本発明は、スイッチング素子を有したパワーモジュールと平滑コンデンサとを備え、直流と交流との間で電力を変換するインバータ装置に関する。
近年、省エネルギや環境負荷軽減等の観点から、回転電機を駆動力源として備えたハイブリッド車両や電動車両が注目を集めている。このような車両においては、回転電機が駆動力源として機能する際に電力を供給すると共に、当該回転電機が発電機として機能する際に発電された電力を蓄電するバッテリなどの直流電源が備えられる。一方、回転電機としては、交流の回転電機が用いられる場合が多いため、このような車両には、直流と交流との間で電力を変換するインバータ回路を備えたインバータ装置が搭載される。このようなインバータ装置は、電力制御装置などにおいても用いられるが、特に車両に搭載される場合には、重量や搭載スペースの制約などから小型化が求められる。また、インバータ回路には、パワースイッチング素子を有したパワーモジュールなどの発熱量の大きい部品が用いられるため、インバータ装置を冷却する冷却機構も必要となる。このため、インバータ回路を、冷却フィンなどが形成されたケースなどに収納して一体化すると共に、インバータ装置を小型軽量化する試みがなされている。
例えば、特開2009−106046号公報(特許文献1)には、そのように一体化されたインバータ装置の一例が開示されている。このインバータ装置では、パワーモジュールが、放熱部を有したケースの内側に、平面上に配置される。そして、パワーモジュールに電気的に接続された平滑コンデンサは、パワーモジュールが配置された平面よりも一段低い平面上にパワーモジュールに隣接して配置される(第7〜8段落、図1等)。高耐圧や大容量が求められる平滑コンデンサは、その体格が大きくなる傾向がある。特許文献1では、平滑コンデンサの高さに対応させて、放熱部とパワーモジュールとが配置されるので、インバータ装置の全体の高さを抑制することができている。しかし、このケースに対しては、パワーモジュール及び平滑コンデンサの双方がボルト等でケースに固定される必要がある。例えば特許文献1の図1では、パワーモジュールはボルトでケースに固定されているが、平滑コンデンサは、パワーモジュールから水平方向に延在する電極に対してボルトで締結されているにすぎない。平滑コンデンサをケースに固定するための構造を別途設けると、その固定構造のためのスペースが平滑コンデンサ側、及びケース側の双方に必要となり、インバータ装置の小型化が損なわれる可能性がある。
そこで、スイッチング素子を有したパワーモジュールと平滑コンデンサとを限られた領域内に適切に固定することが可能なインバータ装置の実現が望まれる。
上記課題に鑑みた本発明に係るインバータ装置の特徴構成は、直流電源の正極に接続される正極端子と直流電源の負極に接続される負極端子とを有し、前記正極端子に接続される少なくとも1つのスイッチング素子と前記負極端子に接続される少なくとも1つのスイッチング素子とが直列接続されてなるアームが少なくとも1つ形成されたパワーモジュールと、直流電源の正極と直流電源の負極との間に接続される平滑コンデンサとを備え、直流と交流との間で電力を変換するインバータ装置であって、
直流電源の正極に接続される正極電極パターン及び直流電源の負極に接続される負極電極パターンが設けられ、前記平滑コンデンサの正極側端子が前記正極電極パターンに電気的に接続され、負極側端子が前記負極電極パターンに電気的に接続されると共に、前記平滑コンデンサが固定される板状の直流バス基板と、
複数相の交流の各相に対応する前記アームに対応して複数個備えられる前記パワーモジュールと前記直流バス基板との相対位置関係を固定するための固定部材と、を備え、
前記直流バス基板は、前記正極電極パターンと電気的に接続されると共に前記パワーモジュールの前記正極端子と電気的に接続される接続用正極端子と、前記負極電極パターンと電気的に接続されると共に前記パワーモジュールの前記負極端子と電気的に接続される接続用負極端子と、を有し、
前記直流バス基板の前記接続用正極端子と前記パワーモジュールの前記正極端子とが締結部材によって前記固定部材に共締めされ、前記直流バス基板の前記接続用負極端子と前記パワーモジュールの前記負極端子とが締結部材によって前記固定部材に共締めされて、前記固定部材に対して前記直流バス基板及び前記パワーモジュールが固定されている点にある。
この特徴構成によれば、平滑コンデンサが実装された直流バス基板の接続用正極端子とパワーモジュールの正極端子とが締結部材によって固定部材に共締めされる。また、直流バス基板の接続用負極端子とパワーモジュールの負極端子とが締結部材によって固定部材に共締めされる。これにより、平滑コンデンサが実装された直流バス基板及びパワーモジュールが、固定部材に対して固定される。つまり、平滑コンデンサを別途固定することなく、同一の締結部材を用いて、平滑コンデンサ(直流バス基板)とパワーモジュールとが固定部材に固定される。直流バス基板は、直流電源の正極及び負極と、パワーモジュールとを接続するバスバーの役割も担うので、比較的狭い領域内にインバータの回路を構成することができる。このように本特徴構成によれば、スイッチング素子を有したパワーモジュールと平滑コンデンサとを限られた領域内に適切に固定することが可能なインバータ装置を実現することができる。
ここで、本発明に係るインバータ装置は、前記パワーモジュールの前記正極端子及び前記負極端子が、前記パワーモジュールの一方側の端部に突出した一対の直流電極端子対として設けられていると好適である。この構成によれば、各パワーモジュールの当該一方側の端部に沿って直流バス基板との接続部を配置することができるので、直流バス基板の接続用正極端子と接続用負極端子とを並べて配置することが可能となり、直流バス基板の構成を簡略化することが容易になる。
また、本発明に係るインバータ装置は、前記直流バス基板が、前記正極電極パターン及び前記負極電極パターンと電気的に接続される直流電極パターン接続端子対を備え、前記固定部材が、直流電源の正極及び負極と接続される直流電源接続端子対と、当該直流電源端子対と電気的に接続される直流バス基板接続端子対とを備え、前記直流バス基板の前記直流電極パターン接続端子対が、前記直流バス基板接続端子対に締結部材によって締結されていると好適である。一般的に、直流電源はインバータ装置とは別に設けられ、直流電力はインバータ装置の外部から供給される。一方、直流バス基板やパワーモジュールは、絶縁性や冷却性を考慮すると1つにパッケージングされていることが好ましい。固定部材が、直流電源接続端子対と直流バス基板接続端子対とを備え、両端子対が電気的に接続されることにより、インバータ装置の内部と外部とを良好に分離しつつ、直流電源とインバータ装置との間に必要な電気的接続を確保することができる。
また、本発明に係るインバータ装置の前記直流バス基板は、基板を構成する絶縁層の一方の面である第1基板面に前記正極電極パターン及び前記負極電極パターンの一方である第1電極パターンが形成され、前記絶縁層の他方の面である第2基板面に前記正極電極パターン及び前記負極電極パターンの他方である第2電極パターンが形成され、前記第1基板面が他の部材に設けられた端子に接触した状態で前記直流バス基板の各端子が前記締結部材により締結され、前記第2電極パターンに電気的に接続される端子が、前記第1基板面に前記第1電極パターンから分離して形成された接続端子面と、前記締結部材が貫通する締結部材貫通孔とは別に前記絶縁層を貫通する導電用貫通孔とを備えており、前記導電用貫通孔の内壁に導電材料が設けられて、当該導電材料により前記第2電極パターンと前記接続端子面とが電気的に接続されていると好適である。
多くの場合、締結部材には鉄など、導電性のある金属製のボルトなどが用いられる。このため、直流バス基板の第1基板面と第2基板面との間に電流が流れる際に、締結部材にも電流が流れて当該締結部材が発熱し、パワーモジュールの端子(直流電極端子対)及びその周辺が高温になる可能性がある。上述したように、内壁に導電材料が設けられた導電用貫通孔が、締結部材貫通孔とは別に設けられると、電流の多くは、よりインピーダンスの低い導電用貫通孔を介して直流バス基板の第1基板面と第2基板面との間を流れるようになる。その結果、締結部材に流れる電流が抑制され、当該締結部材の発熱を抑制することができる。また、このように導電用貫通孔を設けると、締結部材として非導電性の部材(樹脂製など)を用いることも可能であるから、部品選定の自由度も向上する。樹脂製の部材は一般的に鉄製の部材よりも軽量であり、インバータ装置の軽量化にも貢献する。
また、本発明に係るインバータ装置は、前記直流バス基板の基板面に直交する方向から見て、前記平滑コンデンサを挟んだ両側に前記パワーモジュールが配置されていると好適である。大電流が流れるパワーモジュールは、金属製のヒートシンクなどの冷却機構を有して構成されていることが多く、比較的重量も大きい。平滑コンデンサを挟んだ両側にパワーモジュールが配置されると、固定部材への固定の際に、固定部材が片持ち構造とならず両持ち構造となるので、固定部材に作用する応力が軽減される。
また、本発明に係るインバータ装置は、複数相の交流の各相に対応するアームに対応して複数個備えられる前記パワーモジュールが、前記直流バス基板の1つの端面に沿って1列に配置され、前記平滑コンデンサは、複数のコンデンサ素子の並列接続によって構成され、各コンデンサ素子が、各パワーモジュールに対応する数及び対応する位置関係で配置されていると好適である。平滑コンデンサが複数のコンデンサ素子に分割して構成されることにより、平滑コンデンサとして必要な容量に対して各コンデンサ素子の容量が小さくなり、各コンデンサ素子の大きさを小さく抑えることができる。従って、平滑コンデンサのレイアウトの自由度が増し、比較的小さいスペースに平滑コンデンサを収容することが可能となる。また、各パワーモジュールの近傍に近接して、均等に平滑コンデンサが分散配置されることにより、電源ラインのインダクタンスが軽減され、低損失で高い平滑効果を得ることができる。また、サージ電圧等も低減される。
また、本発明に係るインバータ装置は、nを自然数とするn相の交流と直流との間で電力を変換するインバータ回路を2組有し、当該2組のインバータ回路が、前記直流バス基板の基板面に直交する方向に見て、前記直流バス基板を挟んだ両側に各インバータ回路を構成する前記パワーモジュールを配置して構成され、前記平滑コンデンサは、複数のコンデンサ素子の並列接続によって構成され、各コンデンサ素子が、各パワーモジュールに対応する数及び対応する位置関係で配置されているものとすることができる。この際、当該インバータ装置は、前記直流バス基板の基板面に直交する方向に見て、前記パワーモジュール及び前記直流バス基板を覆うように配置され、前記2組のインバータ回路を制御する制御基板と、前記直流バス基板、前記パワーモジュール、前記固定部材を収容すると共に、前記制御基板を当該制御基板の中央部において支持固定する少なくとも(n−1)本の支柱を有するインバータケースとを備えて構成されると好適である。さらに、当該インバータ装置の前記直流バス基板は、前記支柱が貫通する支柱貫通孔を有し、各支柱貫通孔が、直流バス基板の1つの端面に沿って1列に配置されたn相各相のアームを構成する各パワーモジュールに対応して配置された各コンデンサ素子の相間に設けられていると好適である。
直流バス基板の基板面に直交する方向に見て、パワーモジュール及び直流バス基板を覆うように配置される制御基板は、比較的大きな面積を有した基板となる。このため、反りや振動などが生じる可能性があるが、制御基板の中央部において当該制御基板を支持固定する支柱がインバータケースに設けられることによって、制御基板の反りや振動などが抑制される。制御基板の中央部には、制御基板及び直流バス基板の基板面に直交する方向に見て重複する状態で、直流バス基板が配置されている。このため、直流バス基板には制御基板を固定支持する支柱が貫通するための支柱貫通孔が形成される。この支柱貫通孔は、各相のアームを構成するパワーモジュールに対応して分散配置された各コンデンサ素子の相間に設けられている。従って、平滑コンデンサとして機能するコンデンサ素子のレイアウトの自由度を損なうことなく、各パワーモジュールの近傍に近接して、均等にコンデンサ素子を分散配置させることが可能であると共に、制御基板の反りや振動を良好に抑制することができる。
インバータボックスの分解斜視図
インバータボックスの外観斜視図
回転電機駆動装置のシステム構成を示す模式的回路図
インバータボックスの構成を示す模式的回路図
分解斜視図の部分拡大図
固定部材の斜視図
直流バス基板の部品実装面の電極パターン図
直流バス基板のはんだ面の電極パターン図
直流バス基板の接続端子面及び導電用貫通孔近傍の部分断面図
以下、ハイブリッド車両や電動車両等に用いられる回転電機駆動装置に搭載されるインバータ装置に本発明を適用する場合を例として、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態において、インバータ装置1は、図1及び図2に示すように、回路基板などを内包したインバータボックス1Aの形態で提供される。インバータボックス1Aは、2つのケース(インバータケース)を有して構成されている。一方のケースは、図3及び図4に示すインバータ回路10を構成する各種部品や、インバータ回路10を制御する制御基板8が組みつけられるベースケース1Bである。他方のケースは、ベースケース1Bと当接して、ベースケース1Bに組みつけられたインバータ回路10や制御基板8を包み込むカバーケース1Cである。インバータケースとしてのベースケース1B及びカバーケース1Cにより、回路基板などが内包されてインバータボックス1A(インバータ装置1)が構成される。
本実施形態の車両は、例えば2モータスプリット方式のハイブリッド車両や、インホイールモータ方式の電動車両(又はハイブリッド車両)であり、図3に示すように、2つの回転電機MG(MG1,MG2)が搭載されている。例えば、2モータスプリット方式のハイブリッド車両は、駆動力源として不図示の内燃機関と一対の回転電機とを備える。このハイブリッド車両の駆動装置は、内燃機関の出力を、一方の回転電機の側と、車輪及び他方の回転電機の側とに分配する動力分配用の差動歯車装置(不図示)を備えて構成されている。また、例えばインホイールモータ方式の電動車両(ハイブリッド車両)は、左右一対の駆動輪の中に駆動力源となる回転電機を備えて、或いは駆動輪に直結された動力伝達機構に駆動力源となる回転電機を備えて構成されている。このため、本実施形態において、インバータボックス1A(インバータ装置1)は、2つの回転電機MG(MG1,MG2)を駆動するための装置として構成されている。尚、これらの回転電機MG(MG1,MG2)は、必要に応じて電動機としても発電機としても機能する。つまり、これらの回転電機MG(MG1,MG2)は、力行作動及び回生作動の双方が可能である。以下、特に2つを区別する必要がない場合は、単に回転電機MGと称して説明する。
図3は、回転電機駆動装置のシステム構成を示している。図3に示すように、回転電機駆動装置には、一方の回転電機MG(第1回転電機MG1)を駆動制御する第1インバータ回路10Aと、他方の回転電機MG(第2回転電機MG2)を駆動制御する第2インバータ回路10Bとの2つのインバータ回路10が備えられている。また、回転電機駆動装置には、インバータ回路10の直流側の電圧であるシステム電圧Vdcを平滑化する平滑コンデンサ40が備えられている。インバータ回路10(10A,10B)及び平滑コンデンサ40は、インバータボックス1Aに配接されている。
ところで、図3に例示するように、回転電機駆動装置には、2つのインバータ回路10(10A,10B)に共通した1つのコンバータ回路18が備えられる場合がある。このコンバータ回路18は、2つのインバータ回路10(10A,10B)に共通のシステム電圧Vdcとバッテリ11の電圧との間で直流電力(直流電圧)を変換する。この場合、システム電圧Vdcは、コンバータ回路18の出力電圧(昇圧側出力電圧)となる。昇圧率が“1”の場合には、コンバータ回路18の出力電圧は、バッテリ11の端子間電圧にほぼ一致する。図3に例示する構成においては、バッテリ11及びコンバータ回路18が、インバータ装置1の「直流電源」として機能する。一方、コンバータ回路18が備えられない場合には、バッテリ11が「直流電源」として機能する。平滑コンデンサ40は、コンバータ回路18の有無に拘わらず、このように定義される「直流電源」の正極Pと負極Nとの間に接続され、「直流電源」の正負両極間電圧(システム電圧Vdc)を平滑化する。
尚、バッテリ11は、2つのインバータ回路10(10A,10B)を介して回転電機MG(MG1,MG2)に電力を供給可能であると共に、回転電機MG(MG1,MG2)が発電して得られた電力を蓄電可能である。このようなバッテリ11としては、例えば、ニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池等の各種二次電池、キャパシタ、或いはこれらの組合せ等が用いられる。
インバータ回路10(10A,10B)は、システム電圧Vdcを有する直流電力を複数相(nを自然数としてn相、ここでは3相)の交流電力に変換して回転電機MG(MG1,MG2)に供給すると共に、回転電機MG(MG1,MG2)が発電した交流電力を直流電力に変換して直流電源に供給する回路である。以下、特に2つの回路を区別する必要がない場合は、単にインバータ回路10と称して説明する。インバータ回路10は、複数のスイッチング素子を有して構成される。スイッチング素子には、IGBT(insulated gate bipolar transistor)やパワーMOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)を適用すると好適である。図3に示すように、本実施形態では、スイッチング素子としてIGBT30が用いられる。
例えば直流と3相交流との間で電力変換するインバータ回路10は、よく知られているように3相それぞれに対応する3アームのブリッジ回路により構成される。つまり、図3及び図4に示すように、インバータ回路10の直流正極側(直流電源の正極P側)と直流負極側(直流電源の負極N側)との間に2つのIGBT30が直列に接続されて1つのアーム10Lが構成される。そして、この直列回路(1つのアーム10L)が3回線(3相:10U,10V,10W)並列接続される。つまり、回転電機MGのU相、V相、W相に対応するステータコイルのそれぞれに一組の直列回路(アーム10L)が対応したブリッジ回路が構成される。各相の上段側のIGBT30のコレクタは直流電源の正極Pに接続され、エミッタは各相の下段側のIGBT30のコレクタに接続される。また、各相の下段側のIGBT30のエミッタは、直流電源の負極N(例えば、グラウンド)に接続される。対となる各相のIGBT30による直列回路(アーム10L)の中間点、つまり、IGBT30の接続点は、回転電機MGのステータコイルにそれぞれ接続される。
尚、IGBT30には、それぞれフリーホイールダイオード(回生ダイオード)が並列に接続される。フリーホイールダイオードは、カソード端子がIGBT30のコレクタ端子に接続され、アノード端子がIGBT30のエミッタ端子に接続される形で、IGBT30に対して並列に接続される。
本実施形態では、図4に示すように、フリーホイールダイオードを伴ったIGBT30が直列に接続された1つのアーム10Lがパワーモジュール3として形成されている。図4及び図5に示すように、パワーモジュール3は、直流電源の正極Pに接続される正極端子3Pと直流電源の負極Nに接続される負極端子3Nとを有して形成されている。即ち、パワーモジュール3は、正極端子3Pに接続される少なくとも1つのIGBT30と、負極端子3Nに接続される少なくとも1つのIGBT30とが直列接続されてなるアーム10Lが少なくとも1つ形成されて構成されている。このパワーモジュール3が3つ並列に接続されることによって、直流と3相交流との間で電力変換するインバータ回路10が構成される。尚、図5に示すように、正極端子3P及び負極端子3Nは、パワーモジュール3の一方側の端部35に突出した一対の直流電極端子対3Tとして設けられている。
図3に示すように、インバータ回路10は、制御装置80により制御される。制御装置80は、ECU(electronic control unit)やドライバ回路を有して構成されている。また、制御装置80を構成する一部又は全ての回路は、制御基板8(図1参照)に形成されている。制御装置80に搭載されるECUは、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核部材として構築されている。本実施形態では、ECUは、ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、インバータ回路10を介して回転電機MGを制御する。ECUは、電流フィードバック制御のために種々の機能部を有して構成されており、各機能部は、マイクロコンピュータ等のハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働により実現される。
インバータ回路10を構成する各IGBT30のゲートは、ドライバ回路を介してECUに接続されており、それぞれ個別にスイッチング制御される。一般的に、回転電機MGを駆動するためのパワー系の電気回路と、マイクロコンピュータなどを中核とするECUなどの電子回路とは、動作電圧(回路の電源電圧)が大きく異なる。このため、相対的に低電圧のECUにより生成されたIGBT30の制御信号は、ドライバ回路を介して高電圧のゲート駆動信号Sとしてインバータ回路10に供給される。尚、回転電機駆動装置にコンバータ回路18が搭載されている場合には、同様に制御装置80からドライバ回路を介して高電圧のコンバータ用ゲート駆動信号SCがコンバータ回路18に供給される。
回転電機MGの各相のステータコイルを流れる実電流は電流センサ12により検出され、制御装置80はその検出結果を取得する。図3には、バスバーなどに近接配置されて非接触で電流を検出する非接触型の電流センサ12に3相各相の実電流が検出される形態を模式的に示している。電流センサ12は、後述する第3端子台93(図1及び図4参照)に固定され、第3端子台93の内部を通るバスバーを流れる電流を検出する。図1に示すように、第3端子台93には、電流検出結果出力コネクタ9Sが設けられており、制御基板8の電流検出結果入力コネクタ82と不図示のケーブル等で接続される。尚、本実施形態では、3相全ての電流を検出する構成を示しているが、3相は平衡状態にあり、電流の瞬時値の総和は零であるので2相のみの電流を電流センサ12で検出し、制御装置80において残りの1相の電流を演算により求めてもよい。
また、回転電機MGのロータの各時点での磁極位置は、回転センサ13により検出され、制御装置80はその検出結果を取得する。回転センサ13は、例えばレゾルバ等により構成される。ここで、磁極位置は、電気角上でのロータの回転角度を表している。回転センサ13は、図3に示すように回転電機MGの近傍に設置されている。従って、回転センサ13による検出結果は、不図示のケーブル等を介して制御装置80へ伝達される。回転センサ13の検出結果を利用するECUが制御基板8に構成されている場合には、インバータボックス1Aの外部との間で信号の授受を行うために制御基板8に設置された外部コネクタ83を介して回転センサ13の検出結果が制御装置80に伝達される。図示しない車両制御装置等の他の制御装置等からの要求信号として制御装置80に提供される回転電機MGの目標トルクTM(TM1,TM2)も、外部コネクタ83を介して伝達される。
図1に示すように、制御装置80を構成する制御基板8には、ゲート駆動信号Sを含めた信号をパワーモジュール3と授受するための信号伝達用スルーホール81(信号伝達用端子受け部)が形成されている。ベースケース1Bに対してパワーモジュール3及び制御基板8を組み付けた状態において、信号伝達用スルーホール81にはパワーモジュール3の信号伝達用ピン31(信号伝達用端子)が貫通する。ここで、信号伝達用ピン31を信号伝達用スルーホール81に対してはんだ付けすることによって、制御基板8と各パワーモジュール3との間での信号の授受が可能となる。授受される信号は、上述したゲート駆動信号Sの他、パワーモジュール3から制御基板8への故障診断信号、温度検出信号などが含まれる。
インバータボックス1Aは、図1の分解斜視図に示すように、ベースケース1Bに、パワーモジュール3、平滑コンデンサ40が実装された直流バス基板5、第1端子台7(固定部材)を含む端子台(第2端子台92、第3端子台93)、制御基板8を組み付け、これらを内包するようにカバーケース1Cをベースケース1Bに組みつけて構成される。直流バス基板5及び第1端子台7(固定部材)は、2つのインバータ回路10(10A,10B)に共通する部材である。第2端子台92及び第3端子台93は、第1回転電機MG1(第1インバータ回路10A)及び第2回転電機MG2(第2インバータ回路10B)のそれぞれに対して設けられている。つまり、第1回転電機MG1に対しては、第1回転電機用第2端子台92A及び第1回転電機用第3端子台93Aが備えられ、第2回転電機MG2に対しては、第2回転電機用第2端子台92B及び第2回転電機用第3端子台93Bが備えられる。
上述したように、第3端子台93には、電流センサ12が固定されている。第1回転電機用第3端子台93Aにおいて検出された電流の検出結果は、電流検出結果出力コネクタ9Sと制御基板8の第1回転電機用電流検出結果入力コネクタ82Aとを結ぶ不図示のケーブル等を介して制御装置80に伝達される。同様に、第2回転電機用第3端子台93Bにおいて検出された電流の検出結果は、電流検出結果出力コネクタ9Sと制御基板8の第2回転電機用電流検出結果入力コネクタ82Bとを結ぶ不図示のケーブル等を介して制御装置80に伝達される。
図5に示すように、第1端子台7には、直流バス基板5に形成された締結部材貫通孔57と、パワーモジュール3の直流電極端子対3Tに設けられた貫通孔とを貫通した締結部材97(9)と螺合するネジ孔71が形成されている。また、ベースケース1Bには、第1端子台7に設けられた貫通孔72を貫通した締結部材95(9)と螺合するネジ孔17aが形成されている。これにより、直流バス基板5とパワーモジュール3とは、共通の締結部材9によって第1端子台7に共締めされると共に、第1端子台7がベースケース1Bに固定される。第1端子台7は、複数相の交流の各相に対応するアーム10Lに対応して複数個備えられるパワーモジュール3と直流バス基板5との相対位置関係を固定する固定部材として機能する。
尚、直流バス基板5の第1基板面51には、パワーモジュール3の直流電極端子対3Tに接触して導通する端子対(図7に基づいて後述する“55P”及び“55N”の対)の他に、直流電源に接続される直流電極パターン接続端子対56T(図5及び図7参照)が形成されている。この直流電極パターン接続端子対56Tは、図1や図5とは別方向からの斜視図である図6に示すように第1端子台7に形成された直流バス基板接続端子対76Tに接続される。つまり、直流バス基板5は、直流バス基板5の直流電極パターン接続端子対56Tと、第1端子台7の直流バス基板接続端子対76Tとが接触した状態で、図5に示すように締結部材96(9)によってベースケース1Bに締結される。図6に示すように、第1端子台7は、直流バス基板接続端子対76Tと電気的に接続される直流電源接続端子対75Tを備えている。直流電源接続端子対75Tは、インバータボックス1Aの外部に設置されるバッテリ11などの直流電源の正極P及び負極Nと接続される端子である。図2に示すように、直流電源接続端子対75Tは、ベースケース1Bにカバーケース1Cが組み付けられた状態においても、インバータボックス1Aの外部に配置されており、直流電源と容易に接続することができる。
図7〜図9に示すように、直流バス基板5には、基板50を構成する絶縁層53の一方の面である第1基板面51に正極電極パターン5P及び負極電極パターン5Nの一方である第1電極パターン51Eが形成され、絶縁層53の他方の面である第2基板面52に正極電極パターン5P及び負極電極パターン5Nの他方である第2電極パターン52Eが形成される。図7〜図9において図示した例では、第1基板面51に第1電極パターン51Eとして負極電極パターン5Nが形成され、第2基板面52に第2電極パターン52Eとして正極電極パターン5Pが形成されている。それぞれの基板面に異なる極性の電極パターンが形成されるので、直流電流が流れる向きがそれぞれの基板面において逆方向となる電極パターンが構成される。これにより、電磁誘導が相殺され、相互インダクタンスも増加するので、サージ電圧が抑制され、損失も低減される。
また、大きな電流が流れる正極電極パターン5P及び負極電極パターン5Nは、通常のプリント基板における電極層よりも厚く、例えば、300〜600[μm]程度の厚みで形成されると好適である。尚、図7及び図8に示す電極パターン図は、共に同一方向から見たものであり、一方は正面図であり他方は透過図である。具体的には、図8は第2基板面52(後述するはんだ面)の側から直流バス基板5を直接見た図(第2基板面52の正面図)であり、図7は第2基板面52の側から直流バス基板5を透かして第1基板面51を見た図(第1基板面51の透過図)である。
図7に示すように、直流バス基板5の第1基板面51に、直流バス基板5の各端子、具体的には接続用正極端子55P、接続用負極端子55N、直流電極パターン接続端子対56Tが形成される。そして、直流バス基板5は、第1基板面51が、パワーモジュール3や第1端子台7など、他の部材に設けられた端子に接触した状態で締結部材9により第1端子台7に固定される。換言すれば、直流バス基板5は、第1基板面51に設けられた各端子が、他の部材に設けられた端子に接触した状態で、第1端子台7を介して締結部材9によりベースケース1Bに締結される。
他の部材に設けられた端子と接触する面は第1基板面51であるから、第2基板面52に第2電極パターン52Eとして形成される正極電極パターン5Pは、第1基板面51にも部分的に形成される必要がある。つまり、第1基板面51には、第2電極パターン52E(正極電極パターン5P)に電気的に接続される端子(接続用正極端子55P)が形成される。この端子(接続用正極端子55P)は、図7及び図9に示すように、第1基板面51において第1電極パターン51E(負極電極パターン5N)から分離して形成された接続端子面5Cと、絶縁層53を貫通する導電用貫通孔5Hとを備えて構成されている。導電用貫通孔5Hは、接続用正極端子55Pにおいて締結部材9が貫通する締結部材貫通孔57とは別に形成されている。また、導電用貫通孔5Hは、その内壁に導電材料Eが設けられており、この導電材料Eにより第2電極パターン52E(正極電極パターン5P)と接続端子面5Cとが電気的に接続される。尚、図9は、直流バス基板5がパワーモジュール3と共に締結部材9(97)によって第1端子台7に固定されている状態における図7のIX−IX断面を示している。
一般的に、接続用正極端子55P、接続用負極端子55N、直流電極パターン接続端子対56T以外の電極は、基板表面にレジスト等を塗布することによって絶縁される。しかし、導電用貫通孔5Hに対しては、絶縁処理を施さないことによって後述するフロー工程の際に、導電用貫通孔5Hをはんだで埋めることができる。導電用貫通孔5Hがはんだで満たされることによって導通断面積が大きくなり、第1基板面51と第2基板面52との間のインピーダンスを低下させることが可能となる。
多くの場合、締結部材9には鉄など、導電性のある金属製のボルトなどが用いられる。このため、直流バス基板5の第1基板面51と第2基板面52との間に電流が流れる際に、締結部材9にも電流が流れて当該締結部材9が発熱し、パワーモジュール3の端子(直流電極端子対3T)及びその周辺が高温になる可能性がある。上述したように、内壁に導電材料Eが設けられた導電用貫通孔5Hが、締結部材貫通孔57とは別に設けられると、電流の多くは、よりインピーダンスの低い導電用貫通孔5Hを介して直流バス基板5の第1基板面51と第2基板面52との間を流れるようになる。その結果、締結部材9に流れる電流が抑制され、当該締結部材9の発熱を抑制することができる。また、このように導電用貫通孔5Hを設けると、締結部材9として非導電性の部材(樹脂製など)を用いることも可能であるから、部品選定の自由度も向上する。樹脂製の部材は一般的に鉄製の部材よりも軽量であり、インバータボックス1Aの軽量化にも貢献する。
尚、締結部材貫通孔57は、その内壁に めっき等によって導電材料Eが設けられていても良いし、導電材料Eが設けられていなくてもよい。図9に例示した形態では、締結部材貫通孔57の内壁には導電材料Eが設けられていない形態を示している。また、図7〜図9には、第1基板面51に第1電極パターン51Eとして負極電極パターン5Nが形成され、第2基板面52に第2電極パターン52Eとして正極電極パターン5Pが形成されている例を示したが、第1電極パターン51Eとして正極電極パターン5Pが形成され、第2電極パターン52Eとして負極電極パターン5Nが形成される形態とすることも可能である。
ところで、平滑コンデンサ40は、図1、図4、図5等に示すように、複数のコンデンサ素子4の並列接続によって構成されている。各コンデンサ素子4は、各パワーモジュール3に対応する数及び対応する位置関係で分散配置されている。図1に示すように、パワーモジュール3は、直流バス基板5の基板面に直交する方向から見て、平滑コンデンサ40(コンデンサ素子群)を挟んだ両側に配置されている。具体的には、複数相の交流の各相に対応するアーム10Lに対応して複数個備えられるパワーモジュール3が、直流バス基板5の1つの端面5Lに沿って1列に配置されている。本実施形態では、2つのインバータ回路10(10A,10B)が構成されるので、互いに反対の2つの端面5Lに沿って、それぞれ1列ずつパワーモジュール3が配置されている。各コンデンサ素子4は、各パワーモジュール3に対応する個数、例えば各パワーモジュール3に対して1つ又は複数個、備えられている。つまり、パワーモジュール3と同じ個数、又は自然数倍の個数のコンデンサ素子4が備えられている。また、各コンデンサ素子4は、各パワーモジュール3に対応する位置関係、例えば各パワーモジュール3の近傍に配置されている。
具体的には、一対の接続用正極端子55P及び接続用負極端子55Nであるパワーモジュール接続用端子対55Tにおいて、コンデンサ素子4は、当該コンデンサ素子4と接続用正極端子55Pとの距離、及び当該コンデンサ素子4と接続用負極端子55Nとの距離とが均等(ほぼ同等)となるような配接距離(コンデンサ配接距離)を有して配置され、且つ、全てのパワーモジュール3についてのコンデンサ配接距離が均等(ほぼ同等)となるように分散配置される。各パワーモジュール3に対して(各パワーモジュール接続用端子対55Tに対して)複数のコンデンサ素子4が割り当てられる場合には、接続用正極端子55Pとの距離及び接続用負極端子55Nとの距離は、それぞれ平均値とすると好適である。このようにコンデンサ素子4を配置すると、結果的に、各パワーモジュール3の近傍にコンデンサ素子4が配置されることとなる。その結果、各パワーモジュール3(各アーム10L)の直流電源に対するインピーダンス(特にインダクタンス成分)が小さくなり、IGBT30のスイッチングによるサージ電圧を良好に抑制することができる。
尚、平滑コンデンサ40には、回転電機駆動装置のシャットダウン時に残存電荷を放電させるために、平滑コンデンサ40に並列に放電抵抗R(図4参照)が設けられることが多い。直流バス基板5には、この放電抵抗Rも実装することが可能である。放電抵抗Rの配置場所や固定機構をインバータボックス1Aの他の場所に設ける必要がなく、小型化が実現できる。直流バス基板5には、上述したように、外部の直流電源と電気的に接続される直流電源接続端子対75Tと導通する直流バス基板接続端子対76Tと導通する直流電極パターン接続端子対56Tが形成されている。直流電極パターン接続端子対56の近傍、例えば当該端子対に隣接して放電抵抗Rが配置されると好適である。放電抵抗Rも、電流容量が小さく、より小型の複数の抵抗素子(不図示)の並列接続によって構成することが可能である。
直流バス基板5の第1基板面51は、これら複数のコンデンサ素子4や抵抗素子が搭載される部品面である。図7及び図8に示す例では、コンデンサ素子4のみが搭載される形態を示している。例えば、コンデンサ素子4は、電界コンデンサであり、本実施形態では、ラジアルタイプのディスクリート部品である。この場合、コンデンサ素子4は、部品面である第1基板面51に搭載されるが、コンデンサ素子4の端子として機能するリード線は、直流バス基板5に形成されたスルーホールを貫通して第2基板面52の側へ延伸する。そして、第2基板面52においてコンデンサ素子4のリード線がはんだ付けされる。従って、第2基板面52は、はんだ付けが行われるはんだ面となる。
このはんだ付けは、多くの場合、溶融したはんだが満たされたはんだ槽の液面にはんだ面を沿わせるように、直流バス基板5を移動させるフロー工程によって実施される。はんだ面には、部品面に搭載されたコンデンサ素子4のリード線がスルーホールを介して突き抜けている。はんだ面に突き出たリード線は、スルーホールの周囲に形成されたランド(導電材料E)及びスルーホールの内壁の導電材料Eに対してはんだ付けされる。この際、レジスト等によって絶縁された導電材料E(ランドやスルーホールなど)にははんだが付着しない。上述したように、導電用貫通孔5Hに対しては、レジスト処理等の絶縁処理を施さないことによって、フロー工程の際に毛細管現象を利用して導電用貫通孔5Hを介してはんだを第1基板面51(部品面)の方向へ導き、導電用貫通孔5Hをはんだで埋めることができる。
当然ながら、コンデンサ素子4のリード線が挿入されるスルーホールも、レジスト処理等の絶縁処理は施されておらず、当該スルーホールやリード線を介して毛細管現象によりはんだが第1基板面51の方向へ導かれる。適切な量のはんだが第1基板面51に導かれた場合には、直流バス基板5の両面においてリード線に対するはんだ付けが実施されるので、機械的に接続されており、電気的にも信頼性の高い実装が実現される。但し、第1基板面51において第1電極パターン51E(負極電極パターン5N)内に形成されるリード線接続用のランド(電極パターン)は、そのままでは広大な面積を有するので、熱が逃げて第1基板面51に達する前にはんだが固化してしまい、第1基板面51まで充分にはんだが上昇しない可能性がある。そこで、このランドは、図7に符号“54N”で示すように、部分的に導電材料Eを省いた形状のランドとすると好適である。
尚、フロー工程では、摂氏200度以上の温度である溶融したはんだに直流バス基板5を接触させるので、直流バス基板5の温度も上昇する。コンデンサ素子4が電界コンデンサの場合には、その外装(スリーブ)が部分的に溶けて絶縁性が低下する可能性がある。部品面(第1基板面51)に負極電極パターン5Nが形成される形態では、スリーブの極性(負極N)と、負極電極パターン5Nの極性とが一致しており、絶縁性が低下した場合でも、信頼性が低下しないような構成とすることができる。
直流バス基板5は、図7及び図8に示すように、正極電極パターン5Pと電気的に接続される接続用正極端子55Pと、負極電極パターン5Nと電気的に接続される接続用負極端子55Nとを有して形成されている。接続用正極端子55Pは、図1や図5に示すようにインバータボックス1Aが組み立てられた際には、パワーモジュール3の正極端子3Pと電気的に接続されることになる端子である。同様に、接続用負極端子55Nは、パワーモジュール3の負極端子3Nと電気的に接続されることになる端子である。具体的には、直流バス基板5の接続用正極端子55Pとパワーモジュール3の正極端子3Pとが締結部材97(9)によって第1端子台7(固定部材)に共締めされる。同様に、直流バス基板5の接続用負極端子55Nとパワーモジュール3の負極端子3Nとが締結部材97(9)によって第1端子台7(固定部材)に共締めされる。これにより、第1端子台7(固定部材)に対して直流バス基板5及びパワーモジュール3が固定される。パワーモジュール3の正極端子3P及び負極端子3Nは、パワーモジュール3の一方側の端部35に突出した一対の直流電極端子対3Tとして設けられている。従って、一方側の端部35を第1端子台7(固定部材)に対向させて固定される。
また、直流バス基板5に形成された直流電極パターン接続用端子対56Tは、第1端子台7の直流バス基板接続端子対76Tに接触した状態で、締結部材96(9)により第1端子台7に締結される。尚、図1及び図5に示すように、各パワーモジュール3が締結部材94(9)によって直接ベースケース1Bに固定されると、より強固にパワーモジュール3が固定される。また、パワーモジュール3とベースケース1Bとをより密着させることができるので、ベースケース1Bを介してパワーモジュール3を冷却することができる。例えば、ベースケース1Bは、パワーモジュール3と接触する側とは反対側の面に冷却フィンを有して構成されていると好適である。ベースケース1Bをヒートシンクとして利用することによって、パワーモジュール3を良好に冷却することができる。
図1、図3、図4に示すように、本実施形態のインバータボックス1Aは、3相の交流と直流との間で電力を変換するインバータ回路10(10A,10B)を2組有している。インバータボックス1Aは、直流バス基板5の基板面に直交する方向に見て、直流バス基板5を挟んだ両側に各インバータ回路10(10A,10B)を構成するパワーモジュール3を配置して構成される。2組のインバータ回路10(10A,10B)を制御する制御装置80の一部又は全ての回路が構成された制御基板8は、直流バス基板5の基板面に直交する方向に見て、パワーモジュール3及び直流バス基板5を覆うように配置される。このように、制御基板8は比較的大きな面積を有した基板であり、反りや振動などが抑制されるように、充分に固定されることが好ましい。
このため、直流バス基板5、パワーモジュール3、第1端子台7(固定部材)を収容するベースケース1B(インバータケース)には、制御基板8の中央部において制御基板8を支持固定する支柱19を有して構成されている。インバータボックス1Aに組み付けられた状態で、基板面に直交する方向に見て制御基板8の中央部に位置することになる直流バス基板5は、支柱19が貫通する支柱貫通孔59を有して構成されている。支柱貫通孔59は、直流バス基板5の1つの端面5Lに沿って1列に配置されたn相各相のアーム10L(10U,10V,10W)を構成する各パワーモジュール3に対応して配置された各コンデンサ素子4の相間に設けられている。図1及び図5等に示す例では、3相の交流と直流との間で電力を変換するインバータ回路10を構成する3つのパワーモジュール3に対応して3箇所に分散配置された各コンデンサ素子4の相間である2箇所に支柱貫通孔59が形成されている。ベースケース1Bに設けられた2本の支柱19は、これら2箇所の支柱貫通孔59に対応して形成されている。
3相の交流と直流との間で電力を変換するインバータ回路10においては、このように2本の支柱19を設けると効率的である。例えば、インバータ回路10が、nを自然数とするn相の交流と直流との間で電力を変換する回路の場合には、ベースケース1Bに(n−1)本の支柱19が形成されていると好適である。この場合、直流バス基板5には、直流バス基板5の1つの端面5Lに沿って1列に配置されたn相各相のアーム10Lを構成する各パワーモジュール3に対応して分散配置された各コンデンサ素子4の相間に対応する(n−1)箇所に支柱貫通孔59が設けられていると好適である。直流バス基板5に支柱貫通孔59を設けることで、制御基板8の固定支持構造を別途設けることなく、インバータボックス1Aを小型化することができる。
パワーモジュール3の一方側の端部35には、上述したように直流電極端子対3Tが突出するように設けられている。この一方側の端部35の反対側の端部33には、各アーム10L(10U,10V,10W)に対応する交流電極端子3Cが突出するように設けられている(図1及び図5参照)。第2端子台92は、3相全ての交流電極端子3Cを固定するために3つの固定部を有して形成されている。第3端子台93は、これら3相全ての交流電極端子3Cと接続される3相の交流中継端子9Cを有して構成されている。各パワーモジュール3の交流電極端子3Cは、締結部材9によって、第3端子台93の各交流中継端子9C、及び第2端子台92と共締めされる。第2端子台92は、締結部材9によってベースケース1Bに設けられたネジ孔17cに締結固定され、第3端子台93は、締結部材9によってベースケース1Bに設けられたネジ孔17dに締結固定される。
図1に示すように、第3端子台93には、3相それぞれの交流中継端子9Cに対応する3つの交流出力端子9Tが備えられている。各相の交流中継端子9Cと交流出力端子9Tとは、それぞれ第3端子台93を貫通するバスバーによって接続されている。第3端子台93には、上述したようにこのバスバーに対して非接触で電流を検出する電流センサ12が備えられている。交流出力端子9Tは、図2に示すように、ベースケース1Bにカバーケース1Cが取り付けられた状態においてもインバータボックス1Aの外部に配置される。従って、交流出力端子9Tと回転電機MGの各相のステータコイルとを良好に接続することができる。
ベースケース1Bに対して、第1端子台7、第2端子台92、パワーモジュール3、直流バス基板5、第3端子台93が固定された後、これらを覆うように制御基板8が、締結部材9によってベースケース1Bに固定される。この際、上述したように、制御基板8の信号伝達用スルーホール81にパワーモジュール3の信号伝達用ピン31が貫通する。信号伝達用ピン31は、信号伝達用スルーホール81に対してはんだ付けされる。第3端子台93と制御基板8とを接続するケーブル等を含めて、全ての部材がベースケース1Bに取り付けられると、ベースケース1Bに対してカバーケース1Cが締結部材99(9)によって締結され、インバータボックス1Aが構成される。
〔その他の実施形態〕
以下、本発明のその他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上述した実施形態においては、2つの回転電機MGを制御するために2つのインバータ回路10(10A,10B)が備えられる形態を例示した。しかし、インバータボックス1A(インバータ装置1)は、1つのインバータ回路10を備えて構成されるものであってもよいし、3つ以上のインバータ回路10を備えて構成されるものであってもよい。即ち、直流バス基板5の接続用正極端子55Pとパワーモジュール3の正極端子3Pとが締結部材9によって第1端子台7(固定部材)に共締めされ、直流バス基板5の接続用負極端子55Nとパワーモジュール3の負極端子3Nとが締結部材9によって第1端子台7に共締めされて、第1端子台7に対して直流バス基板5及びパワーモジュール3が固定されていれば、インバータ回路10の回路数は任意である。
(2)直流バス基板5の端面5Lにパワーモジュール3を対向させて、直流バス基板5とパワーモジュール3とを接続する場合には、上述したようにパワーモジュール3の正極端子3P及び負極端子3Nが、パワーモジュール3の一方側の端部35に突出した一対の直流電極端子対3Tとして設けられていると好適である。しかし、直流バス基板5とパワーモジュール3との接続形態は、この形態に限定されるものではない。例えば、直流バス基板5の基板面に直交する方向に見て、直流バス基板5とパワーモジュール3の本体部とが重複する(一部又は全てが重複する)ような形態で接続されてもよい。この場合には、正極端子3P及び負極端子3Nが、パワーモジュール3の同一の部分に対として設けられなくてもよい。
(3)インバータボックス1A(インバータ装置1)が1つのインバータ回路10を有して構成されている場合は、直流バス基板5の一方側にのみパワーモジュール3を配置することが可能である。具体的には、図1において第1インバータ回路10Aを構成するパワーモジュール3、或いは第2インバータ回路10Bを構成するパワーモジュール3の何れか一方側のみによりインバータボックス1Aを構成することができる。このように構成した場合には、直流バス基板5の基板面に直交する方向から見て、平滑コンデンサ40を挟んだ両側ではなく、片側にパワーモジュール3が配置されることになる。1つのインバータ回路10を有してインバータボックス1Aが構成される場合には、このように片側にパワーモジュール3が配置されてもよい。
但し、1つのインバータ回路10を有してインバータボックス1Aが構成される場合においても、直流バス基板5の基板面に直交する方向から見て、平滑コンデンサ40を挟んだ両側にパワーモジュール3が配置される構成を妨げるものではない。例えば、3相交流と直流との間で電力変換を行うインバータ回路10の3相のパワーモジュール3の内の1つを、平滑コンデンサ40を挟んだ一方側に配置し、2つを他方側に配置することによって、平滑コンデンサ40を挟んだ両側にパワーモジュール3を配置することができる。
(4)図1、図4、図5、図7、図8等を参照した上記説明においては、複数相の交流の各相に対応するアーム10L(10U,10V,10W)に対応して複数個備えられるパワーモジュール3が、直流バス基板5の1つの端面5Lに沿って1列に配置されている場合を例示した。そして、平滑コンデンサ40は、複数のコンデンサ素子4の並列接続によって構成され、各コンデンサ素子4は、各パワーモジュール3に対応する数及び対応する位置関係で配置されている場合を例示した。当然ながら、各相に対応するパワーモジュール3がこのように整列して配置されていない場合には、各コンデンサ素子4は、各パワーモジュール3の配置に依存されることなく分散配置されてよい。また、各相に対応するパワーモジュール3がこのように整列して配置される場合であっても、各コンデンサ素子4が、各パワーモジュール3の配置に対して独立して分散配置されることを妨げるものではない。
(5)上記説明においては、平滑コンデンサ40が、複数のコンデンサ素子4の並列接続によって構成されている例を用いたが、当然ながら平滑コンデンサ40は単一の素子によって構成されていてもよい。また、上記説明においては、コンデンサ素子4として電解コンデンサを例示したが、フィルムコンデンサなど、他の構造の素子であってもよい。
本発明は、スイッチング素子を有したパワーモジュールと平滑コンデンサとを備え、直流と交流との間で電力を変換するインバータ装置に利用することができる。
1 :インバータ装置
1A :インバータボックス(インバータ装置)
1B :ベースケース(インバータケース)
1C :カバーケース(インバータケース)
3 :パワーモジュール
3N :負極端子
3P :正極端子
4 :コンデンサ素子
5 :直流バス基板
5C :接続端子面
5H :導電用貫通孔
5N :負極電極パターン
5P :正極電極パターン
7 :第1端子台(固定部材)
8 :制御基板
9 :締結部材
10 :インバータ回路
10A :第1インバータ回路(インバータ回路)
10B :第2インバータ回路(インバータ回路)
10L :アーム
11 :バッテリ(直流電源)
19 :支柱
33 :パワーモジュールの一方側の端部
40 :平滑コンデンサ
50 :基板
51 :第1基板面
51E :第1電極パターン
52 :第2基板面
52E :第2電極パターン
53 :絶縁層
55N :接続用負極端子
55P :接続用正極端子
57 :締結部材貫通孔
59 :支柱貫通孔
E :導電材料
N :負極
P :正極
本発明は、スイッチング素子を有したパワーモジュールと平滑コンデンサとを備え、直流と交流との間で電力を変換するインバータ装置に関する。
近年、省エネルギや環境負荷軽減等の観点から、回転電機を駆動力源として備えたハイブリッド車両や電動車両が注目を集めている。このような車両においては、回転電機が駆動力源として機能する際に電力を供給すると共に、当該回転電機が発電機として機能する際に発電された電力を蓄電するバッテリなどの直流電源が備えられる。一方、回転電機としては、交流の回転電機が用いられる場合が多いため、このような車両には、直流と交流との間で電力を変換するインバータ回路を備えたインバータ装置が搭載される。このようなインバータ装置は、電力制御装置などにおいても用いられるが、特に車両に搭載される場合には、重量や搭載スペースの制約などから小型化が求められる。また、インバータ回路には、パワースイッチング素子を有したパワーモジュールなどの発熱量の大きい部品が用いられるため、インバータ装置を冷却する冷却機構も必要となる。このため、インバータ回路を、冷却フィンなどが形成されたケースなどに収納して一体化すると共に、インバータ装置を小型軽量化する試みがなされている。
例えば、特開2009−106046号公報(特許文献1)には、そのように一体化されたインバータ装置の一例が開示されている。このインバータ装置では、パワーモジュールが、放熱部を有したケースの内側に、平面上に配置される。そして、パワーモジュールに電気的に接続された平滑コンデンサは、パワーモジュールが配置された平面よりも一段低い平面上にパワーモジュールに隣接して配置される(第7〜8段落、図1等)。高耐圧や大容量が求められる平滑コンデンサは、その体格が大きくなる傾向がある。特許文献1では、平滑コンデンサの高さに対応させて、放熱部とパワーモジュールとが配置されるので、インバータ装置の全体の高さを抑制することができている。しかし、このケースに対しては、パワーモジュール及び平滑コンデンサの双方がボルト等でケースに固定される必要がある。例えば特許文献1の図1では、パワーモジュールはボルトでケースに固定されているが、平滑コンデンサは、パワーモジュールから水平方向に延在する電極に対してボルトで締結されているにすぎない。平滑コンデンサをケースに固定するための構造を別途設けると、その固定構造のためのスペースが平滑コンデンサ側、及びケース側の双方に必要となり、インバータ装置の小型化が損なわれる可能性がある。
そこで、スイッチング素子を有したパワーモジュールと平滑コンデンサとを限られた領域内に適切に固定することが可能なインバータ装置の実現が望まれる。
上記課題に鑑みた本発明に係るインバータ装置の特徴構成は、直流電源の正極に接続される正極端子と直流電源の負極に接続される負極端子とを有し、前記正極端子に接続される少なくとも1つのスイッチング素子と前記負極端子に接続される少なくとも1つのスイッチング素子とが直列接続されてなるアームが少なくとも1つ形成されたパワーモジュールと、直流電源の正極と直流電源の負極との間に接続される平滑コンデンサとを備え、直流と交流との間で電力を変換するインバータ装置であって、
直流電源の正極に接続される正極電極パターン及び直流電源の負極に接続される負極電極パターンが設けられ、前記平滑コンデンサの正極側端子が前記正極電極パターンに電気的に接続され、負極側端子が前記負極電極パターンに電気的に接続されると共に、前記平滑コンデンサが固定される板状の直流バス基板と、
複数相の交流の各相に対応する前記アームに対応して複数個備えられる前記パワーモジュールと前記直流バス基板との相対位置関係を固定するための固定部材と、を備え、
前記直流バス基板は、前記正極電極パターンと電気的に接続されると共に複数の前記パワーモジュールの前記正極端子のそれぞれに電気的に接続される複数の接続用正極端子と、前記負極電極パターンと電気的に接続されると共に複数の前記パワーモジュールの前記負極端子のそれぞれに電気的に接続される複数の接続用負極端子と、を有し、
互いに対応する前記接続用正極端子と前記正極端子とが共通の締結部材によって前記固定部材に締結され、互いに対応する前記接続用負極端子と前記負極端子とが共通の締結部材によって前記固定部材に締結されて、前記固定部材に対して前記直流バス基板及び前記パワーモジュールが固定されている点にある。
この特徴構成によれば、平滑コンデンサが実装された直流バス基板の接続用正極端子とパワーモジュールの正極端子とが共通の締結部材によって固定部材に締結される。また、直流バス基板の接続用負極端子とパワーモジュールの負極端子とが共通の締結部材によって固定部材に締結される。これにより、平滑コンデンサが実装された直流バス基板及びパワーモジュールが、固定部材に対して固定される。つまり、平滑コンデンサを別途固定することなく、同一の締結部材を用いて、平滑コンデンサ(直流バス基板)とパワーモジュールとが固定部材に固定される。直流バス基板は、直流電源の正極及び負極と、パワーモジュールとを接続するバスバーの役割も担うので、比較的狭い領域内にインバータの回路を構成することができる。このように本特徴構成によれば、スイッチング素子を有したパワーモジュールと平滑コンデンサとを限られた領域内に適切に固定することが可能なインバータ装置を実現することができる。
ここで、本発明に係るインバータ装置は、前記パワーモジュールの前記正極端子及び前記負極端子が、前記パワーモジュールの一方側の端部に突出した一対の直流電極端子対として設けられていると好適である。この構成によれば、各パワーモジュールの当該一方側の端部に沿って直流バス基板との接続部を配置することができるので、直流バス基板の接続用正極端子と接続用負極端子とを並べて配置することが可能となり、直流バス基板の構成を簡略化することが容易になる。
また、本発明に係るインバータ装置は、前記直流バス基板が、前記正極電極パターン及び前記負極電極パターンと電気的に接続される直流電極パターン接続端子対を備え、前記固定部材が、直流電源の正極及び負極と接続される直流電源接続端子対と、当該直流電源端子対と電気的に接続される直流バス基板接続端子対とを備え、前記直流バス基板の前記直流電極パターン接続端子対が、前記直流バス基板接続端子対に締結部材によって締結されていると好適である。一般的に、直流電源はインバータ装置とは別に設けられ、直流電力はインバータ装置の外部から供給される。一方、直流バス基板やパワーモジュールは、絶縁性や冷却性を考慮すると1つにパッケージングされていることが好ましい。固定部材が、直流電源接続端子対と直流バス基板接続端子対とを備え、両端子対が電気的に接続されることにより、インバータ装置の内部と外部とを良好に分離しつつ、直流電源とインバータ装置との間に必要な電気的接続を確保することができる。
また、本発明に係るインバータ装置の前記直流バス基板は、基板を構成する絶縁層の一方の面である第1基板面に前記正極電極パターン及び前記負極電極パターンの一方である第1電極パターンが形成され、前記絶縁層の他方の面である第2基板面に前記正極電極パターン及び前記負極電極パターンの他方である第2電極パターンが形成され、前記第1基板面が他の部材に設けられた端子に接触した状態で前記直流バス基板の各端子が前記締結部材により締結され、前記第2電極パターンに電気的に接続される端子が、前記第1基板面に前記第1電極パターンから分離して形成された接続端子面と、前記締結部材が貫通する締結部材貫通孔とは別に前記絶縁層を貫通する導電用貫通孔とを備えており、前記導電用貫通孔の内壁に導電材料が設けられて、当該導電材料により前記第2電極パターンと前記接続端子面とが電気的に接続されていると好適である。
多くの場合、締結部材には鉄など、導電性のある金属製のボルトなどが用いられる。このため、直流バス基板の第1基板面と第2基板面との間に電流が流れる際に、締結部材にも電流が流れて当該締結部材が発熱し、パワーモジュールの端子(直流電極端子対)及びその周辺が高温になる可能性がある。上述したように、内壁に導電材料が設けられた導電用貫通孔が、締結部材貫通孔とは別に設けられると、電流の多くは、よりインピーダンスの低い導電用貫通孔を介して直流バス基板の第1基板面と第2基板面との間を流れるようになる。その結果、締結部材に流れる電流が抑制され、当該締結部材の発熱を抑制することができる。また、このように導電用貫通孔を設けると、締結部材として非導電性の部材(樹脂製など)を用いることも可能であるから、部品選定の自由度も向上する。樹脂製の部材は一般的に鉄製の部材よりも軽量であり、インバータ装置の軽量化にも貢献する。
また、本発明に係るインバータ装置は、前記直流バス基板の基板面に直交する方向から見て、前記平滑コンデンサを挟んだ両側に前記パワーモジュールが配置されていると好適である。大電流が流れるパワーモジュールは、金属製のヒートシンクなどの冷却機構を有して構成されていることが多く、比較的重量も大きい。平滑コンデンサを挟んだ両側にパワーモジュールが配置されると、固定部材への固定の際に、固定部材が片持ち構造とならず両持ち構造となるので、固定部材に作用する応力が軽減される。
また、本発明に係るインバータ装置は、複数相の交流の各相に対応するアームに対応して複数個備えられる前記パワーモジュールが、前記直流バス基板の1つの端面に沿って1列に配置され、前記平滑コンデンサは、複数のコンデンサ素子の並列接続によって構成され、各コンデンサ素子が、各パワーモジュールに対応する数及び対応する位置関係で配置されていると好適である。平滑コンデンサが複数のコンデンサ素子に分割して構成されることにより、平滑コンデンサとして必要な容量に対して各コンデンサ素子の容量が小さくなり、各コンデンサ素子の大きさを小さく抑えることができる。従って、平滑コンデンサのレイアウトの自由度が増し、比較的小さいスペースに平滑コンデンサを収容することが可能となる。また、各パワーモジュールの近傍に近接して、均等に平滑コンデンサが分散配置されることにより、電源ラインのインダクタンスが軽減され、低損失で高い平滑効果を得ることができる。また、サージ電圧等も低減される。
また、本発明に係るインバータ装置は、nを自然数とするn相の交流と直流との間で電力を変換するインバータ回路を2組有し、当該2組のインバータ回路が、前記直流バス基板の基板面に直交する方向に見て、前記直流バス基板を挟んだ両側に各インバータ回路を構成する前記パワーモジュールを配置して構成され、前記平滑コンデンサは、複数のコンデンサ素子の並列接続によって構成され、各コンデンサ素子が、各パワーモジュールに対応する数及び対応する位置関係で配置されているものとすることができる。この際、当該インバータ装置は、前記直流バス基板の基板面に直交する方向に見て、前記パワーモジュール及び前記直流バス基板を覆うように配置され、前記2組のインバータ回路を制御する制御基板と、前記直流バス基板、前記パワーモジュール、前記固定部材を収容すると共に、前記制御基板を当該制御基板の中央部において支持固定する少なくとも(n−1)本の
支柱を有するインバータケースとを備えて構成されると好適である。さらに、当該インバータ装置の前記直流バス基板は、前記支柱が貫通する支柱貫通孔を有し、各支柱貫通孔が、直流バス基板の1つの端面に沿って1列に配置されたn相各相のアームを構成する各パワーモジュールに対応して配置された各コンデンサ素子の相間に設けられていると好適である。
直流バス基板の基板面に直交する方向に見て、パワーモジュール及び直流バス基板を覆うように配置される制御基板は、比較的大きな面積を有した基板となる。このため、反りや振動などが生じる可能性があるが、制御基板の中央部において当該制御基板を支持固定する支柱がインバータケースに設けられることによって、制御基板の反りや振動などが抑制される。制御基板の中央部には、制御基板及び直流バス基板の基板面に直交する方向に見て重複する状態で、直流バス基板が配置されている。このため、直流バス基板には制御基板を固定支持する支柱が貫通するための支柱貫通孔が形成される。この支柱貫通孔は、各相のアームを構成するパワーモジュールに対応して分散配置された各コンデンサ素子の相間に設けられている。従って、平滑コンデンサとして機能するコンデンサ素子のレイアウトの自由度を損なうことなく、各パワーモジュールの近傍に近接して、均等にコンデンサ素子を分散配置させることが可能であると共に、制御基板の反りや振動を良好に抑制することができる。
インバータボックスの分解斜視図
インバータボックスの外観斜視図
回転電機駆動装置のシステム構成を示す模式的回路図
インバータボックスの構成を示す模式的回路図
分解斜視図の部分拡大図
固定部材の斜視図
直流バス基板の部品実装面の電極パターン図
直流バス基板のはんだ面の電極パターン図
直流バス基板の接続端子面及び導電用貫通孔近傍の部分断面図
以下、ハイブリッド車両や電動車両等に用いられる回転電機駆動装置に搭載されるインバータ装置に本発明を適用する場合を例として、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態において、インバータ装置1は、図1及び図2に示すように、回路基板などを内包したインバータボックス1Aの形態で提供される。インバータボックス1Aは、2つのケース(インバータケース)を有して構成されている。一方のケースは、図3及び図4に示すインバータ回路10を構成する各種部品や、インバータ回路10を制御する制御基板8が組みつけられるベースケース1Bである。他方のケースは、ベースケース1Bと当接して、ベースケース1Bに組みつけられたインバータ回路10や制御基板8を包み込むカバーケース1Cである。インバータケースとしてのベースケース1B及びカバーケース1Cにより、回路基板などが内包されてインバータボックス1A(インバータ装置1)が構成される。
本実施形態の車両は、例えば2モータスプリット方式のハイブリッド車両や、インホイールモータ方式の電動車両(又はハイブリッド車両)であり、図3に示すように、2つの回転電機MG(MG1,MG2)が搭載されている。例えば、2モータスプリット方式のハイブリッド車両は、駆動力源として不図示の内燃機関と一対の回転電機とを備える。このハイブリッド車両の駆動装置は、内燃機関の出力を、一方の回転電機の側と、車輪及び他方の回転電機の側とに分配する動力分配用の差動歯車装置(不図示)を備えて構成されている。また、例えばインホイールモータ方式の電動車両(ハイブリッド車両)は、左右
一対の駆動輪の中に駆動力源となる回転電機を備えて、或いは駆動輪に直結された動力伝達機構に駆動力源となる回転電機を備えて構成されている。このため、本実施形態において、インバータボックス1A(インバータ装置1)は、2つの回転電機MG(MG1,MG2)を駆動するための装置として構成されている。尚、これらの回転電機MG(MG1,MG2)は、必要に応じて電動機としても発電機としても機能する。つまり、これらの回転電機MG(MG1,MG2)は、力行作動及び回生作動の双方が可能である。以下、特に2つを区別する必要がない場合は、単に回転電機MGと称して説明する。
図3は、回転電機駆動装置のシステム構成を示している。図3に示すように、回転電機駆動装置には、一方の回転電機MG(第1回転電機MG1)を駆動制御する第1インバータ回路10Aと、他方の回転電機MG(第2回転電機MG2)を駆動制御する第2インバータ回路10Bとの2つのインバータ回路10が備えられている。また、回転電機駆動装置には、インバータ回路10の直流側の電圧であるシステム電圧Vdcを平滑化する平滑コンデンサ40が備えられている。インバータ回路10(10A,10B)及び平滑コンデンサ40は、インバータボックス1Aに配接されている。
ところで、図3に例示するように、回転電機駆動装置には、2つのインバータ回路10(10A,10B)に共通した1つのコンバータ回路18が備えられる場合がある。このコンバータ回路18は、2つのインバータ回路10(10A,10B)に共通のシステム電圧Vdcとバッテリ11の電圧との間で直流電力(直流電圧)を変換する。この場合、システム電圧Vdcは、コンバータ回路18の出力電圧(昇圧側出力電圧)となる。昇圧率が“1”の場合には、コンバータ回路18の出力電圧は、バッテリ11の端子間電圧にほぼ一致する。図3に例示する構成においては、バッテリ11及びコンバータ回路18が、インバータ装置1の「直流電源」として機能する。一方、コンバータ回路18が備えられない場合には、バッテリ11が「直流電源」として機能する。平滑コンデンサ40は、コンバータ回路18の有無に拘わらず、このように定義される「直流電源」の正極Pと負極Nとの間に接続され、「直流電源」の正負両極間電圧(システム電圧Vdc)を平滑化する。
尚、バッテリ11は、2つのインバータ回路10(10A,10B)を介して回転電機MG(MG1,MG2)に電力を供給可能であると共に、回転電機MG(MG1,MG2)が発電して得られた電力を蓄電可能である。このようなバッテリ11としては、例えば、ニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池等の各種二次電池、キャパシタ、或いはこれらの組合せ等が用いられる。
インバータ回路10(10A,10B)は、システム電圧Vdcを有する直流電力を複数相(nを自然数としてn相、ここでは3相)の交流電力に変換して回転電機MG(MG1,MG2)に供給すると共に、回転電機MG(MG1,MG2)が発電した交流電力を直流電力に変換して直流電源に供給する回路である。以下、特に2つの回路を区別する必要がない場合は、単にインバータ回路10と称して説明する。インバータ回路10は、複数のスイッチング素子を有して構成される。スイッチング素子には、IGBT(insulated gate bipolar transistor)やパワーMOSFET(metal oxide semiconductor fieldeffect transistor)を適用すると好適である。図3に示すように、本実施形態では、スイッチング素子としてIGBT30が用いられる。
例えば直流と3相交流との間で電力変換するインバータ回路10は、よく知られているように3相それぞれに対応する3アームのブリッジ回路により構成される。つまり、図3及び図4に示すように、インバータ回路10の直流正極側(直流電源の正極P側)と直流負極側(直流電源の負極N側)との間に2つのIGBT30が直列に接続されて1つのアーム10Lが構成される。そして、この直列回路(1つのアーム10L)が3回線(3相
:10U,10V,10W)並列接続される。つまり、回転電機MGのU相、V相、W相に対応するステータコイルのそれぞれに一組の直列回路(アーム10L)が対応したブリッジ回路が構成される。各相の上段側のIGBT30のコレクタは直流電源の正極Pに接続され、エミッタは各相の下段側のIGBT30のコレクタに接続される。また、各相の下段側のIGBT30のエミッタは、直流電源の負極N(例えば、グラウンド)に接続される。対となる各相のIGBT30による直列回路(アーム10L)の中間点、つまり、IGBT30の接続点は、回転電機MGのステータコイルにそれぞれ接続される。
尚、IGBT30には、それぞれフリーホイールダイオード(回生ダイオード)が並列に接続される。フリーホイールダイオードは、カソード端子がIGBT30のコレクタ端子に接続され、アノード端子がIGBT30のエミッタ端子に接続される形で、IGBT30に対して並列に接続される。
本実施形態では、図4に示すように、フリーホイールダイオードを伴ったIGBT30が直列に接続された1つのアーム10Lがパワーモジュール3として形成されている。図4及び図5に示すように、パワーモジュール3は、直流電源の正極Pに接続される正極端子3Pと直流電源の負極Nに接続される負極端子3Nとを有して形成されている。即ち、パワーモジュール3は、正極端子3Pに接続される少なくとも1つのIGBT30と、負極端子3Nに接続される少なくとも1つのIGBT30とが直列接続されてなるアーム10Lが少なくとも1つ形成されて構成されている。このパワーモジュール3が3つ並列に接続されることによって、直流と3相交流との間で電力変換するインバータ回路10が構成される。尚、図5に示すように、正極端子3P及び負極端子3Nは、パワーモジュール3の一方側の端部35に突出した一対の直流電極端子対3Tとして設けられている。
図3に示すように、インバータ回路10は、制御装置80により制御される。制御装置80は、ECU(electronic control unit)やドライバ回路を有して構成されている。また、制御装置80を構成する一部又は全ての回路は、制御基板8(図1参照)に形成されている。制御装置80に搭載されるECUは、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核部材として構築されている。本実施形態では、ECUは、ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、インバータ回路10を介して回転電機MGを制御する。ECUは、電流フィードバック制御のために種々の機能部を有して構成されており、各機能部は、マイクロコンピュータ等のハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働により実現される。
インバータ回路10を構成する各IGBT30のゲートは、ドライバ回路を介してECUに接続されており、それぞれ個別にスイッチング制御される。一般的に、回転電機MGを駆動するためのパワー系の電気回路と、マイクロコンピュータなどを中核とするECUなどの電子回路とは、動作電圧(回路の電源電圧)が大きく異なる。このため、相対的に低電圧のECUにより生成されたIGBT30の制御信号は、ドライバ回路を介して高電圧のゲート駆動信号Sとしてインバータ回路10に供給される。尚、回転電機駆動装置にコンバータ回路18が搭載されている場合には、同様に制御装置80からドライバ回路を介して高電圧のコンバータ用ゲート駆動信号SCがコンバータ回路18に供給される。
回転電機MGの各相のステータコイルを流れる実電流は電流センサ12により検出され、制御装置80はその検出結果を取得する。図3には、バスバーなどに近接配置されて非接触で電流を検出する非接触型の電流センサ12に3相各相の実電流が検出される形態を模式的に示している。電流センサ12は、後述する第3端子台93(図1及び図4参照)に固定され、第3端子台93の内部を通るバスバーを流れる電流を検出する。図1に示すように、第3端子台93には、電流検出結果出力コネクタ9Sが設けられており、制御基板8の電流検出結果入力コネクタ82と不図示のケーブル等で接続される。尚、本実施形態では、3相全ての電流を検出する構成を示しているが、3相は平衡状態にあり、電流の瞬時値の総和は零であるので2相のみの電流を電流センサ12で検出し、制御装置80において残りの1相の電流を演算により求めてもよい。
また、回転電機MGのロータの各時点での磁極位置は、回転センサ13により検出され、制御装置80はその検出結果を取得する。回転センサ13は、例えばレゾルバ等により構成される。ここで、磁極位置は、電気角上でのロータの回転角度を表している。回転センサ13は、図3に示すように回転電機MGの近傍に設置されている。従って、回転センサ13による検出結果は、不図示のケーブル等を介して制御装置80へ伝達される。回転センサ13の検出結果を利用するECUが制御基板8に構成されている場合には、インバータボックス1Aの外部との間で信号の授受を行うために制御基板8に設置された外部コネクタ83を介して回転センサ13の検出結果が制御装置80に伝達される。図示しない車両制御装置等の他の制御装置等からの要求信号として制御装置80に提供される回転電機MGの目標トルクTM(TM1,TM2)も、外部コネクタ83を介して伝達される。
図1に示すように、制御装置80を構成する制御基板8には、ゲート駆動信号Sを含めた信号をパワーモジュール3と授受するための信号伝達用スルーホール81(信号伝達用端子受け部)が形成されている。ベースケース1Bに対してパワーモジュール3及び制御基板8を組み付けた状態において、信号伝達用スルーホール81にはパワーモジュール3の信号伝達用ピン31(信号伝達用端子)が貫通する。ここで、信号伝達用ピン31を信号伝達用スルーホール81に対してはんだ付けすることによって、制御基板8と各パワーモジュール3との間での信号の授受が可能となる。授受される信号は、上述したゲート駆動信号Sの他、パワーモジュール3から制御基板8への故障診断信号、温度検出信号などが含まれる。
インバータボックス1Aは、図1の分解斜視図に示すように、ベースケース1Bに、パワーモジュール3、平滑コンデンサ40が実装された直流バス基板5、第1端子台7(固定部材)を含む端子台(第2端子台92、第3端子台93)、制御基板8を組み付け、これらを内包するようにカバーケース1Cをベースケース1Bに組みつけて構成される。直流バス基板5及び第1端子台7(固定部材)は、2つのインバータ回路10(10A,10B)に共通する部材である。第2端子台92及び第3端子台93は、第1回転電機MG1(第1インバータ回路10A)及び第2回転電機MG2(第2インバータ回路10B)のそれぞれに対して設けられている。つまり、第1回転電機MG1に対しては、第1回転電機用第2端子台92A及び第1回転電機用第3端子台93Aが備えられ、第2回転電機MG2に対しては、第2回転電機用第2端子台92B及び第2回転電機用第3端子台93Bが備えられる。
上述したように、第3端子台93には、電流センサ12が固定されている。第1回転電機用第3端子台93Aにおいて検出された電流の検出結果は、電流検出結果出力コネクタ9Sと制御基板8の第1回転電機用電流検出結果入力コネクタ82Aとを結ぶ不図示のケーブル等を介して制御装置80に伝達される。同様に、第2回転電機用第3端子台93Bにおいて検出された電流の検出結果は、電流検出結果出力コネクタ9Sと制御基板8の第2回転電機用電流検出結果入力コネクタ82Bとを結ぶ不図示のケーブル等を介して制御装置80に伝達される。
図5に示すように、第1端子台7には、直流バス基板5に形成された締結部材貫通孔57と、パワーモジュール3の直流電極端子対3Tに設けられた貫通孔とを貫通した締結部材97(9)と螺合するネジ孔71が形成されている。また、ベースケース1Bには、第1端子台7に設けられた貫通孔72を貫通した締結部材95(9)と螺合するネジ孔17aが形成されている。これにより、直流バス基板5とパワーモジュール3とは、共通の締結部材9によって第1端子台7に締結されると共に、第1端子台7がベースケース1Bに固定される。第1端子台7は、複数相の交流の各相に対応するアーム10Lに対応して複数個備えられるパワーモジュール3と直流バス基板5との相対位置関係を固定する固定部材として機能する。
尚、直流バス基板5の第1基板面51には、パワーモジュール3の直流電極端子対3Tに接触して導通する端子対(図7に基づいて後述する“55P”及び“55N”の対)の他に、直流電源に接続される直流電極パターン接続端子対56T(図5及び図7参照)が形成されている。この直流電極パターン接続端子対56Tは、図1や図5とは別方向からの斜視図である図6に示すように第1端子台7に形成された直流バス基板接続端子対76Tに接続される。つまり、直流バス基板5は、直流バス基板5の直流電極パターン接続端子対56Tと、第1端子台7の直流バス基板接続端子対76Tとが接触した状態で、図5に示すように締結部材96(9)によってベースケース1Bに締結される。図6に示すように、第1端子台7は、直流バス基板接続端子対76Tと電気的に接続される直流電源接続端子対75Tを備えている。直流電源接続端子対75Tは、インバータボックス1Aの外部に設置されるバッテリ11などの直流電源の正極P及び負極Nと接続される端子である。図2に示すように、直流電源接続端子対75Tは、ベースケース1Bにカバーケース1Cが組み付けられた状態においても、インバータボックス1Aの外部に配置されており、直流電源と容易に接続することができる。
図7〜図9に示すように、直流バス基板5には、基板50を構成する絶縁層53の一方の面である第1基板面51に正極電極パターン5P及び負極電極パターン5Nの一方である第1電極パターン51Eが形成され、絶縁層53の他方の面である第2基板面52に正極電極パターン5P及び負極電極パターン5Nの他方である第2電極パターン52Eが形成される。図7〜図9において図示した例では、第1基板面51に第1電極パターン51Eとして負極電極パターン5Nが形成され、第2基板面52に第2電極パターン52Eとして正極電極パターン5Pが形成されている。それぞれの基板面に異なる極性の電極パターンが形成されるので、直流電流が流れる向きがそれぞれの基板面において逆方向となる電極パターンが構成される。これにより、電磁誘導が相殺され、相互インダクタンスも増加するので、サージ電圧が抑制され、損失も低減される。
また、大きな電流が流れる正極電極パターン5P及び負極電極パターン5Nは、通常のプリント基板における電極層よりも厚く、例えば、300〜600[μm]程度の厚みで形成されると好適である。尚、図7及び図8に示す電極パターン図は、共に同一方向から見たものであり、一方は正面図であり他方は透過図である。具体的には、図8は第2基板面52(後述するはんだ面)の側から直流バス基板5を直接見た図(第2基板面52の正面図)であり、図7は第2基板面52の側から直流バス基板5を透かして第1基板面51を見た図(第1基板面51の透過図)である。
図7に示すように、直流バス基板5の第1基板面51に、直流バス基板5の各端子、具体的には接続用正極端子55P、接続用負極端子55N、直流電極パターン接続端子対56Tが形成される。そして、直流バス基板5は、第1基板面51が、パワーモジュール3や第1端子台7など、他の部材に設けられた端子に接触した状態で締結部材9により第1端子台7に固定される。換言すれば、直流バス基板5は、第1基板面51に設けられた各端子が、他の部材に設けられた端子に接触した状態で、第1端子台7を介して締結部材9によりベースケース1Bに締結される。
他の部材に設けられた端子と接触する面は第1基板面51であるから、第2基板面52に第2電極パターン52Eとして形成される正極電極パターン5Pは、第1基板面51にも部分的に形成される必要がある。つまり、第1基板面51には、第2電極パターン52E(正極電極パターン5P)に電気的に接続される端子(接続用正極端子55P)が形成される。この端子(接続用正極端子55P)は、図7及び図9に示すように、第1基板面51において第1電極パターン51E(負極電極パターン5N)から分離して形成された接続端子面5Cと、絶縁層53を貫通する導電用貫通孔5Hとを備えて構成されている。導電用貫通孔5Hは、接続用正極端子55Pにおいて締結部材9が貫通する締結部材貫通孔57とは別に形成されている。また、導電用貫通孔5Hは、その内壁に導電材料Eが設けられており、この導電材料Eにより第2電極パターン52E(正極電極パターン5P)と接続端子面5Cとが電気的に接続される。尚、図9は、直流バス基板5がパワーモジュール3と共に締結部材9(97)によって第1端子台7に固定されている状態における図7のIX−IX断面を示している。
一般的に、接続用正極端子55P、接続用負極端子55N、直流電極パターン接続端子対56T以外の電極は、基板表面にレジスト等を塗布することによって絶縁される。しかし、導電用貫通孔5Hに対しては、絶縁処理を施さないことによって後述するフロー工程の際に、導電用貫通孔5Hをはんだで埋めることができる。導電用貫通孔5Hがはんだで満たされることによって導通断面積が大きくなり、第1基板面51と第2基板面52との間のインピーダンスを低下させることが可能となる。
多くの場合、締結部材9には鉄など、導電性のある金属製のボルトなどが用いられる。このため、直流バス基板5の第1基板面51と第2基板面52との間に電流が流れる際に、締結部材9にも電流が流れて当該締結部材9が発熱し、パワーモジュール3の端子(直流電極端子対3T)及びその周辺が高温になる可能性がある。上述したように、内壁に導電材料Eが設けられた導電用貫通孔5Hが、締結部材貫通孔57とは別に設けられると、電流の多くは、よりインピーダンスの低い導電用貫通孔5Hを介して直流バス基板5の第1基板面51と第2基板面52との間を流れるようになる。その結果、締結部材9に流れる電流が抑制され、当該締結部材9の発熱を抑制することができる。また、このように導電用貫通孔5Hを設けると、締結部材9として非導電性の部材(樹脂製など)を用いることも可能であるから、部品選定の自由度も向上する。樹脂製の部材は一般的に鉄製の部材よりも軽量であり、インバータボックス1Aの軽量化にも貢献する。
尚、締結部材貫通孔57は、その内壁に めっき等によって導電材料Eが設けられていても良いし、導電材料Eが設けられていなくてもよい。図9に例示した形態では、締結部材貫通孔57の内壁には導電材料Eが設けられていない形態を示している。また、図7〜図9には、第1基板面51に第1電極パターン51Eとして負極電極パターン5Nが形成され、第2基板面52に第2電極パターン52Eとして正極電極パターン5Pが形成されている例を示したが、第1電極パターン51Eとして正極電極パターン5Pが形成され、第2電極パターン52Eとして負極電極パターン5Nが形成される形態とすることも可能である。
ところで、平滑コンデンサ40は、図1、図4、図5等に示すように、複数のコンデンサ素子4の並列接続によって構成されている。各コンデンサ素子4は、各パワーモジュール3に対応する数及び対応する位置関係で分散配置されている。図1に示すように、パワーモジュール3は、直流バス基板5の基板面に直交する方向から見て、平滑コンデンサ40(コンデンサ素子群)を挟んだ両側に配置されている。具体的には、複数相の交流の各相に対応するアーム10Lに対応して複数個備えられるパワーモジュール3が、直流バス基板5の1つの端面5Lに沿って1列に配置されている。本実施形態では、2つのインバータ回路10(10A,10B)が構成されるので、互いに反対の2つの端面5Lに沿って、それぞれ1列ずつパワーモジュール3が配置されている。各コンデンサ素子4は、各パワーモジュール3に対応する個数、例えば各パワーモジュール3に対して1つ又は複数個、備えられている。つまり、パワーモジュール3と同じ個数、又は自然数倍の個数のコ
ンデンサ素子4が備えられている。また、各コンデンサ素子4は、各パワーモジュール3に対応する位置関係、例えば各パワーモジュール3の近傍に配置されている。
具体的には、一対の接続用正極端子55P及び接続用負極端子55Nであるパワーモジュール接続用端子対55Tにおいて、コンデンサ素子4は、当該コンデンサ素子4と接続用正極端子55Pとの距離、及び当該コンデンサ素子4と接続用負極端子55Nとの距離とが均等(ほぼ同等)となるような配接距離(コンデンサ配接距離)を有して配置され、且つ、全てのパワーモジュール3についてのコンデンサ配接距離が均等(ほぼ同等)となるように分散配置される。各パワーモジュール3に対して(各パワーモジュール接続用端子対55Tに対して)複数のコンデンサ素子4が割り当てられる場合には、接続用正極端子55Pとの距離及び接続用負極端子55Nとの距離は、それぞれ平均値とすると好適である。このようにコンデンサ素子4を配置すると、結果的に、各パワーモジュール3の近傍にコンデンサ素子4が配置されることとなる。その結果、各パワーモジュール3(各アーム10L)の直流電源に対するインピーダンス(特にインダクタンス成分)が小さくなり、IGBT30のスイッチングによるサージ電圧を良好に抑制することができる。
尚、平滑コンデンサ40には、回転電機駆動装置のシャットダウン時に残存電荷を放電させるために、平滑コンデンサ40に並列に放電抵抗R(図4参照)が設けられることが多い。直流バス基板5には、この放電抵抗Rも実装することが可能である。放電抵抗Rの配置場所や固定機構をインバータボックス1Aの他の場所に設ける必要がなく、小型化が実現できる。直流バス基板5には、上述したように、外部の直流電源と電気的に接続される直流電源接続端子対75Tと導通する直流バス基板接続端子対76Tと導通する直流電極パターン接続端子対56Tが形成されている。直流電極パターン接続端子対56の近傍、例えば当該端子対に隣接して放電抵抗Rが配置されると好適である。放電抵抗Rも、電流容量が小さく、より小型の複数の抵抗素子(不図示)の並列接続によって構成することが可能である。
直流バス基板5の第1基板面51は、これら複数のコンデンサ素子4や抵抗素子が搭載される部品面である。図7及び図8に示す例では、コンデンサ素子4のみが搭載される形態を示している。例えば、コンデンサ素子4は、電界コンデンサであり、本実施形態では、ラジアルタイプのディスクリート部品である。この場合、コンデンサ素子4は、部品面である第1基板面51に搭載されるが、コンデンサ素子4の端子として機能するリード線は、直流バス基板5に形成されたスルーホールを貫通して第2基板面52の側へ延伸する。そして、第2基板面52においてコンデンサ素子4のリード線がはんだ付けされる。従って、第2基板面52は、はんだ付けが行われるはんだ面となる。
このはんだ付けは、多くの場合、溶融したはんだが満たされたはんだ槽の液面にはんだ面を沿わせるように、直流バス基板5を移動させるフロー工程によって実施される。はんだ面には、部品面に搭載されたコンデンサ素子4のリード線がスルーホールを介して突き抜けている。はんだ面に突き出たリード線は、スルーホールの周囲に形成されたランド(導電材料E)及びスルーホールの内壁の導電材料Eに対してはんだ付けされる。この際、レジスト等によって絶縁された導電材料E(ランドやスルーホールなど)にははんだが付着しない。上述したように、導電用貫通孔5Hに対しては、レジスト処理等の絶縁処理を施さないことによって、フロー工程の際に毛細管現象を利用して導電用貫通孔5Hを介してはんだを第1基板面51(部品面)の方向へ導き、導電用貫通孔5Hをはんだで埋めることができる。
当然ながら、コンデンサ素子4のリード線が挿入されるスルーホールも、レジスト処理等の絶縁処理は施されておらず、当該スルーホールやリード線を介して毛細管現象によりはんだが第1基板面51の方向へ導かれる。適切な量のはんだが第1基板面51に導かれた場合には、直流バス基板5の両面においてリード線に対するはんだ付けが実施されるので、機械的に接続されており、電気的にも信頼性の高い実装が実現される。但し、第1基板面51において第1電極パターン51E(負極電極パターン5N)内に形成されるリード線接続用のランド(電極パターン)は、そのままでは広大な面積を有するので、熱が逃げて第1基板面51に達する前にはんだが固化してしまい、第1基板面51まで充分にはんだが上昇しない可能性がある。そこで、このランドは、図7に符号“54N”で示すように、部分的に導電材料Eを省いた形状のランドとすると好適である。
尚、フロー工程では、摂氏200度以上の温度である溶融したはんだに直流バス基板5を接触させるので、直流バス基板5の温度も上昇する。コンデンサ素子4が電界コンデンサの場合には、その外装(スリーブ)が部分的に溶けて絶縁性が低下する可能性がある。部品面(第1基板面51)に負極電極パターン5Nが形成される形態では、スリーブの極性(負極N)と、負極電極パターン5Nの極性とが一致しており、絶縁性が低下した場合でも、信頼性が低下しないような構成とすることができる。
直流バス基板5は、図7及び図8に示すように、正極電極パターン5Pと電気的に接続される接続用正極端子55Pと、負極電極パターン5Nと電気的に接続される接続用負極端子55Nとを有して形成されている。接続用正極端子55Pは、図1や図5に示すようにインバータボックス1Aが組み立てられた際には、パワーモジュール3の正極端子3Pと電気的に接続されることになる端子である。同様に、接続用負極端子55Nは、パワーモジュール3の負極端子3Nと電気的に接続されることになる端子である。即ち、直流バス基板5は、正極電極パターン5Pと電気的に接続されると共に複数のパワーモジュール3の正極端子3Pのそれぞれに電気的に接続される複数の接続用正極端子55Nと、負極電極パターン5Nと電気的に接続されると共に複数のパワーモジュール3の負極端子3Nのそれぞれに電気的に接続される複数の接続用負極端子55Nとを有して構成されている。
そして、互いに対応する接続用正極端子55Nと正極端子3Pとが共通の締結部材97(9)によって第1端子台7(固定部材)に締結され、互いに対応する接続用負極端子55Nと負極端子3Nとが共通の締結部材97(9)によって第1端子台7(固定部材)に締結されて、第1端子台7(固定部材)に対して直流バス基板5及びパワーモジュール3が固定される。具体的には、直流バス基板5の接続用正極端子55Pとパワーモジュール3の正極端子3Pとが共通の締結部材97(9)によって第1端子台7(固定部材)に締結される。同様に、直流バス基板5の接続用負極端子55Nとパワーモジュール3の負極端子3Nとが共通の締結部材97(9)によって第1端子台7(固定部材)に締結される。これにより、第1端子台7(固定部材)に対して直流バス基板5及びパワーモジュール3が固定される。パワーモジュール3の正極端子3P及び負極端子3Nは、パワーモジュール3の一方側の端部35に突出した一対の直流電極端子対3Tとして設けられている。従って、一方側の端部35を第1端子台7(固定部材)に対向させて固定される。
また、直流バス基板5に形成された直流電極パターン接続用端子対56Tは、第1端子台7の直流バス基板接続端子対76Tに接触した状態で、締結部材96(9)により第1端子台7に締結される。尚、図1及び図5に示すように、各パワーモジュール3が締結部材94(9)によって直接ベースケース1Bに固定されると、より強固にパワーモジュール3が固定される。また、パワーモジュール3とベースケース1Bとをより密着させることができるので、ベースケース1Bを介してパワーモジュール3を冷却することができる。例えば、ベースケース1Bは、パワーモジュール3と接触する側とは反対側の面に冷却フィンを有して構成されていると好適である。ベースケース1Bをヒートシンクとして利用することによって、パワーモジュール3を良好に冷却することができる。
図1、図3、図4に示すように、本実施形態のインバータボックス1Aは、3相の交流と直流との間で電力を変換するインバータ回路10(10A,10B)を2組有している。インバータボックス1Aは、直流バス基板5の基板面に直交する方向に見て、直流バス基板5を挟んだ両側に各インバータ回路10(10A,10B)を構成するパワーモジュール3を配置して構成される。2組のインバータ回路10(10A,10B)を制御する制御装置80の一部又は全ての回路が構成された制御基板8は、直流バス基板5の基板面に直交する方向に見て、パワーモジュール3及び直流バス基板5を覆うように配置される。このように、制御基板8は比較的大きな面積を有した基板であり、反りや振動などが抑制されるように、充分に固定されることが好ましい。
このため、直流バス基板5、パワーモジュール3、第1端子台7(固定部材)を収容するベースケース1B(インバータケース)には、制御基板8の中央部において制御基板8を支持固定する支柱19を有して構成されている。インバータボックス1Aに組み付けられた状態で、基板面に直交する方向に見て制御基板8の中央部に位置することになる直流バス基板5は、支柱19が貫通する支柱貫通孔59を有して構成されている。支柱貫通孔59は、直流バス基板5の1つの端面5Lに沿って1列に配置されたn相各相のアーム10L(10U,10V,10W)を構成する各パワーモジュール3に対応して配置された各コンデンサ素子4の相間に設けられている。図1及び図5等に示す例では、3相の交流と直流との間で電力を変換するインバータ回路10を構成する3つのパワーモジュール3に対応して3箇所に分散配置された各コンデンサ素子4の相間である2箇所に支柱貫通孔59が形成されている。ベースケース1Bに設けられた2本の支柱19は、これら2箇所の支柱貫通孔59に対応して形成されている。
3相の交流と直流との間で電力を変換するインバータ回路10においては、このように2本の支柱19を設けると効率的である。例えば、インバータ回路10が、nを自然数とするn相の交流と直流との間で電力を変換する回路の場合には、ベースケース1Bに(n−1)本の支柱19が形成されていると好適である。この場合、直流バス基板5には、直流バス基板5の1つの端面5Lに沿って1列に配置されたn相各相のアーム10Lを構成する各パワーモジュール3に対応して分散配置された各コンデンサ素子4の相間に対応する(n−1)箇所に支柱貫通孔59が設けられていると好適である。直流バス基板5に支柱貫通孔59を設けることで、制御基板8の固定支持構造を別途設けることなく、インバータボックス1Aを小型化することができる。
パワーモジュール3の一方側の端部35には、上述したように直流電極端子対3Tが突出するように設けられている。この一方側の端部35の反対側の端部33には、各アーム10L(10U,10V,10W)に対応する交流電極端子3Cが突出するように設けられている(図1及び図5参照)。第2端子台92は、3相全ての交流電極端子3Cを固定するために3つの固定部を有して形成されている。第3端子台93は、これら3相全ての交流電極端子3Cと接続される3相の交流中継端子9Cを有して構成されている。各パワーモジュール3の交流電極端子3Cは、それぞれ共通の締結部材9によって、第3端子台93の各交流中継端子9C、及び第2端子台92と締結される。第2端子台92は、締結部材9によってベースケース1Bに設けられたネジ孔17cに締結固定され、第3端子台93は、締結部材9によってベースケース1Bに設けられたネジ孔17dに締結固定される。
図1に示すように、第3端子台93には、3相それぞれの交流中継端子9Cに対応する3つの交流出力端子9Tが備えられている。各相の交流中継端子9Cと交流出力端子9Tとは、それぞれ第3端子台93を貫通するバスバーによって接続されている。第3端子台93には、上述したようにこのバスバーに対して非接触で電流を検出する電流センサ12が備えられている。交流出力端子9Tは、図2に示すように、ベースケース1Bにカバーケース1Cが取り付けられた状態においてもインバータボックス1Aの外部に配置される。従って、交流出力端子9Tと回転電機MGの各相のステータコイルとを良好に接続することができる。
ベースケース1Bに対して、第1端子台7、第2端子台92、パワーモジュール3、直流バス基板5、第3端子台93が固定された後、これらを覆うように制御基板8が、締結部材9によってベースケース1Bに固定される。この際、上述したように、制御基板8の信号伝達用スルーホール81にパワーモジュール3の信号伝達用ピン31が貫通する。信号伝達用ピン31は、信号伝達用スルーホール81に対してはんだ付けされる。第3端子台93と制御基板8とを接続するケーブル等を含めて、全ての部材がベースケース1Bに取り付けられると、ベースケース1Bに対してカバーケース1Cが締結部材99(9)によって締結され、インバータボックス1Aが構成される。
〔その他の実施形態〕
以下、本発明のその他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上述した実施形態においては、2つの回転電機MGを制御するために2つのインバータ回路10(10A,10B)が備えられる形態を例示した。しかし、インバータボックス1A(インバータ装置1)は、1つのインバータ回路10を備えて構成されるものであってもよいし、3つ以上のインバータ回路10を備えて構成されるものであってもよい。即ち、直流バス基板5の接続用正極端子55Pとパワーモジュール3の正極端子3Pとが共通の締結部材9によって第1端子台7(固定部材)に締結され、直流バス基板5の接続用負極端子55Nとパワーモジュール3の負極端子3Nとが共通の締結部材9によって第1端子台7に締結されて、第1端子台7に対して直流バス基板5及びパワーモジュール3が固定されていれば、インバータ回路10の回路数は任意である。
(2)直流バス基板5の端面5Lにパワーモジュール3を対向させて、直流バス基板5とパワーモジュール3とを接続する場合には、上述したようにパワーモジュール3の正極端子3P及び負極端子3Nが、パワーモジュール3の一方側の端部35に突出した一対の直流電極端子対3Tとして設けられていると好適である。しかし、直流バス基板5とパワーモジュール3との接続形態は、この形態に限定されるものではない。例えば、直流バス基板5の基板面に直交する方向に見て、直流バス基板5とパワーモジュール3の本体部とが重複する(一部又は全てが重複する)ような形態で接続されてもよい。この場合には、正極端子3P及び負極端子3Nが、パワーモジュール3の同一の部分に対として設けられなくてもよい。
(3)インバータボックス1A(インバータ装置1)が1つのインバータ回路10を有して構成されている場合は、直流バス基板5の一方側にのみパワーモジュール3を配置することが可能である。具体的には、図1において第1インバータ回路10Aを構成するパワーモジュール3、或いは第2インバータ回路10Bを構成するパワーモジュール3の何れか一方側のみによりインバータボックス1Aを構成することができる。このように構成した場合には、直流バス基板5の基板面に直交する方向から見て、平滑コンデンサ40を挟んだ両側ではなく、片側にパワーモジュール3が配置されることになる。1つのインバータ回路10を有してインバータボックス1Aが構成される場合には、このように片側にパワーモジュール3が配置されてもよい。
但し、1つのインバータ回路10を有してインバータボックス1Aが構成される場合においても、直流バス基板5の基板面に直交する方向から見て、平滑コンデンサ40を挟んだ両側にパワーモジュール3が配置される構成を妨げるものではない。例えば、3相交流と直流との間で電力変換を行うインバータ回路10の3相のパワーモジュール3の内の1つを、平滑コンデンサ40を挟んだ一方側に配置し、2つを他方側に配置することによって、平滑コンデンサ40を挟んだ両側にパワーモジュール3を配置することができる。
(4)図1、図4、図5、図7、図8等を参照した上記説明においては、複数相の交流の各相に対応するアーム10L(10U,10V,10W)に対応して複数個備えられるパワーモジュール3が、直流バス基板5の1つの端面5Lに沿って1列に配置されている場合を例示した。そして、平滑コンデンサ40は、複数のコンデンサ素子4の並列接続によって構成され、各コンデンサ素子4は、各パワーモジュール3に対応する数及び対応する位置関係で配置されている場合を例示した。当然ながら、各相に対応するパワーモジュール3がこのように整列して配置されていない場合には、各コンデンサ素子4は、各パワーモジュール3の配置に依存されることなく分散配置されてよい。また、各相に対応するパワーモジュール3がこのように整列して配置される場合であっても、各コンデンサ素子4が、各パワーモジュール3の配置に対して独立して分散配置されることを妨げるものではない。
(5)上記説明においては、平滑コンデンサ40が、複数のコンデンサ素子4の並列接続によって構成されている例を用いたが、当然ながら平滑コンデンサ40は単一の素子によって構成されていてもよい。また、上記説明においては、コンデンサ素子4として電解コンデンサを例示したが、フィルムコンデンサなど、他の構造の素子であってもよい。
本発明は、スイッチング素子を有したパワーモジュールと平滑コンデンサとを備え、直流と交流との間で電力を変換するインバータ装置に利用することができる。
1 :インバータ装置
1A :インバータボックス(インバータ装置)
1B :ベースケース(インバータケース)
1C :カバーケース(インバータケース)
3 :パワーモジュール
3N :負極端子
3P :正極端子
4 :コンデンサ素子
5 :直流バス基板
5C :接続端子面
5H :導電用貫通孔
5N :負極電極パターン
5P :正極電極パターン
7 :第1端子台(固定部材)
8 :制御基板
9 :締結部材
10 :インバータ回路
10A :第1インバータ回路(インバータ回路)
10B :第2インバータ回路(インバータ回路)
10L :アーム
11 :バッテリ(直流電源)
19 :支柱
33 :パワーモジュールの一方側の端部
40 :平滑コンデンサ
50 :基板
51 :第1基板面
51E :第1電極パターン
52 :第2基板面
52E :第2電極パターン
53 :絶縁層
55N :接続用負極端子
55P :接続用正極端子
57 :締結部材貫通孔
59 :支柱貫通孔
E :導電材料
N :負極
P :正極