JP7258061B2 - 変性ポリオレフィン樹脂 - Google Patents

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Description

本発明は、変性ポリオレフィン樹脂に関する。
ポリプロピレンやポリエチレンといったポリオレフィン樹脂は、引張強さ、引裂強さ、衝撃強さ等の機械的性質や、耐水性、耐薬品性に優れている。また、ポリオレフィン樹脂は、軽量かつ安価であり、成形性がよいといった種々の優れた性質も有している。そのため、ポリオレフィン樹脂は、シート、フィルム、成形物等様々な用途に用いられている。但し、アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂とは異なり、非極性かつ結晶性が良好であるため、塗装や接着が困難であるという欠点を有している。
非極性樹脂基材に対する付着性を向上させたポリオレフィン樹脂として、塩素化ポリオレフィン樹脂が広く用いられている。但し、塩素化ポリオレフィン樹脂は脱塩酸の問題があるので、ポリオレフィン樹脂と金属との接着には不適であるとされている。
従って、ポリオレフィン樹脂と金属との接着には、非水系ディスパーションタイプの酸変性したポリオレフィン系樹脂をベースとしたものが一般的に使用されている。
さらに近年では、耐熱性が求められる用途が増加しつつあり、この問題の解決のために比較的融点の高い樹脂を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、高融点樹脂を含有することにより耐熱性が向上するけれども、溶液安定性が低下する場合がある。そこで、良好な溶液性状を有し、且つ耐熱性を有する変性ポリオレフィン樹脂が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2014-210842号公報 特開2018-150482号公報
B.De Roover et al.、「Molecular characterization of maleic anhydride-functionalized polypropylene」、Journal of Polymer Science、Vol.33.Issue 5.pp829-842.(1995)
特許文献2に記載の変性ポリオレフィン樹脂は、異なる融点を有するポリオレフィン樹脂を用いており、かつ無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸無水物でグラフト変性している。
特許文献2の変性ポリオレフィン樹脂は、ベース樹脂に異なる融点を有するポリオレフィン樹脂を用いるので、汎用性に欠ける。また、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸やその無水物モノマーを用いてグラフト変性を行うと、ポリオレフィンの減成(分子量の低下)を伴うことが知られており(例えば、非特許文献1参照)、付着力が低下する場合がある。
本発明の課題は、ベース樹脂の種類によらず、環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体を用いてグラフト変性を行っても、所望の付着力が得られる変性ポリオレフィン樹脂を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、ポリオレフィン樹脂の変性物において、所定の数式で表される開環度の数値を特定することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕~〔3〕を提供する。
〔1〕ポリオレフィン樹脂の変性物であり、下記条件(A)及び(B)を満たす変性ポリオレフィン樹脂。
条件(A):変性成分が、環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体を含むこと。
条件(B):下記式(1)で表される開環度が40以上であること。
(1):開環度=変性度K×開環率R
(前記式(1)中、前記変性度Kは、前記α,β-不飽和カルボン酸誘導体のグラフト重量(重量%)を表し、前記開環率Rは、前記α,β-不飽和カルボン酸誘導体における環状構造の開環率(%)を表す。)
〔2〕融点が50℃以上である上記〔1〕に記載の変性ポリオレフィン樹脂。
〔3〕重量平均分子量が10,000以上である上記〔1〕又は〔2〕に記載の変性ポリオレフィン樹脂。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、ベース樹脂の種類によらず、環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体を用いてグラフト変性を行っても、所望の付着力が得られる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本明細書中、「AA~BB」という表記は、AA以上BB以下を表す。また、「融点」は、示差走査型熱量計(以下、「DSC」と記載する)により測定した値である。さらに、「重量平均分子量」は、ポリスチレン標準によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した値である。
[変性ポリオレフィン樹脂]
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂の変性物であり、下記条件(A)及び(B)を満たす。
条件(A):変性成分が、環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体を含むこと。
条件(B):下記式(1)で表される開環度が40以上であること。
(1):開環度=変性度K×開環率R
(式(1)中、変性度Kは、α,β-不飽和カルボン酸誘導体のグラフト重量(重量%)を表し、開環率Rは、α,β-不飽和カルボン酸誘導体における環状構造の開環率(%)を表す。)
変性ポリオレフィン樹脂は条件(A)を満たすので、環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体がポリオレフィン樹脂にグラフト重合された構造をとる。
変性ポリオレフィン樹脂は条件(B)を満たすので、ポリオレフィン樹脂に導入された環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体の少なくとも一部が開環された構造をとる。本発明において、α,β-不飽和カルボン酸誘導体の環状構造は、水分子により開環される。そのため、開環構造は、カルボキシ基を有する。即ち、本発明の変性ポリオレフィン樹脂において、開環度は、変性ポリオレフィン樹脂におけるカルボキシ基の存在量に関連するパラメータといえる。
無水マレイン酸等の環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体を用いてポリオレフィン樹脂を変性して得られる変性ポリオレフィン樹脂は従来公知である。しかしながら、従来公知の変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂に導入したα,β-不飽和カルボン酸誘導体の環状構造を化学反応に利用して、種々の効果を発揮し得るものである。そのため、ポリオレフィン樹脂に導入したα,β-不飽和カルボン酸誘導体の環状構造は、開環しない方が望ましい、即ち、開環度は低い方が望ましい。
一方、本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂に導入したα,β-不飽和カルボン酸誘導体の環状構造の開環度を所定の数値以上に設定する、即ち、開環度を高くする。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の開環度は、40以上であり、50以上が好ましい。開環度が40以上であると、ベース樹脂の種類によらず、環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体を用いてグラフト重合を行っても、所望の付着力が得られる。また、その上限は、750以下が好ましく、700以下がより好ましい。
なお、開環度は、変性度Kと開環率Rの積として定義される。変性度Kと開環率Rの詳細を下記に示す。
変性度Kは、α,β-不飽和カルボン酸誘導体のグラフト重量(重量%)である。即ち、変性度Kは、ポリオレフィン樹脂に導入された環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体の割合を示す。変性度Kは、変性ポリオレフィン樹脂の開環度に応じて設定し得る。変性度Kは、0.1~20.0重量%が好ましく、0.2~10.0重量%がより好ましい。
変性度Kは、ポリオレフィン樹脂を変性成分で変性する際の、変性成分及びラジカル発生剤の使用量、反応温度、反応時間等によって調整し得る。
変性度Kは、JIS K-0070(1992)に準拠して次の通り算出し得る。すなわち、精秤した約0.5gの変性ポリオレフィン樹脂と約100gのトルエンを、冷却管及び温度計を取り付けた300mlセパラブルフラスコに投入し、ホットスターラー上で内温が80℃となるように加熱しながら撹拌溶解する。樹脂溶解後、15mlのメタノールを加え5分間保持する。その後、5~6滴の指示薬(1%フェノールフタレイン-メタノール溶液)を添加し、0.1mol/L水酸化カリウム-エタノール溶液で滴定する。この際、中和に要した滴定量から、次式より変性ポリオレフィン樹脂の変性度Kを算出し得る。
K={B×f×F/(S×1000)}×100
ここで、Kは、変性度(重量%)を表し、Bは、水酸化カリウム-エタノール溶液の滴定量(ml)を表し、fは、0.1mol/L水酸化カリウム-エタノール溶液のファクターを表し、Fは、α,β-不飽和カルボン酸誘導体の式量×1/10であり、Sは、変性ポリオレフィン樹脂の重量(g)を表す。
開環率Rは、α,β-不飽和カルボン酸誘導体における環状構造の開環率(%)である。即ち、開環率Rは、ポリオレフィン樹脂に導入された環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体の開環率を示す。開環率Rは、変性ポリオレフィン樹脂の開環度に応じて設定し得る。開環率Rは、10~80%が好ましく、15~75%がより好ましい。
開環率Rは、例えば、温度や時間を種々変更しつつ、変性ポリオレフィン樹脂を水に浸漬する、変性ポリオレフィン樹脂を恒湿条件下に置く、等の処理を行うことで調整し得る。
開環率Rの測定の詳細は、以下の通りである。
先ず、変性ポリオレフィン樹脂を有機溶剤に溶解して溶液を得る。次に、KBr板に該溶液を塗布、乾燥して薄膜を形成し、FT-IR(例、「FT/IR-4100」、日本分光社製)にて、400~4000cm-1の赤外吸光スペクトルを観測する。解析は、付属ソフトウェア(例、「Spectro Manager」、日本分光社)によって行う。
波数1700~1750cm-1に現れるピークを、開環したα,β-不飽和カルボン酸誘導体のカルボニル基由来のピークに帰属し、ピーク高さをAとする。波数1750~1820cm-1に現れるピークを、開環していないα,β-不飽和カルボン酸誘導体のカルボニル基由来のピークに帰属し、ピーク高さをBとする。そして、開環率R(%)は、(A/(A+B)×100)の式から算出し得る。後述の実施例における開環率は、この方法で算出した値である。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の融点は、50~120℃が好ましく、60~110℃がより好ましい。融点が50℃以上であると、十分な付着性を発揮し得る。一方、融点が120℃以下であると、低温での付着性や、溶液安定性が良好であり、低温での十分な保管安定性を発揮し得る。
融点は、例えば、ポリオレフィン樹脂のベース樹脂の種類により調整し得る。
DSCによる融点の測定の詳細は、以下の通りである。JIS K7121(1987)に準拠し、DSC測定装置(例、「DISCOVERY DSC2500」、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用い、約5mgの試料を150℃で10分間加熱融解状態を保持する。10℃/分の速度で降温して、-50℃で5分間安定保持する。その後、更に10℃/分で150℃まで昇温して融解した時の融解ピーク温度を測定し、該温度を融点とする。後述の実施例における融点は、この方法で算出した値である。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、10,000~200,000が好ましく、20,000~180,000がより好ましい。
重量平均分子量は、例えば、ポリオレフィン樹脂のベース樹脂の重量平均分子量や変性成分の使用量等により調整し得る。
GPCの測定条件の詳細は、以下の通りである。後述の実施例における変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、この条件で測定した値である。
測定機器:HLC-8320GPC(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム:TSKgel(東ソー社製)
標準物質;ポリスチレン(東ソー製、GLサイエンス製)
検出器;示差屈折計(東ソー製)
(ポリオレフィン樹脂)
ポリオレフィン樹脂は、特に限定されるものではない。ポリオレフィン樹脂を構成するオレフィンとしては、α-オレフィンが好適に用いられる。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂は、1種単独のオレフィン重合体であってもよく、2種以上のオレフィン重合体の共重合体であってもよい。ポリオレフィン樹脂が共重合体である場合、ポリオレフィン樹脂はランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
ポリオレフィン樹脂は、ポリプロピレン基材等の非極性樹脂基材への十分な付着性を発現させるという観点からは、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体がより好ましい。
ここで、「ポリプロピレン」とは、基本単位がプロピレン由来の構成単位である重合体を表す。「エチレン-プロピレン共重合体」とは、基本単位がエチレン及びプロピレン由来の構成単位である共重合体を表す。「プロピレン-1-ブテン共重合体」とは、基本単位がプロピレン及びブテン由来の構成単位である共重合体を表す。「エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体」とは、基本単位がエチレン、プロピレン及びブテン由来の構成単位である共重合体を表す。これらの(共)重合体は、基本単位以外の他のオレフィン由来の構成単位を少量含有していてもよい。この含有量は、樹脂本来の性能を著しく損なわない量であればよい。
ポリオレフィン樹脂は、構成単位100モル%中、プロピレン由来の構成単位を50モル%以上含むことが好ましい。プロピレン由来の構成単位を上記範囲で含むと、プロピレン樹脂等の非極性樹脂基材に対する付着性を保持し得る。
ポリオレフィン樹脂は、重合触媒としてメタロセン触媒を用いて得られるものが好ましい。
メタロセン触媒としては、公知のものを使用できる。メタロセン触媒は、下記成分(1)及び成分(2)と、さらに必要に応じて成分(3)とを組み合わせて得られるものが好ましい。
成分(1);共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表4~6族の遷移金属化合物であるメタロセン錯体;
成分(2);イオン交換性層状ケイ酸塩;
成分(3);有機アルミニウム化合物。
メタロセン触媒を用いると、ポリオレフィン樹脂は次の特徴を有する。ポリオレフィン樹脂の分子量分布が狭くなる。また、ポリオレフィン樹脂が共重合体の場合は、ランダム共重合性に優れ、組成分布が狭く、さらに、共重合し得るコモノマーの範囲が広くなる。
エチレン-プロピレン共重合体又はプロピレン-1-ブテン共重合体がランダム共重合体である場合、好ましくは、構成単位100モル%中、エチレン由来の構成単位又はブテン由来の構成単位が5~50モル%であり、プロピレン由来の構成単位が50~95モル%である。
ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量に併せて適宜設定すればよい。例えば、変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量について、10,000~200,000が好ましく、20,000~180,000がより好ましい場合、得られる変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が当該範囲となるように、ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量を調整することが好ましい。より詳細には、熱やラジカルの存在下で減成して、ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量を適当な範囲、例えば200,000以下となるように調整することが好ましい。
なお、ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、上記と同様に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、標準物質:ポリスチレン)によって測定した値である。また、測定条件は、上記と同じである。
ポリオレフィン樹脂の融点の下限は、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。ポリオレフィン樹脂の融点が50℃以上であると、変性ポリオレフィン樹脂をインキ、塗料等の用途に用いる際、十分な塗膜強度を発現し得る。そのため、基材との付着性が十分に発揮され得る。また、インキとして用いる際、印刷中のブロッキングを抑制し得る。また、その上限は、120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。ポリオレフィン樹脂の融点が120℃以下であると、変性ポリオレフィン樹脂をインキ、塗料等の用途に用いる際、塗膜が固くなりすぎることを抑制し得る。そのため、塗膜が適度な柔軟性を発揮し得る。
ポリオレフィン樹脂の融点の一実施形態としては、50~120℃が好ましく、60~110℃がより好ましい。
ポリオレフィン樹脂の融点は、DSC測定装置(例えば、「DISCOVERY DSC2500」、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて測定し得る。より詳細には、約5mgの試料を150℃で10分間融解し、-50℃まで10℃/minの速度で降温して結晶化する。その後、10℃/minで150℃まで昇温して融解する。融解した時の融解ピーク温度を融点として求め得る。
(変性成分)
変性成分は、環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体を含む。環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体としては、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、及び無水アコニット酸等の環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。中でも、無水マレイン酸が好ましい。
変性成分は、環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体以外の成分を含んでもよい。例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、アコニット酸等のα,β-不飽和カルボン酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイミド、N-フェニルマレイミドが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂を変性成分で変性する方法としては、公知の方法であってよい。このような方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を溶融又は溶媒に溶解し、変性成分及びラジカル発生剤を添加し、変性する方法が挙げられる。
反応装置としては、例えば、二軸押出機などの押出機を用いることができる。
反応は、回分式で行ってもよく、連続式で行ってもよい。
ポリオレフィン樹脂を、変性成分で変性することにより、通常、ポリオレフィンを主鎖とし、変性成分に由来する構成単位を含む側鎖を有するグラフト重合体が得られる。
[製造方法]
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の製造方法は、特に限定されるものではない。一例を以下に示す。
まず、ポリオレフィン樹脂を用意する。ポリオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィンを、チーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒等の触媒の存在下、重合することにより調製し得る。ポリオレフィン樹脂は、市販品を用いてもよい。
つぎに、ポリオレフィン樹脂を変性成分により変性する。変性方法は、公知の方法、例えば、グラフト重合方法で行うことができる。グラフト重合反応の際には、ラジカル発生剤を用いてもよい。変性ポリオレフィン樹脂を得る方法としては、トルエン等の溶剤に変性成分を加熱溶解し、ラジカル発生剤を添加する溶液法;バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等の機器に、変性成分及びラジカル発生剤を添加し混練する溶融混練法が挙げられる。ここで、変性成分は一括添加しても、逐次添加してもよい。
グラフト重合反応の際には、変性成分は、好ましい量でグラフトする観点から、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、0.1~20質量部の量で用いることが好ましい。
ラジカル発生剤は、公知のものより適宜選択して使用し得る。中でも、有機過酸化物系化合物が好ましい。有機過酸化物系化合物としては、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが挙げられる。中でも、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
変性成分100質量%に対する、ラジカル発生剤の添加量の好ましい範囲は次の通りである。添加量の下限は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。ラジカル発生剤の添加量が1質量%以上であると、グラフト効率を保つことができる。一方、添加量の上限は、好ましくは200質量%以下であり、より好ましくは100質量%以下である。ラジカル発生剤の添加量が200質量%以下であると経済的である。
ポリオレフィン樹脂にグラフト重合しない変性成分である未反応物は、例えば貧溶媒で抽出して除去してもよい。このようにして、グラフト重合体が得られる。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、条件(B)を満たすように、得られたグラフト重合体を水分子と反応させることで製造し得る。より詳細には、変性ポリオレフィン樹脂を水に浸漬する、変性ポリオレフィン樹脂を恒湿条件下に置く、等の開環処理を行うことで製造し得る。この際、水温や処理条件の温度・湿度、浸漬時間や恒湿条件下に置く時間を変更することで、開環率(%)と開環度を調整し得る。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、付着性(接着性)が低く、塗料等の塗工が困難な基材のための中間媒体として有用であり、例えば、付着性(接着性)の乏しいポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系基材同士の接着剤として使用し得る。この際、基材がプラズマ、コロナ等により表面処理されているか否かを問わず用いることができる。また、ポリオレフィン系基材の表面に本発明の変性ポリオレフィン樹脂をホットメルト方式で積層し、更にその上に塗料等を塗工することにより、塗料の付着安定性等を向上させることもできる。
また、本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、金属と樹脂との優れた接着性をも発揮し得る。金属としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスが挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂等の非極性樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。従って、本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、接着剤、プライマー、塗料用バインダー及びインキ用バインダーとして、又はこれらの成分として、用いることができる。
[組成物]
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、通常、変性ポリオレフィン樹脂を含む組成物として利用される。組成物は、変性ポリオレフィン樹脂の他に、溶液、硬化剤、及び接着成分からなる群より選択される少なくとも1種の成分をさらに含むことが好ましい。
(溶液)
上記組成物の一実施態様は、変性ポリオレフィン樹脂と溶液を含む樹脂組成物である。溶液としては、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、エチルシクロヘキサノン等のケトン溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノナン、デカン等の脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤が挙げられる。環境問題の観点から、芳香族溶剤以外の有機溶剤が好ましく、脂環式炭化水素溶剤とエステル溶剤又はケトン溶剤との混合溶剤がより好ましい。
有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
また、変性ポリオレフィン樹脂と溶液を含む樹脂組成物の溶液の保存安定性を高めるために、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール)、プロピレン系グリコールエーテル(例、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール-t-ブチルエーテル)を、1種単独で、又は2種以上混合して用いてもよい。この場合、上記有機溶剤に対して、1~20質量%添加することが好ましい。
(硬化剤)
上記組成物の他の実施態様は、変性ポリオレフィン樹脂と硬化剤を含む組成物である。硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリアミン化合物、ポリオール化合物、或いはそれらの官能基が保護基でブロックされた架橋剤が例示される。
硬化剤は1種単独であってもよく、複数種の組み合わせであってもよい。
硬化剤の配合量は、変性ポリオレフィン樹脂中の変性度Kにより適宜選択できる。また、硬化剤を配合する場合は、目的に応じて有機スズ化合物、第三級アミン化合物等の触媒を併用することができる。
(接着成分)
上記組成物の更に他の実施態様は、変性ポリオレフィン樹脂と接着成分を含む組成物である。接着成分としては、所望の効果を阻害しない範囲でポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等の公知の接着成分を用いることができる。
組成物は、ポリオレフィン系基材等の非極性樹脂同士や非極性樹脂と金属の接着に優れるので、接着剤、プライマー、塗料用バインダー及びインキ用バインダーとして用いることができ、例えば、アルミラミネートフィルム等のラミネートフィルムにおける接着剤として有用である。
[プライマー、バインダー]
本発明の変性ポリオレフィン樹脂又は上記の組成物は、プライマー、塗料用バインダー又はインキ用バインダーとして利用し得る。本発明の変性ポリオレフィン樹脂又はそれを含む組成物は、付着性、溶液安定性、耐熱性に優れており、自動車のバンパー等ポリオレフィン基材への上塗り塗装時のプライマー、上塗り塗料やクリアーとの付着性に優れる塗料用バインダーとして好適に利用し得る。
プライマー、塗料用バインダー又はインキ用バインダーは、溶液、粉末、シート等、用途に応じた形態で使用できる。また、その際に必要に応じて添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、無機充填剤を添加し得る。
[積層体]
本発明の変性ポリオレフィン樹脂又はそれを含む組成物は、積層体としても利用し得る。積層体は、通常、変性ポリオレフィン樹脂又は上記の組成物を含む層、金属層及び樹脂層を有する。積層体における層の配置は特に限定されないが、金属層及び樹脂層が変性ポリオレフィン樹脂又は組成物を含む層を挟んで位置する態様、金属層を挟んで第1の樹脂層と第2の樹脂層が存在し、金属層と各樹脂層の間に変性ポリオレフィン樹脂又は組成物を含む層が挟持されている態様が例示される。積層体は、リチウムイオン二次電池、コンデンサー、電気二重層キャパシター等の外装材として用いられるものであってもよい。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。「部」は、特に断りがない限り、重量部を意味する。
[変性度K(重量%)]:変性度Kは、JIS K-0070(1992)に準拠して次の通り算出した。まず、精秤した約0.5gの変性ポリオレフィン樹脂と約100gのトルエンを、冷却管及び温度計を取り付けた300mlセパラブルフラスコに投入し、ホットスターラー上で内温が80℃となるように加熱しながら撹拌溶解した。樹脂溶解後、15mlのメタノールを加え5分間保持した。その後、5~6滴の指示薬(1%フェノールフタレイン-メタノール溶液)を添加し、0.1mol/L水酸化カリウム-エタノール溶液で滴定した。そして、中和に要した滴定量から、次式より変性ポリオレフィン樹脂の変性度Kを算出した。
K={B×f×9.806/(S×1000)}×100
Kは、変性度(重量%)を表し、Bは、水酸化カリウム-エタノール溶液の滴定量(ml)を表し、fは、0.1mol/L水酸化カリウム-エタノール溶液のファクターを表し、9.806は、無水マレイン酸の式量×1/10であり、Sは、変性ポリオレフィン樹脂の重量(g)を表す。
[開環率R(%)]:変性ポリオレフィン樹脂を有機溶剤に溶解して溶液を得た。KBr板に溶液を塗布、乾燥して薄膜を形成し、FT-IR(「FT/IR-4100」、日本分光社製)にて、400~4000cm-1の赤外吸光スペクトルを観測した。なお、解析は、付属ソフトウェア(「Spectro Manager」、日本分光社)によって行った。
波数1700~1750cm-1に現れるピークを、開環したα,β-不飽和カルボン酸誘導体のカルボニル基由来のピークに帰属し、そのピーク高さをAとした。波数1750~1820cm-1に現れるピークを、開環していないα,β-不飽和カルボン酸誘導体のカルボニル基由来のピークに帰属し、そのピーク高さをBとした。そして、開環率R(%)は、(A/(A+B)×100)に各ピーク高さA及びBを代入して算出した。
[開環度]:変性度Kの値と開環率Rの積で算出した。
[融点(℃)]:JIS K7121(1987)に準拠し、DSC測定装置(「DISCOVERY DSC2500」、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用い、約5mgの試料を150℃で10分間加熱融解状態を保持した。10℃/分の速度で降温して、-50℃で安定保持した。その後、更に10℃/分で150℃まで昇温して融解した時の融解ピーク温度を測定し、該温度を融点として評価した。
[重量平均分子量(Mw)]:以下の測定条件で測定した値である。
測定機器:HLC-8320GPC(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム:TSKgel(東ソー社製)
標準物質;ポリスチレン(東ソー製、GLサイエンス製)
検出器;示差屈折計(東ソー製)
温度;40℃
流速;1.0mL/分
(実施例1)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレン-ブテンランダム共重合体〔P-B〕(プロピレン成分80モル%、ブテン成分20モル%、Tm=85℃)100部をトルエン400g中に加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸4.5部、ラウリルメタクリレート4.0部、ジ-t-ブチルパーオキサイド1.0部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却し、重量平均分子量が160,000、Tm=82℃の反応物を得た。該反応物を大過剰のアセトン中に投入することで精製して、無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートのグラフト重量を測定したところ、各々4.0重量%、3.0重量%であった。
該反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に5時間静置し、開環率が24.1%、すなわち開環度が96.4の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(実施例2)
無水マレイン酸2.0部、ラウリルメタクリレート2.0部、ジ-t-ブチルパーオキサイド0.8部とした以外は、実施例1と同様に反応を行い、分子量150,000、Tm=83℃、無水マレイン酸及びラウリルアクリレートのグラフト量が各々1.9重量%、1.8重量%の反応物を得た。
該反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に16時間静置し、開環率が54.3%、すなわち開環度が103.2の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(実施例3)
プロピレン-ブテンランダム共重合体〔P-B〕(プロピレン成分80モル%、ブテン成分20モル%、Tm=75℃)100部、無水マレイン酸2.0部、ジ-t-ブチルパーオキサイド1.0部を、170℃に設定した二軸押出機を用いて混練して反応を行った。押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去し、重量平均分子量が140,000、Tm=73℃の反応物を得た。反応物を大過剰のアセトン中に投入することで精製して、無水マレイン酸のグラフト重量を測定したところ、1.8重量%であった。
該反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に48時間静置し、開環率が70.4%、すなわち開環度が126.7の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(実施例4)
実施例2で得られた開環率調整前の反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に48時間静置し、開環率が71.3%、すなわち開環度が135.5の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(実施例5)
実施例1で得られた開環率調整前の反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に18時間静置し、開環率が49.8%、すなわち開環度が199.2の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(実施例6)
実施例1で得られた開環率調整前の反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に48時間静置し、開環率が68.6%、すなわち開環度が274.4の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(実施例7)
プロピレン-エチレンランダム共重合体〔P-E〕(プロピレン成分89モル%、エチレン成分11モル%、Tm=65℃)、無水マレイン酸4.0部、ラウリルメタクリレート4.0部、ジ-t-ブチルパーオキサイド2.0部を、170℃に設定した二軸押出機を用いて混練して反応を行った。押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去し、重量平均分子量が130,000、Tm=64℃の反応物を得た。反応物を大過剰のアセトン中に投入することで精製して、無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートのグラフト重量を測定したところ、各々3.3重量%、2.5重量%であった。
該反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に5時間静置し、開環率が23.4%、すなわち開環度が77.2の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(実施例8)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレン-エチレンランダム共重合体〔P-E〕(プロピレン成分87モル%、エチレン成分13モル%、Tm=70℃)100部をトルエン400g中に加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸4.0部、ジラウリルパーオキサイド2.0部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却し、重量平均分子量が65,000、Tm=65℃の反応物を得た。反応物を大過剰のアセトン中に投入することで精製して、無水マレイン酸のグラフト重量を測定したところ、3.8重量%であった。
該反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に5時間静置し、開環率が25.3%、すなわち開環度が96.1の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(実施例9)
実施例7で得られた開環率調整前の反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に17時間静置し、開環率が52.0%、すなわち開環度が171.6の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(実施例10)
実施例7で得られた開環率調整前の反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に48時間静置し、開環率が72.8%、すなわち開環度が240.2の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(実施例11)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレン-エチレンランダム共重合体〔P-E〕(プロピレン成分87モル%、エチレン成分13モル%、Tm=70℃)100部をトルエン400g中に加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸10.0部、オクチルメタクリレート9.0部、ジラウリルパーオキサイド3.0部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却し、重量平均分子量が100,000、Tm=63℃の反応物を得た。反応物を大過剰のアセトン中に投入することで精製して、無水マレイン酸及びオクチルメタクリレートのグラフト重量を測定したところ、各々8.7重量%、6.0重量%であった。
該反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に5時間静置し、開環率が18.8%、すなわち開環度が163.6の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(実施例12)
実施例11で得られた開環率調整前の反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に48時間静置し、開環率が70.5%、すなわち開環度が613.4の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(比較例1)
実施例2で得られた開環率調整前の反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に3時間静置し、開環率が14.9%、すなわち開環度が28.3の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(比較例2)
実施例3で得られた開環率調整前の反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に3時間静置し、開環率が14.5%、すなわち開環度が26.1の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(比較例3)
実施例7で得られた開環率調整前の反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に1時間静置し、開環率が8.9%、すなわち開環度が29.4の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
上記実施例1~12及び比較例1~3で得られた変性ポリオレフィン樹脂のベース樹脂の種類、変性度K(重量%)、開環率R(%)、開環度の一覧を表1に示す。
Figure 0007258061000001
[ヒートシール強度(gf)]:アルミ箔上に樹脂乾燥膜厚2μmとなるように#16のマイヤーバーで調製した変性ポリオレフィン樹脂の溶液試料(固形分:15%、溶剤組成:メチルシクロヘキサン/MEK=80/20(w/w))を接着剤として塗布し、180℃で10秒間乾燥した。塗布済みのアルミ箔を無延伸ポリプロピレン(CPP)シートと貼合し、表2に記載の温度、時間、圧力の条件で熱圧着を行った後、15mm幅に切り出して試験片を作製した。試験片を23℃、相対湿度50%の恒温・恒湿条件下で24時間保管した後、剥離角度180°、剥離速度100mm/minの条件でラミネート接着強度を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0007258061000002
比較例1~3の結果からわかるように、開環度の値が40以下であると、ヒートシール強度の値が低いことがわかる。一方、実施例1~6の結果からわかる通り、開環度の値が大きくなると、ヒートシール強度の値が高くなり、付着性が増すことがわかる。
また、実施例7~12の結果からわかる通り、変性度K(重量%)が大きくなる(即ち、グラフト重量が増加する)と、ヒートシール強度の値が低くなるけれども、開環度を所定の範囲に調整することで、付着性を向上し得ることがわかる。

Claims (3)

  1. ポリオレフィン樹脂の変性物であり、下記条件(A)~(D)を満たす変性ポリオレフィン樹脂(但し、以下のポリオレフィン(1)~()を除く:
    コンデンサー及び攪拌機が付設された内容積300mLのフラスコに、下記(A1)成分15重量部、メチルシクロヘキサン68重量部及びメチルエチルケトン17重量部を仕込み、60℃で30分間撹拌して(A1)成分を溶解した後、水1200重量部を添加して60℃でさらに8時間攪拌し、室温まで冷却後に得られる溶液aに含まれるポリオレフィン(1);
    溶液に硬化触媒1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-70.08重量部を添加して十分に混合し、得られる液状の樹脂組成物にイソシアネート化合物として1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート体3.3重量部及びヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体2.0重量部を配合し混合して得られる組成物中のポリオレフィン();
    (A1)の代わりに下記(A2)成分を用いたこと、及び水の添加量を377重量部としたこと、以外はポリオレフィン(1)と同様の製造方法により得られる溶液bに含まれるポリオレフィン(3);
    溶液aの代わりに溶液bを用いたこと、イソシアネート化合物として4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)及び異性体の混合物のイソシアヌレート体3.0重量部とヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体0.6重量部を用いること以外はポリオレフィン()と同様の製造方法により得られるポリオレフィン();
    (A1)の代わりに下記(A3)成分を用いたこと、及び水の添加量を3281重量部としたこと、以外はポリオレフィン(1)と同様の製造方法により得られる溶液cに含まれるポリオレフィン(5);並びに
    溶液aの代わりに溶液cを用いたこと、イソシアネート化合物として4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)及び異性体の混合物6.0重量部とヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体3.0重量部を用いたこと以外は、ポリオレフィン()と同様の製造方法により得られるポリオレフィン()。
    条件(A):変性成分が、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、及び無水アコニット酸からなる群より選ばれる環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体を含むこと。
    条件(B):下記式(1)で表される開環度が40以上であること。
    (1):開環度=変性度K×開環率R
    (前記式(1)中、前記変性度Kは、前記α,β-不飽和カルボン酸誘導体のグラフト重量(重量%)を表し、前記開環率Rは、前記α,β-不飽和カルボン酸誘導体における環状構造の開環率(%)を表し60を超えて80以下である。)
    条件(C):変性成分が、(メタ)アクリル酸エステルをさらに含むこと。
    条件(D):ポリオレフィン樹脂が、構成単位100モル%中、プロピレン由来の構成単位を50モル%以上含む、ポリプロピレン(プロピレン単独共重合体)、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むこと。
    (A1)成分:二軸押出機(L/D=42、φ=58mm)に、プロピレン-1-ブテン共重合体(プロピレン成分79モル%、1-ブテン成分21モル%、重量平均分子量180,000、Tm=85℃)100重量部、無水マレイン酸2.8重量部、メタクリル酸ラウリル2重量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン0.8重量部を投入し、滞留時間10分、バレル温度180℃(第1バレル~第7バレル)として反応し、第7バレルにて脱気を行い、残留する未反応の無水マレイン酸、及びメタクリル酸ラウリルを除去して得られる反応物。
    (A2)成分:攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレン-エチレン共重合体(プロピレン成分97モル%、エチレン成分3モル%、重量平均分子量250,000、Tm=125℃)100重量部をトルエン400重量部中に加熱溶解させた後、系内の温度を110℃に保持して撹拌しながらジクミルパーオキサイド1重量部を滴下し、その後1時間減成処理し、次に、無水アコニット酸1.5重量部、アクリル酸オクチル3重量部、過酸化ベンゾイル0.5重量部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させ、反応後、室温に冷却した後、粗反応物を大過剰のアセトン中に投入して未反応の無水アコニット酸及びアクリル酸オクチルを除去して得られる反応物。
    (A3)成分:(A1)の製造時に用いたのと同様の二軸押出機に、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体(プロピレン成分68モル%、エチレン成分8モル%、1-ブテン成分24モル%、重量平均分子量50,000、Tm=70℃)100重量部、無水イタコン酸8重量部、アクリル酸トリデシル5重量部、ラウロイルパーオキサイド2重量部を投入し、滞留時間10分、バレル温度170℃(第1バレル~第7バレル)として反応し、第7バレルにて脱気を行い、残留する未反応の無水イタコン酸及びアクリル酸トリデシルを除去し、得られる反応物。
  2. 融点が50℃以上である請求項1に記載の変性ポリオレフィン樹脂。
  3. 重量平均分子量が10,000以上である請求項1又は2に記載の変性ポリオレフィン樹脂。
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