本発明の実施形態に係る電力変換装置について、図面を参照しながら以下詳細に説明するが、まず、はじめに、本実施形態に係る電力変換装置における、改善改良すべき技術的課題とこの技術的課題を解決するための技術の概要について説明する。
本発明の実施形態に係る電力変換装置は、世の中のニーズに応える製品として次のような技術的観点に配慮したものであり、その1つの観点が小型化技術、すなわち変換する電力の増大に伴う電力変換装置の大型化をできるだけ抑制する技術である。さらに、他の観点が電力変換装置の信頼性の向上に関する技術であり、更なる他の観点が電力変換装置の生産性の向上に関する技術である。そして、本発明の実施形態に係る電力変換装置は、上述した3つの観点、さらにはこれらの観点を総合した観点に基づいて製品化されているのであり、それぞれの観点における電力変換装置の特徴を以下列挙して概説する。
(1)小型化技術に関する説明
本実施形態に係る電力変換装置は、両側に冷却金属を備えた半導体モジュールの内部にインバータの上下アームの直列回路を収納し、半導体モジュールを冷却水内に挿入し、両側の冷却金属を冷却水で冷却する構造を備えている。この構造により冷却効率が向上し、半導体モジュールの小型化が可能となる。また、具体的な構造として、両側の冷却金属の内側にそれぞれ絶縁シートあるいはセラミック板などの絶縁板である絶縁部材を設け、それぞれの絶縁部材に固定した導体金属の間に上下アームの直列回路を構成する上アームおよび下アームの半導体チップを挟み込んでいる。この構造で上アームおよび下アームの半導体チップの両面と冷却金属との間に良好な熱伝導路ができ、半導体モジュールの冷却効率は大きく向上する。
また、半導体モジュールにおいて、冷却水の流れの軸に対して垂直方向に上アームおよび下アームの半導体チップをずらして配置しているので、冷却水路内の冷却水をより効率的に利用でき、冷却効果が向上する。
更に、半導体モジュールの上アームの半導体チップと半導体モジュールの下アームの半導体チップとを、冷却水の流れの軸に対して垂直方向にずらして配置するとともに、上アームの半導体チップに対応した位置の水路と下アームの半導体チップに対応した位置の水路とを分けて、これらの水路を直列に繋ぐ構造とすることで、水路の断面積を冷却対象の半導体チップに合わせて狭くすることができ、結果として水路内の冷却水の流速を高めることが可能となる。この流速を高めることは単位時間当たりの冷却に寄与する水の量を増やすこととなり、冷却効率の大幅向上に繋がる。この上アームまたは下アームの半導体チップに対応した位置に水路を分ける構造は、全体としての冷却構造をそれほど複雑にするものではなく、また、冷却筐体があまり大型化すること無く、冷却効率を大きく向上できる効果がある。
上アームおよび下アームの半導体チップの両面は冷却金属の内側の導体金属(導体板)にそれぞれ接続され、導体金属は絶縁部材を介して冷却金属に固定されている。絶縁部材の厚さは薄く、例えばセラミック板の場合で350μメータ以下、絶縁シートの場合は更に薄く50μメータから200μメータである。ここで、絶縁シートとしては、例えば熱圧着された樹脂のシートである。導体金属が冷却金属に接近して設けられているので、導体金属に流れる電流による渦電流が冷却金属に流れ、渦電流は熱を発生するがこれらの熱は効率良く冷却水に伝達される。
また、渦電流により半導体モジュール内のインダクタンスが低減される。インダクタンス低減は、上アームおよび下アームの半導体チップのスイッチング動作による電圧の跳ね上がりを低減でき、信頼性の向上に繋がる。また、電圧上昇を抑えられることは、上アームおよび下アームの半導体チップのスイッチング動作の高速化を可能とし、スイッチング動作のための時間を短縮でき、スイッチング動作による発熱量の低減に繋がる。
本実施形態に係る電力変換装置では、半導体モジュールの内部にインバータの上下アームの直列回路が収納されているので、半導体モジュールの直流端子をコンデンサモジュールに接続する構造、更にはコンデンサモジュールの端子構造が非常に簡単な構造となり、これによってインバータ装置全体の小型化に大きく貢献すると同時に信頼性の向上や生産性の向上に繋がる。
また、半導体モジュールの直流端子やコンデンサモジュールの端子構造、更にはこれらを接続する構造を、正極側と負極側の端子やこれらの端子につながる導体が互いに接近する構造および互いに対向して配置される構造とすることができ、半導体モジュールとコンデンサ間のインダクタンスの低減を図ることができる。このことにより、上下アームの半導体チップのスイッチング動作による電圧の跳ね上がりを低減でき、信頼性の向上に繋がる。また、電圧上昇を抑えられることは半導体チップのスイッチング動作の高速化を可能とし、スイッチング動作の時間短縮による発熱量の低減に繋がる。発熱量の低減あるいは接続構造の複雑化を抑えられることで、電力変換装置の小型化が可能となる。
また、本実施形態に係る電力変換装置では、冷却効率が大幅に向上するので、冷却水としてエンジン冷却水を使用できる。エンジン冷却水と異なる冷却水で冷却する場合は、自動車は新たな冷却システムを必要とし、電力変換装置が小型化可能となっても自動車全体ではシステムが複雑化する。本実施形態では、電力変換装置が仮に大型化したとしてもエンジン冷却水を利用できることで車全体としては小型化となり、さらに多くの利点を有することとなる。
本実施形態に係る電力変換装置では冷却筐体に半導体モジュールやコンデンサモジュールを固定する構成としているので、半導体モジュールを備えた冷却筐体の表面をコンデンサモジュールを固定する面として利用でき、電力変換装置の小型化が可能となる。さらに、コンデンサモジュールの冷却効率が向上し、またコンデンサモジュールを冷却筐体によって強固に保持できるので、振動に対しても強くなり、小型化と信頼性向上との効果を有している。
(2)信頼性向上に関する説明
本実施形態に係る電力変換装置では、上述のとおり、半導体モジュールの冷却効率を大幅に改善でき、結果的に半導体チップの温度上昇を抑えることが可能となり、信頼性の改善に繋がる。
また、半導体モジュールの低インダクタンスや半導体モジュールとコンデンサモジュール間の低インダクタンス化が可能となり、スイッチング動作による電圧の跳ね上がりを低減でき、信頼性の向上に繋がる。また、電圧上昇を抑えられることは半導体チップのスイッチング動作の高速化を可能とし、スイッチング動作の時間短縮による発熱量の低減に繋がり、引いては温度上昇が抑えられ、信頼性の向上に繋がる。
半導体モジュールの直流端子をコンデンサモジュールに接続する構造、更にはコンデンサモジュールの端子構造が簡単な構造となり、生産性向上や小型化だけでなく、信頼性の向上に繋がる。
本電力変換装置では、冷却効率が大幅に向上するので、冷却水としてエンジン冷却水を使用できる。このため自動車としては、専用の冷却水系が不要となり、自動車全体として信頼性の大きな改善となる。
本電力変換装置では、インバータの上下アームの直列回路を収納した半導体モジュールを、冷却水路に設けられた開口から水路内に挿入して固定する構造を成している。製造ラインで別々に製造された半導体モジュールと水路筐体をそれぞれ別に検査し、その後半導体モジュールを水路筐体に固定する工程を行うことが可能となる。このように電気部品である半導体モジュールと機械部品である水路筐体とをそれぞれ分けて製造および検査することが可能で、生産性の向上はもちろんであるが、信頼性の向上に繋がる。
また、半導体モジュールにおいては、第1と第2の放熱金属にそれぞれ必要な導体や半導体チップを固定し、その後第1と第2の放熱金属を一体化して半導体モジュールを製造する方法をとることが可能である。第1と第2の放熱金属の製造状態をそれぞれ確認した上で放熱金属の一体化の工程を行うことが可能となり、生産性の向上のみならず、信頼性の向上にも繋がる。さらに、半導体モジュールの直流端子や交流端子あるいは信号用端子(信号用エミッタ端子)やゲート端子が半導体モジュールの内部において、第1と第2の放熱金属のどちらかに固定される構造となっており、振動に強くなり、信頼性が向上する。
本電力変換装置では、上アームの半導体チップのコレクタ面が第1の放熱金属に固定される場合に下アームの半導体チップのコレクタ面が同じく第1の放熱金属に固定される構造となり、上下アームの半導体チップのコレクタ面とエミッタ面とが同じ方向となっている。このような構造とすることで、生産性が向上すると共に信頼性が向上する。
また、上下アームの半導体チップと上下アームの信号用端子やゲート端子が同じ放熱金属に固定される構造となっている。このため、半導体チップと信号用端子やゲート端子とを繋ぐワイヤボンディングの接続工程を一方の放熱金属に集めることができ、検査などが容易である。これによって生産性の向上だけでなく信頼性の向上にもつながる。
(3)生産性向上に関する説明
本実施形態に係る電力変換装置では、上述したとおり、半導体モジュールと冷却筐体とをそれぞれ別々に製造し、その後半導体モジュールを冷却筐体に固定する工程を行うようにすることが可能であり、電気系の製造ラインで半導体モジュールを製造することが可能となる。これにより生産性と信頼性が向上する。また、コンデンサモジュールも同様に他の製造工程で製造し、その後水路筐体に固定できるので、生産性が向上する。
また、水路筐体に半導体モジュールとコンデンサモジュールとを固定し、その後半導体モジュールとコンデンサモジュールとの端子接続を行うことができ、さらに接続のための溶接機械を溶接部の導入する空間が確保でき、生産性の向上につながる。また、これら接続工程において、半導体モジュールの端子はそれぞれ半導体モジュールの放熱金属に固定されており、端子溶接時の熱がそれぞれ放熱金属に拡散し、半導体チップへの悪影響を抑えることができ、結果的に生産性の向上や信頼性の向上に繋がる。
また、半導体モジュールの一方の放熱金属に上下アームの半導体チップと上下アームの信号用端子やゲート端子を固定できるので、一方の放熱金属の製造ラインで上アームと下アームの両方のワイヤボンディングを行うことができ、生産性が向上する。
本実施形態に係る電力変換装置は同じ構造の半導体モジュールを量産し、電力変換装置の要求仕様に基づく必要な個数の半導体モジュールを使用する方式を取ることが可能となり、企画化された半導体モジュール量産が可能となり、生産性が向上すると共に低価格化や信頼性向上が可能となる。以上で、3つの技術的観点からみた本発明の実施形態に係る電力変換装置の構造的な特徴と効果についての説明を終える。
次に、本発明の実施形態に係る電力変換装置について、図面を参照しながら以下詳細に説明する。本発明の実施形態に係る電力変換装置はハイブリッド用の自動車や純粋な電気自動車に適用可能であるが、代表例として、本発明の実施形態に係る電力変換装置をハイブリッド自動車適用した場合の制御構成と電力変換装置の回路構成について、図1と図2を用いて説明する。図1はハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。図2は上下アームの直列回路及び制御部を含むインバータ装置、インバータ装置の直流側に接続されたコンデンサからなる電力変換装置と、バッテリと、モータジェネレータと、を備えた車両駆動用電機システムの回路構成を示す図である。
本発明の実施形態に係る電力変換装置では、自動車に搭載される車載電機システムの車載用電力変換装置、特に、車両駆動用電機システムに用いられ、搭載環境や動作的環境などが大変厳しい車両駆動用インバータ装置を例に挙げて説明する。車両駆動用インバータ装置は、車両駆動用電動機の駆動を制御する制御装置として車両駆動用電機システムに備えられ、車載電源を構成する車載バッテリ或いは車載発電装置から供給された直流電力を所定の交流電力に変換し、得られた交流電力を車両駆動用電動機に供給して車両駆動用電動機の駆動を制御する。また、車両駆動用電動機は発電機としての機能も有しているので、車両駆動用インバータ装置は運転モードに応じ、車両駆動用電動機の発生する交流電力を直流電力に変換する機能も有している。変換された直流電力は車載バッテリに供給に供給される。
なお、本実施形態の構成は、車両駆動用以外のインバータ装置、例えば電動ブレーキ装置或いは電動パワーステアリング装置の制御装置として用いられるインバータ装置にも適用できるが、車両駆動用として適用することで最も望ましい効果を発揮する。また、本実施形態の思想がDC/DCコンバータや直流チョッパなどの直流−直流電力変換装置或いは交流−直流電力変換装置など、他の車載用電力変換装置にも適用できるが、車両駆動用として適用することで最ものぞましい効果を発揮する。さらに、工場の設備を駆動する電動機の制御装置として用いられる産業用電力変換装置、或いは家庭の太陽光発電システムや家庭の電化製品を駆動する電動機の制御装置に用いられたりする家庭用電力変換装置に対しても適用可能であるが、上述の通り、車両駆動用として適用することで最も望ましい効果を発揮する。
また、本実施形態が適用された車両駆動用インバータ装置を備えた車両駆動用電機システムを、内燃機関であるエンジン及び車両駆動用電動機を車両の駆動源とし、前後輪のいずれか片方を駆動するように構成されたハイブリッド自動車に搭載する場合を例に挙げて説明する。また、ハイブリッド自動車としては、エンジンにより前後輪のいずれか片方を、車両駆動用電動機により前後輪のいずれか他方をそれぞれ駆動するものもあるが、本実施形態はいずれのハイブリッド自動車にも適用できる。さらに上述のとおり、燃料電池車などの純粋な電気自動車にも適用可能で、純粋な電気自動車においても以下説明の電力変換装置は略同様の作用を為し、略同様の効果が得られる。
図1において、ハイブリッド電気自動車(以下、「HEV」と記述する)10は1つの電動車両であり、2つの車両駆動用システムを備えている。その1つは、内燃機関であるエンジン20を動力源としたエンジンシステムである。エンジンシステムは、主としてHEVの駆動源として用いられる。もう1つは、モータジェネレータ92,94を動力源とした車載電機システムである。車載電機システムは、主としてHEVの駆動源及びHEVの電力発生源として用いられる。モータジェネレータ92,94は例えば永久磁石同期電動機であるが、運転方法によりモータとしても発電機としても動作するので、ここではモータジェネレータと記すこととする。
車体のフロント部には前輪車軸14が回転可能に軸支されている。前輪車軸14の両端には1対の前輪12が設けられている。車体のリア部には後輪車軸(図示省略)が回転可能に軸支されている。後輪車軸の両端には1対の後輪が設けられている。本実施形態のHEVでは、動力によって駆動される主輪を前輪12とし、連れ回される従輪を後輪とする、いわゆる前輪駆動方式を採用しているが、この逆、すなわち後輪駆動方式を採用しても構わない。
前輪車軸14の中央部には前輪側デファレンシャルギア(以下、「前輪側DEF」と記述する)16が設けられている。前輪車軸14は前輪側DEF16の出力側に機械的に接続されている。前輪側DEF16の入力側には変速機18の出力軸が機械的に接続されている。前輪側DEF16は、変速機18によって変速されて伝達された回転駆動力を左右の前輪車軸14に分配する差動式動力分配機構である。変速機18の入力側にはモータジェネレータ92の出力側が機械的に接続が接続されている。モータジェネレータ92の入力側には動力分配機構22を介してエンジン20の出力側及びモータジェネレータ94の出力側が機械的に接続されている。尚、モータジェネレータ92,94及び動力分配機構22は、変速機18の筐体の内部に収納されている。
動力分配機構22は歯車23〜30から構成された差動機構である。歯車25〜28はかさ歯車である。歯車23,24,29,30は平歯車である。モータジェネレータ92の動力は変速機18に直接に伝達される。モータジェネレータ92の軸は歯車29と同軸になっている。この構成により、モータジェネレータ92に対して駆動電力の供給が無い場合には、歯車29に伝達された動力がそのまま変速機18の入力側に伝達される。
エンジン20の作動によって歯車23が駆動されると、エンジン20の動力は歯車23から歯車24に、次に、歯車24から歯車26及び歯車28に、次に、歯車26及び歯車28から歯車30にそれぞれ伝達され、最終的には歯車29に伝達される。モータジェネレータ94の作動によって歯車25が駆動されると、モータジェネレータ94の回転は歯車25から歯車26及び歯車28に、次に、歯車26及び歯車28から歯車30のそれぞれ伝達され、最終的には歯車29に伝達される。尚、動力分配機構22としては上述した差動機構に代えて、遊星歯車機構などの他の機構を用いても構わない。
モータジェネレータ92,94は、回転子に永久磁石を備えた同期機であり、固定子の電機子巻線に供給される交流電力がインバータ装置40,42によって制御されることによりモータジェネレータ92,94の駆動が制御される。インバータ装置40,42にはバッテリ36が電気的に接続されており、バッテリ36とインバータ装置40,42との相互において電力の授受が可能である。
本実施形態では、モータジェネレータ92及びインバータ装置40からなる第1電動発電ユニットと、モータジェネレータ94及びインバータ装置42からなる第2電動発電ユニットとの2つを備え、運転状態に応じてそれらを使い分けている。すなわち、エンジン20からの動力によって車両を駆動している場合において、車両の駆動トルクをアシストする場合には第2電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン20の動力によって作動させて発電させ、その発電によって得られた電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させる。また、同様の場合において、車両の車速をアシストする場合には第1電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン20の動力によって作動させて発電させ、その発電によって得られた電力によって第2電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させる。
また、本実施形態では、バッテリ36の電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータ92の動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本実施形態では、第1電動発電ユニット又は第2電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン20の動力或いは車輪からの動力によって作動させて発電させることにより、バッテリ36の充電ができる。
次に、図2を用いてインバータ装置40,42の電気回路構成を説明する。尚、図1〜図2に示す実施形態では、インバータ装置40,42をそれぞれ個別に構成する場合を例に挙げて説明するが、図7などを使用して後述するようにインバータ装置40,42を1つの装置内に収納してもよい。インバータ装置40,42は同様の構成で同様の作用を為し、同様の機能を有しているので、ここでは、例としてインバータ装置40の説明を行う。
本実施形態に係る電力変換装置100はインバータ装置40とコンデンサ90とを備え、インバータ装置40はインバータ回路44と制御部70とを有している。また、インバータ回路44は、上アームとして動作するIGBT52(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)及びダイオード56と、下アームとして動作するIGBT62及びダイオード66と、からなる上下アーム直列回路50を複数有し(図2の例では3つの上下アーム直列回路50,50,50)、それぞれの上下アーム直列回路50の中点部分(中間電極69)から交流端子59を通してモータジェネレータ92への交流電力線86を引き出す構成である。また、制御部70はインバータ回路44を駆動制御するドライバ回路74と、ドライバ回路74へ信号線76を介して制御信号を供給する制御回路72(制御基板に内蔵)と、を有している。
上アームと下アームのIGBT52,62は、スイッチング用パワー半導体素子であり、制御部70から出力された駆動信号を受けて動作し、バッテリ36から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。この変換された電力はモータジェネレータ92の電機子巻線に供給される。上述のとおり、モータジェネレータ92が発生する三相交流電力を直流電力に変換することもできる。
本実施形態に係る電力変換装置100は3相ブリッジ回路により構成されており、3相分の上下アーム直列回路50,50,50がそれぞれバッテリ36の正極側と負極側との間に電気的に並列に接続されることにより構成されている。ここで、上下アーム直列回路50はアームと呼称されており、上アーム側のスイッチング用パワー半導体素子52及びダイオード56と下アーム側のスイッチング用パワー半導体素子62及びダイオード66を備えている。
本実施形態では、スイッチング用パワー半導体素子として、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)52,62を用いることを例示している。IGBT52,62は、コレクタ電極53,63、エミッタ電極、ゲート電極(ゲート電極端子54,64)、信号用エミッタ電極(信号用エミッタ電極端子55,65)を備えている。IGBT52,62のコレクタ電極53,63とエミッタ電極との間にはダイオード56,66が図示するように電気的に接続されている。ダイオード56,66は、カソード電極及びアノード電極の2つの電極を備えており、IGBT52,62のエミッタ電極からコレクタ電極に向かう方向が順方向となるように、カソード電極がIGBT52,62のコレクタ電極に、アノード電極がIGBT52,62のエミッタ電極にそれぞれ電気的に接続されている。
スイッチング用パワー半導体素子としてはMOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いてもよい。MOSFETは、ドレイン電極、ソース電極及びゲート電極の3つの電極を備えている。なお、MOSFETは、ソース電極とドレイン電極との間に、ドレイン電極からソース電極に向かう方向が順方向となる寄生ダイオードを備えている。このため、IGBTのように、別途、ダイオードを設ける必要がない。
上下アーム直列回路50は、モータジェネレータ92の電機子巻線の各相巻線に対応して3相分設けられている。3つの上下アーム直列回路50,50,50はそれぞれ、IGBT52のエミッタ電極とIGBT62のコレクタ電極63を結ぶ中間電極69、交流端子59を介してモータジェネレータ92へのU相、V相、W相を形成している。上下アーム直列回路同士は電気的に並列接続されている。上アームのIGBT52のコレクタ電極53は正極端子(P端子)57を介してコンデンサ90の正極側コンデンサ電極に、下アームのIGBT62のエミッタ電極は負極端子(N端子)58を介してコンデンサ90の負極側コンデンサ電極にそれぞれ電気的に接続されている。各アームの中点部分(上アームのIGBT52のエミッタ電極と下アームのIGBT62のコレクタ電極との接続部分)にあたる中間電極69は、モータジェネレータ92の電機子巻線の対応する相巻線に交流コネクタ88を介して電気的に接続されている。本実施形態では、後で詳細に述べるが、上下アームからなる1つの上下アーム直列回路50が半導体モジュールの主たる回路構成要素となっている。
コンデンサ90は、IGBT52,62のスイッチング動作によって生じる直流電圧の変動を抑制する平滑回路を構成するためのものである。コンデンサ90の正極側コンデンサ電極にはバッテリ36の正極側が、コンデンサ90の負極側コンデンサ電極にはバッテリ36の負極側がそれぞれ直流コネクタ38を介して電気的に接続されている。これにより、コンデンサ90は、上アームIGBT52のコレクタ電極53とバッテリ36の正極側との間と、下アームIGBT62のエミッタ電極とバッテリ36の負極側との間で接続され、バッテリ36と上下アーム直列回路50に対して電気的に並列接続される。
制御部70はIGBT52,62を作動させるためのものであり、他の制御装置やセンサなどからの入力情報に基づいて、IGBT52,62のスイッチングタイミングを制御するためのタイミング信号を生成する制御回路72(制御基板に内蔵)と、制御回路72から出力されたタイミング信号に基づいて、IGBT52,62をスイッチング動作させるためのドライブ信号を生成するドライブ回路74とを備えている。
制御回路72はIGBT52,62のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンには入力情報として、モータジェネレータ92に対して要求される目標トルク値、上下アーム直列回路50からモータジェネレータ92の電機子巻線に供給される電流値、及びモータジェネレータ92の回転子の磁極位置が入力されている。目標トルク値は、不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、電流センサ80から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。磁極位置は、モータジェネレータ92に設けられた回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では3相の電流値を検出する場合を例に挙げて説明するが、2相分の電流値を検出するようにしても構わない。
制御回路72内のマイコンは、目標トルク値に基づいてモータジェネレータ92のd,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電流指令値と、検出されたd,q軸の電流値との差分に基づいてd,q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相、V相、W相の電圧指令値に変換する。そして、マイコンは、U相、V相、W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号としてドライバ回路74に出力する。ドライバ回路74には、各相の上下アームに対応して6つのPWM信号がマイコンから出力される。マイコンから出力されるタイミング信号としては矩形波信号などの他の信号を用いても構わない。
ドライバ回路74は、複数の電子回路部品を1つに集積した集積回路、いわゆるドライバICによって構成されている。本実施形態では、各相の上下アームのそれぞれに対して1個のICを設ける場合(1アームin1モジュール:1in1)を例に挙げて説明するが、各アームのそれぞれに対応して1個のICを設ける(2in1)、或いは全てのアームに対応して1個のICを設ける(6in1)ようにしても構わない。ドライバ回路74は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する下アームのIGBT62のゲート電極に、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT52のゲート電極にそれぞれ出力する。これにより、各IGBT52,62は、入力されたドライブ信号に基づいてスイッチング動作する。
また、制御部70は、異常検知(過電流、過電圧、過温度など)を行い、上下アーム直列回路50を保護している。このため、制御部70にはセンシング情報が入力されている。例えば各アームの信号用エミッタ電極端子55,65からは各IGBT52,62のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT52,62のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT52,62を過電流から保護する。上下アーム直列回路50に設けられた温度センサ(不図示)からは上下アーム直列回路50の温度の情報がマイコンに入力されている。また、マイコンには上下アーム直列回路50の直流正極側の電圧の情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知及び過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT52,62のスイッチング動作を停止させ、上下アーム直列回路50(引いては、この回路50を含む半導体モジュール)を過温度或いは過電圧から保護する。
図2において、上下アーム直列回路50は、上アームのIGBT52及び上アームのダイオード56と、下アームのIGBT62及び下アームのダイオード66との直列回路であり、IGBT52,62はスイッチング用半導体素子である。インバータ回路44の上下アームのIGBT52,62の導通および遮断動作が一定の順で切り替わり、この切り替わり時のモータジェネレータ92の固定子巻線の電流は、ダイオード56,66によって作られる回路を流れる。
上下アーム直列回路50は、図示するように、Positive端子(P端子、正極端子)57、Negative端子(N端子58、負極端子)、上下アームの中間電極69からの交流端子59、上アームの信号用端子(信号用エミッタ電極端子)55、上アームのゲート電極端子54、下アームの信号用端子(信号用エミッタ電極端子)65、下アームのゲート端子電極64、を備えている。また、電力変換装置100は、入力側に直流コネクタ38を有し、出力側に交流コネクタ88を有して、それぞれのコネクタ38と88を通してバッテリ36とモータジェネレータ92に接続される。
図3は、モータジェネレータへ出力する3相交流の各相の出力を発生する回路として、各相に2つの上下アーム直列回路を使用する電力変換装置の回路構成を示す図である。モータジェネレータの容量が大きくなると電力変換装置で変換される電力量が大きくなり、インバータ回路44の各相の上下アーム直流回路を流れる電流値が増大する。上下アームの電気的な容量を増大することで変換電力の増大に対応することができるが、インバータモジュールの生産量を増大することが好ましく、図3では標準化して生産されたインバータモジュールの使用個数を増やすことで、変換する電力量の増大に対応するようにしている。図3は、一つの例としてインバータ回路44の各上下アーム直流回路を2つ並列接続することで、モータジェネレータの容量に合わせてインバータ回路44の容量を大きくした回路構成である。
電力変換装置の具体的構成として、U相に対して上下アーム直列回路50U1と50U2とを並列接続し、各交流端子59−1と59−2を連結してU相交流電力線とする。モータジェネレータへのU相用として、P端子は57−1(P1端子)と57−2(P2端子)が設けられ、N端子は58−1(N1端子)と58−2(N2端子)が設けられ、交流端子は59−1と59−2が設けられる。V相やW相についても同様にそれぞれ並列接続させている。
この回路構成では、並列接続された各相の上下アーム直列回路、例えば上下アーム直列回路50U1と50U2との各P端子とN端子間の電圧が等しくなり、また各上下アーム直列回路50U1と50U2とに常に均等に電流が分配されることが望ましい。そのためには、並列接続された上下アーム直列回路50U1と50U2との分布インダクタンスやその他の電気的な条件をできるだけ等しくすることが望ましい。
以下に説明する本実施形態に係る電力変換装置では上下アーム直列回路50U1を内蔵する半導体モジュール50U1と上下アーム直列回路50U2を内蔵する半導体モジュール50U2とを隣接して配置すると共にこれらの各P端子及びN端子とコンデンサモジュールの端子との間隔を等しくすると共に接続方法など電気的な条件を合わせるようにしているので(図13を参照)、各相例えばU相を構成する上下アーム直列回路50U1を内蔵する半導体モジュール50U1と上下アーム直列回路50U2を内蔵する半導体モジュール50U2とに流れる電流は略等しくなり、またこれら半導体モジュール50U1と50U2の端子電圧はほぼ等しくなる。インバータ回路44の各相を構成する並列接続された上下アーム直列回路は同様のタイミングでスイッチング動作することとなるので、制御部70からはU相、V相、W相の各相毎に同じ信号がこれらの相を構成する各上下アーム直列回路に送られる。
また、図1に記載するように車両に2つのモータジェネレータ有する場合、車両は図2または図3に記載の電力変換装置を2組有することと成る。図2の回路となるか図3の回路となるかは、上述のとおり、モータジェネレータの仕様で決まる。図2に記載の回路ではモータジェネレータの電力に対して不足している場合には、図3の如く規格化された半導体モジュールの使用数を増やして対応することとなる。2つのモータジェネレータに対して図2又は図3に示す電力変換器をそれぞれ設けてもよいが、1つの電力変換装置に2つのインバータ回路を設けるようにし、1つの水路筐体に2つのインバータ回路を構成する半導体モジュールを設けることで2つの電力変換装置を設けるより、遥かに小さくなる。また、生産性や信頼性の観点でも2つの電力変換装置を設けるより優れている。このような2つのインバータ回路を備えた電力変換装置は図7を用いて後述する。
次に、本発明の実施形態に係る電力変換装置における半導体モジュールの製造方法と構造について、図18〜図28を参照しながら以下詳細に説明する。図18は本実施形態に係る電力変換装置における上下アーム直列回路を内蔵する放熱フィン付き半導体モジュールの外観を示す図である。図19は図18に示す半導体モジュールの断面図である。図20はケースを含めた半導体モジュールの展開図である。図21は図20に示す半導体モジュールの断面図である。
また、図22は本実施形態に関する半導体モジュールの一方の側の放熱フィン(A側)と他方の側の放熱フィン(B側)を展開して内部構造を斜視的に示す図である。図23は半導体モジュールの放熱フィン(A側)の内側に固着される上下アーム直列回路の構造を示す図である。図24は半導体モジュールの放熱フィン(B側)の内側に固着される上下アーム直列回路の構造を示す斜視図である。図25は半導体モジュールの放熱フィン(A側)の内側に固着される上下アーム直列回路の構造を示す斜視図である。図26は図25の正面図である。図27は半導体モジュールの放熱フィンの内側に真空熱圧着される導体板の構造とワイヤボンディング状態を示す斜視図である。図28は半導体モジュールの放熱フィンに絶縁シートを介して導体板を真空熱圧着する説明図である。
図18〜図21において、本実施形態に関する半導体モジュール500は、一方の側である放熱フィン(A側)522(なお、放熱フィンとは凹凸のあるフィン形状部分のみを称するのではなくて、放熱金属の全体を云う)、他方の側である放熱フィン(B側)562、両放熱フィン522,562に挟み込まれた上下アーム直列回路50、上下アーム直列回路の正極端子532や負極端子572や交流端子582を含めた各種端子、トップケース512やボトムケース516やサイドケース508、を備えている。図19と図20に示すように、放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562に絶縁シートを介してそれぞれ固着された導体板上の上下アーム直列回路(その製造方法は後述する)が放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562に挟み込まれた状態において、ボトムケース516、トップケース512、サイドケース508を取り付け、両放熱フィン522,562の間にトップケース512側からモールド樹脂を充填して一体化構造として半導体モジュール500を形成する。
半導体モジュール500は、外観として、図18に示すように、冷却水路に臨む放熱フィン(A側)と放熱フィン(B側)が形成され、トップケース512からは上下アーム直列回路50の正極端子532(図2のP端子57に相当)、負極端子572(図2のN端子58に相当)、交流端子582(図2の交流端子59に相当)、信号用端子(上アーム用)552、ゲート端子(上アーム用)553、信号用端子(下アーム用)556、ゲート端子(下アーム用)557が突出する構造である。
半導体モジュール500の外観形状は略直方体形状で、放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562とは面積が大きく、放熱フィン(B側)の面を前面とし放熱フィン(A側)を後面とすると、サイドケース508を有する側およびその反対側である両側面および底面および上面は、前述の前面又は後面に比べて、狭くなっている。半導体モジュールの基本的な形状が略直方体形状であり、放熱フィン(B側)や(A側)が方形であるのでの切削加工が容易であり、また、半導体モジュールが製造ラインで転がり難い形状であり、生産性に優れている。さらに全体の体積に対する放熱面積の割合が大きく取れ、冷却効果が向上する。
なお、本実施形態では、放熱フィン(A側)522あるいは放熱フィン(B側)562は、半導体チップを挟み込むと共に半導体モジュール内部の導体を保持するための金属板と熱を放散するためのフィンとが一つの金属で作られている。この構造は放熱効率を高めるのに優れている。しかし、やや放熱効率が低下するが、半導体チップを挟み込むと共に半導体モジュール内部の導体を保持するための金属板と放熱フィンとを別体に形成しこれを貼りあわせる構造でも使用できる。
また、略直方体形状の狭い方の一方の面である上面に正極端子532(図2のP端子57に相当)、負極端子572(図2のN端子58に相当)、交流端子582(図2の交流端子59に相当)、信号用端子(上アーム用)552、ゲート端子(上アーム用)553、信号用端子(下アーム用)556、ゲート端子(下アーム用)557を集められており、水路筐体に半導体モジュール500を挿入するし易さの点で優れている。また、このような端子が設けられている上面の外形が、図18に図示するように、底面側の外形より大きく作られており、製造ラインなどで半導体モジュールが移動する場合最も傷つき易い端子部が保護できる。すなわち、トップケース512の外形がボトムケース516の外形より大きく作られていることで、後述する冷却水路開口の密閉性に優れている効果以外に、半導体モジュールの製造時や運搬時、水路筐体への取付け時での半導体モジュールの端子を保護できる効果がある。
上述した端子の配置によると、正極端子532と負極端子572とは、それぞれ断面積が長方形の板状形状で、さらに互いに対向するように配置され、半導体モジュールの一方の側面に接近して配置されている。側面側に正極端子532と負極端子572とを配置しているので、コンデンサモジュールなどへの配線が容易になる。また、正極端子532や負極端子572の接続端と交流端子582の接続端とは半導体モジュールの前後方向(半導体モジュールの両側面を結ぶ方向)においてそれぞれずれて配置されている。このため電力変換装置の製造ラインでの正極端子532や負極端子572の接続端と他の部品との接続および交流端子582の接続端と他の部品との接続のための器具を使用する空間が確保できやすく、生産性に優れている。
自動車用の電力変換装置はマイナス30度以下、マイナス40度近くまで冷える可能性がある。また一方、100度以上の温度、まれには150度近くの温度となる可能性がある。このように自動車に搭載する電力変換装置では使用温度範囲が広く熱膨張変化を十分に考慮することが必要である。また振動が常に加わる環境で使用される。図18から図21を用いて説明した半導体モジュール500は2つの放熱金属で半導体チップを挟み込む構造を有している。この実施形態では放熱金属の一例として熱放出機能が優れている放熱フィンを有する金属板を用いており、本実施形態で放熱フィン522(A側)と放熱フィン562(B側)として説明している。
上述の半導体チップを挟み込んだ構造において、上記2つの放熱金属の両側をトップケース512とボトムケース516とで固定する構造を備えている。特にトップケース512とボトムケース516は上記2つの放熱金属をその外側から挟み込んで固定する構造を有している。このような構造により、放熱金属の外側から内側に向けて常に力が加わり、振動や熱膨張により2つの放熱金属間に互いに開こうとする方向の大きな力が生じるのを防止できる。長期間にわたり自動車に搭載しても故障しない、信頼性の高い電力変換装置を得ることができる。
さらに、本実施形態では、上記2つの放熱金属に加え、サイドケースを含めて上記トップケース512とボトムケース516とでこれらを外周側から挟み込んで固定する構造がとられているので、さらに信頼性が向上する。
半導体モジュールの正極端子532、負極端子572、交流端子582、信号用端子552と554、ゲート端子553と556を一方のケースであるトップケース512の内部の孔を介して外部に突出させるようにし、この孔をモールド樹脂502で密閉する構造としている。トップケース512としては高い強度の材質が使用され、また上記2つの放熱金属の熱膨張係数が考慮されて熱膨張係数の近い材料、例えば金属材で作られる。上記モールド樹脂502はケース512の熱膨張変化による応力を吸収して上記端子に加わる応力を低減する作用をしている。このため本実施形態の電力変換装置は、上述の如く温度変化の範囲が広い状態でも、あるいは常時振動が加わる状態でも使用することができる高い信頼性を有している。
図22〜図28を参照して、両放熱フィン522,562の間に挟み込まれた上下アーム直列回路(例示として、2アームin1モジュール構造)の形成方法と構造を以下説明する。
本実施形態に関する半導体モジュールの製造方法の基本的なプロセスを順に示す。放熱金属の板、例えば本実施形態ではフィン構造を備えた金属板である放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562を基礎素材としてそれぞれの内側に絶縁シート(A側)524と絶縁シート(B側)564を真空熱圧着で固着し(図28を参照)、絶縁シート524(A側)に正極側の導体板534及び第1の導体板544を真空熱圧着で固着し、絶縁シート564(B側)に負極側の導体板574と交流用の導体板(第2の導体板)584を固着する。放熱フィン(A側)522及び絶縁シート(A側)524への導体板534,544の固着は図25と図26に示し、放熱フィン(B側)562及び絶縁シート(B側)564への導体板574,584の固着は図24に示す。
さらに合わせて、絶縁シート524(A側)に、信号用端子(上アーム用)552の信号用導体554やゲート端子(上アーム用)553のゲート用導体555、信号用端子(下アーム用)556の信号用導体558やゲート端子(下アーム用)557のゲート用導体559を固着する。これらの配置関係は図23に示すとおりである。
絶縁シート(A側)524と絶縁シート(B側)564とは、以下に説明する、インバータ回路の上下アームの直列回路を構成する半導体チップや導体と放熱フィン(A側)522や放熱フィン(B側)562とを電気的に絶縁する絶縁部材として機能すると共に、半導体チップなどからの発生熱を放熱フィン(A側)522や放熱フィン(B側)562に伝導する熱伝導路を形成する働きをする。絶縁部材としては、樹脂製の絶縁シートまたは絶縁板であっても良いし、セラミック基板であっても良い。例えばセラミック基板の場合で絶縁部材の厚さは350μメータ以下、絶縁シートの場合は更に薄く50μメータから200μメータであることが望ましい。ただ、後述するインダクタンス低減においては絶縁部材は薄い方が効果が大きく、セラミック基板より樹脂製の絶縁シートの方が特性的に優れている。
次に、放熱フィン(A側)522の導体板534,544に設けた凸部536,540,545,548に半田層537,541,546,549を介在させてIGBTチップ538,547及びダイオードチップ542,550をはんだ付けする(図23を参照)。この際、正極側の導体板534と第1の導体板544が互いに絶縁状態で設けられ、それぞれの導体板534,544にIGBTチップ及びダイオードチップをはんだ付けする。さらに、図2に示すように、上アームのエミッタ電極と下アームのコレクタ電極を連結する接続板594がチップ547,550と同様にして第1の導体板544にはんだ付けされ、接続板594が交流用の導体板(第2の導体板)584との当接接続によって、上下アームの中間電極69(図2を参照)を構成する。
次に、放熱フィン(A側)522の導体板534の上にはんだ付けされた上アームのIGBT538の信号用エミッタ電極661と信号用端子(上アーム用)552の信号用導体554との間、及び上アームのIGBT538のゲート電極662とゲート端子(上アーム用)553のゲート用導体555との間をワイヤボンディングで接続する(図27を参照)。同様にして放熱フィン(A側)522の第1の導体板544の上にはんだ付けされた下アームのIGBT547の信号用エミッタ電極と信号用端子(下アーム用)556の信号用導体558との間、及び下アームのIGBT547のゲート電極とゲート端子(下アーム用)557のゲート用導体559との間をワイヤボンディングで接続する(図27を参照)。
図23に示すとおり、放熱フィンの一方である、放熱フィン(A側)522に上アームと下アームを構成する両方の半導体チップを固定し、これら半導体チップに信号を制御するための信号用導体554,558とゲート用導体555,559を設けている。このように一方の絶縁部材に上下アーム用の半導体チップとその制御線を固定しているので、ワイヤボンディングなどの信号線と半導体チップとの接続作業を製造工程の中で集中でき、生産性と信頼性の向上となる。
また、自動車用の如く振動の大きい環境で使用する場合、配線すべき一方の半導体チップと他方の制御線との両方が同じ部材である一方の放熱フィンに固定されているので、耐振性が向上する。
図23に示す構造では上アーム用の半導体チップと下アーム用の半導体チップとを同じ向きに、すなわちそれぞれのコレクタ面が絶縁部材である絶縁シート524に固着されている。このように半導体チップの方向を合わせることで作業性が向上する。このことはダイオードチップに対しても同じである。
図23の構造では上アーム用の半導体チップと下アーム用の半導体チップとを端子の引き出し方向において奥側と手前側に分けて配置している。この端子の引き出し方向は、後述するとおり、水路への挿入方向と一致している。水路への挿入方向において奥側と手前側に分けて上アーム用の半導体チップと下アーム用の半導体チップとを分けて配置している。このような配置とすることで、半導体モジュール内の電気部品の配置が規則的となり、全体として小型化される。また、熱源が規則的に分かれるので(発熱源である複数のIGBTの内の各IGBTのオンオフが規則的に変化して動作するので)熱の分散に優れ、また放熱面が規則的に分かれるので、半導体モジュールが比較的小型化されても放熱面が有効的に作用し冷却効果が向上する。
次に、放熱フィン(B側)562について説明する。放熱フィン(B側)562に絶縁部材である絶縁シート564を介して真空熱圧着された導体板が固着されている。図24に示すように、交流端子582を引き出す交流用の導体板584と負極端子572を引き出す負極側の導体板574が互いに絶縁部材である絶縁シート564の上に絶縁状態で配設され、それぞれの導体板574,584上には図示するように凸部576,578,586,588を設ける。凸部576,586はIGBTチップに接続され、凸部578,588はダイオードチップに接続される。
図24において、部分拡大図S1に示すように、D1とD2は凸部の厚さを表し、D1>D2であるのは、ダイオードチップがIGBTチップより厚いためである。放熱フィン(A側)522の内側においては、図23に示すように、上アームのエミッタ電極とダイオードのアノード電極が正極端子532を有する正極側の導体板534上に突き出た形状を表出しており、また、導体板544には下アームのエミッタ電極とダイオードのアノード電極が突き出た形状で表出され且つ中間電極69を構成する接続板594が突き出た形状で表出されている。
続いて、放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562とを図22に示すように対向させて、放熱フィン(A側)522のIGBTチップ538,547とダイオードチップ542,550との電極が連結するように、放熱フィン(B側)562の導体板574,584上の凸部586,588,576,578を対面させてはんだ付けする。また、放熱フィン(A側)522の第1の導体板544に設けた接続板594は、放熱フィン(B側)562に設けた交流用の導体板584に対面するように配置されておりはんだ付けされる。次に、ボトムケース516、トップケース512及びサイドケース508が、一体的構造となった放熱フィン(A側)522及び放熱フィン(B側)562に対して、接着剤で接着される(図20を参照)。さらに、トップケースの孔513からモールド樹脂を内部に充填させて半導体モジュール500を形成する。
図22や図24に示すように、一つの絶縁部材に直流端子の一方と交流端子とを配置している。このように放熱フィン(B側)562には配線部材を配置し、放熱フィン(A側)522に半導体チップを集中的に配置した構成をとることで生産性が向上する。
また、正極端子532や負極端子572、交流端子582と半導体モジュール内部のそれぞれの導体板534、574、584とが一体物として形成されており、生産性が向上する。さらにこれら導体は絶縁部材を介してそれぞれ放熱金属に固着されると共に半導体チップを挟み込んでいる。挟み込んでいる半導体チップからの反力でこれら導体板はそれぞれ放熱金属に押し付けられる方向の力を受け、上記固着の信頼性が向上する。上述の如く端子とそれぞれの導体とが一体として形成されているので導体のみならず端子の固定に関する信頼性も向上する。従って自動車の電力変換装置に上記構造の半導体モジュールを適用する場合、振動などの加わる環境において高い信頼性を維持できる。
次に、本実施形態に関する半導体モジュールにおける工夫された回路配置による低インダクタンス化について、主として、図34と図35を参照しながら説明する。まずその前に、半導体チップの取り付け方法について、図2、図22、図24、図25を用いて再度まとめて説明する。ここで、上アームについて説明すると、放熱フィン(A側)522において、正極端子532(P端子)となる正極板の導体板534(Cuリード)にIGBTとダイオードからなる半導体チップのコレクタとカソードを半田付けし、半導体チップの表面にIGBTのエミッタ電極とダイオードのアノード電極を露出させる。放熱フィン(B側)562において、交流用の導体板584(Cuリード)上に、放熱フィン(A側)522のエミッタ電極とアノード電極に対向して、凸部586,588を設ける。交流用の導体板584の延長部に交流端子582(モータジェネレータ92のU相、V相又はW相に連結する端子)を設ける。そして、放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562を重ね合わせて半田付けすると、図2の上アーム52,56の回路が形成され、交流端子582と正極端子532が図18、図22に示すようにトップケース512から突出した形状となる。
以上は、基本的な構造を示したものであるが、本実施形態では、放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562に上述した上アーム(上の半導体チップ)に加えて、下アーム(下の半導体チップ)も同様にして形成するものである。図23に示すように、下アームとしての図2のIGBT62とダイオード66を、上アームと同様にして、放熱フィン(A側)522の導体板544上にはんだ付けする。この際、放熱フィン(A側)522の導体板は上下二段になっていて、それぞれの段に上下アームの半導体チップを半田付けして、その表面にIGBTのエミッタ電極とダイオードのアノード電極を露出させる。放熱フィン(B側)562の導体板574,584上には、放熱フィン(A側)522の上下アームのエミッタ電極とアノード電極に対向する位置に、凸部576,578,586,588を設け、放熱フィン(B側)562下段の導体板574の延長部に負極端子572を設けるとともに、上段の導体板584の延長部に交流端子582を設ける。
このような構造によって、上アームのIGBTチップ538のエミッタ電極とアノード電極542は凸部586と凸部588を通して交流端子582に接続し、さらに、下アームのIGBTチップ547のコレクタ電極とカソード電極は導体板544及び突起形状の接続板594を通して交流用導体板584に接続されて交流端子582に通じており、さらに、下アームのエミッタ電極547とアノード電極550は凸部576,578を通して負極端子572に通じており、図2に示す回路構成が形成される。図23は放熱フィン(A側)522の突き合わせ面を示し、図24は放熱フィン(B側)562の突き合わせ面を示しており、これらの突き合わせ面同士を突き合わせて、はんだ付けして半導体モジュールの主要部を形成する。
図18から図28に示す如く、本実施形態に係る電力変換装置では、半導体モジュール500は2つの放熱金属で半導体チップを挟み込む構造を有している。なお、この実施形態では放熱金属の一例として熱放出機能が優れている放熱フィンを有する金属板、放熱フィン522(A側)と放熱フィン562(B側)、が用いられている。半導体チップであるIGBTチップ538や547が2つの放熱金属の内側に設けられた導体板で挟まれる構造となっている。この構造により電気接続用はんだとして低融点半田を使用できる。低融点半田を使用した場合、一度はんだが溶融して半導体チップを一方の放熱金属に固定した後、他方の放熱金属で挟み込んで電気接続する過程で上記はんだ部分が再度溶融する可能性がある。
しかし、上記の如く半導体チップの両側電極、例えば本実施形態ではIGBTチップのコレクタ電極とエミッタ電極とを強く挟み込む固定方法を採用しているので、はんだ層が再度溶融しても障害となる問題が発生しない。このため低融点はんだを使用できる。低融点はんだは高融点はんだに比べ生産性が良いだけでなく、高融点はんだに比べ熱伝導性が優れており、低融点はんだを使用できる構造とすることで耐熱性に優れた半導体モジュールがえられ、自動車に搭載する電力変換装置に適用した場合信頼性の観点で大きな効果が得られる。
図18から図28に示す如く、本実施形態に係る電力変換装置では、半導体モジュール500は2つの放熱金属で半導体チップを挟み込む構造を有している。このように放熱金属に半導体チップを挟み込む構造とすることで、常に振動が加わりさらに使用温度範囲の非常に広い環境で使用可能な、自動車用の電力変換装置を得ることができる。また、本実施形態は、半導体チップを挟み込んだ上記2つの放熱金属の上側をトップケース512で固定し、上記トップケース512から、半導体モジュールの正極端子532、負極端子572、交流端子582が外に突出する構造を有し、外に突出している上記半導体モジュールの正極端子532、負極端子572、交流端子582の根元に端子の断面積が狭くなる部分を有している。各端子の半導体モジュール内部の導体534,574,584は一方または他方の放熱金属に固定され、振動に強い構造となっている。さらに図面に示されていないが、外部に突出した端子と上記内部導体との間にそれぞれ断面積の小さい部分を設けることで、外部からの振動による応力や熱膨張による応力がそのまま内部導体に加わるのを低減している。
次に、本実施形態における半導体モジュールの低インダクタンス化について、図34と図35を用いて説明する。過渡的な電圧上昇や半導体チップの大きな発熱は、インバータ回路を構成する上あるいは下アームのスイッチング動作時に発生するので、特にスイッチング動作時のインダクタンスを低減することが望ましい。過渡時にダイオードのリカバリ電流が発生するので、このリカバリ電流に基づき、一例として下アームのダイオード66のリカバリ電流を例としてインダクタンス低減の作用を説明する。
ダイオード66のリカバリ電流とはダイオード66に逆バイアスであるにもかかわらず流れる電流であり、ダイオード66の順方向状態でダイオード66内に満たされたキャリアに起因すると一般に言われている。インバータ回路を構成する上あるいは下アームの導通動作あるいは遮断動作が所定の順に行われることでインバータ回路の交流端子には3相交流電力が発生する。今、上アームとして動作している半導体チップ52が導通状態から遮断状態に切り替わると、モータジェネレータ92の固定子巻線の電流を維持する方向に下アームのダイオード66を介して還流電流が流れる。この還流電流はダイオード66の順方向電流であり、ダイオード内部はキャリアで満たされる。次に、上アームとして動作している半導体チップ52が遮断状態から再び導通状態に切り替わると、下アームのダイオード66に上述したキャリアに起因するリカバリ電流が流れる。定常的な動作では上下アーム直列回路のどちらかが必ず遮断状態にあり、上下アームに短絡電流が流れることが無いが、過渡状態の電流例えばダイオードのリカバリ電流は上下アームで構成する直列回路を流れる。
図34と図35で上下アーム直列回路の上アームとして動作するIGBT(スイッチン用半導体素子)52がオフからオンに変化したとき、正極端子532(57)からIGBT52、ダイオード66を通って負極端子572(58)にダイオード66のリカバリ電流が流れる(図に矢印で示す)。なお、このとき、IGBT62は遮断状態にある。このリカバリ電流の流れをみると、図34に示すように、正極端子532と負極端子572の近傍では導体板が並行して配置され、且つ逆向きの同一電流が流れる。そうすると、導体板の間の空間では互いの電流によって発生する磁界が打ち消し合うことになり、結果として電流経路のインダクタンスが低下することとなる。
すなわち、正極側の導体534および端子532と負極側の導体574および端子572とが接近して対抗して配置されたラミネート状態にあることでインダクタンスの低減作用が生じる。図35は図34の等価回路であり、正極側の導体534および端子532の等価コイル712が負極側の導体574および端子572の等価コイル714と互いに磁束を打ち消す方向に作用し、インダクタンスが低減される。
さらに、図34に示すリカバリ電流の経路をみると、逆方向且つ並行電流の経路に続いて、ループ形状の経路が生じている。このループ形状経路を電流が流れることによって、放熱フィン(A側)と放熱フィン(B側)には渦電流605,606が流れることとなり、この渦電流による磁界打ち消し効果によってループ形状経路におけるインダクタンスの低減作用が生じる。図35の等価回路で、渦電流を生じる現象を等価的にインダクタンス722と724と726で表現した。これらのインダクタンスは放熱フィンである金属板に接近して配置されているので、誘導により発生する渦電流が発生する磁束と打ち消しあう関係となり、結果として半導体モジュールのインダクタンスが渦電流効果によって低減することとなる。
以上のように、本実施形態に関する半導体モジュールの回路構成の配置によって、ラミネート配置による効果と渦電流による効果によってインダクタンスを低減することができる。スイッチング動作時のインダクタンスを低減することが重要であり、本実施形態の半導体モジュールでは、上アームと下アームの直列回路を半導体モジュール内に収納している。このため上下アーム直列回路を流れるダイオードのリカバリ電流に対して低インダクタンス化が可能となるなど、過渡的な状態でのインダクタンス低減効果が大きい。
インダクタンスが低減すれば、半導体モジュールで発生する誘起電圧は小さくなり、低損失の回路構成を得ることができ、また、インダクタンスが小さいことによってスイッチング速度の向上に繋げることができる。さらに、図31の説明で後述するが、以上述べた上下アーム直列回路50からなる半導体モジュール500を複数並列にして、コンデンサモジュール95内の各コンデンサ90と接続して大容量化を図った場合において、半導体モジュール500自体のインダクタンスが低減することによって、電力変換装置100内の半導体モジュール500によるインダクタンスのバラツキの影響が少なくなり、インバータ装置の動作が安定する。
また、モータジェネレータの大容量化(例えば、400A以上)が求められる場合において、コンデンサ90も大容量とする必要があり、図31に示すように、個々のコンデンサ90を多数並列接続しコンデンサ端子96を図示するように並列状に配置すると、個々の半導体モジュールの正極端子532及び負極端子572と個々のコンデンサ端子96とは等距離接続することになり、それぞれの半導体モジュールに流れる電流は均等に分配され、バランスの良い低損失のモータジェネレータの動作を図ることができる。さらに、半導体モジュールの正極端子と負極端子の並行配置によって、ラミネート効果でインダクタンスが低減することと相俟って低損失の動作を行わせることができる。
次に、本実施形態に係る電力変換装置の構成例について、図面に開示された具体的内容を説明する。図18は本実施形態に関する放熱フィン付き半導体モジュールの外観を示す図であり、図19は図18に示す一点鎖線断面を矢印方向からみた半導体モジュールの断面図であり、図20は本実施形態に関する半導体モジュールの展開図であって、上下アーム直列回路の各種端子、放熱フィン、ケースを示す図である。また、図21は図20に示す一点鎖線断面を矢印方向からみた図であって、ボトムケース516とトップケース512を接着によって放熱フィン522,562に固着する状況を示す図である。図22は本実施形態に関する半導体モジュールにおける、放熱フィン(A側)の導体板に設置したIGBTチップ及びダイオードチップ及び接続板と、放熱フィン(B側)の導体板の凸部とをはんだ付けすることを表す展開図である。
図23は放熱フィン(A側)の導体板上に、IGBTチップ及びダイオードチップ及び接続板をどのように設置するかの具体的構造を示したものであり、その詳細は上述したとおりである。図24は放熱フィン(B側)の導体板上の凸部の具体的配置を示し、部分拡大図S1で凸部の厚さD1とD2が異なるのは上述したとおりである。図25は放熱フィン(A側)の導体板上の凸部の具体的配置を示す斜視図であり、S2は部分拡大表示であって、D3は凸部540の厚さ、D4は凸部536の厚さ、D5は凸部592の厚さを表しており、厚さが異なるのはダイオードチップ、IGBTチップ、接続板594のそれ自体の厚さが異なるのを補償するものである。図26は図25の正面図である。図27は放熱フィン(A側)の導体板と放熱フィン(B側)の導体板が重なり合った状態と、上下アーム直列回路のIGBTにおけるエミッタ電極端子661およびデート電極端子662と、信号用導体554およびゲート用導体555とのワイヤボンディング状態を示す図である。図28は放熱フィン522,562に絶縁シート524,564を真空熱圧着することを示す図である。
図23と図27において、上アーム52のエミッタ電極538は矩形形状を図示しており、その矩形形状のエミッタ電極538と隔ててその上方部に信号用エミッタ電極端子661(図2の符号55に相当)とゲート電極端子662(図2の符号54に相当)が形成されている。上述したように、信号用エミッタ電極端子661と信号用導体554をワイヤボンディングし、ゲート電極端子662とゲート用導体555をワイヤボンディングする。放熱フィン(B側)562において、矩形形状のエミッタ電極538を覆うように凹部形状の交流用導体板584が形成されていて、この凹部の窪み部分を通して信号用エミッタ電極端子661とゲート電極端子662が露出している。図23と図27に示す構成例においては、放熱フィン(A側)522に設けられた矩形形状のエミッタ電極538と、放熱フィン(B側)562に設けられた凹部形状の交流用導体板584を示している。
図27に示す点線枠で囲った拡大表示図に示されたエミッタ電極538と交流用導体板584はIGBTチップのエミッタ電極の形状において電流容量や放熱の観点で改善されており、この形状変更による改善について図41を用いて説明する。通常のIGBTは図23に示す如く、エミッタ電極が略四角形で、この四角形の外側領域に信号用エミッタ電極端子661とゲート電極端子662、更に必要に応じその他の電極が設けられている。
この場合、図24に記載のように略四角のエミッタ電極と導体574や導体584とが電気的に接続される。
図27や図41ではIGBTチップ52におけるエミッタ電極538の面積の割合を大きくしている。すなわち図23に示す矩形形状に代えて、信号用エミッタ電極661とゲート電極662のみが露出するようにエミッタ電極の領域を凹形状とし、この凹部の領域に信号用エミッタ電極端子661とゲート電極端子662、更に必要に応じその他の電極を設けている。さらに凹部を有する拡大されたエミッタ電極が交流用導体板584や導体574と電気的に接続するように、上記導体584や574にも凹部を設け、エミッタ電極との接続面積が拡大する構成としている。このエミッタ電極の面積拡大によってIGBTチップ52のエミッタの電流密度が低下すると共に放熱面積が増大する。さらに、面積の拡大したエミッタ電極538の凹形状の外縁に対面するように交流用導体板584や導体574に凹形状を設けることで導体板584や574の面積を拡大し(図24に示す交流用導体板584や574はエミッタ電極に対応た形状で凹形状の窪み部分を有していないのに比べて、図27や図41は窪み部分を有している)、熱拡散の向上を図っている。
次に、本実施形態に関する半導体モジュールとコンデンサモジュールとの接続について、図31、図32及び図33を参照しながら説明する。ここでコンデンサモジュールは1個の電解コンデンサあるいはフィルムコンデンサで構成しても良いが、少ない体積でより大きな容量を得ることが望ましく、複数個の電解コンデンサあるいはフィルムコンデンサを電気的に並列接続して構成する方が望ましい。また複数個の単位コンデンサを並列接続し、その外側を放熱に優れた金属で覆うことにより、小型で信頼性の高いコンデンサモジュールが得られる。フィルムコンデンサに比べ電解コンデンサは発熱量が大きく特にその効果が大きい。
また、外側を金属で覆うことにより、コンデンサモジュール内の単位コンデンサの電力変換装置内での固定が強固となり、振動に強くなる。例えば自動車の振動にはいろいろな成分の周波数が含まれており、上記コンデンサモジュール内の単位コンデンサが共振する恐れがある。1個あるいは複数個の単位コンデンサをコンデンサモジュール内で強固に固定し、さらに後述するようにコンデンサモジュールを電力変換装置内で強固に固定する、例えば水路筐体に強固に固定することが望ましい。
図31は本実施形態に係る電力変換装置のコンデンサモジュールの接続端子を示す図であり、図32は本実施形態に関する半導体モジュールとコンデンサモジュールとの接続状態を示す斜視図であり、図33はこの接続状態を示す断面図である。図面において、390はコンデンサモジュール、96はコンデンサ端子、611はコンデンサ正極端子、612はコンデンサ負極端子、613は絶縁ガイド、533は半導体モジュールの正極端子の櫛歯、573は半導体モジュールの負極端子の櫛歯、630は挿入口、をそれぞれ表す。
コンデンサモジュール390は、図示の例で、モータのU相、V相、W相に対応してそれぞれコンデンサ端子96が設けられている。端子96の数に対応してコンデンサモジュール内部にはそれぞれコンデンサ90が設けれている。
コンデンサ端子96の正極端子611と負極端子612は、半導体モジュール390の正極端子532と負極端子572の櫛歯形状533,573と同様に、図示するような櫛歯形状で構成されている。コンデンサモジュール390と半導体モジュールの接続端子を互いに櫛歯形状とすることによって、両者の接続端子間の溶接やその他の固着接続がし易くなっている。また、コンデンサモジュール390の端子には中央部に絶縁ガイド613が設けられ、絶縁ガイド613が正極端子611と負極端子612の絶縁を図るとともに、絶縁ガイド613を半導体モジュールの挿入口630に挿入することで、コンデンサモジュールと半導体モジュールの接続端子同士の接続ガイド機能をも奏している。
本実施形態では半導体モジュール500の各直流側の端子に対応してコンデンサモジュール390の直流端子が設けられており、コンデンサモジュール390の端子と半導体モジュールの端子間のインダクタンスの低減が図られている。この実施形態の如く、コンデンサモジュールの端子と半導体モジュールの端子を直接接続することはインダクタンス低減の観点で好ましいことであるが、コンデンサモジュールと半導体モジュールとを接近して配置できない状況も考えられる。図2や図3に示す如く、コンデンサとインバータ回路の各上下アーム直列回路とは並列接続の関係にあり、例えば直流正極導体と直流負極導体を対向して配置した直流バスバーを使用し、この直流バスバーの一端をコンデンサモジュール390の正極端子611と負極端子612とに接続し、上記直流バスバーの他端を半導体モジュールの正極端子532と負極端子572とに接続するようにしても良い。上記直流バスバーを構成する直流正極導体と直流負極導体とがそれぞれ発生する磁束が互いに打ち消し合うように導体をできるだけ接近させて対向配置することで、インダクタンスの増加を抑えることができる。
図3に記載の如くインバータ回路の各相が複数個の上下アーム直列回路の並列接続で構成される場合は、上記直流バスバーを使用する場合であっても各相を構成する並列接続された複数個の上下アーム直列回路が電気的に等しい条件に置かれることが望ましい。従って上記直流バスバーの半導体モジュール側には、各相を構成する半導体モジュールの端子に対応してそれぞれ接続端子を設けることが望ましく、その形状はあたかも図31の端子96のような形状であることが望ましい。
次に、本実施形態に関する半導体モジュールの冷却状況について図29と図30を参照しながら以下説明する。図29は本実施形態に関する半導体モジュールにおける放熱フィン(A側)の冷却水流れを表す図である。図30は半導体モジュールにおける冷却水流れと回路構成の配置との関係を表す図である。図面で、622は半導体モジュールにおける上段の冷却水の流れを表し、623は半導体モジュールにおける下段の冷却水流れを表す。
本実施形態に関する半導体モジュールは上述したようにその内部に、発熱体である上アームのIGBTチップ52とダイオードチップ56を同列状に上段に配置し、発熱体である下アームのIGBTチップ62とダイオードチップ66を同列状に下段に配置している。ここで上段は、冷却水路への半導体モジュール500の挿入方向における手前側に相当し、下段は上記挿入方向における奥側に相当する。
半導体モジュール500には冷却水との間で熱交換する機能に加え、冷却水を層流の状態に保つと共に冷却水を所定方向に導く作用を有している。この実施形態では、冷却水は、通常、凹凸形状の放熱フィンの凹部(溝部)に沿った水平の流れを形成する。そうすると、上段に流入する冷却水622は、点線で示すようにダイオードチップ56、IGBTチップ52からの発生熱を吸熱し、実線で示すように放熱フィン(B側)のフィン凹部を通る復路を形成する。同様に、下段に流入する冷却水623は、上段の半導体チップ52,56からの発生熱の影響を受けることなく、IGBTチップ62、ダイオードチップ66からの発生熱を吸収する。このように、発熱体であるIGBTチップとダイオードチップからなる半導体チップを、上下段違いに配置する半導体モジュールの構造を採用することによって、水冷効果は増大する。
次に、本実施形態に関する半導体モジュールの冷却についての概要をまず説明する。図18、図19に示すように、半導体モジュール500は、上下アームの半導体チップ52,56,62,66を含む上下アーム直列回路50が対面する放熱フィン(A側)と放熱フィン(B側)の間に挟まれて内蔵され、図16、図17に示す水路筐体212に挿入される。半導体モジュール500における放熱フィンを形成した放熱板の両面に水を流すこによって半導体モジュールは冷却されるように構成される。すなわち、発熱体である半導体チップは、冷却水によって放熱フィン(A側)522からと放熱フィン(B側)562からとの両面から冷却される両面冷却の構造である。
ここで、半導体モジュールの冷却の変遷をみると、片面間接冷却方式、片面直接冷却方式、両面間接冷却方式、両面直接冷却方式と進化する傾向にあるが、現状の冷却方式では、発熱体であるスイッチング用半導体素子(IGBT)を複数個設けてこれらを並列接続して(半導体素子が負担する発生熱を分散させるため)、放熱板上にグリスと絶縁層を介してこの並列接続した半導体素子群を設置する構造が多く見られる。この現状の冷却方式では、半導体素子群の片面に放熱板を設けることで片面冷却であり、半導体素子群と放熱板との間にグリスを介在させることで間接冷却となっている。グリスは本来、放熱板に対して、絶縁層付き導体板(半導体素子群を設置するCuリード)を接着するためのものであるが、厚さが不均一となるのでねじで締め付け固定する必要がある。このグリスは熱伝導性は良いが、接着性、厚さの均一性や絶縁性には難点がある。
本実施形態では例えば図29や図30などに示すように、いろいろな改良点を有しているので、上述のグリスを使用する間接冷却方式であっても従来のものに対して放熱効果は改善されるし、上述の如くその他いろいろな効果が得られる。以下に説明のとおり、半導体チップを放熱用の金属に絶縁部材を介して固定しているので、さらに放熱効果が改善される。絶縁部材としてはセラミック板や樹脂製の絶縁シートなどがあり、これらを介して放熱金属に固定することで熱伝導特性が改善され放熱効果が改善される。セラミック板に対し、以下に説明する絶縁シートは厚さが薄く、より大きな効果が得られる。
本発明の実施形態に係る電力変換装置は、半導体モジュールの両面から冷却するとともに、グリスを用いることなく、放熱板と半導体チップの搭載される導体板との間に絶縁シートを介在させて真空熱圧着するという、両面直接冷却方式を採用するものであり、冷却性能の向上を図ることができる。本実施形態では図28、図23で説明したように、放熱用の絶縁シート524,564(例えば、厚さ100〜350mmの絶縁樹脂)を、Cu又はAlからなる放熱フィン(放熱板)522,562に一旦真空熱圧着し、次いで、この絶縁シートと正極及び負極端子532,572などを有する導体板534,544,574,584(例、Cuリード)との間で再度真空熱圧着し、さらに導体板に半田付けで半導体チップを取り付けるとともに、図29に示すように半導体モジュール500を両面の放熱フィンを通して水冷するので、両面直接冷却方式となる。この際、絶縁シートは、グリスとの対比で、接着性、厚さの均一性、絶縁性で優れた特性を有している。
次に、本発明の実施形態に係る、冷却機能を備えた電力変換装置の具体的構成について、図4〜図7を参照しながら以下説明する。図4は本発明の実施形態に係る電力変換装置の外観形状を示す図である。図5は本実施形態に係る電力変換装置の内部構造を斜視する分解図である。図6は本実施形態に係る電力変換装置から上ケースを取り除いた斜視図である。図7は本実施形態に係る電力変換装置から上ケース、制御回路72を内蔵した制御基板370、バスバーアッセンブリを取り除いた斜視図である。
図面において、電力変換装置100は、水路筐体212に複数の半導体モジュール500が装着され、ドライバ回路74を内蔵しドライバIC374を搭載する制御基板372を有し、コンデンサモジュール390(図31に示す符号95に相当するもの)とバスバーアッセンブリ386を搭載し、直流コネクタ38と交流コネクタ88(図2を参照)からなるコネクタ部280を備え、水路の入口部246と出口部248を有し、下ケース142と上ケース112とカバー132で囲った構造である。なお、バスバーアッセンブリ386は、コンデンサモジュール390及び半導体モジュール500の直流端子と直流コネクタ38とを接続する直流バスと、半導体モジュール500の交流端子582と交流コネクタ88とを接続する交流バスと、を含むものである。
図7と図8を参照すると、水路筐体212は、水路筐体の本体部214と水路筐体の正面部224と水路筐体の背面部234とに大別され、水路の入口部246と出口部248を有している。制御基板372には制御回路用コネクタ373、ドライバIC374が搭載されている。図7の例示では、半導体モジュールの負極端子572、正極端子532、交流端子582が突出しており、負極と正極の端子572、532はコンセンサモジュール390のコンデンサ端子と接続される(図6と図32を参照)。図7の構成例では、6個の上下アーム直列回路50(半導体モジュール500の主要な回路)が充填されていて、図3に示すインバータ装置40の回路構成に対応している。すなわち、モータのU,V,Wの各相に2つの上下アーム直列回路が使用されていて、モータジェネレータ92への大容量化を図っている。
図3に示すインバータ装置40をバッテリ36に対してもう1つ並列接続して各インバータ装置をそれぞれのモータジェネレータに接続し、2つのモータジェネレータに電力供給する2つのインバータ装置を1つの水路筐体212に収容した構成例を図8、図9及び図10に示す。なお、図8、図9及び図10に示す構成例は、2つのモータジェネレータへの電力供給に限らない。図8は本実施形態に係る電力変換装置における2インバータ装置の構成例であり、制御回路72を内蔵した制御基板370と、バスバーアッセンブリと上ケースを取り除いた斜視図である。図9は本実施形態に係る電力変換装置における2インバータ装置の構成例であり、制御回路72を内蔵した制御基板370と、バスバーアッセンブリ、上ケース及びコンデンサモジュールを取り除いた斜視図である。図10は本実施形態に係る電力変換装置における2インバータ装置の構成例であり、制御回路72を内蔵した制御基板370と、バスバーアッセンブリ、上ケース及びコンデンサモジュールを取り除いた平面図である。なお、図8において、バスバーアッセンブリ386は、制御基板372の上方部に配置され、2組のコンデンサモジュール390の間に配置されるものである。
図8、図9、図10を参照すると、2組の半導体モジュール500が180度回転した状態で水路筐体212に挿入されている。コンデンサモジュール390も同様に180度回転した状態で配置されている。ドライバ回路74を内蔵した制御基板372は、各組の半導体モジュール500の間に配置され1つの基板から形成されている。制御回路用コネクタ373も2組の半導体モジュールに対して共通の部品として1個で済ませることができる。各相の上下アームに対して1個のドライバIC374で駆動しており、各相は上下アームが並列接続された2つの直列回路で構成されている(図3を参照)。1つのドライバIC374から並列接続された上下アーム直列回路に対して同時並行して制御信号が供される。
ドライバ回路を有する制御基板を、交流端子に対してコンデンサモジュール390とは反対側の位置に配置しており、さらに交流端子に対してコンデンサモジュールとは反対側の位置に上下アームを構成する半導体スイッチング素子の制御端子を配置している。この構成によりコンデンサモジュール500と半導体モジュールの電気的な接続および制御端子とドライバ回路74を有する制御基板372との電気的接続関係が整然とした状態となり、電力変換装置の小型化に繋がる。
また、2つのインバータ装置を有する電力変換装置では、図10に示す如く中央にドライバ回路74を有する制御基板372を配置することで、2つのインバータ装置を制御するための2つのドライバ回路74を1つの制御基板372に設けることが可能となり、電力変換装置の小型化に繋がると共に生産性も向上する。
次に、本実施形態に係る電力変換装置における水路筐体への半導体モジュールの装填態様と半導体モジュールを装填した水路筐体の冷却水の流れ態様とについて、図11〜図17を参照しながら以下説明する。
図11は本実施形態に関する半導体モジュールを装填した水路筐体の冷却水流れを示す断面図である。図12は図9に示す2インバータ装置における半導体モジュールを装填した水路筐体の冷却水流れを示す断面図である。図13は図3に示すモータジェネレータへの各相に対する並列接続の半導体モジュールの正極端子、負極端子、交流端子、信号用端子、ゲート端子の水路筐体における配置状況を示す平面図である。図14は半導体モジュールを装填した水路筐体本体部と水路筐体前面部と水路筐体背面部を展開した斜視図である。図15は半導体モジュールを装填した水路筐体本体部と水路筐体前面部と水路筐体背面部を展開した断面図である。図16は水路筐体本体部に半導体モジュールを装填する状況を示す斜視図である。図17は水路筐体本体部に半導体モジュールを装填する状況を示す正面図である。
図11と図12において、212は水路筐体、214は水路筐体の本体部、224は水路筐体の正面部、226は正面部の入口水路、227は正面部の折り返し水路、228は正面部の出口水路、234は水路筐体の背面部、236は背面部の折り返し水路、246は入口部、248は出口部、250〜255は水流、をそれぞれ表す。
図6と後述する図14に示すように、入口部246及び出口部248と、これらに繋がる本体部214との間には正面部入口水路226及び正面部出口水路228が設けられていて(図11を参照)、この水路226,228の水路高さは半導体モジュール500の高さに相当している(図14の導水部249を参照)。したがって、入口部246からの水流250は正面部入口水路226において水流が高く拡張され、本体部214に装填された半導体モジュール500の放熱フィン522,526の全高さに渡って水が流れるようになる。図11に示す水流251,236,253,227を説明すると、冷却水は半導体モジュール500の放熱フィン(B側)562の全高さに渡って流れ(水流251)、背面部234の折り返し水路236を通り、放熱フィン(A側)の全高さに渡って流れ(水流253)、正面部224の折り返し通路227を通って次の半導体モジュール500への水流となる。このようにして、半導体モジュール500は両面冷却されることとなる。
図12は、図9及び図10に示すように、2つのインバータ装置における半導体モジュールを1つの水路筐体に装填して冷却する構造を示しており、一のインバータ装置には6個の半導体モジュール500−1が用いられ、他のインバータ装置には6個の半導体モジュール500−2が用いられる。図12に示すように、水路筐体本体部214の水流251,253の方向に沿って半導体モジュール500−1と500−2が縦続的に配置される。
本実施形態では、水路筐体212に水路に通ずる開口を設け、上記開口に半導体モジュール500を挿入する構造にしている。このようにすることで、電子回路製造ラインで半導体モジュール500を生産し、必要な検査を行った後で水路筐体に固着することが可能となり、生産性が向上すると共に信頼性が向上する。
また、半導体モジュール500の両側には面積の広い冷却フィンが設けられていると共に冷却フィンにより水流の流れが作られるようになっている。すなわち半導体モジュール500を水路に挿入することで逆方向に流れる水路が形成され、上記冷却フィンは放熱のみならず逆向きの層流を作る作用をし、水路を形成する作用をする。水路筐体は例えばダイキャストなどで作られ、水路の美問い部分は上記半導体モジュール500のフィンにより形成される構造となっている。従って生産性が向上する。
上記半導体モジュール500を水路に挿入することで逆方向に流れる水路が形成され、水路断面積が狭くなる。冷却水の送り込まれる量が例えば同じあるとすると断面積が小さくなったことで流速が増加する。このため冷却効率が増加する。
図14はモータジェネレータへの各相に対して半導体モジュールを並列接続する場合(図3の回路構成を参照)の6個の半導体モジュール500をすべて水路筐体に装填した状況を示しているが、水路筐体212の本体部214に対して順次半導体モジュール500を装填する状況を図16と図17に示す。水路筐体の本体部214は水路形成部270と水路形成部270を隔てる隔壁271からなり、水路形成部270に半導体モジュール500を上方から装填する。半導体モジュール500のトップケース512及び/又は水路形成部270の上縁部に接着剤を塗布して両者を固着する。図示するように、水路形成部270と半導体モジュール500の放熱フィン522,562は略同一サイズであるので、冷却水はフィンの窪みに沿って流れる。
図14に示すように、水路筐体212の正面部224は、水路入口部246に続いて、本体部214の水路形成部270(図16を参照)と略同一の嵩高をもつ導水部249を備えている。この導水部249によって半導体モジュール500の全高さに渡って略均一な水流を形成する。
図14と図15に示す如く、水路筐体212が本体部214と正面部224と背面部234とに分割することで本体部は水路となるべき空間が正面側と背面側に開放した形状となり、アルミニュームを材料としたダイキャスト製法が可能となる。また正面部224と背面部234もダイキャスト製法が可能となり、生産性が向上する。
図13はモータジェネレータへの各相に対して半導体モジュールを並列接続する場合(図3の回路構成を参照)の6個の半導体モジュール500における、水路筐体212への配置構造を示している。図3に示す上下アーム直列回路50が、U相用に50U1,50U2として、V相用に50V1,50V2として、W相用に50WU1,50W2として、図示するように配置されている。コンデンサモジュールのコンデンサ端子96が図31及び図32に示すように、半導体モジュール500の正極端子532と負極端子572の列方向と同一方向に配置されて、半導体モジュールとコンデンサモジュールの端子同士が直接に結合するので、寄生インダクタンスが小さく且つ均等になり、各半導体モジュールが均等で且つ安定して動作する。
また、UVWの各相を構成する複数個の上下アーム直列回路の電気特性をできるだけ等しくすることが重要である。例えばU相の回路を構成する直接回路50U1と50U2との電気特性をできるだけ同じくすることが重要で、本実施形態では、直接回路50U1を作る半導体モジュール500と直接回路50U2を作る半導体モジュール500との直流端子572と532の配列に対してコンデンサモジュールが同じ方向を向くようにして固定され、直接回路50U1を作る半導体モジュールの端子とこれと接続されるコンデンサモジュールの端子との物理的な関係が直接回路50U2を作る半導体モジュールの端子とこれと接続されるコンデンサモジュールの端子との関係と同じくなっている。このように直流端子が並ぶ方向に沿ってコンデンサモジュールを配置し、コンデンサ端子を設けることで並列接続された直流回路50U1と50U2との電気的な特性を略等しくできる。
この実施形態では半導体モジュールの端子とコンデンサモジュールの端子とが直接接続されているが、これは最も好ましい構造であるが、必ずしも直接接続されていなくても良い。例えば正極導体と負極導体が近接して対向する形状の接続導体である例えば直流バスバーを介して接続してもインダクタンスをかなり低く抑えることができ。
また、制御用又は検出用の端子群552,553,556,557は、図7に示す制御基板372に直結するように配置される。したがって、半導体モジュール500と制御基板372内の制御回路及びドライバ回路との間の配線に起因する相毎の変動成分は小さく且つ均等になる。さらに、2つの半導体モジュール500で並列接続する各相に対して、もう1つの半導体モジュール500を追加して3つの半導体モジュール500で並列接続する場合においても、3つ目の半導体モジュール500を図13において単に横列に配置すれば足りることとなり、半導体モジュール500の追加適用性に優れている。
次に、本実施形態に関する半導体モジュールの他の構成例と冷却構造について、図36〜図40を参照しながら以下説明する。図36は本実施形態に関する半導体モジュールの他の構成例を示す斜視図である。図37は本実施形態に関する半導体モジュールの他の構成例を示す断面図であり、図36の点線矢印から見た図である。図38は本実施形態に関する半導体モジュールの他の構成例における冷却水の流れを説明する斜視図である。図39は本実施形態に関する半導体モジュールの他の構成例を水冷筐体に装填した場合における冷却水の流れを示す断面図である。図40は本実施形態に関する半導体モジュールの他の構成例を水冷筐体に装填した場合における上下二段の冷却水の流れを示す他の断面図である。
図36及び図37に示す半導体モジュール500は、図18に示す半導体モジュール500との対比で、放熱フィンの構造が異なり、具体的には放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562の中央部に厚さdの厚い中央フィン570を設けるものである。
中央フィン570の位置は図2に示す上アームのチップ52,56と下アームのチップ62,66を上下に隔てる位置であり、この中央フィン570(例示として、厚さdは他のフィン厚さに比べて1.5〜2倍程度)を設けることで水流を上下二段に分離して流す機能を奏する。
図38には、2つの半導体モジュール500の放熱フィンにおける冷却水の流れを模式的に示す。水路入口部246(図39を参照)からの水流650は、1つ目の半導体モジュールの放熱フィン(B側)562の下段部分(中央フィン570の下半分)にのみ流入し、水流651を形成する。次に、水路筐体の背面部234において上昇の水流652となり、同じ放熱フィン(B側)562側の上段部分(中央フィン570の上半分)で水流653を形成する。続いて、水路筐体の正面部224で水流の向きを変えて放熱フィン(A側)522の上段部分の水流654を形成し、続いて、背面部234において下降流655となり同じ放熱フィン(A側)522の下段部分の水流656を形成し、さらに正面部224で水流57の向きを変えて次の半導体モジュール500の冷却を行うこととなる。
図39と図40の図示構造から分かるように、水路入口部246で半導体モジュールの放熱フィン(B側)の下段部分のみに水流651が形成されて上段部分に流れ込まないのは、水路筐体正面部224の入口部246に延設されたガイド部660に因る。また、中央フィン570の厚さdと本体部214の壁面又は隔壁271(図17を参照)との密接性によって下段部分と上段部分を流れる水流の隔離を図っている。
図36に示す半導体モジュール500の他の構成例を図39及び図40に示す水路筐体に充填して電力変換装置を構成した場合における冷却効果について以下説明する。図14に示す水路筐体における冷却水の流路(半導体モジュールの放熱フィンの全高さに対応して形成される流路)との対比で説明する。図38に示すように、冷却水を放熱フィンの上段部分又は下段部分に分離して流すことによって流路断面積は略半分になる。そして、水路筐体212の入口部246に流入してくる冷却水の流入流量が一定であると仮定すると(冷却水の流入源の容量大のため)、放熱フィンの上段部分又は下段部分を通る冷却水の流速は略倍になる。流速が速まると冷却水による放熱フィンからの吸熱も流速に対応して吸熱量が多くなる(冷却水による吸熱量は流速の或る範囲において流速の大きさにほぼ比例して増大する)。すなわち、図36に示す中央フィン570をもつ半導体モジュールを採用し、上段部分と下段部分に時間的に分割して冷却水の流路を形成すると、半導体モジュールの冷却効果が一段と高まる。
図39に記載の如く水路筐体を本体部214と正面部224と背面部234とに分けているので、ダイキャスト製法で生産でき、生産性が向上する。
図42は図5の制御基板370を水路筐体の底部に配置した図5の他の実施形態である。図5では制御回路72を有する制御基板370をカバー132の下に配置し、コネクタ371から信号線76を介してドライバ回路74を有する制御基板372に信号が送られる。制御基板370は上ケースで冷却される。
図42では制御回路72を有する制御基板370を水路筐体214の底部に配置し、水路筐体の底部に固定することで制御基板370を冷却すると共に底部空間を利用して配置されており、冷却効果の向上に加え小型化の効果がある。また、制御回路72を有するためにノイズに弱い制御基板370を水路筐体214の底部に配置することで、水路筐体214を挟んで一方に半導体モジュール500の端子を配置し、他の方に制御基板370を配置することでノイズに対しても信頼性の高い構造となっている。