ところで、オフセット量に影響を及ぼす部材(例えば、電動機および回転位置検出器など)に故障等が生じると、その部材が交換または修理される場合がある。この場合、上述した各種のばらつき等に起因し、オフセット量に影響を及ぼす部材が交換等される「前」のオフセット量と、その部材が交換等された「後」のオフセット量とは、必ずしも一致しない。そのため、この場合、オフセット量に影響を及ぼす部材が交換等された「後」のオフセット量が改めて(交換等の後に再び)取得されることが望ましい。
オフセット量を取得する具体的な方法としては、種々の方法が採用され得る。例えば、従来装置が適用される車両においては、電動機が交換または修理される場合、上記トランスミッションの全体が車両から取り外される。そして、電動機が交換または修理されてトランスミッションが再び車両に取り付けられる前に、所定の方法(具体的に述べると、電動機の回転軸を外力によって回転させたときに電動機に生じる励起電圧を測定し、その励起電圧に基づいてオフセット量を取得する方法)により、回転位置検出器のオフセット量が改めて取得される。そして、その取得されたオフセット量が、上記記憶装置に記憶される。その後、トランスミッションが車両に取り付けられる。
従来装置に採用されている上記方法は、オフセット量を取得するための特別な装置(例えば、電動機の回転軸を外力によって回転させる装置および電動機に生じる励起電圧を測定する装置など)を用いて実行されるので、電動機を適切に作動させる観点において十分な精度にて新たなオフセット量を取得することができるという長所がある。しかし、上記方法は、その特別な装置を用いた処理を特定の場所(例えば、修理工場内など)にて特定の技術者が実行する必要があることから、同方法の実施が煩雑であるという短所を有する。
そこで、オフセット量を取得する処理をより簡便に実施するべく、オフセット量に影響を及ぼす部材が交換等された場合、その部材が車両に取り付けられた後に、車両の一般の操作者が通常行う操作(例えば、車両を起動するスイッチを押す操作、および、車両を減速または加速するためのアクセルの操作など)に伴ってオフセット量を取得する処理を実行することが考えられる。
ここで、一般に、オフセット量を取得する処理は、電動機の回転軸の回転位置に関する情報を取得するとともに、その取得された情報に基づいてオフセット量を特定するように、実行される。そして、電動機の回転軸が「回転されながら」取得された回転軸の回転位置に関する情報は、一般に、電動機の回転軸が「回転していない」状態にて取得された同情報よりも、精度が高い。換言すると、一般に、電動機の回転軸が回転されながら取得されたオフセット量は、電動機の回転軸が停止していない状態にて取得されたオフセット量よりも、精度において優れる。そのため、オフセット量を精度良く取得する観点から、電動機の回転軸が回転しているときにオフセット量を取得する処理が実行されることが望ましいと考えられる。
一方、電動機は、上述したように、回転軸を介して必要に応じたトルク(例えば、車両を走行させるための駆動力としてのトルク、および、車両を減速または停止させるとともに電力を回生するための抵抗力としてのトルク)を出力する。このように電動機の回転軸を介してトルクが出力されているとき、一般に、種々の外的な要因(例えば、駆動力として要求されるトルクの変動など)により、回転軸の回転速度が変動する可能性がある。そのため、上述したように電動機の回転軸が回転しているときにオフセット量を取得する処理を実行する場合、このような回転軸の回転速度の変動が、取得されるオフセット量の精度に影響を及ぼす場合がある。
よって、オフセット量を出来る限り精度良く取得する観点から、電動機の回転軸が回転しているときにオフセット量を取得する処理が実行される場合、同処理が実行されている期間中には電動機の回転軸にトルクを生じさせないことが望ましい。
しかしながら、電動機を駆動源として備える車両においては、車両を出来る限りエネルギ効率良く走行させる等の目的から、一般に、電動機の回転軸にトルクが生じていない状態にて同回転軸が回転する機会は少ない。そのため、上述した望ましい状況(回転軸にトルクを生じさせない状態にて回転軸が回転しているとの条件が満たされる状況)にてオフセット量を取得する処理を実行することは、一般に、困難である。よって、オフセット量に影響を及ぼす部材が交換等された場合、上述した望ましい状況が自然に成立することを待っていると、オフセット量が精度良く取得されていないにもかかわらず電動機が作動され続ける可能性が高い。そして、そのようにオフセット量が精度良く取得されていない状態にて電動機が作動されると、電動機が適切に制御されず、車両のドライバビリティが低下する虞がある。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、オフセット量を取得する要求が生じたときに出来る限り迅速にオフセット量を精度良く取得することができる、車両の制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明による車両の制御装置は、
車両の駆動軸にトルク伝達可能に連結された回転軸を有する電動機と、前記電動機の回転軸の回転位置を検出する回転位置検出器と、を備えた車両に適用される。
ここで、前記電動機は、前記電動機の回転軸におけるトルクについての指令であるトルク指令に応じたトルクを同回転軸に発生可能であるように、構成されている。
本発明の制御装置は、
「前記回転位置検出器によって検出される前記回転軸の回転位置と、実際の前記回転軸の回転位置と、の差に相当するオフセット量」を取得する要求に応じて前記オフセット量を取得する処理である「オフセット量取得処理」を実行する。
さらに、本発明の制御装置は、
前記オフセット量取得処理が「前記電動機の回転軸が回転しており且つ前記電動機の回転軸にトルクを生じさせない指令であるゼロトルク指令を発しているときに実行する処理」である場合、前記オフセット量を取得する要求が生じているとき、
(a)前記電動機の回転軸を「同回転軸の回転を促進する正の方向」に回転させる向きのトルクを同回転軸に生じさせるトルク指令である「正トルク指令」から、前記電動機の回転軸を「同回転軸の回転を抑制する負の方向」に回転させる向きのトルクを同回転軸に生じさせるトルク指令である「負トルク指令」に、前記トルク指令が変化する途中、および、
(b)前記トルク指令が「前記負トルク指令」から「前記正トルク指令」に変化する途中、
の少なくとも一方において、
前記正トルク指令を発する期間と前記負トルク指令を発する期間との間に、「前記オフセット量取得処理を実行するために必要な時間長さだけ」前記ゼロトルク指令を発する期間である「ゼロトルク指令期間」を設けるとともに、同ゼロトルク指令期間中に前記オフセット量取得処理を実行する、
ように構成されている。
上記構成を有する本発明の制御装置は、オフセット量取得処理によって取得されるオフセット量の精度を高める観点から、オフセット量取得処理を「電動機の回転軸が回転しており」且つ「電動機の回転軸にトルクを生じさせない(ゼロトルク指令を発している)」ときに実行するようになっている。しかし、上述したように、電動機の回転軸が回転しているときに制御装置がゼロトルク指令を発する機会は、一般に少ない。
より具体的に述べると、例えば、トルク指令が「正トルク指令から負トルク指令に」変化する場合、正の方向のトルクが時間経過に伴って徐々に小さくなって負の方向のトルクに転じるならば、トルク指令がゼロトルク指令である瞬間(同指令が生じている時間長さがほぼゼロである一点)が存在し得る。しかし、一般に、このゼロトルク指令が発せられている時間長さは、オフセット量取得処理を適切に実行するには不十分である。トルク指令が「負トルク指令から正トルク指令に」変化する場合においても、同様である。
そこで、上記構成によれば、オフセット量を取得する要求が生じているとき、トルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化する途中およびトルク指令が負トルク指令から正トルク指令に変化する途中の少なくとも一方において、強制的に、オフセット量取得処理をするために必要な時間長さだけ「ゼロトルク指令期間」が設けられる。これにより、必要に応じて「電動機の回転軸が回転しており且つゼロトルク指令を発する機会」を得ることができるので、オフセット量を取得する要求が生じたときに出来る限り迅速にオフセット量を精度良く取得することができる。
さらに、上述したタイミングにてゼロトルク指令期間を設けることにより、トルク指令が正トルク指令または負トルク指令である期間中にゼロトルク指令期間が設けられる場合に比べ、オフセット量取得処理によって車両の操作者が違和感を感じる可能性が小さい。
以下、トルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化すること、および、トルク指令が負トルク指令から正トルク指令に変化することは、「トルク指令が反転する」または「トルク指令がゼロクロスする」とも称呼される。なお、トルク指令が反転することには、トルク指令が徐々に変化した結果としてトルク指令が反転すること(例えば、正の方向のトルクが時間経過に伴って徐々に小さくなって負の方向のトルクに転じること)、および、トルク指令が瞬時に変化した結果としてトルク指令が反転すること(例えば、正の方向のトルクが瞬時に負の方向のトルクに転じること)、を含む。
ところで、上記車両の駆動軸と電動機の回転軸とは「トルク伝達可能に」連結されていればよく、具体的な連結の方法(態様)は特に制限されない。例えば、車両の駆動軸と電動機の回転軸とは、一または複数のギアを介して連結されていてもよい。
上記「電動機」は、車両(例えば、ハイブリッド自動車および電気自動車など)に適用され得る電動機であればよく、その形式および構造、ならびに、車両に備えられる電動機の数などは、特に制限されない。また、電動機は、車両を走行させるためのトルクを生じる機能だけではなく、車両を減速等させるためのトルクを生じる機能、および、回転軸が回転するエネルギを利用して発電する(電力を回生する)ためのトルクを生じる機能などを備えてもよい。
上記「回転位置検出器」は、電動機の回転軸の回転位置(回転軸が回転するときの回転角度)を検出し得る検出器であればよく、その構造および車両に備えられる数などは、特に制限されない。ここで、回転位置は、例えば、所定の基本位置(例えば、回転角度がゼロである位置)を基準とする回転軸の回転の度合い(絶対角度または相対角度)として、検出され得る。回転位置検出器として、例えば、レゾルバが採用され得る。
なお、一般に、電動機は回転子(ロータ)と固定子(ステータ)とを備えており、その回転子(ロータ)が回転軸に相対回転不能に連結されている。そのため、上記「回転軸の回転位置」は、一般に、回転子(ロータ)の回転位置と同義である。
上記「トルク指令」は、電動機の回転軸におけるトルクの状態を、電動機に要求されるトルクの状態に一致させるための指令(指示)であればよく、その具体的な内容は特に制限されない。トルク指令として、例えば、電動機の回転軸におけるトルクの向き(例えば、上述した正の方向または負の方向)およびトルクの大きさの一方または双方を、要求されるトルクの向きおよびトルクの大きさに一致させるための指令、が挙げられる。
上記「オフセット量」は、回転位置検出器によって検出される電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転軸の回転位置と、の差に相当する量(値)であればよく、オフセット量として採用される具体的なパラメータは特に制限されない。例えば、オフセット量として、検出される回転位置と実際の回転位置との回転の度合いの差(例えば、絶対角度の差)、および、その回転の度合いの差に相関するパラメータ(例えば、その差が大きいほど増大するパラメータ)などが採用され得る。
上記「オフセット量を取得する要求」は、必要に応じて制御装置に与えられる要求であればよく、特に制限されない。例えば、オフセット量を取得する要求は、実際のオフセット量と、制御装置が保持しているオフセット量(例えば、制御装置がオフセット量を記憶する記憶部を備えている場合、その記憶部に記憶されたオフセット量)とが、所定の度合い以上に相違するとき又は所定の度合い以上に相違する可能性があるとき、制御装置に与えられ得る。さらに、オフセット量を取得する要求は、例えば、オフセット量に影響を及ぼす部材(例えば、電動機および回転位置検出器など)が交換等されたとき、現時点において電動機を作動させるときに使用されているオフセット量が取得されてから(オフセット量の前回の取得から)所定の時間長さが経過したとき、および、電動機の作動状態などを考慮したオフセット量を取得すべき条件(例えば、電動機への要求トルクと実際の発生トルクとの差が所定値以上である等)が成立したとき、などに制御装置に与えられ得る。
オフセット量に影響を及ぼす部材が交換等された場合についてより具体的に述べると、制御装置にオフセット量を取得する要求を与える方法として、例えば、その交換等を行った技術者が作業手順書に従って制御装置にオフセット量を取得する要求を与える方法、および、制御装置そのものがその交換等が行われたことを所定の手法によって認識すると共にその交換等が行われたと認識したときにオフセット量を取得する要求が生じたと判断する方法、の一方または双方などが採用され得る。
なお、「オフセット量に影響を及ぼす部材」は、オフセット量の大きさに何らかの影響を及ぼす部材であればよく、特に制限されない。例えば、オフセット量に影響を及ぼす部材として、電動機、回転位置検出器、電動機および回転位置検出器を車両に固定する部材、電動機、回転位置検出器およびギア機構などが格納されたトランスアクセル、ならびに、制御装置のうちのオフセット量を記憶している部分、などが挙げられる。
上記「オフセット量取得処理」は、回転位置検出器のオフセット量を取得し得る処理であればよく、その具体的な処理方法は特に制限されない。さらに、上記「電動機の回転軸が回転しており且つゼロトルク指令を発しているときに実行する処理」も、上記同様、特に制限されない。電動機の回転軸が回転しており且つゼロトルク指令を発しているときに実行する処理として、例えば、回転位置検出器としてレゾルバが採用される場合、電動機の磁極座標系(d−q座標系)におけるd軸電流およびq軸電流がゼロである場合におけるd軸電圧の値に基づいてオフセット量を取得する処理(例えば、特開2004−266935号公報などを参照。)などが採用され得る。
上記「正の方向」は、回転軸の回転を促進する方向であれば良い。正の方向として、例えば、車両が走行(前進または後進)しているときの回転軸の回転方向と同じ向きが挙げられる。別の言い方をすると、正の方向は、車両を走行させるための駆動力としてのトルクを発する向きである。この観点において、正の方向は、回転している回転軸の回転速度を高める又は維持する向き、または、回転していない回転軸を回転させ始める向き、であるとも表現され得る。
上記「負の方向」は、回転軸の回転を抑制する方向であればよい。負の方向として、例えば、車両が走行(前進または後進)しているときの回転軸の回転方向と逆の向きが挙げられる。別の言い方をすると、負の方向は、車両を減速または停止させるための制動力(内燃機関を備えた車両におけるエンジンブレーキに対応する力)としてのトルクを発する向き、または、電力を回生するための抵抗力としてのトルクを発する向き、である。この観点において、負の方向は、回転している回転軸の回転速度を下げる向き、または、回転していない回転軸を回転しないように維持する向き、であるとも表現され得る。
上記「トルク指令を発する」とは、制御装置がそのトルク指令を所定の対象に対して与えるべく同トルク指令(例えば、指示信号)を生成することを表す。トルク指令は、例えば、電動機そのものに対して与えられてもよく、電動機の作動を制御する制御部材に対して与えられてもよい。
上記「オフセット量取得処理を実行するために必要な時間長さ」とは、オフセット量取得処理の具体的な処理を考慮して定められる時間長さであればよく、特に制限されない。オフセット量取得処理を実行するために必要な時間長さは、例えば、あらかじめ実験などによって定められた時間長さであってもよく、オフセット量取得処理の実行に連動して設けられる時間長さ(例えば、オフセット量取得処理の開始時点または開始時点よりも所定時間長さだけ前の時点からゼロトルク指令を発し始め、同処理の終了時点または終了時点から所定時間長さだけ後の時点にてゼロトルク指令を発し終える、ようにゼロトルク指令が発せられた結果としての時間長さ)であってもよい。
ここで、オフセット量取得処理は「ゼロトルク指令期間中に・・・実行」されればよく、必ずしもゼロトルク指令期間の全ての期間においてオフセット量取得処理が実行され続ける必要はない。すなわち、オフセット量取得処理は、ゼロトルク指令期間中の一部の期間において実行されてもよく、ゼロトルク指令期間の全ての期間において実行されてもよい。
なお、取得されたオフセット量を考慮して電動機の回転軸の回転位置の基準となる位置(例えば、回転角度がゼロであるとみなす位置)を設定することは、「原点補正」とも表現される。
以下、本発明の制御装置のいくつかの態様(態様1〜態様4)について述べる。
・態様1
上述したように、本発明の制御装置は、オフセット量取得処理を実行するべく、電動機におけるトルクが反転(ゼロクロス)する途中に「強制的に」ゼロトルク指令期間を設ける。しかし、車両の運転状態によっては、オフセット量取得処理を実行することよりも他の処理(例えば、安全性の観点から緊急に行われる処理)を行うことが優先される場合がある。
そこで、本発明の制御装置は、具体的な態様の一例として、
前記ゼロトルク指令期間中に「前記オフセット量取得処理を停止する条件である処理停止条件」が成立した場合、前記オフセット量取得処理を停止する、ように構成され得る。
上記構成により、オフセット量取得処理を実行することよりも優先されるべき状況が生じたとき、必要に応じてオフセット量取得処理を停止することができる。
ところで、上記「処理停止条件」は、種々の観点からオフセット量取得処理よりも優先されるべき状況が生じたと判断し得る条件であればよく、特に制限されない。処理停止条件として、例えば、ゼロトルク指令期間中に車両を急停止する要求が生じたこと、ゼロトルク指令期間中に電動機の回転軸に連結された駆動軸が空転(すなわち、車両がスリップ)したこと、および、ゼロトルク指令期間中に制御装置を含むシステム全体を停止する要求が生じたこと、のうちの少なくとも1つが成立すること、が採用され得る。
なお、上述した処理停止条件の具体例が成立したときにオフセット量取得処理が停止される理由の一例は、以下の通りである。まず、ゼロトルク指令期間中に車両を急停止する要求が生じたときには、例えば、負の方向のトルクを制動力として出来る限り利用するべく、オフセット量取得処理が停止されて(ゼロトルク指令が停止されて)負トルク指令が発せられることになる。さらに、ゼロトルク指令期間中に電動機の回転軸に連結された駆動軸が空転したときには、例えば、オフセット量取得処理によって取得されるオフセット量の精度が低下する可能性があるため、オフセット量取得処理が停止されることになる。加えて、ゼロトルク指令期間中に制御装置を含むシステム全体を停止する要求が生じたときには、当然に、オフセット量取得処理が停止されることになる。
上記「オフセット量取得処理を停止する」とは、例えば、オフセット量取得処理の実行前にその実行を禁止すること、および、オフセット量取得処理の実行中にその実行を中断すること、を含む。
・態様2
上述したゼロトルク指令は、通常、車両の操作者の意志によらずに発せられるため(すなわち、操作者の指示によることなく必要に応じて制御装置が同指令を発するため)、オフセット量取得処理が実行されたとき、車両の操作者が違和感を感じる可能性がある。
そこで、具体的な態様の他の一例として、本発明の制御装置は、
「前記正トルク指令から前記負トルク指令に」前記トルク指令が変化する途中に前記オフセット量取得処理を実行することを、「前記負トルク指令から前記正トルク指令に」前記トルク指令が変化する途中に前記オフセット量取得処理を実行することよりも優先する、ように構成され得る。
トルク指令が正トルク指令から負トルク指令に反転(ゼロクロス)するとき、車両の操作者は、電動機に要求されるトルクの大きさを減少させる操作(例えば、アクセルペダルが踏まれているときにそのアクセルペダルを離す操作)を行なっている場合が多い。一方、トルク指令が負トルク指令から正トルク指令に反転(ゼロクロス)するとき、車両の操作者は、電動機に要求されるトルクの大きさを増大させる操作(例えば、アクセルペダルが踏まれていないときにそのアクセルペダルを踏み込む操作)を行なっている場合が多い。そのため、一般に、トルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化するときにオフセット量取得処理が実行される方が、トルク指令が負トルク指令から正トルク指令に変化する途中にオフセット量取得処理が実行されるよりも、比較的、操作者が違和感を感じ難いと考えられる。よって、上記構成により、車両の操作量に出来る限り違和感を感じさせることなく、オフセット量取得処理を実行することができる。
・態様3
上述したように、処理停止条件が成立するとオフセット量取得処理が停止されるので、車両の運転状態などによっては、トルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化するとき(上記態様2における優先されるべきタイミング)にオフセット量取得処理を実行することができない場合があり得る。
そこで、具体的な態様のさらに他の一例として、本発明の制御装置は、
前記正トルク指令から前記負トルク指令に前記トルク指令が変化する途中に設けられた前記ゼロトルク指令期間中に前記処理停止条件が成立することによって前記オフセット量取得処理が停止された場合、同オフセット量取得処理が停止された後に「最初に」前記負トルク指令から前記正トルク指令に前記トルク指令が変化するとき、前記オフセット量取得処理を実行する、ように構成され得る。
上記構成により、トルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化するときにオフセット量取得処理が実行されなかった場合であっても、その後に速やかに(すなわち、オフセット量取得処理が停止された後に「最初に」トルク指令が負トルク指令から正トルク指令に変化するときに)、オフセット量取得処理が改めて実行されることになる。これにより、適切なオフセット量が取得されていない状態にて車両が走行することが、出来る限り防がれる。
・態様4
上述したように、本発明の制御装置が適用される車両において、電動機の回転軸と車両の駆動軸とはトルク伝達可能に連結されていればよく、具体的な連結の態様は特に制限されない。
例えば、具体的な態様のさらに異なる他の一例として、
前記電動機の回転軸は、前記車両の駆動軸と相対回転不能に連結され得る。
別の言い方をすると、電動機の回転軸は、車両が走行しているときに回転可能であり且つ車両が停止しているときに回転不能であるように、車両の駆動軸と連結され得る。
本発明の制御装置は、上記説明から理解されるように、車両が走行中であっても適切なタイミング(トルク指令が反転する途中に設けたゼロトルク指令期間)にてオフセット量取得処理を実行することができる。そのため、上記構成のように電動機の回転軸と車両の駆動軸とが相対回転不能に連結される場合(その結果、車両が停車しているときに上述したオフセット量取得処理を実行できない場合)であっても、車両が走行中に適切にオフセット量取得処理を実行することができる。
以上にいくつかの態様とともに説明したように、本発明に係る車両の制御装置は、オフセット量を取得する要求が生じたときに出来る限り迅速にオフセット量を精度良く取得することができる、という効果を奏する。
以下、本発明による制御装置の各実施形態(第1実施形態〜第3実施形態)が、図面を参照しながら説明される。
(第1実施形態)
<装置の概要>
図1は、本発明の実施形態の第1実施形態に係る制御装置(以下、「第1装置」とも称呼される。)をハイブリッド車両10に適用したシステムの概略構成を示している。以下、便宜上、ハイブリッド車両10は、単に「車両10」とも称呼される。
車両10は、図1に示されるように、発電電動機MG1、発電電動機MG2、内燃機関20(以下、単に「機関20」とも称呼される。)、動力分配機構30、発電電動機MG1の回転軸41、発電電動機MG2の回転軸42、駆動力伝達機構50、車両の駆動軸53、バッテリ61、第1インバータ62、第2インバータ63、パワーマネジメントECU70、バッテリECU71、モータECU72、エンジンECU73、ならびに、複数のセンサ類81〜85,91〜98(レゾルバ97,98が含まれる。)、を備えている。なお、ECUは、エレクトリック・コントロール・ユニットの略称であり、CPU、ROM、RAMおよびインターフェースなどを含むマイクロコンピュータを主要な構成部品として有する電子制御回路である。
発電電動機(モータジェネレータ)MG1は、発電機および電動機のいずれとしても機能することができる同期発電電動機である。発電電動機MG1は、便宜上、「第1発電電動機MG1」とも称呼される。第1発電電動機MG1は、本例においては主として発電機としての機能を発揮する。第1発電電動機MG1は、回転軸41を有している。
発電電動機(モータジェネレータ)MG2は、第1発電電動機MG1と同様、発電機および電動機のいずれとしても機能することができる同期発電電動機である。発電電動機MG2は、便宜上、「第2発電電動機MG2」とも称呼される。第2発電電動機MG2は、本例においては主として電動機としての機能を発揮する。第2発電電動機MG2は、回転軸42を有している。
第2発電電動機MG2は、回転軸42に接続された回転子(ロータ)と、固定子(ステータ)と、を備えている。そして、第2発電電動機MG2は、ロータがステータに対して回転する向きの磁界を順次生じさせることができるように、各々の磁界に対応する回路(巻線)に電流を順次流すことにより、回転軸42にトルクを出力する(ロータを回転させる向きの力を発する)ように構成されている。なお、第1発電電動機MG1も、回転軸41にトルクを出力する点を除いて第2発電電動機MG2と同様に構成されている。
機関20は、4サイクル・火花点火式・多気筒内燃機関である。機関20は、吸気管およびインテークマニホールドを含む吸気通路部21、スロットル弁22、スロットル弁アクチュエータ22a、複数の燃料噴射弁23、点火プラグを含む複数の点火装置24、機関20の出力軸であるクランクシャフト25、エキゾーストマニホールド26、排気管27、および、排気浄化用触媒28a,28bを有している。
スロットル弁22は、吸気通路部21に回転可能に支持されている。スロットル弁アクチュエータ22aは、エンジンECU73からの指示信号に応答してスロットル弁22を回転し、吸気通路部21の通路断面積を変更できるようになっている。
複数の燃料噴射弁23(図1においては1つの燃料噴射弁23のみが示されている。)のそれぞれは、その噴射孔が燃焼室に連通した吸気ポートに露呈するように配置されている。燃料噴射弁23のそれぞれは、エンジンECU73からの指示信号に応答して所定の量の燃料を吸気ポート内に噴射するようになっている。
点火装置24のそれぞれは、エンジンECU73からの指示信号に応答して点火用火花を各気筒の燃焼室内において特定の点火タイミング(点火時期)にて発生するようになっている。
クランクシャフト(機関20の出力軸)25は、動力分配機構30に接続されており、機関20によって生じるトルクを動力分配機構30に入力することができるようになっている。
エキゾーストマニホールド26の排気集合部、および、エキゾーストマニホールド26よりも下流側の排気管27には、排気浄化用触媒28a,28bが設けられている。排気浄化用触媒28a,28bは、機関20から排出される未燃物(HC,COなど)および窒素酸化物(NOx)を浄化するようになっている。
動力分配機構30は、周知の遊星歯車装置31を備えている。遊星歯車装置31はサンギア32と、複数のプラネタリギア33と、リングギア34と、を有している。
サンギア32は、第1発電電動機MG1の回転軸41に接続されている。したがって、第1発電電動機MG1は、サンギア32にトルクを出力することができる。逆に、第1発電電動機MG1は、サンギア32から第1発電電動機MG1(回転軸41)に入力されるトルクにて回転駆動されることによって発電することができる。
ここで、サンギア32は、後述されるプラネタリギア33(プラネタリキャリア35を介して機関20のクランクシャフト25に接続されている。)と噛合している。さらに、サンギア32は、後述されるリングギア34(後述されるように、複数のギアを介して車両10の駆動軸53に接続されている。)が回転していない状態においても回転することができる。すなわち、第1発電電動機MG1の回転軸41は、車両10の駆動軸53と相対回転が可能であるように連結されている。より具体的に述べると、第1発電電動機MG1の回転軸41は、機関20の出力軸(クランクシャフト25)と連結されるとともに、車両10が停止していても(車両10の駆動軸53が回転していなくても)回転可能となっている。
複数のプラネタリギア33のそれぞれは、サンギア32と噛合するとともにリングギア34と噛合している。プラネタリギア33の回転軸(自転軸)は、プラネタリキャリア35に設けられている。プラネタリキャリア35は、サンギア32と同軸に回転可能となるように保持されている。同様に、リングギア34は、サンギア32と同軸に回転可能となるように保持されている。したがって、プラネタリギア33は、サンギア32の外周を自転しながら公転することができる。プラネタリキャリア35は、機関20のクランクシャフト25に接続されている。よって、プラネタリギア33は、クランクシャフト25からプラネタリキャリア35に入力されるトルクによって回転駆動され得る。
さらに、上述したように、プラネタリギア33はサンギア32およびリングギア34と噛合している。したがって、プラネタリギア33からサンギア32にトルクが入力されたときには、そのトルクによってサンギア32が回転駆動される。プラネタリギア33からリングギア34にトルクが入力されたときには、そのトルクによってリングギア34が回転駆動される。逆に、サンギア32からプラネタリギア33にトルクが入力されたときには、そのトルクによってプラネタリギア33が回転駆動される。リングギア34からプラネタリギア33にトルクが入力されたときには、そのトルクによってプラネタリギア33が回転駆動される。
リングギア34は、リングギアキャリア36を介して第2発電電動機MG2の回転軸42に接続されている。したがって、第2発電電動機MG2は、リングギア34にトルクを出力することができる。逆に、第2発電電動機MG2は、リングギア34から第2発電電動機MG2(回転軸42)に入力されるトルクによって回転駆動されることによって発電することができる。
ここで、リングギア34は、後述される複数のギア(出力ギア37、ギア列51、および、ディファレンシャルギア52など)を介し、車両10の駆動軸53に、実質的に相対回転が不能であるように連結されている(ここで、実質的に相対回転不能であるとは、ギア間の遊び等を除いて相対回転が不能であることを表す。)。すなわち、第2発電電動機MG2の回転軸42は、車両10の駆動軸53と実質的に相対回転が不能であるように連結されている。より具体的に述べると、第2発電電動機MG2の回転軸42は車両10の駆動軸53と連結されるとともに、車両10が停止しているときに(車両10の駆動軸53が回転していないときに)回転不能となっている。
さらに、リングギア34は、リングギアキャリア36を介して出力ギア37に接続されている。したがって、出力ギア37は、リングギア34から出力ギア37に入力されるトルクによって回転駆動され得る。逆に、リングギア34は、出力ギア37からリングギア34に入力されるトルクによって回転駆動され得る。
駆動力伝達機構50は、ギア列51、ディファレンシャルギア52、および、駆動軸(ドライブシャフト)53を有している。
ギア列51は、出力ギア37とディファレンシャルギア52とを動力伝達可能に歯車機構により接続している。ディファレンシャルギア52は、駆動軸53に取り付けられている。駆動軸53の両端には駆動輪54が取り付けられている。したがって、出力ギア37からのトルクはギア列51、ディファレンシャルギア52、および、駆動軸53を介して駆動輪54に伝達される。この駆動輪54に伝達されたトルクにより、ハイブリッド車両10は走行することができる。
以上の説明から理解されるように、第1発電電動機MG1の回転軸41は、複数のギア(サンギア32、プラネタリギア33、リングギア34、出力ギア37、ギア列51、ディファレンシャルギア52)を介して車両10の駆動軸53にトルク伝達可能に接続されている。この回転軸41と、駆動軸53とは、上述したように、相対回転が可能に接続されている。
さらに、第2発電電動機MG2の回転軸42も、複数のギア(リングギア34、出力ギア37、ギア列51、ディファレンシャルギア52)を介して車両10の駆動軸53にトルク伝達可能に接続されている。この回転軸42と、駆動軸53とは、上述したように、相対回転が不能に接続されている。
バッテリ61は、第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2を作動させるための電力をそれら電動機に供給し、または、第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2にて発電された電力を充電する、充放電可能な二次電池である。
バッテリ61は、第1インバータ62を介して第1発電電動機MG1に電気的に接続されており、第2インバータ63を介して第2発電電動機MG2に電気的に接続されており、バッテリECU71に電気的に接続されている。
そして、第1発電電動機MG1は、第1インバータ62を介してバッテリ61から供給される電力によって回転駆動させられる。第2発電電動機MG2は、第2インバータ63を介してバッテリ61から供給される電力によって回転駆動させられる。逆に、第1発電電動機MG1が発電しているとき、第1発電電動機MG1が発生した電力は、第1インバータ62を介してバッテリ61に供給される。同様に、第2発電電動機MG2が発電しているとき、第2発電電動機MG2が発生した電力は第2インバータ63を介してバッテリ61に供給される。
第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2が駆動されるときに回転軸41,42に生じさせるトルクは、後述されるように、PMECU70が発するそれらトルクについての指令(トルク指令)に基づいて制御される。換言すると、第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2は、トルク指令に応じたトルクを回転軸41,42に発生可能であるように構成されている。
なお、第1発電電動機MG1の発生する電力は第2発電電動機MG2に直接供給可能であり、且つ、第2発電電動機MG2の発生する電力は第1発電電動機MG1に直接供給可能である。
パワーマネジメントECU70(以下、「PMECU70」とも称呼される。)は、バッテリECU71、モータECU72およびエンジンECU73と通信により情報交換可能に接続されている。これにより、PMECU70には、バッテリECU71を介してバッテリ61に関する情報が入力または出力され、モータECU72を介してインバータ(62,63)およびレゾルバ(97,98)に関する情報が入力または出力され、エンジンECU73を介して各種センサ(91〜96)に関する情報が入力または出力される。
例えば、PMECU70は、バッテリECU71により算出されるバッテリ61の充電率を入力されるようになっている。充電率は、バッテリ61に流出入する電流の積算値などに基づいて周知の手法により算出される。
さらに、PMECU70は、モータECU72を介して、第1発電電動機MG1の回転速度(MG1回転速度)を表す信号、および、第2発電電動機MG2の回転速度(MG2回転速度)を表す信号、を入力されるようになっている。
なお、MG1回転速度は、モータECU72によって「第1発電電動機MG1に設けられ且つ第1発電電動機MG1の回転軸41の回転位置(回転角度)に対応する出力値を出力するレゾルバ97の出力値」に基づいて算出されている。同様に、MG2回転速度は、モータECU72によって「第2発電電動機MG2に設けられ且つ第2発電電動機MG2の回転軸42の回転位置(回転角度)に対応する出力値を出力するレゾルバ98の出力値」に基づいて算出されている。このように、モータECU72は、第1発電電動機MG1の回転軸41の回転位置(回転角度)を表す信号、および、第2発電電動機MG2の回転軸42の回転位置(回転角度)を表す信号を入力されるようになっている。
加えて、PMECU70は、エンジンECU73を介して、エンジン状態を表す種々の出力信号を入力されるようになっている。このエンジン状態を表す出力信号には、エアフローメータ91、スロットル弁開度センサ92、冷却水温センサ93、機関回転速度センサ94、ノッキングセンサ95および空燃比センサ96の発生する出力信号が含まれる。
さらに、PMECU70は、パワースイッチ81、シフトポジションセンサ82、アクセル操作量センサ83、ブレーキ操作量センサ84および車速センサ85とも接続され、これらセンサが発生する出力信号が入力されるようになっている。
そして、PMECU70は、入力された情報に基づき、オフセット量(第1発電電動機MG1についてのオフセット量および第2発電電動機MG2についてのオフセット量。これらオフセット量は、PMECU70に記憶されている。)を利用してモータECU72に発電電動機(MG1,MG2)を制御するための指令を与える。さらに、モータECU72は、PMECU70からの指令に基づいて、第1インバータ62および第2インバータ63に指示信号を送出するようになっている。そして、第1インバータ62および第2インバータ63は、その指示信号に応じ、第1発電電動機MG1を作動させ、第2発電電動機MG2を作動させるようになっている。
より具体的に述べると、例えば、PMECU70は、第1発電電動機MG1の回転軸41におけるトルクについての指令であるトルク指令、および、第2発電電動機MG2の回転軸42におけるトルクについての指令であるトルク指令、を発するとともに、それら指令をモータECU72に与える。そして、第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2は、それらトルク指令に応じたトルクを回転軸41および回転軸42に発生させる。
上記トルク指令として、例えば、PMECU70は、以下のような指令を発する。
・車両が走行しているときの回転軸41,42の回転方向と同じ向き(すなわち、車両を走行させるための駆動力としてのトルクを発する向き)のトルクを電動機の回転軸41,42に生じさせる指令(以下、「正トルク指令」とも称呼される。)。
・車両が走行しているときの回転軸41,42の回転方向と逆の向き(すなわち、車両を減速または停止させるための制動力(機関20のエンジンブレーキに相当する力)としてのトルクを発する向き、または、電力を回生するための抵抗力としてのトルクを発する向き)のトルクを電動機の回転軸41,42に生じさせる指令(以下、「負トルク指令」とも称呼される。)。
・それらトルクの大きさについての指令。
さらに、PMECU70は、入力された情報に基づき、バッテリECU71にバッテリ61を制御するための指示を与え、エンジンECU73に内燃機関20を制御するための指示を与える。さらに、PMECU70は、それら指示を与えるために必要なパラメータなど(例えば、レゾルバ97,98のオフセット量、および、内燃機関20の空燃比制御に関するパラメータなど)を記憶・保持している。
加えて、エンジンECU73は、PMECU70からの指示に基づき、スロットル弁アクチュエータ22a、燃料噴射弁23および点火装置24などに指示信号を送出することにより、機関20を制御するようになっている。
パワースイッチ81は、ハイブリッド車両10のシステム起動用スイッチである。PMECU70は、いずれも図示しない車両キーがキースロットに挿入され且つブレーキペダルが踏み込まれているときにパワースイッチ81が操作されると(例えば、押されると)、システムを起動する指示が与えられたと判断する。そして、PMECU70は、車両10が走行可能であるか否かを確認した後、車両10が走行可能であれば(いわゆる、Ready−On状態)、図示しない操作パネルなどにその旨を表示する。
シフトポジションセンサ82は、ハイブリッド車両10の運転席近傍に操作者により操作可能に設けられた図示しないシフトレバーによって選択されているシフトポジションを表す信号を発生するようになっている。シフトポジションには、P(パーキングポジション)、R(後進ポジション)、N(ニュートラルポジション)、D(走行ポジション)およびB(エンジンブレーキ積極作動ポジション)が含まれる。
アクセル操作量センサ83は、操作者により操作可能に設けられた図示しないアクセルペダルの操作量(アクセル操作量AP)を表す出力信号を発生するようになっている。
ブレーキ操作量センサ84は、操作者により操作可能に設けられた図示しないブレーキペダルが操作されたときに、ブレーキペダルの操作量(ブレーキ操作量BP)を表す出力信号を発生するようになっている。
車速センサ85は、ハイブリッド車両10の車速を表す出力信号を発生するようになっている。
エアフローメータ91は、機関20に吸入される単位時間あたりの空気量を計測し、その空気量(吸入空気量)を表す信号を出力するようになっている。
スロットル弁開度センサ92は、スロットル弁22の開度(スロットル弁開度)を検出し、その検出したスロットル弁開度を表す信号を出力するようになっている。
冷却水温センサ93は、機関20の冷却水の温度を検出し、その検出した冷却水温を表す信号を出力するようになっている。
機関回転速度センサ94は、機関20のクランクシャフト25が所定角度だけ回転する毎にパルス信号を発生するようになっている。エンジンECU73は、このパルス信号に基づいてクランクシャフト25の単位時間当たりの回転数(機関回転速度)Neを取得するようになっている。
ノッキングセンサ95は、機関20の表面部分に設けられている。ノッキングセンサ95は、機関20の振動を検出するとともに、その振動に応じた信号を出力するようになっている。エンジンECU73は、この信号に基づいてノッキング強度を取得するようになっている。
空燃比センサ96は、エキゾーストマニホールド26の排気集合部であって、排気浄化用触媒28aよりも上流側の位置に設けられている。空燃比センサ96は、排ガスの空燃比を検出し、その検出した排ガスの空燃比(検出空燃比)に応じた出力値を出力するようになっている。
レゾルバ97は、第1発電電動機MG1の回転軸(回転軸)41の回転位置を検出するための回転位置検出器である。レゾルバ97は、レゾルバ97のロータと第1発電電動機MG1の回転軸41とが相対回転不能であるように、回転軸41に設けられている。これにより、レゾルバ97のロータは、回転軸41の回転に伴って回転する。レゾルバ97は、回転軸41の回転位置に応じた信号を出力するようになっている。モータECU72は、この信号に基づき、回転軸41の回転位置を取得するようになっている。さらに、モータECU72は、この信号の単位時間当たりの変化に基づき、回転軸41の回転速度を取得するようになっている。
レゾルバ98は、第2発電電動機MG2の回転軸(回転軸)42の回転位置を検出するための回転位置検出器である。レゾルバ98は、レゾルバ98のロータと第2発電電動機MG2の回転軸42とが相対回転不能であるように、第2発電電動機MG2の回転軸42に設けられている。これにより、レゾルバ98のロータは、回転軸42の回転に伴って回転する。レゾルバ98は、回転軸42の回転位置に応じた信号を出力するようになっている。モータECU72は、この信号に基づいて回転軸42の回転位置を取得するようになっている。さらに、モータECU72は、この信号の単位時間当たりの変化に基づき、回転軸42の回転速度を取得するようになっている。
以上が、第1装置をハイブリッド車両10に適用したシステムの概略構成である。
<制御の考え方>
次いで、第1装置における制御の考え方が、図2を参照しながら説明される。図2は、第1装置における制御の考え方を示す「概略フローチャート」である。
第1装置は、図2のステップ210にて、現時点にてオフセット量を取得する要求が生じているか否かを判定する。例えば、第1装置は、オフセット量に影響を及ぼす部材(例えば、レゾルバ97,98)が交換等された際に技術者が第1装置に対してオフセット量を取得する要求(指示信号)を与えた場合において、その要求が第1装置に与えられた後に初めて操作者がパワースイッチ81を押すことによって第1装置がその要求が生じたことを認識したとき、オフセット量を取得する要求が生じたと判定する。
ところで、車両10は、第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2、ならびに、レゾルバ97およびレゾルバ98を備えている。そのため、レゾルバ97およびレゾルバ98のそれぞれについて、オフセット量を取得する要求が独立して生じる場合がある。しかし、本説明においては、第1装置における制御の考え方がより容易に理解されるように、レゾルバ97およびレゾルバ98の少なくとも一方にオフセット量を取得する要求が生じている場合、第1装置はステップ210にて「オフセット量を取得する要求が生じている」と判定するものとする。
現時点にて第1装置がオフセット量を取得する要求が生じていると判定した場合、第1装置は、ステップ210にて「Yes」と判定してステップ220に進む。
第1装置は、ステップ220にて、「トルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化するか否か、または、トルク指令が負トルク指令から正トルク指令に変化するか否か」を判定する。すなわち、第1装置は、トルク指令が反転(ゼロクロス)することになるか否かを判定する。例えば、第1装置は、アクセルペダルが踏まれているときにアクセルペダルを離す操作(アクセルオフ)がなされたことをアクセル操作量APに基づいて認識した場合、トルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化すると判定する。また、第1装置は、アクセルペダルが踏まれていないときにアクセルペダルを踏み込む操作(アクセルオン)がなされたことをアクセル操作量APに基づいて認識した場合、トルク指令が負トルク指令から正トルク指令に変化すると判定する。そして、第1装置は、トルク指令が反転することになると判定した場合、ステップ230に進む。
第1装置は、ステップ230にて、トルク指令が反転する途中において、電動機の回転軸(41,42)にトルクを生じさせない指令を発する期間(ゼロトルク指令期間)を設ける。このゼロトルク指令期間は、オフセット量取得処理を実行するために必要な時間長さを有する。そして、第1装置は、ステップ240に進み、そのゼロトルク指令期間中にオフセット量取得処理を実行する。
オフセット量取得処理の具体例として、例えば、第1装置は、電動機の回転軸(41,42)が回転しているとき、電動機(MG1,MG2)の磁極座標系(d−q座標系)におけるd軸電流およびq軸電流がゼロであるように電動機を制御しながら(換言すると、上述したゼロトルク指令を発しながら)、d軸電圧を取得する。このとき、オフセット量の大きさに応じて、磁極座標系(d−q座標系)における横軸(d軸)と、取得されたd軸電圧の向きと、の間の角度の大きさが異なる。そこで、第1装置は、その角度に基づき、オフセット量を取得する(例えば、特開2004−266935号公報などを参照。)。なお、実際には、オフセット量そのものを取得することなく(オフセット量そのものに代えて、オフセット量に相関する値である上記角度を用いて)、上記角度の大きさがゼロであるように電動機への制御信号が調整される場合もある。
このように、第1装置は、トルク指令が反転(ゼロクロス)するときに強制的にゼロトルク指令期間を設けるとともに、そのゼロトルク指令期間中にオフセット量取得処理を実行する。
ところで、現時点においてオフセット量を取得する要求が生じていない場合、第1装置は、ステップ210にて「No」と判定する。この場合、オフセット量取得処理(ステップ240)は実行されない。同様に、オフセット量を取得する要求が生じているものの、トルク指令が反転することになると判定しない場合、装置は、ステップ220にて「No」と判定し、オフセット量取得処理を実行しない。なお、これらの場合、例えば、PMECU70に記憶されているオフセット量に基づいて電動機が作動される。
以上に説明したように、第1装置は、オフセット量を取得する要求が生じているとき、トルク指令が反転する途中において、強制的にオフセット量取得処理をするために必要な時間長さだけゼロトルク指令期間を設ける。これにより、オフセット量を取得する要求が生じているとき、「電動機の回転軸が回転しており且つゼロトルク指令が発せられる機会」が適切に設けられるので、オフセット量を出来る限り迅速に精度良く取得することができる。
以上が、第1装置についての説明である。
(第2実施形態)
次いで、本発明の制御装置におけるオフセット量取得処理をより具体的に説明する実施形態が、説明される。以下、この実施形態における制御装置は、「第2装置」とも称呼される。第2装置は、第1装置と同様の車両10に適用される。
第2装置は、オフセット量取得処理を実行することよりも他の処理を実行することが優先される場合、オフセット量取得処理を停止する。
以下、第2装置における制御の考え方がより容易に理解されるよう、第2装置が制御する対象の電動機の代表として「第2発電電動機MG2」を採用し、説明を続ける。この理由として、第2発電電動機MG2の回転軸42は車両10の駆動軸53と相対回転が不能である(よって、車両10が停車しているとき、上記具体例に示すオフセット量取得処理を実行できない)ように連結されていることから、第2装置の特徴の一つ(車両10の走行中であってもオフセット量取得処理を実行できる。)を活用するために適していること、が挙げられる。なお、当然ながら、第2装置は、第1発電電動機MG1を制御することもできる。
ここで、第2装置の具体的な作動について説明する前に、第2発電電動機MG2の回転軸42が駆動軸53が回転していない場合に回転不能である理由(および、第1発電電動機MG1の回転軸41がその場合に回転可能である理由)が、図3を参照しながら説明される。
第1発電電動機MG1の回転軸41が接続されている遊星歯車装置31における各ギア(サンギア32、プラネタリギア33およびリングギア34)の回転軸の回転速度は、図3に示した周知の共線図により表される関係を有する。この共線図について簡単に説明すると、図3(a)および図3(b)における縦軸はサンギア軸(S)、プラネタリキャリア軸(C)およびリングギア軸(R)の回転速度を示す軸であり、横軸は各ギアのギア比を表す軸である(図3の横軸におけるρは、リングギア34の歯数に対するサンギア32の歯数の比を表す。)。
例えば、図3(a)に示す例を参照すると、機関20のクランクシャフト25が回転速度Neにて回転しており(すなわち、クランクシャフト25に接続されたプラネタリキャリア軸(C)がその回転速度Neにて回転しており)、リングギア34が回転速度Nm2にて回転している場合、プラネタリキャリア軸(C)上に回転速度Neに対応する点を定め、リングギア軸(R)上に回転速度Nm2に対応する点を定める。このとき、このように定められた2つの点を通る直線(L)と、サンギア軸(S)と、の交点に対応する回転速度Nm1にて、サンギア軸が回転することになる。
次いで、車両10の駆動軸53が回転していない場合(例えば、車両10が停止している場合)における3つの軸の回転速度について、図3(b)を参照しながら説明する。車両10の駆動軸53が回転していない場合、車両10の駆動軸53に連結されたリングギア軸(R)は回転しない。すなわち、リングギア軸の回転速度はゼロである。そこで、リングギア軸(R)上に回転速度ゼロに対応する点を定める。このように、第2発電電動機MG2の回転軸42(リングギア軸)は、車両10の駆動軸53が回転していないときに回転不能である。
さらに、上記の場合において機関20が駆動している場合、プラネタリキャリア軸(C)はクランクシャフト25の回転速度に対応する回転速度Neにて回転する。そこで、プラネタリキャリア軸(C)上に回転速度Neに対応する点を定める。このとき、これら2つの点を通る直線(L)と、サンギア軸(S)と、の交点に対応する回転速度Nm1にて、サンギア軸が回転することになる。このように、第1発電電動機MG1の回転軸41(サンギア軸)は、車両10の駆動軸53が回転していなくても(リングギア軸の回転速度がゼロでも)回転可能である。
ところで、周知のように、上述した共線図上におけるトルクの釣り合いを考えることにより、サンギア軸(S)、プラネタリキャリア軸(C)およびリングギア軸(R)において生じさせるトルク(PMECU70から発電電動機MG1,MG2に与えられる指示に基づくトルク、および、PMECU70から機関20に与えられる指示に基づくトルク)の大きさを把握することもできる。より詳細には、例えば、特開2009−126450号公報(米国公開特許番号 US2010/0241297)、および、特開平9−308012号公報(米国出願日1997年3月10日の米国特許第6,131,680号)などを参照されたい。これらの内容は、本願明細書に参照として取り込まれる。
<制御の考え方>
以下、第2装置における制御の考え方が、図4を参照しながら説明される。図4は、第2装置における制御の考え方を示す「オフセット量取得ルーチン」である。
図4に示したルーチンは、ステップ410が追加されている点のみにおいて図2に示したルーチンと相違している。そこで、図4において図2に示したステップと同一の処理を行うためのステップには、図2のそのようなステップに付された符号と同一の符号が付されている。これらのステップについての詳細な説明は適宜省略される。
第2装置は、図4のステップ400から処理を開始すると、オフセット量を取得する要求が生じており且つトルク指令が反転することになると判定した場合、図4のステップ210〜ステップ230の処理をこの順に行う。これにより、オフセット量を取得する要求が生じている場合、トルク指令が反転している途中において所定の時間長さだけ、ゼロトルク指令期間を設定する。
次いで、第2装置は、ステップ410に進む。第2装置は、ステップ410にて、現時点にて「オフセット量取得処理を停止する条件(処理停止条件)が成立するか否か」を判定する。より具体的に述べると、第2装置は、現時点にて下記条件1〜条件3のうちの少なくとも1つが成立するとき、処理停止条件が成立すると判定する。換言すると、第2装置は、下記条件1〜条件3の全てが成立しないとき、処理停止条件が成立しないと判定する。
(条件1)ゼロトルク指令期間中に車両10を急停止する要求が生じた。
(条件2)ゼロトルク指令期間中に第2発電電動機MG2の回転軸42に連結された駆動軸53が空転(すなわち、車両10がスリップ)した。
(条件3)ゼロトルク指令期間中に第2装置を含むシステム全体を停止する要求が生じた。
上記条件1について、第2装置は、ブレーキ操作量センサ84の出力信号に基づき(例えば、ブレーキ操作量BPの単位時間当たりの変化量が所定の閾値以上である場合。簡便に述べると、急ブレーキが踏まれた場合)、車両を急停止する要求が生じたか否かを判定する。上記条件2について、第2装置は、車速センサ83の出力信号に基づき(例えば、第2発電電動機MG2の回転軸42の回転速度から算出される駆動軸53の回転速度と、車速センサ83の出力信号から算出される駆動軸53の実際の回転速度と、の差が所定の閾値以上である場合)、駆動軸53が空転したか否かを判定する。上記条件3について、第2装置は、上述したReady−On状態が維持されているかを監視し、第2装置を含むシステム全体を停止する要求が生じたか否かを判定する。
現時点にて処理停止条件が成立する場合、第2装置は、ステップ410にて「Yes」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、オフセット量取得処理の実行前に(ステップ240の処理が実行される前に)その実行が禁止されることにより、オフセット量取得処理が停止される。
これに対し、現時点にて処理停止条件が成立していない場合、第2装置は、ステップ410にて「No」と判定し、ステップ240に進む。そして、第2装置は、第1装置と同様にオフセット量取得処理を実行する。その後、第2装置は、ステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。
ところで、第1装置と同様、現時点においてオフセット量を取得する要求が生じていない場合、または、オフセット量を取得する要求が生じているものの現時点にてトルク指令が反転する途中ではない場合、第2装置は、ステップ210またはステップ220にて「No」と判定する。この場合、オフセット量取得処理(ステップ240)は実行されない。
以上に説明したように、第2装置は、処理停止条件が成立した場合、オフセット量取得処理を停止する。これにより、オフセット量取得処理を実行することよりも優先されるべき状況が生じたとき、必要に応じてオフセット量取得処理が停止される。
以上が、第2装置についての説明である。
(第3実施形態)
次いで、本発明の車両の制御装置におけるオフセット量取得処理をさらに具体的に説明する実施形態が、説明される。以下、この実施形態における制御装置は、「第3装置」とも称呼される。第3装置は、第1装置と同様の車両10に適用される。
第3装置は、トルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化する途中にオフセット量取得処理を実行することを、トルク指令が負トルク指令から正トルク指令にトルク指令が変化する途中にオフセット量取得処理を実行することよりも優先する。
ただし、第3装置は、トルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化するときのオフセット量取得処理が停止された場合、オフセット量取得処理が停止された後に最初にトルク指令が負トルク指令から正トルク指令にトルク指令が変化するときに改めてオフセット量取得処理を実行する。
以下の説明においては、第2装置と同様、第3装置が制御する対象の電動機の代表として「第2発電電動機MG2」を採用する。なお、第2装置と同様、第3装置は、第1発電電動機MG1を制御することもできる。
<制御の考え方>
以下、第3装置における制御の考え方が、図5を参照しながら説明される。図5は、第3装置における制御の考え方を示す「オフセット量取得ルーチン」である。
図5に示したルーチンは、ステップ510〜ステップ550が追加されている点のみにおいて図2に示したルーチンと相違している。そこで、図5において図2に示したステップと同一の処理を行うためのステップには、図2のそのようなステップに付された符号と同一の符号が付されている。これらのステップについての詳細な説明は適宜省略される。
第3装置は、図5のステップ500から処理を開始すると、現時点にてオフセット量を取得する要求が生じている場合、ステップ210にて「Yes」と判定してステップ510に進む。
第3装置は、ステップ510にて、現時点にてトルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化するか否かを判定する。現時点にてトルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化すると判定した場合、第3装置は、ステップ510にて「Yes」と判定する。そして、第3装置は、ステップ230にてゼロトルク指令期間を設定した後、ステップ520に進む。
第3装置は、ステップ520にて、第2装置における処理停止条件と同様の条件(以下、便宜上、「処理停止条件」と称呼する。)が成立するか否かを判定する(図4のステップ410を参照。)。
現時点にて処理停止条件が成立しない場合、第3装置は、ステップ520にて「No」と判定し、ステップ240に進んでオフセット量取得処理を実行する。その後、第3装置は、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
これに対し、現時点にて処理停止条件が成立する場合、第3装置は、ステップ520にて「Yes」と判定し、ステップ530に進む。第3装置は、ステップ530にて、現時点にてトルク指令が負トルク指令から正トルク指令に変化するか否かを判定する。そして、現時点にてトルク指令が負トルク指令から正トルク指令に変化すると判定した場合、第3装置は、ステップ530にて「Yes」と判定する。そして、第3装置は、ステップ540にてゼロトルク指令期間を設定した後、ステップ550に進む。なお、ステップ540におけるゼロトルク指令期間の設定方法は、上述したステップ230におけるゼロトルク指令期間の設定方法と同一である。
ところで、トルク指令が負トルク指令から正トルク指令に変化するとき(例えば、アクセルペダルが踏まれていないときにそのアクセルペダルを踏み込む操作が行われた場合)、駆動軸53に要求されるトルクの大きさによっては、第2発電電動機MG2だけではなく(あるいは、第2発電電動機MG2に代えて)機関20も作動される場合がある。この場合、機関20が始動するとき等に生じ得る機関20の出力トルクの予期せぬ変動が車両10の走行に影響を及ぼさないように、その変動を抑える(キャンセルする)ためのトルクが第2発電電動機MG2から出力されることがある(いわゆる、反力キャンセル)。このようなトルクを第2発電電動機MG2から出力する必要がある場合、第3装置は、同トルクを発するトルク指令を発している間はゼロトルク指令を発することができない。よって、この場合、第3装置は、ゼロトルク指令を適切なタイミングにて発することができない可能性がある。
そこで、第3装置は、上述したようなトルクを第2発電電動機MG2から出力する必要がないとき(すなわち、トルク指令が負トルク指令から正トルク指令に変化する場合において機関20が作動されないとき)に限り、ステップ540にてゼロトルク指令期間を設定するようにも構成され得る。
再び図5を参照すると、第3装置は、ステップ550にて、第2装置における処理停止条件と同様の条件(以下、便宜上、「処理停止条件」と称呼する。)が成立するか否かを判定する(図4のステップ410を参照。)。
現時点にて処理停止条件が成立していない場合、第3装置は、ステップ550にて「No」と判定し、ステップ240に進んでオフセット量取得処理を実行する。このように、第3装置は、トルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化するときのオフセット量取得処理が停止された場合(ステップ520にて「Yes」と判定された場合)、オフセット量取得処理が停止された後に最初にトルク指令が負トルク指令から正トルク指令にトルク指令が変化するときに(ステップ550にて「No」と判定されるときに)改めてオフセット量取得処理を実行する。
一方、現時点にて処理停止条件が成立する場合、第3装置は、ステップ550にて「Yes」と判定し、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、オフセット量取得処理は実行されない。
ところで、第3装置は、図5のステップ500から処理が開始されてステップ510に進んだとき、現時点にてトルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化しないと判定した場合、ステップ510にて「No」と判定し、ステップ595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。そのため、ステップ510の処理がなされた後にトルク指令が負トルク指令から正トルク指令に変化したとしても(ステップ530に相当。)、オフセット量取得処理は実行されない。すなわち、トルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化する途中にオフセット量取得処理を実行することが、トルク指令が負トルク指令から正トルク指令にトルク指令が変化する途中にオフセット量取得処理を実行することよりも優先される。
なお、第1装置と同様、現時点においてオフセット量を取得する要求が生じていない場合、第3装置は、ステップ210にて「No」と判定する。この場合、オフセット量取得処理(ステップ240)は実行されない。
以上に説明したように、第3装置は、トルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化する途中にオフセット量取得処理を実行することを、トルク指令が負トルク指令から正トルク指令にトルク指令が変化する途中にオフセット量取得処理を実行することよりも優先する。さらに、第3装置は、トルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化するときにオフセット量取得処理が実行されなかった場合であっても、その後に速やかに(すなわち、オフセット量取得処理が停止された後に「最初に」トルク指令が負トルク指令から正トルク指令に変化するときに)オフセット量取得処理が実行されることになる。これにより、適切なオフセット量が取得されていない状態にて車両が走行することが、出来る限り防がれる。
以上が、第3装置についての説明である。
<実施形態の総括>
図1〜図10を参照しながら説明したように、本発明の実施形態に係る制御装置は(第1装置〜第3装置)は、車両10の駆動軸53にトルク伝達可能に連結された回転軸(41,42)を有する電動機(MG1,MG2)と、前記電動機の回転軸(41,42)の回転位置を検出する回転位置検出器(97,98)と、を備える車両10に適用される。
この車両10においては、前記電動機の回転軸(41,42)におけるトルクについての指令であるトルク指令に応じたトルクを同回転軸(41,42)に発生可能であるように、前記電動機MG1,MG2が構成されている。
本発明の実施形態に係る制御装置は、前記回転位置検出器(97,98)によって検出される前記回転軸(41,42)の回転位置と、実際の前記回転軸(41,42)の回転位置と、の差、に相当するオフセット量を取得する要求に応じて前記オフセット量を取得する処理であるオフセット量取得処理を実行する(図2のステップ210を参照。)。
さらに、本発明の実施形態に係る制御装置は、前記オフセット量取得処理が前記電動機の回転軸(41,42)が回転しており且つ前記電動機の回転軸(41,42)にトルクを生じさせない指令であるゼロトルク指令を発しているときに実行する処理である場合、前記オフセット量を取得する要求が生じているとき(図2のステップ210にて「Yes」と判定されるとき)、以下のようにオフセット量取得処理を実行する。
まず、本発明の実施形態に係る制御装置は、(a)前記電動機の回転軸(41,42)を同回転軸(41,42)の回転を促進する正の方向に回転させる向きのトルクを同回転軸(41,42)に生じさせるトルク指令である正トルク指令から、前記電動機の回転軸(41,42)を同回転軸(41,42)の回転を抑制する負の方向に回転させる向きのトルクを同回転軸(41,42)に生じさせるトルク指令である負トルク指令に、前記トルク指令が変化する途中、および、(b)前記トルク指令が前記負トルク指令から前記正トルク指令に変化する途中、の少なくとも一方において、前記正トルク指令を発する期間と前記負トルク指令を発する期間との間に前記オフセット量取得処理を実行するために必要な時間長さだけ前記ゼロトルク指令を発する期間であるゼロトルク指令期間を設ける(図2のステップ220およびステップ230を参照。)。
そして、本発明の実施形態に係る制御装置は、同ゼロトルク指令期間中に前記オフセット量取得処理を実行する(図2のステップ240を参照。)。
さらに、本発明の実施形態に係る制御装置は、一の態様において、前記ゼロトルク指令期間中に前記オフセット量取得処理を停止する条件である処理停止条件が成立した場合(図4のステップ410にて「Yes」と判定される場合)、前記オフセット量取得処理を停止する、ようにも構成される(図4のルーチンを参照)。
加えて、本発明の実施形態に係る制御装置は、他の態様において、前記正トルク指令から前記負トルク指令に前記トルク指令が変化する途中に前記オフセット量取得処理を実行することを、前記負トルク指令から前記正トルク指令に前記トルク指令が変化する途中に前記オフセット量取得処理を実行することよりも優先する、ようにも構成される(図5のステップ510〜ステップ520、および、ステップ530〜ステップ550を参照。)。
本発明の実施形態に係る制御装置は、上述した構成において、さらに他の態様として、前記正トルク指令から前記負トルク指令に前記トルク指令が変化する途中に設けられた前記ゼロトルク指令期間中に前記処理停止条件が成立することによって前記オフセット量取得処理が停止された場合(図5のステップ520にて「Yes」と判定された場合)、同オフセット量取得処理が停止された後に最初に前記負トルク指令から前記正トルク指令に前記トルク指令が変化するとき(図5のステップ530にて「Yes」と判定されたとき)、前記オフセット量取得処理を実行する、ようにも構成される(図5のルーチンを参照。)。
なお、車両10は、前記電動機の回転軸42が前記車両10の駆動軸53と相対回転不能に連結されるように構成されている(図1を参照。)。
(他の態様)
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
例えば、上記各実施形態においては、処理停止条件が成立した場合、オフセット量取得処理の「実行前」にその実行が禁止されることにより、オフセット量取得処理が停止されるようになっている。しかし、オフセット量取得処理を停止する方法は、同処理の実行前に同処理を禁止することに限られない。例えば、オフセット量取得処理の「実行中」に同処理の実行を中断することによっても、オフセット量取得処理は停止され得る。より具体的に述べると、例えば図4のルーチンにおいて、ステップ240にてオフセット量取得処理が開始された後にステップ410にて処理停止条件が成立するか否かが判定されるように、制御装置が構成されてもよい。
さらに、上記各実施形態においては、制御装置が制御する対象の電動機の代表として第2発電電動機MG2が採用されている。しかし、本発明の制御装置の実施形態は、上記各実施形態に示される考え方に従って第1発電電動機MG1を制御するようにも構成され得る。
さらに、上記各実施形態においては、本発明の制御装置は、駆動源として電動機と内燃機関とを備えたハイブリッド車両に適用されている。しかし、本発明の制御装置は、必ずしもハイブリッド車両にのみ適用され得るのではなく、駆動源として電動機のみを備えた電気自動車にも適用され得る。
さらに、上記各実施形態の制御装置が適用される車両10は、電動機を2つ備えている(第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2)。しかし、本発明の制御装置は、電動機を1つ又は3つ以上備えた車両にも適用され得る。
さらに、上記各実施形態の制御装置においては、オフセット量は、制御装置としてのPMECU70に記憶されるようになっている。しかし、他のECU(例えば、モータECU72など)を含む複数のECUの組み合わせを本発明の制御装置として考えるとともに、PMECU70以外のECU(例えば、モータECU72)にオフセット量が記憶されてもよい。
さらに、上記各実施形態の制御装置においては、オフセット量取得処理を実現する方法として、制御装置がゼロトルク指令を発しているときのd軸電圧に基づいてオフセット量を取得する方法が採用されている。しかし、オフセット量取得処理を実現する方法は、その方法が実行され得る条件およびオフセット量の取得精度などが考慮された適切な方法であればよく、この方法以外の方法が採用されてもよい。