JP4003528B2 - ポリオレフィン塗装用ベース塗料組成物 - Google Patents

ポリオレフィン塗装用ベース塗料組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン塗装用ベース塗料組成物に関する。特に本発明は基材の表面処理や洗浄を必要とせず、プライマー塗装が不要で、一回の塗装により良好な耐水性、耐候性を持つ塗膜が形成できるポリオレフィン塗装用ベース塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレンやプロピレン・α−オレフィン共重合体(以下併せてプロピレン系重合体という)は、機械的物性、耐熱性、耐薬品性、耐水性などに優れ、安価であることから、フィルム、シート、成形品等の広い分野で使用されている。これらフィルム、シート、成形品には装飾、塗装、表面保護を目的として各種コーティング剤等による性能、機能の付与が行われる。一方、プロピレン系重合体は、分子中に極性基を持たないため一般に低極性であり、塗装が困難であるという欠点を有している。この欠点を改善するために、プロピレン系重合体の表面を薬剤により化学的に処理したり、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理などの手法で酸化するといった種々の手法が試みられてきた。しかしながら、これらの方法はそれぞれ特殊な装置が必要であるばかりでなく、塗装性の改良効果においても十分であるとは言えなかった。
【0003】
そこで比較的簡便な方法として、塩素の付加により有機溶媒に対する溶解性を付与し極性を高めた塩素化ポリプロピレンが開発された。塩素化ポリプロピレンの炭化水素溶液を、プロピレン系重合体の表面に塗布して薄膜を形成させることにより、塗装性や接着性を改良することができる。
【0004】
一方、近年、自動車用内外装部品等をはじめとする各種分野において、塗装工程におけるコストの削減を目的として、プロピレン系重合体にプライマー塗装を行うことなく使用できるベース塗料(プライマーレスベース塗料)の開発が行われている。ベース塗料をプライマーレス化するためには、主として耐候性、塗膜強度等を保持するために用いる主剤であるアクリルポリオール、ポリエステルポリオールに加えて、一般にプライマーに含まれる成分であり、プロピレン系重合体との接着性を向上させる働きがある塩素化ポリプロピレンを配合する必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アクリルポリオール及びポリエステルポリオールと塩素化ポリプロピレンとは相溶性が悪く、塗料の貯蔵安定性が低下し、密着性、耐水性および耐候性等の物性のバランスがとれないという問題があった。また、塩素化ポリプロピレンに極性モノマーをグラフト共重合したり、ポリウレタン、アクリル等の極性ポリマーをブロック化することにより変性した変性塩素化ポリプロピレンは、アクリルポリオール及びポリエステルポリオールとの相溶性を改善することができたが、その原料である塩素化ポリプロピレンの性質に基づく多くの問題点を持っていた。例えば、分子鎖中に存在する塩素原子と隣接炭素原子に結合する水素原子とから熱あるいは紫外線による脱離反応により発生する塩化水素が自己触媒的に作用して分子鎖の切断、着色物質の生成、臭気物質の生成、金属に対する腐食等を引き起こす。したがって、樹脂製造時に製品が劣化したり、加工後の塗膜も耐久性が十分でなかったりした。
【0006】
さらに、塩素化ポリプロピレン中に含有される塩素原子は加工物を廃棄した後、環境ホルモンであり猛毒物質でもあるダイオキシンを発生させる塩素源となる可能性がある。そこで、塩素化ポリプロピレンについても、塩化ビニル樹脂同様、塩素のようなハロゲンを含有しない代替樹脂の開発が強く望まれている。現状の塩素化ポリプロピレンに替わる非塩素系のポリオレフィンは、有機溶媒に溶解するものはポリオレフィンに対する接着性が不十分であったり、粘着性が強くブロッキングを起こし易かったりした。また、ポリオレフィンに対する接着性を有するものは有機溶媒に対する溶解性が十分ではなく、アクリルポリオール及びポリエステルポリオールに対する相溶性も乏しく、また、ポリウレタンによる変性も困難であった。
【0007】
本発明は、塩素のようなハロゲンを含有せず、べたつき性がなく、溶解性にも優れ、かつアクリルポリール及びポリエステルポリオールに対する相溶性に優れ、基材としての結晶性のプロピレン系重合体に対して良好な接着性、塗装性を保持し、耐久性、耐薬品性の高い塗膜を形成することが可能な新規な変性ポリプロピレン系重合体により、プライマー塗装が不要で、一回の塗装により良好な耐水性、耐候性を持つ塗膜が形成できるポリオレフィン塗装用ベース塗料組成物を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のプロピレン系重合体の主鎖を特定の方法で変性することによって得られた重合体をアクリルポリオール及び/又はポリエステルポリオールに対して配合したベース塗料組成物がポリオレフィン塗装用プライマーレスベース塗料として上記の種々の問題点を解決し得ることを見出して本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明の要旨は、主剤として(A)アクリルポリオール及び/又は(B)ポリエステルポリオール、硬化剤として(C)メラミン樹脂及び/又は(D)ポリイソシアネート化合物、並びに着色剤を含むベース塗料組成物において、さらに主剤として(E)アイソタクチックブロックを含むステレオブロック構造を有し、 13 C−NMRにて頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部のメチル基の炭素原子に由来するピークを観測し、mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークのピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとした際に、19.8〜22.2ppmに現れるピークの総面積Sに対する21.8ppmをピークトップとするピークの面積S 1 の比率(S 1 /S)が10〜60%であって、重量平均分子量が1000〜200000で、プロピレン含量が95重量%以上であるプロピレン系重合体(以下、「プロピレン系重合体I」という)を主鎖として有し、かつ分子中に、活性水素含有官能基、イソシアネート基、酸無水物基及びエポキシ基からなる群から選ばれた官能基を少なくとも1個有する変性プロピレン系重合体と、他の高分子ジオール、有機ジイソシアネート及び鎖延長剤(以下併せて「ポリウレタン成分」という)との反応によって得られ、上記変性プロピレン系重合体と上記ポリウレタン成分の合計との重量比が5/95から99/1の範囲にあり、数平均分子量が5000〜300000であるポリウレタン変性ポリプロピレン樹脂、及び/又は、(F)上記プロピレン系重合体Iの主鎖と、カルボン酸基、酸無水物基及びカルボン酸エステル基からなる群から選ばれた官能基を含む側鎖とを有する変性プロピレン系重合体とを含有し、上記(A)〜(F)の各成分の合計を100としたときの各成分間の重量比率が、(A+B):(C+D):(E+F)=4〜90:1〜25:5〜95、であることを特徴とするポリオレフィン塗装用ベース塗料組成物、に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
本発明のベース塗料組成物は、主剤として(A)アクリルポリオール及び/又は(B)ポリエステルポリオール、硬化剤として(C)メラミン樹脂及び/又は(D)ポリイソシアネート化合物、並びに着色剤を含み、さらに追加的な主剤として(E)ポリウレタン変性ポリプロピレン樹脂及び/又は(F)変性プロピレン系重合体とを含んでいる。以下、このベース塗料組成物の各成分について詳しく説明する。
【0011】
本発明に用いるアクリルポリオール(A)は、ベース塗料の主剤として用いられ、主として耐候性を付与する成分である。アクリルポリオール(A)は、水酸基を有するアクリル系単量体を必須成分とした重合体であれば構成する構造単位の種類について特に限定はなく、適宜、カルボキシル基を有するアクリル系単量体、共重合可能なエステル基を有するアクリル系単量体、アクリル系以外のビニル系単量体等との共重合体であればよい。
【0012】
水酸基を有するアクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルや、これらのε−カプロラクトン付加物等が挙げられ、1種のみ、あるいは、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0013】
カルボキシル基を有するアクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸等を挙げることができ、1種のみ、あるいは、必要に応じて2種以上を併用してもよい。エステル基を有するアクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができ、1種のみ、あるいは、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0014】
ビニル系単量体としては、例えば、スチレン等を挙げることができ、1種のみ、あるいは、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
アクリルポリオール(A)は、上記アクリル系単量体およびビニル系単量体から、適宜単量体を選んで、重合させることによって得られる。
アクリルポリオール(A)の水酸基価について、特に限定はないが、通常、10〜100mgKOH/gであり、好ましくは30〜80mgKOH/gである。水酸基価が10mgKOH/g未満であると、架橋密度が低く塗膜強度が低下する傾向がある。また、水酸基価が100mgKOH/gを超えると、架橋密度が高くなり過ぎ、硬化収縮が大きくなって、密着性が低下したり脆くなる傾向がある。アクリルポリオール(A)の分子量について、特に限定はないが、通常、3000〜100000であり、好ましくは5000〜60000である。分子量が3000未満の場合、ベース塗料の色相変動が大きくなったり、硬化速度が遅くなる傾向がある。また、分子量が100000を超えると、ベース塗料粘度が高まり、塗膜外観が悪く、膜厚が薄くなる傾向がある。
【0015】
本発明で用いられる、ポリエステルポリオール(B)は、例えば多塩基酸成分と多価アルコール成分とをエステル化反応させることによって得られる。該多塩基酸成分は1分子中にカルボキシル基を2個以上有する化合物で、脂肪族系、脂環族系及び芳香族系等の多塩基酸又はこれらの無水物から選ばれた1種もしくは2種以上が使用できる。多価アルコール成分は、1分子中に水酸基を2個以上有する化合物で、脂肪族系、脂環族系及び芳香族系等の多価アルコールから選ばれた1種もしくは2種以上が使用できる。
ポリエステルポリオール(B)は上記の多塩基酸成分と多価アルコール成分とを、さらに必要に応じて一塩基酸やヒドロキシカルボン酸等を併用して、既知の方法でエステル化反応させることによって得られる。
ポリエステルポリオール(B)は、水酸基価が通常、5〜200、好ましくは30〜150、酸価が通常、0.1〜40、好ましくは1〜20、そして数平均分子量が通常、300〜20000、好ましくは1000〜10000である。水酸基価が5より小さくなると強度が低下し上塗塗膜との付着性が低下する傾向がある。一方、200より大きくなると耐水付着性が低下する傾向がある。また、酸価が0.1より小さくなると上塗塗膜との付着性が低下し、一方、40より大きくなると上塗塗膜の平滑性が低下する傾向がある。そして、数平均分子量が300より小さくなると塗膜表面の粘着性が増大し、一方、20000より大きくなると他の成分との相溶性が低下する傾向がある。
【0016】
本発明で用いられるメラミン樹脂(C)は、主剤であるアクリルポリオール(A)及びポリエステルポリオール(B)を架橋させる硬化剤であり、ベース塗料塗膜に強度を付与する成分である。メラミン樹脂(C)としては、例えば、メチルエーテル化メラミン、エチルエーテル化メラミン、ブチルエーテル化メラミン等のアルキルエーテル化メラミンを挙げることができ、1種のみ、または、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明で用いられるポリイソシアネート化合物(D)は、主剤であるアクリルポリオール(A)及びポリエステルポリオール(B)を架橋させる硬化剤であり、ベース塗料塗膜に強度を付与する成分である。ポリイソシアネート化合物(D)としては、p−フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等、およびこれらの3量体、水付加物、またはこれらの低分子量ポリオール付加物、ブロックイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0018】
次に本発明において追加的な主剤として用いられるポリウレタン変性ポリプロピレン樹脂(E)について説明する。
先ず、その主鎖をなすプロピレン系重合体Iについて説明する。
本発明に用いる主鎖のプロピレン系重合体(「プロピレン系重合体I」)は、アイソタクチックブロックを含むステレオブロック構造を有し、分子量が1000〜200000であり、プロピレンを単量体とする、実質的にプロピレン単独の重合体である。ここで実質的にプロピレン単独の重合体とは、プロピレン含量が95wt%以上の重合体であるが、本発明の趣旨をそこなわない範囲において、わずかな量の他の単量体を共重合成分として含有していてもよい。本発明において好ましいプロピレン含量は、97wt%以上、さらに好ましくは99wt%以上である。
【0019】
上記主鎖のプロピレン系重合体Iが含有し得る共重合体成分の他の単量体としては、オレフィン性二重結合を有するモノマー、例えば、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン、ブタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、スチレンおよびこれらの誘導体の中から好適なものを選択することができる。これらのうち、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセンおよびオクテンが好ましく、エチレンおよびブテンがさらに好ましい。
【0020】
本発明における主鎖のプロピレン系重合体Iは、GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定した重量平均分子量Mwが1,000〜200,000である必要がある。Mwが1,000より小さい場合には、これをグラフト共重合により変性したプロピレン系重合体(以下、グラフト変性重合体ということもある)をさらにポリウレタン変性して基材上に塗布した後の造膜性の悪化が顕著になるばかりでなく、べたつきも顕著となる。また、Mwが200,000を越える場合には、造膜性やべたつきについては大きな問題はないものの、グラフト変性重合体を溶媒に溶解した際の粘度が高くなりすぎ、製造上あるいは該グラフト変性重合体溶液のハンドリング上、不都合を生じる。本発明において、より好ましい重量平均分子量Mwの範囲は3,000〜150,000、さらに好ましくは、5,000〜100,000である。なお、GPCによる分子量の測定は、オルトジクロロベンゼンを溶媒とし、ポリスチレンを標準試料として、市販の装置を用いて従来公知の方法で行うことができる。
【0021】
本発明におけるプロピレン系重合体Iの分子量分布については、特に制限はないが、過度に広すぎる分子量分布は、低分子量成分の含有量が必然的に多いことを意味するので避けた方がよい。分子量分布の指標として重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnを用いた場合、好ましくはMw/Mn<20、さらに好ましくはMw/Mn<10、最も好ましくはMw/Mn<5のものが好適に使用される。
【0022】
本発明におけるプロピレン系重合体Iは、好ましくは13C−NMRスペクトルによって下記のように規定される特性を有するものである。この特性は、プロピレン系重合体の主鎖中に結晶性の高いブロックと非晶性の高いブロックとがバランスよく共存し、かつ、結晶性の高いブロックがアイソタクティック性に富む構造となっていることを表す。重合体中に結晶性の高いブロックが多すぎると溶媒への溶解性が悪化するので、結晶性の高いブロックと非晶性の高いブロックとのバランスが重要であり、このバランスを表す指標の一つとして、13C−NMRスペクトルによって規定される要件が適用されるのである。
【0023】
本発明における13C−NMRスペクトルの測定方法は、次の通りである。試料350〜500mgを、10mmφのNMR用サンプル管中で、約2.2mlのオルトジクロロベンゼンを用いて完全に溶解させる。次いで、ロック溶媒として約0.2mlの重水素化ベンゼンを加え、均一化させた後、130℃でプロトン完全デカップリング法により測定を行う。測定条件は、フリップアングル90°、パルス間隔5T1以上(T1は、メチル基のスピン−格子緩和時間のうち最長の値)とする。プロピレン系重合体において、メチレン基およびメチン基のスピン−格子緩和時間はメチル基のそれよりも短いので、この測定条件では、すべての炭素の磁化の回復は99%以上である。なお、定量精度を上げるため、13C核の共鳴周波数として125MHz以上のNMR装置を使用し、20時間以上の積算を行うのが好ましい。
【0024】
ケミカルシフトは、頭−尾(head to tail)結合からなるプロピレン単位連鎖部の10種類のペンタッド(mmmm,mmmr,rmmr,mmrr,mmrm,rmrr,rmrm,rrrr,rrrm,mrrm)のうち、メチル分岐の絶対配置がすべて同一であるもの、即ちmmmmで表されるプロピレン単位5連鎖の第3単位目のメチル基にもとづくピークのケミカルシフトを21.8ppmとして設定し、これを基準として他の炭素ピークのケミカルシフトを決定する。この基準では、例えば、その他のプロピレン単位5連鎖の場合、第3単位目のメチル基にもとづくピークのケミカルシフトはおおむね次のようになる。すなわち、mmmr:21.5〜21.7ppm、rmmr:21.3〜21.5ppm、mmrr:21.0〜21.1ppm、mmrmおよびrmrr:20.8〜21.0ppm、rmrm:20.6〜20.8ppm、rrrr:20.3〜20.5ppm、rrrm:20.1〜20.3ppm、mrrm:19.9〜20.1ppmである。なお、これらのペンタッドに由来するピークのケミカルシフトは、NMRの測定条件によって多少の変動があること、および、ピークは必ずしも単一ピーク(single peak)ではなく、微細構造にもとづく複雑な分裂パターン(split pattern)を示すことが多い点にも注意して帰属を行う必要がある。
【0025】
本発明におけるプロピレン系重合体Iは、上記mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークのピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとした際に、19.8ppmから22.2ppmの範囲に現れる上記のペンタッド、すなわち、mmmm,mmmr,rmmr,mmrr,mmrm+rmrr,rmrm,rrrr,rrrm,mrrmのすべてのペンタッドに属するピークの総面積Sに対する、21.8ppmをピークトップとするピークの面積S1の比率(S1/S)が10%以上、60%以下であり、かつ21.5〜21.7ppmをピークトップとするピーク(mmmr)の面積をS2としたとき4+2S1/S2>5であることが好ましい。
【0026】
Sに対するS1の比率が10%未満である場合には、結晶性が低すぎ、十分な接着性が得られず、さらに、べたつきなどの問題も起こりやすい傾向がある。一方、Sに対するS1の比率が60%を越える場合には、逆に結晶性が高すぎ、溶媒への溶解性が低下する傾向がある。上記Sに対するS1の比率の範囲は、好ましくは10%以上、60%以下であるが、より好ましくは20%以上、50%以下、更に好ましくは25%以上、45%以下である
【0027】
本発明におけるプロピレン系重合体Iは、上記の如く4+2S1/S2>5という関係を満足することが好ましい。この関係式は、Waymouthらによりアイソタクチックブロックインデックス(BI)と名づけられた指数(特表平9−510745号公報参照)と密接な関連がある。BIは、重合体のステレオブロック性を表す指標であり、BI=4+2[mmmm]/[mmmr]で定義される。より具体的には、BIは、4個以上のプロピレン単位を有するアイソタクチックブロックの平均連鎖長を表す(J.W.Collete et al., Macromol.,22,3858(1989);J.C.Randall,J.Polym.Sci.Polym.Phys.Ed.,14,2083(1976))。統計的に完全なアタクチックポリプロピレンの場合、BI=5となる。したがって、BI=4+2[mmmm]/[mmmr]>5とは、重合体中に含まれるアイソタクチックブロックの平均連鎖長が、アタクチックポリプロピレンのそれよりも長いことを意味する。
【0028】
本発明におけるプロピレン系重合体Iの表現に使用する4+2S1/S2という指標は、上述のBIと完全には同一でないものの、おおむねこれに対応していることから、4+2S1/S2>5という関係式は、本発明における重合体が、アタクチックポリプロピレンとは異なり、結晶化可能な連鎖長のアイソタクチックブロックを含有することを意味する。また、アイソタクチックブロックが存在するということは、言い換えれば、立体特異性(stereospecificity)が乱れたシークエンスからなるブロックも同時に主鎖に存在することを意味する。このように、本発明におけるプロピレン系重合体Iにおいては、前述の如く主鎖中に結晶性を有するブロックと非晶性のブロックとが共存し、かつ、結晶性を有するブロックが、比較的長い平均連鎖長を有するアイソタクチックブロックから形成され、アイソタクチック性に富む構造になっているという特異な構造である。
本発明においては、5<4+2S1/S2であることが好ましいが、より好ましくは、5<4+2S1/S2<25、さらに好ましくは、7<4+2S1/S2<10である。
【0029】
本発明における主鎖のプロピレン系重合体Iは、例えばシングルサイト触媒により重合する方法によって得られるものである。一般にシングルサイト触媒は、リガンドのデザインによりミクロタクティシティを制御できること、比較的分子量の低い重合体を容易に製造できること、そして特に重合体の分子量分布や立体規則性分布がシャープであることなどを特徴としている。分子量分布や立体規則性分布が不規則であると溶解性に差ができ、部分的に不溶なものができる可能性がある。シングルサイト触媒のなかでもメタロセン触媒が、ミクロタクティシティを精密に制御できる点で好適に用いられる。本発明におけるプロピレン系重合体の製造用のシングルサイト触媒としては、メタロセン化合物と共触媒を必須成分とするメタロセン系触媒が好ましく用いられる
【0030】
上記メタロセン化合物としては、遷移金属含有の架橋基を有するC1−対称性アンサ−メタロセン(ansa−metallocene)が好ましい。非架橋のメタロセンも本発明におけるプロピレン系重合体の製造に適用可能であるが、一般に、架橋基を有するアンサ−メタロセンの方が熱安定性などに優れているため、特に工業的な見地から好ましい。
上記遷移金属含有の架橋基を有するアンサ−メタロセンは、共役5員環配位子を有する架橋された4族遷移金属化合物のC1−対称性を有するメタロセンである。このような遷移金属化合物は、公知であり、それをα−オレフィン重合用触媒成分として使用することも知られている。
また、上記の変性プロピレン系重合体は、それを25℃におけるトルエンに10重量%の濃度で溶解した際に、その不溶分が1重量%以下であるのが好ましい。不溶分が1重量%を超えると、性状が悪くなるばかりか、ポリウレタン変性反応時に不溶性のゲルを生じ溶解性を著しく損なう傾向がある。
【0031】
本発明で用いる、分子中に少なくとも1個の活性水素含有官能基を有する変性プロピレン系重合体は、例えば上記主鎖のプロピレン系重合体Iに活性水素含有官能基を分子内に有するビニルモノマーをグラフト化することによって得られる。
上記活性水素含有官能基を分子内に有するビニルモノマーとしては(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸とグリコール類との反応によって得られる末端ヒドロキシ基含有エステル類や1,4−ブテングリコール、アリルアルコール等の末端ヒドロキシル基含有オレフィン類等が挙げられる。上記グリコール類としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の脂環族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香環を有するグリコール、C1−18アルキルジエタノールアミン等のアルキルジアルカノールアミン等が挙げられる。また、これら末端ヒドロキシル基にカプロラクトン等の環状ラクトン、エチレンオキシド等の環状エーテルを開環付加した化合物も用いられる。さらに、不飽和ジカルボン酸の酸無水物を先にグラフト化した後に上記グリコール類を反応させて分子中に少なくとも1個の活性水素含有官能基を有する変性プロピレン系重合体を得ることもできる。
【0032】
グラフト化反応の方法としては、種々の公知の方法が挙げられる。例えば、プロピレン系重合体を有機溶媒に溶解し、前記グラフトさせる重合性単量体およびラジカル重合開始剤を添加して加熱攪拌することによりグラフト共重合反応を行う方法、プロピレン系重合体を加熱して溶解し、該溶融物にグラフトさせる重合性単量体およびラジカル重合開始剤を添加し攪拌することによりグラフト共重合する方法、あるいは各成分を押出機に供給して加熱混練しながらグラフト共重合する方法、プロピレン系重合体のパウダーに前記グラフトさせる重合性単量体およびラジカル重合開始剤を有機溶媒に溶解した溶液を含浸させた後、パウダーが溶解しない温度まで加熱し、グラフト共重合する方法などが挙げられる。このとき、ラジカル重合開始剤/グラフトさせる重合性単量体の使用割合は、モル比で通常1/100〜3/5、好ましくは1/20〜1/2の範囲である。反応温度は、通常50℃以上、好適には80〜200℃の範囲であり、反応時間は通常2〜10時間程度である。
【0033】
上記グラフト化反応に用いられるラジカル重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤から適宜選択して使用することができ、例えば有機過酸化物、アゾニトリル等を挙げることができる。上記有機過酸化物としては、ジイソプロピルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカルボナート、ジシクロヘキシルペルオキシカルボナート等が挙げられる。上記アゾニトリルとしてはアゾビスブチロニトリル、アゾビスイソプロピルニトリル等が挙げられる。これらの中で、ジベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシドが好ましい。
【0034】
上記グラフト化反応を有機溶媒を用いて行う場合、その有機溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、トリクロロエチレン、パークロルエチレン、クロルベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられ、これらの中でも、芳香族炭化水素又はハロゲン化炭化水素が好ましく、特にトルエン、キシレン、クロルベンゼンが好ましい。
【0035】
本発明で用いる、分子中に少なくとも1個のイソシアネート基を有する変性プロピレン系重合体は、例えば上記主鎖のプロピレン系重合体にイソシアネート基を分子内に有するビニルモノマーをグラフト化することによって得られる。上記イソシアネート基を分子内に有するビニルモノマーとしてはm−イソプロペニル−α、α−ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。グラフト化反応は前記方法に準じて実施することができる。
【0036】
本発明で用いる、分子中に少なくとも1個の酸無水物基を有する変性プロピレン系重合体は、例えば上記主鎖のプロピレン系重合体にモノオレフィンジカルボン酸の酸無水物をグラフト化することによって得られる。上記モノオレフィンジカルボン酸の酸無水物としては、マレイン酸、クロロマレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、3−メチル−2−ペンテン二酸、2−メチル−2−ペンテン二酸、2−ヘキセン二酸等のモノオレフィンジカルボン酸の酸無水物が挙げられる。グラフト化反応は前記方法に準じて実施することができる。
【0037】
本発明で用いる、分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する変性プロピレン系重合体は、例えば上記主鎖のプロピレン系重合体にエポキシ基を分子内に有するビニルモノマーをグラフト化することによって得られる。上記エポキシ基を分子内に有するビニルモノマーとしてはグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。グラフト化反応は前記方法に準じて実施することができる。
これら官能基を有する変性プロピレン系重合体のうちで最も好ましいのは、分子中に少なくとも1個の活性水素含有官能基を有する変性プロピレン系重合体である。
【0038】
本発明で上記の官能基を有する変性プロピレン系重合体をポリウレタン変性するために用いる高分子ジオールとしては、ポリウレタン樹脂の製造に通常用いられているものを使用することができ、例えばポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリカーボネートジオールおよびこれら2種類以上の混合物が挙げられる。
【0039】
上記ポリエーテルジオールとしては、アルキレンオキシドを単独または共重合させて得られるもの、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、ポリオクタメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0040】
上記ポリエステルジオールとしては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸等のジカルボン酸またはそれらの無水物と、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の脂環族グリコール、キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香環を有するグリコール、C1−18アルキルジエタノールアミン等のアルキルジアルカノールアミン等のグリコールとを重縮合させて得られたもの、例えばポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリエチレンプロピレンアジペート等、或いは前記グリコール類を開始剤として1種または2種以上のラクトン類を開環重合して得られるポリラクトンジオール、例えばポリカプロラクトンジオール、ポリメチルバレロラクトンジオール等が挙げられる。
【0041】
上記ポリエーテルエステルジオールとしては、エーテル基含有ジオールの単独もしくは他のグリコールとの混合物を前記ジカルボン酸またはそれらの無水物と反応させるか、またはポリエステルグリコールにアルキレンオキシドを反応させることによって得られるもの、例えばポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート等が挙げられる。
【0042】
上記ポリカーボネートジオールとしては、前記グリコールまたは各種高分子ジオール類とジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等とから、脱アルコールまたは脱グリコール反応によって得られるもの、例えばポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
【0043】
なお、上記グリコールの一部をグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコールで置換することもできる。但しこの場合、用いる3価以上の多価アルコールはグリコールの20モル%以下とするのが望ましい。用いる3価以上の多価アルコールが多すぎると、得られるポリウレタンウレアの溶解性が低下する等の問題を生じる可能性がある。
【0044】
上記高分子ジオールの数平均分子量は通常500〜10,000、好ましくは1,000〜6,000であり、より好ましくは、2,000〜4,000である。高分子ジオールの数平均分子量が500未満の場合には、得られるポリウレタンの皮膜強度が低下する可能性がある。また、10,000を越える場合には、得られるポリウレタンの耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性が低下する可能性がある。
【0045】
本発明でポリウレタン変性するために用いる有機ジイソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添TDI)、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4′−ジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0046】
本発明でポリウレタン変性するために用いる鎖延長剤としては、ポリエステルポリオールの原料として用いられる分子量500未満の低分子ジオール化合物、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香族グリコールといったグリコール類や、低分子ジアミン化合物、例えば2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4′−ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン(水添MDA)、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4′−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
【0047】
また、必要により使用される末端停止剤として、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のモノアルコール、モノエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン等のモノアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン等を用いることもできる。
【0048】
本発明で用いられるポリウレタン変性ポリプロピレン樹脂(E)は、例えば次のような方法で製造することができる。例えば、有機ジイソシアネートと変性プロピレン系重合体、高分子ジオール、場合により鎖延長剤の一部とをイソシアネート基過剰のモル比で反応させて末端イソシアネート基のプレポリマーをつくり、溶剤で希釈し、次いで鎖延長剤で鎖延長するプレポリマー法、有機ジイソシアネート、変性プロピレン系重合体、高分子ジオール、さらに鎖延長剤を溶剤溶液中で一段で反応させるワンショット法等が挙げられる。また、末端停止剤を用いる場合における末端停止剤の添加方法は、鎖延長反応前に添加してもよく、鎖延長剤と同時に添加してもよく、あるいは鎖延長反応終了後に添加してもよい。プレポリマー法におけるプレポリマーの製造方法としては、有機ジイソシアネートと変性プロピレン系重合体、高分子ジオールとを一括して反応させる方法であってもよいし、それぞれの成分を別々に反応させた後、これらを混合し、プレポリマーを製造する方法であってもよい。
【0049】
上記のポリウレタン変性の反応において、上記変性プロピレン系重合体と上記他の高分子ジオール、有機ジイソシアネート及び鎖延長剤(「ポリウレタン成分」)の合計との重量比は、1/99から99/1の範囲にある必要がある。該重量比は、より好ましくは5/95〜90/10、さらに好ましくは10/90〜80/20である。変性プロピレン系重合体の比率が小さすぎると、結晶性のポリプロピレン系重合体に対する接着性付与効果が乏しく、逆にポリウレタン成分の比率が小さすぎると、極性基材に対する親和性が不十分となる。
【0050】
上記の反応において、変性プロピレン系重合体の末端活性水素基は有機ジイソシアネートのイソシアネート基と、また末端イソシアネート基、末端酸無水物基及び末端エポキシ基は高分子ジオール及び鎖延長剤の活性水素基とそれぞれ反応する。
【0051】
上記プレポリマー法において末端イソシアネート基のプレポリマー化反応時の構成成分の添加順序には特に制限はなく、必要に応じてプレポリマー化反応途中に適宜、有機ジイソシアネートモノマーを再添加することも可能である。プレポリマーを製造するにあたり、イソシアネート基と活性水素基との反応比は1.1/1〜10/1であることが好ましい。反応比が1.1/1より小さい場合には耐熱性、皮膜強度が低下する可能性があり、10/1より大きい場合にはポリオレフィンに対する接着性が低下する可能性がある。
【0052】
また、鎖延長剤の水酸基の量は、プレポリマーのイソシアネート基1モルに対して、通常0.95〜1.1モル、好ましくは0.98〜1.05モルである。鎖延長剤の水酸基量が0.95モルよりも小さい場合、ポリウレタンの分子量が低いため耐熱性、皮膜強度が低下する可能性がある。また、1.1モルよりも過剰の場合には未反応の鎖延長剤が残存し物性低下や臭気の原因となる可能性がある。
【0053】
上記ポリウレタン変性の反応は溶剤中で行うことが好ましい。使用される溶剤としては、例えばエタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、クロルベンゼン、トリクレン、パークレン等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒およびそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0054】
上記ポリウレタン変性の反応には触媒を用いることも可能である。ウレタン化反応を促進する触媒としては、例えばトリエチルアミン、ジメチルアニリン等の3級アミン系触媒または有機スズ、有機亜鉛等の有機金属系触媒が挙げられる。かくして得られるポリウレタン変性ポリプロピレン樹脂(E)の数平均分子量は、5,000〜300,000の範囲とする。数平均分子量の下限は好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上である。数平均分子量の上限は好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下である。数平均分子量が5000未満の場合には、これを主剤として用いたベース塗料の乾燥性、耐ブロッキング性、皮膜強度、耐油性等が低下する可能性がある。一方、それが300,000を越える場合には、樹脂溶液の粘度が高いために取り扱いが困難になり、得られるベース塗料の光沢が低下し、また貯蔵安定性等も低下する可能性がある。これらの場合の樹脂溶液の濃度は特に制限されないが、作業性を考慮して適宜決定されればよく、通常は15〜60重量%、粘度は50〜100,000mPa・sが実用上好適である。
【0055】
次に本発明において追加的な主剤として用いられる変性プロピレン系重合体(F)について説明する。
本発明のプロピレン系重合体Iからなる主鎖と、カルボン酸基、酸無水物基及びカルボン酸エステル基からなる群から選ばれた官能基を含む側鎖とを有する変性プロピレン系重合体(F)を製造する方法は特に限定されないが、上記プロピレン系重合体Iにカルボキシル基等の官能基を含有する重合性単量体をグラフト共重合させて得る方法が一般的である。
グラフト共重合させるカルボキシル基等の官能基を含有する重合性単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸およびそのモノエステル類並びにモノオレフィンジカルボン酸、及びその酸無水物およびそのモノエステル類が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸およびそのモノエステル類としては、例えば(メタ)アクリル酸およびそのエステル誘導体である炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等、;炭素数6〜12のアリール基又はアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルのモノマー、例えば(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トリル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0056】
更に、他の(メタ)アクリル酸誘導体として、ヘテロ原子を含有する炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルのモノマー、例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物等;フッ素原子を含有する炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルのモノマー、例えば(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル等;(メタ)アクリルアミド系モノマー、例えば(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジメチルアミド等が挙げられる。
【0057】
上記モノオレフィンジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、クロロマレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、3−メチル−2−ペンテン二酸、2−メチル−2−ペンテン二酸、2−ヘキセン二酸等が挙げられる。モノオレフィンジカルボン酸無水物としては、上記モノオレフィンジカルボン酸の酸無水物が挙げられる。モノオレフィンジカルボン酸のモノアルキルエステルとしては、上記モノオレフィンジカルボン酸と炭素数1〜12のアルキルアルコールとのモノエステルが挙げられ、該アルキルアルコールとして具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、オクチルアルコール、シクロヘキシルアルコール等が挙げられる。
【0058】
本発明で用いられるグラフト変性された変性プロピレン系重合体(F)において、グラフト共重合単位としてモノオレフィンジカルボン酸モノアルキルエステルを有する変性重合体は、例えば、モノオレフィンジカルボン酸モノアルキルエステルを重合体にグラフト共重合する方法:モノオレフィンジカルボン酸もしくはその無水物を、プロピレン系重合体にグラフト共重合させた後に、アルキルアルコールによりカルボン酸基の1つをエステル化する方法によって得ることができる。
【0059】
グラフト変性された変性プロピレン系重合体(F)におけるカルボキシル基等を含有する重合性単量体のグラフト量、即ち変性重合体中の含有量が、ベース塗料として基材に塗布して付着性が高い塗膜が得られ、また、外観が良好となる点で、好ましくは0.1〜80重量%、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは2〜30重量%となるようにグラフト共重合する。これらのグラフト化反応は前記方法に準じて実施することができる。
【0060】
本発明のベース塗料組成物を調製する場合、必要に応じて本発明の主剤と相溶性のある各種の樹脂を副成分として配合、使用することができる。それらの樹脂としては、例えば、未変性のポリプロピレン樹脂(例えばプロピレン系重合体I)、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンモノマーの重合体及びその水素添加物、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、クロルスルホン化ポリオレフィン、硝化綿、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその塩素化物またはクロルスルホン化物、マレイン酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、およびポリウレタン樹脂等が挙げられる。また、適宜、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤;パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のメラミン樹脂硬化触媒;ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤;有機アミド系化合物等の沈降防止剤;表面調整剤等を含有するものでもよい。また、その配合割合は、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0061】
ベース塗料組成物の着色剤としては、アルミニウム、マイカ、チタン白、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料;タルク、沈降性バリウム、シリカ等の体質顔料;有機系の各種着色顔料等の顔料が挙げられる。
【0062】
ベース塗料組成物を構成する(A)〜(F)の各成分の重量比率は、上記(A)〜(F)の各成分の合計を100としたとき、(A+B):(C+D):(E+F)=4〜90:1〜25:5〜95、であり、好ましくは10〜80:3〜20:10〜87、さらに好ましくは20〜70:5〜15:20〜75である。アクリルポリオール(A)及びポリエステルポリオール(B)の合計の重量比率が上記において4未満であると耐候性が低下する。他方、該重量比率が90を超えるとポリオレフィン素材との密着性が低下する。
【0063】
メラミン樹脂(C)及びポリイソシアネート化合物(D)の合計の重量比率が上記において1未満であると塗膜の強度が低下し、ポリオレフィン素材との密着性が低下する。他方、該重量比率が25を超えると耐水性が低下する。ポリウレタン変性ポリプロピレン樹脂(E)及び変性プロピレン系重合体(F)の合計の重量比率が上記において5未満であるとポリオレフィン素材との密着性が低下する。他方、該重量比率が95を超えると耐候性が低下し、上塗りされたクリヤー塗料塗膜との密着性が低下し、剥離することがある。
【0064】
上記ベース塗料組成物は、通常、プライマー処理をすることなく、ポリオレフィン基材に直接塗布される。ベース塗料を塗布する方法については特に限定はないが、スプレー塗装等が好ましい。次に、ベース塗料がウェットの状態でクリアー塗料を上塗りする。クリアー塗料としては、例えば、アクリル/メラミン焼付型;ポリエステル/メラミン焼付型;アクリル/イソシアネート焼付型等を挙げることができる。クリアー塗料の塗布方法については特に限定はないが、スプレー塗装等が好ましい。
【0065】
ポリオレフィン素材表面に塗布されたベース塗料およびクリアー塗料を焼き付けて、それぞれの塗料塗膜を形成させる。焼き付け方法については特に限定はなく、熱風乾燥炉、遠赤外線炉、近赤外線炉等を用いて、通常、60〜150℃、5〜60分間の条件で乾燥が行われる。このようにして得られるベース塗料塗膜の膜厚については特に限定はないが、通常、10〜25μmであり、好ましくは15〜20μmである。ベース塗料塗膜が薄すぎると、発色性が低下し、外観が悪くなることがある。また、クリアー塗料塗膜の膜厚については特に限定はないが、通常、15〜50μmであり、好ましくは30〜35μmである。クリアー塗料塗膜が薄すぎると、外観が悪くなることがあり、また、厚すぎると、塗料のタレの問題が発生する。
【0066】
【実施例】
次に本発明の具体的態様を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、「部」は重量部を、「%」は重量%をそれぞれ示す。
【0067】
〔各種評価方法〕
(1)分子量の測定
重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/MnのGPCによる測定は、ウオーターズ(Waters)社製GPC150CV型を使用して行った。溶媒としては、o−ジクロロベンゼンを使用し、測定温度は135℃とした。分子量算出は、標準試料として市販の単分散のポリスチレンを使用し、該ポリスチレン標準試料およびポリプロピレンの粘度式から、保持時間と分子量に関する校正曲線を作成し分子量の算出を行った。
【0068】
(2)プロピレン単位連鎖部のペンタッドの13C−NMRスペクトルによる測定
試料350〜500mgを、10mmφのNMR用サンプル管中で、約2.2mlのオルトジクロロベンゼンを用いて完全に溶解させる。次いで、ロック溶媒として約0.2mlの重水素化ベンゼンを加え、均一化させた後、130℃でプロトン完全デカップリング法により測定を行う。測定条件は、フリップアングル90、パルス間隔5T1以上(T1は、メチル基のスピン−格子緩和時間のうち最長の値)とする。プロピレン重合体において、メチレン基およびメチン基のスピン−格子緩和時間はメチル基のそれよりも短いので、この測定条件では、すべての炭素の磁化の回復は99%以上である。なお、定量精度を上げるため、13C核の共鳴周波数として125MHz以上のNMR装置を使用し、20時間以上の積算を行うのが好ましい。
【0069】
(3)層間密着性試験
ポリウレタン変性プロピレン系重合体またはそれ以外のポリマーを用いたベース塗料で基材上に塗膜を形成し、JIS K 5400に記載されている碁盤目試験の方法に準じて、碁盤目を付けた試験片を作成し、ニチバン社製セロテープ(登録商標)を、試験片の碁盤目上に張り付けた後、これを速やかに垂直方向に引っ張って剥離させ、碁盤目100個のうちで剥離されなかった碁盤目の数を数え「残留碁盤目数/100個」で表記し、密着性の指標とした
【0070】
(4)耐候性
塗装後のポリオレフィン基材をサンシャイン・ウエザロ・メーターを用いて1000時間暴露して、前記層間密着性試験と同様にして碁盤目試験(JIS K
5400)に準じた密着性試験を行った。
【0071】
(5)耐水性試験
ポリウレタン変性プロピレン系重合体またはそれ以外のポリマーを用いたベース塗料で基材上に塗膜を形成し、室温にて養生した塗装物を40℃に保った温水中に10日間浸漬する。その後、表面の水分を乾燥させた後、前記層間密着性試験と同様にして碁盤目試験(JIS K 5400)に準じた密着性試験を行った。
【0072】
(6)貯蔵安定性
製造したベース塗料を−5℃で10日間放置し、塗料性状に変化がみられないものを○、塗料性状に変化がみられ、塗料中に固体が生じるものを×と評価した。
【0073】
〔プロピレン系重合体の製造例1〕
化学処理モンモリロナイト(0.44g)に、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.4mmol/ml,2.0ml)を加え、室温で1時間攪拌した。この懸濁液にトルエン(8ml)を加え、攪拌後、上澄みを除いた。この操作を2回繰り返した後、トルエンを加えて、粘土スラリー(スラリー濃度=99mg粘土/ml)を得た。別のフラスコに、東ソー・アクゾ社製トリイソブチルアルミニウム(0.114mmol)を採取し、ここで得られた粘土スラリー(3.8ml)およびジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル]ハフニウム錯体(6.02mg,11.4μmol)のトルエン希釈液を加え、室温で10分間撹拌し、触媒スラリーを得た。次いで、内容積2リッターの誘導攪拌式オートクレーブ内に、トルエン(750ml)、トリイソブチルアルミニウム(1.9mmol)および液体プロピレン(180ml)を導入した。室温で、上記触媒スラリーを全量導入し、60℃まで昇温し重合時の全圧を0.7MPaで一定に保持しながら、同温度で1時間攪拌を継続した。攪拌終了後、未反応プロピレンをパージして重合を停止した。オートクレーブを開放してポリマーのトルエン溶液を全量回収し、溶媒ならびに粘土残渣を除去したところ、23.2gのプロピレン重合体が得られた。得られた重合体を分析した結果を表−1にまとめて示す。
〔プロピレン系重合体の製造例2〕
粘土スラリー用物質として錯体を17.8mg(34.2μmol)、トリイソブチルアルミニウム(0.342mmol)、粘土スラリー(11.4ml)を用い、また、トルエン(1100ml)、トリイソブチルアルミニウム(0.5mmol)、液体プロピレン(264ml)を用い、重合時の温度を80℃、全圧を0.8MPa、重合時間を1.83時間としたこと以外は製造例1と同様に行った結果、245gのプロピレン系重合体が得られた。
〔プロピレン系重合体の製造例3〕
粘土スラリー用物質として錯体を3.9mg(7.5μmol)、トリイソブチルアルミニウム(15.0μmol)、粘土スラリー(2.52ml)を用い、また、トルエン(1100ml)、トリイソブチルアルミニウム(0.13mmol)、液体プロピレン(264ml)を用い、重合時の温度を80℃、全圧を0.85Mpa、重合時間を0.83時間とし、水素ガスを6.5mmol/分の割合で逐次添加を添加したこと以外は製造例1と同様に行った結果、248gのプロピレン系重合体が得られた。
〔プロピレン系重合体の製造例4〕
粘土スラリー用物質として錯体を1.3mg(2.5μmol)、トリイソブチルアルミニウム(5.0μmol)、粘土スラリー(0.84ml)を用い、また、トルエン(1100ml)、トリイソブチルアルミニウム(0.13mmol)、液体プロピレン(264ml)を用い、重合時の温度を50℃、全圧を0.55MPa、重合時間を2時間とした以外は製造例1と同様に行った結果、113gのプロピレン系重合体が得られた。
【0074】
〔変性プロピレン系重合体の製造例1〜3、6及び7〕
温度計、攪拌機のついたステンレス耐圧反応容器中に、キシレン(80g)、プロピレン重合体の製造例1〜4で得られたプロピレン系重合体(20g)、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート(以下、HEMAと略記する)(5g)及びスチレン(以下、Stと略記する)(5g)を加え、容器内を窒素ガスで置換し、130℃に昇温した。昇温後、ジクミルペルオキシド(DCPO)のキシレン溶液(5wt%)10gを、定量ポンプを用いて2時間で供給した後、3時間同温度で攪拌を続けて反応を行った。反応終了後、系を室温付近まで冷却し、アセトンを加えて、沈殿したポリマーを濾別した。さらにアセトンで沈殿・濾別を繰り返し、最終的に得られたポリマーをアセトンで洗浄した。洗浄後に得られたポリマーを減圧乾燥することにより、白色粉末状の変性樹脂が得られた。得られた変性樹脂の赤外線吸収スペクトル測定を行った結果、2−ヒドロキシエチルメタアクリレートのグラフト率は2.5wt%であった。ここで得られた2−ヒドロキシエチルメタアクリレート変性プロピレン重合体20gにトルエン80gを加え、100℃に昇温し、1時間かけて溶解させた。得られた溶液を室温付近まで冷却した後、#400のSUS金網を通して、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート変性プロピレン系重合体の20wt%溶液を調製した。
〔変性プロピレン系重合体の製造例4及び5〕
製造例1と同様の処方でHEMAとStの代わりに無水マレイン酸(以下、MAHと略記する)10g又はメチルメタクリレート40g(以下、MMAと略記する)を用いて、それぞれ変性プロピレン系重合体の20wt%溶液を調製した。
【0075】
〔ウレタン変性プロピレン系重合体の製造例1〕
攪拌機、温度計、還流冷却器および滴下漏斗を備えた四つ口フラスコに、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート変性プロピレン系重合体(樹脂固形分20%トルエン溶液)2000部、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)(数平均分子量1000)(以下、PMPA1000と略記する)350部、ネオペンチルグリコール(以下、NPGと略記する)36.5部およびメチルエチルケトン8600部を仕込み、80℃に加熱攪拌して均一溶液とした後、イソホロンジイソシアネート(IPDI)156.0部を撹拌下に加え、100℃で10時間反応させてウレタン変性プロピレン系重合体溶液を得た。
〔ウレタン変性プロピレン重合体の製造例2、3、6及び7〕
ウレタン変性プロピレン系重合体の製造例1と同様の処方で表−1の組成にて調製した。
【表1】
Figure 0004003528
【0076】
[実施例1]
アクリルポリオール(アクリディックA801、大日本インキ工業(株)製)50部と、メラミン樹脂(サイメル701、三井サイテック(株)製)10部と、表−1に示したウレタン変性プロピレン系重合体(製造例1)20部と、変性プロピレン系重合体(製造例4)20部と、アルミニウムペースト(アルペースト7790N、東洋アルミニウム(株)製)10部とを混合して、ベース塗料を製造した。酸化防止剤を配合し150mm×70mm×2mmに成形したポリプロピレン(日本ポリケム(株)製、ノバテックPP MA3U)の試験片に、プライマー処理することなく、ベース塗料をエアースプレーで素材表面に吹きつけた。次にベース塗料がウェットの状態で、続けてクリヤー塗料をエアースプレーで素材表面に吹きつけ、焼き付けて、厚み15μmのベース塗料塗膜および厚み30μmのクリヤー塗料塗膜を試験片の表面に形成させた。
[実施例2]
ポリエステルポリオール(デスモフェン1010、住化バイエルウレタン(株)製)50部と、ポリイソシアネート化合物(コロネートHX、日本ポリウレタン工業(株)製)10部と、表−1に示したウレタン変性プロピレン系重合体(製造例2)20部と、変性プロピレン系重合体(製造例4)20部と、アルミニウムペースト(アルペースト7790N、東洋アルミニウム(株)製)10部とを混合して、ベース塗料を製造した。実施例1と同様の手法で塗膜を作製した。
[実施例3〜5及び比較例1〜3]
実施例1と同様の手法で、表−2の組成にて塗料を調製し、塗膜を作製した。
【0077】
ベース塗料の物性の評価は、前記のようにして行った。その結果を表−2に示す。
【表2】
Figure 0004003528
【0078】
【発明の効果】
本発明のポリオレフィン塗装用ベース塗料組成物は、塩素のようなハロゲンを含有せず、べたつき性がなく、溶解性にも優れ、かつアクリルポリール及びポリエステルポリオールに対する相溶性に優れ、基材としての結晶性プロピレン系重合体等のポリオレフィンに対して良好な接着性、塗装性を保持し、耐久性、耐薬品性の高い塗膜を形成することが可能な新規な変性ポリプロピレン系重合体により、プライマー塗装が不要で、一回の塗装により良好な耐水性、耐候性を持つ塗膜が形成でき、自動車のバンパー等のポリオレフィン素材の塗装用途に特に優れたものである。

Claims (3)

  1. 主剤として(A)アクリルポリオール及び/又は(B)ポリエステルポリオール、硬化剤として(C)メラミン樹脂及び/又は(D)ポリイソシアネート化合物、並びに着色剤を含むベース塗料組成物において、さらに主剤として(E)アイソタクチックブロックを含むステレオブロック構造を有し、 13 C−NMRにて頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部のメチル基の炭素原子に由来するピークを観測し、mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークのピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとした際に、19.8〜22.2ppmに現れるピークの総面積Sに対する21.8ppmをピークトップとするピークの面積S 1 の比率(S 1 /S)が10〜60%であって、重量平均分子量が1000〜200000で、プロピレン含量が95重量%以上であるプロピレン系重合体(以下、「プロピレン系重合体I」という)を主鎖として有し、かつ分子中に、活性水素含有官能基、イソシアネート基、酸無水物基及びエポキシ基からなる群から選ばれた官能基を少なくとも1個有する変性プロピレン系重合体と、他の高分子ジオール、有機ジイソシアネート及び鎖延長剤(以下併せて「ポリウレタン成分」という)との反応によって得られ、上記変性プロピレン系重合体と上記ポリウレタン成分の合計との重量比が5/95から99/1の範囲にあり、数平均分子量が5000〜300000であるポリウレタン変性ポリプロピレン樹脂、及び/又は、(F)上記プロピレン系重合体Iの主鎖と、カルボン酸基、酸無水物基及びカルボン酸エステル基からなる群から選ばれた官能基を含む側鎖とを有する変性プロピレン系重合体とを含有し、上記(A)〜(F)の各成分の合計を100としたときの各成分間の重量比率が、(A+B):(C+D):(E+F)=4〜90:1〜25:5〜95、であることを特徴とするポリオレフィン塗装用ベース塗料組成物。
  2. プロピレン系重合体Iがシングルサイト触媒によって製造されたものである、請求項1に記載のポリオレフィン塗装用ベース塗料組成物。
  3. プロピレン系重合体Iが、13C−NMRにて頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部のメチル基の炭素原子に由来するピークを観測した際に、21.5〜21.7ppmをピークトップとするピーク(mmmrで表されるペンタッドに帰属される)の面積をSすると4+2S1/S2>5である、請求項1又は2に記載のポリオレフィン塗装用ベース塗料組成物。
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