JP2013507479A - 塗料用樹脂組成物及び前記組成物から製造された樹脂成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の塗料用樹脂組成物は、重量平均分子量が100,000〜300,000、数式1におけるアイソタクチック連鎖のモル分率L値が0.30〜0.70である高分子量ポリプロピレン系樹脂(A)35〜65重量%と;重量平均分子量が10,000〜50,000、数式1におけるアイソタクチック連鎖のモル分率L値が0.30〜0.70である低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)30〜60重量%と;重量平均分子量が5,000〜50,000、数式1におけるアイソタクチック連鎖のモル分率L値が0.70〜0.75である高結晶性低分子量ポリプロピレン系樹脂(C)0.1〜5.0重量%とを含んでなる。
【選択図】なし
Description
これはステレオブロックポリプロピレンとポリプロピレンの相溶によるものであり、2つのポリマーが有するアイソタクチック連鎖が共結晶を形成することによりラメラの長周期が大きくなったと解釈することができる。アイソタクチック連鎖のモル分率L値が0.76以上のプロピレン系樹脂は、沸点100℃以下の脂肪族溶媒にはよく溶けないか、或いは室温における安定性が悪いので、塗料用樹脂としての使用は困難である。
このような樹脂組成物は、ポリプロピレン素材への接着力を有するが、非極性を示すので、塗料の分散又は極性素材との接着力は有しないので、極性を与えなければならない。オレフィン樹脂への極性付与方法は、以下の2つの公知の方法が用いられている。
第一、分子内のカルボキシル基又は無水酸基を含有する不飽和化合物と前記ラジカル開始剤を溶融されたオレフィン樹脂にそれぞれ攪拌しながら添加して変形する方法である。
第二、オレフィン重合体に有機溶媒を添加して分散させ或いは融解させてカルボキシル基または無水酸基を含有する不飽和化合物と前記ラジカル開始剤を添加して変形する方法である。
第一の方法は、酸変性が不均一で高温反応による不規則な反応や架橋反応などで不純物が多く、着色、臭いが激しくて塗料用製品としては適さない。本発明におけるポリプロピレン系樹脂の酸変性は、反応が均一で未反応物の除去が容易な有機溶媒を用いる第二の方法を採用する。
不飽和カルボン酸単位は不飽和カルボン酸またはその無水物によって導入される。その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸など、不飽和ジカルボン酸のハフエステル、ハフアミドなどのように分子内(モノマー単位内)に1つ以上のカルボキシル基又は酸無水物基を有する化合物を使用することもできる。その中でも、ポリオレフィン樹脂への導入が容易であるという観点から、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
不飽和カルボン酸単位は、ポリプロピレン樹脂中に共重合でき、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合などになれる。ポリプロピレン樹脂に導入された酸無水物単位は、乾燥状態では酸無水物構造を取ることが容易であり、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中ではその一部又は全部が開環してカルボン酸又はその塩の構造となる傾向がある。
不飽和カルボン酸単位をポリプロピレン樹脂に導入する方法は、特に限定されないが、例えば、ラジカル開始剤の存在下でポリプロピレン樹脂と不飽和カルボン酸をポリプロピレン樹脂の融点以上で加熱溶融して反応させる方法や、ポリプロピレン樹脂を有機溶剤に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法などによってポリプロピレン樹脂に不飽和カルボン酸単位をグラフト共重合する方法を例示することができる。
分子内にカルボキシル基又は無水酸基を含有する不飽和化合物は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは2〜15重量部を使用することができる。
ラジカル開始剤の具体的例は、次のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シトロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレート及び2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)などのペルオキシケタールジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、a,a−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン及び2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルペルオキシド、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド及びm−トルイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−ブチル−ペルオキシイソフタルレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシマレイン酸、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート及びクミルペルオキシオクトエートなどのペルオキシエステル、並びにt−ブチル−ヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼン、ヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド及び1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシドである。また、例示したラジカル開始剤を単独で或いは組み合わせて使用することができる。前記ラジカル開始剤は、前記カルボキシル基又は無水酸基100重量部に対して5〜50重量部、好ましくは10〜30重量部を使用する。
本発明の塗料用樹脂組成物を塗料として用いるために、水又は適宜の有機溶剤を樹脂分散溶媒として使用することができる。好ましくは、分散溶媒は塩基性物質である。
使用可能な有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素類、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチルなどのエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、1,2−ジメチルグリセリン、1,3−ジメチルグリセリン、トリメチルグリセリンなどを例示することができ、これらの有機溶剤は2種以上を混合して使用することができる。
有機溶剤の中でも、樹脂の水性化促進に効果が高いという観点からエタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルが好ましく、これらの中でも水酸基を分子内に1個有する有機溶剤がより好ましく、少量の添加で樹脂を水性化することができるという観点からエチレングリコールアルキルエーテル類がさらに好ましい。
本発明の塗料用樹脂組成物は、界面活性剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子、ポリオールなどをさらに含むことができる。また、本発明の塗料用樹脂組成物は、必要に応じて硬化剤、レベリング剤、消泡剤、ポッピング防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤、耐候剤、難燃剤などの各種物質をさらに含むことができる。
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤及び反応性界面活性剤を例示することができる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、4次アンモニウム化合物であって、炭素原子1〜約22個の脂肪族基又はアルキル鎖の炭素原子1〜約22個の芳香族アルコキシ、ポリオキシアルキレン、アルキルアミド、ヒドロキシアルキル、アリール又はアルキルアリール基から選ばれた反応基と、ハロゲン、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩及びアルキル硫酸塩から選ばれた基から得られた塩形成アニオンである。脂肪族基は、炭素及び水素原子に加えて、エーテル結合、エステル結合及びアミノ基などの他の基を含有してもよい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸及びその塩、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などの高級カルボン酸及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ビニルスルホコハク酸塩などを挙げることができる。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキシドプロピレンオキシドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物や、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体などを挙げることができる。
両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシドなどを挙げることができる。反応性界面活性剤としては、アルキルプロフェニルフェノールポリエチレンオキシド付加物またはこれらの硫酸エステル塩、アリルアルキルフェノールポリエチレンオキシド付加物またはこれらの硫酸エステル塩、アリルジアルキルフェノールポリエチレノキシド付加物またはこれらの硫酸エステル塩などの、反応性二重結合を有する化合物を挙げることができる。
本発明の塗料用樹脂組成物を用いて塗料を形成することができ、このような塗料をポリプロピレン基材に塗布して積層体を形成することができる。本発明に係る塗料は、ポリプロピレン基材の放電処理や火炎処理、酸処理などの複雑な工程を経ることなく、塩素を含有しなくてもスプレー塗装が可能である。
本発明の塗料を基材に塗布する方法は、特に限定されるものではないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、ブラシコーティングなどを採用することができる。印刷方法としては、グラビア印刷、孔版印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、熱転写印刷、インクジェット印刷、スクラッチ印刷、フリースロー印刷、パッド印刷、フォーム印刷、ラベル印刷などを例示することができる。
本発明に係る塗料は塗布量を適切に調節して使用可能であり、塗布量を適宜に調節するためには、コーティングに使用する装置またはその使用条件を適切に選択することに加えて、目的とする塗膜の厚さに適した濃度、粘度に調節して使用することが好ましい。
本発明に係る塗料の乾燥は、特に限定されないが、0〜250℃程度の広い温度範囲で行うことができ、基材の耐熱性が充分に高くない場合には0〜200℃程度がより実用的である。また、乾燥時間は、乾燥温度や塗膜の厚さなどによって異なり、特に限定されないが、通常、5秒〜120分の範囲とすることができる。50〜150℃の温度であれば5秒〜3分程度、室温であれば30分〜120分程度で良好な塗膜が得られる。このように、本発明の塗料は比較的低温でも良好な塗膜(積層体)を形成することができる。
本発明の塗料を用いて積層体および成形品を提供する。本発明の塗料を用いることにより、耐スクラッチ性及び接着性に優れる、タック性を有しない優れたプロピレン系積層体及び成形品を提供することができる。
以下、実施例を具体的に説明する。ところが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例で使用したポリプロピレン系樹脂は、以下のように重合した。多様な分子量を有するポリプロピレン系樹脂を得るための重合触媒としては、均一/不均一触媒の3種類を用いた。不均一触媒は、TiCl3/AlEt2Cl(E.Albizzati, Macromol. Symp.89.73(1995))と、Shinなどが下記に例示したポリプロピレン系樹脂の物性検討のために使用したクロム系触媒を用いた("Stepwise polymerization of propylene and ethylene with Cr(acethylacetonate)3/ MgCl2-ethylbenzoate/ diethylaluminium chloride catalyst system" Yong-Woo Shin, Hisayuki Nakatani, Toshiya Uozumi, Boping Liu, Tsuneji Sano, Koh-hei Nitta, Minoru Terano, Polymer Inter International, 2003, 52, 29-34.)。
メタロセン系触媒の製造は、Waymouth等の方法(G. Coates and R.M. Waymouth, Science, 267, 217(1995), E. Hauptman, R. M. Waymouth and W. J. Ziller, L. Am. Chem. Soc., 117, 11586(1995), M. D. Bruce, G. W. Caotes, E. Hauptman, R. M. Waymouth and J. W. Ziller, J. Am. Chem. Soc., 119, 11174(1997))に基づいて、ビス(2−フェニリンデニル)−ジルコニウムジクロライド(bis(2-phenylindenyl)-zirconium dichloride)及びビス(2−(ビス−3,5−トリフルオロメチルフェニル)インデニル)−ジルコニウムジクロライド(bis(2-(bis-3,5-trifluorom-ethylphenyl)indenyl)-zirconium dichloride)を合成した。
これら触媒を用いて分子量の制御のために水素を導入し、或いは重合温度、モノマー濃度を調節して重合条件を変化させながら多数のポリプロピレン系樹脂を重合した。
重合は、窒素置換した3Lのオートクレーブに室温(25℃)でトルエン0.4L〜1Lと有機アルミニウム(東ソーアクゾ製)を添加した。低分子量ポリプロピレンの重合では水素を添加し、一定量のプロピレンガスを導入した後、共重合では異種のモノマーをゆっくり添加し、所定の触媒/外部ドナー−トルエン溶液を添加して所定の温度に昇温させた後、反応させた。1〜6時間反応させた後、エタノールを導入して重合を停止した。得られた反応物をエタノール−塩酸溶液内に導入して生成されたポリマーを析出させ、溶媒と樹脂を分離し、得られた樹脂を減圧乾燥器で7時間乾燥させることにより、ポリプロピレン系樹脂を得た。各ポリプロピレン系樹脂を表1にまとめた。
本発明のために重合したポリプロピレン系樹脂の多様な立体規則性、分子量及び溶融粘度を有するポリプロピレン樹脂に対してそれらのメソペンタッド分率[mmmm]とアイソタクチック連鎖のモル分率Lを比較したものを表2に示す。
分子量及び分子量分布は、SSC−7700 HT−GPC(千秋科学株式会社製)を用いて得た。測定は、溶媒としてo−ジクロロベンゼン、標準試料としてポリスチレンを用いて140℃で行った。
アイソタクチック連鎖のモル分率LはDSC820(METTLER株式会社製)を用いた。測定は、20〜220℃の範囲で20℃/minの昇温速度にて行って得られた値を用いて算出することにより行った。
また、ポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]は、13C−NMRを測定し、9個に分離されているメチル炭素領域のピークから求められる。ピークのアサインは文献[V. Busico, P. Corradini, R. D. Biasio, L. Landeiani, A. L. Maro, Vol.27, 4521-4524(1994)]の記載方法に基づいて行った。
重合されたポリプロピレン系樹脂の無水マレイン酸変性
温度計及び攪拌棒を設置し且つキシレン500gを注入した3Lのステンレス反応器に表1の共重合体100gを導入し、140℃まで昇温させて溶解させた後、無水マレイン酸15g、ベンゾイルペルオキシドトルエン溶液10g(10wt%)を3時間にわたってゆっくり滴下し、さらに3時間反応を行った。反応終了の後、反応溶液をアセトン2Lに滴下させて結晶化させた後、3回洗浄・乾燥させて酸変性ポリプロピレン系樹脂を得た。
酸変性樹脂の酸量の定量はNicolet iS10 FT−IR Spectrometerを用いて透過法で測定した。Michelson Interferometerを用いて時間支配スペクトルとしてのInterferogramを得た後、これをFourier変換させて周波数支配スペクトルを得る方法である。FT−IRは、既存のDispersive IRに比べてスペクトルを得る時間と感度の面で多くの利点を持っているため、NMRなどの他の分光法と補完的な役目をしている。
得られた2つのピークの面積をそれぞれ算出した後、文献を参考して以下の式を用いてマレイン酸変性率に該当するCI(Carbonyl Index)を算出した。また、酸変性ポリエチレンは1783cm−1と1378cm−1でそれぞれマレイン酸のカルボニル基及びポリエチレン主鎖の末端CH3由来のピークが検出された。文献を参考として以下の算出式を用いて酸変性率を算定した。
*酸変性ポリプロピレン系樹脂
A1167:ポリプロピレンのCH3ピーク面積
各酸変性樹脂の計算結果を表3に示した。
実施例1
攪拌器及び温度計を備えた四口フラスコに溶媒としてメチルシクロヘキサン:メチルエチルケトン=9:1の混合溶媒56gを導入した後、表3の成分A−1樹脂5.0g、B−1樹脂4.7g及びC−1樹脂0.3gを導入し、70℃で4時間溶解させた後、室温に復帰させるもので、ポリプロピレン高粘度塗料用樹脂分散物を得た。塗料用樹脂分散物を25℃でフォードカップNo.4によって測定した値が13±1秒となるようにヘキサン:メチルエチルケトン=9:1の混合溶媒で希釈して塗料用樹脂組成物を得た。
実施例2
表3のA−2樹脂5.5g、B−2樹脂4.8g及びC−2樹脂0.2gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
実施例3
表3のA−4樹脂6.5g、B−1樹脂3.1g及びC−4樹脂0.4gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
実施例4
表3のA−5樹脂4.4g、B−5樹脂5.5g及びC−2樹脂0.1gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
実施例5
表3のA−1樹脂5.5g、B−6樹脂4.4g及びC−2樹脂0.1gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
実施例6
表3のA−5樹脂3.6g、B−2樹脂6.0g及びC−1樹脂0.4gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
実施例7
表3のA−4樹脂4.5g、B−2樹脂5.4g及びC−1樹脂0.1gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
実施例8
表3のA−1樹脂5.4g、B−6樹脂4.5g及びC−4樹脂0.1gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
実施例1〜実施例8に使用された各樹脂の成分及び配合比をまとめて表4に示す。
表3のA−1樹脂10g(単独)に変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
比較例2
表3のB−1樹脂10g(単独)に変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
比較例3
表3のC−1樹脂10g(単独)に変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
比較例4
表3のA−2樹脂5g及びB−2樹脂5gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
比較例5
表3のA−3(比)樹脂9.5g及びC−2樹脂0.5gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
比較例6
表3のB−6樹脂9.5g及びC−4樹脂0.5gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
比較例7
表3のA−1樹脂5g、B−1樹脂4.7g及びC−3(比)樹脂0.3gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
比較例8
表3のA−1樹脂5g、B−4(比)樹脂4.7g及びC−1樹脂0.3gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
比較例9
表3のA−3(比)樹脂5g、B−2樹脂4.7g及びC−1樹脂0.3gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
比較例10
表3のA−2樹脂5.5g、B−4(比)樹脂4.8g及びC−3(比)樹脂0.2gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
比較例11
表3のA−3(比)樹脂5.4g、B−4(比)樹脂4.5g及びC−5(比)樹脂0.1gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。
比較例1〜比較例11に用いられた各樹脂の成分及び配合比をまとめて表5に示す。
塗料用樹脂組成物の安定性評価
実施例1〜8、比較例1〜11で得られた塗料用樹脂組成物30gを透明なガラス瓶に入れ、5℃と40℃のそれぞれの条件で10日間静置して溶液状態を評価した。10日硬化の後、室温でさらに24時間静置して得た樹脂組成物溶液に対してフォードカップ測定値が13±3秒未満であればガラス壁面に付着物がなく、透明であれば良好、フォードカップ測定値が13+3秒以上であれば増粘、サンプルが不透明であり或いはガラス壁面に不均一付着物が存在すれば埃発生と評価した。
塗料用樹脂組成物のスプレー性評価
岩田塗装機(W−101)を用いて霧化圧4kg/cm2で実施例1〜8、比較例1〜11のそれぞれのサンプルを塗布し、霧化になり且つ得られた塗膜が均一であれば◎、霧化は可能であるが得られた塗膜が不均一であれば△、霧化にならなければ×と表示した。
塗膜の耐スクラッチ性評価
ポリプロピレン角板(6×10cm)の表面をイソプロピルアルコールで洗浄し、乾燥させた後の塗膜厚さが12μmとなるように実施例及び比較例それぞれの塗料を塗布し、80℃で20分間乾燥させた。乾燥した塗装体を24時間室温に静置した後、水と砂(50/50を塗膜に均一に摩擦させた後、塗膜の状態と光沢維持率から判定した。光沢維持率が80以上であれば◎、光沢維持率が70以上80未満であれば○、光沢維持率が60以上70未満であれば△、光沢維持率が60未満であれば×と表示した。
ポリプロピレン角板(6×10cm)の表面をイソプロピルアルコールで洗浄し、乾燥させた後の塗膜厚さが12μmとなるように実施例及び比較例それぞれの塗料を塗布し、80℃で20分間乾燥させた。乾燥した塗装体を24時間室温に静置した後、1×1mmのクロスカット100個を製造してセロテープ剥離実験を行って剥離数がなければ◎、剥離数が5/100未満であれば○、剥離数が5/100以上10/100未満であれば△、剥離数が10/100以上であれば×と表示した。
ポリプロピレン角板(6×10cm)の表面をイソプロピルアルコールで洗浄し、乾燥させた後の塗膜厚さが12μmとなるように実施例及び比較例それぞれの塗料を塗布し、80℃で20分間乾燥させた。乾燥した塗装体を1時間室温に静置した後、OPPフィルム(12×20cm)を塗装体の上部に置き、OPPの上端には重さ2kgの鉄板(12×20cm)を30分間放置した後、鉄板を90°の角度で持ち上げて下端のOPPが鉄板と共に上昇すると◎、OPPを動かして塗装体の動きが無ければ○、塗装体が動き或いはOPPから分離されなければ×と表示した。
ポリプロピレン角板(6×10cm)の表面をイソプロピルアルコールで洗浄し、乾燥させた後の塗膜厚さが12μmとなるように実施例及び比較例それぞれの塗料を塗布し、80℃で20分間乾燥させた。乾燥した塗装体を24時間室温に静置し、40℃の水に10日間浸漬した後の塗膜にブリスターの発生がなければ◎、5×5cmの面積内にブリスターが5個以下であれば○、ブリスターの個数が20個以下であれば△、ブリスターの個数が20個以上であれば×と表示した。
比較例1は、高分子量の樹脂単独であって、霧化にならず塗膜が不均一であり、高温貯蔵性実験で増粘現象が現れた。比較例2は、低分子量の樹脂単独であって、溶液の安定性及びスプレー性には優れるが、その他の塗膜の物性は大きく低下した。
比較例3は、低分子量の高結晶性樹脂単独であって、低温貯蔵性実験で埃が多量発生し、塗膜が不均一なので接着力の低下が発生した。比較例4は、低分子量の高結晶性樹脂を含んでいないので、塗膜の結晶化速度が遅延して接着力及び耐水性の面で問題が発生した。
比較例5は、成分Aの分子量が大きいので増粘現象が現れ、スプレー性の面で問題が発生し、比較例6は、高分子量の樹脂(成分A)を含んでいないのでタック性の面で問題が発生し、比較例7は、成分Cのアイソタクチック連鎖のモル分率L値が0.77と高いので埃の発生量が多く、スプレー性が低下して得られた塗膜が不均一であった。
比較例8は、実施例1の成分Aと成分Cの含量は同一であるが、成分Bのモル分率L値が0.27と低い例であって、タック性及び耐スクラッチ性が大きく低下した。比較例9は、比較例5と同様に安定性とスプレー性の面で問題が発生した。比較例10は、成分Bのモル分率L値が小さく、成分CのL値が大きい例であって、塗料としての全項目で問題が発生した。比較例11は、比較例10と同様の結果を示し、溶液の増粘現象が現れた。
したがって、本発明に係る塗料用ポリプロピレン樹脂組成物を用いてポリプロピレン基材の放電処理や火炎処理、酸処理などの工程を経ることなく、塩素を含有しなくてもスプレー塗装が可能であり、耐スクラッチ性及び接着性に優れるうえ、タック性を有しない優れた効果があることを確認することができる。
Claims (17)
- 重量平均分子量が100,000〜300,000、数式1におけるアイソタクチック連鎖のモル分率L値が0.30〜0.70である高分子量ポリプロピレン系樹脂(A)35〜65重量%と;
重量平均分子量が10,000〜50,000、数式1におけるアイソタクチック連鎖のモル分率L値が0.30〜0.70である低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)30〜60重量%と;
重量平均分子量が5,000〜50,000、数式1におけるアイソタクチック連鎖のモル分率L値が0.70〜0.75である高結晶性低分子量ポリプロピレン系樹脂(C)0.1〜5.0重量%とを含んでなる、塗料用樹脂組成物。
- 前記高分子量ポリプロピレン系樹脂(A)の分子量分布(Mw/Mn)が5以下であることを特徴とする、請求項1に記載の塗料用樹脂組成物。
- 前記高分子量ポリプロピレン樹脂(A)及び前記低分子量ポリプロピレン樹脂(B)それぞれは異種単量体から誘導される構造単位を20モル%未満で含有することを特徴とする、請求項1に記載の塗料用樹脂組成物。
- 前記高結晶性低分子量ポリプロピレン系樹脂(C)は異種単量体から誘導される構造単位を5モル%未満で含有することを特徴とする、請求項1に記載の塗料用樹脂組成物。
- 前記異種単量体はエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、及び1−ドデセンの中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3に記載の塗料用樹脂組成物。
- 前記組成物がラジカル開始剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の塗料用樹脂組成物。
- 前記ラジカル開始剤はペルオキシケタール、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、及びヒドロペルオキシドよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項6に記載の塗料用樹脂組成物。
- 前記ラジカル開始剤はプロピレン樹脂に含まれたカルボキシル基または無水酸基100重量部に対して5〜50重量部であることを特徴とする、請求項6に記載の塗料用樹脂組成物。
- 前記組成物が水及び界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の塗料用樹脂組成物。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物に水及び有機溶剤の少なくとも1種の分散溶媒を含む塗料。
- 前記分散溶媒が塩基性物質であることを特徴とする、請求項10に記載の塗料。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の塗料用樹脂組成物からなる層を基材に積層して得られることを特徴とする積層体。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の塗料用樹脂組成物を用いて製造された塗料成形品。
- 重量平均分子量が100,000〜300,000、数式1におけるアイソタクチック連鎖のモル分率L値が0.30〜0.70であるポリプロピレン系樹脂であって、
前記樹脂は異種単量体から誘導される構造単位を20モル%未満で含有することを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂。
- 前記異種単量体はエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、及び1−ドデセンの中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項14に記載のポリプロピレン系樹脂。
- 重量平均分子量が5,000〜50,000、数式1におけるアイソタクチック連鎖のモル分率L値が0.70〜0.75であるポリプロピレン系樹脂であって、
前記樹脂は異種単量体から誘導される構造単位を5モル%未満で含有することを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂。
- 前記異種単量体はエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、及び1−ドデセンの中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項16に記載のポリプロピレン系樹脂。
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