JP2014003065A - Led装置、及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】照射光の色度が長期間に亘り一定であり、硫化耐性に優れ、さらに照射光の色度が所望の範囲であるLED装置、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】波長400nm以下の光を出射するLEDチップ3と、LEDチップ3上に形成された波長変換部6と、波長変換部6上に形成された透明樹脂層7とを有するLED装置の製造方法において、LEDチップ3の発光面上に赤色蛍光体粒子、膨潤性粒子、無機粒子、及び溶媒を含む蛍光体含有組成物を塗布し、蛍光体粒子層を形成する工程と、蛍光体粒子層上に、透光性セラミック材料及び溶媒を含む透光性セラミック含有組成物を塗布し、赤色蛍光体粒子、膨潤性粒子、及び無機粒子が透光性セラミックで結着された波長変換部6を製膜する工程と、波長変換部6上に、透明樹脂を含む透明樹脂層用組成物を塗布し、透明樹脂層7を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明はLED装置、及びその製造方法に関する。
LED素子を搭載したLED装置は、高効率で長寿命、かつ安価な発光装置として注目されている。LED装置は、各種インジケータ、各種照明装置、平面型表示装置や液晶ディスプレイ等のバックライト等に適用されている。特に、白色光を発する白色LED装置は、従来の蛍光灯や白熱電灯等の代替品として実用化されている。
近年、白色LED装置を、自動車のヘッドライトに適用することが検討されている。自動車のヘッドライトは、運転者に標識の色等を正確に判別させる必要がある。そのため、白色LED装置には(1)輝度が高いこと、(2)照射光の色度が所望の範囲であること、が求められている。
白色LED装置において白色光を得る方式は、主に3種類ある。1つ目は、LED装置内に、青色光を出射するLED素子、緑色光を出射するLED素子、及び赤色光を出射するLED素子を配置し、各LED素子が出射する光を混合して白色光を得る方式である。この方式では、各LED素子から出射する光の量(各LED素子の電流量)を調整し、LED装置の照射光の色度を調整する。そのため、LED装置の構造が複雑になりやすい、という課題がある。
2つ目は、青色光を出射するLED素子と、青色光を受けて黄色の蛍光を発する黄色蛍光体とを組み合わせる方式である。例えば、窒化ガリウム(GaN)系の青色LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)素子の近傍に、YAG等の黄色蛍光体を配置する。そして、青色LED素子が出射する青色光と、青色光を受けて蛍光体が発する黄色光とを混合して白色光を得る。この方式では、LED素子から出射する光の量、及び黄色蛍光体の量で、LED装置の照射光の色度を調整する。そのため、再現できる色度に限界があり、例えば日光色等の再現は難しい。
3つ目は、近紫外光を出射するLED素子と、近紫外光を受けて蛍光を発する蛍光体2種以上とを組み合わせる方式である。この方式では、近紫外光を受けて各蛍光体が発する光を混合して白色光を得る。例えば、2種の蛍光体が発する光の色を補色(青色及び黄色、もしくは緑色及び赤色等)としたり、3種の蛍光体が発する光の色を光の三原色(青色、緑色、及び赤色)とすることで、白色光を得る。この方式では、2種以上の蛍光体の量を調整してLED装置の照射光の色度を調整する。そのため、再現できる色度の幅が広い。
ただし、上記の第2の方式または第3の方式でLED装置を実際に作製すると、LED装置の照射光の色度を、所望の範囲に収め難いという問題があった。上記の第2の方式及び第3の方式のLED装置では、LED素子近傍に、透明樹脂に蛍光体粒子を分散させた封止部材を配置する。蛍光体粒子の比重は、透明樹脂の比重より大きい。そのため、封止部材の形成時に蛍光体粒子が沈降しやすく、封止部材内で蛍光体粒子の濃度が均一にならない;つまり、LED装置の照射光の色度が所望の範囲から外れやすかった。また、複数のLED装置を作製すると、LED装置ごとに照射光の色度が異なる、との問題もあった。
そこで、蛍光体粒子の沈降を抑制する方法が種々検討されている。例えば粘度が高いシリコーン樹脂に蛍光体粒子を分散させることが提案されている(特許文献1)。また、透明樹脂に粘度鉱物等の層状化合物及び有機カチオンを添加することも提案されている(特許文献2)。
一方、従来のLED装置は、硫化水素ガスによりLED素子の金属電極や金属製の光反射部が変色しやすい、との問題もあった。金属電極や光反射部が変色すると、LED装置の光取り出し効率が経時で低下する。この問題に対し、硬化性シリコーン樹脂や、硬化性エポキシ樹脂で、LED素子表面を被覆すること等が提案されている(特許文献3)。
特開2002−314142号公報 特開2011−166148号公報 特開2011−96842号公報
前述の特許文献1または2の技術によれば、蛍光体粒子の沈降による色むらは、ある程度改善できる。また、特許文献3の技術によれば、金属電極や金属製の光反射部の変色をある程度抑えることができる。しかし、いずれの文献おいても、蛍光体粒子を樹脂に分散させている。そのため、蛍光体粒子が吸湿して劣化しやすい、という問題があった。特に赤色蛍光体は耐湿性が低く、他の蛍光体より早く劣化する。そのため、LED装置の照射光に含まれる赤色成分量が徐々に少なくなり、照射光の色度が変化しやすかった。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、照射光の色度が長期間に亘って変化せず、硫化耐性に優れ、さらに照射光の色度が所望の範囲であるLED装置、及びその製造方法を提供することにある。
本発明の第1は、以下のLED装置の製造方法に関する。
[1]波長400nm以下の光を出射するLED素子と、前記LED素子から出射する光を他の波長の光に変換する波長変換部と、前記波長変換部上に形成された透明樹脂層とを有するLED装置の製造方法において、LED素子の発光面上に、前記LED素子から出射する光を受けて赤色光を発する赤色蛍光体粒子、膨潤性粒子、無機粒子、及び溶媒を含む蛍光体含有組成物を塗布し、蛍光体粒子層を形成する工程と、前記蛍光体粒子層上に、透光性セラミック材料及び溶媒を含む透光性セラミック含有組成物を塗布し、前記赤色蛍光体粒子、前記膨潤性粒子、及び前記無機粒子が透光性セラミックで結着された前記波長変換部を製膜する工程と、前記波長変換部上に、透明樹脂を含む透明樹脂層用組成物を塗布し、透明樹脂層を形成する工程とを有するLED装置の製造方法。
[2]前記赤色蛍光体粒子が、酸硫化物蛍光体粒子または硫化物蛍光体粒子である、[1]に記載のLED装置の製造方法。
[3]前記蛍光体含有組成物が、前記LED素子から出射する光を受けて緑色光を発する緑色蛍光体粒子をさらに含む、[1]または[2]に記載のLED装置の製造方法。
[4]前記蛍光体含有組成物が、前記LED素子から出射する光を受けて青色光を発する青色蛍光体粒子をさらに含む、[1]〜[3]のいずれかに記載のLED装置の製造方法。
[5]前記透光性セラミック材料が、有機ポリシロキサン化合物である、[1]〜[4]のいずれかに記載のLED装置の製造方法。
[6]前記透光性セラミック含有組成物が、無機微粒子をさらに含む、[1]〜[5]のいずれかに記載のLED装置の製造方法。
[7]前記透光性セラミック含有組成物が、2価以上の金属(Siを除く)の有機金属化合物をさらに含む、[1]〜[6]のいずれかに記載のLED装置の製造方法。
[8]前記透明樹脂がフェニルシリコーン樹脂である、[1]〜[7]のいずれかに記載のLED装置の製造方法。
本発明の第2は、以下のLED装置に関する。
[9]波長400nm以下の光を出射するLED素子と、前記LED素子上に形成され、前記LED素子からの光を受けて赤色光を発する赤色蛍光体粒子、膨潤性粒子、無機粒子、及び透光性セラミックを含む波長変換部と、前記波長変換部上に形成された透明樹脂層とを有する、LED装置。
本発明の製造方法で製造されるLED装置は、長期間に亘って照射光の色度及び光取り出し効率が変化し難い。また本発明の製造方法によれば、LED装置の照射光の色度が、所望の範囲に収まりやすい。
本発明のLED装置の一例を示す概略断面図である。 本発明のLED装置の他の例を示す概略断面図である。
1.LED装置について
本発明の製造方法で製造するLED装置の構成を、図1及び図2の概略断面図に示す。本発明で製造するLED装置100は、LEDチップ3を有するLED素子と、LEDチップ3が出射する特定の波長の光を、他の特定の波長の光に変換する波長変換部6と、波長変換部6上に形成された透明樹脂層7とを有する。
(1)LED素子
図1に示すLED素子100は、パッケージ(LED基板)1と、メタル部2と、LEDチップ3と、メタル部2及びLEDチップ3を接続する配線4とを有する。
パッケージ1は、例えば液晶ポリマーやセラミックでありうるが、絶縁性と耐熱性を有していれば、その材質は特に限定されない。またその形状も特に制限はなく、例えば図1に示すように凹状であってもよく、図2に示すように平板状であってもよい。
LEDチップ3は、波長400nm以下の光(紫外光)を発するものであればよく、その発光波長は特に制限されないが、近紫外光を発するものであることが好ましい。具体的には、波長300nm〜400nmの光を発するものであることが好ましい。上記波長範囲の光は、後述の赤色蛍光体粒子等を効率よく発光させることができる。
LEDチップ3の構成は特に制限されない。LEDチップ3が発する光が近紫外光である場合、LEDチップ3は、n−GaN系化合物半導体層(クラッド層)と、InGaN系化合物半導体層(発光層)と、p−GaN系化合物半導体層(クラッド層)と、透明電極層との積層体でありうる。LEDチップ3は、例えば200〜300μm×200〜30μmの発光面を有するものでありうる。LEDチップ3の高さは、通常50〜200μm程度である。
メタル部2は、銀等の金属からなる配線でありうる。LED装置100において、メタル部2が、LEDチップ3からの出射光等を反射する反射板として機能してもよい。メタル部2及びLEDチップ3は、図1に示すように配線4を介して接続されてもよく、図2に示すように突起電極5を介して接続されてもよい。メタル部2及びLEDチップ3が配線4を介して接続される態様をワイヤボンディング型といい、突起電極5を介して接続される態様をフリップチップ型という。
図1及び図2に示すLED装置100には、パッケージ1に、1つのLEDチップ3のみが配置されているが;パッケージ1に、複数のLEDチップ3が配置されていてもよい。
(2)波長変換部
波長変換部6は、赤色蛍光体粒子、膨潤性粒子、無機粒子が、透光性セラミックで結着(被覆)された層である。波長変換部6は、LEDチップ3が出射する特定波長の光(励起光)を受けて、他の特定波長の光(蛍光)を発する。波長変換部6には、通常、2種以上の蛍光体粒子が含まれる。LEDチップ3からの光を受けてこれらの蛍光体が発する光(蛍光)が混ざることで、LED装置100の照射光が所望の色度となる。
前述のように、従来のLED装置では、赤色蛍光体粒子が透明樹脂に分散されていた。しかし、赤色蛍光体粒子は水分劣化しやすく、発光量が低下しやすい。そのため、従来のLED装置では、経時で照射光中の赤色成分の量が少なくなり、照射光の色度が変化するという問題があった。これに対し、本願の製造方法で製造されるLED装置では、赤色蛍光体粒子が透光性セラミックで被覆されている。そのため、赤色蛍光体粒子が劣化し難く、経時でLED装置の出射光の色度が変化し難い。
また、本願の製造方法で製造されるLED装置100では、波長変換部6のバインダが透光性セラミックである。そのため、LED素子のメタル部2が、硫化水素ガスによって腐食され難い。
波長変換部6は、LEDチップ3の発光面及びメタル部2を被覆していればよく、パッケージ1や配線4を完全に被覆していなくてもよい。波長変換部6の厚みは、特に制限されないが、通常15〜300μmであることが好ましく、より好ましくは30〜200μmである。波長変換部6の厚みが厚すぎると、波長変換部6(特に透光性セラミック)にクラックが生じ、赤色蛍光体粒子の劣化抑制効果やLED素子の腐食抑制効果が十分でなくなるおそれがある。一方で、波長変換部6の厚みが薄すぎると、波長変換部6内に、十分に蛍光体粒子が含まれず、十分な蛍光が得られない可能性がある。さらに、前述の腐食抑制効果も得られなくなる可能性がある。波長変換部6の厚みとは、LEDチップ3の発光面上に形成された波長変換部6の最大厚みを意味する。波長変換部6の厚みは、レーザホロゲージで測定される。
(3)透明樹脂層
透明樹脂層7は、波長変換部6を覆うように形成される。一般的に、透明樹脂層7の屈折率は、波長変換部6の屈折率より小さい。そのため、LED装置100が透明樹脂層7を有すると、波長変換部6、透明樹脂層7、大気の順に緩やかに屈折率が低下する。つまり、LED装置100が透明樹脂層7を有すると、各層同士の界面で反射する光の量が少なくなり、LED装置100の光取り出し効率が高まる。また、LED装置100が透明樹脂層7を有すると、硫化水素ガスがLED装置内に入り込み難くなる。そのため、メタル部2等の腐食を抑制することもできる。
透明樹脂層7の厚みは、特に制限されないが、通常25μm〜5mmであることが好ましく、さらに1〜3mmであることが好ましい。一般的に、透明樹脂層7の厚みを25μm以下とすることは難しい。一方、LED装置の小型化との観点から、透明樹脂層7の厚みは5mm以下であることが好ましい。
2.LED装置の製造方法
前述したLED装置を製造する方法には、以下の4つの工程が含まれる。
1)LED素子を準備する工程
2)赤色蛍光体粒子、膨潤性粒子、無機粒子、及び溶媒を含む蛍光体含有組成物を塗布し、蛍光体粒子層を形成する工程
3)蛍光体粒子層上に、透光性セラミック材料及び溶媒を含む透光性セラミック含有組成物を塗布し、波長変換部を形成する工程
4)透明樹脂を含む透明樹脂層用組成物を塗布し、透明樹脂層を形成する工程
本発明の製造方法では、赤色蛍光体粒子が含まれる蛍光体粒子層上に、透光性セラミック含有組成物を塗布する。蛍光体粒子層上に塗布された透光性セラミック含有組成物は、蛍光体粒子どうしの隙間に入りこみ、赤色蛍光体粒子同士の隙間を埋める。つまり、透光性セラミックが赤色蛍光体粒子を被覆する。そのため、得られるLED装置を高湿度環境下においても、赤色蛍光体粒子が水分劣化し難い。
また本発明の製造方法では、2)工程で蛍光体粒子をLED素子表面に配置した後に、3)工程で、バインダ成分(透光性セラミック材料)を塗布する。そのため、蛍光体粒子がバインダ内で沈降すること等がなく、蛍光体粒子が均一な濃度でLED素子表面に配置される。これにより、得られるLED装置の照射光の色度が、所望の範囲に収まりやすく、LED装置を複数製造しても、各LED装置からの照射光の色度が一定の範囲となる。
1)LED素子準備工程
LED素子準備工程では、前述のLED素子を準備する。例えば、パッケージに形成されたメタル部と、LEDチップとを電気的に接続し、LEDチップをパッケージに固定する工程等でありうる。
2)蛍光体含有組成物塗布工程
蛍光体含有組成物を、前述のLED素子のメタル部(メタル配線)、及びLEDチップの発光面を覆うように塗布し、LED素子上に蛍光体粒子層を形成する。
蛍光体含有組成物には、赤色蛍光体粒子、膨潤性粒子、無機粒子、及び溶媒が含まれる。蛍光体含有組成物には、さらにLED素子からの特定波長の光を受けて、赤色以外の蛍光を発する第二の蛍光体粒子や、第三の蛍光体粒子が含まれていてもよい。蛍光体含有組成物に、赤色蛍光体粒子と共に、赤色と補色関係にある緑色蛍光体粒子が含まれると、得られるLED装置の照射光が白色となる。また、蛍光体含有組成物に、赤色蛍光体粒子とともに緑色蛍光体粒子及び青色蛍光体粒子が含まれると、得られるLED装置の照射光が白色となるだけでなく、照射光の色度をより微細に調整でき、色再現性が高まる。
・蛍光体粒子について
蛍光体含有組成物に含まれる赤色蛍光体粒子は、LEDチップが出射する光により励起されて、赤色の蛍光(通常波長580nm以上780nm以下、好ましくは波長585nm以上700nm以下の光)を発するものであればよい。
赤色蛍光体の種類は特に制限されず、酸硫化物蛍光体、硫化物蛍光体、酸化物蛍光体、窒化物蛍光体等でありうる。これらの赤色蛍光体の中でも、酸硫化物蛍光体及び硫化物蛍光体は、特に耐湿性が低い。したがって、赤色蛍光体粒子が酸硫化物蛍光体または硫化物蛍光体である場合に、本願発明の効果が得られやすい。
赤色蛍光体でありうる酸硫化物蛍光体の例には、(La,Y)S:Eu3+や、(Y1−x−yLa(Eu,Sm)S(式中、0<x≦0.035、0.01≦y≦0.10を表す)、及び(Y,La,Gd,Lu)S:Eu(Mg,Sr,Ba)(式中、0.001≦x≦0.5、0.00001≦y≦0.3を表す)等が含まれる。
本明細書では、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示す。「(La,Y)S:Eu3+」との記載には、「LaS:Eu3+」、「YS:Eu3+」及び「(La,Y)S:Eu3+」等が含まれる。省略箇所はカンマ(,)で区切って示す。
赤色蛍光体でありうる硫化物蛍光体の例には、BaZnS:Mn2+、(Ba,Sr)S:Eu2+等が含まれる。赤色蛍光体でありうる酸化物蛍光体の例には、(Ba,Sr,Ca)MgSi:(Eu2+,Mn2+)、(Eu,Y):Eu3+等が含まれる。赤色蛍光体でありうる窒化物蛍光体の例には、CaAlSiN:Eu2+、YNb:Eu2+等が含まれる。
また、蛍光体含有組成物には、緑色蛍光体粒子が含まれることが好ましい。緑色蛍光体粒子は、LEDチップが出射する光により励起されて、緑色の蛍光(通常波長490nm以上560nm以下、好ましくは波長510nm以上540nm以下の光)を発するものであればよく、その種類は特に制限されない。
緑色蛍光体の例には、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Eu等のユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体;(Ba,Ca,Sr,Mg)SiO:Eu等のユウロピウム付活アルカリ土類シリケート系蛍光体等が含まれる。
蛍光体含有組成物には、さらに青色蛍光体粒子が含まれることが好ましい。青色蛍光体粒子は、LEDチップが出射する光により励起されて、青色の蛍光(通常波長420nm以上490nm以下、好ましくは波長430nm以上470nm以下の光)を発するものであればよく、その種類は特に制限されない。
青色蛍光体の例には、BaMgAl1017:Eu等のユウロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体;(Ca,Sr,Ba)(POCl:Eu等のユウロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体;(Ca,Sr,Ba)Cl:Eu等のユウロピウム付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体;(Sr,Ca,Ba)Al:Eu、(Sr,Ca,Ba)Al1425:Eu等のユウロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体;等が含まれる。
各色蛍光体粒子は、例えば1)所定の組成を有する混合原料に、フラックス(フッ化アンモニウム等のフッ化物)を適量混合して加圧し、これを成形体とする。2)得られた成形体を坩堝に詰め、空気中で1350〜1450℃の温度範囲で、2〜5時間焼成し、焼結体とすることで得られる。所定の組成を有する混合原料は、例えばY、Gd、Ce、Sm、Al、La、Ga等の酸化物や硫黄等を、化学両論比で十分に混合して得られる。
各色蛍光体粒子の平均粒径は1μm〜50μmであることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。各色蛍光体粒子の粒径が大きいほど発光効率(波長変換効率)が高くなる。一方、各色蛍光体粒子の粒径が大きすぎると、各色蛍光体粒子どうしの間に生じる隙間が大きくなり、得られる蛍光体粒子層の強度が低下する場合がある。各色蛍光体粒子の平均粒径は、例えばコールターカウンター法によって測定することができる。
蛍光体含有組成物に含まれる各色蛍光体粒子の総量は、蛍光体含有組成物の固形分全質量に対して10〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜97質量%である。蛍光体粒子の濃度が10質量%未満であると、十分な蛍光が得られないおそれがある。一方、蛍光体粒子の量が97質量%を超えると、相対的に膨潤性粒子の量や、無機粒子の量が少なくなり、得られる蛍光体粒子層の強度が低下する場合がある。
蛍光体含有組成物に含まれる各色蛍光体粒子の量は、LED装置の照射光の色度に応じて適宜調整される。
・膨潤性粒子について
蛍光体含有組成物には、膨潤性粒子が含まれる。蛍光体含有組成物に膨潤性粒子が含まれると、蛍光体含有組成物の粘度が高まり、蛍光体含有組成物内での蛍光体粒子の沈降が抑制される。また、蛍光体含有組成物に膨潤性粒子が含まれると、得られる蛍光体粒子層の強度も高まる。
膨潤性粒子の例には、層状ケイ酸塩鉱物、イモゴライト、アロフェン等が含まれる。層状ケイ酸塩鉱物は、雲母構造、カオリナイト構造、またはスメクタイト構造を有する膨潤性粘土鉱物であることが好ましく、特に膨潤性に富むスメクタイト構造を有する膨潤性粘土鉱物であることが好ましい。膨潤性粒子である層状ケイ酸塩鉱物微粒子は、蛍光体含有組成物中においてカードハウス構造を形成する。そのため、蛍光体含有組成物に少量含まれるだけで、粘度が高まる。また、層状ケイ酸塩鉱物微粒子は平板状を呈するため、蛍光体含有組成物に層状ケイ酸塩鉱物微粒子が含まれると、得られる蛍光体粒子層の強度が高まる。
層状ケイ酸塩鉱物の具体例には、天然または合成の、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ハイデライト、モンモリロナイト、ノントライト、ベントナイト等のスメクタイト属粘土鉱物や、Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等の膨潤性雲母属粘土鉱物およびバーミキュラライトやカオリナイト、またはこれらの混合物が含まれる。
膨潤性粒子の市販品の例には、ラポナイトXLG(英国、ラポート社製合成ヘクトライト類似物質)、ラポナイトRD(英国、ラポート社製合成ヘクトライト類似物質)、サーマビス(独国、ヘンケル社製合成ヘクトライト類似物質)、スメクトンSA−1(クニミネ工業(株)製サポナイト類似物質)、ベンゲル(ホージュン(株)販売の天然ベントナイト)、クニビアF(クニミネ工業(株)販売の天然モンモリロナイト)、ビーガム(米国、バンダービルト社製の天然ヘクトライト)、ダイモナイト(トピー工業(株)製の合成膨潤性雲母)、ソマシフ(コープケミカル(株)製の合成膨潤性雲母)、SWN(コープケミカル(株)製の合成スメクタイト)、SWF(コープケミカル(株)製の合成スメクタイト)等が含まれる。
膨潤性粒子は、表面アンモニウム塩等で修飾(表面処理)されたものであってもよい。膨潤性粒子の表面が修飾されていると、蛍光体含有組成物内で、膨潤性粒子が良好に相溶する。
蛍光体含有組成物に含まれる膨潤性粒子の量は、蛍光体含有組成物の固形分全質量に対して0.3〜20質量%であることが好ましく、より好ましく0.5〜15質量%である。膨潤性粒子の濃度が0.5質量%未満であると、蛍光体含有組成物の粘度が十分に高まらず、蛍光体含有組成物内で蛍光体粒子が沈降する場合がある。一方、膨潤性粒子の濃度が20質量%を超えると、相対的に蛍光体粒子の量が少なくなり、十分な蛍光が得られないおそれがある。なお、蛍光体含有組成物中の膨潤性粒子の割合が増えれば増えるほど、粘度が増加するわけではない。粘度は蛍光体含有組成物中の溶媒量、各色蛍光体粒子の量等、その他の成分との含有比率で定まる。
・無機粒子について
蛍光体含有組成物中には、無機粒子が含まれる。蛍光体含有組成物中に無機粒子が含まれると、蛍光体含有組成物の粘度が高まる。また得られる蛍光体粒子層において、蛍光体粒子と膨潤性粒子との界面に生じる隙間が無機粒子によって埋まり、得られる蛍光体粒子層の強度が高まる。
無機粒子の例には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の酸化物微粒子等が含まれる。無機粒子の表面は、シランカップリング剤やチタンカップリング剤で処理されていてもよい。表面処理によって、無機粒子と、後述の3)工程で塗布される透光性セラミック材料との密着性が高まる。また、無機粒子は、比表面積の大きい多孔質の無機粒子でありうる。
無機粒子の粒径分布は特に制限はない。広範囲に分布していてもよく、比較的狭い範囲に分布していてもよい。なお、無機粒子の粒径は、一次粒径の中心粒径が0.001μm以上50μm以下であることが好ましく、蛍光体粒子の一次粒径より小さいことがより好ましい。また、無機粒子の粒径は、蛍光体粒子層の厚さより小さい範囲であることが、蛍光体粒子層の表面平滑性の面から好ましい。無機粒子の平均粒径は、例えばコールターカウンター法によって測定される。
蛍光体含有組成物に含まれる無機粒子の量は、蛍光体含有組成物の固形分全量に対して0.5〜70質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜65質量%であり、さらに好ましくは1.0〜60質量%である。無機粒子の濃度が0.5質量%未満であると、得られる蛍光体粒子層の強度が低くなるおそれがある。また、蛍光体含有組成物の粘度が低くなるおそれがある。一方、無機粒子の量が70質量%を超えると、相対的に蛍光体粒子の量が少なくなり、十分な蛍光が得られない。さらに、無機粒子によって光が散乱しやすくなり、LED装置からの光取り出し効率が低下する場合がある。
なお、蛍光体含有組成物中の無機粒子の割合が増えるほど、粘度が増加するわけではない。粘度は蛍光体含有組成物中の溶媒量、蛍光体粒子の含有量等、その他の成分との含有比率で定まる。
・溶媒について
蛍光体含有組成物には、溶媒が含まれる。溶媒は、水や、水との相溶性に優れた有機溶媒、さらには水との相溶性が低い有機溶媒でありうる。水との相溶性に優れた有機溶媒の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類が含まれる。
溶媒に水が含まれると、膨潤性粒子が膨潤し、蛍光体含有組成物の粘度が高まる。ただし、水に不純物が含まれると、膨潤性粒子の膨潤を阻害するおそれがある。そこで、膨潤性粒子を膨潤させる場合には、添加する水を純水とする。
また、溶媒には、エチレングリコールや、プロピレングリコール等、沸点が150℃以上の有機溶媒が含まれることも好ましい。沸点が150℃以上の有機溶媒が含まれると、蛍光体含有組成物の保存安定性が向上し、蛍光体含有組成物を塗布装置から安定して塗布できる。一方、蛍光体含有組成物の乾燥性の観点から、溶媒の沸点は250℃以下であることが好ましい。
・蛍光体含有組成物の調製・塗布、及び硬化
蛍光体含有組成物は、蛍光体粒子、無機粒子、膨潤性粒子、及び溶媒を混合・攪拌して調製する。撹拌は、例えば、撹拌ミル、ブレード混練撹拌装置、薄膜旋回型分散機等で行う。蛍光体含有組成物の25℃での粘度は10〜1000cPであることが好ましく、12〜800cPであることがより好ましく、20〜600cPであることがさらに好ましい。粘度は、溶媒の量や、膨潤性粒子の量、無機粒子の量等で調整する。粘度の測定は、振動式粘度計で行う。
蛍光含有組成物は、LEDチップの発光面を覆うように塗布する。塗布の手段は、特に制限されない。例えば、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ディスペンス法、ジェットディスペンス法等、従来公知の方法でありうる。特に、スプレーコート法が、薄い膜を形成可能であるため好ましい。
蛍光含有組成物の塗布量は、所望の蛍光体粒子層の厚みに応じて適宜調整する。蛍光体粒子層の厚みは、15〜300μmとすることが好ましく、30〜200μmとすることがより好ましい。蛍光体粒子層の厚みが15μm未満であると、蛍光体粒子量が少なくなり、十分な蛍光が得られないおそれがある。一方、蛍光体粒子層の厚みが300μmを超えると、蛍光体粒子層中の蛍光体粒子の濃度が過剰に低くなるので、蛍光体粒子の濃度が均一にならないおそれがある。蛍光体粒子層の厚みとは、LEDチップの発光面上に形成した蛍光体粒子層の最大厚みを意味する。蛍光体粒子層の厚みは、レーザホロゲージで測定される。
蛍光体含有組成物の塗布後に蛍光体含有組成物中の溶媒を乾燥させることが好ましい。蛍光体含有組成物中の溶媒を乾燥させる際の温度は、通常20〜200℃であり、好ましくは25〜150℃である。20℃未満であると、溶媒が十分に揮発しない可能性がある。一方、200℃を超えると、LEDチップに悪影響を及ぼす可能性がある。また、乾燥時間は、製造効率の面から、通常0.1〜30分であり、好ましくは0.1〜15分である。
3)透光性セラミック含有組成物塗布工程
透光性セラミック含有組成物を、2)工程で形成した蛍光体粒子層を覆うように塗布する。その後、透光性セラミック材料を硬化させて、前述の各色蛍光体粒子、膨潤性粒子、及び無機粒子を透光性セラミックで結着する。
LED素子上に塗布する透光性セラミック含有組成物には、透光性セラミック材料及び溶媒が含まれ、必要に応じて無機微粒子、2価以上の金属(Siを除く)の有機金属化合物等が含まれる。
・透光性セラミック材料について
透光性セラミック材料は、ゾル−ゲル反応によって透光性セラミック(好ましくはガラスセラミック)となる化合物でありうる。透光性セラミック材料の例には、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート、ポリシラザンオリゴマー等が含まれ、反応性が良好であるとの観点から、金属アルコキシドが好ましい。
金属アルコキシドは、各種金属のアルコキシドでありうるが、得られる透光性セラミックの安定性、及び製造容易性の観点から、アルコキシシランやアリールオキシシランであることが好ましい。
アルコキシシランやアリールオキシシランは、テトラエトキシシラン等の単分子化合物(モノマー)であってもよいが、有機ポリシロキサン化合物(オリゴマー)であることが好ましい。有機ポリシロキサン化合物は、シラン化合物が鎖状または環状にシロキサン結合した化合物である。有機ポリシロキサン化合物の調製方法は、後述する。
有機ポリシロキサン化合物の質量平均分子量は、好ましくは1000〜3000であり、より好ましくは1200〜2700であり、さらに好ましくは1500〜2000である。有機ポリシロキサン化合物の質量平均分子量が1000未満であると、透光性セラミック含有組成物の粘度が低くなり過ぎるおそれがある。一方、質量平均分子量が3000を超えると、透光性セラミック含有組成物の粘度が高くなり、透光性セラミック含有組成物の塗布が困難となる場合がある。質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される値(ポリスチレン換算)である。
透光性セラミック材料が有機ポリシロキサン化合物である場合、透光性セラミック含有組成物に含まれる有機ポリシロキサン化合物の量は、透光性セラミック含有組成物全質量に対して1〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜30質量%である。有機ポリシロキサン化合物の量が1質量%未満であると、透光性セラミック含有組成物の粘度が低くなり過ぎる場合がある。また、有機ポリシロキサン化合物の量が少な過ぎると、十分に赤色蛍光体粒子を被覆することができず、赤色蛍光体粒子の水分劣化を抑制できなくなる可能性がある。一方、有機ポリシロキサン化合物の量が40質量%を超えると、透光性セラミック含有組成物の粘度が過剰に高くなり、透光性セラミック含有組成物の塗布が困難となる場合がある。
透光性セラミック材料の他の好ましい例に、ポリシラザンオリゴマーがある。ポリシラザンオリゴマーは、一般式(I):(RSiNRで表される化合物である。一般式(I)中、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ビニル基、またはシクロアルキル基を表す。ただし、R、R、及びRのうち少なくとも1つは水素原子であり、好ましくはすべてが水素原子である。一般式(I)中、nは1〜60の整数を表す。ポリシラザンオリゴマーの分子形状はいかなる形状であってもよく、例えば、直鎖状または環状であってもよい。
透光性セラミック材料がポリシラザンオリゴマーである場合、透光性セラミック含有組成物に含まれるポリシラザンオリゴマーの量は多いことが好ましいが、ポリシラザンオリゴマーの濃度が高いと、透光性セラミック含有組成物の保存安定性が低くなる場合がある。そこで、ポリシラザンオリゴマーの量は、透光性セラミック含有組成物全質量に対して、5〜50質量%であることが好ましい。
・溶媒について
透光性セラミック含有組成物には、溶媒が含まれる。溶媒は、前述の透光性セラミック材料を溶解、もしくは均一に分散可能なものであればよい。溶媒の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール等の一価アルコール;メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のアルキルカルボン酸エステル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのモノエーテル類、あるいはこれらのモノアセテート類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等の多価アルコールの水酸基をすべてアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等のケトン類;等が含まれる。透光性セラミック含有組成物中には、溶媒が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。
溶媒には、水が含まれることが好ましい。水の量は、透光性セラミック含有組成物全質量に対して、3〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜10質量%である。透光性セラミック材料が有機ポリシロキサン化合物である場合、水の含有量が有機ポリシロキサン化合物100質量部に対して10〜120質量部であることが好ましく、80〜100質量部であることがより好ましい。透光性セラミック含有組成物に含まれる水の量が少な過ぎると、透光性セラミック材料塗布後に有機ポリシロキサン化合物を十分に加水分解できない場合がある。一方、透光性セラミック含有組成物に含まれる水の量が過剰であると、透光性セラミック含有組成物の保存中に加水分解等が生じ、透光性セラミック含有組成物がゲル化するおそれがある。
溶媒には、沸点が150℃以上である有機溶媒(例えばエチレングリコールや、プロピレングリコール等)が含まれることも好ましい。沸点が150℃以上の有機溶媒が含まれると、透光性セラミック含有組成物の保存安定性が高まる。また、塗布装置内で溶媒が揮発し難いため、透光性セラミック含有組成物を塗布装置から安定して塗布できる。
一方、透光性セラミック含有組成物に含まれる溶媒の沸点は250℃以下であることが好ましい。溶媒の沸点が250℃を超えると、透光性セラミック含有組成物の乾燥に時間がかかる。
・無機微粒子について
透光性セラミック含有組成物には、無機微粒子が含まれてもよい。透光性セラミック含有組成物に無機微粒子が含まれると、透光性セラミック含有組成物が硬化する際、膜に生じる応力が緩和され、波長変換部にクラックが発生し難くなる。
無機微粒子の種類は特に制限されないが、無機微粒子の屈折率が、透光性セラミック材料(ポリシロキサンやポリシラザン等)の屈折率より高いことが好ましい。屈折率の高い無機微粒子が透光性セラミック含有組成物に含まれると、得られる波長変換部の屈折率が高まる。一般的にLED素子(LEDチップ)の屈折率は、透光性セラミック材料と比較してかなり高い。そこで、波長変換部の屈折率が高まると、LED素子と波長変換部との屈折率差が小さくなり、LED素子と波長変換部との界面での光の反射が少なくなる。つまり、LED装置の光取り出し効率が高まる。
無機微粒子は、多孔質状の粒子であることが好ましく、その比表面積が200m/g以上であることが好ましい。無機微粒子が多孔質であると、多孔質の空隙部に溶媒が入り込み、透光性セラミック含有組成物の粘度が高まる。ただし、透光性セラミック含有組成物の粘度は、単に無機微粒子の量によって定まるものではなく、無機微粒子と溶媒との比率や、その他の成分の量等によっても変化する。
無機微粒子の平均一次粒径は、5〜100nmであることが好ましく、より好ましくは5〜80nm、さらに好ましくは5〜50nmである。無機微粒子の平均一次粒径が、100nm以下であると、前述の2)工程で形成された蛍光体粒子層の蛍光体粒子同士の隙間に入りこみやすい。また、無機微粒子の平均一次粒径が、5nm以上であると、前述のクラック抑制効果、屈折率向上効果が得られやすい。無機微粒子の平均一次粒径は、コールターカウンター法で測定される。
無機微粒子の例には、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニオブ、及び酸化亜鉛等が含まれる。これらの中でも、屈折率が高いことから、無機微粒子は酸化ジルコニウム微粒子であることが好ましい。透光性セラミック含有組成物には、無機微粒子が1種のみ含まれてもよく、2種以上が含まれてもよい。
無機微粒子は、表面がシランカップリング剤やチタンカップリング剤で処理されたものであってもよい。表面処理された無機微粒子は、透光性セラミック含有組成物に均一に分散されやすい。
透光層用組成物中の無機微粒子の量は、透光性セラミック含有組成物の固形分全量に対して10〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜45質量%、さらに好ましくは20〜30質量%である。無機微粒子の量が少なすぎると、前述のクラック抑制効果が高まらず、屈折率向上効果も十分とならない。一方で、無機微粒子の量が多すぎると、相対的に透光性セラミック材料(バインダ)の量が減少し、赤色蛍光体粒子の被覆が不十分となったり、波長変換部の強度が低下するおそれがある。
・有機金属化合物について
透光性セラミック含有組成物には、2価以上の金属(Siを除く)の有機金属化合物が含まれてもよい。有機金属化合物は、Si元素以外の2価以上の金属元素の金属アルコキシドまたは金属キレートでありうる。金属アルコキシドまたは金属キレートは、透光性セラミック含有組成物の塗布後、透光性セラミック材料や、LED素子の表面に存在する水酸基と、メタロキサン結合を形成する。当該メタロキサン結合は非常に強固である。そのため、透光性セラミック含有組成物に金属アルコキシドまたは金属キレートが含まれると、波長変換部とLED素子との密着性が高まる。
一方、金属アルコキシドまたは金属キレートの一部は、波長変換部内で、メタロキサン結合からなるナノサイズのクラスタを形成する。このクラスタは、金属腐食性の高い硫化水素ガスを腐食性の低い二酸化硫黄ガスに変化させる光触媒として機能する。そのため、透光性セラミック含有組成物に、金属アルコキシドまたは金属キレートが含まれると、LED装置の硫化耐性も高まる。
金属アルコキシドまたは金属キレートに含まれる金属元素は、Si元素以外の4族または13族の金属元素であることが好ましく、以下の一般式(II)で表される化合物が好ましい。
m+m−n (II)
一般式(II)中、Mは4族または13族の金属元素を表し、mはMの価数(3または4)を表す。Xは加水分解性基を表し、nはX基の数(2以上4以下の整数)を表す。ただし、m≧nである。Yは1価の有機基を表す。
一般式(II)において、Mで表される4族または13族の金属元素は、アルミニウム、ジルコニウム、チタンであることが好ましく、ジルコニウムであることが特に好ましい。ジルコニウムのアルコキシドまたはキレートの硬化物は、一般的なLEDチップの発光波長域(紫外光(400nm以下))に吸収波長を有さない。つまり、ジルコニウムのアルコキシドまたはキレートの硬化物には、LEDチップの出射光が吸収され難い。
一般式(II)において、Xで表される加水分解性基は、水で加水分解され、水酸基を生成する基でありうる。加水分解性基の好ましい例には、炭素数が1〜5の低級アルコキシ基、アセトキシ基、ブタノキシム基、クロル基等が含まれる。一般式(II)において、Xで表される基は、全て同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。
Xで表される加水分解性基は、加水分解されて遊離する。そのため加水分解後に生成される化合物が中性であり、かつ軽沸である基が好ましい。そこで、Xで表される基は、炭素数1〜5の低級アルコキシ基であることが好ましく、より好ましくはメトキシ基、またはエトキシ基である。
一般式(II)において、Yで表される1価の有機基は、一般的なシランカップリング剤に含まれる1価の有機基でありうる。具体的には、炭素数が1〜1000、好ましくは500以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは40以下、特に好ましくは6以下である脂肪族基、脂環族基、芳香族基、脂環芳香族基でありうる。Yで表される有機基は、脂肪族基、脂環族基、芳香族基、及び脂環芳香族基が連結基を介して結合した基であってもよい。連結基は、O、N、S等の原子またはこれらを含む原子団であってもよい。
Yで表される有機基は、置換基を有してもよい。置換基の例には、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子;ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、スチリル基、メルカプト基、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシ基、イミノ基、フェニル基等の有機基が含まれる。
一般式(II)で表されるアルミニウムの金属アルコキシドまたは金属キレートの具体例には、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリn−ブトキシド、アルミニウムトリt−ブトシキド、アルミニウムトリエトキシド等が含まれる。
一般式(II)で表されるジルコニウムの金属アルコキシドまたは金属キレートの具体例には、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラn−プロポキシド、ジルコニウムテトラi−プロポキシド、ジルコニウムテトラn−ブトキシド、ジルコニウムテトラi−ブトキシド、ジルコニウムテトラt−ブトキシド、ジルコニウムジメタクリレートジブトキシド、ジブトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)等が含まれる。
一般式(II)で表されるチタン元素の金属アルコキシドまたは金属キレートの具体例には、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド、チタンテトラi−ブトキシド、チタンメタクリレートトリイソプロポキシド、チタンテトラメトキシプロポキシド、チタンテトラn−プロポキシド、チタンテトラエトキシド、チタンラクテート、チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、チタンアセチルアセトネート等が含まれる。
ただし、上記で例示した金属アルコキシドまたは金属キレートは、入手容易な市販の有機金属アルコキシドまたは金属キレートの一部である。科学技術総合研究所発行の「カップリング剤最適利用技術」9章のカップリング剤及び関連製品一覧表に示される金属アルコキシドまたは金属キレートも、本発明に適用できる。
透光性セラミック含有組成物に含まれる金属アルコキシドまたは金属キレート(有機金属化合物)の量は、透光性セラミック材料100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは8〜40質量部、さらに好ましくは10〜15質量部である。金属アルコキシドまたは金属キレートの量が5質量部未満であると、前述の密着性向上効果等が得られない。一方で、金属アルコキシドまたは金属キレートの量が100質量部を超えると、透光性セラミック含有組成物の保存性が低下する。
・反応促進剤について
透光性セラミック含有組成物には、反応促進剤が含まれていてもよい。反応促進剤は、透光性セラミック材料が、ポリシラザンオリゴマーである場合に含まれることが特に好ましい。反応促進剤は、酸または塩基などでありうる。反応促進剤の具体例には、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びトリエチルアミン等の塩基;塩酸、シュウ酸、フマル酸、スルホン酸、及び酢酸等の酸;ニッケル、鉄、パラジウム、イリジウム、白金、チタン、アルミニウムを含む金属のカルボン酸塩などが含まれるが、これに限られない。反応促進剤は金属カルボン酸塩であることが特に好ましい。反応促進剤の量は、ポリシラザンオリゴマーの質量に対して0.01〜5mol%であることが好ましい。
・透光性セラミック含有組成物の塗布及び乾燥について
透光性セラミック含有組成物の塗布方法は、特に制限されない。例えば、ブレード塗布、スピンコート塗布、ディスペンサー塗布、スプレー塗布などでありうるが、スプレー塗布によれば、厚みの薄い波長変換部を成膜できる。
透光性セラミック含有組成物の塗布量は、蛍光体粒子層に含まれる赤色蛍光体粒子、膨潤性粒子、無機粒子等を十分に被覆可能な量とする。透光性セラミック含有組成物の塗布量が少なすぎると、赤色蛍光体粒子を十分に被覆できず、赤色蛍光体粒子の劣化が抑制されないおそれがある。
透光性セラミック含有組成物の塗布後、塗膜を100℃以上、好ましくは150〜300℃に加熱し、透光性セラミック含有組成物を乾燥・硬化させる。透光性セラミック材料が、有機ポリシロキサン化合物である場合、加熱温度が100℃未満であると、脱水縮合時に生じる水分を十分に除去できず、波長変換部の耐光性等が低下する可能性がある。
一方、透光性セラミック材料がポリシラザンオリゴマーである場合には、170〜230nmの範囲の波長成分を含むVUV放射線(例えばエキシマ光)を塗膜に照射して硬化させた後、さらに加熱硬化を行うことが好ましい。波長変換部が緻密な膜となり、LED装置の耐湿性が高まりやすい。
・有機ポリシロキサン化合物の調製方法
透光性セラミック材料である有機ポリシロキサン化合物は、アルコキシシラン化合物、またはアリールオキシシラン化合物を重合して得られる。アルコキシシラン化合物またはアリールオキシシラン化合物は、例えば以下の一般式(III)で表される。
Si(OR)4−n (III)
一般式(III)中、nはアルコキシ基またはアリールオキシ基(OR)の数を表し、2以上4以下の整数である。また、Rは、それぞれ独立にアルキル基またはフェニル基を表し、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、またはフェニル基を表す。
上記一般式(III)式中、Yは、水素原子、または1価の有機基を表す。Yで表される1価の有機基の具体例には、炭素数が1〜1000、好ましくは500以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは50以下、特に好ましくは6以下の脂肪族基、脂環族基、芳香族基、脂環芳香族基が含まれる。これらの1価の有機基は、肪族基、脂環族基、芳香族基、及び脂環芳香族基が連結基を介して結合した基であってもよい。連結基は、O、N、S等の原子またはこれらを含む原子団であってもよい。また、Yで表される1価の有機基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子;ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、スチリル基、メルカプト基、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシ基、イミノ基、フェニル基等の有機官能基等が含まれる。
一般式(III)において、Yで表される基は、特にメチル基であることが好ましい。Yがメチル基であると、波長変換部の耐光性及び耐熱性が良好になる。
上記一般式(III)で表されるアルコキシシランまたはアリールオキシシランには、以下の4官能のシラン化合物、3官能のシラン化合物、2官能のシラン化合物が含まれる。
4官能のシラン化合物の例には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テトラフェニルオキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリエトキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシトリブトキシシラン、モノメトキシトリペンチルオキシシラン、モノメトキシトリフェニルオキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、トリプロポキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノブトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、トリエトキシモノプロポキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、トリブトキシモノプロポキシシラン、ジメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジブトキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジブトキシモノエトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシモノエトキシモノプロポキシモノブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン、テトラアリールオキシシラン等が含まれる。これらの中でもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
3官能のシラン化合物の例には、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリペンチルオキシシラン、トリフェニルオキシシラン、ジメトキシモノエトキシシラン、ジエトキシモノメトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシシラン、ジペンチルオキシルモノメトキシシラン、ジペンチルオキシモノエトキシシラン、ジペンチルオキシモノプロポキシシラン、ジフェニルオキシルモノメトキシシラン、ジフェニルオキシモノエトキシシラン、ジフェニルオキシモノプロポキシシラン、メトキシエトキシプロポキシシラン、モノプロポキシジメトキシシラン、モノプロポキシジエトキシシラン、モノブトキシジメトキシシラン、モノペンチルオキシジエトキシシラン、モノフェニルオキシジエトキシシラン等のモノヒドロシラン化合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリペンチルオキシシラン、メチルモノメトキシジエトキシシラン、メチルモノメトキシジプロポキシシラン、メチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、メチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、メチルメトキシエトキシプロポキシシラン、メチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のモノメチルシラン化合物;エチルトリメトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリペンチルオキシシラン、エチルトリフェニルオキシシラン、エチルモノメトキシジエトキシシラン、エチルモノメトキシジプロポキシシラン、エチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、エチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、エチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のモノエチルシラン化合物;プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリペンチルオキシシラン、プロピルトリフェニルオキシシラン、プロピルモノメトキシジエトキシシラン、プロピルモノメトキシジプロポキシシラン、プロピルモノメトキシジペンチルオキシシラン、プロピルモノメトキシジフェニルオキシシラン、プロピルメトキシエトキシプロポキシシラン、プロピルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のモノプロピルシラン化合物;ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリペンチルオキシシラン、ブチルトリフェニルオキシシラン、ブチルモノメトキシジエトキシシラン、ブチルモノメトキシジプロポキシシラン、ブチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ブチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ブチルメトキシエトキシプロポキシシラン、ブチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のモノブチルシラン化合物が含まれる。これらの中でも、メチルトリメトキシシランおよびメチルトリエトキシシランがより好ましく、メチルトリメトキシシランがさらに好ましい。
2官能のシラン化合物の具体例には、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジプロポキシシラン、ジペンチルオキシシラン、ジフェニルオキシシラン、メトキシエトキシシラン、メトキシプロポキシシラン、メトキシペンチルオキシシラン、メトキシフェニルオキシシラン、エトキシプロポキシシラン、エトキシペンチルオキシシラン、エトキシフェニルオキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルメトキシエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルメトキシプロポキシシラン、メチルメトキシペンチルオキシシラン、メチルメトキシフェニルオキシシラン、エチルジプロポキシシラン、エチルメトキシプロポキシシラン、エチルジペンチルオキシシラン、エチルジフェニルオキシシラン、プロピルジメトキシシラン、プロピルメトキシエトキシシラン、プロピルエトキシプロポキシシラン、プロピルジエトキシシラン、プロピルジペンチルオキシシラン、プロピルジフェニルオキシシラン、ブチルジメトキシシラン、ブチルメトキシエトキシシラン、ブチルジエトキシシラン、ブチルエトキシプロポキシシシラン、ブチルジプロポキシシラン、ブチルメチルジペンチルオキシシラン、ブチルメチルジフェニルオキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジペンチルオキシシラン、ジメチルジフェニルオキシシラン、ジメチルエトキシプロポキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルメトキシプロポキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルエトキシプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジペンチルオキシシラン、ジプロピルジフェニルオキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジブチルジプロポキシシラン、ジブチルメトキシペンチルオキシシラン、ジブチルメトキシフェニルオキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジプロポキシシラン、メチルエチルジペンチルオキシシラン、メチルエチルジフェニルオキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、メチルブチルジメトキシシラン、メチルブチルジエトキシシラン、メチルブチルジプロポキシシラン、メチルエチルエトキシプロポキシシラン、エチルプロピルジメトキシシラン、エチルプロピルメトキシエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルメトキシエトキシシラン、プロピルブチルジメトキシシラン、プロピルブチルジエトキシシラン、ジブチルメトキシエトキシシラン、ジブチルメトキシプロポキシシラン、ジブチルエトキシプロポキシシラン等が含まれる。中でもジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシランが好ましい。
有機ポリシロキサン化合物は、上記シラン化合物を、酸触媒、水、有機溶媒の存在下で加水分解し、縮合反応させる方法で調製できる。有機ポリシロキサン化合物の質量平均分子量は、反応条件(特に反応時間)等で、調整可能である。
この際、4官能シラン化合物と、3官能シラン化合物や2官能シラン化合物とを所望のモル比率で予め混合し、ランダムに重合させてもよい。また3官能シラン化合物または2官能シラン化合物を単独である程度重合させてオリゴマーとした後、このオリゴマーに4官能シラン化合物のみを重合させる等して、ブロック共重合体としてもよい。
有機ポリシロキサン化合物の調製用の酸触媒は、下記一般式(IV)で表わされる有機スルホン酸であることが特に好ましい。
−SOH …(IV)
上記一般式(IV)において、Rで表される炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状の飽和もしくは不飽和の炭素数1〜20の炭化水素基である。環状の炭化水素基の例には、フェニル基、ナフチル基、またはアントリル基等の芳香族炭化水素基が含まれ、好ましくはフェニル基である。また、一般式(IV)においてRで表される炭化水素基は、置換基を有してもよい。置換基の例には、直鎖状、分岐鎖状、または環状の、炭素数1〜20の飽和若しくは不飽和の炭化水素基;フッ素原子等のハロゲン原子;スルホン酸基;カルボキシル基;水酸基;アミノ基;シアノ基等が含まれる。
上記一般式(IV)で表わされる有機スルホン酸は、特にノナフルオロブタンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、またはドデシルベンゼンスルホン酸であることが好ましい。
有機ポリシロキサン化合物の調製時に添加する酸触媒の量は、有機ポリシロキサン化合物調製液全量に対して1〜1000質量ppmであることが好ましく、より好ましくは5〜800質量ppmである。
有機ポリシロキサン化合物の調製時に添加する水の量によって、有機ポリシロキサン化合物の焼成物の性質が変化する。したがって、目的とする性質に応じて、有機ポリシロキサン化合物調製時の水添加率を調整することが好ましい。水添加率とは、有機ポリシロキサン化合物調製液に含まれるシラン化合物のアルコキシ基またはアリールオキシ基のモル数に対する、添加する水分子のモル数の割合(%)である。水添加率は、50〜200%であることが好ましく、より好ましくは75〜180%である。水添加率を、50%以上とすることで、波長変換部の性質が安定する。また200%以下とすることで透光性セラミック含有組成物の保存安定性が良好となる。
有機ポリシロキサン化合物の調製時に添加する溶媒の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール等の一価アルコール;メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のアルキルカルボン酸エステル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのモノエーテル類、あるいはこれらのモノアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等のケトン類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等の多価アルコールの水酸基をすべてアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類;等が含まれる。これらは1種単独で添加してもよく、また2種以上を添加してもよい。
4)透明樹脂層用組成物塗布工程
前述の波長変換部上に、透明樹脂層用組成物を塗布し、透明樹脂層を形成する。
透明樹脂層用組成物に含まれる透明樹脂は、可視光に対して透明な硬化性樹脂等でありうる。透明樹脂の例には、エポキシ変性シリコーン樹脂、アルキッド変性シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、ポリエステル変性シリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂等のシリコーン樹脂;エポキシ樹脂;アクリル樹脂;メタクリル樹脂;ウレタン樹脂等の透明樹脂等が含まれる。特にフェニルシリコーン樹脂であることが好ましい。透明樹脂がフェニルシリコーン樹脂であると、LED装置の耐湿性が高まる。
透明樹脂層用組成物には、必要に応じて溶媒が含まれてもよい。溶媒の種類は、透明樹脂の種類や透明樹脂層用組成物の粘度に応じて適宜選択される。
透明樹脂層用組成物の塗布方法は、特に制限されず、例えばディスペンサ等の一般的な塗布装置による塗布方法でありうる。また、透明樹脂層用組成物の硬化方法や硬化条件は、透明樹脂の種類により適宜選択する。硬化方法の一例として、加熱硬化が挙げられる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲はこれによって何ら制限を受けない。
(蛍光体粒子の準備)
実施例及び比較例には、下記の蛍光体粒子を用いた。
・青色光(波長445〜465nm)で励起する蛍光体
黄色蛍光体 (Y,Gd)(Al,Ga)12:Ce
・紫外光(波長400nm以下)で励起する蛍光体
青色蛍光体 BaMgAl1017:Eu
赤色蛍光体 (Ba,Sr)S:Eu
緑色蛍光体 (Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Eu
(比較例1)
円形パッケージ(開口径3mm、底面直径2mm、壁面角度60°)の収容部の中央に、1つの紫外LEDチップ(直方体状;200μm×300μm×100μm、発光波長:380nm)をフリップチップ実装したLEDチップ実装パッケージ(以下、「紫外LED素子」ともいう)を準備した。
フェニルシリコーン樹脂(KER−6000:信越化学工業株式会社製)9g、赤色蛍光体0.34g、緑色蛍光体0.34g、及び青色蛍光体0.34gを攪拌混合した。この混合液を、紫外LED素子の凹部内に、ディスペンサで注入した。これを150℃で1時間加熱し、LED装置を得た。
(比較例2)
円形パッケージ(開口径3mm、底面直径2mm、壁面角度60°)の収容部の中央に、1つの青色LEDチップ(直方体状;200μm×300μm×100μm、発光波長;450nm)をフリップチップ実装したLEDチップ実装パッケージ(以下、「青色LED素子」ともいう)を準備した。
黄色蛍光体1gと、膨潤性粒子である合成雲母(MK−100;コープケミカル社製)0.05gと、無機粒子であるRX300(1次粒子の平均粒径が7nmであるシリル化処理無水ケイ酸;日本アエロジル社製)0.05gと、溶媒であるプロピレングリコール1.5gとを混合して、蛍光体含有組成物を調製した。
この蛍光体含有組成物を、前述の青色LED素子の凹部内にスプレー装置で塗布した。スプレー装置のスプレー圧は0.05MPa、スプレー装置のノズルとLED素子との相対移動速度は50mm/sとした。蛍光体含有組成物を塗布したLED素子を50℃の環境下で1時間静置した。得られた蛍光体粒子層の厚みは、30μmであった。
さらに、有機ポリシロキサン化合物分散液(ポリシロキサン14重量%、イソプロピルアルコール86重量%)1gと、イソプロピルアルコール0.3gとを混合して透光性セラミック含有液を調製した。前述の蛍光体粒子層上に、透光性セラミック含有液をスプレー装置で塗布した。スプレー装置のスプレー圧は0.05MPa、スプレー装置のノズルとLED素子との相対移動速度は150mm/sとした。透光性セラミック含有液を塗布したLED素子を、150℃で1時間焼成し、蛍光体粒子、膨潤性粒子、及び無機粒子が透明セラミックで結着された波長変換部を形成した。波長変換部の厚みは32μmであった。
さらに、フェニルシリコーン樹脂(KER−6000:信越化学工業株式会社製)をディスペンサで波長変換部上に塗布した。その後、150℃で1時間加熱して、フェニルシリコーン樹脂を硬化させ、透明樹脂層を形成した。透明樹脂層の厚みは、1mmであった。
(比較例3)
透明樹脂層を形成しなかった以外は、比較例2と同様にLED装置を作製した。
(実施例1)
蛍光体含有分散液を、赤色蛍光体0.5g、緑色蛍光体0.5g、MK−100(合成雲母;コープケミカル社製)0.05g、RX300(1次粒子の平均粒径が7nmであるシリル化処理無水ケイ酸;日本アエロジル社製)0.05g、及びプロピレングリコール1.5gを混合・攪拌して調製し、紫外LED素子に塗布した以外は、比較例2と同様にLED装置を作製した。
(実施例2)
蛍光体含有分散液を、赤色蛍光体0.5g、緑色蛍光体0.5g、青色蛍光体0.5g、MK−100 0.05g、RX300 0.05g、プロピレングリコール1.5gを混合・攪拌して調製した以外は、実施例1と同様にLED装置を作製した。
(実施例3)
蛍光体含有分散液を、赤色蛍光体0.5g、緑色蛍光体0.5g、青色蛍光体0.5g、ルーセンタイトSWN(スメクタイト;コープケミカル社製(以下「SWN」ともいう)0.05g、RX300 0.05g、及びプロピレングリコール1.5gを混合・攪拌して調製した。一方、透光性セラミック含有組成物を、ポリシロキサン分散液(ポリシロキサン14重量%、イソプロピルアルコール86重量%)1gと、平均粒径20nmのZrOスラリー分散液0.3gとを混合・攪拌して調製した。これら以外は、実施例1と同様にLED装置を作製した。
(実施例4)
蛍光体含有組成物を、赤色蛍光体0.5g、緑色蛍光体0.5g、青色蛍光体0.5g、SWN 0.05g、サイリシア470(1次粒子の平均粒径が14μmである合成シリカ;富士シリシア社製)0.05g、及びプロピレングリコール1.5gを混合・攪拌して調製した以外は、実施例3と同様にLED装置を作製した。
(実施例5)
透光性セラミック含有組成物を、有機ポリシロキサン化合物分散液1g、ジルコニアアルコキシド(テトラブトキシジルコニウム70重量%及び1−ブタノール30重量%)0.2g、平均粒径20nmのZrOスラリー分散液0.3gを混合・攪拌して調製した以外は、実施例3と同様にLED装置を作製した。
(実施例6)
透光性セラミック含有組成物を、有機ポリシロキサン化合物分散液1gと、ジルコニアキレート(ジルコニウムテトラアセチルアセトネート20重量%及び1−ブタノール80重量%)0.2gと、平均粒径20nmのZrOスラリー分散液0.3gとを混合・攪拌して調製した以外は、実施例3と同様にLED装置を作製した。
(実施例7)
透光性セラミック含有組成物を、有機ポリシロキサン化合物分散液1gと、チタンアルコキシド(テトラブチルチタネート90重量%及び1-ブタノール10重量%)0.2gと、平均粒径20nmのTiOスラリー分散液0.3gとを混合・攪拌して調製した以外は、実施例3と同様にLED装置を作製した。
(実施例8)
蛍光体含有組成物を、赤色蛍光体0.5g、前記緑色蛍光体0.5g、前記青色蛍光体0.5g、膨潤性粒子である合成雲母(MK−100;コープケミカル社製)0.05g、サイリシア470(1次粒子の平均粒径が14μmである合成シリカ;富士シリシア社製)0.05g、及び溶媒であるプロピレングリコール1.5gを混合・攪拌して調製した。また、透光性セラミック含有組成物を、有機ポリシロキサン化合物分散液1gと、チタンキレート(チタンラクテート40重量%、2−プロパノール50重量%、及び水10重量%)0.2gと、平均粒径20nmのTiOスラリー分散液0.3gとを混合・攪拌して調製した。これら以外は、実施例3と同様にLED装置を作製した。
(比較例4)
蛍光体粒子層を形成後、透光性セラミック含有組成物を塗布せずに、フェニルシリコーン樹脂で透明樹脂層を形成した以外は、実施例3と同様にLED装置を作製した。
(比較例5)
蛍光体含有組成物を、赤色蛍光体0.5g、緑色蛍光体0.5g、青色蛍光体0.5g、RX300 0.05g、及びプロピレングリコール1.5gを混合・攪拌して調製した以外は、実施例1と同様にLED装置を作製した。
(参考例)
蛍光体含有分散液を、青色蛍光体0.5g、黄色蛍光体0.5g、MK−100 0.05g、RX300 0.05g、及びプロピレングリコール1.5gを混合・攪拌して調整し、紫外LED素子に塗布した以外は、実施例1と同様にLED装置を作製した。
(評価)
各実施例、比較例、及び参考例で作製したLED装置について、発光効率、硫化耐性、演色性、及び色度を評価した。表1にその結果を示す。
・発光効率
各LED装置が出射する全光束を、分光放射輝度計(CS−2000、コニカミノルタセンシング社製)により測定した。評価は、比較例1のLED装置の全光束を100とし、相対的に評価した。表1には、比較例1のLED装置の全光束からの変化率を示す。
・硫化耐性
LED装置と硫黄粉(関東化学株式会社製、硫黄粉末)とを密閉容器に入れ、80℃で1日間放置した。試験前後のLED装置の全光束を測定し、試験後の全光束と試験前の全光束との差で評価した。この差が少ないほど、硫化耐性が良好である。
・演色性
各実施例、比較例、及び参考例で作製したLED装置を、湿度85%、温度85℃の環境下に1000時間静置した。このLED装置から出射する光について、CIE演色評価法で評価した。具体的には、JIS Z8726に基づき、所定の物体をLED装置で照らした光の色度と、基準の光源で照らした光の色度を測定した。これらの色度を、JIS Z8726に基づいて算出した平均演色指数Raの値で評価した。
「◎」・・・Raが95以上
「○」・・・Raが85以上95未満
「△」・・・Raが75以上85未満
「×」・・・Raが75未満
・色度ムラ
各実施例、比較例、及び参考例のLED装置を、それぞれ5つずつ準備した。各LED装置から出射される光の色度を、分光放射輝度計(CS−1000A、コニカミノルタセンシング社製)で測定した。色度はCIE表色系のx値とy値を測定した。x+y+z=1の関係から得られるz座標は省略した。
各実施例及び比較例の5サンプルの色度(x値及びy値)について、それぞれ標準偏差を求めた。評価は、x値とy値の標準偏差の平均値で行った。基準を下記に示す。
「○」・・・標準偏差の平均値が0.02以下であり、実用上問題なし(色の均一性が求められる用途にも適用可能)
「×」・・・標準偏差の平均値が0.02より大きく、実用上好ましくない
Figure 2014003065
表1に示されるように、蛍光体粒子を透明樹脂層に分散させた場合(比較例1)や、透光性セラミック含有組成物を塗布しなかった場合(比較例4)には、LED装置の照射光の演色性が非常に悪かった。これらの例では、赤色蛍光体粒子が水分劣化したため、演色性の評価が低かったと推察される。
また、蛍光体粒子を透明樹脂層に分散させた比較例1では、作製した5つのLED装置の照射光の色度にムラがあった。透明樹脂に蛍光体粒子が均一に分散せず、透明樹脂層内における蛍光体粒子の濃度にムラが生じたと推察される。
また、蛍光体含有組成物に、膨潤性粒子を添加しなかった場合(比較例5)にも、演色性が非常に悪かった。蛍光体含有組成物内で、蛍光体粒子が沈降したと推察される。またこの場合、作製した5つのLED装置の照射光の色度にムラも生じた。
また、青色LED素子と黄色蛍光体粒子とを組み合わせた場合(比較例2及び3)、LED装置の照射光の演色性が十分ではなかった。青色LED素子と黄色蛍光体粒子との組み合わせでは、再現できる色調が限られる。そのため、蛍光体粒子の水分劣化が生じなかったにも関わらず、演色性の評価が低かった。
これに対し、赤色蛍光体粒子及び緑色粒子を透明セラミックで結着し、光源を紫外LED素子とした実施例1では、演色性の評価が良かった。実施例1では蛍光体粒子が透光性セラミックで被覆されているため、LED装置を高温高湿環境下においても、赤色蛍光体粒子が劣化しなかったと推察される。また、実施例1では、複数のLED装置を作製しても、色度ムラが生じ難かった。蛍光体粒子を含む蛍光体粒子層をLED素子上に形成してから、透光性セラミック含有組成物を塗布したため、LED素子表面に均一な濃度で蛍光体粒子を配置できたと推察される。
また透光性セラミックに、赤色蛍光体、緑色蛍光体、及び緑色蛍光体を分散させた場合(実施例2〜8)には、特にLED装置からの光の演色性が優れた。光の三原色に対応する蛍光体粒子が含まれるため、照射光の色再現性が高まったと推察される。
また、透光性セラミック含有組成物に、無機微粒子が含まれる場合(実施例3〜8)、硫化耐性が高まった。透光性セラミック含有組成物の強度が高まり、クラック等が生じ難かった、と推察される。また、透光性セラミック含有組成物に、無機微粒子が含まれる場合、発光効率も高まった。無機微粒子が含まれることで、波長変換部の屈折率が高まり、LED素子と波長変換部との屈折率が小さくなった;つまり、これらの界面での反射が少なくなったと推察される。
さらに、透光性セラミック含有組成物に、有機金属化合物(特にZrキレート、Tiアルコキシド、及びTiキレート)が含まれる場合、発光効率が高まり、さらに硫化耐性も良好になった。これらの有機金属化合物に含まれる金属が、LED素子表面の水酸基とメタロキサン結合を形成し、LED素子と、波長変換部との密着性が高まった、と推察される。
なお、青色蛍光体粒子及び黄色蛍光体粒子を透光性セラミックで結着し、光源を紫外LED素子とした場合(参考例)には、蛍光体粒子が劣化することがなく、演色性が高かった。また、透光性セラミックに蛍光体を分散させているため、複数のLED装置を作製しても、色度ムラが生じ難かった。
本発明により製造されるLED装置は、経時で照射光の色度が変化することがない。また、硫化耐性にも優れ、さらに照射光の色度が、所望の範囲である。したがって、屋内、屋外の照明装置だけでなく、自動車のヘッドライト等、大光量かつ色度の均一性が求められる用途にも適用可能である。
1 パッケージ
2 メタル部
3 LEDチップ
4 配線
5 突起電極
6 波長変換部
7 透明樹脂層
100 LED装置

Claims (9)

  1. 波長400nm以下の光を出射するLED素子と、前記LED素子から出射する光を他の波長の光に変換する波長変換部と、前記波長変換部上に形成された透明樹脂層とを有するLED装置の製造方法において、
    LED素子の発光面上に、前記LED素子から出射する光を受けて赤色光を発する赤色蛍光体粒子、膨潤性粒子、無機粒子、及び溶媒を含む蛍光体含有組成物を塗布し、蛍光体粒子層を形成する工程と、
    前記蛍光体粒子層上に、透光性セラミック材料及び溶媒を含む透光性セラミック含有組成物を塗布し、前記赤色蛍光体粒子、前記膨潤性粒子、及び前記無機粒子が透光性セラミックで結着された前記波長変換部を製膜する工程と、
    前記波長変換部上に、透明樹脂を含む透明樹脂層用組成物を塗布し、透明樹脂層を形成する工程と
    を有するLED装置の製造方法。
  2. 前記赤色蛍光体粒子が、酸硫化物蛍光体粒子または硫化物蛍光体粒子である、請求項1に記載のLED装置の製造方法。
  3. 前記蛍光体含有組成物が、前記LED素子から出射する光を受けて緑色光を発する緑色蛍光体粒子をさらに含む、請求項1または2に記載のLED装置の製造方法。
  4. 前記蛍光体含有組成物が、前記LED素子から出射する光を受けて青色光を発する青色蛍光体粒子をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のLED装置の製造方法。
  5. 前記透光性セラミック材料が、有機ポリシロキサン化合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のLED装置の製造方法。
  6. 前記透光性セラミック含有組成物が無機微粒子をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のLED装置の製造方法。
  7. 前記透光性セラミック含有組成物が、2価以上の金属(Siを除く)の有機金属化合物をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のLED装置の製造方法。
  8. 前記透明樹脂がフェニルシリコーン樹脂である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のLED装置の製造方法。
  9. 波長400nm以下の光を出射するLED素子と、
    前記LED素子上に形成され、前記LED素子からの光を受けて赤色光を発する赤色蛍光体粒子、膨潤性粒子、無機粒子、及び透光性セラミックを含む波長変換部と、
    前記波長変換部上に形成された透明樹脂層とを有する、LED装置。
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