JP2008239925A - 分散樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】プライマーレス用のウレタン発泡体組成物にもちいる、変性ポリオレフィンとポリオールとを含有し、それらが無溶剤下で均一に分散している分散樹脂組成物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)(i)不飽和カルボン酸、その無水物および不飽和カルボン酸誘導体からなる不飽和カルボン酸化合物群から選ばれる1以上の化合物および(ii)ラジカル重合性モノマーから選ばれる一種以上の極性付与剤で変性された変性ポリオレフィン樹脂であって、極性付与剤の変性ポリオレフィン樹脂に占める合計含有量が0.1〜30重量%でありかつ重量平均分子量が10,000以上100,000以下である変性ポリオレフィン樹脂ならびに(B)ポリオール化合物を含有し水および溶剤を実質的に含まないことを特徴とする分散樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、非極性基材、特に表面処理されていない難付着性のポリオレフィン材料への低温での接着性組成物として使用する変性ポリオレフィン樹脂とポリオールとを含有する分散樹脂組成物およびその製造方法に関する。
自動車内装部品などの表皮材には、表面に皮しぼ、ステッチ等の複雑な凹凸模様を有すること、インストルメントパネルのバイザー部等に見られるような複雑なデザインを有することが求められている。環境問題(燃焼処理時における有害ガス発生の抑制)等の観点から、該表皮材には塩素原子単位を有するポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる成形体の代替物として、軽量性に優れる熱可塑性エラストマー組成物からなる真空成形体、粉末成形体、射出成形体、圧縮成形体等が用いられている。
このような成形体に用いられる熱可塑性エラストマー組成物としては、例えばオレフィン系樹脂及びエチレン−α−オレフィン系共重合体ゴムからなる熱可塑性エラストマー組成物や、ポリプロピレン等の非極性樹脂及び特定の水添ジエン系共重合体とからなる組成物が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
しかしながら、これらの成形体に注入発泡法によりポリウレタン発泡体を裏打ちして触感に優れる二層成形体を製造した場合、これらの成形体とポリウレタン発泡体との界面における接着性が不十分なため両者が容易に剥離することがあり、実用的に十分満足のいくものではなかった。
そこで、成形体の接着面にプライマーを塗工してからポリウレタン発泡体を導入する技術が用いられている。例えば、塩素化変性ポリオレフィン樹脂組成物や塩素を含有しない変性ポリオレフィン樹脂組成物がプライマーとして開示されている(特許文献3)。しかし、プライマーを塗工する方法は、プライマーを塗工する工程及びその後の乾燥工程は煩雑であることなどから、十分満足のいくものではなかった。
プライマーレス化を目指した開発としては、基材のオレフィン系樹脂などを変性してプライマーレス化を図ることも開示されているが(特許文献4)、これには非極性のオレフィン系樹脂の基材中にエステル系可塑剤やポリアルキレングリコール等の極性化合物を包埋する必要があり、オレフィン樹脂からなる成型体の機械的物性や耐候性、耐薬品性、耐熱性を損なう可能性がある。
また、特許文献5および特許文献6に示される接着剤組成物のように、変性ポリオレフィン、ポリオール、イソシアネートを含有する組成物も開示されており、オレフィン基材上にウレタン層を積層する手段とも考えられるが、多量の溶剤や水を含むためウレタン層を発泡体とすることは困難である。
さらに、無溶剤下では極性化合物であるポリオールと低極性の変性ポリオレフィンは均一に分散し難く、架橋反応が不均一となり付着性も低い等の問題があった。
特開2003−327761号公報 特許第3759160号公報 特開2003−321588号公報 特開2005−247956号公報 特開2002−241691号公報 特開平6−256592号公報
本発明は、プライマーレス用のウレタン発泡体組成物にもちいる、変性ポリオレフィンとポリオールとを含有し、それらが無溶剤下で均一に分散している分散樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、プライマーレス用のウレタン発泡体組成物に用いる分散樹脂組成物として、特定の変性ポリオレフィン樹脂とポリオールとの混合組成物を用い、それに架橋剤を用いて架橋すれば、プライマーを使用しなくとも基材のポリオレフィンとウレタン発泡体との接着性が良好となることを見出し、本発明に至った。また、従来は、ポリオールと変性ポリオレフィンを水や溶剤を用いずに均一に混合することは困難であったが、特定の変性ポリオレフィン樹脂を選択することにより、水や溶剤の無存在下にポリオールと均一に混合できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下を提供するものである。
〔1〕 (A)(i)不飽和カルボン酸、その無水物および不飽和カルボン酸誘導体からなる不飽和カルボン酸化合物群から選ばれる1以上の化合物、および(ii)ラジカル重合性モノマーから選ばれる一種以上の極性付与剤で変性された変性ポリオレフィン樹脂であって、極性付与剤の変性ポリオレフィン樹脂に占める合計含有量が0.1〜30重量%であり、かつ重量平均分子量が10,000以上100,000以下である変性ポリオレフィン樹脂、ならびに(B)ポリオール化合物を含有し、水および溶剤を実質的に含まないことを特徴とする分散樹脂組成物。
〔2〕 前記(A)変性ポリオレフィンの90℃を超える融解ピークの融解熱が5J/g以下であることを特徴とする〔1〕に記載の分散樹脂組成物。
〔3〕 炭化水素系溶剤中に、(A)(i)不飽和カルボン酸、その無水物および不飽和カルボン酸誘導体からなる不飽和カルボン酸化合物群から選ばれる1以上の化合物、および(ii)ラジカル重合性モノマーから選ばれる一種以上の極性付与剤で変性された変性ポリオレフィンであって、極性付与剤の変性ポリオレフィン樹脂に占める合計含有量が0.1〜30重量%であり、かつ重量平均分子量が10,000以上100,000以下である変性ポリオレフィン樹脂、ならびに(B)ポリオール化合物を融解した後、炭化水素系溶剤を除去することを特徴とする分散樹脂組成物の製造方法。
〔4〕 前記炭化水素系溶剤が、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、およびキシレンから選ばれる一種以上の溶剤であることを特徴とする〔3〕に記載の分散樹脂組成物の製造方法。
本発明の分散樹脂組成物は、プライマーレス用のウレタン発泡体組成物に用いる接着性組成物の前駆組成物として用い、架橋剤を添加することにより、ポリオレフィン基材との接着性に優れた樹脂組成物を得ることができる。また、本発明の製造方法によれば、分散樹脂組成物に溶剤や水を含まず、かつポリオールと変性ポリオレフィンが均一に混合できるため、架橋剤を添加すると均一なウレタン発泡体が製造でき、ポリオレフィン基材への接着性も良好となる。さらに、本発明の分散樹脂組成物と架橋剤との反応組成物は、100℃以下の低温でのウレタン発泡反応においても優れた接着性を有する。
本発明の分散樹脂組成物は、(A)変性ポリオレフィン樹脂および(B)ポリオール化合物を含有し、水および溶剤を実質的に含まないことを特徴とする。すなわち、液体である(B)ポリオール化合物中に、水や溶剤を実質的に含まずに、(A)変性ポリオレフィン樹脂が均一に分散しているポリオール分散樹脂組成物である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明では、分散樹脂組成物の第1の成分として、(A)変性ポリオレフィン樹脂を用いる。まず、(A)変性ポリオレフィン樹脂の原料として用いるポリオレフィン樹脂について以下に詳述する。以下、(A)変性ポリオレフィン樹脂の原料として用いるポリオレフィン樹脂を、「原料ポリオレフィン樹脂」または、単に「ポリオレフィン樹脂」ということがある。
本発明の原料ポリオレフィン樹脂としては、例えば、重合触媒としてチーグラー・ナッタ触媒、或いはメタロセン触媒を用いてエチレン又はα−オレフィンを共重合して得られるものが挙げられる。具体的には、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体などから選ばれる樹脂を例示することができる。これらの樹脂は、単独で用いても良いし、複数の樹脂を混合して用いても良い。
本発明で用いる原料ポリオレフィン樹脂の成分組成は、特に限定されるものではないが、プロピレン成分が60モル%以上のものが好ましい。60モル%未満のものを用いた場合、プロピレン基材に対する接着性が低下するおそれがある。
本発明において用いる原料ポリオレフィン樹脂としては、示差走査型熱量計(DSC)による融点(Tm)が60〜165℃、好ましくは、60℃〜100℃のポリオレフィン樹脂が好ましい。本発明におけるDSCによるTmの測定は、例えば以下の条件で行うことができる。DSC測定装置(セイコー電子工業製)を用い、約10mgの試料を200℃で5分間融解後、−60℃まで10℃/minの速度で降温して結晶化した後に、更に10℃/minで200℃まで昇温して融解した時の融解ピーク温度を測定し、該温度をTmとして評価する。尚、後述のTmは前述の条件で測定されたものである。
本発明で用いる原料ポリオレフィン樹脂の分子量は、特に限定されない。しかし、後述する極性付与剤で変性した変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、1,000〜100,000、より好ましくは、15,000〜80,000である。このため、ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が200,000より大きい場合は、得られる変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が上述の範囲となるように、熱やラジカルの存在下で減成して、分子量を適当な範囲、例えば150,000以下となるように調整することが好ましい。尚、実施例を含む本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準物質:ポリスチレン)によって測定された値である。
本発明において用いる原料ポリオレフィン樹脂としては、前記樹脂の中でも重合触媒としてメタロセン触媒を用いて製造したポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、及びエチレン−プロピレン−ブテン共重合体(以下、これらを併せてプロピレン系ランダム共重合体ということがある)から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
前述のメタロセン触媒としては、公知のものが使用できる。具体的には以下に述べる成分(1)及び(2)、さらに必要に応じて(3)を組み合わせて得られる触媒が望ましい。
・成分(1);共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表4〜6族の遷移金属化合物であるメタロセン錯体。
・成分(2);イオン交換性層状ケイ酸塩。
・成分(3);有機アルミニウム化合物。
メタロセン触媒を用いて合成したポリオレフィン樹脂は、分子量分布が狭い、ランダム共重合性に優れ組成分布が狭い、共重合しうるコモノマーの範囲が広いといった特徴があり、本発明で用いる原料ポリオレフィン樹脂として好ましい。
本発明の(A)変性ポリオレフィン樹脂は、上述の原料ポリオレフィン樹脂を変性させて得られるものであり、変性の際、極性付与剤として(i)不飽和カルボン酸、その無水物および不飽和カルボン酸誘導体からなる不飽和カルボン酸化合物群から選ばれる1以上の化合物、および(ii)ラジカル重合性モノマーから選ばれる一種以上を用いる。本発明の極性付与剤としては、前記(i)と(ii)のそれぞれから1以上の化合物を選択して併用することが好ましい。
以下の記述においては、極性付与剤で変性したポリオレフィン樹脂を総じて変性ポリオレフィン樹脂とする。
本発明における不飽和カルボン酸とは、カルボキシル基を含有する不飽和化合物を意味し、その誘導体とは該化合物のモノ又はジエステル、アミド、イミド等を意味し、その無水物とは該化合物の無水物を意味する。
不飽和カルボン酸化合物群を構成する化合物の具体例としては例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸、ナジック酸及びこれらの無水物、フマル酸メチル、フマル酸エチル、フマル酸プロピル、フマル酸ブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸エチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられ、好ましくは無水イタコン酸、無水マレイン酸である。このうち、不飽和カルボン酸無水物が好ましい。本発明において前記(i)の化合物としては、上記不飽和カルボン酸化合物群から選ばれる1種類の化合物を単独で、或いは2種以上を混合して使用することができる。
不飽和カルボン酸化合物群のグラフト重量%は、アルカリ滴定法或いはフーリエ変換赤外分光法により求めることができ、後述の実施例において示す数値は本方法にて測定された数値である。
本発明におけるラジカル重合性モノマーとは、(メタ)アクリル化合物、ビニル化合物を意味する。(メタ)アクリル化合物とは、分子中に(メタ)アクリロイル基(アクリロイル基及び/又はメタアクリロイル基を意味する。)を少なくとも1個含む化合物である。ラジカル重合性モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、n−ブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等が挙げられる。特に、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)クリレートが好ましく、中でもこれらのメタアクリレートが好ましい。これらは単独、或いは2種以上を混合して使用することができ、その混合割合を自由に設定することができる。
(メタ)アクリル化合物としては、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種以上の化合物を、20重量%以上含むものも好ましい。前記(メタ)アクリル化合物を用いると、変性ポリオレフィン樹脂の分子量分布を狭くすることができ、変性ポリプロピレン樹脂の溶剤溶解性や他樹脂との相溶性をより向上させることができる。
CH2=CR1COOR2 ・・・(1)
(式(I)中、R1=H又はCH3、R2=Cn2n+1、n=1〜18の整数)
尚、上記一般式(I)中のnは、8〜18の整数であることが好ましい。
なお、ラジカル重合性モノマーのグラフト重量は、フーリエ変換赤外分光法或いは1H−NMRにより求めることができ、後述の実施例において示す数値は本方法にて測定された数値である。
本発明において、極性付与剤の(A)変性ポリオレフィン樹脂に占める合計含有量(極性付与剤としての1または複数の化合物の各含有量の合計を意味する。)は、1種類の場合も複数種類の場合も、0.1〜30重量%であり、好ましくは、1重量%〜20重量%、より好ましくは3重量%〜15重量%、特に好ましくは3〜6重量%である。0.1重量%より少ないと、得られる変性ポリオレフィン樹脂をポリオール化合物と混合させることが不可能である。30重量%より多いと変性ポリオレフィン化合物とポリオール化合物との混合物は非常に安定であるが、架橋反応後のウレタン層とポリオレフィン基材との密着性が極端に欠けるものとなる。
尚、極性付与剤の(A)変性ポリオレフィン樹脂に占める合計含有量は、各極性付与剤の樹脂中に占めるグラフト重量%の合計量として得ることができる。
原料ポリオレフィン樹脂を、極性付与剤を用いて変性し、変性ポリオレフィン樹脂を得る方法は特に限定されない。極性付与剤をポリオレフィン樹脂にグラフト重合し、変性ポリオレフィン樹脂を得るための公知の方法で行うことが可能である。例えば、ポリオレフィン樹脂および極性付与剤の混合物をトルエン等の溶剤に加熱溶解し、ラジカル発生剤を添加する溶液法や、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を使用して、ポリオレフィン樹脂、極性付与剤、およびラジカル発生剤を添加し混練する溶融混練法等により変性ポリオレフィン樹脂を得る方法が挙げられる。極性付与剤として、複数の化合物を用いる場合は、これらを一括添加しても、種類毎に逐次添加しても良い。
また、極性付与剤として複数の化合物を用いる場合、ポリオレフィン樹脂に対し、どの化合物からグラフト重合させる際の順序は特に問わない。
極性付与剤をポリオレフィン樹脂にグラフト重合する反応に用いることができるラジカル発生剤は、公知のものの中より適宜選択することができる。特に有機過酸化物系化合物が好ましい。例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート等が挙げられる。このうち、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドが好ましい。ラジカル発生剤のポリオレフィン樹脂に対する添加量は、極性付与剤の重量に対し、1〜50重量%が好ましく、特に好ましくは、1〜30重量%である。この範囲よりも添加量が少ない場合は、グラフト率が低下するおそれがあり、超える場合は、不経済である。
反応助剤としてスチレン、o−、p−、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン等を添加しても良い。
本発明において用いる(A)変性ポリオレフィンは、重量平均分子量は10,000以上100,000以下が好ましく、より好ましくは15,000以上80,000以下である。重量平均分子量が10,000より小さい場合は、ポリオール化合物と混合して分散樹脂組成物とした後、架橋反応によりウレタン層を形成したときのオレフィン基材への接着性能およびその安定性に欠ける。また、重量平均分子量が100,000を超える場合は、接着性能を発現するために100℃を超えるウレタン発泡反応の温度が必要となり、このような高温下ではオレフィン基材の変形を引き起こす。
本発明では、基材への付着性とポリオールへの分散性を変性ポリオレフィン樹脂に付与するため、極性付与剤の含有量と重量平均分子量を最適な範囲に設定したことも特徴の一つである。
本発明において(A)変性ポリオレフィン樹脂は、その変性ポリオレフィンの90℃を超える融解ピークの融解熱が5J/g以下であることが好ましい。5J/gを超えると、ポリオール化合物と混合して分散樹脂組成物とした後、架橋反応によりウレタン層を形成したときの分散安定性に欠けるほか、オレフィン基材への接着性能も低下するおそれがある。
融解熱の測定には、DSC測定装置(セイコー電子工業製)を用いることができ、後述の融解熱もこの装置を用いて測定したものである。
(A)変性ポリオレフィン樹脂の90℃を超える融解ピークの融解熱が5J/g以下であるとは、以下のことを意味する。
(1)(A)変性ポリオレフィン樹脂の融点が90℃以下であること。
(2)(A)変性ポリオレフィン樹脂の融点が90℃を超える場合は、前記樹脂の融点における融解熱が5J/g以下であること。
(1)においては融解熱について特に規定しない理由は、(A)変性ポリオレフィン樹脂の融点が90℃以下である場合には、その90℃を超える融解ピークの融解熱は必ず5J/g以下(通常は0J/gかそれに近い)になることに基づくものである。この場合融点は、20℃〜90℃の範囲が好ましく、より好ましくは60℃〜90℃である。融点が20℃よりも低い場合は、これをポリオール化合物との混合組成物とし、さらに架橋反応によりウレタン層とした際、オレフィン基材との接着性に欠けるおそれがある。
一方(2)融点が90℃を超える場合は、その(A)変性ポリオレフィン樹脂の融点における融解熱が5J/g以下であることがこのましい。融解熱は、できる限り小さい方がよい。5J/gを超える場合は、オレフィン基材との接着性能を発現するために架橋反応に要する反応温度を高くする必要があり、低温でのウレタン発泡処理には適さない可能性があり、また、高温でのウレタン発泡処理をした場合は、オレフィン基材の変形を引き起こすおそれがある。尚、融点の上限は、通常は、(A)変性ポリオレフィンの原料ポリオレフィンの融点の上限(約160℃)である。
本発明においては、必要に応じて上記好ましい範囲の融点を持つ樹脂に、融点90℃を超える高結晶性の変性ポリオレフィン樹脂を配合し、2以上の変性ポリオレフィン樹脂の組み合わせを本発明の(A)成分とすることは可能である。この場合、配合の結果(A)変性ポリオレフィン樹脂全体としては、好ましい範囲の融点と90℃を超える融点を二つ持つこととなるが、90℃を超えるほうの融点における融解ピークの融解熱が5J/g以下であることが好ましい。
本発明においては、(A)変性ポリオレフィン樹脂として、上述した変性ポリオレフィン樹脂を1種類用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の分散樹脂組成物は、第二の成分として(B)ポリオール化合物を含有する。(B)ポリオール化合物としては、ポリウレタン樹脂やその他架橋体の合成に通常用いられるポリオールを使用することができ、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
上記ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキシドを単独または共重合させて得られるもの、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレンエーテルグリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体等が挙げられる。このうち、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体が好ましい。
上記ポリエステルポリオールとしては、例えばマレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等のジカルボン酸またはその無水物と、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族グリコール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の脂環族グリコール、キシリレングリコール等の芳香環を有するグリコール、炭素数1〜18(C1−18)のアルキルジエタノールアミン等のアルキルジアルカノールアミン等のグリコールとを重縮合させて得られたもの、例えばポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリエチレンプロピレンアジペート等が挙げられる。或いは前記グリコール類を開始剤として1種または2種以上のラクトン類を開環重合して得られるポリラクトンジオール、例えばポリカプロラクトンジオール、ポリメチルバレロラクトンジオール等が挙げられる。このうち、ポリヘキサメチレンアジペートが好ましい。
上記ポリエーテルエステルポリオールとしては、エーテル基含有ジオールの単独または他のグリコールとの混合物を前記ジカルボン酸またはその無水物と反応させるか、またはポリエステルグリコールにアルキレンオキシドを縮重合させることによって得られるもの、例えばポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート等が挙げられる。
上記ポリカーボネートポリオールとしては、前記グリコールまたは各種ポリオールとメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等とから、脱アルコールまたは脱グリコール反応によって得られるもの、例えばポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
なお、上記グリコールの一部をグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコールで置換することもできる。
上記ポリオール化合物の重量平均分子量は通常1,000〜15,000、好ましくは2,000〜10,000である。
本発明の分散樹脂組成物は、上述の(A)変性ポリオレフィン樹脂および(B)ポリオール化合物を含有するが、組成物中におけるそれらの比率(A)/(B)は重量比で1/50〜1/1が好ましく、さらに1/20〜1/2が好ましい。重量比が1/50より小さい場合は、架橋反応により形成する発泡ウレタン層のオレフィン基材への接着性が乏しいものとなるおそれがある。重量比が1/1を超える場合は、樹脂分散組成物は固化し発泡ウレタン用原料としての操作性が著しく低下するとともに、架橋反応後に形成するウレタン層が発泡し難いものとなるおそれがある。
本発明の分散樹脂組成物は、水や有機溶剤などの溶剤を実質的に含まないものである。すなわち、水や溶剤を含まない状態でも、(A)変性ポリオレフィン樹脂が(B)ポリオール化合物に均一に分散し、安定した分散状態を保持することができる。また、水や溶剤を含まないので、得られる分散樹脂組成物を架橋反応させた際に、ウレタン層を発泡体とすることができる。
上述した本発明の分散樹脂組成物は、炭化水素系溶剤中に上記(A)変性ポリオレフィン樹脂(A)およびポリオール化合物(B)を融解した後、炭化水素系溶剤を除去することを特徴とする、請求項1または2に記載の分散樹脂組成物の製造方法により効率よく製造することができる。
このような本発明の製造方法は、例えば、(A)変性ポリオレフィン樹脂、(B)ポリオールおよび炭化水素系溶剤を加え攪拌下にて高温(以下に詳細を述べる)下で融解した後、炭化水素系溶剤を高温下にて減圧留去し、攪拌下にて室温まで冷却して実施することができる。(A)および(B)の添加量については、上記本発明の分散樹脂組成物における(A)および(B)の好ましい重量比となるような量を適宜定めることができる。
上記炭化水素系溶剤としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレンから選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、さらに好ましくは、n−ヘプタン、トルエンが好ましい。
上記の融解および減圧留去時の条件は、添加した炭化水素系溶剤が完全に除去できる条件であり、例えば温度は80℃以上が好ましく、さらに好ましくは100℃以上である。融解および減圧留去時の温度が80℃より低い場合は、融解時の変性ポリオレフィン樹脂の粘度が高く均一な分散が困難であり、また炭化水素系溶剤の減圧留去が困難である。
上記の通り減圧留去を行うことにより有機溶剤等の溶剤を除去でき、溶剤を実質的に含まない組成物が得られるが、微量の溶剤が不可避的に含まれる可能性もある。尚、水は本発明の分散樹脂組成物を製造する際に添加する必要がないため、除去の必要はない。
本発明の分散樹脂組成物を製造する際には上記の通り、有機溶剤等を減圧留去した後、炭化水素系溶剤を一定量の範囲で添加することができる。添加する炭化水素系溶剤は、接着性能向上剤としての役割を果たすものである。
上記接着性能向上剤としての上記好ましい炭化水素系溶剤の配合量は、好ましくは分散樹脂組成物100重量部に対して炭化水素系溶剤10重量部以下であり、さらに好ましくは5重量部以下である。配合量が10重量部を超える場合は、接着性能の向上効果は10重量部の場合と同等であり不経済である。また、10重量部を遥かに超える場合は、架橋反応時の発泡阻害を引き起こす。
本発明における分散樹脂組成物に架橋剤および、必要な場合は架橋反応を促進する触媒や発泡剤を加え均一に混合した後、加熱したオレフィン基材上にて架橋反応を行うことで、オレフィン基材への接着性を有する組成物をオレフィン基材上に形成することができる。特に、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を用い、触媒および発泡剤を加え架橋反応を行うことで、オレフィン基材上に接着性能を有するウレタン発泡体を形成することができる。オレフィン基材上にて架橋反応を行う際の加熱温度は、60〜120℃が好ましく、さらに好ましくは80〜100℃が好ましい。加熱温度が60℃よりも低い場合は架橋反応後に形成するウレタン層とオレフィン基材間の密着性が低くなるおそれがある。加熱温度が120℃を超える場合は、ウレタン層とオレフィン基材間の密着性には問題はないが、オレフィン基材の変形を引き起こすおそれがある。
上記イソシアネート系架橋剤としては、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、1,5′−ネフタレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソジアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独使用でも二種以上の併用でも良い。
上記架橋反応を促進する触媒としては、例えばトリエチルアミン、ジメチルアニリン等の3級アミン系の触媒および有機スズ、有機亜鉛等の有機金属系触媒が挙げられる。また、上記発泡剤としては、水等が挙げられる。
本発明の分散樹脂組成物は、難付着性で塗料等の塗工が困難な基材に対して、プライマー処理等の表面処理等を行わなくとも、接着性を有する架橋体の中間原料として使用することができる。例えば、本発明の分散樹脂組成物を原料としてイソシアネート系架橋剤を用い、難付着性のポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系基材上にて架橋反応を行うことにより、表面処理を行うことなく、ウレタン基材をポリオレフィン基材上に密着させることができる。
さらに、本発明の分散樹脂組成物は、例えば、自動車の内装部材用として、プライマーレス用のウレタン発泡体組成物に用いる接着性組成物として好適に用いることができる。特に低温でのウレタン発泡処理に用いる接着性組成物として好適である。
また、本発明の分散樹脂組成物の用途は、上述のようなウレタン樹脂の中間原料に限られない。例えば、本発明の分散樹脂組成物を原料として、オレフィン系基材上にてエポキシ系架橋剤や酸無水物系の架橋剤等を用いて反応させることにより、オレフィン基材上に接着性を有するポリエーテルやポリエステル等の架橋体を形成することができる。
本発明の分散樹脂組成物には、用途により必要に応じてアクリル樹脂、ウレタン樹脂、低級アルコール類、低級ケトン類、低級エステル類、防腐剤、レベリング剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、金属塩、酸類等を配合できる。
次に本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下、本発明の製造例および実施例並びに比較例の実施条件について説明する。
[変性ポリオレフィン樹脂の製造例1]
ポリオレフィン樹脂としてメタロセン触媒を重合触媒として製造したポリプロピレン(重量平均分子量110,000、Tm=72℃、融解熱7.4J/g)100重量部、無水マレイン酸2重量部、メタクリル酸ステアリル1重量部、メタクリル酸シクロヘキシル1重量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド1.5重量部を、175℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応した。押出機内にて脱気も行い、残留する未反応物を除去した。得られた変性ポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が70,000、融点が72℃、72℃の融解ピークの融解熱7.1J/g、90℃を超える融解ピークの融解熱0J/g、無水マレイン酸のグラフト重量が1.6重量%、メタクリル酸ステアリルのグラフト重量が0.8重量%、メタクリル酸シクロヘキシルのグラフト重量が0.8重量%であった。
[変性ポリオレフィン樹脂の製造例2]
ポリオレフィン樹脂としてメタロセン触媒を重合触媒として製造したプロピレン系共重合体(プロピレン成分96モル%、エチレン成分4モル%、重量平均分子量30,000、Tm=76℃、融解熱19.7J/g)100重量部、無水マレイン酸4重量部、メタクリル酸メチル2重量部、メタクリル酸シクロヘキシル2重量部、ジクミルパーオキサイド3重量部を、195℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応した。押出機内にて脱気も行い、残留する未反応物を除去した。得られた変性ポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が15,000、融点が76℃、76℃の融解ピークの融解熱18.5J/g、90℃を超える融解ピークの融解熱0J/g、無水マレイン酸のグラフト重量が2.8量%、メタクリル酸メチルのグラフト重量が1.4重量%、メタクリル酸シクロヘキシルのグラフト重量が1.4重量%であった。
[変性ポリオレフィン樹脂の製造例3]
ポリオレフィン樹脂としてメタロセン触媒を重合触媒として製造したプロピレン系共重合体(プロピレン成分90モル%、エチレン成分10モル%、MFR=3g/10min、Tm=135℃、融解熱9.3J/g)を用いたこと、および極性付与剤としてのメタクリル酸ステアリルの代わりにメタクリル酸ラウリルを用いたこと以外は変性ポリオレフィン樹脂の製造例1と同様に変性ポリオレフィン樹脂を得た。得られた変性ポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が80,000、融点が134℃、90℃を超える融解ピーク(134℃)の融解熱9.0J/g、無水マレイン酸のグラフト重量が1.6重量%、メタクリル酸ラウリルのグラフト重量が0.8重量%、メタクリル酸シクロヘキシルのグラフト重量が0.8重量%であった。
[変性ポリオレフィン樹脂の製造例4]
製造例3で得られた変性ポリオレフィン樹脂50重量部と、製造例1で得られた変性ポリオレフィン樹脂50重量部を混合した。得られた変性ポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が75,000、72℃の融解ピークの融解熱3.55J/g、90℃を超える融解ピーク(134℃)の融解熱4.5J/g、無水マレイン酸のグラフト重量が1.6重量%、メタクリル酸ステアリルのグラフト重量が0.4重量%、メタクリル酸ラウリルのグラフト重量が0.4重量%、メタクリル酸シクロヘキシルのグラフト重量が0.8重量%であった。
[変性ポリオレフィン樹脂の製造例5]
ポリオレフィン樹脂としてメタロセン触媒を重合触媒として製造したポリプロピレン(重量平均分子量110,000、Tm=72℃、融解熱7.4J/g)100重量部、無水マレイン酸6重量部、メタクリル酸ステアリル4重量部、メタクリル酸シクロヘキシル4重量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド4重量部を、175℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応した。押出機内にて脱気も行い、残留する未反応物を除去した。得られた変性ポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が64,000、融点が72℃、72℃の融解ピークの融解熱6.6J/g、90℃を超える融解ピークの融解熱0J/g、無水マレイン酸のグラフト重量が4.8重量%、メタクリル酸ステアリルのグラフト重量が3.2重量%、メタクリル酸シクロヘキシルのグラフト重量が3.2重量%であった。
[変性ポリオレフィン樹脂の製造例6]
ポリオレフィン樹脂としてメタロセン触媒を重合触媒として製造したポリプロピレン(重量平均分子量180,000、Tm=72℃、融解熱7.5J/g)100重量部、無水マレイン酸4重量部、メタクリル酸ステアリル2重量部、メタクリル酸シクロヘキシル2重量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド2重量部を、175℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応した。押出機内にて脱気も行い、残留する未反応物を除去した。得られた変性ポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が140,000、融点72℃、72℃の融解ピークの融解熱7.1J/g、90℃を超える融解ピークの融解熱0J/g、無水マレイン酸のグラフト重量が2.5重量%、メタクリル酸ステアリルのグラフト重量が1.3重量%、メタクリル酸シクロヘキシルのグラフト重量が1.3重量%であった。
[変性ポリオレフィン樹脂の製造例7]
ポリオレフィン樹脂としてメタロセン触媒を重合触媒として製造したプロピレン系共重合体(プロピレン成分66モル%、エチレン成分33モル%、MFR=1.5g/10min、Tm=153℃、融解熱20.0J/g)を用いた以外は変性ポリオレフィン樹脂の製造例1と同様に変性ポリオレフィン樹脂を得た。得られた変性ポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が200,000、融点が151℃、90℃を超える融解ピーク(151℃)の融解熱19.4J/g、無水マレイン酸のグラフト重量が1.4重量%、メタクリル酸ステアリルのグラフト重量が0.7重量%、メタクリル酸シクロヘキシルのグラフト重量が0.7重量%であった。
[変性ポリオレフィン樹脂の製造例8]
撹拌機、冷却管および滴下ロートを取り付けた四つ口フラスコに、ポリオレフィン樹脂としてメタロセン触媒を重合触媒として製造したプロピレン系共重合体(プロピレン成分96モル%、エチレン成分4モル%、重量平均分子量60,000、Tm=72℃、融解熱22.0J/g)100重量部、メタクリル酸メチル50重量部、アクリル酸エチル50重量部、キシレン400重量部を加え、容器内を窒素ガスで置換し加熱溶解した。次に系の温度を110℃に保持して撹拌しながらジクミルパーオキサイドのキシレン溶液(5重量%)30重量部を3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温に冷却させた後、反応物を大量のアセトン中に投入して精製し、変性ポリオレフィン樹脂を得た。得られた変性ポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が70,000、融点が72℃、融点72℃の融解ピークの融解熱が12.3J/g、90℃を超える融解ピークの融解熱0J/g、メタクリル酸メチルのグラフト重量が22重量%、アクリル酸エチルのグラフト重量が22重量%であった。
[実施例1]
撹拌機及び冷却管を取り付けた四つ口フラスコに、変性ポリオレフィン樹脂の製造例1で得られた変性ポリオレフィン樹脂を100重量部、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量7,000)233重量部及びn−ヘプタン100重量部を仕込み、120℃で1.5時間均一分散させた。次いで、120℃、72mmHgの減圧下で1.5時間かけてn−ヘプタンを留去し、撹拌下、2時間かけて室温まで冷却することにより分散樹脂組成物を得た。
[実施例2]
撹拌機及び冷却管を取り付けた四つ口フラスコに、変性ポリオレフィン樹脂の製造例2で得られた変性ポリオレフィン樹脂を100重量部、ポリヘキサメチレンアジペート(重量平均分子量3,000)233重量部及びn−ヘプタン100重量部を仕込み、120℃で1.5時間均一分散させた。次いで、120℃、72mmHgの減圧下で1.5時間かけてn−ヘプタンを留去し、撹拌下、2時間かけて室温まで冷却することにより分散樹脂組成物を得た。
[実施例3]
撹拌機及び冷却管を取り付けた四つ口フラスコに、変性ポリオレフィン樹脂の製造例4で得られた変性ポリオレフィン樹脂100重量部、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体(オキシエチレン成分46モル%、オキシエチレン成分54モル%、重量平均分子量5,000)233重量部及びn−ヘプタン200重量部を仕込み、120℃で1.5時間均一分散させた。次いで、120℃、72mmHgの減圧下で1.5時間かけてn−ヘプタンを留去し、撹拌下、2時間かけて室温まで冷却することにより分散樹脂組成物を得た。
[実施例4]
攪拌機および滴下ロートを取り付けた四つ口フラスコに、製造例1で得られた分散樹脂組成物100重量部を投入し、室温にて攪拌下n−ヘプタン5重量部を0.5時間かけて滴下することにより分散樹脂組成物を得た。
[実施例5]
トルエン10重量部を滴下した以外は、実施例4と同様に分散樹脂組成物を得た。
[実施例6]
変性ポリオレフィン樹脂として変性ポリオレフィン樹脂の製造例3で得られた変性ポリオレフィンを用いた以外は、実施例1と同様に分散樹脂組成物を得た。
[実施例7]
変性ポリオレフィン樹脂として変性ポリオレフィン樹脂の製造例5で得られた変性ポリオレフィンを用いた以外は、実施例1と同様に分散樹脂組成物を得た。
[比較例1〜3]
撹拌機及び冷却管を取り付けた四つ口フラスコに、変性ポリオレフィン樹脂の製造例6〜8で得られた変性ポリオレフィン樹脂をそれぞれ100重量部、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量5,000)233重量部及びトルエン400重量部を仕込み、120℃で1.5時間均一分散させた。次いで、120℃、72mmHgの減圧下で1.5時間かけてトルエンを留去し、撹拌下、2時間かけて室温まで冷却することにより分散樹脂組成物を得た。
各実施例および比較例で使用した変性ポリオレフィン樹脂の種類及び物性を、表1に示す。
実施例における評価方法について説明する。
[評価方法]
<分散樹脂組成物の安定性の評価>
下記の各実施例及び比較例において得られる分散樹脂組成物の安定性は、分散樹脂組成物の調製後、20℃下で7日間、および30日間静置した後の性状を目視にて評価した。評価結果を表2に示す。
<オレフィン基材への接着性能の評価>
下記の各実施例及び比較例において得られる分散樹脂組成物のポリオレフィン基材への接着性能は、押出成型された熱可塑性オレフィン(TPO)シートを用いて評価した。
各分散樹脂組成物100〜110重量部に対して、ラウリル酸ジブチルスズ(DBTDL)1.2重量部を加え、1分間攪拌した。次いで架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)6.6重量部を加え1分間激攪拌した後、これを表面処理の施されていないTPOシート上に塗布し、塗布面の上から木綿製の布を張り合わせた。次いで、雰囲気温度80℃又は100℃のオーブン内で5分間加熱後、室温にて24時間静置した。各試験片を15mm幅となるように切断し、引張試験機を用いて100mm/minで引き剥がし、その剥離強度を測定した。本評価方法における評価結果を表3に示す。
Figure 2008239925
Figure 2008239925
Figure 2008239925
以上の結果より、以下のことが分かる。
実施例1〜7の分散樹脂組成物は、溶剤や水を含まなくとも、架橋剤添加によりポリオレフィン基材への接着性も良好となり、ポリオールと変性ポリオレフィンの均一な分散体を得ることができた。分散安定性については、変性ポリオレフィン樹脂の極性付与剤の含有量が多い方が長期間の安定性はよい傾向にあった。なお、90℃を超える融解ピークの融解熱が9.0J/gの変性ポリオレフィン樹脂を用いた実施例6の分散樹脂組成物では、80℃又は100℃での剥離強度が低下しており、低温での接着性が低くなる傾向にあった。
一方、分子量が140,000の変性ポリオレフィン樹脂を用いた比較例1の組成物では、分散安定性、剥離強度共に実施例に比べて劣る結果であった。また、分子量200,000の変性ポリオレフィン樹脂を用いた比較例2では、ポリオールと変性ポリオレフィン樹脂が完全に分離してしまい、事実上組成物を形成することができなかった。また、変性ポリオレフィン樹脂への極性付与剤の合計含有量が44重量%の比較例3では、分散安定性は優れているものの、基材への接着性がまったくなかった。

Claims (4)

  1. (A)(i)不飽和カルボン酸、その無水物および不飽和カルボン酸誘導体からなる不飽和カルボン酸化合物群から選ばれる1以上の化合物、および(ii)ラジカル重合性モノマーから選ばれる一種以上の極性付与剤で変性された変性ポリオレフィン樹脂であって、極性付与剤の変性ポリオレフィン樹脂に占める合計含有量が0.1〜30重量%であり、かつ重量平均分子量が10,000以上100,000以下である変性ポリオレフィン樹脂、ならびに
    (B)ポリオール化合物を含有し、
    水および溶剤を実質的に含まないことを特徴とする分散樹脂組成物。
  2. 前記(A)変性ポリオレフィンの90℃を超える融解ピークの融解熱が5J/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の分散樹脂組成物。
  3. 炭化水素系溶剤中に、
    (A)(i)不飽和カルボン酸、その無水物および不飽和カルボン酸誘導体からなる不飽和カルボン酸化合物群から選ばれる1以上の化合物、および(ii)ラジカル重合性モノマーから選ばれる一種以上の極性付与剤で変性された変性ポリオレフィンであって、極性付与剤の変性ポリオレフィン樹脂に占める合計含有量が0.1〜30重量%であり、かつ重量平均分子量が10,000以上100,000以下である変性ポリオレフィン樹脂、ならびに
    (B)ポリオール化合物
    を融解した後、炭化水素系溶剤を除去することを特徴とする分散樹脂組成物の製造方法。
  4. 前記炭化水素系溶剤が、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、およびキシレンから選ばれる一種以上の溶剤であることを特徴とする請求項3に記載の分散樹脂組成物の製造方法。
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