JP2013257532A - 光選択透過フィルター、樹脂シート及び固体撮像素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】樹脂シートを含む光選択透過フィルターであって、該樹脂シートは、色素及び樹脂成分を含む樹脂層を有し、該色素は、それが有する共役系骨格がノニオン性であり、かつ600〜800nmの波長域に吸収極大波長を有し、その少なくとも1つの吸収極大波長が600〜710nmに存在する化合物である光選択透過フィルター。
【選択図】なし
Description
本発明はまた、上記光選択透過フィルターに用いられる樹脂シートでもある。
本発明は更に、上記光選択透過フィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有する固体撮像素子でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下において段落に分けて記載される本発明の好ましい形態の2つ又は3つ以上を組み合わせたものも本発明の好ましい形態である。
本発明の光選択透過フィルターは、1又は2以上の樹脂シートを含む。
上記光選択透過フィルターにおける樹脂シートは、色素及び樹脂成分を含む樹脂層を有する樹脂シート(フィルム形状を含む)である。このような樹脂シートは、極めて耐光性及び耐熱性に優れるものであるが、例えば反射膜と組み合わせることで、視野角依存性(入射角依存性とも称す)が充分に低減され、かつシャープな透過吸収特性を有する光選択透過フィルターを与えることもできる。また、反射膜として好適な光学多層膜と組み合わせると、光学多層膜の層数を減らすことができ、該多層膜における応力を緩和できるため、多層膜のクラックや割れを充分に防止することもできる。このような本発明の光選択透過フィルターに用いられる樹脂シートもまた、本発明の1つである。
なお、樹脂シートを構成する樹脂層や、支持体等の他の層は、各々、一層又は二層以上であってもよい。
なお、上記樹脂シートが支持体を含む場合、該支持体の厚みは120μm以下であることが好ましい。
上記樹脂シートにおいて、樹脂層は、色素及び樹脂成分を含むものであるが、色素が樹脂層中に分散又は溶解されてなることが好ましい。すなわち、色素と樹脂成分とを含む樹脂組成物中に、色素が分散又は溶解された形態の樹脂組成物により、樹脂層が形成されることが好適である。このような形態の樹脂組成物では、樹脂成分として、後述する溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び/又は液状樹脂原料を用いることが好適である。
なお、色素及び樹脂成分としては、各々、1種又は2種以上を使用することができる。
上記色素は、それが有する共役系骨格がノニオン性であり、かつ600〜800nmの波長域に吸収極大波長を有し、その少なくとも1つの吸収極大波長が600〜710nmに存在する化合物(以下、特定色素とも称す)である。
このような化合物が有する共役系骨格がノニオン性であるとは、該化合物が有するすべての共役系骨格が、アニオン性、カチオン性及び双性イオン性のいずれでもないこと、すなわち該共役系骨格中にイオン化部分(アニオン、カチオン又は双性イオン)を有しないことを意味する。共役系骨格にイオン化部分が存在すると、光や熱によって該化合物に由来する近赤外線吸収性能が顕著に低下するが、共役系骨格にイオン化部分を有さないことによって耐光性及び耐熱性が発現され、近赤外線吸収性能を長期にわたり発揮することが可能になる。
なお、双性イオンを有するとは、1つの分子内に正電荷と負電荷の両方を持つことを意味する。双性イオンは、分子内塩とも称される。
樹脂シート(及び樹脂層)の近赤外線吸収は、樹脂層に用いられる色素の共役系軌道間における電子遷移によるところが大きいと考えられる。この吸収では、色素が有する置換基(原子団)の種類や数、また色素が金属錯体である場合は金属イオンの種類等によって、吸収端波長や吸光係数等の吸収特性をある程度制御することができるが、近赤外線領域の光吸収性能は、基本的には色素が有する共役系電子の電子構造に概ね依存する。したがって、樹脂シート(及び樹脂層)の近赤外線吸収性能の安定性は、色素における共役系骨格の共役系の安定性によると考えられる。そこで、共役系骨格におけるイオン化構造部分の有無による、近赤外線吸収性能の安定性に及ぼす影響のメカニズムは、定かではないが、以下のように考えられる。
このような点から、上記色素として共役系骨格がノニオン性である化合物を用いることが有効であると考えられる。
ここで、4個のピロール環を含む化合物群をテトラピロール化合物といい、環状のものと直鎖状のものがあるが、環状テトラピロール化合物であることが更に好適である。
上述のように、特定色素における中心金属イオンとなる金属としては、銅又は亜鉛が特に好ましい。これらの金属を中心金属イオンとする金属錯体としては、ポルフィリン類又はフタロシアニン類が特に好ましく、フタロシアニン類が最も好ましい。
なお、ポルフィリン類とは、ポルフィリン骨格を有する化合物群を意味し、ピロール環を構成する炭素原子やピロール環同士を繋ぐ結合炭素原子に結合した水素原子が、他の原子(団)や基で置換されたものを包含する。
ここで、上記色素が有する吸収極大波長は、600〜800nmの波長域に1又は2以上あればよく、そのうちの1つが600〜710nmに存在すればよい。このような吸収特性を有する化合物を用いて樹脂シートを構成することで、遮断したい波長域をよりシャープに遮断でき、かつ透過させたい波長域では高い透過率を示すという光選択透過性に優れるものとなり、また、該樹脂シートと反射膜とを組み合わせた際に、反射膜による入射角依存性を大幅に軽減することが可能になる。より好ましくは、600〜800nmの波長域に存在する1又は2以上の吸収極大波長のうち、最も透過率が低いピークの波長(すなわち、最大吸収波長)が、600〜710nmであることである。
また反射膜と組合わせたときの入射角依存性を抑制する観点からは、上記色素が600〜800nmの波長域に存在する1又は2以上の吸収極大波長のうち、単一分子由来の極大波長の少なくとも1つが、600〜710nmに存在するものであることが好適である。
色素の透過率は、色素を溶媒(例えば、メタノール、ジメチルアセトアミド)に溶解させて得た溶液を、1cm厚の透明石英セルに充填し、分光光度計(例えば、Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。透過率測定時の色素の濃度は特に限定されないが、例えば、溶媒と色素との総量100質量%に対し、色素を0.000001〜0.01質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.00001〜0.001質量%とすることである。
上記ポルフィリン系色素としては、テトラアザポルフィリン等が挙げられる。
なお、フェニル基又はナフチル基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、炭素数1〜4の有機基(例えば、アルキル基、アルコキシカルボニル基等)、ハロゲン基(ハロゲン原子)、シアノ基、ニトロ基等が好適である。中でも、メトキシカルボニル基、メトキシエトキシカルボニル基、クロル基(塩素原子)、メチル基又はシアノ基が特に好ましい。
ここで、上記350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物を含む形態としては、上記特定色素が、更に350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物である形態であってもよいし、また、別途、350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物を併用する形態であってもよい。後者の350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物としては、例えば、TINUVIN P、TINUVIN 234、TINUVIN 329、TINUVIN 213、TINUVIN 571、TINUVIN 326(BASF社製)等の紫外線吸収化合物の1種又は2種以上を使用することができる。
上記樹脂層において、樹脂成分としては、色素を充分に溶解又は分散できる樹脂成分が好ましい。すなわち、上記色素は、樹脂層中に均一に分散又は溶解されてなることが好ましい。このような樹脂成分を適切に選択することにより、透過させたい波長域(例えば、可視領域)における高透過率と、遮断したい波長域(例えば、赤外領域)における高吸収性とを両立することが可能となる。
なお、上記樹脂層自体は、溶剤可溶性であっても不溶性であってもよい。
なお、「樹脂原料」には、樹脂の前駆体や該前駆体の原料、更に、樹脂を形成するための単量体(硬化性モノマー等)が含まれるものとする。
上記樹脂成分として溶剤可溶性樹脂を用いる場合、該溶剤可溶性樹脂がそのまま、上記樹脂層を構成する樹脂成分となっていてもよいし、該溶剤可溶性樹脂が架橋反応等により変化したものが、上記樹脂層を構成する樹脂成分となっていてもよい。
なお、架橋可能な反応性基の量や成膜時の架橋反応をどの程度進めるかは特に限定されるものではないが、樹脂の溶剤可溶性が維持できる程度であることが好ましい。
なお、一般式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
上記一般式(1−2)中、R2は、置換基を有していてもよい、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数6〜20のアリールアミノ基又は炭素数6〜20のアリールチオ基を表す。R3は、炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。zは、芳香族環に結合しているフッ素原子の数であり、1又は2である。n1は、重合度を表し、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がより好ましい。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、フルフリルオキシ基、アリルオキシ基等が好適である。
上記アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基等が好適である。
上記アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、iso−プロピルチオ基等が好適である。
上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヒドロキシ安息香酸及びそのエステル類(例えば、メチルエステル、エチルエステル、メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、フルフリルエステル及びフェニルエステル等)由来の基、ナフトキシ基、o−、m−又はp−メチルフェノキシ基、o−、m−又はp−フェニルフェノキシ基、フェニルエチニルフェノキシ基、クレソチン酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールアミノ基としては、アニリノ基、o−、m−又はp−トルイジノ基、1,2−又は1,3−キシリジノ基、o−、m−又はp−メトキシアニリノ基、アントラニル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールチオ基としては、フェニルチオ基、フェニルメタンチオ基、o−、m−又はp−トリルチオ基、チオサリチル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
なお、ポリイミド樹脂におけるイミド結合は、通常、アミド結合とそれに隣接するカルボキシル基とを有する結合鎖(本発明では、該結合鎖をアミック酸ともいう。通常は、アミド結合が結合した炭素原子に隣接する炭素原子にカルボキシル基が結合した構造である。)におけるアミド結合とカルボキシル基との脱水反応による形成される。
ポリアミック酸から脱水反応によりポリイミド樹脂を生成させる際、分子内に若干量のアミック酸は残存し得る。したがって、本発明で「ポリイミド樹脂」という場合は、イミド結合を含み、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合は含まないが、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合は含まないか若干量含んでいてもよい。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂はまた、透明性を有することが好ましい。透明性向上のためには、芳香環が少ないほうが好ましい。中でも、芳香環を脂環又は脂肪鎖等で置き換えた構造を有することが好適である。より好ましくは、全重量100%中の芳香環の重量が65%以下、更に好ましくは45%以下、特に好ましくは30%以下である。
上記一般式(5)におけるR4としては、2価の有機基が好ましく、中でも、炭素数2〜39の2価の有機基が好ましい。また、当該有機基は1種又は2種以上の炭化水素骨格を含むものが好ましい。炭化水素骨格としては、脂肪族鎖状炭化水素、脂肪族環状炭化水素又は芳香族炭化水素であることが好ましい。当該有機基はまた、複素環骨格を有するものであってもよい。
なお、上記一般式(5)で表される繰り返し単位におけるそれぞれのR4としては、同一であっても異なるものであってもよい。
なお、一般式(5)におけるシクロヘキシル環における水素原子の一部又は全部が置換されていてもよいが、無置換(全て水素原子である形態)であるものが好ましい。
上記一般式(5)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
なお、本明細書中、エポキシ基とは、3員環のエーテルであるオキシラン環を含むものであり、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基(グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基を含む)を含むものを意味する。
上記可撓性成分としては、上記エポキシ化合物とは異なる化合物であってもよいし、上記エポキシ化合物の少なくとも1種が可撓性成分であってもよい。
アクリル樹脂とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物((メタ)アクリロイル基含有化合物又は(メタ)アクリル系化合物とも称す。)を含む硬化性組成物の硬化物であり、スチレン樹脂とは、スチレンやジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー(スチレン系化合物とも称す。)を含む硬化性組成物の硬化物であり、アクリル−スチレン樹脂とは、(メタ)アクリロイル基含有化合物及びスチレン系モノマーを含む硬化性組成物の硬化物である。上記ビニル重合体樹脂の中でも、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂が好ましい。
上記アクリル−スチレン樹脂原料としては、上記アクリル樹脂原料の好適な形態において更にスチレン系モノマーを用いた組成物が好ましい。
なお、上記樹脂シートについても、上記と同様の吸収特性を示すことが好適である。
なお、上記樹脂シート及び光選択透過フィルターについても、可視光領域におけるヘイズ及び可視光500nmにおける透過率が、夫々上述した範囲にあることが好ましい。
透過率は、分光光度計(例えば、Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。透過率の測定に供する樹脂層及び樹脂シートの厚みは、1〜200μmとすることが好ましい。
上記樹脂シートは、上述したように支持体を更に有することが好適であるが、支持体としては、フィルム形状のもの(支持体フィルム)が好ましい。
上記支持体フィルムとしては、透明性に優れる樹脂を用いることが好適である。具体的には、例えば、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、シクロオレフィン樹脂等を用いることができる。これらの中でも、反射層を蒸着形成する際の耐熱性に優れる点で、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂及び/又はアクリル樹脂が好ましい。より好ましくは、ポリ(アミド)イミド樹脂を少なくとも用いることである。
本発明の光選択透過フィルターはまた、反射膜(反射層とも称す)を含むことが好適である。これにより、光選択透過性により優れ、光遮断特性の入射角依存性が充分に低減され、かつ充分な薄膜化を実現することが可能な光選択透過フィルターとなり得る。このように、上記光選択透過フィルターが更に反射膜を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記誘電体層Aを構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を通常用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料が選択される。このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が好適である。
また上記樹脂シートが有機材料、具体的には樹脂組成物により形成される場合には、未硬化又は半硬化状態の樹脂シート(樹脂組成物)に誘電体層等を蒸着した後、樹脂シートを硬化する方法が好適である。このような方法を用いると、多層蒸着後の冷却時に基材が流動的となり、液状に近い状態となるために、樹脂組成物と誘電体層等との熱膨張係数差が問題にならず、光選択透過フィルターの変形(カール)をより充分に抑制することができる。
上記線膨張係数が低い樹脂層又は支持体フィルムとして具体的には、例えば、ポリ(アミド)イミド樹脂、アラミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、有機無機ハイブリッド樹脂等が好適であり、上記樹脂層又は支持体フィルムが、これらからなる群より選択される少なくとも1種により形成されるものである形態は、本発明の好適な形態の1つである。また、樹脂を延伸する;無機微粒子等を分散させる;ガラスクロスを用いる;架橋密度を上げる;コンポジット化する;結晶化させる;等によっても線膨張係数を低下させることができる。
また、上記反射膜の厚みは、0.5〜10μmであることが好ましい。より好ましくは、2〜8μmである。反射膜が上記樹脂シートの両面に形成される形態においては、両面の反射膜の合計の厚みが上記範囲内にあることが好ましい。
このように本発明の光選択透過フィルターが他の機能を有する形態においては、上記樹脂シートの一方の表面に反射膜を形成し、他方の表面に他の機能を付与するための機能性材料層を形成することが好ましい。機能性材料層は、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法により、直接、上記樹脂シート上に形成したり、離型処理された仮の基材上に形成された機能性材料層を上記樹脂シートに接着剤で張り合わせたりすることにより得ることができる。また、原料物質を含有する液状組成物を上記樹脂シートに塗布、乾燥して、製膜することによっても得ることができる。
図1に示すように、光選択透過フィルターは、所望の波長の光(カメラモジュールにおいては、例えば、700nm以上の波長の光)をカットし、シーモスセンサーの誤作動を防ぐ役割がある。カメラモジュールに光選択透過フィルターを入れると、焦点距離が伸びるため、バックフォーカスが伸張し、モジュールが大きくなる。光選択透過フィルターの厚みがtで屈折率nが1.5程度の場合、図2に示すように、バックフォーカスが約t/3伸張し、モジュールが大きくなるが、光選択透過フィルターを薄くして、焦点距離を短くし、モジュールを小さくすることができる。それにより、例えば、1/10インチの光学サイズの光路長としては、光選択透過フィルターなしの場合の120%以下とすることが好ましい。より好ましくは110%以下、更に好ましくは105%以下である。
紫外線カットフィルターは、紫外線を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲としては、200〜350nmであることが好ましい。
赤外・紫外線カットフィルターは、紫外線及び赤外線の両方を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲は、上述と同様であることが好ましい。
透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
なお、光遮断特性の入射角依存性は、吸収層の吸収により充分に低減されている必要があり、入射角の変化に対して透過率スペクトルが変化しないこと、又は、その変化の程度が小さいことが好ましい。具体的には、入射角0°を20°に変えても(より好ましくは25°に変えても)、透過率80%以上の領域において、透過率のスペクトルが変化しないことが好ましく、より好ましくは、透過率70%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことであり、更に好ましくは、透過率60%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことである。最も好ましくは、いずれの透過率領域においてもスペクトルが変化しないことである。
なお、レンズユニット部については、WO2008/081892に記載の形態が好ましく採用できる。
各フィルムについて、照度10万ルクスの蛍光灯光を室温(25℃)で100時間照射した。照射前後の透過率を評価し、透過率の変化を調べた。具体的には、表1−1〜1−3に記載の色素の透過率測定波長における透過率の変化の程度で評価した。なお、光源として東芝社製のメロウラインプライドFHF32EX−D−PDを用い、光源より95mm距離をおいた位置にサンプルを設置した。設置位置での照度は、照度計にて確認した。透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)にて測定した。
各フィルムについて、150℃又は200℃のオーブンの中に1時間設置し耐熱性試験を行った。耐熱性試験前後の透過率を評価し、透過率の変化を調べた。具体的には、表1−1〜1−3に記載の色素の透過率測定波長における透過率の変化の程度で評価した。透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)にて測定した。
<脂環式ポリイミドの合成>
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸(アルドリッチ社製、純度95%) 5部と無水酢酸(和光純薬工業社製)44部とを、フラスコに仕込み、攪拌しながら反応器内を窒素ガスで置換した。窒素ガス雰囲気下で溶剤の還流温度まで昇温し、10分間溶剤を還流させた。攪拌しながら室温まで冷却し、結晶を析出させた。析出した結晶を固液分離し、乾燥して目的物(1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物)の結晶を得た。温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えたフラスコに、窒素気流下、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(和光純薬製)0.89部と、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン 7.6部を仕込んで溶解させた後、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物1部を室温にて固体のまま1時間かけて分割投入し、室温下2時間撹拌した。共沸脱水剤としてキシレンを2.6部添加して180℃で3時間反応を行い、ディーンスタークで還流して共沸する生成水を分離した。190℃に昇温しながらキシレンを留去した後、冷却しポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液を得た。
<FPEK(フッ素化ポリエーテルケトン)の合成>
温度計、冷却管、ガス導入管、及び、攪拌機を備えた反応器に、BPDE(4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル)16.74部、HF(9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン)10.5部、炭酸カリウム4.34部、DMAc(ジメチルアセトアミド)90部を仕込んだ。この混合物を80℃に加温し、8時間反応した。反応終了後、反応溶液をブレンダーで激しく攪拌しながら、1%酢酸水溶液中に注加した。析出した反応物を濾別し、蒸留水及びメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、フッ素化芳香族ポリマーであるFPEKを得た。得られたポリマーのガラス転移点温度(Tg)は242℃、数平均分子量(Mn)が70770、表面抵抗値は1.0×1018Ω/cm2以上であった。
なお、上記合成例における数平均分子量は、以下の方法により測定した。
ゲル透過クロマトグラフィー(カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ−N 4.6*150を2本、溶離液:テトラヒドロフラン、標準サンプル:TSKポリスチレンスタンダード)により測定した。
特公平6−31239号公報に記載の処方に従い、色素(フタロシアニン色素;Pc1〜Pc15)を合成した。
Pc1〜Pc8は、表1−1中の式(6a)で表されるフタロニトリル誘導体を用いて得られる、式(6b)で表される構造を有する色素である。
Pc9〜Pc12は、表1−2中の式(7a)で表されるフタロニトリル誘導体を用いて得られる、式(7b)で表される構造を有する色素である。
Pc13〜Pc15は、表1−3中の式(8a)で表されるフタロニトリル誘導体を用いて得られる、式(8b)で表される構造を有する色素である。
式(6a)〜(8b)中のM、X及びYは、各色素について表1−1〜1−3に示すとおりである。また、各色素の吸収極大波長を表1−1〜1−3に示す。なお、後述する実施例等での耐光性及び耐熱性試験では、各実施例等で用いた色素における、表1−1〜1−3に示す各透過率測定波長にて、透過率の変化を調べた。
表中、Cαとは、フタロシアニン環の1,4,8,11,15,18,22,25位の炭素を表す。Cβとは、フタロシアニン環の2,3,9,10,16,17,23,24位の炭素を表す。
4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル50g(0.25mol)、フッ化カリウム34.8g(0.60mol)及びアセトン50gを仕込み、更に滴下ロートに2,5−ジクロロフェノール82.3g(0.50mol)及びアセトン82.3gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより2,5−ジクロロフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル88.8g(収率72.7%)を得た。
4,5−ビス(4−ブトキシフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル14.90g(0.074mol)、フッ化カリウム9.73g(0.17mol)及びアセトン120gを仕込み、更に滴下ロートに4−ブトキシフェノール25.00g(0.15mol)及びアセトン87.32gを仕込んだ。約5℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−ブトキシフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−ブトキシフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル16.43g(収率44.8%)を得た。
4,5−ビス(6−メトキシエチルカルボニル−2−ナフトキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル20.00g(0.100mol)、炭酸カリウム30.39g(0.220mol)及びアセトン46.67gを仕込み、更に滴下ロートに6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸メトキシエチル49.73g(0.200mol)及びアセトン350.00gを仕込んだ。5℃で攪拌しながら、滴下ロートより6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸メトキシエチルのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(6−メトキシエチルカルボニル−2−ナフトキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル41.8g(収率64.1%)を得た。
4,5−ビス(2,4−ジクロロ−1−ナフトキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル11.62g(0.058mol)、フッ化カリウム9.61g(0.16mol)及びアセトン120gを仕込み、更に滴下ロートに2,4−ジクロロ−1−ナフトール24.99g(0.12mol)及びアセトン87.32gを仕込んだ。5℃で攪拌しながら、滴下ロートより2,4−ジクロロ−1−ナフトールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(2,4−ジクロロ−1−ナフトキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル27.20g(収率79.9%)を得た。
4,5−ビス(4−エトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル30.00g(0.15mol)、炭酸カリウム43.52g(0.315mol)及びアセトン70.00gを仕込み、更に滴下ロートにp−ヒドロキシ安息香酸エチル50.84g(0.303mol)及びアセトン120.00gを仕込んだ。5℃で攪拌しながら、滴下ロートよりp−ヒドロキシ安息香酸エチルのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−エトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル55.3g(収率74.9%)を得た。
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(2,5−ジクロロフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]バナジウムオキサイド(Pc16と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例A−1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル60.00g(0.1234mol)、塩化バナジウム(III)6.31g(0.0401mol)、1,2,4−トリメチルベンゼン87.96g、ベンゾニトリル9.60gを仕込み、ミックスガス(窒素:酸素=93:7(vol%))バブリング下(10ml/min)、170℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール1200g中に滴下して結晶を析出させ、吸引ろ過後ウェットケーキを得た。得られたケーキを再度、メタノール600gで撹拌洗浄し、吸引ろ過した。得られたケーキを真空乾燥機を用いて、100℃で24時間乾燥後、目的物(Pc16)56.23gを得た(収率90.6%)。
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(2,5−ジクロロフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]インジウムクロライド(Pc17と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例A−1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル5.00g(0.0103mol)、塩化インジウム(III)0.63g(0.0028mol)、ベンゾニトリル7.50gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、反応液をアセトニトリル77.26g中に滴下して結晶を析出させ、吸引ろ過後ウェットケーキを得た。得られたケーキを再度、アセトニトリル19.3gで撹拌洗浄し、吸引ろ過した。得られたケーキを真空乾燥機を用いて、100℃で24時間乾燥後、目的物(Pc17)2.1gを得た(収率40.8%)。
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(2,5−ジクロロフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]チタニウムオキサイド(Pc18と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例A−1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル5.00g(0.0103mol)、オルトチタン酸テトラエチル0.65g(0.0028mol)、1,2,4−トリメチルベンゼン11.67gを仕込み、窒素流通下(10ml/min)、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール25g中に滴下して結晶を析出させ、吸引ろ過後ウェットケーキを得た。得られたケーキを再度、メタノール25gで撹拌洗浄し、吸引ろ過した。得られたケーキを真空乾燥機を用いて、100℃で24時間乾燥後、目的物(Pc18)5.1gを得た(収率98.8%)。
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(4−ブトキシフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc19と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例A−2で得られた4,5−ビス(4−ブトキシフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.00g(0.0061mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.49g(0.0015mol)、ベンゾニトリル7.50gを仕込み、窒素流通下(10ml/min)、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、反応液をフタロシアニン化合物の理論収量の10倍に相当するメタノール31.0g中に滴下して結晶を析出させ、吸引ろ過後ウェットケーキを得た。得られたケーキを再度、フタロシアニン化合物の理論収量の5倍量に相当するメタノール15.5gで撹拌洗浄し、吸引ろ過した。得られたケーキを真空乾燥機を用いて、100℃で24時間乾燥後、目的物(Pc19)2.48g(収率80.1%)を得た。
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(6−メトキシエチルカルボニル−2−ナフトキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc20と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例A−3で得られた4,5−ビス(6−メトキシエチルカルボニル−2−ナフトキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.00g(0.0046mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.44g(0.0014mol)、ベンゾニトリル4.5gを仕込み、窒素流通下(10ml/min)、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、合成例B−3と全く同様の操作を行い、目的物(Pc20)2.73g(収率88.8%)を得た。
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(2,4−ジクロロ−1−ナフトキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc21と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例A−4で得られた4,5−ビス(2,4−ジクロロ−1−ナフトキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.00g(0.0051mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.41g(0.0013mol)、ベンゾニトリル7.5gを仕込み、窒素流通下(10ml/min)、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、合成例B−3と全く同様の操作を行い、目的物(Pc21)2.87g(収率93.1%)を得た。
[ZnPc−{β−(2,5−Cl2)C6H3O}4,{β−(4−COOC2H5)C6H4O}4F8](Pc22と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例A−1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル4.00g(0.0082mol)、合成例A−5で得られた4,5−ビス(4−エトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル4.05g(0.0082mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.44g(0.0045mol)、ベンゾニトリル12.08gを仕込み、窒素流通下(10ml/min)、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、合成例B−3と全く同様の操作を行い、目的物(Pc22)7.42g(収率89.3%)を得た。
[CuPc−{β−(2,5−Cl2)C6H3O}4,{β−(4−COOC2H5)C6H4O}4F8](Pc23と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例A−1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル4.00g(0.0082mol)、合成例A−5で得られた4,5−ビス(4−エトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル4.05g(0.0082mol)、塩化銅(I)0.45g(0.0045mol)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル12.08gを仕込み、窒素流通下(10ml/min)、160℃で撹拌しながら4時間反応させた。反応終了後、合成例B−3と全く同様の操作を行い、目的物(Pc23)6.22g(収率74.8%)を得た。
[VOPc−{β−(2,5−Cl2)C6H3O}4,{β−(4−COOC2H5)C6H4O}4F8](Pc24と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例A−1で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル5.00g(0.0103mol)、合成例A−5で得られた4,5−ビス(4−エトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル5.06g(0.0103mol)、塩化バナジウム(III)0.89g(0.0057mol)、1,2,4−トリメチルベンゼン14.75g、ベンゾニトリル1.61gを仕込み、ミックスガス(窒素:酸素=93:7(vol%))バブリング下(2ml/min)、170℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、合成例B−3と全く同様の操作を行い、目的物(Pc24)6.51g(収率62.6%)を得た。
ここで、表2−1〜2−2に記載の「吸収極大波長」は、「600〜710nm」内にある吸収極大の波長を意味する。すなわち、この「600〜710nm」の範囲外に最大吸収波長を有していても、「600〜710nm」の範囲内にある吸収極大波長を、表2−1〜2−2に記載した。
合成例1の溶液に、Pc1を0.004875部加え均一に溶解させた。この色素含有ポリイミド溶液をガラス板に塗布し、150℃で3時間焼成した。ガラス板から剥がしてフタロシアニン色素含有ポリイミドフィルム(厚み22μm)を得た。このフィルムについて、上記の試験方法に従って耐光性及び耐熱性を評価した。結果を表3に示す。
なお、Pc1の構造を表1−1(式(6b))に示したが、これは、本発明の特定色素(それが有する共役系骨格がノニオン性であり、かつ600〜800nmの波長域に吸収極大波長を有し、その少なくとも1つの吸収極大波長が600〜710nmに存在する化合物)に該当する。
合成例1の溶液に、Pc2を0.004875部加え均一に溶解させた。この色素含有ポリイミド溶液をガラス板に塗布し、150℃で3時間焼成した。ガラス板から剥がしてフタロシアニン色素含有ポリイミドフィルム(厚み21μm)を得た。このフィルムについて、上述した試験方法に従って耐光性及び耐熱性を評価した。結果を表3に示す。
なお、Pc2の構造を表1−1(式(6b))に示したが、これは、本発明の特定色素(それが有する共役系骨格がノニオン性であり、かつ600〜800nmの波長域に吸収極大波長を有し、その少なくとも1つの吸収極大波長が600〜710nmに存在する化合物)に該当する。
合成例2のFPEK1部に、DMAc6部、Pc1を0.00325部加え均一に溶解させた。この色素含有FPEK溶液をガラス板に塗布し、150℃で3時間焼成した。ガラス板から剥がしてフタロシアニン色素含有FPEKフィルム(厚み19μm)を得た。このフィルムについて、上述した試験方法に従って耐光性及び耐熱性を評価した。結果を表3に示す。
合成例2のFPEK1部に、DMAc6部、Pc2を0.00325部加え均一に溶解させた。この色素含有FPEK溶液をガラス板に塗布し、150℃で3時間焼成した。ガラス板から剥がしてフタロシアニン色素含有FPEKフィルム(厚み20μm)を得た。このフィルムについて、上述した試験方法に従って耐光性及び耐熱性を評価した。結果を表3に示す。
実施例1において、Pc1:0.004875部の代わりに、シアニン系色素{1H−Benzindolium,3−butyl−2−[5−(3−butyl−1,3−dihydro−1,1−dimethyl−2H−benzindol−2−ylidene)−1,3−pentadien−1−yl]−1,1−dimethyl−tetrafluoroborate(1−)(HBFB、シアニン系色素、吸収極大波長680nm)}を0.0013部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、シアニン系色素含有ポリイミドフィルム(厚み21μm)を得た。このフィルムについて、上述した試験方法に従って耐光性及び耐熱性を評価した。結果を表3に示す。
なお、HBFBの構造を下記に示すが、これは、共役系骨格中にカチオンを有するため、本発明における共役系骨格がノニオン性である特定色素には該当しない。
実施例3において、Pc1:0.00325部の代わりに、HBFBを0.0009部用いたこと以外は、実施例3と同様にして、シアニン系色素含有FPEKフィルム(厚み18μm)を得た。このフィルムについて、上述した試験方法に従って耐光性及び耐熱性を評価した。結果を表3に示す。
実施例1において、Pc1:0.004875部の代わりに、スクアリリウム系色素{ 2−(8−Hydroxy−1,1,7,7−tetramethyl−1,2,3,5,6,7−hexahydropyrido[3,2,1−ij]quinolin−9−yl)−4−(8−hydroxy−1,1,7,7−tetramethyl−2,3,6,7−tetrahydro−1H−pyrido[3,2,1−ij]quinolinium−9(5H)−ylidene)−3−oxocyclobut−1−enolate(S2084、スクアリリウム系色素、吸収極大波長668nm)}を0.0010部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、スクアリリウム系色素含有ポリイミドフィルム(厚み20μm)を得た。このフィルムについて、上述した試験方法に従って耐光性及び耐熱性を評価した。結果を表3に示す。
なお、S2084の構造を下記に示すが、これは、共役系骨格中に双性イオンを有するため、本発明における共役系骨格がノニオン性である特定色素には該当しない。
実施例1において、色素として、Pc1に代えて表4に示す各色素を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、フタロシアニン色素含有ポリイミドフィルム(厚み22μm)を得た。このフィルムについて、上記の試験方法に従って耐光性及び耐熱性を評価した。結果を表4に示す。
なお、実施例9〜21で用いた色素(Pc3〜Pc15)の構造を、表1−1〜1−3(式(6b)、(7b)、(8b))に示したが、これらは、本発明の特定色素(それが有する共役系骨格がノニオン性であり、かつ600〜800nmの波長域に吸収極大波長を有し、その少なくとも1つの吸収極大波長が600〜710nmに存在する化合物)に該当する。
実施例1において、色素として、Pc1に代えて表5に示す各色素を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、フタロシアニン色素含有ポリイミドフィルム(厚み22μm)を得た。このフィルムについて、上記の試験方法に従って耐光性及び耐熱性を評価した。結果を表5に示す。
なお、実施例B−1〜B−9で用いた色素(Pc16〜Pc24)の構造を、表2−1〜2−2(式(9b)及び(10b))に示したが、これらは、本発明の特定色素(それが有する共役系骨格がノニオン性であり、かつ600〜800nmの波長域に吸収極大波長を有し、その少なくとも1つの吸収極大波長が600〜710nmに存在する化合物)に該当する。
実施例1で得られたフタロシアニン色素含有ポリイミドフィルムを幅60mm、長さ100mmの長方形にカッティングした。
この樹脂シートの両面に、蒸着基板温度150℃で、赤外線を反射する多層膜〔シリカ(SiO2:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70〜120nm )層とが交互に積層されてなるもの、積層数は片面20層ずつ両面に蒸着:計40層〕を蒸着により形成し、光選択透過フィルター(光学フィルター)を製造した。このフィルターについて、上述した試験方法に従って耐光性を評価した。結果を表6に示す。
実施例2で得られたフタロシアニン色素含有ポリイミドフィルムを幅60mm、長さ100mmの長方形にカッティングした。
この樹脂シートの両面に、蒸着基板温度150℃で、赤外線を反射する多層膜〔シリカ(SiO2:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70〜120nm )層とが交互に積層されてなるもの、積層数は片面20層ずつ両面に蒸着:計40層〕を蒸着により形成し、光選択透過フィルター(光学フィルター)を製造した。このフィルターについて、上述した試験方法に従って耐光性を評価した。結果を表6に示す。
実施例3で得られたフタロシアニン色素含有FPEKフィルムを幅60mm、長さ100mmの長方形にカッティングした。
この樹脂シートの両面に、蒸着基板温度150℃で、赤外線を反射する多層膜〔シリカ(SiO2:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70〜120nm )層とが交互に積層されてなるもの、積層数は片面20層ずつ両面に蒸着:計40層〕を蒸着により形成し、光選択透過フィルター(光学フィルター)を製造した。このフィルターについて、上述した試験方法に従って耐光性を評価した。結果を表6に示す。
実施例4で得られたフタロシアニン色素含有FPEKフィルムを幅60mm、長さ100mmの長方形にカッティングした。
この樹脂シートの両面に、蒸着基板温度150℃で、赤外線を反射する多層膜〔シリカ(SiO2:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70〜120nm )層とが交互に積層されてなるもの、積層数は片面20層ずつ両面に蒸着:計40層〕を蒸着により形成し、光選択透過フィルター(光学フィルター)を製造した。このフィルターについて、上述した試験方法に従って耐光性を評価した。結果を表6に示す。
比較例1で得られたシアニン系色素含有ポリイミドフィルムを幅60mm、長さ100mmの長方形にカッティングした。
この樹脂シートの両面に、蒸着基板温度150℃で、赤外線を反射する多層膜〔シリカ(SiO2:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70〜120nm )層とが交互に積層されてなるもの、積層数は片面20層ずつ両面に蒸着:計40層〕を蒸着により形成し、光選択透過フィルター(光学フィルター)を製造した。このフィルターについて、上述した試験方法に従って耐光性を評価した。結果を表6に示す。
比較例2で得られたシアニン系色素含有FPEKフィルムを幅60mm、長さ100mmの長方形にカッティングした。
この樹脂シートの両面に、蒸着基板温度150℃で、赤外線を反射する多層膜〔シリカ(SiO2:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70〜120nm )層とが交互に積層されてなるもの、積層数は片面20層ずつ両面に蒸着:計40層〕を蒸着により形成し、光選択透過フィルター(光学フィルター)を製造した。このフィルターについて、上述した試験方法に従って耐光性を評価した。結果を表6に示す。
比較例3で得られたスクアリリウム系色素含有ポリイミドフィルムを幅60mm、長さ100mmの長方形にカッティングした。
この樹脂シートの両面に、蒸着基板温度150℃で、赤外線を反射する多層膜〔シリカ(SiO2:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70〜120nm )層とが交互に積層されてなるもの、積層数は片面20層ずつ両面に蒸着:計40層〕を蒸着により形成し、光選択透過フィルター(光学フィルター)を製造した。このフィルターについて、上述した試験方法に従って耐光性を評価した。結果を表6に示す。
表3〜5は、樹脂シートについて、耐光性及び耐熱性試験結果をまとめたものである。
実施例1、実施例2、実施例9〜21、比較例1及び比較例3は、同じバインダー樹脂(樹脂成分)を用いているものの色素が異なる例であるが、このような相違の下、耐光性及び耐熱性を対比すると、実施例1、2及び9〜21に比べて、比較例1及び3では光照射又は加熱の前後における透過率の差が著しく大きい。また、実施例3、実施例4及び比較例2は、同じバインダー樹脂(樹脂成分)を用いているものの色素が異なり、同様にこれらの耐光性及び耐熱性を対比すると、実施例3及び4に比べ、比較例2では光照射又は加熱の前後における透過率の差が著しく大きい。
また表6は、光選択透過フィルターについて、耐光性試験結果をまとめたものである。実施例5〜8及び比較例4〜6においても、樹脂シートと同様の傾向が見られた。
実施例5〜8で得られた光選択透過フィルターについて、入射角依存性を評価した。
Shimadzu UV−3100(島津製作所社製)を用いて200〜1100nmにおける透過率を測定した。透過率は、図3に示すように、入射光に対して垂直になるように光選択透過フィルターを設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを0°スペクトルともいう。光選択透過フィルターの厚み方向から光が入射するようにして測定される。)と、入射光に対して25°光選択透過フィルターを傾けて設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを25°スペクトルともいう。光選択透過フィルターの厚み方向に対して25°傾いた方向から光が入射するようにして測定される。)の夫々について測定した。
2:光選択透過フィルター
3:センサー
4:光源
5:光選択透過フィルター
6:受光部
Claims (4)
- 樹脂シートを含む光選択透過フィルターであって、
該樹脂シートは、色素及び樹脂成分を含む樹脂層を有し、
該色素は、それが有する共役系骨格がノニオン性であり、かつ600〜800nmの波長域に吸収極大波長を有し、その少なくとも1つの吸収極大波長が600〜710nmに存在する化合物である
ことを特徴とする光選択透過フィルター。 - 前記光選択透過フィルターは、更に、反射膜を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の光選択透過フィルター。 - 請求項1又は2に記載の光選択透過フィルターに用いられる
ことを特徴とする樹脂シート。 - 請求項1又は2に記載の光選択透過フィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有する
ことを特徴とする固体撮像素子。
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