(発光装置)
以下、本発明の発光装置及び波長変換・光拡散素子の実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態の発光装置の概略断面図である。図1に示すように、発光装置100は、断面凹状のLED基板1の底部にメタル部2が設けられ、メタル部2上に発光素子として直方体状のLEDチップ3を配置している。LEDチップ3には、メタル部2に対向する面に、突起電極4が設けられており、メタル部2とLEDチップ3とを突起電極4を介して接続している(フリップチップ型)。なお、ここでは、一つのLED基板1に対して一つのLEDチップ3が設けられる構成を図示しているが、一つのLED基板1の凹部に複数のLEDチップ3を設けることとしてもよい。
本実施形態では、LEDチップ3として青色LEDチップを用いている。青色LEDチップは、例えばサファイア基板上にn−GaN系クラッド層、InGaN発光層、p−GaN系クラッド層、及び透明電極を積層してなる。
また、LEDチップ3の光取り出し面側には波長変換・光拡散部6が設けられている。波長変換・光拡散部6は、LEDチップ3を覆うようにLED基板1の凹部に形成されている。なお、波長変換・光拡散部6は、必ずしも図1のようにLED基板1の内底面とLEDチップ3とを覆っている必要はなく、少なくともLEDチップ3の出射面を覆っていればよい。
波長変換・光拡散部6は、蛍光体を含む波長変換層と、白色顔料及び透光性セラミック材料を含む光拡散セラミック層と、必要に応じて透光性セラミック材料を含むセラミック層とが積層されたものである。セラミック層が波長変換層に隣接していれば、波長変換・光拡散部6における積層順序には他に限定はなく、図2〜7に示すような6つの積層順序が挙げられる。
図2では、上から、光拡散セラミック層8、波長変換層7の順に積層されている。図3では、上から、波長変換層7、光拡散セラミック層8の順に積層されている。図4では、上から、光拡散セラミック層8、波長変換層7、セラミック層9の順に積層されている。図5では、上から、波長変換層7、セラミック層9、光拡散セラミック層8の順に積層されている。図6では、上から、光拡散セラミック層8、セラミック層9、波長変換層7の順に積層されている。図7では、上から、セラミック層9、波長変換層7、光拡散セラミック層8の順に積層されている。
これらのパターンから得られるLED装置の構成を(a)〜(f)に記す。何れの構成でも本発明の効果は得られるが、耐摩耗性を考慮すると、光拡散セラミック層8又はセラミック層9が最外層となる(a)、(c)、(e)、(f)の構成が好ましい。
(a)光拡散セラミック層/波長変換層/LEDチップ(図2の波長変換・光拡散部を採用)
(b)波長変換層/光拡散セラミック層/LEDチップ(図3の波長変換・光拡散部を採用)
(c)光拡散セラミック層/波長変換層/セラミック層/LEDチップ(図4の波長変換・光拡散部を採用)
(d)波長変換層/セラミック層/光拡散セラミック層/LEDチップ(図5の波長変換・光拡散部を採用)
(e)光拡散セラミック層/セラミック層/波長変換層/LEDチップ(図6の波長変換・光拡散部を採用)
(f)セラミック層/波長変換層/光拡散セラミック層/LEDチップ(図7の波長変換・光拡散部を採用)
波長変換・光拡散部6の厚みは、好ましくは、5〜200μmであり、より好ましくは、10〜200μmであり、更に好ましくは、10〜100μmである。
波長変換層7は、LEDチップ3から出射される所定波長の光を異なる波長の光に変換する部分であり、LEDチップ3からの波長により励起されて、励起波長と異なる波長の蛍光を出す蛍光体が含まれている。光拡散セラミック層8は、少なくともLEDチップ3の光及び波長変換層7の蛍光を透過する透光性を有するとともに、波長変換層7等を封止して保護する役割と、LEDチップ3から発光した光と、LEDチップ3から発光した光が波長変換層7により変換された光とを反射することで拡散する役割とを有する。セラミック層9は、必ずしも必要ではないが、波長変換層7の密着性を向上させる役割と、波長変換層7等を封止して保護する役割とを有する。
上述したように、蛍光体封止部材のバインダをセラミックにしただけでは、熱によるバインダの劣化は抑えられるが、発光面内の色度均一性は不十分なままである。これに対して本実施形態のLED装置100では、光拡散セラミック層8を用いることで熱による劣化を抑えている。さらに、光拡散セラミック層8は白色顔料を含んでいる。白色顔料はLEDチップ3から発光した光と、LEDチップ3から発光した光が波長変換層7により変換された光とを反射することで拡散するため、LED装置100からの出射光の色度ばらつきが低減され、配光特性に優れる。
このように、LED装置100によれば、色むらの発生を低減すること、耐久性に優れていることを実現することができる。
次に、波長変換・光拡散部6の構成材料、形成方法、発光装置100の製造方法について詳述する。
波長変換層7は、例えば、蛍光体、膨潤性粒子、無機粒子(無機微粒子)、及び溶媒等を含む混合液(波長変換層形成用組成物)を塗布し、加熱(乾燥)して得られる層である。波長変換層形成用組成物には、通常、バインダ成分が含まれない。そのため、波長変換層形成用組成物内で、蛍光体粒子が沈降し難く、波長変換層表面に均一な濃度で蛍光体粒子を配置することができる。つまり、得られるLED装置の照射光の色度が均一となる。また、複数のLED装置を製造した場合にも、各LED装置の照射光の色度を均一にすることができる。
光拡散セラミック層8は、例えば、透光性セラミック材料、白色顔料、膨潤性粒子、無機粒子、及び溶媒等を含む混合液(光拡散セラミック層形成用組成物)を塗布し、加熱(焼成)して得られる透明セラミック層(ガラス体)である。
セラミック層9は、例えば光拡散セラミック層8から白色顔料を抜いた組成であり、透光性セラミック材料、膨潤性粒子、無機粒子、及び溶媒等を含む混合液(セラミック層形成用組成物)を塗布し、加熱(焼成)して得られる透明セラミック層(ガラス体)である。
(蛍光体)
蛍光体は波長変換層形成用組成物に含まれる。蛍光体は、LEDチップ3からの出射光の波長(励起波長)により励起されて、励起波長と異なる波長の蛍光を出射するものである。本実施形態では、青色LEDチップから出射される青色光(波長420nm〜485nm)を黄色光(波長550nm〜650nm)に変換するYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)蛍光体を使用している。
このような蛍光体は、Y、Gd、Ce、Sm、Al、La、Gaの酸化物、または高温で容易に酸化物となる化合物を使用し、それらを化学量論比で十分に混合して混合原料を得る。或いは、Y、Gd、Ce、Smの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶液をシュウ酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合して混合原料を得る。そして、得られた混合原料にフラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して加圧し、成形体を得る。得られた成形体を坩堝に詰め、空気中1350〜1450℃の温度範囲で2〜5時間焼成し、蛍光体の発光特性をもつ焼結体を得る。
なお、本実施形態ではYAG蛍光体を使用しているが、蛍光体の種類はこれに限定されるものではなく、例えばCeを含まない非ガーネット系蛍光体等の他の蛍光体を使用することもできる。また、蛍光体の粒径が大きいほど発光効率(波長変換効率)は高くなる反面、膨潤性粒子との界面に生じる隙間が大きくなって形成された波長変換層7の膜強度が低下する。従って、発光効率と膨潤性粒子との界面に生じる隙間の大きさを考慮し、体積平均粒径が1μm以上50μm以下のものを用いることが好ましく、加熱後の波長変換層7の厚さより小さいものを用いる。蛍光体の体積平均粒径は、例えばコールターカウンター法やレーザー回折・散乱式粒径測定装置によって測定することができる。
波長変換層形成用組成物に含まれる蛍光体粒子の量は、波長変換層形成用組成物の固形分全質量に対して10〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜97質量%である。蛍光体粒子の濃度が10質量%未満であると、波長変換層7から得られる蛍光の量が少なくなり、LED装置100からの光が所望の色度とならない場合がある。一方、蛍光体粒子の量が97質量%を超えると、相対的に膨潤性粒子の量や、無機粒子の量が少なくなり、膜の強度が低下する場合がある。
(波長変換層形成用組成物の調製、塗布、乾燥)
波長変換層形成用組成物は、蛍光体粒子、無機粒子、膨潤性粒子、及び溶媒を混合・攪拌して調製する。撹拌は、例えば、撹拌ミル、ブレード混練撹拌装置、薄膜旋回型分散機等で行う。この混合液の25℃での粘度は10〜1000mPa・sであることが好ましく、12〜800mPa・sであることがより好ましく、20〜600mPa・sであることがさらに好ましい。粘度は、溶媒の量や、膨潤性粒子の量、無機粒子の量等で調整する。粘度の測定は、振動式粘度計で行う。
波長変換層形成用組成物は、LEDチップ3に直接又は光拡散セラミック層8やセラミック層9を介して、LEDチップの発光面を覆うように塗布する。塗布の手段は、特に制限されない。例えば、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ディスペンス法、ジェットディスペンス法等、従来公知の方法でありうる。特に、スプレーコート法が、薄い膜を形成可能であるため好ましい。
波長変換層形成用組成物の塗布後に波長変換層形成用組成物中の溶媒を乾燥させることが好ましい。波長変換層形成用組成物中の溶媒を乾燥させる際の温度は、通常20〜200℃であり、好ましくは25〜150℃である。20℃未満であると、十分に乾燥できない可能性がある。一方、200℃を超えると、LEDチップ3に悪影響を及ぼす可能性がある。また、乾燥時間は、製造効率の面から、通常0.1〜30分であり、好ましくは0.1〜15分である。
(膨潤性粒子)
膨潤性粒子は必要に応じて、波長変換層形成用組成物、光拡散セラミック層形成用組成物、セラミック層形成用組成物に含まれる。膨潤性粒子には膜の強度を高める効果がある。また、波長変換層形成用組成物に膨潤性粒子を加えると、粘度が高まり、蛍光体粒子の沈降が抑制される。
膨潤性粒子としては、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム等のフッ化物粒子、層状ケイ酸塩鉱物、アルミニウムケイ酸塩化合物などを用いることができる。層状ケイ酸塩鉱物としては、雲母構造、カオリナイト構造、スメクタイト構造等の構造を有する膨潤性粘土鉱物が好ましく、膨潤性に富むスメクタイト構造がより好ましい。層状ケイ酸塩鉱物は、混合液中においてカードハウス構造をとるため、少量で混合液の粘度を大幅に増加させる効果がある。また、層状ケイ酸塩鉱物は平板状を呈するため、膜強度を向上させる効果もある。
このような層状ケイ酸塩鉱物としては、天然または合成の、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ハイデライト、モンモリロナイト、ノントライト、ベントナイト等のスメクタイト属粘土鉱物や、Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等の膨潤性雲母属粘土鉱物およびバーミキュラライトやカオリナイト、またはこれらの混合物が含まれる。これらの粘土鉱物は、表面をアンモニウム塩等で修飾(表面処理)されたものであってもよい。
また、アルミニウムケイ酸塩化合物は、主な構成元素を珪素(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)および水素(H)とし、多数のSi−O−Al結合で組み立てられた和水珪酸アルミニウムである。典型的には、組成式:SiO2・Al2O3・2H2O、または、(OH)3Al2O3SiOHで示される。アルミニウムケイ酸塩化合物の例には、イモゴライトと称されるチューブ状のアルミニウムケイ酸塩がある。イモゴライトは、例えば、外径が2.0〜2.5nm、内径が1.0〜1.5nm、長さが20nm〜6μmのチューブ状の形態を有するものである。イモゴライトの外径をa、長さをbとした場合、b/a≧10であるものを好適に用いることができる。また、アルミニウムケイ酸塩化合物が繊維状であると、クラック抑制効果が高まるので好ましい。
また、波長変換層形成用組成物及びセラミック層形成用組成物に含まれるアルミニウムケイ酸塩化合物の量は、各混合液の固形分全質量に対して0.3〜20質量%であることが好ましく、より好ましく0.5〜15質量%である。アルミニウムケイ酸塩化合物の濃度が0.3質量%未満であると、混合液の粘度が十分に高まらず、さらに得られる膜の強度が低下しやすい。一方、アルミニウムケイ酸塩化合物の濃度が20質量%を超えると、波長変換層7では相対的に蛍光体粒子の量が少なくなり、十分な蛍光が得られない。
また、光拡散セラミック層形成用組成物に含まれるアルミニウムケイ酸塩化合物の量は、光拡散セラミック層形成用組成物の固形分全質量に対して0〜30質量%であることが好ましく、より好ましく0〜25質量%であり、さらに好ましくは0〜20質量%である。アルミニウムケイ酸塩化合物の濃度が30質量%を超えると、相対的にバインダである透光性セラミック材料の量が少なくなり、バインダとして十分な強度を得られない。またアルミニウムケイ酸塩化合物を含有することにより光拡散セラミック層形成用組成物の粘度を上昇させる効果があり、白色顔料の沈降を抑えることができる。
なお、層状ケイ酸塩鉱物とアルミニウムケイ酸塩化合物は一方のみ入れても、両方を組み合わせて入れてもよい。
膨潤性粒子の市販品の例としては、ラポナイトXLG(英国、ラポート社製合成ヘクトライト類似物質)、ラポナイトRD(英国、ラポート社製合成ヘクトライト類似物質)、サーマビス(独国、ヘンケル社製合成ヘクトライト類似物質)、スメクトンSA−1(クニミネ工業(株)製サポナイト類似物質)、ベンゲル(ホージュン(株)販売の天然ベントナイト)、クニビアF(クニミネ工業(株)販売の天然モンモリロナイト)、ビーガム(米国、バンダービルト社製の天然ヘクトライト)、ダイモナイト(トピー工業(株)製の合成膨潤性雲母)、ソマシフ(コープケミカル(株)製の合成膨潤性雲母)、SWN(コープケミカル(株)製の合成スメクタイト)、SWF(コープケミカル(株)製の合成スメクタイト)等が挙げられる。
また、波長変換層形成用組成物及びセラミック層形成用組成物に含まれる膨潤性粒子の量は、各混合液の固形分全質量に対して0.3〜20質量%であることが好ましく、より好ましく0.5〜15質量%である。膨潤性粒子の濃度が0.3質量%未満であると、混合液の粘度が十分に高まらず、さらに得られる膜の強度が低下しやすい。一方、膨潤性粒子の濃度が20質量%を超えると、波長変換層7では相対的に蛍光体粒子の量が少なくなり、十分な蛍光が得られない。
また、光拡散セラミック層形成用組成物に含まれる膨潤性粒子の量は、光拡散セラミック層形成用組成物の固形分全質量に対して0〜30質量%であることが好ましく、より好ましく0〜25質量%であり、さらに好ましくは0〜20質量%である。膨潤性粒子の濃度が30質量%を超えると、相対的にバインダである透光性セラミック材料の量が少なくなり、バインダとして十分な強度を得られない。また膨潤性粒子を含有することにより光拡散セラミック層形成用組成物の粘度を上昇させる効果があり、白色顔料の沈降を抑えることができる。
膨潤性粒子には増粘効果があるが、混合液中での割合が高ければ混合液の粘度が高くなるわけではなく、混合液の粘度は溶媒、蛍光体など他の成分との比率で決まる。
なお、膨潤性粒子は表面アンモニウム塩等で修飾(表面処理)されたものであってもよい。膨潤性粒子の表面が修飾されていると、各混合液における膨潤性粒子の相溶性が良好になる。
(無機粒子)
無機粒子は必要に応じて、波長変換層形成用組成物、光拡散セラミック層形成用組成物、セラミック層形成用組成物に含まれる。無機粒子は、加熱前の混合液の粘性を増加させる増粘効果を有する。また、波長変換層形成用組成物に無機粒子を加えると、蛍光体と膨潤性粒子との界面に生じる隙間を埋める充填効果によって膜強度が高まる。また、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物に無機粒子を加えると、硬化中に膜に生じる応力が緩和され、クラックの発生が抑制される。
本発明に用いられる無機粒子としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニオブ等の酸化物微粒子等が挙げられる。各混合液にはこれらの1種のみが含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物には、屈折率の高い酸化ジルコニウムを用いることが好ましい。なお、セラミック材料や溶媒との相溶性を考慮して、無機粒子の表面をシランカップリング剤やチタンカップリング剤で処理したものを適宜用いることもできる。
光拡散セラミック層形成用組成物及びセラミック層形成用組成物に含まれる無機粒子としては、その屈折率が透光性セラミック材料(ポリシロキサンやポリシラザン等)の屈折率より高いことが好ましい。屈折率の高い無機粒子が含まれると、得られる光拡散セラミック層8やセラミック層9の屈折率が高まる。一般的にLED素子(LEDチップ)の屈折率は、透光性セラミック材料と比較してかなり高い。そこで、光拡散セラミック層8やセラミック層9の屈折率が高まると、LED素子と光拡散セラミック層8やセラミック層9との屈折率差が小さくなり、LED素子と光拡散セラミック層8やセラミック層9との界面での光の反射が少なくなる。つまり、LED装置の光取り出し効率が高まり、明るさ低減防止効果がある。
無機粒子には増粘効果があるが、混合液中での割合が高ければ混合液の粘度が高くなるわけではなく、混合液の粘度は溶媒、蛍光体など他の成分との比率で決まる。
波長変換層形成用組成物に含まれる無機粒子の量は、波長変換層形成用組成物の固形分全量に対して0.5〜70質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜65質量%であり、さらに好ましくは1.0〜60質量%である。無機粒子の濃度が0.5質量%未満であると、得られる波長変換層7の強度が低くなるおそれがある。また、波長変換層形成用組成物の塗布時のハンドリング性が悪化する。一方、無機粒子の量が70質量%を超えると、相対的に蛍光体粒子の量が少なくなり、十分な蛍光が得られない。さらに、無機粒子によって光が散乱しやすくなり、LED装置からの光取り出し効率が低下する。
光拡散セラミック層形成用組成物に含まれる無機粒子の量は、光拡散セラミック層形成用組成物の固形分全質量に対して0〜30質量%であることが好ましく、より好ましく0〜25質量%であり、さらに好ましくは0〜20質量%である。無機粒子の濃度が30質量%を超えると、相対的にバインダである透光性セラミック材料の量が少なくなり、バインダとして十分な強度を得られない。
セラミック層形成用組成物に含まれる無機粒子の量は、光拡散セラミック層形成用組成物又はセラミック層形成用組成物の固形分全量に対して0〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜45質量%、さらに好ましくは5〜30質量%である。無機微粒子の量が少なすぎると、前述のクラック抑制効果が高まらず、明るさ低減防止効果も十分とならない。一方で、無機微粒子の量が多すぎると、相対的に透光性セラミック材料(バインダ)の量が減少し、光拡散セラミック層8又はセラミック層9の強度が低下するおそれがある。
波長変換層形成用組成物に含まれる無機粒子の粒径分布には特に制限はなく、広範囲に分布していてもよいし、比較的狭い範囲に分布していてもよい。なお、無機粒子の粒径としては、一次粒径の中心粒径(平均粒子径)が0.001μm以上50μm以下であり、蛍光体より小さいものが好ましく、加熱後の波長変換層7の厚さより小さいものを用いる。これにより、波長変換層7の表面平滑性が高まる。
光拡散セラミック層形成用組成物又はセラミック層形成用組成物に含まれる無機粒子の粒径分布には特に制限はなく、広範囲に分布していてもよいし、比較的狭い範囲に分布していてもよい。無機粒子の平均一次粒径は、0.001μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.001μm以上40μm以下、さらに好ましくは0.001μm以上30μm以下である。無機粒子の平均一次粒径が、このような範囲であると、前述のクラック抑制効果、明るさ低減防止効果が得られやすい。無機粒子の平均粒径は、例えばコールターカウンター法によって測定することができる。
(溶媒)
波長変換層形成用組成物、光拡散セラミック層形成用組成物、セラミック層形成用組成物は混合液であり、溶媒が含まれる。溶媒は各種材料を溶解又は均一に分散可能なものであればよい。溶媒としては、水、有機溶媒、又は水と有機溶媒の混合溶媒を用いることができる。
溶媒の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール等の一価アルコール;メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のアルキルカルボン酸エステル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのモノエーテル類、あるいはこれらのモノアセテート類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等の多価アルコールの水酸基をすべてアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等のケトン類;等が含まれる。各混合液に溶媒は1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。
水は親水性の膨潤性粒子を膨潤させる役割がある。例えば、フッ化物粒子に水を添加することにより混合液の粘性が増加するため、蛍光体の沈降を抑制することができる。なお、水に不純物が含まれていると膨潤を阻害するおそれがあるため、添加する水は不純物を含まない純水を用いる必要がある。
光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物の溶媒として水が含まれる場合、水の量は、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物の全質量に対して、3〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜10質量%である。透光性セラミック材料が有機ポリシロキサン化合物である場合、水の含有量が有機ポリシロキサン化合物100質量部に対して10〜120質量部であることが好ましく、80〜100質量部であることがより好ましい。光拡散セラミック層形成用組成物に含まれる水の量が少な過ぎると、光拡散セラミック層8やセラミック層9の成膜時に有機ポリシロキサン化合物を十分に加水分解できない場合がある。一方、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物に含まれる水の量が過剰であると、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物の保存中に加水分解等が生じ、光拡散セラミック層形成用組成物がゲル化するおそれがある。
波長変換層形成用組成物、光拡散セラミック層形成用組成物、セラミック層形成用組成物に用いる有機溶媒は、混合液のぬれ性向上、粘度調整のために用いられる。例えば、フッ化物粒子に有機溶媒を添加することにより波長変換層形成用組成物の粘性が増加するため、蛍光体の沈降を抑制することができる。親水性の膨潤性粒子に水を添加して膨潤させる場合には、有機溶媒として、水との相溶性に優れたメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類を用いることが好ましい。一方、親油性の膨潤性粒子を用いる場合は、膨潤性粒子の膨潤に水は作用しないが、水を加えることにより粘度が増加するため、水との相溶性に優れた有機溶媒を用いることが好ましい。また、エチレングリコールやプロピレングリコールなどの沸点が150℃以上の有機溶媒を用いることにより、混合液のポットライフが短くならず、またスプレー塗布時にはノズルの詰まりを防ぎ、取り扱い性に優れる。一方、混合液の乾燥時間を短くする観点から、溶媒の沸点は250℃以下であることが好ましい。
(透光性セラミック材料)
透光性セラミック材料は、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物に含まれる。透光性セラミック材料はセラミック前駆体であり、ゾル−ゲル反応によって透光性セラミック(好ましくはガラスセラミック)となる化合物でありうる。透光性セラミック材料の例としては、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート、ポリシラザンオリゴマー等が挙げられ、反応性が良好であるとの観点から、金属アルコキシドが好ましい。
金属アルコキシドは、各種金属のアルコキシドでありうるが、得られる透光性セラミックの安定性、及び製造容易性の観点から、アルコキシシランやアリールオキシシランであることが好ましい。
透光性セラミック材料であるアルコキシシランやアリールオキシシランは、テトラエトキシシランのような単分子化合物(モノマー)であってもよいが、有機ポリシロキサン化合物(オリゴマー)であることが好ましい。有機ポリシロキサン化合物は、シラン化合物が鎖状または環状にシロキサン結合した化合物である。有機ポリシロキサン化合物の調製方法は後述する。
有機ポリシロキサン化合物の質量平均分子量は、好ましくは1000〜3000であり、より好ましくは1200〜2700であり、さらに好ましくは1500〜2000である。有機ポリシロキサン化合物の質量平均分子量が1000未満であると、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物の粘度が低くなり、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物がLEDチップ上ではじかれるおそれがある。一方、質量平均分子量が3000を超えると、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物の粘度が高くなり、塗布が困難となる場合がある。質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される値(ポリスチレン換算)である。
透光性セラミック材料が有機ポリシロキサン化合物である場合、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物に含まれる有機ポリシロキサン化合物の量は、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物の全質量に対して1〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜30質量%である。有機ポリシロキサン化合物の量が1質量%未満であると、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物の粘度が低くなり過ぎる場合がある。一方、有機ポリシロキサン化合物の量が40質量%を超えると、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物の粘度が過剰に高くなり、塗布が困難となる場合がある。
透光性セラミック材料の他の好ましい例に、ポリシラザンオリゴマーがある。ポリシラザンオリゴマーは、一般式(I):(R1R2SiNR3)nで表される化合物である。一般式(I)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ビニル基、またはシクロアルキル基を表す。ただし、R1、R2、及びR3のうち少なくとも1つは水素原子であり、好ましくはすべてが水素原子である。一般式(I)中、nは1〜60の整数を表す。ポリシラザンオリゴマーの分子形状はいかなる形状であってもよく、例えば、直鎖状または環状であってもよい。
透光性セラミック材料がポリシラザンオリゴマーである場合、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物に含まれるポリシラザンオリゴマーの量は多いことが好ましいが、ポリシラザンオリゴマーの濃度が高いと、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物の保存安定性が低くなる場合がある。そこで、ポリシラザンオリゴマーの量は、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物の全質量に対して、5〜50質量%であることが好ましい。
(有機金属化合物)
透光性セラミック材料には、2価以上の金属(Siを除く)の有機金属化合物が含まれていてもよい。例えば、Si元素以外の2価以上の金属元素の金属アルコキシドまたは金属キレートでありうる。金属アルコキシドまたは金属キレートは、光拡散セラミック層8やセラミック層9の成膜時に、透光性セラミック材料や、LED素子、波長変換層7の表面に存在する水酸基と、メタロキサン結合を形成する。メタロキサン結合は非常に強固である。そのため、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物に金属アルコキシドまたは金属キレートが含まれると、光拡散セラミック層8やセラミック層9とLED素子、並びに光拡散セラミック層8やセラミック層9と波長変換層7との密着性が高まる。
一方、金属アルコキシドまたは金属キレートの一部は、セラミック層8やセラミック層9内で、メタロキサン結合からなるナノサイズのクラスタを形成する。このクラスタは、金属腐食性の高い硫化水素ガスを腐食性の低い二酸化硫黄ガスに変化させる光触媒として機能する。そのため、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物に、金属アルコキシドまたは金属キレートが含まれると、LED装置の硫化耐性も高まる。
金属アルコキシドまたは金属キレートに含まれる金属元素は、Si元素以外の4族または13族の金属元素であることが好ましく、以下の一般式(II)で表される化合物が好ましい。
Mm+XnYm-n (II)
一般式(II)中、Mは4族または13族の金属元素を表し、mはMの価数(3または4)を表す。Xは加水分解性基を表し、nはX基の数(2以上4以下の整数)を表す。ただし、m≧nである。Yは1価の有機基を表す。
一般式(II)において、Mで表される4族または13族の金属元素は、アルミニウム、ジルコニウム、チタンであることが好ましく、ジルコニウムであることが特に好ましい。ジルコニウムのアルコキシドまたはキレートの硬化物は、一般的なLEDチップの発光波長域(特に青色光(波長420〜485nm)に吸収波長を有さない。つまり、ジルコニウムのアルコキシドまたはキレートの硬化物には、LEDチップの出射光が吸収され難い。
一般式(II)において、Xで表される加水分解性基は、水で加水分解され、水酸基を生成する基でありうる。加水分解性基の好ましい例には、炭素数が1〜5の低級アルコキシ基、アセトキシ基、ブタノキシム基、クロル基等が含まれる。一般式(II)において、Xで表される基は、全て同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。
Xで表される加水分解性基は、加水分解されて遊離する。そのため加水分解後に生成される化合物が中性であり、かつ軽沸である基が好ましい。そこで、Xで表される基は、炭素数1〜5の低級アルコキシ基であることが好ましく、より好ましくはメトキシ基、またはエトキシ基である。
一般式(II)において、Yで表される1価の有機基は、一般的なシランカップリング剤に含まれる1価の有機基でありうる。具体的には、炭素数が1〜1000、好ましくは500以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは40以下、特に好ましくは6以下である脂肪族基、脂環族基、芳香族基、脂環芳香族基でありうる。Yで表される有機基は、脂肪族基、脂環族基、芳香族基、及び脂環芳香族基が連結基を介して結合した基であってもよい。連結基は、O、N、S等の原子またはこれらを含む原子団であってもよい。
Yで表される有機基は、置換基を有してもよい。置換基の例には、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子;ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、スチリル基、メルカプト基、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシ基、イミノ基、フェニル基等の有機基が含まれる。
一般式(II)で表されるアルミニウムの金属アルコキシドまたは金属キレートの具体例には、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリn−ブトキシド、アルミニウムトリt−ブトシキド、アルミニウムトリエトキシド等が含まれる。
一般式(II)で表されるジルコニウムの金属アルコキシドまたは金属キレートの具体例には、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラn−プロポキシド、ジルコニウムテトラi−プロポキシド、ジルコニウムテトラn−ブトキシド、ジルコニウムテトラi−ブトキシド、ジルコニウムテトラt−ブトキシド、ジルコニウムジメタクリレートジブトキシド、ジブトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)等が含まれる。
一般式(II)で表されるチタン元素の金属アルコキシドまたは金属キレートの具体例には、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド、チタンテトラi−ブトキシド、チタンメタクリレートトリイソプロポキシド、チタンテトラメトキシプロポキシド、チタンテトラn−プロポキシド、チタンテトラエトキシド、チタンラクテート、チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、チタンアセチルアセトネート等が含まれる。
ただし、上記で例示した金属アルコキシドまたは金属キレートは、入手容易な市販の有機金属アルコキシドまたは金属キレートの一部である。科学技術総合研究所発行の「カップリング剤最適利用技術」9章のカップリング剤及び関連製品一覧表に示される金属アルコキシドまたは金属キレートも、本発明に適用できる。
光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物に含まれる金属アルコキシドまたは金属キレート(有機金属化合物)の量は、透光性セラミック材料100質量部に対して、0〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは0〜40質量部、さらに好ましくは0〜15質量部である。金属アルコキシドまたは金属キレートの量が100質量部を超えると、光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物の保存性が低下する。
(反応促進剤)
光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物には、反応促進剤が含まれていてもよい。反応促進剤は、透光性セラミック材料が、ポリシラザンオリゴマーである場合に含まれることが特に好ましい。反応促進剤は、酸または塩基などでありうる。反応促進剤の具体例には、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びトリエチルアミン等の塩基;塩酸、シュウ酸、フマル酸、スルホン酸、及び酢酸等の酸;ニッケル、鉄、パラジウム、イリジウム、白金、チタン、アルミニウムを含む金属のカルボン酸塩などが含まれるが、これに限られない。反応促進剤は金属カルボン酸塩であることが特に好ましい。反応促進剤の量は、ポリシラザンオリゴマーの質量に対して0.01〜5mol%であることが好ましい。
(光拡散セラミック層形成用組成物及びセラミック層形成用組成物の調製、塗布、乾燥)
光拡散セラミック層形成用組成物は、透光性セラミック材料、白色顔料、膨潤性粒子、無機粒子、及び溶媒を混合・攪拌して調製する。撹拌は、例えば、撹拌ミル、ブレード混練撹拌装置、薄膜旋回型分散機等で行う。セラミック層形成用組成物は、光拡散セラミック層形成用組成物から白色顔料を除いて同様の方法で調整する。
光拡散セラミック層形成用組成物及びセラミック層形成用組成物の塗布方法は、特に制限されない。例えば、ブレード塗布、スピンコート塗布、ディスペンサー塗布、スプレー塗布などでありうるが、スプレー塗布によれば、厚みの薄い光拡散セラミック層8やセラミック層9を成膜できる。
光拡散セラミック層形成用組成物又はセラミック層形成用組成物の塗布後、塗膜を100℃以上、好ましくは150〜300℃に加熱し、光拡散セラミック層形成用組成物又はセラミック層形成用組成物を乾燥・硬化させる。透光性セラミック材料が、有機ポリシロキサン化合物である場合、加熱温度が100℃未満であると、脱水縮合時に生じる有機成分等を十分に除去できず、光拡散セラミック層8やセラミック層9の耐光性等が低下する可能性がある。
一方、透光性セラミック材料がポリシラザンオリゴマーである場合には、170〜230nmの範囲の波長成分を含むVUV放射線(例えばエキシマ光)を塗膜に照射して硬化させた後、さらに加熱硬化を行うことが好ましい。光拡散セラミック層8やセラミック層9が緻密な膜となり、LED装置の耐湿性が高まりやすい。
(有機ポリシロキサン化合物の調製方法)
透光性セラミック材料である有機ポリシロキサン化合物は、アルコキシシラン化合物、またはアリールオキシシラン化合物を重合して得られる。アルコキシシラン化合物またはアリールオキシシラン化合物は、例えば以下の一般式(III)で表される。
Si(OR)nY4-n (III)
一般式(III)中、nはアルコキシ基またはアリールオキシ基(OR)の数を表し、2以上4以下の整数である。また、Rは、それぞれ独立にアルキル基またはフェニル基を表し、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、またはフェニル基を表す。
上記一般式(III)式中、Yは、水素原子、または1価の有機基を表す。Yで表される1価の有機基の具体例には、炭素数が1〜1000、好ましくは500以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは50以下、特に好ましくは6以下の脂肪族基、脂環族基、芳香族基、脂環芳香族基が含まれる。これらの1価の有機基は、肪族基、脂環族基、芳香族基、及び脂環芳香族基が連結基を介して結合した基であってもよい。連結基は、O、N、S等の原子またはこれらを含む原子団であってもよい。また、Yで表される1価の有機基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子;ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、スチリル基、メルカプト基、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシ基、イミノ基、フェニル基等の有機官能基等が含まれる。
一般式(III)において、Yで表される基は、特にメチル基であることが好ましい。Yがメチル基であると、光拡散セラミック層8やセラミック層9の耐光性及び耐熱性が良好になる。
上記一般式(III)で表されるアルコキシシランまたはアリールオキシシランには、以下の4官能のシラン化合物、3官能のシラン化合物、2官能のシラン化合物が含まれる。
4官能のシラン化合物の例には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テトラフェニルオキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリエトキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシトリブトキシシラン、モノメトキシトリペンチルオキシシラン、モノメトキシトリフェニルオキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、トリプロポキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノブトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、トリエトキシモノプロポキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、トリブトキシモノプロポキシシラン、ジメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジブトキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジブトキシモノエトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシモノエトキシモノプロポキシモノブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン、テトラアリールオキシシラン等が含まれる。これらの中でもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
3官能のシラン化合物の例には、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリペンチルオキシシラン、トリフェニルオキシシラン、ジメトキシモノエトキシシラン、ジエトキシモノメトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシシラン、ジペンチルオキシルモノメトキシシラン、ジペンチルオキシモノエトキシシラン、ジペンチルオキシモノプロポキシシラン、ジフェニルオキシルモノメトキシシラン、ジフェニルオキシモノエトキシシラン、ジフェニルオキシモノプロポキシシラン、メトキシエトキシプロポキシシラン、モノプロポキシジメトキシシラン、モノプロポキシジエトキシシラン、モノブトキシジメトキシシラン、モノペンチルオキシジエトキシシラン、モノフェニルオキシジエトキシシラン等のモノヒドロシラン化合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリペンチルオキシシラン、メチルモノメトキシジエトキシシラン、メチルモノメトキシジプロポキシシラン、メチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、メチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、メチルメトキシエトキシプロポキシシラン、メチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のモノメチルシラン化合物;エチルトリメトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリペンチルオキシシラン、エチルトリフェニルオキシシラン、エチルモノメトキシジエトキシシラン、エチルモノメトキシジプロポキシシラン、エチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、エチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、エチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のモノエチルシラン化合物;プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリペンチルオキシシラン、プロピルトリフェニルオキシシラン、プロピルモノメトキシジエトキシシラン、プロピルモノメトキシジプロポキシシラン、プロピルモノメトキシジペンチルオキシシラン、プロピルモノメトキシジフェニルオキシシラン、プロピルメトキシエトキシプロポキシシラン、プロピルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のモノプロピルシラン化合物;ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリペンチルオキシシラン、ブチルトリフェニルオキシシラン、ブチルモノメトキシジエトキシシラン、ブチルモノメトキシジプロポキシシラン、ブチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ブチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ブチルメトキシエトキシプロポキシシラン、ブチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のモノブチルシラン化合物が含まれる。これらの中でも、メチルトリメトキシシランおよびメチルトリエトキシシランがより好ましく、メチルトリメトキシシランがさらに好ましい。
2官能のシラン化合物の具体例には、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジプロポキシシラン、ジペンチルオキシシラン、ジフェニルオキシシラン、メトキシエトキシシラン、メトキシプロポキシシラン、メトキシペンチルオキシシラン、メトキシフェニルオキシシラン、エトキシプロポキシシラン、エトキシペンチルオキシシラン、エトキシフェニルオキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルメトキシエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルメトキシプロポキシシラン、メチルメトキシペンチルオキシシラン、メチルメトキシフェニルオキシシラン、エチルジプロポキシシラン、エチルメトキシプロポキシシラン、エチルジペンチルオキシシラン、エチルジフェニルオキシシラン、プロピルジメトキシシラン、プロピルメトキシエトキシシラン、プロピルエトキシプロポキシシラン、プロピルジエトキシシラン、プロピルジペンチルオキシシラン、プロピルジフェニルオキシシラン、ブチルジメトキシシラン、ブチルメトキシエトキシシラン、ブチルジエトキシシラン、ブチルエトキシプロポキシシシラン、ブチルジプロポキシシラン、ブチルメチルジペンチルオキシシラン、ブチルメチルジフェニルオキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジペンチルオキシシラン、ジメチルジフェニルオキシシラン、ジメチルエトキシプロポキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルメトキシプロポキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルエトキシプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジペンチルオキシシラン、ジプロピルジフェニルオキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジブチルジプロポキシシラン、ジブチルメトキシペンチルオキシシラン、ジブチルメトキシフェニルオキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジプロポキシシラン、メチルエチルジペンチルオキシシラン、メチルエチルジフェニルオキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、メチルブチルジメトキシシラン、メチルブチルジエトキシシラン、メチルブチルジプロポキシシラン、メチルエチルエトキシプロポキシシラン、エチルプロピルジメトキシシラン、エチルプロピルメトキシエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルメトキシエトキシシラン、プロピルブチルジメトキシシラン、プロピルブチルジエトキシシラン、ジブチルメトキシエトキシシラン、ジブチルメトキシプロポキシシラン、ジブチルエトキシプロポキシシラン等が含まれる。中でもジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシランが好ましい。
有機ポリシロキサン化合物は、上記シラン化合物を、酸触媒、水、有機溶媒の存在下で加水分解し、縮合反応させる方法で調製できる。有機ポリシロキサン化合物の質量平均分子量は、反応条件(特に反応時間)等で、調整可能である。
この際、4官能シラン化合物と、3官能シラン化合物や2官能シラン化合物とを所望のモル比率で予め混合し、ランダムに重合させてもよい。また3官能シラン化合物または2官能シラン化合物を単独である程度重合させてオリゴマーとした後、このオリゴマーに4官能シラン化合物のみを重合させる等して、ブロック共重合体としてもよい。
有機ポリシロキサン化合物の調製用の酸触媒は、下記一般式(IV)で表わされる有機スルホン酸であることが特に好ましい。
R8−SO3H …(IV)
上記一般式(IV)において、R8で表される炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状の飽和もしくは不飽和の炭素数1〜20の炭化水素基である。環状の炭化水素基の例には、フェニル基、ナフチル基、またはアントリル基等の芳香族炭化水素基が含まれ、好ましくはフェニル基である。また、一般式(IV)においてR8で表される炭化水素基は、置換基を有してもよい。置換基の例には、直鎖状、分岐鎖状、または環状の、炭素数1〜20の飽和若しくは不飽和の炭化水素基;フッ素原子等のハロゲン原子;スルホン酸基;カルボキシル基;水酸基;アミノ基;シアノ基等が含まれる。
上記一般式(IV)で表わされる有機スルホン酸は、特にノナフルオロブタンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、またはドデシルベンゼンスルホン酸であることが好ましい。
有機ポリシロキサン化合物の調製時に添加する酸触媒の量は、有機ポリシロキサン化合物調製液全量に対して1〜1000質量ppmであることが好ましく、より好ましくは5〜800質量ppmである。
有機ポリシロキサン化合物調製時に添加する水の量によって、最終的に得られるポリシロキサンの膜質が変化する。したがって、目的とする膜質に応じて、有機ポリシロキサン化合物調製時の水添加率を調整することが好ましい。水添加率とは、有機ポリシロキサン化合物調製液に含まれるシラン化合物のアルコキシ基またはアリールオキシ基のモル数に対する、添加する水分子のモル数の割合(%)である。水添加率は、50〜200%であることが好ましく、より好ましくは75〜180%である。水添加率を、50%以上とすることで、透光性セラミック層の膜質が安定する。また200%以下とすることで光拡散セラミック層形成用組成物やセラミック層形成用組成物の保存安定性が良好となる。
有機ポリシロキサン化合物調製時に添加する溶媒の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール等の一価アルコール;メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のアルキルカルボン酸エステル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのモノエーテル類、あるいはこれらのモノアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等のケトン類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等の多価アルコールの水酸基をすべてアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類;等が含まれる。これらは1種単独で添加してもよく、また2種以上を添加してもよい。
(白色顔料)
白色顔料は光拡散セラミック層形成用組成物に含まれる。白色顔料としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、シリカ、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ガラス粉、ゼオライト、珪酸白土等から選ばれた少なくとも一種を挙げることができ、中でも炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム及び酸化チタンの群より選ばれる1種又は2種以上の組合せからなる混合物が好ましい。
なお、白色顔料は表面アンモニウム塩等で修飾(表面処理)されたものであってもよい。白色顔料の表面が修飾されていると、各混合液における白色顔料の相溶性が良好になる。
白色顔料の粒径分布は特に制限はない。広範囲に分布していてもよく、比較的狭い範囲に分布していてもよい。なお、白色顔料の粒径は、一次粒径の中心粒径(平均粒子径)が0.001μm以上50μm以下であることが好ましく、一次粒径の中心粒径が0.001μm以上30μm以下であることがより好ましい。また、さらに好ましくは、150nm〜400nmが好ましい。これはLED素子から出射される励起光の波長や波長変換部から出射される蛍光光の波長の半分の粒径であると、より大きな光拡散効果を得ることができるためである。白色顔料の平均粒径は、例えばコールターカウンター法によって測定される。
光拡散セラミック層形成用組成物に含まれる白色顔料の量は、光拡散セラミック層形成用組成物の固形分全質量に対して0.5〜40質量%であることが好ましく、より好ましく1〜35質量%であり、さらに好ましくは1〜30質量%である。白色顔料の濃度が40質量%を超えると、相対的にバインダである透光性セラミック材料の量が少なくなり、バインダとして十分な強度を得られない。また、白色顔料の濃度が高すぎると、LEDチップ3や波長変換層7から出射された光が白色顔料で反射してLED装置内に戻され、出射効率が低くなる。白色顔料の濃度が0.5%以下ではLEDチップ3や波長変換層7から出射された光を散乱する効果が低く、LED装置内の色度均一性を向上させることができない。
なお、本発明において白色顔料における白色とは、純粋な白色だけでなく、色相、彩度、明度が変化しても白色に近い色であればよく、例えば、灰色等でもよい。
(発光装置の製造方法)
ここでは、前述した(e)光拡散セラミック層/セラミック層/波長変換層/LEDチップの構成のLED装置の製造方法を例に説明する。
波長変換層形成用組成物をLEDチップ3が搭載されたLED基板1上にスプレーコート法により所定量噴霧する。図8に、スプレーコート法を用いた塗布装置及び製造方法を概略的に説明するための模式図を示す。塗布装置10は、主に、上下、左右、前後に移動可能な移動台20と、第1混合液を噴射可能なスプレー装置30とを有している。
スプレー装置30は移動台20の上方に配置されている。スプレー装置30はエアーが送り込まれるノズル32を有しており、ノズル32にはエアーを送り込むためのエアーコンプレッサー(図示略)が接続されている。ノズル32の先端部の孔径は20μm〜2mmであり、好ましくは0.1〜0.3mmである。ノズル32は移動台20と同様に、上下、左右、前後に移動可能となっている。
例えば、ノズル32としてはアネスト岩田社製スプレーガンW-101-142BPGが、コンプレッサーとしてはアネスト岩田社製OFP-071Cがそれぞれ使用される。ノズル32は角度調整も可能であり、移動台20(またはこれに設置されるLED基板1)に対し傾斜させることができるようになっている。被噴射物(LED基板1)に対するノズル32の角度は、当該被噴射物から垂直方向を0°とした場合、0〜70°の範囲であることが好ましい。
ノズル32には連結管34を介してタンク36が接続されている。タンク36には波長変換層形成用組成物40が貯留されている。タンク36には撹拌子が入っており、波長変換層形成用組成物40が常に撹拌されている。波長変換層形成用組成物40を撹拌すれば、比重の大きい蛍光体の沈降を抑止することができ、蛍光体が波長変換層形成用組成物40中で分散した状態を保持することができる。例えば、タンクとしてはアネスト岩田社製PC-51が使用される。
実際に波長変換層形成用組成物40を塗布する場合には、(LEDチップ3をあらかじめ実装した)複数のLED基板1を移動台20に設置し、LED基板1とスプレー装置30のノズル32との位置関係を調整する(位置調整工程)。
詳しくは、LED基板1を移動台20に設置し、LED基板1とノズル32の先端部とを対向配置する。LED基板1とノズル32との距離を離すほど第1混合液40を均一に塗布することが可能であるが、膜強度が低下する傾向もあるため、LED基板1とノズル32の先端部との距離は3〜30cmの範囲に保持することが適している。
その後、LED基板1とノズル32とを互いに相対移動させながら、ノズル32から波長変換層形成用組成物40を噴射してLED基板1に波長変換層形成用組成物40を塗布する(噴射・塗布工程)。詳しくは、一方では、移動台20とノズル32とを移動させてLED基板1とノズル32とを前後左右に移動させる。移動台20とノズル32とのうちいずれか一方の位置を固定し、他方を前後左右に移動させてもよい。また、移動台20の移動方向と直交する方向にLEDチップ3を複数配置し、ノズル32を移動台20の移動方向と直交する方向に移動させながら塗布する方法も好ましく用いられる。
他方では、ノズル32にエアーを送り込み、波長変換層形成用組成物40をノズル32の先端部からLED基板1に向けて噴射する。LED基板1とノズル32との距離についてはエアーコンプレッサーの圧力を考慮して上記の範囲で調整可能である。例えば、ノズル32の入り口部(先端部)の圧力(スプレー圧)が0.14MPaとなるようにコンプレッサーの圧力を調整する。以上の操作により、波長変換層形成用組成物40をLEDチップ3上に塗布することができる。
なお、塗布装置10を用いるのに代えて、ディスペンサーやインクジェット装置を用いて第1及び第2混合液を塗布(滴下または吐出)するようにしてもよい。ディスペンサーを使用する場合は、塗布液の滴下量を制御可能で、蛍光体などのノズル詰まりが発生しないようなノズルを用いる。たとえば、武蔵エンジニアリング社製の非接触ジェットディスペンサーや同社のディスペンサーを用いることができる。インクジェット装置を使用する場合も、塗布液の吐出量を制御可能で、蛍光体などのノズル詰まりが発生しないようなノズルを用いる。たとえば、コニカミノルタIJ社製のインクジェット装置を用いることができる。
このようにして塗布した波長変換層形成用組成物を加熱(乾燥)することで、LEDチップ3上に均一な厚さ(均一な蛍光体分布)の波長変換層7が形成される。次に、波長変換層7の上にセラミック層形成用組成物をスプレーコート法により所定量噴霧する。ここでも塗布装置10を用いることができる。塗布されたセラミック層形成用組成物の一部は蛍光体粒子や膨潤性粒子の隙間に浸透する。これを加熱(焼成)することでセラミック層9が形成される。
ここで、波長変換層7に浸透したセラミック層形成用組成物はセラミックに変化するため、セラミックは蛍光体粒子と膨潤性粒子に対してバインダとして作用する。また、セラミック層形成用組成物は膨潤性粒子を含んでおり適度な粘度を有するため、波長変換層7上にセラミック層9が明確に形成され、波長変換層7を封止するという機能もある。
なお、形成された波長変換部7の厚みが5μm未満である場合は波長変換効率が低下して十分な蛍光が得られず、波長変換層7の厚みが500μmを超える場合は膜強度が低下してクラック等が発生し易くなる。従って、波長変換層7の厚みは5μm以上500μm以下であることが好ましい。
また、LED基板1の上面に接続用の電極が露出している場合には、その上から混合液をスプレーしてしまうと、通電しなくなる場合がある。そのため、このような場合には、LED基板1上にマスクをして必要箇所にのみ塗布することが望ましい。
図9は、本発明の第2実施形態の発光装置の概略断面図である。図9に示すように、発光装置101は、平板状のLED基板1上にメタル部2を設け、メタル部2上に発光素子としてLEDチップ3を配置している。LEDチップ3は、メタル部2に対向する面に、突起電極4が設けられており、メタル部2とLEDチップ3とを突起電極4を介して接続している(フリップチップ型)。
LEDチップ3の光取り出し面側には波長変換・光拡散素子11が設けられている。波長変換・光拡散素子11は、LEDチップ3の上面に取り付けられている。波長変換・光拡散素子11は、ガラス基板5と、蛍光体を含む波長変換層7と、白色顔料及び透光性セラミック材料を含む光拡散セラミック層8と、必要に応じて透光性セラミック材料を含むセラミック層9とが積層されたものである。ガラス基板5の形状には特に限定はなく、平板状、レンズ状等を採用できる。セラミック層9が波長変換層7に隣接していれば、波長変換・光拡散素子11における積層順序には他に限定はなく、図10〜18に示すような9つの積層順序が挙げられる。
図10では、上から、ガラス基板5、光拡散セラミック層8、波長変換層7の順に積層されている。図11では、上から、ガラス基板5、波長変換層7、光拡散セラミック層8の順に積層されている。図12では、上から、光拡散セラミック層8、ガラス基板5、波長変換層7の順に積層されている。図13では、上から、ガラス基板5、光拡散セラミック層8、波長変換層7、セラミック層9の順に積層されている。図14では、上から、ガラス基板5、波長変換層7、セラミック層9、光拡散セラミック層8の順に積層されている。図15では、上から、光拡散セラミック層8、ガラス基板5、波長変換層7、セラミック層9の順に積層されている。図16では、上から、光拡散セラミック層8、波長変換層7、セラミック層9、ガラス基板5の順に積層されている。図17では、上から、波長変換層7、セラミック層9、ガラス基板5、光拡散セラミック層8の順に積層されている。図18では、上から、波長変換層7、セラミック層9、光拡散セラミック層8、ガラス基板5の順に積層されている。
これらのパターンから得られるLED装置の構成を(g)〜(x)に記す。何れの構成でも本発明の効果は得られるが、耐摩耗性を考慮すると、光拡散セラミック層8又はセラミック層9が最外層となる(g)〜(j)、(m)〜(p)、(s)〜(x)の構成が好ましい。
(g)ガラス基板/光拡散セラミック層/波長変換層/LEDチップ(図10の波長変換・光拡散素子を採用)
(h)ガラス基板/波長変換層/光拡散セラミック層/LEDチップ(図11の波長変換・光拡散素子を採用)
(i)光拡散セラミック層/ガラス基板/波長変換層/LEDチップ(図12の波長変換・光拡散素子を採用)
(j)光拡散セラミック層/波長変換層/ガラス基板/LEDチップ(図11の波長変換・光拡散素子を採用)
(k)波長変換層/ガラス基板/光拡散セラミック層/LEDチップ(図12の波長変換・光拡散素子を採用)
(l)波長変換層/光拡散セラミック層/ガラス基板/LEDチップ(図10の波長変換・光拡散素子を採用)
(m)ガラス基板/光拡散セラミック層/波長変換層/セラミック層/LEDチップ(図13の波長変換・光拡散素子を採用)
(n)ガラス基板/波長変換層/セラミック層/光拡散セラミック層/LEDチップ(図14の波長変換・光拡散素子を採用)
(o)光拡散セラミック層/ガラス基板/波長変換層/セラミック層/LEDチップ(図15の波長変換・光拡散素子を採用)
(p)光拡散セラミック層/波長変換層/セラミック層/ガラス基板/LEDチップ(図16の波長変換・光拡散素子を採用)
(q)波長変換層/セラミック層/ガラス基板/光拡散セラミック層/LEDチップ(図17の波長変換・光拡散素子を採用)
(r)波長変換層/セラミック層/光拡散セラミック層/ガラス基板/LEDチップ(図18の波長変換・光拡散素子を採用)
(s)ガラス基板/光拡散セラミック層/セラミック層/波長変換層/LEDチップ(図18の波長変換・光拡散素子を採用)
(t)ガラス基板/セラミック層/波長変換層/光拡散セラミック層/LEDチップ(図16の波長変換・光拡散素子を採用)
(u)光拡散セラミック層/ガラス基板/セラミック層/波長変換層/LEDチップ(図17の波長変換・光拡散素子を採用)
(v)光拡散セラミック層/セラミック層/波長変換層/ガラス基板/LEDチップ(図14の波長変換・光拡散素子を採用)
(w)セラミック層/波長変換層/ガラス基板/光拡散セラミック層/LEDチップ(図15の波長変換・光拡散素子を採用)
(x)セラミック層/波長変換層/光拡散セラミック層/ガラス基板/LEDチップ(図13の波長変換・光拡散素子を採用)
上記(m)の構成のLED装置の製造方法を例に説明する。発光装置101の製造方法としては、光拡散セラミック層形成用組成物をガラス基板5の片面に所定量塗布し、加熱して所定の膜厚の光拡散セラミック層8を形成する。次に、光拡散セラミック層8の上面に波長変換層形成用組成物を所定量塗布し、加熱して所定の膜厚の波長変換層7を形成する。次に、波長変換層7の上面にセラミック層形成用組成物を所定量塗布する。塗布されたセラミック層形成用組成物の一部は蛍光体粒子や膨潤性粒子の隙間に浸透する。セラミック層形成用組成物が塗布されたガラス基板5を焼成することでセラミック層9が形成される。
なお、各組成物の塗布方法は特に限定されるものではなく、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等、従来公知の種々の方法を用いることができる。
そして、各層が形成されたガラス基板5を所定の大きさ(例えば2×2mm)に切断してLEDチップ3上に配置することにより、発光装置101を製造することができる。
なお、上記実施形態ではガラス基板5を使用しているが、ガラス基板に限らず、透光性の無機材料からなる基板であれば、例えば、単結晶サファイア等の結晶基板やセラミック基板を用いてもよい。
図19は、本発明の第3実施形態の発光装置の概略断面図である。図19に示すように、発光装置102は、断面凹状のLED基板1の底部にメタル部2が設けられ、メタル部2上にLEDチップ3が配置されるとともに、LED基板1の凹部に蓋をするように波長変換・光拡散素子9が設けられている。波長変換・光拡散素子9を含む他の部分の構成は第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
本実施形態の発光装置102は、LED基板1の凹部にLEDチップ3を配置し、第2実施形態で用いた波長変換・光拡散素子9をLED基板1の側壁の上端に凹部を覆うように接着して製造することができる。
本実施形態の発光装置102は、第2実施形態に比べて、LEDチップ3の側面から出射される光も効率良く蛍光に変換される。
なお、LED基板1の凹部の形状や大きさは発光装置102の仕様に応じて適宜設計することができる。例えば、凹部の側面をテーパ状としてもよい。また、凹部の内面を反射面とすることにより、発光装置102の発光効率を高める構成としてもよい。
その他、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記各実施形態では青色LEDと蛍光体とを併用することで白色発光する発光装置を例に挙げて説明したが、緑色LEDや赤色LEDと蛍光体とを併用する場合にも同様に適用できるのはもちろんである。さらに言えば、蛍光体は1種類だけでなく、紫外光を吸収して赤色、緑色、青色の光をそれぞれ放射する3種類の蛍光体や、青色光を吸収して赤色、緑色の光をそれぞれ放射する2種類の蛍光体を併用してもよい。
以下、本発明の発光装置について実施例及び比較例により更に具体的に説明する。実施例1〜5は第1実施形態の発光装置100の例であり、比較例1、2は第1実施形態の発光装置100と同形状の発光装置の例である。なお、第2、第3実施形態も第1実施形態と同じ結果が得られるのでここでは省略する。
(実施例1)
蛍光体(YAG 405C205、粒度分布D50が20.5μm、根本特殊化学社製)1g、合成雲母(ME−100、コープケミカル社製)0.05g、サイリシア470(1次粒子の平均粒径14μm;富士シリシア社製)0.05g、プロピレングリコール1g、IPA(イソプロピルアルコール)0.5gを混合して、波長変換層形成用組成物を調製した。
LEDチップを実装したLED基板をスプレー塗布装置に配置し、LEDチップ実装面全体に、波長変換層用混合液をスプレー塗布した。なお、このときの塗布条件は、スプレー圧0.2MPa、移動台の移動速度55mm/sとしている。その後、150℃で15分間乾燥させ、波長変換層を作製した。
ポリシロキサンオリゴマー分散液(ポリシロキサンオリゴマー14質量%、イソプロピルアルコール86質量%;KBM13、信越化学工業株式会社製)1g、IPA0.3g、CR−58(平均粒径280nmのTiO2粒子、石原産業社製)0.01gを混合して、光拡散セラミック層形成用組成物を調製した。この光拡散セラミック層形成用組成物を波長変換層上からスプレー塗布した。このとき、スプレー塗布装置におけるスプレー圧は0.05MPa、スプレーノズルとLED基板との相対移動速度は150mm/sとした。その後、150℃で1時間加熱・焼成し、厚み1.5μmの光拡散セラミック層を形成して、LED装置を作製した。
(実施例2)
実施例1と異なる点は、光拡散セラミック層形成用組成物中のCR−58をKZ−0Y−LSF(平均粒径200nmのZrO2粒子、共立マテリアル社製)に代えたことである。その他は実施例1と同様にしてLED装置を作製した。
(実施例3)
実施例1と異なる点は、光拡散セラミック層形成用組成物中のCR−58をTM−5D(平均粒径200nmのAl2O3粒子、大明化学工業社製)に代えたことである。その他は実施例1と同様にしてLED装置を作製した。
(実施例4)
蛍光体1gと、スメクタイト(ルーセンタイトSWN、コープケミカル社製)0.05g、RX300(平均一次粒径が7nmであるシリル化処理無水ケイ酸;日本アエロジル社製)0.05g、プロピレングリコール1g、IPA0.5gを混合して、波長変換層形成用組成物を調製した。以下は実施例1と同様にしてLED装置を作製した。
(実施例5)
ポリシロキサンオリゴマー分散液1g、IPA0.3gを混合して、セラミック層形成用組成物を調製した。実施例1と同様の波長変換層形成用組成物及び光拡散セラミック層形成用組成物を調製した。
LEDチップを実装したLED基板をスプレー塗布装置に配置し、LEDチップ実装面全体に、波長変換層用混合液をスプレー塗布した。なお、このときの塗布条件は、スプレー圧0.2MPa、移動台の移動速度55mm/sとしている。その後、150℃で15分間乾燥させ、波長変換層を作製した。
上記のセラミック層形成用組成物を波長変換層上からスプレー塗布した。このとき、スプレー塗布装置におけるスプレー圧は0.05MPa、スプレーノズルとLED基板との相対移動速度は150mm/sとした。その後、150℃で1時間加熱・焼成し、厚み1.5μmのセラミック層を作製した。
光拡散セラミック層形成用組成物をセラミック層上からスプレー塗布した。このとき、スプレー塗布装置におけるスプレー圧は0.05MPa、スプレーノズルとLED基板との相対移動速度は150mm/sとした。その後、150℃で1時間加熱・焼成し、厚み1.5μmの光拡散セラミック層を形成して、LED装置を作製した。
(実施例6)
実施例5と異なる点は、光拡散セラミック層形成用組成物中のCR−58をCR−93(平均粒径280nmのTiO2粒子、石原産業社製)に代えたことである。その他は実施例5と同様にしてLED装置を作製した。
(実施例7)
実施例5と異なる点は、光拡散セラミック層形成用組成物中のCR−58をNanoTekPowder_TiO2(平均粒径36nmのTiO2粒子、CIKナノテック社製)に代えたことである。その他は実施例5と同様にしてLED装置を作製した。
(実施例8)
実施例5と異なる点は、光拡散セラミック層形成用組成物中のCR−58をHT0100(平均粒径10μmのTiO2粒子、東邦チタニウム社製)に代えたことである。その他は実施例5と同様にしてLED装置を作製した。
(実施例9)
実施例5と異なる点は、光拡散セラミック層形成用組成物中のCR−58をKZ−0Y−LSFに代えたことである。その他は実施例5と同様にしてLED装置を作製した。
(実施例10)
実施例5と異なる点は、光拡散セラミック層形成用組成物中のCR−58をNZ10(平均粒径11μmのZrO2粒子、ニイミ産業社製)に代えたことである。その他は実施例5と同様にしてLED装置を作製した。
(実施例11)
実施例5と異なる点は、光拡散セラミック層形成用組成物中のCR−58をTM−5Dに代えたことである。その他は実施例5と同様にしてLED装置を作製した。
(実施例12)
実施例5と異なる点は、光拡散セラミック層形成用組成物中のCR−58をNanoTekPowder_Al2O3(平均粒径31nmのAl2O3粒子、CIKナノテック社製)に代えたことである。その他は実施例5と同様にしてLED装置を作製した。
(実施例13)
ポリシロキサンオリゴマー分散液1g、IPA0.3g、CR−58を0.01g、RX300を0.01g、スメクタイト(ルーセンタイトSWN)0.01gを混合して、光拡散セラミック層形成用組成物を調製した。実施例1と同様の波長変換層形成用組成物及び実施例5と同様のセラミック層形成用組成物を調製した。そして、実施例5と同条件で波長変換層、厚み1.5μmのセラミック層、厚み1.5μmの光拡散セラミック層を形成して、LED装置を作製した。
(実施例14)
ポリシロキサンオリゴマー分散液1g、IPA0.3g、CR−58を0.01g、RX300を0.01g、下記のように合成したイモゴライト0.01gを混合して、光拡散セラミック層形成用組成物を調製した。実施例1と同様の波長変換層形成用組成物及び実施例5と同様のセラミック層形成用組成物を調製した。そして、実施例5と同条件で波長変換層、厚み1.5μmのセラミック層、厚み1.5μmの光拡散セラミック層を形成して、LED装置を作製した。
(アルミニウムケイ酸塩化合物(イモゴライト)の合成)
容量1Lの攪拌機付き容器に、0.1mol/Lのオルトケイ酸ナトリウム250mLと、0.15mol/Lの塩化アルミニウム六水和物250mLとを混合した。混合物を攪拌しながら、混合物に1Nの水酸化ナトリウム水溶液50mLを滴下した。このときの溶液はプレートヒーターにより加熱して90℃とし、この温度を10時間維持した。次に、混合物に濃塩酸を加えてpHを7.0とした。生成した塩化ナトリウムを水洗により除去し、再度濃塩酸を加えてpHを4.0とした。これを100℃に加熱し、24時間維持することでアルミニウムケイ酸塩化合物であるイモゴライトを作製した。
(実施例15)
ポリシロキサンオリゴマー分散液1g、IPA0.3g、CR−58を0.01g、AX10-32(平均粒子径が13μmであるアルミナ;マイクロン社製)0.015gを混合して、光拡散セラミック層形成用組成物を調製した。実施例4と同様の波長変換層形成用組成物及び実施例5と同様のセラミック層形成用組成物を調製した。そして、実施例5と同条件で波長変換層、厚み1.5μmのセラミック層、厚み1.5μmの光拡散セラミック層を形成して、LED装置を作製した。
(実施例16)
実施例15における光拡散セラミック層形成用組成物中のAX10-32をAX116(平均粒子径が24μmであるアルミナ;マイクロン社製)に変更した点以外は、実施例15と同様にしてLED装置を作製した。
(実施例17)
実施例15における光拡散セラミック層形成用組成物中のAX10-32をAW50−74(平均粒子径が56μmであるアルミナ;マイクロン社製)に変更した点以外は、実施例15と同様にしてLED装置を作製した。
(比較例1)
ポリシロキサンオリゴマー分散液1g、IPA0.3g、蛍光体0.1gを混合して、蛍光体分散液を調製した。LEDチップ実装面全体に、蛍光体分散液をスプレー塗布した。なお、このときの塗布条件は、スプレー圧0.1MPa、スプレーノズルとLED基板との相対移動速度80mm/sとしている。その後、150℃で1時間加熱・焼成して蛍光体分散セラミック層を形成し、LED装置を作製した。
(比較例2)
実施例5と同様にして波長変換層とセラミック層とを形成し、LED装置を作製した。なお、光拡散セラミック層は形成されていない。
(評価、検討)
実施例及び比較例で作製したLED装置について、LED装置から出射する光の色度むら、LED装置の全光束、LED装置内(発光面内)の色度ばらつきを評価した。
(LED装置から出射する光の色度ムラの評価)
各実施例及び比較例のサンプルを各々5つずつ準備した。各LED装置から出射される光の色度を、分光放射輝度計(CS−1000A、コニカミノルタセンシング社製)で測定した。色度はCIE表色系のx値とy値を測定した。x+y+z=1の関係から得られるz座標は省略した。
各実施例及び比較例の5サンプルの色度(x値及びy値)について、それぞれ標準偏差を求めた。評価は、x値とy値の標準偏差の平均値で行った。基準を下記に示す。
「○」・・・標準偏差の平均値が0.02以下であり、実用上問題なし(色の均一性が求められる用途にも適用可能)
「×」・・・標準偏差の平均値が0.02より大きく、実用上好ましくない
(LED装置の全光束)
実施例4、15〜17のLED装置内の平均色度のx値が0.33のLED装置について、LED装置から出射される光の全光束を、分光放射輝度計(CS−1000A、コニカミノルタセンシング社製)で測定した。実施例4の全光束値を100%とし、その相対比にて実施例15〜17の全光束値を示す。
(LED装置内の色度ばらつき)
各LED装置についてLED装置内の色度ばらつきを2次元色彩輝度計(CA−2000、コニカミノルタオプティクス社製)により測定した。LED装置内の平均色度のx値が0.33のLED基板を使い、LED装置内の色度ばらつきの標準偏差を下記基準で評価した。
「◎」・・・標準偏差が0.02以下
「○」・・・標準偏差が0.02より大きく、0.03以下であり、実用上問題なし
「×」・・・標準偏差が0.03より大きく、実用上好ましくない
表1に示されるように、蛍光体を分散したセラミックの層のみを形成した場合(比較例1)には、色度むら、色度ばらつきともに大きく、実用上好ましくなかった。これは、セラミックの層の形成時に蛍光体粒子が沈降してしまい、蛍光体粒子の濃度が均一にならないためであると推察される。
また、波長変換層とセラミック層とを形成した場合(比較例2)には、色度むら、色度ばらつきともに実用上問題ない程度のLED装置が得られた。これは、波長変換層形成用組成物が高粘度であり蛍光体粒子が沈降しにくいため、蛍光体粒子の濃度が均一な波長変換層が得られ、実用上問題ない程度の色度の光が出射されたと推察される。
これに対して、波長変換層と光拡散セラミック層とを形成した場合(実施例1〜4)、及び波長変換層とセラミック層と光拡散セラミック層とを形成した場合(実施例5〜14)には、色度むらは実用上問題なく、色度ばらつきは実用上さらに好ましいLED装置が得られた。これは、光拡散セラミック層に含まれる白色顔料が、LEDチップから発光した光と、LEDチップから発光した光が波長変換層により変換された光とを反射することで拡散するため、色度むら及び色度ばらつきが抑制されたものと推察される。LEDチップから発光した光は上方へ直線的に出射されるが、白色顔料によって全方向に反射されることで、全方向に出射される波長変換された光と均一に混ざり、色度ばらつきがさらに抑制され配光特性が向上したものと推察される。また、セラミック層や光拡散セラミック層を用いているので耐久性にも優れている。
また、光拡散セラミック層中に無機粒子を添加した場合(実施例15〜17)、色度むらと発光素子内の色度ばらつきともに、無機粒子を添加しない場合(実施例4)と同等の特性を得ることができる。しかし、添加した無機粒子の平均粒子径が大きい場合(実施例17)、全光束が95%であり低下幅がやや大きいため、添加する無機粒子の平均粒子径は30μm以下とすること(実施例15、16)がより好ましい。