ところで、オフセット量に影響を及ぼす部材(例えば、電動機および回転位置検出器など)に故障等が生じると、その部材が交換または修理される場合がある。この場合、上述した各種のばらつき等に起因し、オフセット量に影響を及ぼす部材が交換等される「前」のオフセット量と、その部材が交換等された「後」のオフセット量とは、必ずしも一致しない。そのため、この場合、オフセット量に影響を及ぼす部材が交換等された「後」のオフセット量が改めて(交換等の後に再び)取得されることが望ましい。
オフセット量を取得する具体的な方法としては、種々の方法が採用され得る。例えば、従来装置が適用される車両においては、電動機が交換または修理される場合、上記トランスミッションの全体が車両から取り外される。そして、電動機が交換または修理されてトランスミッションが再び車両に取り付けられる前に、所定の方法(具体的に述べると、電動機の回転軸を外力によって回転させたときに電動機に生じる励起電圧を測定し、その励起電圧に基づいてオフセット量を取得する方法)により、回転位置検出器のオフセット量が改めて取得される。そして、その取得されたオフセット量が、上記記憶装置に記憶される。その後、トランスミッションが車両に取り付けられる。
従来装置に採用されている上記方法は、オフセット量を取得するための特別な装置(例えば、電動機の回転軸を外力によって回転させる装置および電動機に生じる励起電圧を測定する装置など)を用いて実行されるので、電動機を適切に作動させる観点において十分な精度にて新たなオフセット量を取得することができるという長所がある。しかし、上記方法は、その特別な装置を用いた処理を特定の場所(例えば、修理工場内など)にて特定の技術者が実行する必要があることから、同方法の実施が煩雑であるという短所を有する。
そこで、オフセット量を取得する処理をより簡便に実施するべく、オフセット量に影響を及ぼす部材が交換等された場合、その部材が車両に取り付けられた後に、車両の一般の操作者が通常行う操作(例えば、車両を起動するスイッチを押す操作、および、車両を減速または加速するためのアクセルの操作など)に伴ってオフセット量を取得する処理を実行することが考えられる。
ところが、一般に、オフセット量を取得する処理によって取得されるオフセット量の精度は、具体的な処理の方法および同処理を実行する際の車両の運転状態などによって異なる。別の言い方をすると、精度良くオフセット量を取得できる処理は同処理を実行可能とする条件が成立するまで実行できず、その結果、オフセット量を取得する要求が生じているにもかかわらず、オフセット量を取得できていない状態が比較的長期間に亘って継続する可能性がある。しかし、電動機を車両の駆動源として用いる観点からは、オフセット量を取得する要求が生じている場合には、出来る限り精度の高いオフセット量が出来る限り迅速に取得されることが望ましい。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、オフセット量を取得する要求に出来る限り早急に且つ的確に応えることができる車両の制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明による車両の制御装置は、
車両の駆動軸に連結された回転軸を有する電動機と、前記電動機の回転軸の回転位置を検出する回転位置検出器と、を備えた車両に適用される。
本発明の制御装置は、
「前記回転位置検出器によって検出される前記回転軸の回転位置と、実際の前記回転軸の回転位置と、の差に相当するオフセット量」を取得する要求に応じて前記オフセット量を取得する処理である「オフセット量取得処理」を実行する。さらに、本発明の制御装置は、同オフセット量取得処理によって取得されたオフセット量を利用して前記電動機を作動させる
さらに、本発明の制御装置は、オフセット量を取得する要求が生じている場合、下記(a)に示す処置を行った後に下記(b)に示す処置を行う。すなわち、本発明の制御装置は、オフセット量を取得する処理が生じている場合、下記(a)に示す処置および下記(b)に示す処置をこの順に行う。
すなわち、本発明の制御装置は、
前記オフセット量を取得する要求が生じている場合、
(a)まず、前記オフセット量取得処理として前記電動機の回転軸が「回転していない」ときに実行される第1の処理を、「前記車両が停止しているとき」に実行し、同第1の処理によって取得されたオフセット量を利用して前記電動機を作動させる。
(b)次いで、前記オフセット量取得処理として前記電動機の回転軸が「回転している」ときに実行される第2の処理を、「前記第1の処理が実行された後に前記車両が走行しているとき」に実行し、同第2の処理によって取得されたオフセット量を前記第1の処理によって取得されたオフセット量に代えて利用して前記電動機を作動させる。
ように構成されている。
オフセット量取得処理によって取得されるオフセット量の精度について、以下に簡単に説明する。一般に、オフセット量取得処理は、電動機の回転軸の回転位置に関する情報を取得するとともに、その取得された情報に基づいてオフセット量を特定するように、実行される。そして、電動機の回転軸が「回転されながら」取得された回転軸の回転位置に関する情報は、一般に、電動機の回転軸が「回転していない」状態にて取得された同情報よりも、精度が高い。換言すると、一般に、電動機の回転軸が回転されながら取得されたオフセット量は、電動機の回転軸が停止していない状態にて取得されたオフセット量よりも、精度において優れる。そのため、オフセット量を精度良く取得する観点からは、一般に、電動機の回転軸が「回転していない」ときにオフセット量取得処理が実行されることよりも、電動機の回転軸が「回転している」ときにオフセット量を取得する処理が実行されることが、望ましい。
ところが、電動機および回転位置検出器の構造、ならびに、それらを備える車両の構造などによっては、オフセット量を取得する要求が生じているとき、常に、電動機の回転軸が回転している(または、回転していない回転軸を回転させ始めることができる)とは限らない。別の言い方をすると、オフセット量を取得する要求が生じていても、必ずしも精度が十分なオフセット量を常に取得することができるとは言えない。
しかし、オフセット量を取得する要求が生じているにもかかわらず、何らのオフセット量が取得されることもなく電動機が作動されると、精度が比較的低いオフセット量(例えば、回転軸が「回転していない」ときに取得されるオフセット量)を利用して電動が作動される場合に比べても、電動機が適切に制御されない可能性が高い。そして、その結果、車両のドライバビリティが低下する可能性もある。
そこで、本発明の制御装置は、オフセット量を取得する要求が生じている場合、車両が「停止」しているときに(換言すると、車両を走行させる前に)、電動機の回転軸が「回転していない」状態であってもオフセット量取得処理を実行する。このように取得されたオフセット量は、上述したように、電動機の回転軸が「回転している」状態にて取得されたオフセット量よりも一般に精度が低い。とはいえ、このオフセット量を利用すれば、オフセット量が取得されない状態にて電動機が作動される場合と比べ、より適切に電動機が作動され得る。そこで、本発明の制御装置は、より精度の高いオフセット量が取得されるまで(すなわち、電動機の回転軸が「回転している」ときにオフセット量取得処理が実行されるまで)、このオフセット量を利用して電動機を作動させる。
そして、本発明の制御装置は、回転軸が「回転していない」状態にて取得されたオフセット量を利用して電動機が作動され、車両が走行しているとき、電動機の回転軸が「回転している」状態にてオフセット量取得処理を実行する。このオフセット量取得処理により、精度に優れたオフセット量が取得される。なお、このオフセット量取得処理を実行し得る好適なタイミングについては、後述される。その後、本発明の制御装置は、回転軸が回転している状態にて取得されたオフセット量を、回転軸が回転していない状態にて取得されたオフセット量に代えて利用し、電動機を作動させる。
このように、本発明の制御装置は、車両の運転状態などを考慮しながら、出来る限り精度の高いオフセット量を出来る限り迅速に取得する。これにより、本発明の制御装置は、オフセット量を取得する要求に出来る限り早急に且つ的確に応えることができる
ところで、上記車両の駆動軸と電動機の回転軸との具体的な連結の方法(態様)は特に制限されない。例えば、車両の駆動軸と電動機の回転軸とは、相対回転が可能に連結されていてもよく、相対回転が不能に連結されていてもよい。また、例えば、車両の駆動軸と電動機の回転軸とは、一または複数のギアを介して連結されていてもよい。
上記「電動機」は、車両(例えば、ハイブリッド自動車および電気自動車など)に適用され得る電動機であればよく、その形式および構造、ならびに、車両に備えられる電動機の数などは、特に制限されない。また、電動機は、車両を走行させるためのトルクを生じる機能だけではなく、車両を減速等させるためのトルク(例えば、内燃機関を備えた車両のエンジンブレーキに相当するトルク)を生じる機能、および、回転軸が回転するエネルギを利用して発電する(電力を回生する)ためのトルクを生じる機能などを備えてもよい。
上記「回転位置検出器」は、電動機の回転軸の回転位置(回転軸が回転するときの回転角度)を検出し得る検出器であればよく、その構造および車両に備えられる数などは、特に制限されない。ここで、回転位置は、例えば、所定の基本位置(例えば、回転角度がゼロである位置)を基準とする回転軸の回転の度合い(絶対角度または相対角度)として、検出され得る。回転位置検出器として、例えば、レゾルバが採用され得る。
なお、一般に、電動機は回転子(ロータ)と固定子(ステータ)とを備えており、その回転子(ロータ)が回転軸に相対回転が不能であるように連結されている。そのため、上記「回転軸の回転位置」は、一般に、回転子(ロータ)の回転位置と同義である。
上記「オフセット量」は、回転位置検出器によって検出される電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転軸の回転位置と、の差に相当する量(値)であればよく、オフセット量として採用される具体的なパラメータは特に制限されない。例えば、オフセット量として、検出される回転位置と実際の回転位置との回転の度合いの差(例えば、絶対角度の差)、および、その回転の度合いの差に相関するパラメータ(例えば、その差が大きいほど増大するパラメータ)などが採用され得る。
上記「オフセット量を取得する要求」は、必要に応じて制御装置に与えられる要求であればよく、特に制限されない。例えば、オフセット量を取得する要求は、実際のオフセット量と、制御装置が保持しているオフセット量(例えば、制御装置がオフセット量を記憶する記憶部を備えている場合、その記憶部に記憶されたオフセット量)とが、所定の度合い以上に相違するとき又は所定の度合い以上に相違する可能性があるとき、制御装置に与えられ得る。さらに、オフセット量を取得する要求は、例えば、オフセット量に影響を及ぼす部材(例えば、電動機および回転位置検出器など)が交換等されたとき、現時点において電動機を作動させるときに使用されているオフセット量が取得されてから(オフセット量の前回の取得から)所定の時間長さが経過したとき、および、電動機の作動状態などを考慮したオフセット量を取得すべき条件(例えば、電動機への要求トルクと実際の発生トルクとの差が所定値以上である等)が成立したとき、などに制御装置に与えられ得る。
オフセット量に影響を及ぼす部材が交換等された場合についてより具体的に述べると、制御装置にオフセット量を取得する要求を与える方法として、例えば、その交換等を行った技術者が作業手順書に従って制御装置にオフセット量を取得する要求を与える方法、および、制御装置そのものがその交換等が行われたことを所定の手法によって認識すると共にその交換等が行われたと認識したときにオフセット量を取得する要求が生じたと判断する方法、の一方または双方などが採用され得る。
なお、「オフセット量に影響を及ぼす部材」は、オフセット量の大きさに何らかの影響を及ぼす部材であればよく、特に制限されない。例えば、オフセット量に影響を及ぼす部材として、電動機、回転位置検出器、電動機および回転位置検出器を車両に固定する部材、電動機、回転位置検出器およびギア機構などが格納されたトランスアクセル、ならびに、制御装置のうちのオフセット量を記憶している部分、などが挙げられる。
上記「オフセット量取得処理」は、回転位置検出器のオフセット量を取得し得る処理であればよく、その具体的な処理方法などは特に制限されない。例えば、オフセット量取得処理として、上記「電動機の回転軸が回転していないときに実行される処理(第1の処理)」および上記「電動機の回転軸が回転しているときに実行される処理(第2の処理)」が採用され得る。なお、第1の処理および第2の処理の詳細については、後述される。
上記「取得されたオフセット量を利用して電動機を作動させる」とは、取得されたオフセット量を種々の考え方に基づいて考慮しながら電動機を作動させることを表し、具体的な利用の方法(態様)は特に制限されない。例えば、取得されたオフセット量を利用して電動機を作動させる方法として、電動機を作動させるための指示信号をオフセット量を考慮しながら(オフセット量による各種パラメータのずれを前提として)定めること、および、電動機を作動させるための指示信号をオフセット量に基づいて補正すること、などが挙げられる。
上記「第1の処理」は、電動機の回転軸が回転していないときに回転位置検出器のオフセット量を取得し得る処理であればよく、特に制限されない。例えば、第1の処理として、回転位置検出器としてレゾルバが採用される場合、電動機の静止している回転子の周辺に所定の検出用磁界を生じさせたときの磁極座標系(d−q座標系)におけるq軸電流の値に基づいてオフセット量を取得する処理、などが採用され得る。
ここで、第1の処理は、例えば、車両が停止しているときに車両のシステムを起動する指示がなされたとき(例えば、車両を起動するスイッチが押されたとき)、車両が走行する前の好適なタイミングにて、実行され得る。
上記「第2の処理」は、電動機の回転軸が回転しているときに回転位置検出器のオフセット量を取得し得る処理であればよく、特に制限されない。なお、このような第2の処理によって取得されるオフセット量の精度は、電動機を要求に応じて適切に作動させる観点において十分な精度であることが好ましい。例えば、第2の処理として、回転位置検出器としてレゾルバが採用される場合、電動機の磁極座標系(d−q座標系)におけるd軸電流およびq軸電流がゼロであるときの(換言すると、電動機の回転軸にトルクを生じさせないときの)d軸電圧の値に基づいてオフセット量を取得する処理、などが採用され得る(例えば、特開2004−266935号公報などを参照。)。別の言い方をすると、第2の処理として、電動機の回転軸が回転しており且つ電動機の回転軸にトルクを生じさせない指令(ゼロトルク指令)を発しているときに実行される処理、が採用され得る。
ここで、第2の処理は、例えば、電動機の回転軸を「回転軸の回転を促進する正の方向」に回転させる向きのトルクを回転軸に生じさせるトルク指令(正トルク指令)から、電動機の回転軸を「回転軸の回転を抑制する負の方向」に回転させる向きのトルクを回転軸に生じさせるトルク指令(負トルク指令)に、トルク指令が変化するとき、に実行され得る。さらに、第2の処理は、例えば、トルク指令が負トルク指令から正トルク指令に変化するときにも実行され得る。加えて、第2の処理は、例えば、上述したようにトルク指令が変化する途中にゼロトルク指令を発する期間を設けるとともに、その期間中に実行されてもよい。
上記「正の方向」は、回転軸の回転を促進する方向であれば良い。正の方向として、例えば、車両が走行(前進または後進)しているときの回転軸の回転方向と同じ向きが挙げられる。別の言い方をすると、正の方向は、車両を走行させるための駆動力としてのトルクを発する向きである。この観点において、正の方向は、回転している回転軸の回転速度を高める又は維持する向き、または、回転していない回転軸を回転させ始める向き、であるとも表現され得る。
上記「負の方向」は、回転軸の回転を抑制する方向であればよい。負の方向として、例えば、車両が走行(前進または後進)しているときの回転軸の回転方向と逆の向きが挙げられる。別の言い方をすると、負の方向は、車両を減速または停止させるための制動力(内燃機関を備えた車両におけるエンジンブレーキに対応する力)としてのトルクを発する向き、または、電力を回生するための抵抗力としてのトルクを発する向き、である。この観点において、負の方向は、回転している回転軸の回転速度を下げる向き、または、回転していない回転軸を回転しないように維持する向き、であるとも表現され得る。
上記「第2の処理によって取得されたオフセット量を第1の処理によって取得されたオフセット量に代えて利用」するとは、電動機を作動させる際に利用されるオフセット量を第1の処理によって取得されたオフセット量から第2の処理によって取得されたオフセット量に変更することを表す。このとき、第1の処理によって取得されたオフセット量は、第2の処理によって取得されたオフセット量によって上書き又は置換されてもよく、第2の処理によって取得されたオフセット量とは異なる場所に保存され続けてもよい。
なお、取得されたオフセット量を考慮して電動機の回転軸の回転位置の基準となる位置(例えば、回転角度がゼロであるとみなす位置)を設定することは、「原点補正」とも表現される。
以下、本発明の制御装置のいくつかの態様(態様1および態様2)について述べる。
・態様1
上述したように、車両に備えられた電動機は、オフセット量を考慮しながら、回転軸におけるトルクおよび回転軸の回転速度が所望の目標値に一致するように制御される。そのため、適切なオフセット量が取得されていない状態にて電動機が作動されると、電動機が適切に制御されず、電動機が本来有する性能が十分に発揮されない可能性がある。
そこで、本発明の制御装置は、具体的な態様の一例として、
前記オフセット量を取得する要求が生じている場合、前記第1の処理が実行されることによって前記オフセット量が取得されるまで前記車両が走行することを「禁止」する、ように構成され得る。
上記構成により、オフセット量を取得する要求が生じているにもかかわらず、オフセット量(第1の処理によって取得されるオフセット量)が取得されることなく車両が走行することが防がれる。
上記「車両が走行することを禁止する」ときの具体的な「禁止」方法は、特に制限されない。例えば、車両が走行することを禁止する方法として、車両の操作者などから車両を走行させる要求が制御装置に入力されても同要求を無視すること、車両を走行させる要求そのものが制御装置に入力されないようにすること、および、車両を走行させる要求を発しないように操作者などに注意を促すこと、などが採用され得る。
・態様2
上述したように、本発明の制御装置が適用される車両において、電動機の回転軸と車両の駆動軸とは連結されていればよく、具体的な連結の態様は特に制限されない。
例えば、具体的な態様の他の一例として、
前記電動機の回転軸は、前記車両の駆動軸と相対回転不能に連結され得る。
別の言い方をすると、電動機の回転軸は、車両が走行しているときに回転可能であり且つ車両が停止しているときに回転不能であるように、車両の駆動軸と連結され得る。
本発明の制御装置は、第1の処理および第2の処理を組み合わせることにより、出来る限り精度の高いオフセット量を出来る限り迅速に取得し得るようになっている。そのため、上記構成のように電動機の回転軸と車両の駆動軸とが相対回転が不能であるように連結される場合(よって、車両が停車しているときには精度の高い第2の処理を実行できない場合)であっても、第1の処理にて仮にオフセット量を取得した後、車両が走行中に第2の処理によってより精度の高いオフセット量を取得することができる。このように、本発明の制御装置は、上記構成を備えた車両に好適に適用され得る。
以上にいくつかの態様とともに説明したように、本発明に係る車両の制御装置は、オフセット量を取得する要求に出来る限り早急に且つ的確に応えることができる、という効果を奏する。
以下、本発明による制御装置の各実施形態(第1実施形態〜第2実施形態)が、図面を参照しながら説明される。
(第1実施形態)
<装置の概要>
図1は、本発明の実施形態の第1実施形態に係る制御装置(以下、「第1装置」とも称呼される。)をハイブリッド車両10に適用したシステムの概略構成を示している。以下、便宜上、ハイブリッド車両10は、単に「車両10」とも称呼される。
車両10は、図1に示されるように、発電電動機MG1、発電電動機MG2、内燃機関20(以下、単に「機関20」とも称呼される。)、動力分配機構30、発電電動機MG1の回転軸41、発電電動機MG2の回転軸42、駆動力伝達機構50、車両の駆動軸53、バッテリ61、第1インバータ62、第2インバータ63、パワーマネジメントECU70、バッテリECU71、モータECU72、エンジンECU73、ならびに、複数のセンサ類81〜85,91〜98(レゾルバ97,98が含まれる。)、を備えている。なお、ECUは、エレクトリック・コントロール・ユニットの略称であり、CPU、ROM、RAMおよびインターフェースなどを含むマイクロコンピュータを主要な構成部品として有する電子制御回路である。
発電電動機(モータジェネレータ)MG1は、発電機および電動機のいずれとしても機能することができる同期発電電動機である。発電電動機MG1は、便宜上、「第1発電電動機MG1」とも称呼される。第1発電電動機MG1は、本例においては主として発電機としての機能を発揮する。第1発電電動機MG1は、回転軸41を有している。
発電電動機(モータジェネレータ)MG2は、第1発電電動機MG1と同様、発電機および電動機のいずれとしても機能することができる同期発電電動機である。発電電動機MG2は、便宜上、「第2発電電動機MG2」とも称呼される。第2発電電動機MG2は、本例においては主として電動機としての機能を発揮する。第2発電電動機MG2は、回転軸42を有している。
第2発電電動機MG2は、回転軸42に接続された回転子(ロータ)と、固定子(ステータ)と、を備えている。そして、第2発電電動機MG2は、ロータがステータに対して回転する向きの磁界を順次生じさせることができるように、各々の磁界に対応する回路(巻線)に電流を順次流すことにより、回転軸42にトルクを出力する(ロータを回転させる向きの力を発する)ように構成されている。なお、第1発電電動機MG1も、回転軸41にトルクを出力する点を除いて第2発電電動機MG2と同様に構成されている。
機関20は、4サイクル・火花点火式・多気筒内燃機関である。機関20は、吸気管およびインテークマニホールドを含む吸気通路部21、スロットル弁22、スロットル弁アクチュエータ22a、複数の燃料噴射弁23、点火プラグを含む複数の点火装置24、機関20の出力軸であるクランクシャフト25、エキゾーストマニホールド26、排気管27、および、排気浄化用触媒28a,28bを有している。
スロットル弁22は、吸気通路部21に回転可能に支持されている。スロットル弁アクチュエータ22aは、エンジンECU73からの指示信号に応答してスロットル弁22を回転し、吸気通路部21の通路断面積を変更できるようになっている。
複数の燃料噴射弁23(図1においては1つの燃料噴射弁23のみが示されている。)のそれぞれは、その噴射孔が燃焼室に連通した吸気ポートに露呈するように配置されている。燃料噴射弁23のそれぞれは、エンジンECU73からの指示信号に応答して所定の量の燃料を吸気ポート内に噴射するようになっている。
点火装置24のそれぞれは、エンジンECU73からの指示信号に応答して点火用火花を各気筒の燃焼室内において特定の点火タイミング(点火時期)にて発生するようになっている。
クランクシャフト(機関20の出力軸)25は、動力分配機構30に接続されており、機関20によって生じるトルクを動力分配機構30に入力することができるようになっている。
エキゾーストマニホールド26の排気集合部、および、エキゾーストマニホールド26よりも下流側の排気管27には、排気浄化用触媒28a,28bが設けられている。排気浄化用触媒28a,28bは、機関20から排出される未燃物(HC,COなど)および窒素酸化物(NOx)を浄化するようになっている。
動力分配機構30は、周知の遊星歯車装置31を備えている。遊星歯車装置31はサンギア32と、複数のプラネタリギア33と、リングギア34と、を有している。
サンギア32は、第1発電電動機MG1の回転軸41に接続されている。したがって、第1発電電動機MG1は、サンギア32にトルクを出力することができる。逆に、第1発電電動機MG1は、サンギア32から第1発電電動機MG1(回転軸41)に入力されるトルクにて回転駆動されることによって発電することができる。
ここで、サンギア32は、後述されるプラネタリギア33(プラネタリキャリア35を介して機関20のクランクシャフト25に接続されている。)と噛合している。さらに、サンギア32は、後述されるリングギア34(後述されるように、複数のギアを介して車両10の駆動軸53に接続されている。)が回転していない状態においても回転することができる。すなわち、第1発電電動機MG1の回転軸41は、車両10の駆動軸53と相対回転が可能であるように連結されている。より具体的に述べると、第1発電電動機MG1の回転軸41は、機関20の出力軸(クランクシャフト25)と連結されるとともに、車両10が停止していても(車両10の駆動軸53が回転していなくても)回転可能となっている。
複数のプラネタリギア33のそれぞれは、サンギア32と噛合するとともにリングギア34と噛合している。プラネタリギア33の回転軸(自転軸)は、プラネタリキャリア35に設けられている。プラネタリキャリア35は、サンギア32と同軸に回転可能となるように保持されている。同様に、リングギア34は、サンギア32と同軸に回転可能となるように保持されている。したがって、プラネタリギア33は、サンギア32の外周を自転しながら公転することができる。プラネタリキャリア35は、機関20のクランクシャフト25に接続されている。よって、プラネタリギア33は、クランクシャフト25からプラネタリキャリア35に入力されるトルクによって回転駆動され得る。
さらに、上述したように、プラネタリギア33はサンギア32およびリングギア34と噛合している。したがって、プラネタリギア33からサンギア32にトルクが入力されたときには、そのトルクによってサンギア32が回転駆動される。プラネタリギア33からリングギア34にトルクが入力されたときには、そのトルクによってリングギア34が回転駆動される。逆に、サンギア32からプラネタリギア33にトルクが入力されたときには、そのトルクによってプラネタリギア33が回転駆動される。リングギア34からプラネタリギア33にトルクが入力されたときには、そのトルクによってプラネタリギア33が回転駆動される。
リングギア34は、リングギアキャリア36を介して第2発電電動機MG2の回転軸42に接続されている。したがって、第2発電電動機MG2は、リングギア34にトルクを出力することができる。逆に、第2発電電動機MG2は、リングギア34から第2発電電動機MG2(回転軸42)に入力されるトルクによって回転駆動されることによって発電することができる。
ここで、リングギア34は、後述される複数のギア(出力ギア37、ギア列51、および、ディファレンシャルギア52など)を介し、車両10の駆動軸53に、実質的に相対回転が不能であるように連結されている(ここで、実質的に相対回転不能であるとは、ギア間の遊び等を除いて相対回転が不能であることを表す。)。すなわち、第2発電電動機MG2の回転軸42は、車両10の駆動軸53と実質的に相対回転が不能であるように連結されている。より具体的に述べると、第2発電電動機MG2の回転軸42は車両10の駆動軸53と連結されるとともに、車両10が停止しているときに(車両10の駆動軸53が回転していないときに)回転不能となっている。
さらに、リングギア34は、リングギアキャリア36を介して出力ギア37に接続されている。したがって、出力ギア37は、リングギア34から出力ギア37に入力されるトルクによって回転駆動され得る。逆に、リングギア34は、出力ギア37からリングギア34に入力されるトルクによって回転駆動され得る。
駆動力伝達機構50は、ギア列51、ディファレンシャルギア52、および、駆動軸(ドライブシャフト)53を有している。
ギア列51は、出力ギア37とディファレンシャルギア52とを動力伝達可能に歯車機構により接続している。ディファレンシャルギア52は、駆動軸53に取り付けられている。駆動軸53の両端には駆動輪54が取り付けられている。したがって、出力ギア37からのトルクはギア列51、ディファレンシャルギア52、および、駆動軸53を介して駆動輪54に伝達される。この駆動輪54に伝達されたトルクにより、ハイブリッド車両10は走行することができる。
以上の説明から理解されるように、第1発電電動機MG1の回転軸41は、複数のギア(サンギア32、プラネタリギア33、リングギア34、出力ギア37、ギア列51、ディファレンシャルギア52)を介して車両10の駆動軸53にトルク伝達可能に接続されている。この回転軸41と、駆動軸53とは、上述したように、相対回転が可能に接続されている。
さらに、第2発電電動機MG2の回転軸42も、複数のギア(リングギア34、出力ギア37、ギア列51、ディファレンシャルギア52)を介して車両10の駆動軸53にトルク伝達可能に接続されている。この回転軸42と、駆動軸53とは、上述したように、相対回転が不能に接続されている。
バッテリ61は、第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2を作動させるための電力をそれら電動機に供給し、または、第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2にて発電された電力を充電する、充放電可能な二次電池である。
バッテリ61は、第1インバータ62を介して第1発電電動機MG1に電気的に接続されており、第2インバータ63を介して第2発電電動機MG2に電気的に接続されており、バッテリECU71に電気的に接続されている。
そして、第1発電電動機MG1は、第1インバータ62を介してバッテリ61から供給される電力によって回転駆動させられる。第2発電電動機MG2は、第2インバータ63を介してバッテリ61から供給される電力によって回転駆動させられる。逆に、第1発電電動機MG1が発電しているとき、第1発電電動機MG1が発生した電力は、第1インバータ62を介してバッテリ61に供給される。同様に、第2発電電動機MG2が発電しているとき、第2発電電動機MG2が発生した電力は第2インバータ63を介してバッテリ61に供給される。
第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2が駆動されるときに回転軸41,42に生じさせるトルクは、後述されるように、PMECU70が発するそれらトルクについての指令(トルク指令)に基づいて制御される。換言すると、第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2は、トルク指令に応じたトルクを回転軸41,42に発生可能であるように構成されている。
なお、第1発電電動機MG1の発生する電力は第2発電電動機MG2に直接供給可能であり、且つ、第2発電電動機MG2の発生する電力は第1発電電動機MG1に直接供給可能である。
パワーマネジメントECU70(以下、「PMECU70」とも称呼される。)は、バッテリECU71、モータECU72およびエンジンECU73と通信により情報交換可能に接続されている。これにより、PMECU70には、バッテリECU71を介してバッテリ61に関する情報が入力または出力され、モータECU72を介してインバータ(62,63)およびレゾルバ(97,98)に関する情報が入力または出力され、エンジンECU73を介して各種センサ(91〜96)に関する情報が入力または出力される。
例えば、PMECU70は、バッテリECU71により算出されるバッテリ61の充電率を入力されるようになっている。充電率は、バッテリ61に流出入する電流の積算値などに基づいて周知の手法により算出される。
さらに、PMECU70は、モータECU72を介して、第1発電電動機MG1の回転速度(MG1回転速度)Nm1を表す信号、および、第2発電電動機MG2の回転速度(MG2回転速度)Nm2を表す信号、を入力されるようになっている。
なお、MG1回転速度Nm1は、モータECU72によって「第1発電電動機MG1に設けられ且つ第1発電電動機MG1の回転軸41の回転位置(回転角度)に対応する出力値を出力するレゾルバ97の出力値」に基づいて算出されている。同様に、MG2回転速度は、モータECU72によって「第2発電電動機MG2に設けられ且つ第2発電電動機MG2の回転軸42の回転位置(回転角度)に対応する出力値を出力するレゾルバ98の出力値」に基づいて算出されている。このように、モータECU72は、第1発電電動機MG1の回転軸41の回転位置(回転角度)を表す信号、および、第2発電電動機MG2の回転軸42の回転位置(回転角度)を表す信号を入力されるようになっている。
加えて、PMECU70は、エンジンECU73を介して、エンジン状態を表す種々の出力信号を入力されるようになっている。このエンジン状態を表す出力信号には、エアフローメータ91、スロットル弁開度センサ92、冷却水温センサ93、機関回転速度センサ94、ノッキングセンサ95および空燃比センサ96の発生する出力信号が含まれる。
さらに、PMECU70は、パワースイッチ81、シフトポジションセンサ82、アクセル操作量センサ83、ブレーキ操作量センサ84および車速センサ85とも接続され、これらセンサが発生する出力信号が入力されるようになっている。
そして、PMECU70は、入力された情報に基づき、オフセット量(第1発電電動機MG1についてのオフセット量および第2発電電動機MG2についてのオフセット量。これらオフセット量は、PMECU70に記憶されている。)を利用して、モータECU72に発電電動機(MG1,MG2)を制御するための指令を与える。さらに、モータECU72は、PMECU70からの指令に基づいて、第1インバータ62および第2インバータ63に指示信号を送出するようになっている。そして、第1インバータ62および第2インバータ63は、その指示信号に応じ、第1発電電動機MG1を作動させ、第2発電電動機MG2を作動させるようになっている。
さらに、PMECU70は、入力された情報に基づき、バッテリECU71にバッテリ61を制御するための指示を与え、エンジンECU73に内燃機関20を制御するための指示を与える。さらに、PMECU70は、それら指示を与えるために必要なパラメータなど(例えば、レゾルバ97,98のオフセット量、および、内燃機関20の空燃比制御に関するパラメータなど)を記憶・保持している。
加えて、エンジンECU73は、PMECU70からの指示に基づき、スロットル弁アクチュエータ22a、燃料噴射弁23および点火装置24などに指示信号を送出することにより、機関20を制御するようになっている。
パワースイッチ81は、ハイブリッド車両10のシステム起動用スイッチである。PMECU70は、いずれも図示しない車両キーがキースロットに挿入され且つブレーキペダルが踏み込まれているときにパワースイッチ81が操作されると(例えば、押されると)、システムを起動する指示が与えられたと判断する。そして、PMECU70は、車両10が走行可能であるか否かを確認した後、車両10が走行可能であれば(いわゆる、Ready−On状態)、図示しない操作パネルなどにその旨を表示する。
シフトポジションセンサ82は、ハイブリッド車両10の運転席近傍に操作者により操作可能に設けられた図示しないシフトレバーによって選択されているシフトポジションを表す信号を発生するようになっている。シフトポジションには、P(パーキングポジション)、R(後進ポジション)、N(ニュートラルポジション)、D(走行ポジション)およびB(エンジンブレーキ積極作動ポジション)が含まれる。
アクセル操作量センサ83は、操作者により操作可能に設けられた図示しないアクセルペダルの操作量(アクセル操作量AP)を表す出力信号を発生するようになっている。
ブレーキ操作量センサ84は、操作者により操作可能に設けられた図示しないブレーキペダルが操作されたときに、ブレーキペダルの操作量(ブレーキ操作量BP)を表す出力信号を発生するようになっている。
車速センサ85は、ハイブリッド車両10の車速を表す出力信号を発生するようになっている。
エアフローメータ91は、機関20に吸入される単位時間あたりの空気量を計測し、その空気量(吸入空気量)を表す信号を出力するようになっている。
スロットル弁開度センサ92は、スロットル弁22の開度(スロットル弁開度)を検出し、その検出したスロットル弁開度を表す信号を出力するようになっている。
冷却水温センサ93は、機関20の冷却水の温度を検出し、その検出した冷却水温を表す信号を出力するようになっている。
機関回転速度センサ94は、機関20のクランクシャフト25が所定角度だけ回転する毎にパルス信号を発生するようになっている。エンジンECU73は、このパルス信号に基づいてクランクシャフト25の単位時間当たりの回転数(機関回転速度)Neを取得するようになっている。
ノッキングセンサ95は、機関20の表面部分に設けられている。ノッキングセンサ95は、機関20の振動を検出するとともに、その振動に応じた信号を出力するようになっている。エンジンECU73は、この信号に基づいてノッキング強度を取得するようになっている。
空燃比センサ96は、エキゾーストマニホールド26の排気集合部であって、排気浄化用触媒28aよりも上流側の位置に設けられている。空燃比センサ96は、排ガスの空燃比を検出し、その検出した排ガスの空燃比(検出空燃比)に応じた出力値を出力するようになっている。
レゾルバ97は、第1発電電動機MG1の回転軸(回転軸)41の回転位置を検出するための回転位置検出器である。レゾルバ97は、レゾルバ97のロータと第1発電電動機MG1の回転軸41とが相対回転不能であるように、回転軸41に設けられている。これにより、レゾルバ97のロータは、回転軸41の回転に伴って回転する。レゾルバ97は、回転軸41の回転位置に応じた信号を出力するようになっている。モータECU72は、この信号に基づき、回転軸41の回転位置を取得するようになっている。さらに、モータECU72は、この信号の単位時間当たりの変化に基づき、回転軸41の回転速度を取得するようになっている。
レゾルバ98は、第2発電電動機MG2の回転軸(回転軸)42の回転位置を検出するための回転位置検出器である。レゾルバ98は、レゾルバ98のロータと第2発電電動機MG2の回転軸42とが相対回転不能であるように、第2発電電動機MG2の回転軸42に設けられている。これにより、レゾルバ98のロータは、回転軸42の回転に伴って回転する。レゾルバ98は、回転軸42の回転位置に応じた信号を出力するようになっている。モータECU72は、この信号に基づいて回転軸42の回転位置を取得するようになっている。さらに、モータECU72は、この信号の単位時間当たりの変化に基づき、回転軸42の回転速度を取得するようになっている。
以上が、第1装置をハイブリッド車両10に適用したシステムの概略構成である。
<制御の考え方>
次いで、第1装置における制御の考え方が、図2を参照しながら説明される。図2は、第1装置における制御の考え方を示す「概略フローチャート」である。
第1装置は、図2のステップ210にて、現時点にてオフセット量を取得する要求が生じているか否かを判定する。例えば、第1装置は、オフセット量に影響を及ぼす部材(例えば、レゾルバ97,98)が交換等された際に技術者が第1装置に対してオフセット量を取得する要求(指示信号)を与えた場合において、その要求が第1装置に与えられた後に初めて操作者がパワースイッチ81を押すことによって第1装置がその要求が生じたことを認識したとき、オフセット量を取得する要求が生じたと判定する。
ところで、車両10は、第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2、ならびに、レゾルバ97およびレゾルバ98を備えている。そのため、レゾルバ97およびレゾルバ98のそれぞれについて、オフセット量を取得する要求が独立して生じる場合がある。しかし、本説明においては、第1装置における制御の考え方がより容易に理解されるように、レゾルバ97およびレゾルバ98の少なくとも一方にオフセット量を取得する要求が生じている場合、第1装置はステップ210にて「オフセット量を取得する要求が生じている」と判定するものとする。
現時点にて第1装置がオフセット量を取得する要求が生じていると判定した場合、第1装置は、ステップ210にて「Yes」と判定してステップ220に進む。
第1装置は、ステップ220にて、車両10が停止しているときにオフセット量取得処理(第1の処理)を実行する。このオフセット量取得処理(第1の処理)は、電動機(MG1,MG2)の回転軸が回転していないときに実行される処理であって、同回転軸が回転しているときに実行される処理(後述される第2の処理)に比べ、取得されるオフセット量の精度が低い処理である。なお、第1装置は、ステップ220にて、取得されたオフセット量をPMECU70に記憶する。
第1の処理の具体例として、例えば、第1装置は、電動機(MG1,MG2)のロータの周辺に所定の検出用磁界を生じさせながら(例えば、レゾルバ(97,98)の出力値から算出されるロータの回転角度が角度θrである場合、磁束の向きが角度θr−10degから角度θr+10degまで順次に移動するように磁界を生じさせながら)、磁極座標系(d−q座標系)におけるq軸電流の値を取得する。そして、q軸電流の大きさの絶対値が最小値となるときの検出用磁界(の磁束の向き)に対応する角度θminを特定する。このとき、「角度θminと、角度θrと、の差」が、オフセット量に相当する。そこで、第1装置は、その差に基づき、オフセット量を取得する。なお、実際には、オフセット量そのものを取得することなく、上記角度の大きさがゼロであるように電動機への制御信号が調整される場合もある。
次いで、第1装置は、ステップ230に進む。第1装置は、ステップ230にて、必要に応じ(例えば、車両10の駆動軸53に要求されるトルクの大きさに応じ)、上記第1の処理によって取得されたオフセット量を利用して電動機を作動させる。このように電動機が作動されることにより(または、必要に応じて電動機とともに機関20が作動されることにより、または、電動機に代えて機関20が作動されることにより)、車両10が走行せしめられる。
次いで、第1装置は、ステップ240に進む。第1装置は、ステップ240にて、車両10が走行しているときにオフセット量取得処理(第2の処理)を実行する。このオフセット量取得処理(第2の処理)は、電動機(MG1,MG2)の回転軸が回転しているときに実行される処理であって、同回転軸が回転していないときに実行される処理(第1の処理)に比べて取得されるオフセット量の精度が高く、電動機を適切に作動させる観点において十分な精度にてオフセット量を取得可能な処理である。なお、第1装置は、ステップ240にて、取得されたオフセット量をPMECU70に記憶する。このとき、第1の処理によって取得されたオフセット量が第2の処理によって取得されたオフセット量によって置換(更新・上書き)されても、置換されなくてもよい。
第2の処理の具体例として、例えば、第1装置は、電動機の回転軸(41,42)が回転しているとき、電動機(MG1,MG2)の磁極座標系(d−q座標系)におけるd軸電流およびq軸電流がゼロであるように電動機を制御しながら(換言すると、上述したゼロトルク指令を発しながら)、d軸電圧を取得する。このとき、オフセット量の大きさに応じて、磁極座標系(d−q座標系)における横軸(d軸)と、取得されたd軸電圧の向きと、の間の角度の大きさが異なる。そこで、第1装置は、その角度に基づき、オフセット量を取得する(例えば、特開2004−266935号公報などを参照。)。なお、実際には、オフセット量そのものを取得することなく(オフセット量そのものに代えて、オフセット量に相関する値である上記角度を用いて)、上記角度の大きさがゼロであるように電動機への制御信号が調整される場合もある。
次いで、第1装置は、ステップ250に進む。第1装置は、ステップ250にて、上記ステップ230と同様、必要に応じ第2の処理によって取得されたオフセット量を利用して電動機を作動させる。そして、第1装置は、このように電動機(および/または機関20)を作動させることによって車両10を走行させる。
ところで、現時点においてオフセット量を取得する要求が生じていない場合(例えば、すでに第2の処理が実行されることにより、十分に精度良くオフセット量が取得されている場合)、第1装置は、ステップ210にて「No」と判定する。この場合、オフセット量取得処理(ステップ220およびステップ240)は実行されない。なお、これらの場合、例えば、PMECU70に記憶されているオフセット量に基づいて電動機が作動される。
以上に説明したように、第1装置は、オフセット量を取得する要求が生じているとき、まず、電動機の回転軸が回転していないときに第1の処理によってオフセット量を取得する。次いで、第1装置は、第1の処理によって取得されたオフセット量を利用して電動機が作動され、電動機の回転軸が回転しているとき、第2の処理によってオフセット量を取得する。そして、第1装置は、第1の処理によって取得されたオフセット量に代えて、第2の処理によって取得されたオフセット量を利用して電動機を作動させる。このように、第1装置は、出来る限り精度の高いオフセット量を出来る限り迅速に取得する。これにより、第1装置は、オフセット量を取得する要求に出来る限り早急に且つ的確に応えることができる。
以上が、第1装置についての説明である。
(第2実施形態)
次いで、本発明の制御装置におけるオフセット量取得処理をより具体的に説明する実施形態が、説明される。以下、この実施形態における制御装置は、「第2装置」とも称呼される。第2装置は、第1装置と同様の車両10に適用される。
<制御の考え方>
第2装置は、オフセット量を取得する要求が生じている場合、第1の処理が実行されることによってオフセット量が取得されるまで車両10が走行することを禁止する。
以下、第2装置における制御の考え方がより容易に理解されるよう、第2装置が制御する対象の電動機の代表として「第2発電電動機MG2」を採用し、説明を続ける。この理由として、第2発電電動機MG2の回転軸42は車両10の駆動軸53と相対回転が不能である(よって、車両10が停車しているとき、上記具体例に示すオフセット量取得処理を実行できない)ように連結されていることから、第2装置の特徴の一つ(車両10の停止中に第1の処理を実行し、車両10の走行中に第2の処理を実行する。)を活用するために適していること、が挙げられる。なお、当然ながら、第2装置は、第1発電電動機MG1を制御することもできる。
ここで、第2装置の具体的な作動について説明する前に、第2発電電動機MG2の回転軸42が駆動軸53が回転していない場合に回転不能である理由(および、第1発電電動機MG1の回転軸41がその場合に回転可能である理由)が、図3を参照しながら説明される。
第1発電電動機MG1の回転軸41が接続されている遊星歯車装置31における各ギア(サンギア32、プラネタリギア33およびリングギア34)の回転軸の回転速度は、図3に示した周知の共線図により表される関係を有する。この共線図について簡単に説明すると、図3(a)および図3(b)における縦軸はサンギア軸(S)、プラネタリキャリア軸(C)およびリングギア軸(R)の回転速度を示す軸であり、横軸は各ギアのギア比を表す軸である(図3の横軸におけるρは、リングギア34の歯数に対するサンギア32の歯数の比を表す。)。
例えば、図3(a)に示す例を参照すると、機関20のクランクシャフト25が回転速度Neにて回転しており(すなわち、クランクシャフト25に接続されたプラネタリキャリア軸(C)がその回転速度Neにて回転しており)、リングギア34が回転速度Nm2にて回転している場合、プラネタリキャリア軸(C)上に回転速度Neに対応する点を定め、リングギア軸(R)上に回転速度Nm2に対応する点を定める。このとき、このように定められた2つの点を通る直線(L)と、サンギア軸(S)と、の交点に対応する回転速度Nm1にて、サンギア軸が回転することになる。
次いで、車両10の駆動軸53が回転していない場合(例えば、車両10が停止している場合)における3つの軸の回転速度について、図3(b)を参照しながら説明する。車両10の駆動軸53が回転していない場合、車両10の駆動軸53に連結されたリングギア軸(R)は回転しない。すなわち、リングギア軸の回転速度はゼロである。そこで、リングギア軸(R)上に回転速度ゼロに対応する点を定める。このように、第2発電電動機MG2の回転軸42(リングギア軸)は、車両10の駆動軸53が回転していないときに回転不能である。
さらに、上記の場合において機関20が駆動している場合、プラネタリキャリア軸(C)はクランクシャフト25の回転速度に対応する回転速度Neにて回転する。そこで、プラネタリキャリア軸(C)上に回転速度Neに対応する点を定める。このとき、これら2つの点を通る直線(L)と、サンギア軸(S)と、の交点に対応する回転速度Nm1にて、サンギア軸が回転することになる。このように、第1発電電動機MG1の回転軸41(サンギア軸)は、車両10の駆動軸53が回転していなくても(リングギア軸の回転速度がゼロでも)回転可能である。
ところで、周知のように、上述した共線図上におけるトルクの釣り合いを考えることにより、サンギア軸(S)、プラネタリキャリア軸(C)およびリングギア軸(R)において生じさせるトルク(PMECU70から発電電動機MG1,MG2に与えられる指示に基づくトルク、および、PMECU70から機関20に与えられる指示に基づくトルク)の大きさを把握することもできる。より詳細には、例えば、特開2009−126450号公報(米国公開特許番号 US2010/0241297)、および、特開平9−308012号公報(米国出願日1997年3月10日の米国特許第6,131,680号)などを参照されたい。これらの内容は、本願明細書に参照として取り込まれる。
なお、サンギア軸(S)において実質的にトルクを生じさせることなく、図3(b)に示すようにプラネタリキャリア軸(C)の回転に伴ってサンギア軸(S)を回転させることは、「第1発電電動機MG1(回転軸41。サンギア軸)を連れ回す」とも称呼される。
<実際の作動>
以下、第2装置の実際の作動が説明される。
第2装置において、PMECU70のCPU(以下、便宜上、「PM」とも称呼される。)は、オフセット量取得のための図4および図5に示したルーチンを所定のタイミングにて実行するようになっている。以下、これらルーチンにて行われる処理が説明される。
PMは、あらかじめ定められたタイミングにて(例えば、車両10のパワースイッチ81が押されることにより、システムを起動する指示がPMECU70に与えられたとき)、図4にフローチャートによって示した「オフセット量取得処理ルーチン」を実行する。PMは、このルーチンにより、必要に応じて、車両10の状態を考慮しながらオフセット量を取得するための処理を実行する。
具体的に述べると、PMは、図4のステップ400から処理を開始すると、ステップ410に進み、現時点におけるオフセット量取得フラグXOFFの値が「1」であるか否かを判定する。
オフセット量取得フラグXOFFは、その値が「1」であるときにオフセット量を取得するためのオフセット量取得処理を実行する必要があることを表し、その値が「0」であるときに同オフセット量取得処理を実行する必要がないことを表す。例えば、オフセット量取得フラグXOFFの値は、上記同様、オフセット量に影響を及ぼす部材(例えば、レゾルバ98)が交換等された際に技術者がPMに対してオフセット量を取得する要求(指示信号)を与えたとき、「1」に設定される。
現時点におけるオフセット量取得フラグXOFFの値が「1」である場合、PMは、ステップ410にて「Yes」と判定し、ステップ420に進む。PMは、ステップ420にて、MG2回転速度(第2発電電動機MG2の回転軸42の回転速度)Nm2がゼロであるか否かを判定する。
現時点にてMG2回転速度Nm2がゼロである場合(回転軸42が回転していない場合。つまり、車両10が停止している場合)、PMは、ステップ420にて「Yes」と判定し、ステップ430に進む。PMは、ステップ430にて、オフセット量取得処理を実行する。このオフセット量取得処理は、第2発電電動機MG2の回転軸42が「回転していない」ときに実行される処理(第1の処理)である。例えば、PMは、第1の処理として、第1装置と同様の処理を実行する。
なお、上述したように、一般に、電動機の回転軸が回転していない状態にて取得されたオフセット量は、電動機の回転軸が回転されながら取得されたオフセット量よりも、精度が低い。そこで、PMは、この第1の処理が実行されても、オフセット量取得フラグXOFFの値を「1」に維持する。さらに、PMは、将来、回転軸42が回転されながら新たなオフセット量が取得されたとき(ステップ440を参照。)、ステップ430にて取得されたオフセット量を新たなオフセット量にて置き換えるとともに、オフセット量取得フラグXOFFの値を「0」に変更する。
このような手順での処理を鑑み、以下、ステップ430にて実行されるオフセット量は「仮処理」とも称呼され、取得されるオフセット量は「仮オフセット量」とも称呼される。さらに、以下、ステップ440にて実行されるオフセット量は「本処理」とも称呼され、取得されるオフセット量は「本オフセット量」とも称呼される。
仮処理が実行された後、PMは、仮オフセット量を利用して第2発電電動機MG2を作動させる(後述される図5を参照。)。そして、MG2回転速度Nm2がゼロではないときに(回転軸42が回転しているときに)図4のルーチンが実行されると、PMは、ステップ420にて「No」と判定し、ステップ440に進む。PMは、ステップ440にて、オフセット量取得処理を実行する。このオフセット量取得処理は、第2発電電動機MG2の回転軸42が「回転している」ときに実行される処理(第2の処理)である。例えば、PMは、第2の処理として、第1装置と同様の処理を実行する。PMは、例えば、車両10が減速しているとき(このとき、車両10が走行しているので駆動軸53および回転軸42が回転している。なお、このとき、オフセット量取得処理によるドライバビリティへの影響も小さいと考えられる。)、このオフセット量取得処理を実行する。
次いで、PMは、ステップ450に進む。PMは、ステップ450にて、オフセット量取得フラグXOFFの値に「0」を格納する。その後、PMは、ステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。
さらに、PMは、所定のタイミングにて(例えば、車両10の操作者からの要求などに応じて第2発電電動機MG2を作動させる必要があると判断したとき)、図5にフローチャートによって示した「MG2作動制御ルーチン」を実行する。PMは、このルーチンにより、第2発電電動機MG2の作動を制御する。
具体的に述べると、PMは、所定のタイミングにて図5のステップ500から処理を開始すると、ステップ510に進む。PMは、ステップ510にて、現時点にてオフセット量取得フラグXOFFの値が「0」であるか否かを判定する。
現時点において本オフセット量は取得されていないものの(すなわち、オフセット量取得フラグXOFFの値が「1」であり)仮オフセット量は取得されている場合、PMは、ステップ510にて「No」と判定し、ステップ520に進む。PMは、この場合、ステップ520にて、現時点にて仮オフセット量が取得済みであるか否かを判定する。そして、PMは、ステップ520にて「Yes」と判定する。
このとき、PMは、ステップ520に続くステップ530を経由し、ステップ540に進む。ステップ530に説明的に示されるように、この場合のオフセット量は「仮オフセット量」である。そして、PMは、ステップ540にて、操作者からの要求などを考慮しながら、その仮オフセット量を利用して第2発電電動機MG1を作動させる。その後、PMは、ステップ595に進み、本ルーチンを一旦終了する。
このように、PMは、仮オフセット量が取得されている場合、本オフセット量が取得されるまで、その仮オフセット量を利用して第2発電電動機MG2を作動させる。
その後、本オフセット量が取得されると(すなわち、オフセット量取得フラグXOFFの値が「0」に設定された場合)、PMは、ステップ510にて「Yes」と判定する。
このとき、PMは、ステップ510に続くステップ550を経由し、ステップ540に進む。ステップ550に説明的に示すように、この場合のオフセット量は「本オフセット量」である。そして、PMは、ステップ550にて、操作者からの要求などを考慮しながら、その本オフセット量を利用して第2発電電動機MG2を作動させる。その後、PMは、ステップ595に進み、本ルーチンを一旦終了する。
これに対し、現時点におけるオフセット量取得フラグXOFFの値が「1」であり、かつ、仮オフセット量を取得済みではない場合、PMは、ステップ510およびステップ520にて「No」と判定し、ステップ560に進む。
PMは、ステップ560にて、車両の走行を禁止する。その後、PMは、ステップ595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、第2発電電動機MG2は作動されない。
以上に説明したように、第2装置は、車両10の運転状態に適したオフセット量取得処理(第1の処理および第2の処理)を順次に実行する。これにより、出来る限り精度の高いオフセット量が出来る限り迅速に取得される。さらに、第2装置は、第1の処理(仮処理)が実行されるまで、車両10が走行することを禁止する。これにより、オフセット量を取得する要求が生じているにもかかわらず、オフセット量(第1の処理によって取得されるオフセット量)が取得されることなく車両が走行することが防がれる。
以上が、第2装置についての説明である。
<実施形態の総括>
図1〜図5を参照しながら説明したように、本発明の実施形態に係る制御装置は(第1装置および第2装置)は、車両10の駆動軸53に連結された回転軸(41,42)を有する電動機(MG1,MG2)と、前記電動機の回転軸(41,42)の回転位置を検出する回転位置検出器(97,98)と、を備えた車両10に適用される。
本発明の実施形態に係る制御装置は、
前記回転位置検出器(97,98)によって検出される前記回転軸(41,42)の回転位置と実際の前記回転軸(41,42)の回転位置との差に相当するオフセット量を取得する要求に応じて前記オフセット量を取得する処理であるオフセット量取得処理を実行する(図2のステップ220およびステップ240)。
そして、本発明の実施形態に係る制御装置は、
同オフセット量取得処理によって取得されたオフセット量を利用して前記電動機(MG1,MG2)を作動させる(図2のステップ230およびステップ250)。
ここで、本発明の実施形態に係る制御装置は、
前記オフセット量を取得する要求が生じている場合(図2のステップ210にて「Yes」と判定される場合)、
(a)前記オフセット量取得処理として前記電動機の回転軸(41,42)が回転していないときに実行される第1の処理を、前記車両10が停止しているときに実行し、同第1の処理によって取得されたオフセット量を利用して前記電動機(MG1,MG2)を作動させるとともに(図2のステップ220およびステップ230)、
(b)前記オフセット量取得処理として前記電動機(MG1,MG2)の回転軸(41,42)が回転しているときに実行される第2の処理を、前記第1の処理が実行された後に前記車両10が走行しているときに実行し(図2のステップ240)、同第2の処理によって取得されたオフセット量を前記第1の処理によって取得されたオフセット量に代えて利用して前記電動機(MG1,MG2)を作動させる(図2のステップ250)。
さらに、本発明の実施形態に係る制御装置は、
前記オフセット量を取得する要求が生じている場合(図5のステップ510にて「No」と判定される場合)、前記第1の処理が実行されることによって前記オフセット量が取得されるまで(図5のステップ520にて「Yes」と判定されるまで)前記車両10が走行することを禁止する(図5のステップ560)。
なお、車両10は、前記電動機の回転軸42が前記車両10の駆動軸53と相対回転不能に連結されるように構成されている(図1を参照。)。
(他の態様)
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
例えば、第2装置の説明においては、制御装置が制御する対象の電動機の代表として第2発電電動機MG2が採用されている。しかし、本発明の制御装置の実施形態は、上記各実施形態に示される考え方に従って第1発電電動機MG1を制御するようにも構成され得る。
ただし、第1発電電動機MG1の回転軸41は車両10が停止していても(駆動軸53が回転していなくても)回転可能であるので、第1発電電動機MG1に関するオフセット量は、車両10が停止しているときに直接に第2の処理(本処理)を行なうことにより、取得されてもよい。
上述したように直接に第2の処理(本処理)を行うことは、取得されるオフセット量の精度の観点からは、第2の処理に第1の処理が含まれていると解釈することができる。よって、第2装置においては第1の処理が完了するまで車両10が走行することが禁止されているが(図5のステップ560)、本例においては第2の処理が完了するまで(すなわち、第2の処理に含まれる第1の処理が完了するまで)車両10が走行することが禁止される(後述される図7のステップ740を参照。)。
本発明の制御装置の実施形態が第1発電電動機MG1を制御するように構成された具体的に述べると、例えば、制御装置は、あらかじめ定められたタイミングにて(例えば、車両10のパワースイッチ81が押されることにより、システムを起動する指示がPMECU70に与えられたとき)、図6にフローチャートによって示した「オフセット量取得処理ルーチン」を実行する。制御装置は、このルーチンにより、車両10の状態を考慮しながら、第1発電電動機MG1に関するオフセット量(以下、便宜上、「第1オフセット量」とも称呼される。)を取得するための処理を実行する。
具体的に述べると、制御装置は、図6のステップ600から処理を開始すると、ステップ610に進み、現時点における第1オフセット量取得フラグXOFF1の値が「1」であるか否かを判定する。
第1オフセット量取得フラグXOFF1は、その値が「1」であるときに第1オフセット量を取得するためのオフセット量取得処理を実行する必要があることを表し、その値が「0」であるときに同オフセット量取得処理を実行する必要がないことを表す。例えば、第1オフセット量取得フラグXOFF1の値は、オフセット量に影響を及ぼす部材(例えば、レゾルバ97)が交換等された際に技術者が制御装置に対してオフセット量を取得する要求(指示信号)を与えたとき、「1」に設定される。
現時点における第1オフセット量取得フラグXOFF1の値が「1」である場合、制御装置は、ステップ610にて「Yes」と判定し、ステップ620に進む。制御装置は、ステップ620にて、MG1回転速度(第1発電電動機MG1の回転軸41の回転速度)Nm1がゼロであるか否かを判定する。
現時点にてMG1回転速度Nm1がゼロである場合(回転軸41が回転していない場合)、制御装置は、ステップ620にて「Yes」と判定し、ステップ630に進む。制御装置は、ステップ630にて、第1発電電動機MG1の回転軸41を回転させる(例えば、上述したように、機関20を駆動することにより、回転軸41を連れ回す。)。その後、制御装置は、ステップ640に進む。
一方、現時点にてMG1回転速度Nm1がゼロではない場合(回転軸41が回転している場合)、制御装置は、ステップ620にて「No」と判定し、ステップ640に直接進む。
制御装置は、ステップ640にて、オフセット量取得処理を実行する。このオフセット量取得処理は、第1発電電動機MG1の回転軸41が「回転している」ときに実行される処理である。例えば、制御装置は、上記各実施形態における第2の処理と同様の処理を実行する。
次いで、制御装置は、ステップ650に進む。制御装置は、ステップ650にて、第1オフセット量取得フラグXOFF1の値に「0」を格納する。その後、制御装置は、ステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了する。
さらに、制御装置は、所定のタイミングにて(例えば、車両10の操作者からの要求などに応じて第1発電電動機MG1を作動させる必要があると判断したとき)、図7にフローチャートによって示した「MG1作動制御ルーチン」を実行する。制御装置は、このルーチンにより、第1発電電動機MG1の作動を制御する。
具体的に述べると、制御装置は、所定のタイミングにて図7のステップ700から処理を開始すると、ステップ710に進む。制御装置は、ステップ710にて、現時点にて第1オフセット量取得フラグXOFF1の値が「0」であるか否かを判定する。
現時点における第1オフセット量取得フラグXOFF1の値が「0」である場合、制御装置は、ステップ710にて「Yes」と判定し、ステップ720を経由してステップ730に進む。ステップ720に説明的に示すように、この場合のオフセット量は「本オフセット量」である。そして、制御装置は、ステップ730にて、操作者からの要求などを考慮しながら、その本オフセット量を利用して第2発電電動機MG2を作動させる。その後、制御装置は、ステップ795に進み、本ルーチンを一旦終了する。
一方、現時点における第1オフセット量取得フラグXOFF1の値が「1」である場合、制御装置は、ステップ710にて「No」と判定し、ステップ740に進む。制御装置は、ステップ740にて、車両10の走行を禁止する。その後、制御装置は、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、第1発電電動機MG1は作動されない。
以上が、第1発電電動機MG1に関するオフセット量について、第1の処理(仮処理)を行うことなく第2の処理(本処理)を行なう具体例の説明である。
さらに、上記各実施形態においては、本発明の制御装置は、駆動源として電動機と内燃機関とを備えたハイブリッド車両に適用されている。しかし、本発明の制御装置は、必ずしもハイブリッド車両にのみ適用され得るのではなく、駆動源として電動機のみを備えた電気自動車にも適用され得る。
さらに、上記各実施形態の制御装置が適用される車両10は、電動機を2つ備えている(第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2)。しかし、本発明の制御装置は、電動機を1つ又は3つ以上備えた車両にも適用され得る。
さらに、上記各実施形態の制御装置においては、オフセット量は、制御装置としてのPMECU70に記憶されるようになっている。しかし、他のECU(例えば、モータECU72など)を含む複数のECUの組み合わせを本発明の制御装置として考えるとともに、PMECU70以外のECU(例えば、モータECU72)にオフセット量が記憶されてもよい。
さらに、上記各実施形態の制御装置においては、オフセット量取得処理(第1の処理、第2の処理)を実現する方法として、いくつかの具体例が採用されている。しかし、オフセット量取得処理を実現する方法は、その方法が実行され得る条件およびオフセット量の取得精度などが考慮された適切な方法であればよく、それら具体例以外の方法が採用されてもよい。