JP2013232328A - 非水系二次電池用レドックスシャトル剤、非水系電解液及び非水系二次電池 - Google Patents

非水系二次電池用レドックスシャトル剤、非水系電解液及び非水系二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】高電圧で作動する正極と組み合わせた場合においても、可逆的に過充電が抑制される非水系電解液の提供。
【解決手段】本発明の非水系電解液は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する非水系電解液である。
Figure 2013232328

(式(1)中、R1で表される複数の置換基は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のフッ素置換アルキル基である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、非水系二次電池用レドックスシャトル剤、非水系電解液及び非水系二次電池に関する。
非水系電解液を含む非水系二次電池としては、軽量、高エネルギー密度、及び長寿命との特徴を有するリチウムイオン二次電池が、ノートブックコンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の携帯用電子機器電源として広範囲に用いられている。また、低環境負荷社会への移行に伴い、非水系二次電池は、ハイブリッド型電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、以下「HEV」と略記する。)及びプラグインHEV(Plug−in Hybrid Electric Vehicle、以下「PHEV」と略記する。)の電源分野、さらには住宅用蓄電システム等の電力貯蔵分野においても注目されている。
自動車等の車両及び住宅用蓄電システムに非水系二次電池を搭載する場合、サイクル性能及び長期信頼性等の観点から、電池の構成材料には、化学的、電気化学的な安定性、強度、耐腐食性等に優れた材料が求められる。さらに、非水系二次電池は高出力性能も必要物性として求められる。
ところで、リチウムイオン二次電池用の非水系電解液に対する要求特性の1つとして、過充電抑制が挙げられる。リチウムイオン二次電池における過充電抑制機構としては、化学反応による方法と電子回路による方法とが提案され、実用的には後者が主に採用されている。しかしながら、電子回路による方法では、多セル化が進むにつれてコスト高になるばかりか、商品設計上、種々の制約が生ずることになる。
そこで、化学反応により過充電を抑制する技術の開発が進められており、中でも非水系電解液においては、過充電電位に相当する酸化還元電位を有する酸化還元試薬を電解液に添加する方法が検討されている。この方法によると、酸化還元試薬の可逆反応性が良い場合には、正負極間を往復して過充電電流を消費する抑制機構が成立する。
このような酸化還元試薬は、レドックスシャトル剤と呼ばれている。電解液にレドックスシャトル剤を含有させることによってリチウムイオン二次電池の安全装置を簡略化できれば、電子回路による過充電抑制機構を有する電池系よりも低コストな電池系が実現し、さらには該電子回路自体による余計な電力消費も抑えられるため、非常に有用である。
例えば、特許文献1では、3V級のリチウムイオン二次電池に対して、フェロセン類がレドックスシャトル剤として機能することが報告されている。また、特許文献2及び3では、4V級以上のリチウムイオン二次電池に対して、ベンゼン環にメトキシ基が導入された構造の芳香族化合物がレドックスシャトル剤として機能することが報告されている。さらに、特許文献4では、少なくとも1個の第三級アルキル基及び少なくとも1個のハロゲン化アルコキシ基で置換された芳香族化合物が、充放電を繰り返しても4V級以上のレドックスシャトル剤として機能することが報告されている。
特開平1−206571号公報 特開平7−302614号公報 特開平9−17447号公報 特表2011−512014号公報
しかしながら、フェロセン類は、酸化還元電位が3.1〜3.5V vs.Li/Li+であるため、電池電圧が高い非水系二次電池には適用できない。また、レドックスシャトル剤として公知の芳香族化合物は、上記特許文献に、高い電池電圧で繰り返し充放電しても機能するように記載されている。しかしながら、それらの芳香族化合物のうち、サイクリックボルタンメトリーで実際に可逆的な酸化還元電位が確認されているものは3.5〜4.3V vs.Li/Li+の範囲に限られている。特に、4.5V級以上のレドックスシャトル剤については、不可逆的な酸化反応が見かけ上の過充電抑制効果となっている可能性が否定できない。
本発明は、上記事情にかんがみてなされたものであり、高電圧で作動する正極と組み合わせた場合においても、可逆的に過充電が抑制される非水系電解液及び非水系二次電池、並びに、それらに用いられる非水系二次電池用レドックスシャトル剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、2個のトリフルオロメチル基及び2個のアルコキシ基又はハロゲン化アルコキシ基で置換された芳香族化合物が、高電圧で作動するレドックスシャトル剤として機能することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]下記一般式(1)で表される化合物からなる非水系二次電池用レドックスシャトル剤。
Figure 2013232328
(式(1)中、R1で表される複数の置換基は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のフッ素置換アルキル基である。)
[2]下記一般式(1)で表される化合物を含有する非水系電解液。
Figure 2013232328
(式(1)中、R1で表される置換基は、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のフッ素置換アルキル基である。)
[3][2]に記載の非水系電解液と、正極と、負極とを備える非水系二次電池。
本発明によると、高電圧で作動する正極と組み合わせた場合においても、可逆的に過充電が抑制される非水系電解液及び非水系二次電池、並びに、それらに用いられる非水系二次電池用レドックスシャトル剤を提供することができる。
本実施形態の非水系二次電池の一例を概略的に示す断面図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて記載される数値範囲は、その前後に記載される数値を含むものである。
本実施形態の非水系二次電池用レドックスシャトル剤(以下、単に「レドックスシャトル剤」ともいう。)は、後述する一般式(1)で表される化合物からなる。
本実施形態の非水系電解液(以下、単に「電解液」ともいう。)は、後述するレドックスシャトル剤を含有する。また、本実施形態の非水系二次電池は、正極及び負極と共に上記非水系電解液を備える二次電池であり、例えば、正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する正極と、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な負極材料及び金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する負極とを備えるリチウムイオン二次電池が挙げられる。
本実施形態の非水系二次電池は、例えば、リチウムイオン二次電池であってもよく、より具体的には、図1に概略的に断面図を示すリチウムイオン二次電池である。図1に示されるリチウムイオン二次電池100は、セパレータ110と、そのセパレータ110を両側から挟む正極120と負極130と、さらにそれら(セパレータ110、正極120及び負極130)の積層体を挟む正極集電体140(正極120の外側に配置)と、負極集電体150(負極130の外側に配置)と、それらを収容する電池外装160とを備える。正極120とセパレータ110と負極130とを積層した積層体は、本実施形態に係る電解液に含浸されている。これらの各部材としては、正極を除いて、従来のリチウムイオン二次電池に備えられるものを用いることができ、例えば後述のものであってもよい。
<1.非水系電解液>
本実施形態に係る非水系電解液は、非水系溶媒と塩と後述するレドックスシャトル剤とを含有する電解液であれば特に限定されず、非水系溶媒と塩とは公知のものであってもよい。本実施形態の非水系電解液は、水分を含まないことが好ましいが、本発明の課題解決を阻害しない範囲であれば、ごく微量の水分を含有してもよい。そのような水分の含有量は、非水系電解液の全量に対して、0〜100ppmであってもよい。
<1−1.レドックスシャトル剤>
レドックスシャトル剤としては、下記一般式(1)で表される化合物が使用可能である。
Figure 2013232328
ここで、式(1)中、R1で表される複数の置換基は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のフッ素置換アルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基及びtert−ブチル基が挙げられる。炭素数1〜4のフッ素置換アルキル基としては、例えば、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基及び2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル基が挙げられる。なお、R1で表される複数の置換基は、合成の容易さの観点から、互いに同一であると好ましい。
一般式(1)で表される化合物は酸化還元電位が高く、トリフルオロメチル基の立体効果によってπ電子が保護されており、さらに、アルコキシ基又はフッ素置換アルコキシ基の酸素原子が非共有電子対を有することから、酸化還元状態においてもπ共役平面が開環せず、長期安定性にも優れているという特徴がある。
本実施形態におけるレドックスシャトル剤の具体例を以下に例示する。
Figure 2013232328
本実施態様におけるレドックスシャトル剤は、常法により製造することもでき、例えば、下記一般式(2)、(3)及び(4)で表される3通りの反応ルートのいずれか1通りにより製造することができる。なお、式(2)、(3)及び(4)中、R1は上記一般式(1)におけるものと同義であり、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のフッ素置換アルキル基である。
[反応ルート1]
Figure 2013232328
[反応ルート2]
Figure 2013232328
[反応ルート3]
Figure 2013232328
まず、上記一般式(2)で示される反応ルート1の製造方法について説明する。
反応ルート1では、2,5−ビストリフルオロメチルヒドロキノンとN,N−ジメチルホルムアミドとを混合した後、それらの混合物にNaHを添加し、その後、ヨウ化物R1Iを添加する。反応液をジクロロメタン等の有機溶媒及び塩水により分液した後、水洗を経て有機溶媒を回収し、脱水剤を添加して乾燥させる。脱水剤は特に制限はないが、無水硫酸ナトリウム又は無水硫酸マグネシウムであることが好ましい。溶媒を除去後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して目的の化合物を得る。シリカゲルカラムクロマトグラフィーの展開溶媒としては特に制限はないが、例えば、クロロホルム:n−ヘキサン=1:4(体積比)とした展開溶媒が挙げられる。
次に、上記一般式(3)で示される反応ルート2の製造方法について説明する。
反応ルート2では、窒素雰囲気下において、2,5−ビストリフルオロメチルヒドロキノン、炭酸カリウム、トリ−n−ブチルアミン及びアセトンを混合した後、それらの混合物に、パーフルオロブチルスルホン酸エステルC49SO31、例えば2,2,2−トリフルオロエチルパーフルオロブチルスルホネートを滴下する。このときの反応温度について特に制限はないが、40〜70℃であることが好ましく、50〜65℃であることがより好ましく、57〜63℃であることが更に好ましい。その後、水を添加して反応を停止させ、減圧濃縮にてアセトンを除去する。冷却後、吸引ろ過し、乾燥して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して目的の化合物を得る。シリカゲルカラムクロマトグラフィーの展開溶媒として特に制限はないが、例えば、クロロホルム:n−ヘキサン=1:10(体積比)とした展開溶媒が挙げられる。
次に、上記一般式(4)で示される反応ルート3の製造方法について説明する。
反応ルート3では、メタノールとオルト過ヨウ素酸とを混合した後、ヨウ素を添加して攪拌する。さらに、1,4−ジアルコキシベンゼン又は1,4−ジ(フッ素置換アルコキシ)ベンゼンを添加して攪拌する。このときの反応温度については特に制限はないが、50〜80℃であることが好ましく、60〜75℃であることがより好ましく、67〜73℃であることが更に好ましい。反応終了後、得られた溶液をNa225と水とを混合したものに注ぎ入れ、析出物を吸引ろ過し、乾燥して得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、中間生成物である2,5−ジヨード化物を得る。シリカゲルカラムクロマトグラフィーの展開溶媒としては特に制限はないが、例えば、ジクロロメタンが挙げられる。
次に、窒素雰囲気下、上記の中間生成物とトリフルオロ酢酸ナトリウムとヨウ化銅とN,N−ジメチルアセトアミドとを混合して還流を行う。還流温度について特に制限はないが、130〜160℃であることが好ましく、140〜155℃であることがより好ましく、147〜153℃であることが更に好ましい。得られた溶液を冷却してろ過した後、ジクロロメタン等の有機溶媒と水とで分液した後、水洗を経て有機溶媒を回収し、脱水剤を添加して乾燥させる。脱水剤は特に制限はないが、無水硫酸ナトリウム又は無水硫酸マグネシウムであることが好ましい。溶媒を除去後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して目的の化合物を得る。シリカゲルカラムクロマトグラフィーの展開溶媒としては特に制限はないが、例えば、ジクロロメタンが挙げられる。
本実施形態の非水系電解液におけるレドックスシャトル剤の含有量は、その非水系電解液の全量に対して、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。含有量が0.1質量%以上であれば、酸化還元反応の循環作用による過充電防止効果がより有効に得られ、含有量が20質量%以下であればイオン伝導度の低下が少なく入出力特性や電池寿命等の電池特性への影響がより少なくなる。
<1−2.非水系溶媒>
非水系溶媒としては、特に制限はなく、例えば、非プロトン性溶媒が挙げられ、非プロトン性極性溶媒が好ましい。そのような非水系溶媒の具体例としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、トランス−2,3−ブチレンカーボネート、シス−2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、トランス−2,3−ペンチレンカーボネート、シス−2,3−ペンチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロエチレンカーボネートに代表される環状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンに代表されるラクトン;スルホラン、ジメチルスルホキシドに代表される硫黄化合物;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサンに代表される環状エーテル;メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネートに代表される鎖状カーボネート;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、アクリロニトリル等のモノニトリル;メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリルに代表されるアルコキシ基置換ニトリル;メチルプロピオネートに代表される鎖状カルボン酸エステル;ジメトキシエタンに代表される鎖状エーテルが挙げられる。また、これらのフッ素化物に代表されるハロゲン化物も挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
非水系二次電池の充放電に寄与する塩の電離度を高めるために、非水系溶媒は環状の非プロトン性極性溶媒を1種類以上含むことが好ましく、環状カーボネートを1種類以上含むことがより好ましい。また、塩の溶解性、伝導度及び電離度という機能を全て良好にするために、2種以上の非プロトン性極性溶媒の混合溶媒であることが好ましい。この混合溶媒の成分となる非プロトン性極性溶媒としては上記と同様のものを例示でき、混合溶媒の例としては環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒が挙げられる。
<1−3.塩>
塩としては、非水系二次電池の電解液に用いられているものであれば特に制限はなく、いずれのものであってもよい。塩は、本実施形態の非水系電解液中に0.1〜3mol/Lの濃度で含有されることが好ましく、0.5〜2mol/Lの濃度で含有されることがより好ましい。塩の濃度がこの範囲内にあることによって、電解液の導電率がより高い状態に保たれると同時に、非水系二次電池の充放電効率もより高い状態に保たれる。
本実施形態における塩は特に制限はないが、無機リチウム塩であることが好ましい。ここで、「無機リチウム塩」とは、炭素原子をアニオンに含まないアセトニトリルに可溶なリチウム塩であり、後述の「有機リチウム塩」とは、炭素原子をアニオンに含むアセトニトリルに可溶なリチウム塩である。無機リチウム塩は、通常の非水系電解質として用いられているものであれば特に限定されず、いずれのものであってもよい。そのような無機リチウム塩の具体例としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li2SiF6、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、Li212b12-b〔bは0〜3の整数〕、炭素原子を含まない多価アニオンと結合されたリチウム塩が挙げられる。
これらの無機リチウム塩は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。中でも、無機リチウム塩としてフッ素原子を有する無機リチウム塩を用いると、正極集電体である金属箔の表面に不働態皮膜を形成するため、内部抵抗の増加を抑制する観点から好ましい。また、無機リチウム塩として、リン原子を有する無機リチウム塩を用いると、遊離のフッ素原子を放出しやすくなることからより好ましく、LiPF6が特に好ましい。
本実施形態の非水系電解液における、無機リチウム塩の含有量は、その非水系電解液の全量に対して0.1〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、5〜25質量%であることが更に好ましい。
本実施形態における塩は、無機リチウム塩に加えて有機リチウム塩が更に含有されていてもよい。なお、有機リチウム塩をイオン伝導性の高い無機リチウム塩と併用する場合、下記式(5):
0≦X<1 ・・・・・(5)
で表される条件を満足することが好ましい。ここで、上記式(5)中、Xは、非水系電解液に含まれる無機リチウム塩に対する有機リチウム塩のモル比を示す。非水系電解液に含まれる有機リチウム塩の無機リチウム塩に対するモル比がこの範囲にあることによって、無機リチウム塩の高いイオン伝導性能を優先的に機能させることができる。
本実施形態の非水系電解液における、有機リチウム塩の含有量は、その非水系電解液の全量に対して0.1〜30質量%であることが好ましく、0.2〜20質量%であることがより好ましく、0.5〜15質量%であることが更に好ましい。有機リチウム塩の含有量がこの範囲にあることによって、電解液の機能と溶解性とのバランスを確保することができる。
有機リチウム塩の具体例としては、例えば、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252等のLiN(SO2m2m+12〔mは1〜8の整数〕で表される有機リチウム塩;LiPF5(CF3)等のLiPFn(Cp2p+16-n〔nは1〜5の整数、pは1〜8の整数〕で表される有機リチウム塩;LiBF3(CF3)等のLiBFq(Cs2s+14-q〔qは1〜3の整数、sは1〜8の整数〕で表される有機リチウム塩;LiB(C242で表されるリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB);ハロゲン化された有機酸を配位子とするボレートのリチウム塩;LiBF2(C24)で表されるリチウムオキサラトジフルオロボレート(LiODFB);LiB(C3422で表されるリチウムビス(マロネート)ボレート(LiBMB);LiPF4(C24)で表されるリチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート等の有機リチウム塩が挙げられる。
また、下記一般式(6a)、(6b)及び(6c)で表される有機リチウム塩を用いることもできる。
LiC(SO22)(SO23)(SO24) (6a)
LiN(SO2OR5)(SO2OR6) (6b)
LiN(SO27)(SO2OR8) (6c)
ここで、式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す。
これらの有機リチウム塩は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられるが、構造上安定であることからホウ素原子を有する有機リチウム塩が好ましい。また、有機配位子を有する有機リチウム塩は、有機配位子が電気化学的な反応に関与してSolid Electrolyte Interface(SEI)と呼ばれる保護皮膜を電極表面に形成するため、正極を含めた内部抵抗の増加を抑制する観点から好ましい。そのような有機リチウム塩としては、具体的には、LiBOB、ハロゲン化された有機酸を配位子とするボレートのリチウム塩、LiODFB及びLiBMBが好ましく、LiBOB及びLiODFBが特に好ましい。
本実施形態の非水系電解液は、リチウムイオン以外の有機カチオン種とアニオン種とで形成される塩からなるイオン性化合物を更に含有してもよい。該イオン性化合物を本実施形態の非水系電解液に含有させると、電池の内部抵抗増加を更に抑制する効果がある。
イオン性化合物のカチオンとしては、例えば、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム、トリメチルペンチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、ジエチルメチルメトキシエチルアンモニウム等の四級アンモニウムカチオン;1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム等のイミダゾリウムカチオン;1−エチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−ヘキシルピリジニウム等のピリジニウムカチオン;1−メチル−1−プロピルピペリジニウム、1−ブチル−1−メチルピペリジニウム等のピペリジニウムカチオン;1−エチル−1−メチルピロリジニウム、1−メチル−1−プロピルピロリジニウム、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム等のピロリジニウムカチオン;ジエチルメチルスルホニウム、トリエチルスルホニウム等のスルホニウムカチオン;四級ホスホニウムカチオンが挙げられる。これらのカチオンの中でも、電気化学的安定性の観点から、窒素原子を有するカチオンが好ましく、ピリジニウムカチオンがより好ましい。
イオン性化合物のアニオンとしては、上記カチオンの対イオンとして通常採用されるものであってもよく、例えば、BF4 -、PF6 -、N(SO2CF32 -、N(SO2252 -、SO3CF3 -が挙げられる。これらのアニオンの中でも、イオンの解離性や内部抵抗の増加抑制に優れるPF6 -が好ましい。
<1−4.添加剤>
本実施形態の非水系電解液には、電極を保護する添加剤が含有されていてもよい。本実施形態における添加剤としては、本発明による課題解決を阻害しないものであれば特に制限はなく、塩を溶解する溶媒としての役割を担う物質、すなわち上記の非水系溶媒と実質的に重複してもよい。また、添加剤は、本実施形態の非水系電解液及び非水系二次電池の性能向上に寄与する物質であることが好ましいが、電気化学的な反応には直接関与しない物質をも包含し、1成分を単独で又は2成分以上を組み合わせて用いる。
添加剤の具体例としては、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5−トリフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5,5−テトラフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5−トリフルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンに代表されるフルオロエチレンカーボネート;ビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートに代表される不飽和結合含有環状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンに代表されるラクトン;1,2−ジオキサンに代表される環状エーテル;メチルホルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、メチルブチレート、エチルホルメート、エチルアセテート、エチルプロピオネート、エチルブチレート、n−プロピルホルメート、n−プロピルアセテート、n−プロピルプロピオネート、n−プロピルブチレート、イソプロピルホルメート、イソプロピルアセテート、イソプロピルプロピオネート、イソプロピルブチレート、n−ブチルホルメート、n−ブチルアセテート、n−ブチルプロピオネート、n−ブチルブチレート、イソブチルホルメート、イソブチルアセテート、イソブチルプロピオネート、イソブチルブチレート、sec−ブチルホルメート、sec−ブチルアセテート、sec−ブチルプロピオネート、sec−ブチルブチレート、tert−ブチルホルメート、tert−ブチルアセテート、tert−ブチルプロピオネート、tert−ブチルブチレート、メチルピバレート、n−ブチルピバレート、n−ヘキシルピバレート、n−オクチルピバレート、ジメチルオキサレート、エチルメチルオキサレート、ジエチルオキサレート、ジフェニルオキサレート、マロン酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸エステルに代表されるカルボン酸エステル;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドに代表されるアミド;エチレンサルファイト、プロピレンサルファイト、ブチレンサルファイト、ペンテンサルファイト、スルホラン、3−メチルスルホラン、3−スルホレン、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロパンジオール硫酸エステル、テトラメチレンスルホキシド、チオフェン1−オキシドに代表される環状硫黄化合物;モノフルオロベンゼン、ビフェニル、フッ素化ビフェニルに代表される芳香族化合物;ニトロメタンに代表されるニトロ化合物;シッフ塩基;シッフ塩基錯体;オキサラト錯体が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態の非水系電解液における添加剤の含有量について特に制限はないが、本実施形態の非水系電解液の全量に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。本実施形態において、添加剤は高いサイクル性能の発現に寄与するが、一方で低温環境下における高出力性能への寄与は確認されていない。添加剤が多いほど本実施形態に係る電解液の劣化が抑えられるが、添加剤が少ないほど低温環境下における高出力特性が向上することになる。したがって、添加剤の含有量が上記の範囲内にあることによって、非水系二次電池としての基本的な機能を損なうことなく非水系電解液の高イオン伝導度に基づく優れた性能をより十分に発揮することができる。このような組成で電解液を作製することで、電解液のサイクル性能、低温環境下における高出力性能及びその他の電池特性の全てを一層良好なものとすることができる。
<1−5.ジニトリル化合物>
本実施形態の非水系電解液は、ジニトリル化合物、すなわち分子内にニトリル基を2つ有する化合物を更に含有してもよい。ジニトリル化合物は、電池缶や電極等、金属部分の腐食を低減する効果がある。その要因は、ジニトリル化合物を用いることにより、腐食の低減された金属部分の表面に腐食を抑制する保護皮膜が形成されるためと考えられる。ただし、作用効果を奏するメカニズムはこれに限定されない。
ジニトリル化合物は、本発明による課題解決を阻害しない限りにおいて、特に限定されないが、メチレン鎖を有するものが好ましく、そのメチレン鎖が1〜12であることがより好ましく、直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。ジニトリル化合物としては、例えば、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1,5−ジシアノペンタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,7−ジシアノヘプタン、1,8−ジシアノオクタン、1,9−ジシアノノナン、1,10−ジシアノデカン、1,11−ジシアノウンデカン、1,12−ジシアノドデカン等の直鎖状ジニトリル化合物;テトラメチルスクシノニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2,4−ジメチルグルタロニトリル、2,2,4,4−テトラメチルグルタロニトリル、1,4−ジシアノペンタン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジカルボニトリル、2,6−ジシアノヘプタン、2,7−ジシアノオクタン、2,8−ジシアノノナン、1,6−ジシアノデカン等の分枝状ジニトリル化合物;1,2−ジシアノベンゼン、1,3−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノベンゼン等の芳香族系ジニトリル化合物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態の非水系電解液におけるジニトリル化合物の含有量は特に限定されないが、有機リチウム塩を除いた非水系電解液に含まれる成分の全量に対して、あるいは、非水系電解液が無機リチウム塩をも含有する場合は、リチウム塩を除いた非水系電解液に含まれる成分の全量に対して、0.01〜1mol/Lであることが好ましく、0.02〜0.5mol/Lであることがより好ましく、0.05〜0.3mol/Lであることが更に好ましい。ジニトリル化合物の含有量が上記の範囲内にあることによって、非水系二次電池としての基本的な機能を損なうことなくサイクル性能を一層良好なものとすることができる。
なお、ジニトリル化合物は、メチレン鎖が偶数個の場合に双極子モーメントが低い傾向にあるが、驚くべきことに奇数個の場合よりも高い添加効果が実験的に認められた。したがって、ジニトリル化合物は、下記一般式(7)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含むことが好ましい。
NC−(CR9102a−CN ・・・・・(7)
ここで、式(7)中、R9及びR10は、各々独立して、水素原子又はアルキル基を示し、aは1〜6の整数を示す。アルキル基は、炭素数1〜10のものであると好ましい。
<2.正極及び正極集電体>
正極は、非水系二次電池の正極として作用するものであれば特に限定されず、公知のものであってもよい。
正極は、正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有すると、高電圧及び高エネルギー密度を得ることができる傾向にあるので好ましい。そのような材料としては、例えば、下記一般式(8a)及び(8b)で表されるリチウム含有化合物、並びにトンネル構造及び層状構造の金属カルコゲン化物が挙げられる。
LixMO2 (8a)
Liy24 (8b)
ここで、式中、Mは遷移金属から選ばれる1種以上の金属を示し、xは0〜1の数、yは0〜2の数を示す。
リチウム含有化合物としては、例えば、LiCoO2に代表されるリチウムコバルト酸化物;LiMnO2、LiMn24、Li2Mn24に代表されるリチウムマンガン酸化物;LiNiO2に代表されるリチウムニッケル酸化物;LizMO2(MはNi、Mn、Co、Al及びMgからなる群より選ばれる2種以上の元素を示し、zは0.9超1.2未満の数を示す)で表されるリチウム含有複合金属酸化物があげられる。
リチウム含有化合物としては、リチウムを含有するものであればよく、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物及びリチウムと遷移金属元素とを含むケイ酸金属化合物(例えばLituSiO4、Mは上記式(8a)と同義であり、tは0〜1の数、uは0〜2の数を示す。)が挙げられる。より高い電圧を得る観点から、特に、リチウムと、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、バナジウム(V)及びチタン(Ti)からなる群より選ばれる1種以上の遷移金属元素とを含む複合酸化物並びにリン酸化合物が好ましい。
より具体的には、かかるリチウム含有化合物としてリチウムを有する金属酸化物、リチウムを有する金属カルコゲン化物及びリチウムを有するリン酸金属化合物が好ましく、例えば、それぞれ下記一般式(9a)、(9b)で表される化合物が挙げられる。これらの中では、リチウムを有する金属酸化物及びリチウムを有する金属カルコゲン化物がより好ましい。
LivI2 (9a)
LiwIIPO4 (9b)
ここで、式中、MI及びMIIはそれぞれ1種以上の遷移金属元素を示し、v及びwの値は電池の充放電状態によって異なるが、通常vは0.05〜1.10、wは0.05〜1.10の数を示す。
上記一般式(9a)で表される化合物は一般に層状構造を有し、上記一般式(9b)で表される化合物は一般にオリビン構造を有する。これらの化合物において、構造を安定化させる等の目的から、遷移金属元素の一部をAl、Mg、その他の遷移金属元素で置換したり結晶粒界に含ませたりしたもの、酸素原子の一部をフッ素原子等で置換したものも挙げられる。更に、正極活物質表面の少なくとも一部に他の正極活物質を被覆したものも挙げられる。
また、トンネル構造及び層状構造の金属カルコゲン化物としては、例えば、MnO2、FeO2、FeS2、V25、V613、TiO2、TiS2、MoS2及びNbSe2に代表されるリチウム以外の金属の酸化物、硫化物、セレン化物が例示される。
他の正極活物質としては、イオウ、並びにポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、及びポリピロールに代表される導電性高分子も例示される。
正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
正極活物質の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.05μm〜100μm、より好ましくは1μm〜10μmである。正極活物質の数平均粒子径は湿式の粒子径測定装置(例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布計、動的光散乱式粒度分布計)により測定することができる。あるいは、透過型電子顕微鏡にて観察した粒子100個をランダムに抽出し、画像解析ソフト(例えば、旭化成エンジニアリング株式会社製の画像解析ソフト、商品名「A像くん」)で解析し、その相加平均を算出することでも得られる。この場合、同じ試料に対して、測定方法間で数平均粒子径が異なる場合は、標準試料を対象として作成した検量線を用いてもよい。
正極は、例えば、下記のようにして得られる。すなわち、まず、上記正極活物質に対して、必要に応じて、導電助剤やバインダー等を加えて混合した正極合剤を溶剤に分散させて正極合剤含有スラリーを調製する。ここで、正極合剤含有スラリー中の固形分濃度は、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。次いで、この正極合剤含有スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥して正極活物質層を形成する。乾燥後に得られた正極活物質層をロールプレス等により圧縮することで正極合剤層が形成される。圧縮後の正極合剤厚さは10〜300μmであることが好ましく、20〜280μmであることがより好ましく、30〜250μmであることが更に好ましい。
導電助剤としては、例えば、グラファイト、アセチレンブラック及びケッチェンブラックに代表されるカーボンブラック、並びに炭素繊維が挙げられる。導電助剤の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは10nm〜10μm、より好ましくは20nm〜1μmであり、正極活物質の数平均粒子径と同様にして測定される。また、バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム及びフッ素ゴムが挙げられる。また、溶剤としては、特に制限はなく、従来公知のものを用いてよいが、例えば、N―メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、水が挙げられる。
正極集電体としては、例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔又はステンレス箔などの金属箔により構成される。また、カーボンコートが施されていたりメッシュ状に加工されていてもよい。正極集電体の厚みは5〜40μmであることが好ましく、7〜35μmであることがより好ましく、9〜30μmであることが更に好ましい。
<3.負極及び負極集電体>
負極は、非水系二次電池の負極として作用するものであれば特に限定されず、公知のものであってもよい。
負極は、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料及び金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を含有すると好ましい。そのような材料としては金属リチウムの他、例えば、アモルファスカーボン(ハードカーボン)、人造黒鉛、天然黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素コロイド、カーボンブラックに代表される炭素材料が挙げられる。これらのうち、コークスとしては、例えば、ピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークスが挙げられる。また、有機高分子化合物の焼成体は、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものである。炭素材料には、炭素以外にも、O、B、P、N、S、Si、SiC、SiO、SiO2、B4C等の異種元素または異種化合物を含んでもよい。異種元素または異種化合物の含有量としては、0〜10質量%が好ましい。
更に、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料としては、リチウムと合金を形成可能な元素を含む材料も挙げられる。この材料は金属又は半金属の単体であっても合金であっても化合物であってもよく、また、これらの1種又は2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものであってもよい。
なお、本明細書において、「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを有するものも含める。また、合金が、その全体として金属の性質を有するものであれば非金属元素を有していてもよい。その合金の組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物又はこれらのうちの2種以上が共存する。
リチウムと合金を形成可能な金属元素及び半金属元素としては、例えば、チタン(Ti)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)及びイットリウム(Y)が挙げられる。
これらの中でも、長周期型周期表における4族又は14族の金属元素及び半金属元素が好ましく、特に好ましいのはリチウムを吸蔵及び放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるチタン、ケイ素及びスズである。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、マグネシウム(Mg)、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン(Ti)、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン及びクロム(Cr)からなる群より選ばれる1種以上の元素を有するものが挙げられる。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、マグネシウム、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン及びクロムからなる群より選ばれる1種以上の元素を有するものが挙げられる。
チタンの化合物、スズの化合物及びケイ素の化合物としては、例えば酸素(O)又は炭素(C)を有するものが挙げられ、チタン、スズ又はケイ素に加えて、上述の第2の構成元素を有していてもよい。
負極は、負極活物質として、0.4〜3V vs.Li/Li+の範囲でリチウムイオンを吸蔵することが可能な金属化合物を含有してもよい。このような金属化合物としては、例えば、金属酸化物、金属硫化物及び金属窒化物が挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、チタン酸化物、リチウムチタン酸化物(リチウムチタン含有複合酸化物)、タングステン酸化物(例えばWO3)、アモルファススズ酸化物(例えばSnB0.40.63.1)、スズ珪素酸化物(例えばSnSiO3)及び酸化珪素(SiO)が挙げられる。これらの中でも、チタン酸化物及びリチウムチタン酸化物が好ましい。
リチウムチタン酸化物としては、例えば、スピネル構造のチタン酸リチウム{例えばLi4+aTi512(aは充放電反応により−1≦a≦3の範囲で変化し得る)}、ラムスデライト構造のチタン酸リチウム{例えばLi2+bTi37(bは充放電反応により−1≦b≦3の範囲で変化し得る)}が挙げられる。
チタン酸化物としては、充放電前からLiを含むもの又は含まないもののいずれをも用いることができる。充放電前すなわち合成時にLiを含まないチタン酸化物としては、例えば、酸化チタン(例えばTiO2、H2Ti1225)、TiとP、V、Sn、Cu、Ni及びFeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とを含有するチタン複合酸化物が挙げられる。TiO2としては、アナターゼ型で熱処理温度が300〜500℃の低結晶性のものが好ましい。チタン複合酸化物としては、例えば、TiO2−P25、TiO2−V25、TiO2−P25−SnO2、TiO2−P25−MeO(MeはCu、Ni及びFeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素)が挙げられる。チタン複合酸化物は、結晶性が低く、結晶相とアモルファス相とが共存した、又はアモルファス相単独で存在したミクロ構造であることが好ましい。このようなミクロ構造であることにより、サイクル性能を大幅に向上することができる。
充放電前からLiを含むもの、すなわち合成時からリチウムを含むチタン酸化物としては、例えば、LicTiO2(cは0≦c≦1.1)が挙げられる。
金属硫化物としては、例えば、硫化チタン(例えばTiS2)、硫化モリブデン(例えばMoS2)及び硫化鉄(例えば、FeS、FeS2、LigFeS2(gは0≦g≦1))が挙げられる。金属窒化物としては、例えば、リチウムコバルト窒化物(例えば、LidCoeN、0<d<4、0<e<0.5)が挙げられる。
本実施形態の非水系二次電池は、電池電圧を高められるという観点から、負極が、負極活物質として、リチウムイオンを0.4V vs.Li/Li+よりも卑な電位で吸蔵する材料を含有することが好ましい。そのような材料としては、例えば、アモルファスカーボン(ハードカーボン)、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素コロイド及びカーボンブラックに代表される炭素材料の他、金属リチウム、金属酸化物、金属窒化物、リチウム合金、スズ合金、シリコン合金、金属間化合物、有機化合物、無機化合物、金属錯体、有機高分子化合物が挙げられる。
負極活物質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
負極活物質の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.1μm〜100μm、より好ましくは1μm〜10μmである。負極活物質の数平均粒子径は、正極活物質の数平均粒子径と同様にして測定される。
負極は、例えば、下記のようにして得られる。すなわち、まず、上記負極活物質に対して、必要に応じて、導電助剤やバインダー等を加えて混合した負極合剤を溶剤に分散させて負極合剤含有スラリーを調製する。ここで、負極合剤含有スラリー中の固形分濃度は、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。次いで、この負極合剤含有スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥して負極活物質層を形成する。乾燥後に得られた負極活物質層をロールプレス等により圧縮することで負極合剤層が形成される。圧縮後の負極合剤厚さは10〜300μmであることが好ましく、20〜280μmであることがより好ましく、30〜250μmであることが更に好ましい。
導電助剤としては、例えば、グラファイト、アセチレンブラック及びケッチェンブラックに代表されるカーボンブラック、並びに炭素繊維が挙げられる。導電助剤の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは10nm〜10μm、より好ましくは20nm〜1μmであり、正極活物質の数平均粒子径と同様にして測定される。また、バインダーとしては、例えば、PVDF、PTFE、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム及びフッ素ゴムが挙げられる。また、溶剤としては、特に制限はなく、従来公知のものを用いてよいが、例えば、N―メチルー2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、水等が挙げられる。
負極集電体としては、例えば、銅箔、ニッケル箔又はステンレス箔などの金属箔により構成される。また、カーボンコートが施されていたりメッシュ状に加工されていてもよい。負極集電体の厚みは5〜40μmであることが好ましく、6〜35μmであることがより好ましく、7〜30μmであることが更に好ましい。
<4.セパレータ>
本実施形態の非水系二次電池は、正負極の短絡防止、シャットダウン等の安全性付与の観点から、正極と負極との間にセパレータを備えると好ましい。セパレータとしては、公知の非水系二次電池に備えられるものと同様であってもよく、イオン透過性が大きく、機械的強度に優れる絶縁性の薄膜が好ましい。セパレータとしては、例えば、織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜が挙げられ、これらの中でも、合成樹脂製微多孔膜が好ましい。合成樹脂製微多孔膜としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンを主成分として含有する微多孔膜、あるいは、これらのポリオレフィンを共に含有する微多孔膜等のポリオレフィン系微多孔膜が好適に用いられる。不織布としては、セラミック製、ポリオレフィン製、ポリエステル製、ポリアミド製、液晶ポリエステル製、アラミド製など、耐熱樹脂製の多孔膜が用いられる。
セパレータは、1種の微多孔膜を単層又は複数積層したものであってもよく、2種以上の微多孔膜を積層したものであってもよい。
<5.電池外装>
本実施形態の非水系二次電池における電池外装は特に限定されないが、電池缶及びラミネートフィルム外装体のいずれかの電池外装を用いることもできる。電池缶としては、例えば、スチール又はアルミニウムからなる金属缶を用いることができる。ラミネートフィルム外装体としては、例えば、熱溶融樹脂/金属フィルム/樹脂の3層構成からなるラミネートフィルムを熱溶融樹脂側を内側に向けた状態で2枚重ねて端部をヒートシールにて封止したものを用いることができる。なお、ラミネートフィルム外装体を用いる場合、正極集電体及び負極集電体にそれぞれ正極端子(又は正極端子と接続するリードタブ)及び負極端子(又は負極端子と接続するリードタブ)を接続し、両端子(又はリードタブ)の端部が外装体の外部に引き出された状態でラミネートフィルム外装体を封止してもよい。
<6.電池の作製方法>
本実施形態の非水系二次電池は、上述の非水系電解液、正極、負極及び必要に応じてセパレータを用いて、公知の方法により作製される。例えば、正極と負極とを、その間にセパレータを介在させた積層状態で巻回して巻回構造の積層体に成形したり、それらを折り曲げや複数層の積層などによって、交互に積層した複数の正極と負極との間にセパレータが介在する積層体に成形したりする。次いで、電池ケース(電池外装)内にその積層体を収容して、本実施形態に係る電解液をケース内部に注液し、上記積層体を電解液に浸漬して封印することによって、本実施形態の非水系二次電池を作製することができる。あるいは、ゲル化させた電解液を含む電解質膜を予め作製しておき、正極、負極、電解質膜及び必要に応じてセパレータを、上述のように折り曲げや積層によって積層体を形成した後、電池ケース内に収容して非水系二次電池を作製することもできる。本実施形態の非水系二次電池の形状は、特に限定されず、例えば、円筒形、楕円形、角筒型、ボタン形、コイン形、扁平形及びラミネート形などが好適に採用される。
本実施形態の非水系二次電池は、初回充電により電池として機能し得るが、初回充電の際に非水系電解液の一部が分解することにより安定化する。本実施形態における初回充電の方法について特に制限はないが、初回充電が0.001〜0.3Cで行われることが好ましく、0.002〜0.25Cで行われることがより好ましく、0.003〜0.2Cで行われることが特に好ましい。また、初回充電が定電圧充電を途中に経由して行われることも好ましい結果を与える。なお、定格容量を1時間で放電する定電流が1Cである。リチウム塩が電気化学的な反応に関与する電圧範囲を長く設定することによって、SEIが電極表面に形成され、正極を含めた内部抵抗の増加を抑制する効果がある。また、反応生成物が負極のみに強固に固定化されることなく、何らかの形で正極やセパレータ等、負極以外の部材にも良好な効果を与えるため、電解液に溶解したリチウム塩の電気化学的な反応を考慮して初回充電を行うことは非常に有効である。
本実施形態の非水系二次電池は、複数個を直列あるいは並列につないで電池パックとして使用することもできる。なお、電池パックの充放電状態を管理する観点から、1個あたりの使用電圧範囲は2〜5Vであることが好ましく、2.5〜5Vであることがより好ましく、2.75V〜5Vであることが特に好ましい。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、非水系二次電池の各種特性は下記のようにして測定、評価された。
(1−1)酸化還元電位の測定
アセトニトリルにレドックスシャトル剤を0.005mol/L、支持電解質として過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウムを0.1mol/L溶解させ、測定直前まで窒素バブリングした。作用極としてグラッシーカーボン、参照電極としてAg/Ag+、対極としてPt wireを上記溶液に浸し、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス株式会社製、製品名「ALS610−2B」)に上記3本の電極を接続して、open circuit potential−timeで得られた値を初期電位とした。その後、電位掃引速度を0.1V/秒、掃引上限電位を1V、掃引下限電位を0Vに設定して、連続的に電位を変化させながら電極応答を取り出すサイクリックボルタンメトリー測定を行った。酸化電流が最大となる電位と還元電流が最大となる電位との平均値を酸化還元電位とした。なお、測定電位はフェロセン標準溶液の測定結果を用いてフェロセン基準に補正し、さらにリチウム基準(vs. Li/Li+)に換算した。
[実施例1]
100mLナスフラスコに10mLのメタノールと1.45gのオルト過ヨウ素酸とを入れ、10分間攪拌を行った。その後3.20gのヨウ素を添加し、更に10分間攪拌した。次に、1.35gの1,4−ジメトキシベンゼンを添加した後、70℃にて4時間攪拌した。反応終了後、得られた溶液を2.50gのNa225と25mLの水とを混合したものに注ぎ入れて吸引ろ過を行い、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン)で精製し、薄橙色固体の中間生成物である1,4−ジメトキシ−2,5−ジヨードベンゼン3.31g(収率85%)を得た。質量スペクトル及び1H−NMRにて中間生成物の生成を確認した。
窒素雰囲気下、100mL二口ナスフラスコに1.56gの1,4−ジメトキシ−2,5−ジヨードベンゼンと4.35gのトリフルオロ酢酸ナトリウムと3.05gのヨウ化銅と30mLのN,N−ジメチルアセトアミドを加えて150℃にて還流を行った。得られた溶液を冷却してろ過した後、ジクロロメタンと水で分液し、水洗を経て有機溶媒を回収し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させた。溶媒を除去後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ジクロロメタン)で精製し、白色固体の目的物0.903g(収率82.0%)を得た。質量スペクトル及び1H−NMRにて、1,4−ジメトキシ−2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの生成を確認した。なお、同定結果は下記のとおりであった。
1H NMR(CDCl3,TMS,300MHz):δ(ppm)=3.827(s,6H,HMe),7.194(s,2H,HPh
この化合物をレドックスシャトル剤として用いた場合について、上記(1−1)に記載の方法で酸化還元電位の測定を行った結果、酸化還元電位は4.7V vs. Li/Li+であった。
[比較例1]
窒素雰囲気下において、200mL三口ナスフラスコに1.78gの2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2.53gの炭酸カリウム、150μLのトリ−tert−ブチルアミン、25mLのアセトンを入れ、その後、4.27mLの2,2,2−トリフルオロエチルパーフルオロブチルスルホネートを2時間かけて滴下し、60℃にて24時間攪拌した。その後、40mLの水を添加して反応を停止させ、減圧濃縮にてアセトンを除去した。冷却後、吸引ろ過し、乾燥して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム:n−ヘキサン=1:10)で精製し、白色固体の目的物0.652g(収率21.1%)を得た。質量スペクトル及び1H−NMRにて、1,4−ジ−tert−ブチル−2,5−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンゼンの生成を確認した。
この化合物をレドックスシャトル剤として用いた場合について、上記(1−1)に記載の方法で酸化還元電位の測定を行った結果、酸化還元電位は4.3V vs. Li/Li+であった。
本発明の非水系二次電池用レドックスシャトル剤、非水系電解液及び非水系二次電池は、例えば、携帯電話、携帯オーディオ、パソコン、ICタグなどの携帯機器に加え、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車などの自動車用充電池、さらには住宅用蓄電システムにおける利用も期待される。
100…リチウムイオン二次電池、110…セパレータ、120…正極、130…負極、140…正極集電体、150…負極集電体、160…電池外装。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物からなる非水系二次電池用レドックスシャトル剤。
    Figure 2013232328
    (式(1)中、R1で表される複数の置換基は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のフッ素置換アルキル基である。)
  2. 下記一般式(1)で表される化合物を含有する非水系電解液。
    Figure 2013232328
    (式(1)中、R1で表される複数の置換基は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のフッ素置換アルキル基である。)
  3. 請求項2に記載の非水系電解液と、正極と、負極とを備える非水系二次電池。
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