JP6868969B2 - 非水系二次電池とそれに用いられる非水系電解液 - Google Patents
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Description
これまでに提案されている改善策のうち主なものは、以下の3つに分類される。
例えば、特許文献1及び2には、溶媒であるアセトニトリルを特定の電解質塩及び添加剤と組み合わせることによって、アセトニトリルの還元分解の影響を低減した電解液が報告されている。なお、リチウムイオン二次電池の黎明期には、特許文献3のように、アセトニトリルをプロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートで希釈しただけの溶媒を含む電解液も報告されている。しかしながら、特許文献3では、高温耐久性能について高温保存後の内部抵抗及び電池厚みのみの評価により判定しているため、高温環境下に置かれた場合に実際に電池として作動するか否かという情報は開示されていない。単純にエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートで希釈するだけの措置によってアセトニトリルをベースとする溶媒を含む電解液の還元分解を抑制することは、実際には至難の業である。溶媒の還元分解の抑制方法としては、特許文献1及び2のように、複数の電解質塩及び添加剤を組み合わせる方法が現実的である。
例えば、特許文献4には、負極に特定の金属化合物を用いることにより、アセトニトリルの還元分解を回避した電池を得ることができると報告されている。ただし、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度を重視する用途においては、アセトニトリルの還元電位よりも卑な電位でリチウムイオンを吸蔵する負極活物質を用いる方が電位差の観点から圧倒的に有利となる。そのため、そのような用途において特許文献4の改善策を適用すると、使用可能な電圧の範囲が狭くなるため、不利である。
例えば、特許文献5には、濃度が4.2mol/Lとなるようにリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO2CF3)2)をアセトニトリルに溶解させた電解液を用いると、黒鉛電極への可逆的なリチウム挿入脱離が可能であることが記載されている。また、特許文献6には、濃度が4.5mol/Lとなるようにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO2F)2)をアセトニトリルに溶解させた電解液を用いたセルに対して充放電測定を行った結果、黒鉛へのLi+挿入脱離反応が観察され、更に、ハイレートで放電可能であることが報告されている。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
正極集電体の片面又は両面に、Ni、Mn、及びCoから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を含有する正極活物質層を有する正極と、
負極集電体の片面又は両面に負極活物質層を有する負極と、
非水系電解液と、
を具備する非水系二次電池であって、
前記非水系電解液は、アセトニトリルを30〜100体積%含む非水系溶媒と、フッ素含有無機リチウム塩とを含有し、かつ
前記非水系二次電池の内部に、ピリジン環を有するポリマーが存在する、
前記非水系二次電池。
[2]
前記フッ素含有無機リチウム塩が、LiPF6を含有する、[1]に記載の非水系二次電池。
[3]
前記ポリマーの前記ピリジン環由来のN原子の重量割合が、前記非水系二次電池中に存在する前記非水系電解液の全重量に対して、0.002〜2重量%である、[1]又は[2]に記載の非水系二次電池。
[4]
前記ポリマーが、前記非水系電解液中、前記正極の表面若しくは内部、又は前記負極の表面若しくは内部に存在している、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の非水系二次電池。
[5]
前記非水系二次電池がセパレータをさらに具備し、かつ前記ポリマーが、前記セパレータの表面又は内部に存在している、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の非水系二次電池。
[6]
前記ポリマーが、前記セパレータの前記正極側の表面に存在している、[5]に記載の非水系二次電池。
[7]
前記ポリマーが、前記正極の表面又は内部に存在している、[4]に記載の非水系二次電池。
[8]
アセトニトリルを非水系溶媒の全体積に対して30〜100体積%含む前記非水系溶媒と;
フッ素含有無機リチウム塩としてLiPF6と;
非水系電解液の全質量に対して0.01〜10質量%の、ピリジン環を有するポリマーと;
を含む前記非水系電解液。
本実施形態に係る非水系二次電池は、以下の:
正極活物質として、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な正極材料を含有する正極と、
負極活物質として、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な負極材料、並びに金属リチウムから成る群より選ばれる1種以上の負極材料を含有する負極と、
電解液と、
を備える。
正極5は、電池内で正極リード体3と接続している。図示していないが、負極6も、電池8内で負極リード体4と接続している。そして、正極リード体3及び負極リード体4は、それぞれ、外部の機器等と接続可能なように、片端側が電池外装2の外側に引き出されており、それらのアイオノマー部分が、電池装2の一辺と共に熱融着されている。
本実施形態における電解液は、アセトニトリルを30〜100体積%含有する非水系溶媒(以下、単に「溶媒」ともいう。)と、フッ素含有無機リチウム塩を含む。フッ素含有無機リチウム塩は、イオン伝導度に優れるものの、熱安定性が十分でないうえ、溶媒中の微量水分により加水分解し易く、フッ化リチウム及びフッ化水素を発生し易い性質を有する。フッ素含有無機リチウム塩が分解すると、該フッ素含有無機リチウム塩を含有する電解液のイオン伝導度が低下するとともに、生成したフッ化リチウム及びフッ化水素が、電極、集電体等の材料を腐食し、或いは溶媒を分解する等の、電池に致命的な悪影響を及ぼす場合がある。
アセトニトリルはイオン伝導性が高く、電池内におけるリチウムイオンの拡散性を高めることができる。そのため、電解液がアセトニトリルを含有する場合には、特に正極活物質層を厚くして正極活物質の充填量を高めた正極においても、高負荷での放電時にはリチウムイオンが到達し難い集電体近傍の領域にまで、リチウムイオンが良好に拡散できるようになる。よって、高負荷放電時にも十分な容量を引き出すことが可能となり、負荷特性に優れた非水系二次電池とすることができる。
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、トランス−2,3−ブチレンカーボネート、シス−2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、トランス−2,3−ペンチレンカーボネート、シス−2,3−ペンチレンカーボネート、及びビニレンカーボネートに代表される環状カーボネート;
フルオロエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロエチレンカーボネート、及びトリフルオロメチルエチレンカーボネートに代表される環状フッ素化カーボネート;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、及びε−カプロラクトンに代表されるラクトン;
スルホラン、ジメチルスルホキシド、及びエチレングリコールサルファイトに代表される硫黄化合物;
テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、及び1,3−ジオキサンに代表される環状エーテル;
エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、及びメチルトリフルオロエチルカーボネートに代表される鎖状カーボネート;
トリフルオロジメチルカーボネート、トリフルオロジエチルカーボネート、及びトリフルオロエチルメチルカーボネートに代表される鎖状フッ素化カーボネート;
プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、及びアクリロニトリルに代表されるモノニトリル;
メトキシアセトニトリル及び3−メトキシプロピオニトリルに代表されるアルコキシ基置換ニトリル;マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1,4−ジシアノヘプタン、1,5−ジシアノペンタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,7−ジシアノヘプタン、2,6−ジシアノヘプタン、1,8−ジシアノオクタン、2,7−ジシアノオクタン、1,9−ジシアノノナン、2,8−ジシアノノナン、1,10−ジシアノデカン、1,6−ジシアノデカン、及び2,4−ジメチルグルタロニトリルに代表されるジニトリル;
ベンゾニトリルに代表される環状ニトリル;
プロピオン酸メチルに代表される鎖状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、及びテトラグライムに代表される鎖状エーテル;
Rf−O−R(式中、Rfはフッ素を含有するアルキル基であり、Rはフッ素を含有してもよい有機基である)に代表されるフッ素化エーテル;
アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトンに代表されるケトン類;
及び、これらの有機化合物の部分フッ素化物、又は全フッ素化物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態におけるリチウム塩は、フッ素含有無機リチウム塩を含むことを特徴としている。ここで、「フッ素含有無機リチウム塩」とは、炭素原子をアニオンに含まず、フッ素原子をアニオンに含み、アセトニトリルに可溶なリチウム塩をいう。また、後述する「無機リチウム塩」とは、炭素原子をアニオンに含まず、アセトニトリルに可溶なリチウム塩をいい、「有機リチウム塩」とは、炭素原子をアニオンに含み、アセトニトリルに可溶なリチウム塩をいう。
その他のリチウム塩の具体例としては、例えば:
LiClO4、LiAlO4、LiAlCl4、LiB10Cl10、クロロボランLi等のフッ素原子をアニオンに含まない無機リチウム塩;
LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li2C2F4(SO3)2、LiC(CF3SO2)3、LiCnF2n+1SO3(式中、n≧2である)、低級脂肪族カルボン酸Li、四フェニルホウ酸Li等の有機リチウム塩;
LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2等のLiN(SO2CmF2m+1)2〔式中、mは1〜8の整数である〕で表される有機リチウム塩;
LiPF5(CF3)等のLiPFn(CpF2p+1)6−n〔式中、nは1〜5の整数であり、かつpは1〜8の整数である〕で表される有機リチウム塩;
LiBF3(CF3)等のLiBFq(CsF2s+1)4−q〔式中、qは1〜3の整数であり、かつsは1〜8の整数である〕で表される有機リチウム塩;
LiB(C2O4)2で表されるリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB);
ハロゲン化LiBOB;
LiBF2(C2O4)で表されるリチウムオキサラトジフルオロボレート(LiODFB);
LiB(C3O4H2)2で表されるリチウムビス(マロネート)ボレート(LiBMB);
LiPF4(C2O4)で表されるリチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、LiPF2(C2O4)2で表されるリチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート等の有機リチウム塩;
多価アニオンと結合されたリチウム塩;
下記一般式(2a)、(2b)、及び(2c):
LiC(SO2R6)(SO2R7)(SO2R8) (2a)
LiN(SO2OR9)(SO2OR10) (2b)
LiN(SO2R11)(SO2OR12) (2c)
{式中、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す。}のそれぞれで表される有機リチウム塩等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を、フッ素含有無機リチウム塩と共に使用することができる。
本実施形態における電解液には、電極を保護する添加剤が含まれていてもよい。なお、上述したように、電解液が電極保護用添加剤を含む場合、該電極保護用添加剤は非水系溶媒に含まれるから、該電解液中には、電極保護用添加剤を含む非水系溶媒(上述の非水系溶媒と電極保護用添加剤との合計体積)に対して30〜100体積%のアセトニトリルが含まれていればよい。
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5−トリフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5,5−テトラフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、及び4,4,5−トリフルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンに代表されるフルオロエチレンカーボネート;
ビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、及びビニルエチレンカーボネートに代表される不飽和結合含有環状カーボネート;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、及びε−カプロラクトンに代表されるラクトン;
1,4−ジオキサンに代表される環状エーテル;
エチレンサルファイト、プロピレンサルファイト、ブチレンサルファイト、ペンテンサルファイト、スルホラン、3−メチルスルホラン、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、及びテトラメチレンスルホキシドに代表される環状硫黄化合物;
が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態においては、非水系二次電池の充放電サイクル特性の改善、高温貯蔵性、安全性の向上(例えば過充電防止等)等の目的で、非水系電解液に、例えば:
無水酸、スルホン酸エステル、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、tert−ブチルベンゼン;
リン酸エステル〔エチルジエチルホスホノアセテート(EDPA):(C2H5O)2(P=O)−CH2(C=O)OC2H5;リン酸トリス(トリフルオロエチル)(TFEP):(CF3CH2O)3P=O、リン酸トリフェニル(TPP):(C6H5O)3P=O等〕等;及びこれらの各化合物の誘導体等から選択される任意的添加剤を、適宜含有させることもできる。特に、リン酸エステルは、貯蔵時の副反応を抑制する作用があり、効果的である。
図2に示されるように、正極5は、正極合剤から作製した正極活物質層と、正極集電体とから構成される。正極5は、非水系二次電池の正極として作用するものであれば特に限定されず、公知のものであってもよい。
LixMO2 (3a)
LiyM2O4 (3b)
{式中、Mは少なくとも1種の遷移金属元素を含む1種以上の金属元素を示し、xは0〜1.1の数を示し、yは0〜2の数を示す。}のそれぞれで表されるリチウム含有化合物、及びその他のリチウム含有化合物が挙げられる。
LiCoO2に代表されるリチウムコバルト酸化物;
LiMnO2、LiMn2O4、及びLi2Mn2O4に代表されるリチウムマンガン酸化物;
LiNiO2に代表されるリチウムニッケル酸化物;
LizMO2(式中、MはNi、Mn、及びCoから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を含み、且つ、Ni、Mn、Co、Al、及びMgから成る群より選ばれる2種以上の金属元素を示し、zは0.9超1.2未満の数を示す)で表されるリチウム含有複合金属酸化物等が挙げられる。
リチウムと、
コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、及びチタン(Ti)から成る群より選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素と、
を含む複合酸化物、及びリン酸金属化合物が好ましい。
LiwMIIPO4 (4b)
{式中、Dは酸素又はカルコゲン元素を示し、MI及びMIIはそれぞれ1種以上の遷移金属元素を示し、v及びwの値は、電池の充放電状態によって異なり、vは0.05〜1.10の数を示し、wは0.05〜1.10の数を示す。}のそれぞれで表される化合物が挙げられる。
図2に示されるように、負極6は、負極合剤から作製した負極活物質層と、負極集電体とから構成される。負極6は、非水系二次電池の負極として作用するものであれば特に限定されず、公知のものであってもよい。
図2に示されるように、本実施形態に係る非水系二次電池8は、正極5及び負極6の短絡防止、シャットダウン等の安全性付与の観点から、正極5と負極6との間にセパレータ7を備えることが好ましい。セパレータ7としては、公知の非水系二次電池に備えられるものと同様のものを用いてもよく、イオン透過性が大きく、機械的強度に優れる絶縁性の薄膜が好ましい。セパレータ7としては、例えば、織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜等が挙げられ、これらの中でも、合成樹脂製微多孔膜が好ましい。
図2では電池外装2が2枚のアルミニウムラミネートフィルム1で構成されているが、本実施形態に係る非水系二次電池の電池外装の構成は、特に限定されず、例えば、電池缶及びラミネートフィルム外装体のいずれかの電池外装を用いることができる。電池缶としては、例えば、スチール又はアルミニウムから成る金属缶を用いることができる。ラミネートフィルム外装体としては、例えば、熱溶融樹脂/金属フィルム/樹脂の3層構成から成るラミネートフィルムを用いることができる。
本実施形態に係る非水系二次電池は、電池内部に、ピリジン環を有するポリマーが存在することを特徴とする。ピリジン環を有するポリマーとは、下記一般式(1)で表される構造である。
一般式(1)でl=0、かつm≠0、かつn≠0の場合、主鎖にピリジン環を有する構造となる。
ピリジン環同士を結合する構造Xは、アルキル鎖、エステル構造、若しくはその両者を含む構造、又はピリジン環同士が直接結合している単結合等の結合状態が選択可能である。
但し、ピリジン環同士が直接結合した構造であれば、結合部位が電池内部で分解した場合に、分解物によるガス発生が生じ難く、好ましい。上記のピリジン環骨格は、規則的な繰り返し構造、ブロック構造、ランダム構造のいずれでもよい。ポリマーの繰り返し単位n、mの数は、ポリマーの構造(繰り返し/ブロック/ランダム)、ポリマーの分子量、置換基に応じて変わる。
一般式(1)でl≠0の場合、ピリジン環を側鎖に有するポリマーとなる。主鎖の繰り返し単位の構造Yは、アルキル鎖で、側鎖の導入間隔を調整するものである。また、Yは架橋構造となっていてもよい。側鎖の繰り返し構造Xは、アルキル鎖、エステル構造、若しくはその両者を含む構造、又はピリジン環同志が直接結合している単結合等の結合状態が選択可能である。l、m及びnの数は、ポリマーの構造、分子量、又は置換基に応じて変わる。
本実施形態における非水系二次電池は、図2に示されるように、上述の非水系電解液、集電体の片面又は両面に正極活物質層を有する正極5、集電体の片面又は両面に負極活物質層を有する負極6、及び電池外装2、並びに必要に応じてセパレータ7を用いて、公知の方法により作製される。
正極5及び負極6を一定の面積と形状とを有する複数枚のシートに切断して得た正極シートと負極シートとを、セパレータシートを介して交互に積層した積層構造の積層体を形成する態様;
長尺のセパレータをつづら折りにして、該つづら折りになったセパレータ同士の間に交互に正極体シートと負極体シートとを挿入した積層構造の積層体を形成する態様;
等が可能である。
代替的には、電解液を高分子材料から成る基材に含浸させることによって、ゲル状態の電解質膜を予め作製しておき、シート状の正極5、負極6、及び電解質膜、並びに必要に応じてセパレータ7を用いて積層構造の積層体を形成した後、電池外装2内に収容して非水系二次電池を作製することもできる。
この非水系二次電池を作製する工程において、浸漬する電解液中にピリジン環を有するポリマーを溶解して用いてもよい。
アルミラミネート袋を2.7cm×6cmに加工し、23mm×17mmに打ち抜いた後述の正極を封入した後、不活性雰囲気下において、各実施例又は比較例で調製した非水系電解液0.5mLを注液した。このとき、電極面が電解液中に浸漬されていることを確認した。注液後シールし、アルミラミネート袋を縦に立て掛けた状態で60℃に保ち、10日間保存した。保存後、内部の電解液及び正極表面の観察を行った。遷移金属とアセトニトリルとから成る錯体カチオンの塩を主成分とするゲル状物の生成が認められなかった場合を「○」(良好)、前記ゲル状物の生成が認められた場合を「×」(不良)と判定した。
(2−1)正極(P1)の作製
正極活物質として数平均粒子径11μmのリチウム、ニッケル、マンガン、及びコバルトの複合酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2、密度4.70g/cm3)と、導電助剤として数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末(密度1.95g/cm3)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF;密度1.75g/cm3)とを、93:4:3の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。正極集電体となる厚さ20μm、幅200mmのアルミニウム箔の片面に、この正極合剤含有スラリーを、目付量が22mg/cm2になるように調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、ロールプレスで正極活物質層の密度が2.8g/cm3になるように圧延することにより、正極活物質層と正極集電体とから成る正極(P1)を得た。
負極活物質として数平均粒子径25μmのグラファイト炭素粉末(商品名「MCMB25−28」、大阪ガスケミカル(株)製)と、導電助剤として数平均粒子径48nmのアセチレンブラックと、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF;密度1.75g/cm3)とを、93:2:5の固形分質量比で混合した。得られた混合物にN−メチル−2−ピロリドンを投入して更に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。負極集電体となる厚さ10μm、幅200mmの銅箔の片面に、この負極合剤含有スラリーを目付量が12mg/cm2になるように調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、ロールプレスで負極活物質層の密度が1.5g/cm3になるよう圧延することにより、負極活物質層と負極集電体とから成る負極(N1)を得た。
アルミニウム層と樹脂層とを積層したラミネートフィルム(絞り加工なし、厚さ120μm、31mm×37mm)2枚を、アルミニウム層側を外側にして重ね、三辺をシールしてラミネートセル外装を作製した。上述のように作製した正極(P1)を14.0mm×20.0mmに打ち抜き、上述のように作製した負極(N1)を14.5mm×20.5mmに打ち抜いた。続いて、セパレータとしてポリエチレン製微多孔膜(膜厚20μm、16mm×22mm)を用意し、正極(P1)と負極(N1)とをセパレータの両側に重ね合わせた積層体を、上記のラミネートセル外装内に配置した。次いで、そのセル外装内に各実施例及び比較例で調製した電解液を注入し、積層体を電解液に浸漬した。そして、ラミネートセル外装の残りの一辺をシールして非水系二次電池(単層ラミネート型電池。以下、単に「電池」ともいう。)を作製した。これを25℃で24時間保持し、積層体に電解液を十分馴染ませることにより、1C=8.5mAとなる単層ラミネート型電池を得た。
上述のようにして得られた電池について、先ず、以下の(3−1)の手順に従って、初回充電処理及び初期充放電容量測定を行った。次に、以下の(3−2)及び(3−3)に従って、それぞれの電池を評価した。充放電は、アスカ電子(株)製の充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製の恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。
電池の周囲温度を25℃に設定し、0.2Cに相当する1.7mAの定電流で充電して電池電圧が4.2Vに到達するまで充電を行った後、4.2Vの定電圧で8時間充電を行った。その後、0.2Cに相当する1.7mAの定電流で2.7Vまで放電した。この一連の充放電操作を1サイクルとし、nサイクル目のときの放電容量をnサイクル目の充電容量で割った値を、初期充放電効率とする。
上述の(3−1)に記載の方法で初回充放電処理を行った電池を用い、1Cに相当する8.5mAの定電流で充電して電池電圧が4.2Vに到達するまで充電を行った後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。その後、1Cに相当する8.5mAの定電流で電池電圧2.7Vまで放電した。このときの放電容量をAとした。次に、1Cに相当する8.5mAの定電流で充電して電池電圧が4.2Vに到達するまで充電を行った後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。その後、5Cに相当する42.5mAの定電流で電池電圧2.7Vまで放電した。このときの放電容量をBとした。出力試験測定値として、以下の値を算出した。
容量維持率=100×B/A[%]
不活性雰囲気下、非水系溶媒として830mLのアセトニトリル及び170mLのビニレンカーボネートから成る混合溶媒を調製し、該混合溶媒に対して、1.3molのLiPF6及び0.1molのLiBOBを溶解させた。次に、上記混合溶媒100質量部に対して、添加剤としてポリ(2−ビニルピリジン)(Aldrich社製、Mw=5,000)1質量部を溶解して電解液を得た。電解液中に存在するピリジン環由来のN原子の重量割合は0.13重量%である。
実施例1で用いた添加剤を、混合溶媒100質量部に対してポリ(4−ビニルピリジン)(Aldrich社製、Mw=60,000)0.1質量部とした以外は全て同じ条件で電解液を得た。電解液中に存在するピリジン環由来のN原子の重量割合は0.013重量%である。
上記実施例1において、同組成で添加剤を入れない電解液を作製した。
実施例1、2及び比較例1の組成の電解液について、(1)の正極浸漬試験を行ったところ、フッ素含有無機リチウム塩と有意量のアセトニトリルとを含む電解液において、ピリジン環を有するポリマーを含有しない比較例1では、褐色ゲル状物の生成が認められた。このゲル状物は、1H−NMR、19F−NMR、およびICPによる分析結果から遷移金属とアセトニトリルとから成る錯体カチオンを含むものであることが判明した。一方、フッ素含有無機リチウム塩と有意量のアセトニトリルとを含む電解液においても、ピリジン環を有するポリマーを含有する実施例1,2では、褐色ゲル状物の生成が認められなかった。
また、アセトニトリルを含有する電解液の電池と、含有しない電池の性能を比較するため、比較例2として、アセトニトリルを含有しない電解液を調製した。すなわち、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=30/70(V/V)で混合した非水系溶媒に対して、LiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させた電解液を用いて電池を作製し、比較例1,2の電池について、上述の(3−2)に記載の方法により放電容量測定を行った。
実施例1,2及び比較例1,2の電解液組成を表1に示し、それぞれの電池評価結果を表2に示す。
2 電池外装
3 正極リード体
4 負極リード体
5 正極
6 負極
7 セパレータ
8 非水系二次電池
Claims (4)
- 正極集電体の片面又は両面に、Ni、Mn、及びCoから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を含有する正極活物質層を有する正極と、
負極集電体の片面又は両面に負極活物質層を有する負極と、
非水系電解液と、
を具備する非水系二次電池であって、
前記非水系電解液は、アセトニトリルを30〜100体積%含む非水系溶媒と、フッ素含有無機リチウム塩とを含有し、
前記非水系二次電池の内部に、ピリジン環を有するポリマーが存在し、
前記ピリジン環を有するポリマーが、ポリ(2−ビニルピリジン)及び/又はポリ(4−ビニルピリジン)であり、
前記ピリジン環を有するポリマーは、前記非水系電解液中に存在し、かつ
前記非水系電解液は、シリル基を含有する化合物を含まない、非水系二次電池。 - 前記フッ素含有無機リチウム塩が、LiPF6を含有する、請求項1に記載の非水系二次電池。
- 前記ポリマーの前記ピリジン環由来のN原子の重量割合が、前記非水系二次電池中に存在する前記非水系電解液の全重量に対して、0.002〜2重量%である、請求項1又は2に記載の非水系二次電池。
- アセトニトリルを非水系溶媒の全体積に対して30〜100体積%含む前記非水系溶媒と;
フッ素含有無機リチウム塩としてLiPF6と;
非水系電解液の全質量に対して0.01〜10質量%の、ピリジン環を有するポリマーと;
を含み、かつ前記ピリジン環を有するポリマーが、ポリ(2−ビニルピリジン)及び/又はポリ(4−ビニルピリジン)であり、
シリル基を含有する化合物を含まない、非水系電解液。
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