。これらの材料中の2種以上からなる複合材料なども好適に用いられる。また、加工の容易さから電子写真用感光体を作製する際には、形状は円筒形状が好ましいが、必要に応じて楕円形、多角形形状を用いても良く、作製する部材に応じて形状を選択すれば良い。
【0043】
使用される高周波電源103の発振周波数は、50〜450MHzの範囲において、画像欠陥の低減効果が特に高くなる。
【0044】
これは、50MHzよりも低い周波数領域においては、プラズマが安定して生成可能な圧力が急激に高まることに起因していると思われる。本発明者らの検討によれば、例えば周波数が13.56MHzの場合には、プラズマが安定して生成可能な圧力は、周波数が50MHz以上の場合と比べ約1桁から半桁高いことが確認されている。このような高い圧力においては、成膜空間中においてポリシラン等のパーティクルが生じ易く、このパーティクルが堆積膜中に取り込まれると球状突起を発生させやすくなる。本発明において、高周波電力の周波数を50MHz以上とすることにより、プラズマ生成圧力を充分低くすることができるため、パーティクルの発生確率は激減し、円筒状基体全周にわたって良好な堆積膜が形成されるものと考えられる。
【0045】
また、450MHzよりも高い周波数領域においては、プラズマの均一性の差により450MHz以下の場合と比べて膜特性の均一性に差が生じてしまう。このような膜特性の均一性に差ができると、同時に膜の応力にも差が生じ、その境界付近で膜剥がれが生じやすくなる。このため、画像欠陥が悪化しやすい。周波数が450MHzよりも高い周波数領域においては、電力導入手段近傍での電力の吸収が大きく、ここで電子の生成が最も頻繁に為されるため、プラズマ不均一を生じ易く、堆積膜の特性むらにつながりやすい。450MHz以下の周波数においては、電力導入手段近傍での極端な電力吸収が生じにくいため、プラズマ均一性、さらには膜特性の均一性が高くなる。また、出力は、装置に適した電力を発生することが出来ればいかなる出力のものでも好適に使用出来る。さらに、高周波電源の出力変動率には特に制限は無い。
【0046】
使用されるマッチングボックス104は高周波電源と負荷の整合を取ることができるものであればいかなる構成のものでも好適に使用出来る。また、整合を取る方法としては、自動的に調整されるものが製造時の煩雑さを避けるために好適であるが、手動で調整されるものであっても本発明の効果に全く影響は無い。また、マッチングボックスが配置される位置に関しては整合が取れる範囲においてどこに設置してもなんら問題はないが、マッチングボックスから高周波電極間の配線のインダクタンスを出来るだけ小さくするような配置とした方が広い負荷条件で整合を取ることが可能になるため望ましい。
【0047】
図1の装置における堆積膜の形成は次の手順のように行われる。
【0048】
まず、反応容器101内に円筒状基体105を設置し、不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)により反応容器101内を排気する。その後、ガス供給手段110からAr、He等の不活性ガスをそれぞれ反応容器101内に導入し、所定の圧力になるように流量及び排気速度を調整する。続いて、基体加熱用ヒーター107を加熱し、円筒状基体105の温度が所定の温度になるように制御する。
【0049】
その後、SiH4、GeH4、H2、CH4、B2H6、PH3、等のガスをガス供給手段110から反応容器101内に導入して所望のガス成分、圧力になるように流量及び排気速度を調整する。
【0050】
以上のようにして成膜の準備が完了した後、以下の手順で各層の形成を行う。
【0051】
例えば105MHzの高周波電源103を所望の電力に設定して、マッチングボックス104、高周波電力分岐手段112、高周波電極102を通じて反応容器101内に高周波電力を導入し、円筒状基体105をアノードとして作用させてグロー放電を生起させる。この放電エネルギーによって反応容器101内に導入されたガスが分解され、円筒状基体105上に所定の堆積膜が形成されるところとなる。所望の膜厚の形成が行われた後、高周波電力の供給を止め、反応容器101内へのガスの流入を止め、堆積膜の形成を終える。
【0052】
同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の光受容層が形成される。
【0053】
堆積膜形成の均一化を図るために、層形成を行っている間は、円筒状基体105を回転機構108によって所定の速度で回転させることが望ましい。
【0054】
さらに、上述のガス種は各々の層の作製条件にしたがって変更が加えられることは言うまでもない。
【0055】
【実施例】
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。
【0056】
《実施例1》
図1に示した堆積膜形成装置において、アルミニウム製の直径80mmの円筒状基体上に表1に示した条件により円筒状基体側から順に電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなるアモルファスシリコン電子写真用感光体を作製した。この際、発振周波数が105MHzの高周波電源103を用い、反応容器101の誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111はアルミナとした。また、この時の誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111のRa=3.7μm、θa=15度、S=78μmであった。
【0057】
《比較例1》
図2に示した堆積膜形成装置において、アルミニウム製の直径80mmの円筒状基体上に表1に示した条件により円筒状基体側から順に電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなるアモルファスシリコン電子写真用感光体を作製した。この際、高周波電力の発振周波数は105MHzであり、反応容器201の誘電体部材201(a)はアルミナとした。また、この時の誘電体部材201(a)のRa=0.5μm、θa=8度、S=150μmであった。
【0058】
このようにして実施例1、比較例1で作製した電子写真用感光体について、以下のように帯電能、感度、光メモリー、帯電能むら、感度むら、光メモリーむら、画像欠陥の評価を行った。
【0059】
本テスト用に改造したキヤノン製複写機iR5000に作製した電子写真用感光体を設置し、プロセススピード265mm/sec、前露光(波長660nmのLED)光量4lx・s、帯電器の電流値1000μAの条件にて電子写真装置の現像器位置にセットした表面電位計(TREK社Model344)の電位センサーにより像露光(波長655nmの半導体レーザー)を照射しない状態での感光体の表面電位を測定し、それを帯電能とした。
【0060】
そして、上述の条件で表面電位が400V(暗電位)になるように帯電器の電流値を調整した後、像露光を照射し、像露光光源の光量を調整して、表面電位が50V(明電位)となるようにし、そのときの露光量を感度とした。
【0061】
また、上述の条件において暗電位になるように帯電器の電流を調整した後、一旦明電位となるような露光量の像露光を照射し、続けて帯電器の電流値はそのままで像露光を照射せずに測定した表面電位と暗電位との差を光メモリーとした。
【0062】
これらの、帯電能、感度、光メモリー各々については母線方向全域にわたって測定し平均値で評価した。そして、母線方向の帯電能むら、感度むら、光メモリーむらは平均値に対する最大値と最小値の差の比として評価した。
【0063】
さらに、画像欠陥はベタ黒画像(画像密度100%)において得られた画像の同一面積内にある直径0.1mm以上の白ポチの数で評価した。
【0064】
帯電能、感度、光メモリー、帯電能むら、感度むら、光メモリーむらおよび画像欠陥の評価は比較例1を基準にし以下のようにした。
[帯電能、感度、光メモリー、帯電能むら、感度むら、光メモリーむら]
◎◎:20%以上の良化
◎:10%以上20%未満の良化
○:10%未満の良化
△:同等
[画像欠陥]
◎◎◎:80%以上の良化
◎◎:50%以上80%未満の良化
◎:30%以上50%未満の良化
○:30%未満の良化
△:同等
実施例1及び比較例1の評価結果を表2に示す。表2から明らかなように、実施例1ではいずれの項目においても比較例1より改善されており比較例1との間に明確な差が認められた。
【0065】
また、実施例1で作製された電子写真用感光体は、画像特性においてもハーフトーン画像にムラは無く均一で良好な画像が得られることが分かった。さらに文字原稿を複写したところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得られた。そして写真原稿の複写においても原稿に忠実で鮮明な画像を得ることができ極めて良好なものであった。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
《実施例2》
実施例1において、誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111のRa、θa及びSを以下の(a)〜(f)と変化させた以外は実施例1と同様にしてアモルファスシリコン電子写真用感光体を作製した。
(a)Ra=0.5μm、θa=5度、S=20μm
(b)Ra=1μm、θa=5度、S=20μm
(c)Ra=7μm、θa=5度、S=20μm
(d)Ra=14μm、θa=5度、S=20μm
(e)Ra=20μm、θa=5度、S=20μm
(f)Ra=22μm、θa=5度、S=20μm
実施例2で作製した電子写真用感光体を実施例1と同様に評価した結果を表3に示す。表3から明らかなように(a)〜(f)いずれにおいても本発明の効果が得られ、Raを1μm以上20μm以下にした場合に画像欠陥が良化する効果が増すことが分かる。
【0069】
また、実施例2で作製された電子写真用感光体は、画像特性においてもハーフトーン画像にムラは無く均一で良好な画像が得られることが分かった。さらに文字原稿を複写したところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得られた。そして写真原稿の複写においても原稿に忠実で鮮明な画像を得ることができ極めて良好なものであった。
【0070】
【表3】
【0071】
《実施例3》
実施例1において、誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111のRa、θa及びSを以下の(a)〜(f)と変化させた以外は実施例1と同様にしてアモルファスシリコン電子写真用感光体を作製した。
(a)Ra=4μm、θa=5度、S=20μm
(b)Ra=4μm、θa=9度、S=20μm
(c)Ra=4μm、θa=12度、S=20μm
(d)Ra=4μm、θa=17度、S=20μm
(e)Ra=4μm、θa=20度、S=20μm
(f)Ra=4μm、θa=22度、S=20μm
実施例3で作製した電子写真用感光体を実施例1と同様に評価した結果を表4に示す。表4から明らかなように(a)〜(f)いずれにおいても本発明の効果が得られ、θaを9度以上20度以下にした場合に画像欠陥が良化する効果がより顕著になることが分かる。そして、表面粗さとの関係を調べたところ、Raを1μm以上20μm以下にした場合にのみこのような効果が得られることが分かった。即ち、Raを1μm以上20μm以下にしてθaを9度以上20度以下にした場合に画像欠陥が良化する効果がより顕著になることが分かった。
【0072】
また、実施例3作製された電子写真用感光体は、画像特性においてもハーフトーン画像にムラは無く均一で良好な画像が得られることが分かった。さらに文字原稿を複写したところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得られた。そして写真原稿の複写においても原稿に忠実で鮮明な画像を得ることができ極めて良好なものであった。
【0073】
【表4】
【0074】
《実施例4》
実施例1において、誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111のRa、θa及びSを以下の(a)〜(f)と変化させた以外は実施例1と同様にしてアモルファスシリコン電子写真用感光体を作製した。
(a)Ra=4μm、θa=5度、S=20μm
(b)Ra=4μm、θa=5度、S=30μm
(c)Ra=4μm、θa=5度、S=50μm
(d)Ra=4μm、θa=5度、S=80μm
(e)Ra=4μm、θa=5度、S=100μm
(f)Ra=4μm、θa=5度、S=120μm
実施例4で作製した電子写真用感光体を実施例1と同様に評価した結果を表5に示す。表5から明らかなように(a)〜(f)いずれにおいても本発明の効果が得られ、Sを30μm以上100μm以下にした場合に画像欠陥が良化する効果がより顕著になることが分かる。そして、表面粗さとの関係を調べたところ、Raを1μm以上20μm以下にした場合にのみこのような効果が得られることが分かった。即ち、Raを1μm以上20μm以下にしてSを30μm以上100μm以下にした場合に画像欠陥が良化する効果がより顕著になることが分かった。
【0075】
また、実施例4作製された電子写真用感光体は、画像特性においてもハーフトーン画像にムラは無く均一で良好な画像が得られることが分かった。さらに文字原稿を複写したところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得られた。そして写真原稿の複写においても原稿に忠実で鮮明な画像を得ることができ極めて良好なものであった。
【0076】
【表5】
【0077】
《実施例5》
実施例1において、誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111のRa、θa及びSを以下の(a)〜(f)と変化させた以外は実施例1と同様にしてアモルファスシリコン電子写真用感光体を作製した。
(a)Ra=4.3μm、θa=16度、S=20μm
(b)Ra=4.3μm、θa=16度、S=30μm
(c)Ra=4.3μm、θa=16度、S=50μm
(d)Ra=4.3μm、θa=16度、S=80μm
(e)Ra=4.3μm、θa=16度、S=100μm
(f)Ra=4.3μm、θa=16度、S=120μm
実施例5で作製した電子写真用感光体を実施例1と同様に評価した結果を表6に示す。表6から明らかなように(a)〜(f)いずれにおいても本発明の効果が得られ、Sを30μm以上100μm以下にした場合に画像欠陥が良化する効果が特に顕著になることが分かる。そして、表面粗さとの関係を調べたところ、Raを1μm以上20μm以下にし、且つ、θaを9度以上20度以下にした場合にのみこのような効果が得られることが分かった。即ち、Raを1μm以上20μm以下、且つ、θaを9度以上20度以下、且つ、Sを30μm以上100μm以下にした場合に画像欠陥が良化する効果が特に顕著になることが分かった。
【0078】
また、実施例5で作製された電子写真用感光体は、画像特性においてもハーフトーン画像にムラは無く均一で良好な画像が得られることが分かった。さらに文字原稿を複写したところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得られた。そして写真原稿の複写においても原稿に忠実で鮮明な画像を得ることができ極めて良好なものであった。
【0079】
【表6】
【0080】
《実施例6》
実施例1において、高周波電力の発振周波数を以下の(a)〜(f)と変化させた以外は実施例1と同様にしてアモルファスシリコン電子写真用感光体を作製した。
(a)30MHz、(b)50MHz、(c)150MHz、(d)300MHz、
(e)450MHz、(f)500MHz
実施例6で作製した電子写真用感光体を実施例1と同様に評価した結果を表7に示す。表7から明らかなように高周波電力の発振周波数を50〜450MHzの範囲にすることでより本発明の効果が得られることが分かる。
【0081】
また、実施例6で作製された電子写真用感光体は、画像特性においてもハーフトーン画像にムラは無く均一で良好な画像が得られることが分かった。さらに文字原稿を複写したところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得られた。そして写真原稿の複写においても原稿に忠実で鮮明な画像を得ることができ極めて良好なものであった。
【0082】
【表7】
【0083】
《実施例7》
図1に示した堆積膜形成装置において、アルミニウム製の直径80mmの円筒状基体上に表1に示した条件により円筒状基体側から順に電荷注入阻止層、光導電層(第一の層領域、第二の層領域)、表面層からなるアモルファスシリコン電子写真用感光体を作製した。この際、発振周波数が105MHzの高周波電源103に加えて不図示の高周波電源として発振周波数が60MHzのものを用い、反応容器101の誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111は窒化アルミとした。また、この時の誘電体部材101(a)及び円筒状の誘電体部材111のRa=4.5μm、θa=18度、S=90μmであった。
【0084】
実施例7で作製した電子写真用感光体を実施例1と同様に評価したところ実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0085】
また、実施例7で作製された電子写真用感光体は、画像特性においてもハーフトーン画像にムラは無く均一で良好な画像が得られることが分かった。さらに文字原稿を複写したところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得られた。そして写真原稿の複写においても原稿に忠実で鮮明な画像を得ることができ極めて良好なものであった。
【0086】
【表8】
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、被処理基体を均一にプラズマ処理することが可能で画像欠陥を低減可能な堆積膜形成装置および堆積膜形成方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の堆積膜形成方法を用いて光受容部材を形成するのに供される堆積膜形成装置の一例を示す模式図である。
【図2】従来の堆積膜形成方法を用いて光受容部材を形成するのに供される堆積膜形成装置の一例を示す模式図である。
【図3】図3は平均傾斜角(θa)の定義を説明するための模式図である。
【符号の説明】
101 反応容器
102 高周波電極
103 高周波電源
104 マッチングボックス
105 円筒状基体
106 基体支持体
107 基体加熱用ヒーター
108 回転機構
109 排気配管
110 ガス供給手段
111 円筒状の誘電体部材
112 高周波電力分岐手段
Claims (8)
- 少なくとも一部が誘電体部材で構成された減圧可能な反応容器と、該反応容器内部に配置された複数の円筒状基体及び原料ガス導入手段と、該反応容器の外部に配置された複数の高周波電極を有し、該高周波電極に高周波電力を印加して該反応容器内にグロー放電を発生させることにより、該反応容器内に導入された原料ガスを分解し、該複数の円筒状基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成装置において、該反応容器内部概略中央に円筒状の誘電体部材を設置したことを特徴とする堆積膜形成装置。
- 前記反応容器を構成する誘電体部材及び該反応容器内部概略中央に設置される円筒状の誘電体部材の表面は、算術平均粗さ(Ra)が1μm以上20μm以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の堆積膜形成装置。
- 前記反応容器を構成する誘電体部材及び該反応容器内部概略中央に設置される円筒状の誘電体部材の表面は、平均傾斜角(θa)が9度以上20度以下の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の堆積膜形成装置。
- 前記反応容器を構成する誘電体部材及び該反応容器内部概略中央に設置される円筒状の誘電体部材の表面は、局部山頂の平均間隔(S)が30μm以上100μm以下の範囲であることを特徴とする請求項2乃至3に記載の堆積膜形成装置。
- 前記堆積膜形成装置において、前記高周波電極に印加する高周波電力の発振周波数が50〜450MHzの範囲であることを特徴とする請求項1乃至4に記載の堆積膜形成装置。
- 前記反応容器を構成する誘電体部材及び該反応容器内部概略中央に設置される円筒状の誘電体部材はアルミナ、ジルコニア、ムライト、コージュライト、炭化珪素、チッ化ホウ素、チッ化アルミ、チッ化珪素の少なくとも一つを含む材料によって構成されていることを特徴とする請求項1乃至5に記載の堆積膜形成装置。
- 前記複数の円筒状基体上に形成される堆積膜は、Si原子を主体とするアモルファスシリコンからなり、該複数の円筒状基体は電子写真感光体として用いられることを特徴とする請求項1乃至6に記載の堆積膜形成装置。
- 前記請求項1乃至7の堆積膜形成装置を用いて前記複数の円筒状基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成方法。
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